説明

電子機器

【課題】 従来の電子機器は、電子機器に装着されたアクセサリの盗難を防止することができなかった。
【解決手段】 デジタルカメラ1の盗難を防止する盗難防止モードがS1において設定された状態で、距離算出部によって所定値以上の距離が算出されて、GPSモジュール33により測位されるデジタルカメラ1の筐体1aのB地点の位置が、A地点のその初期位置からXメートル以上離れたことがS5において検出されると、CPU13は、S10においてプッシュ型ソレノイド48の作動状態を制御して、S11においてロック機構を働かせ、交換レンズ取り外しボタン43を操作できなくする。このため、デジタルカメラ1が持ち去られようとされていることが判明すると、交換レンズ2は、ロック機構によってデジタルカメラ1の筐体1aから取り外せなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位衛星から測位信号を受信して位置を測位する測位部を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような電子機器としては、例えば、特許文献1に開示されたデジタルカメラがある。このデジタルカメラには、GPS(Global Positioning System)受信装置が備えられている。GPS受信装置は、衛星から発信されるGPS電波を受信してデジタルカメラの測位を行い、位置情報信号を連続的に位置判定装置へ送出する。位置判定装置は、位置情報信号を受信してデジタルカメラが所定の領域内に存在するか否かを判定し、デジタルカメラが所定の領域外に存在すると判定すると、警報装置へ盗難信号を出力する。警報装置は、盗難信号を受信すると警報を発生し、デジタルカメラの盗難を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−155878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の電子機器は、電子機器そのものの盗難を防止することはできるが、電子機器に装着されたアクセサリが電子機器から取り外されて所定の領域外に持ち去られた場合には、電子機器が所定の領域内に存在するため、警報装置から警報が発せられない。このため、上記従来の電子機器は、電子機器に装着されたアクセサリの盗難を防止することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
測位衛星(52)から測位信号(53)を受信して筐体(1a)の位置を測位する筐体(1a)に備えられた測位部(33)と、
測位部(33)により測位される筐体(1a)の位置および筐体(1a)の初期位置間の距離を算出する距離算出部(13)と、
筐体(1a)に着脱自在に取り付けられるアクセサリ(2)をアクチュエータ(48)の作動状態によって筐体(1a)から取り外せなくするロック機構(42,43,44,48)と、
盗難を防止する盗難防止モードを設定する設定部(27,28)と、
設定部(27,28)によって盗難防止モードが設定された状態で距離算出部(13)によって所定値以上の距離が算出されるとアクチュエータ(48)の作動状態を制御してアクセサリ(2)を筐体(1a)から取り外せなくする制御部(13)と
を備えた、電子機器(1)を構成した。
【0006】
この構成によれば、設定部(27,28)によって電子機器(1)の盗難を防止する盗難防止モードが設定された状態で、距離算出部(13)によって所定値以上の距離が算出されて、測位部(33)により測位される電子機器(1)の筐体(1a)の位置(B地点)がその初期位置(A地点)から所定距離以上離れたことが検出されると、制御部(13)によってアクチュエータ(48)の作動状態が制御されて、ロック機構(42,43,44,48)が働かせられる。このため、測位部(33)により測位される筐体(1a)の位置(B地点)がその初期位置(A地点)から所定距離以上離れたことが検出されて、電子機器(1)が持ち去られようとされていることが判明すると、電子機器(1)の筐体(1a)に着脱自在に取り付けられたアクセサリ(2)は、ロック機構(42,43,44,48)によって電子機器(1)の筐体(1a)から取り外せなくなる。従って、電子機器(1)の筐体(1a)に取り付けられたアクセサリ(2)が取り外されて持ち去られてしまうことを防止することができる。
【0007】
また、本発明は、ロック機構(42,43,44,48)が、
筐体(1a)に取り付けられたアクセサリ(2)と係合することで、アクセサリ(2)を筐体(1a)から取り外せなくする係合部(42)と、
係合部(42)に連結され、操作されると係合部(42)を連動させてアクセサリ(2)と係合部(42)との係合を解く取り外し部(43)と、
アクチュエータ(48)の作動状態によって取り外し部(43)と係合して取り外し部(43)の操作を行えなくするストッパー(46)と
