説明

電子機器

【課題】 従来のカメラ機器は、キャビネット内に発生した熱を放熱するため、放熱部材を数点新たに要し、構造が複雑となる。
【解決手段】 デジタルカメラ1の筐体2内において発熱源となる撮像素子21および電気素子24で発生した熱が、筐体2内において液晶モニタ7を保持する、発熱源と熱的に連結された液晶保持部22を伝わり、筐体2の底面の一部において外部に露出する液晶保持部22の一部から外部に放熱される。このように、液晶モニタ7を保持する液晶保持部22が放熱部を兼ね、放熱部を新たに設けずに発熱源で発生した熱を放熱することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部および発熱源を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電子機器としては、例えば、特許文献1に開示されたカメラ機器がある。
【0003】
特許文献1に記載のカメラ機器のキャビネット内には、通電時に発熱する画像信号処理回路を実装した回路基板が設けられている。キャビネットの下面には、三脚台に着脱可能に取り付けられる座台が設けられている。座台には、熱を円滑に伝達する材質から形成された、回路基板を囲むシールドプレートが、第2放熱片を介して取り付けられている。シールドプレートは、アルミニウムから形成されたヒートシンクおよび熱伝導性のゴムから形成された第1放熱片並びに第3放熱片を介して、回路基板の画像信号処理回路に繋がっている。画像信号処理回路で発生した熱は、第1放熱片および第3放熱片、ヒートシンク、シールドプレートを伝わってキャビネットから一部放熱され、残りの熱はシールドプレートを伝わって第2放熱片および座台に流れて放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−194712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のカメラ機器では、キャビネット内に発生した熱を放熱するため、第1放熱片、第2放熱片、および第3放熱片等の放熱部材を数点新たに要する。このため、構造が複雑となり、機器組立性が悪化し、製品のコストアップの要因となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
表示部を有する電子機器において、
電子機器の筐体内に設けられて表示部を保持し、筐体内にある発熱源と熱的に連結されて一部が筐体の表面の少なくとも一部において外部に露出する表示部保持部
を備えて、電子機器を構成した。
【0007】
この構成によれば、電子機器の筐体内にある発熱源で発生した熱は、筐体内において表示部を保持する、発熱源と熱的に連結された表示部保持部を伝わり、筐体の表面の少なくとも一部において外部に露出する表示部保持部の一部から、筐体外部に放熱される。このため、表示部を保持する表示部保持部が、発熱源で発生した熱を放熱する放熱部を兼ね、放熱部を新たに設ける必要がないので、発熱源で発生した熱を簡単な構造で放熱することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明による電子機器によれば、新たに部品を要することなく、簡単な構成で電子機器の放熱性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)、(b)および(c)は、本発明の一実施の形態によるデジタルカメラの斜視図、正面図および背面図である。
【図2】(a)は、図1に示すデジタルカメラをレンズ鏡筒の光軸を含む垂直な面で破断した場合の縦断面図、(b)は、デジタルカメラをレンズ鏡筒の光軸を含む水平な面で破断した場合の横断面図、(c)は、デジタルカメラの底面図である。
【図3】(a)は、図1に示すデジタルカメラと係合される放熱ブロックの斜視図、(b)は放熱ブロックの底面図、(c)は、デジタルカメラの底面と係合される放熱ブロックの断面およびデジタルカメラの正面を示す図である。
【図4】本実施の形態の変形例によるデジタルカメラを示し、(a)は、レンズ鏡筒の光軸を含む水平な面で破断した場合の横断面図、(b)は、デジタルカメラの側面と係合される放熱ブロックおよびデジタルカメラの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明による電子機器をデジタルカメラに適用した場合における、本発明の一実施の形態について説明する。
【0011】
図1(a)、(b)および(c)は、この一実施の形態によるデジタルカメラ1の斜視図、正面図および背面図である。
