説明

電子機器

【課題】電子機器の内部の温度に基づいて電子機器を制御することができ、かつ電子機器の大型化を抑制する。
【解決手段】発振装置は、振動板10及び圧電素子20を有している。圧電素子20は、振動板10上に設けられている。静電容量測定部52は、圧電素子20の静電容量を測定する。温度算出部54は、静電容量を温度に変換する変換データ、及び静電容量測定部52が測定した静電容量を用いて、圧電素子20の温度を算出する。本実施形態において変換データは、変換データ記憶部56が記憶している。制御部50は、温度算出部54が算出した温度に基づいて電子機器の動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を振動源とした発振装置を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子を利用した発振装置は、例えばスピーカや、超音波センサの発振源として使用されている。この発振装置は、磁石を用いて振動板を振動させる動電型のスピーカと比較して、小型化しやすい、という利点がある。
【0003】
なお、特許文献1には、発音体に圧電素子を用いたアラーム電子時計において、圧電体の発振周波数に基づいて温度を検出することが記載されている。
【0004】
また特許文献2及び特許文献3には、高分子簿時中に圧電セラミック粉体を混入した圧電体シートの静電容量を測定し、この測定値を温度に換算することが記載されている。特許文献2において、圧電体シートは圧力を測定する機能を有している。そして換算された温度は、圧力の測定値を補正するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60−191993号公報
【特許文献2】特開2002−16301号公報
【特許文献3】特開2002−111087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
携帯型の電子機器は、高機能化に伴って実装部品の密度が大きくなっている。これにともない、電子機器の内部が高温化する可能性が出てきた。このため、本発明者は、電子機器の内部の温度に基づいて電子機器の動作を制御する必要があると考えた。しかし、電子機器の内部に温度センサを設けると、その分電子機器が大型化してしまう。
【0007】
本発明の目的は、電子機器の内部の温度に基づいて電子機器を制御することができ、かつ電子機器の大型化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、電子機器であって、
振動部材と、前記振動部材上に設けられた圧電素子とを有する発振装置と、
前記圧電素子の静電容量を測定する静電容量測定手段と、
前記静電容量を温度に変換する変換データ、及び前記静電容量測定手段が測定した前記静電容量を用いて、前記圧電素子の温度を算出する温度算出手段と、
前記温度算出手段の算出結果に基づいて、前記電子機器の動作を制御する制御手段と、
を備える電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子機器の内部の温度に基づいて電子機器を制御することができ、かつ電子機器の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。
【図2】変換データ記憶部56が記憶しているデータの一例を説明するための図である。
【図3】第2の実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。この電子機器は、発振装置、静電容量測定部52、温度算出部54、及び制御部50を有している。発振装置は、振動板10及び圧電素子20を有している。圧電素子20は、振動板10上に設けられている。静電容量測定部52は、圧電素子20の静電容量を測定する。温度算出部54は、静電容量を温度に変換する変換データ、及び静電容量測定部52が測定した静電容量を用いて、圧電素子20の温度を算出する。本実施形態において変換データは、変換データ記憶部56が記憶している。制御部50は、温度算出部54が算出した温度に基づいて電子機器の動作を制御する。ここで行う動作の制御の一例は、電子機器のある機能をオフすることである。以下、詳細に説明する。
【0013】
振動部材10はシート状であり、圧電素子20から発生した振動によって振動する。また振動部材10は、圧電素子20の基本共振周波数を調整する。機械振動子の基本共振周波数は、負荷重量と、コンプライアンスに依存する。コンプライアンスは振動子の機械剛性であるため、振動部材10の剛性を制御することで、圧電素子20の基本共振周波数を制御できる。振動部材10を構成する材料は、金属や樹脂など、脆性材料である圧電素子20に対して高い弾性率を持つ材料であれば特に限定されないが、加工性やコストの観点からリン青銅やステンレスなどが好ましい。
【0014】
圧電素子20は、PZTなどの圧電セラミックスにより形成されている。ただし、圧電素子20は、圧電特性を示す高分子材料、例えばポリフッ化ビニリデンにより形成されていてもよい。
【0015】
制御部50は、外部から入力された音声信号に基づいて駆動信号を生成し、生成した駆動信号を圧電素子20に入力する。発振装置を、可聴音を直接出力するスピーカとして機能させる場合、制御部50は音声信号を増幅することにより駆動信号を生成する。また発振装置をパラメトリックスピーカとして機能させる場合、制御部50は、外部から入力された音声データ(原信号)を変調してパラメトリックスピーカ用の変調データを生成し、このデータに基づいて駆動信号を生成する。この駆動信号の周波数は、振動部材10及び圧電素子20のn次の共振周波数である。
【0016】
また制御部50は、発振装置を駆動させている間に温度算出部54が算出した温度が基準値以上になったとき、発振装置をシャットダウンする。この基準値は、例えば圧電素子20を構成する物質のキュリー点未満に設定される。