から構成されることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、電子機器(1)の筐体(1a)に取り付けられたアクセサリ(2)と係合部(42)とが係合することでロック機構(42,43,44,48)が働き、取り外し部(43)が操作されて係合部(42)が取り外し部(43)に連動することで、アクセサリ(2)と係合部(42)との係合が解かれてロック機構(42,43,44,48)が解除される。また、制御部(13)によってアクチュエータ(48)の作動状態が制御されてストッパー(46)が働くと、取り外し部(43)を操作してもアクセサリ(2)と係合部(42)との係合を解くことができなくなり、ロック機構(42,43,44,48)が解除できなくなる。
【0009】
また、本発明は、制御部(13)が、電子機器(1)の使用状態を検出するとアクチュエータ(48)の作動状態を制御してロック機構(42,43,44,48)によりアクセサリ(2)を筐体(1a)から取り外せなくすることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、電子機器(1)の使用状態が検出されると、制御部(13)によってアクチュエータ(48)の作動状態が制御されてロック機構(42,43,44,48)が働かせられ、アクセサリ(2)が筐体(1a)から取り外せなくなる。このため、電子機器(1)の筐体(1a)に着脱自在に取り付けられたアクセサリ(2)は、測位部(33)により測位される筐体(1a)の位置(B地点)がその初期位置(A地点)から所定距離以上離れたことが検出されなくても、電子機器(1)の使用状態が検出された時点から、ロック機構(42,43,44,48)によって電子機器(1)の筐体(1a)から取り外せなくなる。従って、電子機器(1)の筐体(1a)に取り付けられたアクセサリ(2)が電子機器(1)の使用中に取り外されて持ち去られてしまうことを防止することができる。
【0011】
また、本発明は、筐体(1a)外へ出音する出音部(30)と、
設定部(27,28)によって盗難防止モードが設定された状態で距離算出部(13)によって所定値以上の距離が算出されると出音部(30)から警告音を出音させる出音制御部(13)と
を備えることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、設定部(27,28)によって盗難防止モードが設定された状態で距離算出部(13)によって所定値以上の距離が算出されると、出音制御部(13)によって出音部(30)から警告音が出音される。このため、出音部(30)から出音される警告音によって、盗難者に電子機器(1)の盗難を諦めさせることができる。
【0013】
また、本発明は、ロック解除暗号を入力する解除暗号入力部(27,28)と、
解除暗号入力部(27,28)により入力されたロック解除暗号が予め設定された設定解除暗号と一致するか否かを判定する解除暗号判定部(13)とを備え、
制御部(13)が、解除暗号判定部(13)によってロック解除暗号が設定解除暗号と一致すると判定された場合にアクチュエータ(48)の作動状態を制御してロック機構(42,43,44,48)を解除し、アクセサリ(2)を筐体(1a)から取り外せる状態にすることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、解除暗号入力部(27,28)により入力されたロック解除暗号が解除暗号判定部(13)によって設定解除暗号と一致すると判定された場合、制御部(13)によってアクチュエータ(48)の作動状態が制御されてロック機構(42,43,44,48)が解除され、アクセサリ(2)が電子機器(1)の筐体(1a)から取り外せる状態になる。このため、解除暗号入力部(27,28)で入力するロック解除暗号を予め設定された設定解除暗号と一致させない限り、アクセサリ(2)を筐体(1a)から取り外すことができない。従って、ロック機構(42,43,44,48)の解除はロック解除暗号を知っている特定の者(51)のみが行え、ロック解除暗号を知らない第三者(55)により、電子機器(1)の筐体(1a)に取り付けられたアクセサリ(2)が取り外されて持ち去られてしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による電子機器によれば、上記のように、電子機器の筐体に取り付けられたアクセサリが取り外されて持ち去られてしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態によるデジタルカメラの外観を示す側面図である。
【図2】交換レンズが取り付けられていない状態の、図1に示すデジタルカメラの筐体の正面図である。
【図3】(a)は図2に示すデジタルカメラの筐体を破線Aに沿って破断した一部断面図、(b)は交換レンズ取り外しボタンを押し込んで交換レンズのロック状態を解除した際の一部断面図、(c)は交換レンズ取り外しボタンを押し込んでも交換レンズを取り外せないロック状態がかかった際の一部断面図である。
【図4】図1に示すデジタルカメラの電気回路構成の概略を示すブロック図である。
【図5】図1に示すデジタルカメラの筐体の背面図である。