【0012】
デジタルカメラ1の筐体2の上面には、同図(a)に示すように、デジタルカメラ1への電源投入を操作する電源スイッチ3が設けられている。この電源スイッチ3の隣には、被写体を撮影する際に操作されるレリーズボタン4が設けられている。筐体2は、前カバー2aと後カバー2bとから成り、略直方体状をなす。
【0013】
デジタルカメラ1の正面には、同図(a)および(b)に示すように、撮影用のレンズ鏡筒5が設けられ、レンズ鏡筒5の背面には撮像素子21が内蔵されている。レンズ鏡筒5は、沈胴位置から所定の突出位置へ移動自在に構成されている。レンズ鏡筒5の右上方の前カバー2aには、フラッシュ窓6が設けられている。撮影時、必要に応じてこのフラッシュ窓6を介して、筐体2内に設けられた発光部から被写体に向けてフラッシュ光が出射される。
【0014】
デジタルカメラ1の背面には、同図(c)に示すように、液晶モニタ7が設けられている。この液晶モニタ7は、LCD(Liquid Crystal Display)等からなり、撮影画像等を表示する表示部を構成する。液晶モニタ7の右側には、メニュー画面におけるメニュー項目の選択操作などを行うマルチセレクタ8が設けられている。マルチセレクタ8は、方向キー8aと決定ボタン8bとから構成されている。方向キー8aは、液晶モニタ7に表示されたメニュー画面において撮影者が設定したい項目を選択する際に、上下左右方向に押下操作されたり、円周方向に回転操作される。決定ボタン8bは、撮影者が方向キー8aを操作して選択した項目を決定する際に押下操作される。
【0015】
また、マルチセレクタ8の周囲には、モードボタン9、メニューボタン10、再生表示ボタン11、および消去ボタン12が設けられている。モードボタン9は、液晶モニタ7に撮影モード選択画面を表示させる際に操作され、メニューボタン10は、液晶モニタ7にメニュー画面を表示させる際に操作される。また、再生表示ボタン11は、撮影画像を液晶モニタ7に再生表示させる際に操作され、消去ボタン12は、撮影画像を消去する際に操作される。モードボタン9の上方には、動画撮影ボタン13が設けられている。動画撮影ボタン13は、動画撮影を開始させる際に操作される。
【0016】
図2(a)は、図1に示すデジタルカメラ1をレンズ鏡筒5の光軸Aを含む垂直な面で破断した場合の縦断面図、同図(b)は、デジタルカメラ1をレンズ鏡筒5の光軸Aを含む水平な面で破断した場合の横断面図、同図(c)は、デジタルカメラ1の底面図である。なお、同図において図1と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0017】
被写体光は、撮像素子21の前面側に設けられるレンズ鏡筒5を通り、撮像素子21に入射する。撮像素子21は、回路基板23に設けられたCPU(Central Processing Unit)を備えた電気素子24の制御の下で、入射した被写体光により被写体像を撮影する。撮像素子21および電気素子24は、作動することで発熱する発熱源である。動画撮影ボタン13により動画撮影が開始されると、撮像素子21および電気素子24はより多くの熱を発する。筐体2の内部には、撮像素子21の背面および電気素子24の前面に接触して発熱源と熱的に連結された液晶保持部22が設けられている。液晶保持部22は、折り曲げ加工された板金か、ダイカスト等により製造され、筐体2内に設けられて液晶モニタ7を保持する表示部保持部を構成する。この液晶保持部22は、従来は放熱性(熱伝導性)が劣るステンレス製等であったが、本実施形態では、純アルミ、マグネシウム、純銀、銅等の、放熱性に優れた部材から成る。
【0018】
液晶保持部22の一部は、同図(a)および(c)に示すように、筐体2の底面の一部において外部に露出する。また、前カバー2aおよび後カバー2bの一部は、同図(a)および(b)に示すように、筐体2の底面および両側面において液晶保持部22と接触している。液晶保持部22とこのように接触して熱的に連結された前カバー2aおよび後カバー2bは、液晶保持部22と同様な放熱性に優れた部材から成る。
【0019】
筐体2の底面における液晶保持部22の露出部分には、三脚の取付ネジが螺合する雌ネジ26が設けられている。また、筐体2の内部のバッテリー室内にはバッテリー25が格納されており、筐体2の底面には、バッテリー室の開口部を覆う電池蓋27およびUSB(Universal Serial Bus)コネクタ28が設けられている。バッテリー25は、デジタルカメラ1の各種回路に電力を供給する。USBコネクタ28は、例えばパソコン(パーソナル・コンピュータ)などの外部機器と接続され、デジタルカメラ1内に保存されている画像データがパソコンに転送されたりする。
