説明

電子機器

【課題】電子機器の省電力機能を制御する技術を提供する。
【解決手段】操作受付部94はユーザによる操作入力を受け付け、状態制御部120は、操作受付部94が、所定時間、操作入力を受け付けない場合に、動作状態を省電力状態に設定する。しかしながら操作受付部94が操作入力を受け付けない無操作時間が所定時間に到達する前に、音声受付部100が音声入力を受け付けると、操作受付部94が所定時間、操作入力を受け付けなくても、状態制御部120は動作状態を省電力状態に設定しないよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省電力機能を搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型のゲーム機やPDA(Personal Digital Assistant)等の電子機器が普及している。近年では、多くの電子機器が通信機能を搭載し、またスマートフォンのように、携帯電話やPDA等の機能を一つにまとめた多機能型の電子機器も登場している。このような電子機器は大容量のメモリおよび高速プロセッサを搭載しており、ユーザは、参加型のアプリケーションプログラムを電子機器にインストールすることで、他のユーザと一緒にアプリケーションを楽しめるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,558,820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯型の電子機器はバッテリで駆動されるため、無用な電力消費を可能な限り低減できることが好ましい。そのため、一般的に電子機器は省電力機能を搭載して、電子機器がユーザにより操作されない状態が所定時間継続したときに、自律的に省電力状態に遷移するようになっている。しかしながらサスペンド状態に入ると、アプリケーションの実行が中断されるため、アプリケーションによっては、無操作状態が続いた場合であってもサスペンド状態に入ることが好ましくないことがある。
【0005】
そこで本発明は、省電力機能を制御する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電子機器は、ユーザによる操作入力を受け付ける操作受付部と、操作受付部が、第1の所定時間、操作入力を受け付けない場合に、動作状態を省電力状態に設定する状態制御部とを備え、音声入力を受け付ける音声受付部をさらに備える。操作受付部が操作入力を受け付けない無操作時間が第1の所定時間に到達する前に、音声受付部が音声入力を受け付けると、操作受付部が第1の所定時間、操作入力を受け付けなくても、状態制御部は動作状態を省電力状態に設定しない。
【0007】
本発明の別の態様もまた、電子機器である。この電子機器は、動作状態を、通常状態と、通常状態よりも電力消費の少ない省電力状態との間で遷移させる状態制御機能を実行する電力制御アプリケーションと、音声入力を受け付け、音声チャット機能を実行する音声チャットアプリケーションとをインストールする。電力制御アプリケーションは、ユーザからの操作入力がない無操作時間を計測して、無操作時間が所定時間に到達すると、動作状態を通常状態から省電力状態に遷移させるものであって、音声チャットアプリケーションが音声入力を受け付けると、電力制御アプリケーションは、計測した時間をリセットする。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、省電力機能を制御する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例にかかる情報処理システムの構成の一例を示す図である。
【図2】(a)は電子機器の前面を示す図であり、(b)は電子機器の背面を示す図である。
【図3】(a)は電子機器の上面を示す図であり、(b)は電子機器の下面を示す図であり、(c)は電子機器の左側面を示す図である。
【図4】電子機器の回路構成を示す図である。
【図5】本実施例の電力制御を行う電子機器の機能ブロックを示す図である。
【図6】サスペンド状態への遷移処理を示すフローチャートである。
【図7】減光状態への遷移処理を示すフローチャートである。
【図8】図6および図7に示すS100のタイマ処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施例にかかる情報処理システム1の構成の一例を示す。情報処理システム1では、AP(アクセスポイント)2は無線アクセスポイントおよびルータの機能を有し、各電子機器10は、AP2およびモデム(図示せず)などを介してインターネットなどのネットワーク3に接続する。
【0012】