【図6】図1に示すカメラ本体に備えられたCPUによって行われる盗難防止制御処理の概略を示すフローチャートである。
【図7】(a)は図1に示すデジタルカメラを三脚に設置した際のシチュエーション図、(b)は(a)のシチュエーションでタイマーを用いた自己撮影をする際、または第三者に自己の撮影を依頼する際のシチュエーション図である。
【図8】図1に示すデジタルカメラの盗難防止モードが作動した際のシチュエーション図である。
【図9】図1に示すデジタルカメラの筐体から第三者により交換レンズが取り外されて持ち去られてしまうことが無いことを説明するシチュエーション図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明による電子機器をデジタルカメラに適用した場合における、本発明を実施するための形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態によるデジタルカメラ1の外観を示す側面図である。
【0019】
デジタルカメラ1は、カメラ本体を構成する筐体1aと、筐体1aの正面に着脱に装着される交換可能な交換レンズ2とから構成される。
【0020】
図2は、交換レンズ2が取り付けられていない状態の、図1に示すデジタルカメラ1の筐体1aの正面図である。
【0021】
筐体1aの正面から見て左側には、撮影時に撮影者によって握られるグリップ部3が設けられている。このグリップ部3の上面には、シャッターボタン16が設けられている。シャッターボタン16の周囲には、回転操作されると筐体1a内部の各回路に動作電源を供給させる電源ボタン4が設けられている。また、筐体1aの正面中央部に開口した空洞40の周囲には、交換レンズ2を筐体1aに取り付けるマウントリング41が設けられている。マウントリング41の右方の表面からは、筐体1aに取り付けられた交換レンズ2と係合するロックピン42が突出している。また、ロックピン42の隣の筐体1a前面には、交換レンズ2を筐体1aから取り外す際に押下操作される交換レンズ取り外しボタン43が設けられている。
【0022】
ロックピン42は、マウントリング41に交換レンズ2の後端部が差し込まれると、交換レンズ2のマウントリング41と対向する面に押されて筐体1aの内方に押し込まれる。この状態で交換レンズ2を所定の方向に回転させると、交換レンズ2の後端部外周に切られた雄ネジがマウントリング41の内周縁部に切られた雌ネジと螺合し、バヨネット機構を構成する爪の噛み合わせによって交換レンズ2が筐体1aに取り付けられて固定される。
【0023】
図3(a)は、図2に示すデジタルカメラ1の筐体1aを破線Aに沿って破断した一部断面図である。
【0024】
ロックピン42の一端側に備えられたスライド軸42aの周囲には、コイルバネ42bが設けられている。交換レンズ2が回転させられて筐体1aに取り付けられると、交換レンズ2に押されて筐体1a内方に押し込まれていたロックピン42は、交換レンズ2のマウントリング41と対向する面に設けられた溝2a(同図(b)参照)と位置が合い、コイルバネ42bの付勢力によって筐体1a外方に突出し、溝2aと係合して交換レンズ2を回転不能なロック状態にする。ロックピン42は、筐体1aに取り付けられたアクセサリ、本実施形態では交換レンズ2の溝2aと係合することで、交換レンズ2を筐体1aから取り外せなくする係合部を構成している。
【0025】
同図(b)は、交換レンズ取り外しボタン43を押し込んで交換レンズ2のロック状態を解除した際の断面図である。
【0026】
ロックピン42と交換レンズ取り外しボタン43とは、連結板44によって互いに連結されている。交換レンズ取り外しボタン43の一端側に備えられたスライド軸43aの周囲には、コイルバネ43bが設けられている。交換レンズ取り外しボタン43がコイルバネ43bの付勢力に抗して筐体1aの内方、すなわち同図(b)に示す矢印45の方向に押し込まれると、連結板44によってロックピン42も連動し、ロックピン42がコイルバネ42bの付勢力に抗して筐体1aの内方に移動する。これにより、ロックピン42と溝2aとの係合が解除され、交換レンズ2が回転可能となって取り外せるようになる。交換レンズ取り外しボタン43は、連結板44によってロックピン42に連結され、押し込み操作されるとロックピン42を連動させて交換レンズ2とロックピン42との係合を解く取り外し部を構成している。
【0027】