【0020】
図3(a)は、デジタルカメラ1と係合される放熱ブロック31の斜視図、同図(b)は放熱ブロック31の底面図、同図(c)は、デジタルカメラ1の底面と係合される放熱ブロック31の断面およびデジタルカメラ1の正面を示す図である。なお、同図において図1と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0021】
放熱ブロック31は、液晶保持部22と同様な放熱性に優れた金属部材のかたまりから成る。本実施形態では、放熱ブロック31は、断面がコの字形状に形成されているが、その形状はコの字形状に限定されるものではない。放熱ブロック31の中央部に形成された穴には、雄ネジ32が挿通される。雄ネジ32は、つまみ32aが頭部に設けられ、その先端が、放熱ブロック31の上面側に突出して放熱ブロック31に取り付けられる。
【0022】
同図(c)に示すように、デジタルカメラ1の底面に放熱ブロック31を取り付ける際、つまみ32aを回転させて、デジタルカメラ1の底面の雌ネジ26に放熱ブロック31の雄ネジ32を螺合させることで、放熱ブロック31がデジタルカメラ1の底面に係合される。デジタルカメラ1の底面の雌ネジ26は、筐体2の外部に露出する液晶保持部22の露出部分と放熱ブロック31とを着脱自在に接触させる係合部を構成する。
【0023】
このような本実施形態によるデジタルカメラ1によれば、デジタルカメラ1の筐体2内において発熱源となる撮像素子21および電気素子24で発生した熱が、筐体2内において液晶モニタ7を保持する、発熱源と熱的に連結された液晶保持部22を伝わり、図2(a)および(c)に示すように筐体2の底面の一部において外部に露出する液晶保持部22の一部から外部に放熱される。このように、液晶モニタ7を保持する液晶保持部22が放熱部を兼ね、放熱部を新たに設けずに発熱源で発生した熱を放熱することが可能となる。この結果、新たに部品を要することなく、簡単な構造でデジタルカメラ1の放熱性能を向上させることができる。
【0024】
また、本実施形態によるデジタルカメラ1によれば、液晶保持部22が放熱性に優れた部材から成るので、発熱源で発生した熱は外部に露出する部分の液晶保持部22から効率的に筐体2の外部へ放熱され、放熱効果が高まる。
【0025】
また、本実施形態によるデジタルカメラ1によれば、筐体2が放熱性に優れた部材から成り、その底面および両側面において図2(a)および(b)に示すように液晶保持部22と熱的に連結される。このため、発熱源で発生した熱は、液晶保持部22を伝わり、筐体2の底面において外部に露出する液晶保持部22の一部から放熱されると共に、放熱性に優れた部材から成る筐体2からも放熱される。従って、外気に触れて放熱される部分の面積が大きくなるので、放熱効果が一層高まる。
【0026】
また、本実施形態によるデジタルカメラ1は、筐体2の底面において外部に露出する液晶保持部22の露出部分と放熱ブロック31とを着脱自在に接触させる係合部を雌ネジ26として備える。このため、この雌ネジ26によって放熱ブロック31を液晶保持部22の露出部分に取り付けることで、筐体2内部から液晶保持部22の露出部分に伝わった熱が、放熱ブロック31により効率よく放熱され、放熱効果が特に高まる。従って、例えば、発熱量が特に多い動画撮影を行う場合であっても、放熱ブロック31を雌ネジ26によって取り付けることで、発生する多量の熱を効率良く放熱でき、長時間の動画撮影も可能となる。
【0027】
図4は、本実施の形態の変形例によるデジタルカメラ1を示し、同図(a)は、レンズ鏡筒5の光軸Aを含む水平な面で破断した場合の横断面図、同図(b)は、デジタルカメラ1の側面と係合される放熱ブロック31およびデジタルカメラ1の正面図である。なお、同図において図2および図3と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0028】
上述した実施形態では、図2に示すように、液晶保持部22は、デジタルカメラ1の底面において筐体2の外部に露出する構成であったが、本変形例では、図4(a)に示すように、デジタルカメラ1の両側面において筐体2の外部に露出する構成になっている。また、デジタルカメラ1の側面における、液晶保持部22の露出部分に、上述した雌ネジ26に相当する不図示の雌ネジが設けられている。
【0029】