電子機器10は無線通信機能を有し、AP2を介してネットワーク3上のサーバ5に接続して、サーバ5に自身のデータを送信するとともに、サーバ5から他の電子機器10のデータを受信する。電子機器10は、無線LAN(Local Area Network)方式による通信機能を有し、インフラストラクチャモードでサーバ5と通信してもよいが、第3世代移動通信システムなど、携帯電話などで採用される通信方式によりサーバ5と通信してもよい。この場合、電子機器10は、広範囲の通信エリアをもつ基地局を介してサーバ5と通信するため、ユーザは、屋外でも電子機器10を利用できる。情報処理システム1において、ユーザは、自身を識別するユーザアカウントを有し、ユーザアカウントを用いて、サーバ5が提供するネットワークサービスにサインインする。
【0013】
本実施例の電子機器10は、バッテリ駆動される情報端末装置であって、動作状態を、通常(アウェイク)状態と、通常状態よりも電力消費の少ない省電力状態との間で遷移させる機能をもつ。この電力制御機能は、システムソフトウェアに組み込まれる電力制御アプリケーションにより実現され、電力制御アプリケーションは、ユーザからの操作入力がない無操作時間を計測して、無操作時間が所定時間に到達すると、動作状態を通常状態から省電力状態に遷移させる。本実施例では、省電力状態が段階的に用意され、第1の段階は、ディスプレイの輝度値を下げる減光状態であり、第2の段階はサスペンド状態である。
【0014】
本実施例では、複数のユーザが1つのグループを構成して、グループ内で音声チャットを行う。ユーザは、音声チャットをしている間、電子機器10のマイクに向けて話しかけ、またスピーカから出力される他のユーザの音声を聞くのであり、電子機器10に設けられた操作手段を操作する必要はない。そのため、無操作時間が所定時間に到達したときに、電力制御アプリケーションが電子機器10の動作状態をサスペンド状態に設定してしまうと、音声チャットが強制的に中断されることになり、都合が悪い。そこで本実施例では、音声チャットアプリケーションが音声入力を受け付けた場合に、電力制御アプリケーションによる状態遷移を制御する技術を示す。
【0015】
本実施例の電子機器10の外観構成および回路構成を説明する。以下に示す電子機器10は、携帯型のゲーム機であるが、他の種類の携帯型端末装置であってもよい。
【0016】
[前面部の構成]
図2(a)は、電子機器10の前面を示す。電子機器10は、横長の筐体により形成され、ユーザが把持する左右の領域は、円弧状の外郭を有している。電子機器10の前面には、矩形のタッチパネル50が設けられる。タッチパネル50は、表示装置20と、表示装置20の表面を覆う透明な前面タッチパッド21から構成される。表示装置20は有機EL(Electro-Liminescence)パネルであり、画像を表示する。なお表示装置20は液晶パネルなどの表示手段であってもよい。前面タッチパッド21は、同時にタッチされた複数ポイントの検出機能をもつマルチタッチパッドであって、タッチパネル50はマルチタッチスクリーンとして構成される。
【0017】
タッチパネル50の右側には、菱形の頂点にそれぞれ位置する△ボタン22a、○ボタン22b、×ボタン22c、□ボタン22d(以下、総称する場合には「操作ボタン22」とよぶ)が設けられ、タッチパネル50の左側には、上キー23a、左キー23b、下キー23c、右キー23d(以下、総称する場合には「方向キー23」とよぶ)が設けられる。ユーザは方向キー23を操作して、上下左右および斜方の8方向を入力できる。方向キー23の下側には左スティック24aが設けられ、また操作ボタン22の下側には右スティック24bが設けられる。ユーザは左スティック24aまたは右スティック24b(以下、総称する場合には「アナログスティック24」とよぶ)を傾動して、方向および傾動量を入力する。筐体の左右頂部には、Lボタン26a、Rボタン26bが設けられる。操作ボタン22、方向キー23、アナログスティック24、Lボタン26a、Rボタン26bは、ユーザが操作する操作手段を構成する。
【0018】
操作ボタン22の近傍に、前面カメラ30が設けられる。左スティック24aの左側および右スティック24bの右側には、それぞれ音声を出力する左スピーカ25aおよび右スピーカ25b(以下、総称する場合には「スピーカ25」とよぶ)が設けられる。また左スティック24aの下側にHOMEボタン27が設けられ、右スティック24bの下側にSTARTボタン28およびSELECTボタン29が設けられる。
【0019】
[背面部の構成]
図2(b)は、電子機器10の背面を示す。電子機器10の背面には、背面カメラ31および背面タッチパッド32が設けられる。背面タッチパッド32は、前面タッチパッド21と同様に、マルチタッチパッドとして構成される。電子機器10は、前面および背面において、2つのカメラおよびタッチパッドを搭載している。