また、筐体1aの内部には、鉄心46およびコイル47から構成されるプッシュ型ソレノイド48が、アクチュエータとして備えられている。鉄心46は、先端が二股に分かれており、コイル47に通電されると、同図(c)に示すようにコイル47から突出する向きにスライドし、スライド軸43aが細く形成された細径部43cに先端が嵌合する。細径部43cに鉄心46の先端が嵌合すると、交換レンズ取り外しボタン43が動かなくなり、コイルバネ43bの付勢力に抗して筐体1aの内方に押し込めなくなる。このため、連結されたロックピン42をコイルバネ42bの付勢力に抗して筐体1aの内方に移動させることができなくなり、ロックピン42は溝2aと係合したロック状態に保たれる。鉄心46は、プッシュ型ソレノイド48の作動状態、本実施形態ではプッシュ型ソレノイド48へ通電が行われた動作状態によって交換レンズ取り外しボタン43と係合して、交換レンズ取り外しボタン43の押し込み操作を行えなくするストッパーを構成している。ロックピン42、交換レンズ取り外しボタン43、連結板44、およびプッシュ型ソレノイド48は、筐体1aに着脱自在に取り付けられる交換レンズ2をプッシュ型ソレノイド48の作動状態によって筐体1aから取り外せなくするロック機構を構成している。
【0028】
本実施形態によるデジタルカメラ1では、デジタルカメラ1の筐体1aに取り付けられた交換レンズ2の溝2aにロックピン42が係合することでロック機構が働き、交換レンズ取り外しボタン43が押し込み操作されてロックピン42が交換レンズ取り外しボタン43に連動することで、交換レンズ2の溝2aとロックピン42との係合が解かれてロック機構が解除される。また、CPU13によってプッシュ型ソレノイド48の作動状態が動作状態に制御されて鉄心46の先端が細径部43cに嵌合すると、交換レンズ取り外しボタン43を操作しても交換レンズ2の溝2aとロックピン42との係合を解くことができなくなり、ロック機構が解除できなくなる。
【0029】
図4は、デジタルカメラ1の電気回路構成の概略を示すブロック図である。
【0030】
交換レンズ2および撮像素子11は撮像系12を構成しており、交換レンズ2を介して筐体1a内に導かれた被写体光は、撮像素子11の受光面上に被写体像を投影する。同図では交換レンズ2を単レンズとして図示しているが、交換レンズ2は、ズームレンズ、フォーカシングレンズ、ぶれ補正レンズを含む複数のレンズ群から成り、撮像素子11に被写体像を結像する光学系を構成する。ズームレンズ、フォーカシングレンズ、およびぶれ補正レンズは、CPU(Central Processing Unit)13の制御により、不図示のズームレンズ駆動部,フォーカシングレンズ駆動部、およびぶれ補正レンズ駆動部がそれぞれ駆動されることで、移動する。ズームレンズが光軸方向に移動すると、撮像素子11の受光面上に投影される被写体像は拡大または縮小され、光学ズームの拡大倍率が調節される。また、フォーカシングレンズが光軸方向に移動すると、撮像素子11の受光面上に投影される被写体像のピントが調節される。また、ぶれ補正レンズが筐体1aの手ぶれ方向と逆の方向に移動すると、撮像素子11の受光面上に導かれる光の屈折方向が手ぶれを打ち消す方向に変化し、受光面上に投影される被写体像のぶれが補正される。ズームレンズ、フォーカシングレンズ、およびぶれ補正レンズの各レンズ位置は、それぞれ、不図示のズームレンズ位置検出センサ、フォーカシングレンズ位置検出センサ、およびぶれ補正レンズ位置検出センサにより検出され、検出された信号はCPU13に出力される。
【0031】
撮像素子11は、受光面に受光素子が二次元配列されたCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどからなり、画像を撮像する撮像手段を構成している。CPU13は、バス14にキー入力装置15を介して接続されたシャッターボタン16が全押しされて、撮像開始を指示する全押し操作信号が入力されると、予め設定されたシャッタースピードでシャッターを開き、被写体像を所定時間つまり露光時間撮像素子11に露光させて被写体像の撮像を行わせる。
【0032】
撮像素子11によって撮像された被写体像はアナログ画像信号に変換され、変換されたアナログ画像信号は、信号処理回路(AFE回路)17において、相関二重サンプリングやゲイン調整が行われてデジタル信号に変換され、不図示の画像処理回路に出力される。画像処理回路は、信号処理回路17で変換されたデジタル信号を取得すると、色補間処理や、階調変換処理、輪郭強調処理、ホワイトバランス調整処理などの各種の画像処理を行って画像データを生成する。生成された画像データは、画像データを所定の比率で圧縮するバス14に接続されたJPEGコーデック18によって圧縮処理が施され、バス14を介してSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)コントローラ19の制御により、一旦SDRAM20に格納される。
【0033】
バス14に接続されたI/F(インターフェイス)部21は、不図示のコネクタを有し、該コネクタに記録媒体22が接続される。I/F部21は、接続された記録媒体22に対する画像データの書込や、記録媒体22からの画像データの読み込みを行う。SDRAM20に格納された画像データは、バス14およびI/F部21を介して記録媒体22に記録される。記録媒体22は、半導体メモリを内蔵した、筐体1aに着脱自在なメモリカード、またはハードディスクドライブなどで構成される。
【0034】
