説明

電子機器

【課題】ユーザの負担を軽減でき、誤操作の発生を低減できる電子機器を提供する。
【解決手段】押圧に基づくデータに関する閾値であって所定の処理を行うための閾値を段階的に複数設定する制御部10を備える電子機器であって、制御部10は、押圧に基づくデータが増加するに従って閾値の差が順次小さくなるように当該閾値を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧を段階的に検出可能な電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子機器として、タッチパネルに対する押圧を多段階で検出可能なカーナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このカーナビゲーション装置は、ディスプレイユニットのタッチパネルへの押圧が大きくなっていくに従って、ディスプレイユニットの液晶表示器の所定の表示領域に都道府県名を北から順にスクロール表示させ、押圧が安定した(所定時間継続した)ところで、表示されている都道府県名の選択を確定することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−39745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、操作が行われる際の押圧を検出する電子機器においては、機器に対して押圧を加える必要があるため、ユーザに負担がかかることになる。特に、上述したように押圧を多段階で検出する電子機器においては、上位の段階の押圧を検出するためには、下位の段階と比較して、大きな押圧が必要となるため、ユーザの負担がより大きくなる。なお、上記特許文献1には、操作の押圧を検出するに際して、押圧の各段階における閾値については、何ら言及されていない。
【0005】
このようなユーザに対する負担を軽減する方法として、各段階の閾値が全体的に小さくなるように、順次の閾値を等間隔に設定することが想定される。しかし、このように設定すると、ユーザが意図せずに装置に軽く触れただけで、押圧が一気に複数段階で検出されてしまうという現象が生じることが懸念される。
【0006】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、ユーザの負担を軽減でき、しかも誤操作の発生を低減できる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子機器は、
押圧に基づくデータに関する閾値であって所定の処理を行うための閾値を段階的に複数設定する制御部を備え、
前記制御部は、前記押圧に基づくデータが増加するに従って前記閾値の差が順次小さくなるように当該閾値を設定する、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の一実施の形態においては、
前記制御部は、アプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の段階の数と、予め設定された1段階目の閾値とに基づいて、2段階目以上の閾値を設定する。
【0009】
また、本発明の他の実施の形態においては、
前記制御部は、アプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の段階の数と、当該段階のうち最上段階の閾値として予め設定された最大閾値とに基づいて、前記最上段階の閾値を除く残りの段階の閾値を設定する。
【0010】
また、本発明の他の観点に係る電子機器は、
押圧に基づくデータに関する閾値であって所定の処理を行うための閾値を段階的に複数設定する制御部を備え、
前記制御部は、前記押圧に基づくデータが減少するに従って前記閾値の差が順次小さくなるように当該閾値を設定する、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の一実施の形態においては、
前記制御部は、アプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の段階の数と、予め設定された第1段階の閾値とに基づいて、第2段階以下の閾値を設定する。
【0012】
また、本発明の他の実施の形態においては、
前記制御部は、アプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の段階の数と、当該段階のうち最下段階の閾値として予め設定された最小閾値とに基づいて、前記最下段階の閾値を除く残りの段階の閾値を設定する。
【0013】
また、本発明のさらに他の観点に係る電子機器は、
押圧に基づくデータに関する閾値であって、当該データが閾値以上である場合に所定の処理を行うための第1組の閾値と、当該データが閾値以下である場合に所定の処理を行うための第2組の閾値とをそれぞれ段階的に複数設定する制御部を備え、
前記制御部は、