【0020】
[上面部の構成]
図3(a)は、電子機器10の上面を示す。既述したように、電子機器10の上面の左右端側に、Lボタン26a、Rボタン26bがそれぞれ設けられる。Lボタン26aの右側には電源ボタン33が設けられ、ユーザは、電源ボタン33を押下することで、電源をオンまたはオフする。なお電子機器10は、操作手段が操作されない時間(無操作時間)が所定時間続くと、サスペンド状態に遷移する電力制御機能を有している。電子機器10がサスペンド状態に入ると、ユーザは電源ボタン33を押下することで、電子機器10をサスペンド状態からアウェイク状態に復帰させることができる。
【0021】
ゲームカードスロット34は、ゲームカードを差し込むための差込口であり、この図では、ゲームカードスロット34がスロットカバーにより覆われている状態が示される。なおゲームカードスロット34の近傍に、ゲームカードがアクセスされているときに点滅するLEDランプが設けられてもよい。アクセサリ端子35は、周辺機器(アクセサリ)を接続するための端子であり、この図ではアクセサリ端子35が端子カバーにより覆われている状態が示される。アクセサリ端子35とRボタン26bの間には、ボリュームを調整するための−ボタン36aと+ボタン36bが設けられている。
【0022】
[下面部の構成]
図3(b)は、電子機器10の下面を示す。メモリカードスロット37は、メモリカードを差し込むための差込口であり、この図では、メモリカードスロット37が、スロットカバーにより覆われている状態が示される。電子機器10の下面において、音声入出力端子38、マイク39およびマルチユース端子40が設けられる。マルチユース端子40はUSB(Universal Serial Bus)に対応し、USBケーブルを介して他の機器と接続できる。
【0023】
[左側面部の構成]
図3(c)は、電子機器10の左側面を示す。電子機器10の左側面には、SIMカードの差込口であるSIMカードスロット41が設けられる。
【0024】
[電子機器の回路構成]
図4は、電子機器10の回路構成を示す。各構成はバス92によって互いに接続されている。無線通信モジュール71はIEEE802.11b/g等の通信規格に準拠した無線LANモジュールによって構成され、AP2を介して、外部ネットワークに接続する。なお無線通信モジュール71は、ブルートゥース(登録商標)プロトコルの通信機能を有してもよい。携帯電話モジュール72は、ITU(International Telecommunication Union;国際電気通信連合)によって定められたIMT−2000(International Mobile Telecommunication 2000)規格に準拠した第3世代(3rd Generation)デジタル携帯電話方式に対応し、携帯電話網4に接続する。SIMカードスロット41には、携帯電話の電話番号を特定するための固有のID番号が記録されたSIMカード74が挿入される。SIMカード74がSIMカードスロット41に挿入されることで、携帯電話モジュール72は、携帯電話網4との間で通信可能となる。
【0025】
CPU(Central Processing Unit)60は、メインメモリ64にロードされたプログラムなどを実行する。GPU(Graphics Processing Unit)62は、画像処理に必要な計算を実行する。メインメモリ64は、RAM(Random Access Memory)などにより構成され、CPU60が使用するプログラムやデータなどを記憶する。ストレージ66は、NAND型フラッシュメモリ(NAND-type flash memory)などにより構成され、内蔵型の補助記憶装置として利用される。
【0026】
モーションセンサ67は、電子機器10の動きを検出し、地磁気センサ68は、3軸方向の地磁気を検出する。GPS制御部69は、GPS衛星からの信号を受信し、現在位置を算出する。前面カメラ30および背面カメラ31は、画像を撮像し、画像データを入力する。前面カメラ30および背面カメラ31は、CMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)によって構成される。
【0027】
表示装置20は、有機EL表示装置であり、陰極および陽極に電圧を印加することで発光する発光素子を有する。省電力モードでは、電極間に印加する電圧を通常よりも低くすることで、表示装置20を減光状態とすることができ、電力消費を抑えられる。なお表示装置20はバックライトを備えた液晶パネル表示装置であってもよい。省電力モードでは、バックライトの光量を下げることで、液晶パネル表示装置を減光状態として、電力消費を抑えることができる。