また、バス14には、フラッシュメモリ23が接続されている。フラッシュメモリ23は、データの読み書きが電気的に可能なEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などからなる。フラッシュメモリ23には、CPU13が種々の処理を行う際の制御プログラムであるファームウェアや、筐体1aの背面に設けられたLCD24に表示されるメニュー画面におけるメニュー項目の内容、種々の案内メッセージ等が記憶されている。LCD24は、TFT(Thin Film Transistor)液晶などからなり、オンスクリーン用表示メモリ25および表示バッファ26を介してバス14に接続されている。LCD24に表示される画像は、オンスクリーン用表示メモリ25に記憶され、表示バッファ26に読み出されてLCD24に表示される。LCD24には、撮影に関する種々の情報や、上記のメニュー画面、構図を確認するためのスルー画像などが表示される。スルー画像は、撮像系12から信号処理回路17を経て得られる画像データが表示バッファ26を経てLCD24に表示される画像である。スルー画像がLCD24に表示された状態でシャッターボタン16が操作されると、LCD24によってその時点で表示されているスルー画像が撮像されて記録媒体22に記録される。
【0035】
また、バス14には、キー入力装置15を介して、筐体1aの背面に設けられた方向キー27および決定ボタン28が接続されている。方向キー27は、LCD24に表示されたメニュー画面などにおいて、撮影者が設定したい項目を選択する際に、上下左右の各方向に押下操作される。決定ボタン28は、方向キー27を操作して選択した項目を決定する際に、押下操作される。キー入力装置15は、上述したシャッターボタン16や、方向キー27、決定ボタン28の各操作に応じた操作信号を、バス14を介してCPU13へ送出する。また、バス14には、音声出力I/F29を介してスピーカ30が接続されている。スピーカ30は、筐体1aの外へ出音する出音部を構成する。また、撮影時に発光して被写体を照明するフラッシュ31、カメラ本体と外部機器との間で無線により通信を行う無線LAN32が接続されている。
【0036】
また、バス14にはGPSモジュール33が接続されている。GPSモジュール33は、測位衛星であるGPS衛星から送られる航法電波を受信するGPSアンテナと、GPSアンテナで受信した航法電波に含まれる測位情報を復調及び解読して現在位置の緯度及び経度の割り出しに不可欠な測地系に関するデータを記憶するメモリと、GPS衛星から送られてくる航法電波の受信タイミングを決定するために現地時刻を高精度でカウントする時計発生回路などを備えている。GPSモジュール33は、測位衛星から測位信号を受信して筐体1aの位置を測位する、筐体1aに備えられた測位部を構成している。GPSモジュール33およびGPS衛星は、内部にセシウムなどの原子発振器からなる高精度な時計を内蔵している。GPSモジュール33は、GPS(汎地球測位システム)により筐体1aの現在位置を測位するものであり、例えば4個の各GPS衛星から地上に無線送信される航法電波を受信して、その電波送信時刻と地球周回の軌道情報とを得る。CPU13は、受信した各航法電波がGPSモジュール33に到達するのに要した到達時間をGPSモジュール33内の時計によって測定し、各GPS衛星と筐体1aとの距離を算出する。筐体1aの現在位置はGPS衛星を中心とする球面のいずれかに存在するため、CPU13は、各GPS衛星を中心とする球面同士の交点を算出し、筐体1aの位置情報を3次元座標で算出する。CPU13によって算出された筐体1aの位置情報は、バス14およびSDRAMコントローラ19を介してSDRAM20に格納される。
【0037】
LCD24に表示されたメニュー画面において、方向キー27を操作してデジタルカメラ1の盗難を防止する盗難防止モードを選択し、決定ボタン28を操作すると、CPU13によって盗難防止モードが設定される。方向キー27および決定ボタン28は、デジタルカメラ1の盗難を防止する盗難防止モードを設定する設定部を構成している。CPU13は、距離算出部を構成しており、盗難防止モードが設定されると、GPSモジュール33により測位される筐体1aの位置、および盗難防止モードが設定された時点における筐体1aの初期位置間の距離を算出する。CPU13は、距離算出部によって所定値以上の距離が算出されると、コイル47に通電して鉄心46をスライドさせ、鉄心46の先端を細径部43cに嵌合させて、交換レンズ取り外しボタン43を筐体1aの内方に押し込めなくする。すなわち、CPU13は、設定部によって盗難防止モードが設定された状態で距離算出部によって所定値以上の距離が算出されると、プッシュ型ソレノイド48の作動状態を動作状態に制御して、交換レンズ2を筐体1aから取り外せなくする制御部を構成している。また、CPU13は、出音制御部を構成しており、設定部によって盗難防止モードが設定された状態で距離算出部によって所定値以上の距離が算出されると、スピーカ30から警告音を出音させる。
【0038】
図5は、図1に示す筐体1aの背面図である。
【0039】