前記押圧に基づくデータが増加するに従って前記第1組の閾値の差が順次小さくなるように当該第1組の閾値を設定し、
前記押圧に基づくデータが減少するに従って前記第2組の閾値の差が順次小さくなるように当該第2組の閾値を設定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ユーザの負担を軽減でき、しかも誤操作の発生を低減できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電子機器の要部の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1の電子機器の処理を示すフローチャートである。
【図3】第1実施の形態による複数段階の閾値の一設定例を示す図である。
【図4】第1実施の形態による複数段階の閾値の他の設定例を示す図である。
【図5】図1の押圧検出部で検出される押圧の変化を示す図である。
【図6】第2実施の形態による複数段階の閾値の一設定例を示す図である。
【図7】第3実施の形態に係る電子機器の処理を示すフローチャートである。
【図8】第3実施の形態による複数段階の閾値の一設定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による電子機器の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。
【0017】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る電子機器の要部の概略構成を示す機能ブロック図である。図1に示す電子機器は、制御部10、入力部11、押圧検出部12、アプリケーション処理部13、映像音声出力部14、および、記憶部15を備える。
【0018】
入力部11は、例えばタッチパネルを備え、映像音声出力部14から出力される映像や音声、キャラクタの動きなどをユーザによる押圧によって操作するのに使用される。ユーザの操作により入力された情報は、制御部10に送られる。また、ユーザが操作した際の押圧は、押圧検出部12へ伝達される。
【0019】
押圧検出部12は、ユーザが入力部11を操作した際の押圧を検出するもので、例えば、押圧に応じて物理的または電気的な特性(歪み、抵抗、電圧等)が変化する歪みゲージセンサや圧電素子等の素子等を用いて構成する。押圧検出部12が、例えば、圧電素子等を用いて構成された場合、押圧検出部12の圧電素子は、入力部11に対する押圧に係る荷重(力)の大きさ(または、荷重(力)の大きさが変化する速さ(加速度))に応じて、電気的な特性である電圧の大きさ(電圧値(以下、押圧に基づくデータと称する))が変化する。そして、制御部10は、押圧に基づくデータが所定の閾値以上である場合に、例えばアプリケーション基づくなどして、所定の処理を行うように制御する。
【0020】
制御部10は、押圧検出部12が押圧に基づくデータを制御部10に通知することにより、または、制御部10が、押圧検出部12の押圧に基づくデータを検出することにより、当該押圧に基づくデータを取得する。つまり、制御部10は、入力部11に対する押圧に基づくデータを押圧検出部12から取得する。なお、押圧に基づくデータは、電圧値の代わりに、押圧に係る荷重の大きさ、電力値、抵抗値等でもよい。なお、押圧検出部12は、振動を発生してユーザの指などに触感を呈示する機能部(触感呈示部)と一体化して構成することもできる。特に、押圧検出部12および触感呈示部は、圧電素子を用いて構成する場合は、圧電素子を共用して押圧検出部兼触感呈示部を構成することもできる。圧電素子は、圧力が加わると電圧を発生し、電圧が加えられると変形するためである。また、図1に示す電子機器は、ユーザの指先などに触感を呈示する触感呈示部を別途備えるようにしてもよい。この場合、押圧検出部12が検出した荷重に応じて触感呈示部を振動させることにより、入力部11を押圧しているユーザに操作したことが感覚的に分かるようにできる。
【0021】
さらに、押圧検出部12は、入力部11における接触検出方式に応じて構成することができる。例えば、入力部11が抵抗膜方式の場合には、接触面積の大きさに応じた抵抗の大きさ、または抵抗の大きさが変化した範囲等を、タッチパネルのタッチ面に対する押圧の荷重(力)に対応付けることにより、歪みゲージセンサや圧電素子等を用いることなく構成することができる。あるいは、入力部11が静電容量方式の場合には、接触面積の大きさに応じた静電容量(電荷)の大きさ、または静電容量(電荷)の大きさが変化した範囲等を、タッチパネルに対する押圧の荷重(力)に対応付けることにより、歪みゲージセンサや圧電素子等を用いることなく構成することができる。
【0022】
また、触感呈示部は、押圧検出部も兼ねる圧電素子の電圧の大きさ(電圧値(データ))が所定の閾値を満たした際に、当該圧電素子を駆動することにより振動を発生するようにもできる。ここで、圧電素子の電圧の大きさ(電圧値(データ))が所定の閾値を満たした際とは、電圧値(データ)が所定の基準値に達した際であってもよいし、電圧値(データ)が所定の基準値を超えた際でもよいし、所定の基準値と等しい電圧値(データ)が検出された際でもよい。