【0028】
インタフェース90において、操作部70は、電子機器10における各種操作手段を含み、具体的には、操作ボタン22、方向キー23、アナログスティック24、Lボタン26a、Rボタン26b、HOMEボタン27、STARTボタン28、SELECTボタン29、電源ボタン33、−ボタン36a、+ボタン36bを含む。前面タッチパッド21および背面タッチパッド32は、マルチタッチパッドであり、前面タッチパッド21は、表示装置20の表面に重ね合わせて配置される。スピーカ25は、電子機器10の各機能により生成される音声を出力し、マイク39は、電子機器10の周辺の音声を入力する。音声入出力端子38は、外部のマイクからステレオ音声を入力し、外部のヘッドホンなどへステレオ音声を出力する。
【0029】
ゲームカードスロット34には、ゲームファイルを記録したゲームカード76が差し込まれる。ゲームカード76は、データの書込可能な記録領域を有しており、ゲームカードスロット34に装着されると、メディアドライブにより、データの書込/読出が行われる。メモリカードスロット37には、メモリカード78が差し込まれる。メモリカード78は、メモリカードスロット37に装着されると、外付け型の補助記憶装置として利用される。マルチユース端子40は、USB端子として利用でき、USBケーブル80を接続されて、他のUSB機器とデータの送受信を行う。アクセサリ端子35には、周辺機器が接続される。
【0030】
情報処理システム1では、電子機器10のそれぞれが、ユーザアカウントを用いて、サーバ5が提供するネットワークサービスにサインインする。電子機器10は、複数のユーザが参加することのできるアプリケーション(マルチプレイヤオンラインアプリケーション)を実行でき、本実施例では、各電子機器10が、音声チャットアプリケーションを実行する。以下、ユーザAが電子機器10aを有し、ユーザBが電子機器10bを有して、一緒に音声チャットを行う手順を示す。
【0031】
ユーザAの電子機器10aが、音声チャットアプリケーションのセッション作成指示を生成し、サーバ5に送信すると、サーバ5は、作成指示にしたがってセッションを作成する。サーバ5は、セッションを特定する識別情報(以下、「セッションID」と呼ぶ)を発行して、電子機器10aに返信する。セッションIDは、セッションに参加する他の電子機器10bがサーバ5を介して同期通信をするために利用される、サーバ5へ接続するためのURI(Universal Resource Identifier)であってよい。電子機器10aは、サーバ5からセッションIDを付与されると、取得したセッションIDを含むプレゼンス情報を生成し、サーバ5に送信する。プレゼンス情報には、アプリケーションの実行状態を示す状態情報が含まれ、この状態情報は、アプリケーションのセッションへの参加の可否情報を含んでいる。
【0032】
サーバ5は、電子機器10から送信されるプレゼンス情報を管理する。ユーザBの電子機器10bは、定期的にサーバ5にアクセスすることで、ユーザAのプレゼンス情報を取得する。電子機器10bは、ユーザAのプレゼンス情報に含まれる状態情報が参加許可情報を含む場合には、ユーザBが参加可能なアプリケーションをユーザAが実行中であることを示すGUIを生成する。ユーザBが、参加表明をすると、電子機器10bは、セッションの参加指示をサーバ5に送信する。サーバ5が参加指示を受け付けると、そのセッションに、ユーザBを登録し、これによりユーザAとユーザBが、セッションIDを用いて、音声チャットを行えるようになる。
【0033】
図5は、本実施例の電力制御を行う電子機器10の機能ブロックを示す。電子機器10は、操作受付部94、音声入力部96、音声出力部98、音声受付部100、パケット生成部102、音声データ取得部104、通信部106および状態制御部120を備える。これらの構成は、ハードウエアコンポーネントでいえば、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0034】
操作受付部94は、操作部70、前面タッチパッド21、背面タッチパッド32から入力されるユーザによる操作入力を受け付ける。状態制御部120は、操作受付部94が所定時間、操作入力を受け付けない場合に、電子機器10の動作状態を省電力状態に設定する。状態制御部120は、設定時間登録部122、ディスプレイタイマ124、サスペンドタイマ126、減光制御部128およびサスペンド制御部130を有する。状態制御部120の機能は、電子機器10に搭載されているシステムソフトウェアの電力制御アプリケーションにより実現される。状態制御部120は、ユーザからの操作入力がない時間(無操作時間)を計測して、無操作時間が所定時間に到達すると、動作状態を通常(アウェイク)状態から省電力状態に遷移させる。