筐体1aの背面に設けられたLCD24の右側には、撮影画像を拡大、縮小表示させる際などに操作されるズームボタン5が配置され、ズームボタン5の下方には、方向キー27および決定ボタン28が配置されている。CPU13は、細径部43cに鉄心46の先端が嵌合して交換レンズ取り外しボタン43を操作できないロック状態にすると共に、スピーカ30から警告音を出音させると、同図に示すように、LCD24にパスワード入力を促す画面を表示させる。パスワードは、ロック機構による交換レンズ取り外しボタン43のロック状態を解除するロック解除暗号であり、LCD24に表示された数字列24aのいずれかの数字を方向キー27の左右操作によって選択し、決定ボタン28を押下操作することによって入力される。方向キー27および決定ボタン28は、ロック解除暗号を入力する解除暗号入力部を構成している。CPU13は、解除暗号判定部を構成しており、解除暗号入力部により入力された例えば6桁の数字の組み合わせからなるパスワード、すなわちロック解除暗号が、予め設定された設定解除暗号と一致するか否かを判定する。また、制御部を構成するCPU13は、解除暗号判定部によってロック解除暗号が設定解除暗号と一致すると判定された場合に、コイル47への通電を停止して鉄心46の先端を細径部43cから引き抜き、プッシュ型ソレノイド48の作動状態を非動作状態に制御することによってロック機構を解除し、交換レンズ2を筐体1aから取り外せる状態にする。
【0040】
次に、図6に示すフローチャートを参照して、筐体1aに備えられたCPU13によって行われる盗難防止制御処理について説明する。
【0041】
図7(a)に示すデジタルカメラ1の所有者51は、デジタルカメラ1を三脚54に設置して、同図(b)に示すように、タイマーを用いた自己撮影をする際や、第三者55に自己の撮影を依頼する際など、所有者51がデジタルカメラ1から離れる場合、メニュー画面において盗難防止モードを設定する操作を行う。CPU13は、この操作がなされると、図6,S1において、盗難防止モードを設定する。次に、CPU13は、S2において、GPSモジュール33が受信したGPS衛星52からの電波53に基づく、デジタルカメラ1の現在位置の計測を開始する。そして、S3において、盗難防止モード設定された時点で測位したA地点の位置座標を初期位置としてSDRAM20に記憶する。なお、図7においては、図の簡略化のためにGPS衛星52を1個のみ図示している。また、初期位置は、測位した位置情報が例えば5分間変化しない位置などとしてもよい。次に、CPU13は、S4において、デジタルカメラ1の現在位置をB地点として計測し、盗難防止モードが設定された後の時点で測位したB地点の位置座標をSDRAM20に記憶する。次に、CPU13は、S5において、SDRAM20を参照してA地点とB地点との間の距離を算出し、B地点がA地点からXメートル以内の範囲にあるか否かを判定する。B地点がA地点からXメートル以内の範囲にあり、S5の判定結果が“Yes”であった場合、CPU13は、S6においてセルフタイマーを起動させ、セルフタイマー時間の経過後、S7においてシャッターボタン16を自動押圧させる。そして、S8において、撮影された画像を記録媒体22に記録して、処理を終了する。
【0042】
また、図8に示すように、第三者55によってデジタルカメラ1が持ち去られようとしてB地点がA地点からXメートル以上離れ、S5の判定結果が“No”であった場合、CPU13は、S9において、スピーカ30から警告音を出力させる。なお、図8において図7と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。次に、CPU13は、S10において、プッシュ型ソレノイド48のコイル47に電流を流すことで、続くS11において、鉄心46を突出させ、鉄心46の先端を細径部43cに嵌合させて交換レンズ取り外しボタン43をロック状態にする。
【0043】
次に、CPU13は、S12において、解除パスワードの入力を促す図5に示す画面をLCD24に表示させ、S13において、入力されたパスワードと予め設定されたパスワードとが一致したか否かを、判定する。S13の判定結果が“No”であった場合、CPU13は、処理をS9に戻す。一方、入力されたパスワードと予め設定されたパスワードとが一致して、S13の判定結果が“Yes”であった場合、CPU13は、S14において、スピーカ30から出力させている警告音を停止させ、S15において、プッシュ型ソレノイド48のコイル47への通電を停止して鉄心46を引き込み、鉄心46の先端を細径部43cから引き抜いて、交換レンズ取り外しボタン43のロック状態を解除し、盗難防止制御処理を終了する。
【0044】