【0017】
本実施形態において、発振装置は支持部材40を有している。支持部材40は、筒形状を有しており、例えば樹脂または金属により形成されている。直筒の断面形状は、円形であってもよいし、多角形であっても良い。支持部材40は、振動部材10の縁を保持している。
【0018】
図2は、変換データ記憶部56が記憶しているデータの一例を説明するための図である。圧電素子は、一般に、温度が高くなるにつれて静電容量が増加する。このため、圧電素子20における静電容量と温度の相関を予め測定しておき、測定結果に基づいて静電容量を温度に変換する式を定めておき、この式を変換データ記憶部56に記憶させておくと、温度算出部54は、静電容量測定部52の測定結果を容易に圧電素子20の温度に変換することができる。
【0019】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。圧電素子20が駆動している間、圧電素子20は発熱する。そして圧電素子20の温度が高くなると、圧電素子20の発振特性は変化してしまう。これに対して本実施形態では、制御部50は、温度算出部54の算出結果に基づいて発振装置を制御する。このため、制御部50は、圧電素子20の発振特性が変化しない範囲で圧電素子20を駆動させることができる。
【0020】
また本実施形態では、発振装置を駆動させている間に温度算出部54が算出した温度が基準値以上になったとき、発振装置をシャットダウンする。圧電素子20の温度が圧電素子20を構成する物質のキュリー点を越えると、圧電素子20の分極が消極してしまう。これに対して上記した基準値を、圧電素子20を構成する物質のキュリー点未満に設定すると、圧電素子20が消極することを抑制できる。
【0021】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。本実施形態に係る電子機器は、以下の点を除いて、第1の実施形態に係る電子機器と同様の構成である。
【0022】
まず、発振装置の支持部材40の上端面は、電子機器の筐体60の内壁に取り付けられる。筐体60には、音孔62が設けられている。そして支持部材40は、平面視で音孔62を内側に含んでいる。このため、音孔62は振動部材10及び圧電素子20と対向し、振動部材10及び圧電素子20が発振した音波は、音孔62を介して筐体60の外部に放射される。
【0023】
また筐体60内には、複数の電子部品70が設けられている。電子部品70は半導体パッケージやディスクリート部品であり、動作中に発熱する。電子部品70は、例えばプリント配線基板72上に設けられているが、筐体60の内壁上に直接取り付けられても良い。
【0024】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また筐体60内には、発振装置以外の電子部品70が設けられている。このため、発振装置が動作していなくても、電子部品70からの発熱によって、圧電素子20の温度が上昇しすぎる可能性がある。
【0025】
これに対して本実施形態では、発振装置を駆動させていない間に温度算出部54が算出した温度が基準値以上になったとき、電子部品70への入力を、低消費電力となるモードに制御することにより、電子部品70からの発熱を抑制する。このため、上記した基準値を、圧電素子20を構成する物質のキュリー点未満に設定すると、発振装置が動作していない間に圧電素子20が消極することを抑制できる。
【0026】
また、電子部品70が圧電素子20のキュリー点未満の温度で信頼性が低下する場合、上記した基準値を、電子部品70の信頼性が確保できる温度未満の値に設定しても良い。この場合、圧電素子20が消極することを抑制できるとともに、他の電子部品70の信頼性が低下することも抑制できる。
【0027】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0028】
10 振動部材
20 圧電素子
40 支持部材
50 制御部
52 静電容量測定部
54 温度算出部
56 変換データ記憶部
60 筐体
62 音孔
70 電子部品
72 プリント配線基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
振動部材と、前記振動部材上に設けられた圧電素子とを有する発振装置と、
前記圧電素子の静電容量を測定する静電容量測定手段と、
前記静電容量を温度に変換する変換データ、及び前記静電容量測定手段が測定した前記静電容量を用いて、前記圧電素子の温度を算出する温度算出手段と、
前記温度算出手段の算出結果に基づいて、前記電子機器の動作を制御する制御手段と、
を備える電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記制御手段は、前記温度が基準値以上になったときに、前記発振装置をシャットダウンする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器において、
前記基準値は、前記圧電素子を構成する物質のキュリー点未満である電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器において、
前記発振装置は筐体内に配置されており、
前記筐体内に配置され、発熱する電子部品をさらに備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−217012(P2012−217012A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80963(P2011−80963)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】