【0035】
本実施例において、省電力状態として、表示装置20を減光する減光状態と、電子機器10のシステムをサスペンドするサスペンド状態とが段階的に用意されている。減光状態では、表示装置20が減光され、これにより表示装置20の電力消費量を低減できる。またサスペンド状態では、電源をオフする直前の作業状態を保存したRAMへの電力は供給されるものの、その他の部品への電力供給が停止される。CPU60への電力供給も停止されるため、サスペンド状態は、高い省電力効果が実現される。なおサスペンド状態では、表示装置20が完全に消灯されるため、一段階前の省電力状態を、減光状態とすることで、ユーザに、段階的な省電力制御が実行されていることを認識させることができる。
【0036】
設定時間登録部122は省電力状態に遷移するための時間を登録する。具体的に、設定時間登録部122は、サスペンド状態に遷移するための時間(T1)を保持している。時間T1は、ユーザにより設定されてもよい。たとえばユーザは、複数の選択肢(1分、3分、5分、10分)の中から1つを選択して、サスペンド状態に遷移するための時間T1を登録する。減光状態に遷移するための時間(T2)は、時間T1に所定の係数α(α<1)を乗算することで求められる。したがって設定時間登録部122は、時間T1だけを登録して、ディスプレイタイマ124が、時間T1×αの計算式により時間T2を導出できればよい。なお設定時間登録部122が、時間T2を保持してもよく、このとき、時間T1>時間T2である。
【0037】
まず、状態制御部120の基本動作を説明する。
操作受付部94は、操作入力を受け付けると、状態制御部120に操作入力があったことを通知する。これを受けて、状態制御部120では、最後の操作入力からの次の操作入力までの時間、すなわち、操作入力がない時間(無操作時間)の計測を開始する。ディスプレイタイマ124は、無操作時間が時間T2に到達したことを検出すると、減光制御部128にその旨を通知し、減光制御部128は、表示装置20を減光する。続いて、サスペンドタイマ126は、無操作時間が時間T1に到達したことを検出すると、サスペンド制御部130にその旨を通知し、サスペンド制御部130は、電子機器10をサスペンドする。なお、無操作時間が時間T2に到達する前に、操作受付部94から操作入力があったことを通知されると、ディスプレイタイマ124は、カウンタをリセットして、無操作時間の計測を再開する。同様に、無操作時間が時間T1に到達する前に、操作受付部94から操作入力があったことを通知されると、サスペンドタイマ126は、カウンタをリセットして、無操作時間の計測を再開する。なお、無操作時間が時間T2を超えて、表示装置20が減光状態とされた後、無操作時間が時間T1に到達する前に、操作受付部94が操作入力を受け付けると、減光制御部128は、表示装置20の動作状態を、減光状態から通常状態に戻して、ディスプレイタイマ124およびサスペンドタイマ126が、無操作時間の計測を再開する。以上が、状態制御部120の基本動作である。
【0038】
次に、音声チャットアプリケーションの動作を説明する。
音声入力部96は、マイク39からの音声を入力する。音声入力部96は、音声検出(ボイスディテクション)機能を有し、一定以上の音量の音声を音声データに変換する。音声受付部100は、変換された音声データを音声入力として受け付け、パケット生成部102が、音声パケットを生成して、通信部106が音声パケットをサーバ5に送信する。なお通信部106は、無線通信モジュール71または携帯電話モジュール72である。これにより、音声チャットに参加している他のユーザに、音声を伝えることができる。
【0039】
また通信部106は、他の電子機器10から送信された音声パケットを受信し、音声データ取得部104が、音声パケットに含まれる音声データに取得する。音声受付部100は、取得された音声データを音声入力として受け付け、音声出力部98が、スピーカ25から音声を出力する。これにより、ユーザは、他のユーザからの音声を聞くことができる。
【0040】
以下、音声チャット中の電力制御について説明する。
音声受付部100が、音声入力を受け付けると、状態制御部120に音声入力があったことを通知する。サスペンドタイマ126は無操作時間を計測しており、無操作時間が時間T1に到達する前に、音声入力があったことを示す通知(以下、「音声入力通知」とよぶ)を受けると、タイマのカウントをリセットする。すなわち、音声チャット中は、音声入力を、操作入力とみなして、サスペンドタイマ126は、無操作時間の計測をカウント値0から再開する。このように、無操作時間が時間T1に到達する前に、音声受付部100が音声入力部96から音声入力を受け付け、または音声データ取得部104から音声入力を受け付けると、操作受付部94が時間T1の間、操作入力を受け付けなくても、サスペンド制御部130は、動作状態をサスペンド状態に設定しない。これにより、ボイスチャット中に、操作入力がなくても、状態制御部120は、音声入力を操作入力として扱うことで、音声チャットアプリケーションが中断する事態を回避できる。