このような本実施形態のデジタルカメラ1によれば、方向キー27および決定ボタン28によってデジタルカメラ1の盗難を防止する盗難防止モードが図6,S1において設定された状態で、距離算出部によって所定値以上の距離が算出されて、GPSモジュール33により測位されるデジタルカメラ1の筐体1aのB地点の位置が、A地点のその初期位置からXメートル以上離れたことがS5において検出されると、CPU13によってプッシュ型ソレノイド48の作動状態がS10において動作状態に制御されて、ロック機構がS11において働かせられる。このため、GPSモジュール33により測位される筐体1aのB地点の位置がその初期のA地点の位置からXメートル以上離れたことが検出されて、デジタルカメラ1が持ち去られようとされていることが判明すると、デジタルカメラ1の筐体1aに着脱自在に取り付けられた交換レンズ2は、ロック機構によってデジタルカメラ1の筐体1aから取り外せなくなる。従って、デジタルカメラ1の筐体1aに取り付けられた、軽量で持ち運び易くて筐体1aよりも遥かに高価なこともある交換レンズ2が、図9に示すように第三者55により取り外されて持ち去られてしまうことを防止することができる。なお、同図において図7と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0045】
また、本実施形態によるデジタルカメラ1によれば、S1において盗難防止モードが設定された状態で、距離算出部によってXメートル以上の距離が算出されたのがS5で判別されると、出音制御部によってスピーカ30から警告音がS9で出音される。このため、スピーカ30から出音される警告音によって、盗難者である第三者55にデジタルカメラ1の盗難を諦めさせることができる。
【0046】
また、本実施形態によるデジタルカメラ1によれば、S13において、方向キー27および決定ボタン28により入力されたパスワードが解除暗号判定部によって予め設定されたパスワードと一致すると判定された場合、CPU13によってプッシュ型ソレノイド48の作動状態が非動作状態に制御されてロック機構が解除され、交換レンズ2がデジタルカメラ1の筐体1aから取り外せる状態になる。このため、方向キー27および決定ボタン28で入力するパスワードを予め設定されたパスワードと一致させない限り、交換レンズ2を筐体1aから取り外すことができない。従って、ロック機構の解除はパスワードを知っている特定の者のみが行え、図9に示すように、パスワードを知らない第三者55により、デジタルカメラ1の筐体1aに取り付けられた交換レンズ2が取り外されて持ち去られてしまうことを防止することができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、プッシュ型ソレノイド48のコイル47への通電時に鉄心46を押し出す向きにスライドさせ、鉄心46の先端を細径部43cに嵌合させて交換レンズ取り外しボタン43をロック状態にする構成について説明したが、本発明はこれに限られることはない。例えば、プル型ソレノイドを用いて、コイル47への非通電時に鉄心46を突出させて鉄心46の先端を細径部43cに嵌合させ、コイル47への通電時に鉄心46を引き込む向きにスライドさせて、鉄心46の先端と細径部43cとの嵌合を解く構成にしてもよい。この構成によれば、コイル47に電流を供給できない状態になっても、鉄心46が突出した状態にあって細径部43cと嵌合した状態にあるため、交換レンズ取り外しボタン43を操作しても交換レンズ2とロックピン42との係合を解くことができない盗難防止状態を保つことができる。
【0048】
また、上記実施形態では、交換レンズ取り外しボタン43をロックするためのアクチュエータとしてプッシュ形ソレノイド48を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限られることはない。電気的エネルギを機械的な運動に変換できるアクチュエータであればよく、例えば、ステッピングモータやDCモータなどのモータ軸に固定されたギアと、コイル47の貫通孔に挿入された鉄心46の端部に形成されたラックギアとを組み合わせて、鉄心46をコイル47の貫通孔方向に直動させる構成にしてもよい。また、直動システム小型リニアアクチュエータや、圧電素子アクチュエータなどを用いて、鉄心46をコイル47の貫通孔方向に直動させてもよい。また、マグネットなどを利用した磁気的なロック機構により、交換レンズ取り外しボタン43をロックするようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、図6,S5において、GPSモジュール33により測位される筐体1aのB地点の位置がA地点の初期位置からXメートル以上離れたことが検出されると、S10において、プッシュ型ソレノイド48の作動状態が制御されてロック機構により交換レンズ2が筐体1aから取り外せなくなる場合について説明したが、本発明はこれに限られることはない。例えば、電源ボタン4がオンにされてデジタルカメラ1の使用状態が検出されると、制御部を構成するCPU13によってプッシュ型ソレノイド48の作動状態が制御されて、ロック機構により交換レンズ2が筐体1aから取り外せなくなる構成にしてもよい。
【0050】