同図(b)に示すように、デジタルカメラ1の側面に放熱ブロック31を取り付ける際、つまみ32aを回転させて、デジタルカメラ1の側面の雌ネジに放熱ブロック31の雄ネジ32を螺合させることで、放熱ブロック31がデジタルカメラ1の側面に係合される。このため、この構成によっても、上述した実施形態と同様に、筐体2内部から液晶保持部22の露出部分に伝わった熱が、放熱ブロック31により効率よく放熱され、放熱効果がより一層高まる。
【0030】
なお、上記実施形態および変形例では、液晶保持部22と熱的に連結される前カバー2aおよび後カバー2bは、その全てが放熱性に優れた部材から成る構成であったが、その少なくとも一部が放熱性に優れた部材から成る構成にしてもよい。
【0031】
また、上記実施形態および変形例では、液晶保持部22は、図2および図4に示すように、デジタルカメラ1の底面または側面においてその一部が筐体2の外部に露出する構成であったが、他の箇所における筐体2の表面の少なくとも一部において外部に露出する構成であってもよい。例えば、筐体2の上面においてその一部が筐体2の外部に露出する構成であってもよい。また、底面、側面、上面の複数面においてその一部が筐体2の外部に露出する構成でもよい。また、液晶保持部22は、その一部ではなく全部において筐体2の外部に露出する構成でもよい。
【0032】
また、上記実施形態および変形例では、デジタルカメラ1と放熱ブロック31とは、デジタルカメラ1の雌ネジ26および放熱ブロック31の雄ネジ32により係合される構造であったが、他の構造、例えば、マグネットで電磁的に互いを係合させたり、爪により機械的に互いを係合させる構造にしてもよい。また、放熱ブロック31の形状は、図3に示す形状に限らず、例えばヒートシンクのようなフィン状の形状にしてもよい。
【0033】
また、上記実施形態および変形例では、作動することで発熱する発熱源は、撮像素子21および電気素子24であったが、発熱源は、これらに限らず、他の電気回路部分や、機械的に作動して発熱するものでもよい。
【0034】
また、上記実施形態および変形例では、液晶保持部22は、図2(b)に示すように、撮像素子21および電気素子24に直接接触する構成であったが、撮像素子21および電気素子24に熱伝導シートなどを介して接触する構成であってもよい。
【0035】
また、デジタルカメラ1の表示部は、図1に示すLCD等から成る液晶モニタ7に限らず、例えば、有機ELでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
上述した実施形態および変形例では、本発明による電子機器をデジタルカメラに適用した場合について説明したが、携帯電話機や、パソコン、テレビ、ビデオカメラなどの、液晶等の表示部を備えたその他の電子機器にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…デジタルカメラ
2…筐体
2a…前カバー
2b…後カバー
7…液晶モニタ
21…撮像素子
22…液晶保持部
24…電気素子
26…雌ネジ
31…放熱ブロック
32…雄ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部を有する電子機器において、
前記電子機器の筐体内に設けられて前記表示部を保持し、前記筐体内にある発熱源と熱的に連結されて一部が前記筐体の表面の少なくとも一部において外部に露出する表示部保持部
を備える電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記表示部保持部は、放熱性に優れた部材から成ることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子機器において、
前記筐体の少なくとも一部は、放熱性に優れた部材から成り、前記表示部保持部と熱的に連結されることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子機器において、
外部に露出する前記表示部保持部の露出部分と放熱ブロックとを着脱自在に接触させる係合部を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−173591(P2012−173591A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36707(P2011−36707)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】