【0041】
一方で、ディスプレイタイマ124による無操作時間の計測は、音声入力通知によってリセットされない。したがってディスプレイタイマ124が、無操作時間が時間T2に到達する前に、音声入力通知を受けても、タイマのカウントをリセットせず、無操作時間の計測は継続される。したがって、無操作時間が時間T2に到達すると、減光制御部128は、動作状態を減光状態に設定する。音声チャット中は、ユーザがディスプレイの表示内容を見る必要性が少なく、減光しても支障はないためであり、またディスプレイを減光することで、電力消費を低減することが可能となる。なお、動作状態がサスペンド状態に設定される前に、操作受付部94が操作入力を受け付けると、減光制御部128は、表示装置20の動作状態を、減光状態から通常状態に戻す。
【0042】
図6は、サスペンド状態への遷移処理を示すフローチャートである。最初に、サスペンドタイマカウント値が0に設定される(S10)。タイマ処理が起動され(S100)、サスペンドタイマカウント値が時間T1に到達しなければ(S12のN)、タイマ処理が継続され、サスペンドタイマカウント値が時間T1に到達すると(S12のY)、サスペンド制御部130が、動作状態をサスペンド状態に設定する(S14)。S100のタイマ処理については、図8に関連して説明する。
【0043】
図7は、減光状態への遷移処理を示すフローチャートである。最初に、ディスプレイタイマカウント値が0に設定される(S20)。タイマ処理が起動され(S100)、ディスプレイタイマカウント値が時間T2に到達しなければ(S22のN)、タイマ処理が継続され、ディスプレイタイマカウント値が時間T2に到達すると(S22のY)、減光制御部128が、動作状態を減光状態に設定する(S24)。S100のタイマ処理については、図8に関連して説明する。
【0044】
図8は、図6および図7に示すS100のタイマ処理のフローチャートである。操作受付部94が操作入力を受け付けると(S102のY)、ディスプレイタイマ124が、ディスプレイタイマカウント値を0に設定し(S104)、またサスペンドタイマ126が、サスペンドタイマカウント値を0に設定して(S110)、それぞれ無操作時間の計測をカウント値0から再開する。
【0045】
操作受付部94が操作入力を受け付けなければ(S102のN)、ディスプレイタイマ124は、ディスプレイタイマカウント値を1インクリメントする(S106)。一方で、音声受付部100が音声入力を受け付けると(S108のY)、サスペンドタイマ126が、サスペンドタイマカウント値を0に設定する(S110)。音声受付部100が音声入力を受け付けなければ(S108のN)、サスペンドタイマ126が、サスペンドタイマカウント値を1インクリメントする(S112)。以上のようにして、タイマ処理が実行される。
【0046】
なお、図7のフローチャートにおいて、S24で減光状態に遷移した後、動作状態がサスペンド状態に設定される前に操作受付部94が操作入力を受け付けると、減光制御部128は、表示装置20の動作状態を、減光状態から通常状態に戻す。ユーザによる操作入力は、電子機器10を通常状態に戻すための意思表示であるため、その場合には、表示装置20を通常の輝度に戻して、ユーザによる操作入力を受け付け可能とする。一方、S24で減光状態に遷移した後、動作状態がサスペンド状態に設定される前に音声受付部100が音声入力を受け付けても、減光制御部128は、減光状態を変更しない。これにより、音声チャットを継続しつつ、減光状態による電力消費の低減を実現することが可能となる。
【0047】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。実施例は、複数の電子機器10が無線LANのインフラストラクチャモードで接続している例を示したが、アドホックモードで接続していてもよい。
【0048】