この構成のデジタルカメラ1によれば、デジタルカメラ1の筐体1aに着脱自在に取り付けられた交換レンズ2は、GPSモジュール33により測位される筐体1aのB地点の位置がそのA地点の初期位置から所定距離以上離れたことが検出されなくても、デジタルカメラ1の使用状態が検出された時点から、ロック機構によってデジタルカメラ1の筐体1aから取り外せなくなる。従って、このような構成によれば、デジタルカメラ1の筐体1aに取り付けられた交換レンズ2がデジタルカメラ1の使用中に取り外されて持ち去られてしまうことを防止することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、ロックピン42をマウントリング41に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限られることはない。例えば、筐体1aの上部に設けられたアクセサリシューにロックピンを設けてもよい。この構成によれば、アクセサリシューにスライドさせて装着する外部閃光装置や外付けファインダーなどのアクセサリを、アクセサリシューに設けられたロックピンによってロックし、取り外しボタンを操作しても外部閃光装置や外付けファインダーなどをアクセサリシューから取り外せなくすることができる。また、ロックピンを設ける場所は、アクセサリシュー以外の場所であってもよく、三脚やバッテリーパックの蓋などが取り付けられる場所に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
上記の実施形態においては、本発明による電子機器をデジタルカメラに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られることはない。たとえば、周辺機器が着脱自在に接続されるノート型のパーソナルコンピュータに本発明を適用することも可能である。このような電子機器に本発明を適用した場合においても、上記の実施形態と同様の作用効果が奏される。
【符号の説明】
【0053】
1…デジタルカメラ
1a…筐体
2…交換レンズ
13…CPU
20…SDRAM
24…LCD
27…方向キー
28…決定ボタン
30…スピーカ
33…GPSモジュール
42…ロックピン
43…交換レンズ取り外しボタン
46…鉄心
47…コイル
48…プッシュ型ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星から測位信号を受信して筐体の位置を測位する前記筐体に備えられた測位部と、
前記測位部により測位される前記筐体の位置および前記筐体の初期位置間の距離を算出する距離算出部と、
前記筐体に着脱自在に取り付けられるアクセサリをアクチュエータの作動状態によって前記筐体から取り外せなくするロック機構と、
盗難を防止する盗難防止モードを設定する設定部と、
前記設定部によって盗難防止モードが設定された状態で前記距離算出部によって所定値以上の距離が算出されると前記アクチュエータの作動状態を制御して前記アクセサリを前記筐体から取り外せなくする制御部と
を備えた電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記ロック機構は、
前記筐体に取り付けられた前記アクセサリと係合することで、前記アクセサリを前記筐体から取り外せなくする係合部と、
前記係合部に連結され、操作されると前記係合部を連動させて前記アクセサリと前記係合部との係合を解く取り外し部と、
前記アクチュエータの作動状態によって前記取り外し部と係合して前記取り外し部の操作を行えなくするストッパーと
から構成されることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子機器において、
前記制御部は、前記電子機器の使用状態を検出すると前記アクチュエータの作動状態を制御して前記ロック機構により前記アクセサリを前記筐体から取り外せなくすることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記筐体外へ出音する出音部と、
前記設定部によって盗難防止モードが設定された状態で前記距離算出部によって所定値以上の距離が算出されると前記出音部から警告音を出音させる出音制御部とを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子機器において、
ロック解除暗号を入力する解除暗号入力部と、
前記解除暗号入力部により入力されたロック解除暗号が予め設定された設定解除暗号と一致するか否かを判定する解除暗号判定部とを備え、
前記制御部は、前記解除暗号判定部によって前記ロック解除暗号が前記設定解除暗号と一致すると判定された場合に前記アクチュエータの作動状態を制御して前記ロック機構を解除し、前記アクセサリを前記筐体から取り外せる状態にすることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−43045(P2012−43045A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181502(P2010−181502)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】