また実施例では、サスペンドタイマ126が、無操作時間が時間T1に到達する前に、音声入力通知を受けると、タイマのカウントをリセットしている。このときサスペンドタイマ126は、タイマのカウント値を時間T2にセットしてもよい。特に無操作時間が時間T2を超えていれば、サスペンドタイマ126は、タイマのカウント値を時間T2にセットして、時間T2に相当するカウント値から、無操作時間の計測を再開してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1・・・情報処理システム、10・・・電子機器、20・・・表示装置、70・・・操作部、94・・・操作受付部、96・・・音声入力部、98・・・音声出力部、100・・・音声受付部、102・・・パケット生成部、104・・・音声データ取得部、106・・・通信部、120・・・状態制御部、122・・・設定時間登録部、124・・・ディスプレイタイマ、126・・・サスペンドタイマ、128・・・減光制御部、130・・・サスペンド制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによる操作入力を受け付ける操作受付部と、
前記操作受付部が、第1の所定時間、操作入力を受け付けない場合に、動作状態を省電力状態に設定する状態制御部と、を備えた電子機器であって、
音声入力を受け付ける音声受付部を、さらに備え、
前記操作受付部が操作入力を受け付けない無操作時間が第1の所定時間に到達する前に、前記音声受付部が音声入力を受け付けると、前記操作受付部が第1の所定時間、操作入力を受け付けなくても、前記状態制御部は動作状態を省電力状態に設定しないことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記状態制御部は、無操作時間を計測するタイマを有し、前記音声受付部が音声入力を受け付けると、タイマのカウントをリセットすることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記状態制御部は、無操作時間が第1の所定時間よりも短い第2の所定時間に到達したとき、動作状態を減光状態に設定し、無操作時間が第1の所定時間に到達したとき、動作状態をサスペンド状態に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記状態制御部は、無操作時間が第2の所定時間に到達する前に、前記音声受付部が音声入力を受け付けても、無操作時間が第2の所定時間に到達すると、動作状態を減光状態に設定することを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
他の電子機器から送信された音声データを取得する取得部と、
入力された音声を音声データに変換する音声入力部と、をさらに備え、
前記音声受付部は、取得された音声データまたは変換された音声データを、音声入力として受け付けることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
音声チャットアプリケーションが、前記音声受付部の機能を実行することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電子機器。
【請求項7】
動作状態を、通常状態と、通常状態よりも電力消費の少ない省電力状態との間で遷移させる状態制御機能を実行する電力制御アプリケーションと、
音声入力を受け付け、音声チャット機能を実行する音声チャットアプリケーションと、をインストールした電子機器であって、
電力制御アプリケーションは、ユーザからの操作入力がない無操作時間を計測して、無操作時間が所定時間に到達すると、動作状態を通常状態から省電力状態に遷移させるものであって、
音声チャットアプリケーションが音声入力を受け付けると、電力制御アプリケーションは、計測した時間をリセットすることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
コンピュータに、
ユーザによる操作入力を受け付ける第1機能と、
所定時間、操作入力を受け付けない場合に、動作状態を省電力状態に設定する第2機能と、
音声入力を受け付ける第3機能と、を実現させるためのプログラムであって、
操作入力を受け付けない無操作時間が所定時間に到達する前に、第3機能が音声入力を受け付けると、第1機能が所定時間、操作入力を受け付けなくても、第2機能は動作状態を省電力状態に設定しない
ことを特徴とするプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−101433(P2013−101433A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243731(P2011−243731)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(310021766)株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント (417)
【Fターム(参考)】