【0023】
アプリケーション処理部13は、制御部10からの指示に基づいてアプリケーション処理を実行し、その処理結果を映像音声出力部14に出力する。ここで、アプリケーション処理とは、例えば、画質の調整、音量の調整、キャラクタ動画像の表示位置計算などの映像や音声、キャラクタの動きなどに関する処理であり、その処理結果が映像音声出力部14から出力される。
【0024】
記憶部15は、押圧に基づくデータに関する閾値であって所定の処理を行うための閾値を記憶するメモリ、制御部10の作業用メモリ、電子機器を動作させるためのプログラム格納メモリなど、電子機器の動作に必要なメモリを便宜上1つの記憶部として表示したものである。この記憶部15には、アプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の段階の数が記憶される。また、本実施の形態においては、多段階で検出される押圧に基づくデータに関する第1段階の閾値Pth1が予め設定されて記憶される。なお、Pth1は、全てのアプリケーションに対して共通に、固定的またはユーザにより適宜変更可能に設定されてもよいし、アプリケーションに応じて固定的にまたはユーザにより適宜変更可能に設定されてもよい。また、記憶部15には、多段階で押圧が検出される場合の閾値の差の最大値dmaxおよび最小値dminが予め記憶される。
【0025】
ここで、上記の最大値dmaxは、例えば、入力部11や押圧検出部12に加えることができる押圧の上限値、押圧検出部12で検出可能な押圧の上限値、および、ユーザが操作を行う際の押圧に基づくデータに関する閾値の各段階の差の最大値、のうち最も小さい値に設定される。また、最小値dminは、例えば、押圧検出部12で検出可能な押圧の下限値、および、ユーザが操作を行う際の押圧に基づくデータに関する閾値の各段階の差の最小値、のうち大きい値に設定する。
【0026】
制御部10は、電子機器の全体の動作を制御する。そして、制御部10は、入力部11から入力される情報に応じて、および/または押圧検出部12が検出する押圧に基づくデータに応じて実行する処理を決定し、その決定した処理をアプリケーション処理部13において実行するように、アプリケーション処理部13に指示する。また、制御部10は、アプリケーションの実行開始時に、当該アプリケーションに基づいて、押圧に基づくデータに関する閾値であって所定の処理を行うための閾値を段階的に複数設定する閾値設定部10aを有する。
【0027】
本実施の形態において、閾値設定部10aは、押圧に基づくデータが増加するに従って閾値の差が順次小さくなるように、当該閾値を設定する。この閾値設定部10aで設定された閾値は、記憶部15に記憶される。
【0028】
なお、図1は、説明の便宜上、機能ごとにブロックを分離して記載しているが、これに限定されるものではない。例えば、入力部11および押圧検出部12は、これらを一体化したものを入力手段として用いてもよい。また、入力部11、押圧検出部12、および映像音声出力部14の映像出力部をタッチパネルとして、一体化してもよい。また、アプリケーション処理部13および/または映像音声出力部14は外部接続機器が備え、電子機器ではユーザ操作の検出および処理内容の決定のみを行うようにしてもよい。
【0029】
また、アプリケーション処理部13は、制御部10が備えてもよい。また、制御部10は、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成してもよいし、各処理に特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成してもよい。したがって、例えば、押圧に基づくデータに応じて実行する処理を決定する処理部と、アプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の設定処理を実行する閾値設定部10aとを、各処理に特化した専用のプロセッサによって構成してもよい。
【0030】
次に、図2に示すフローチャートを参照して、本実施の形態に係る電子機器が行う処理について説明する。
【0031】
先ず、制御部10は、ステップS11において、ユーザにより入力部11が操作されてアプリケーションが選択されたのを検知すると、入力部11から送られた情報に基づいて選択されたアプリケーションを判断して起動処理を実行する。また、制御部10は、当該選択されたアプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の段階の数と、第1段階の閾値とを記憶部15から読み出す。
【0032】
次に、制御部10は、ステップS12において、ステップS11で記憶部15から読み出した段階的に複数設定される閾値の段階の数と第1段階の閾値とに基づいて、閾値設定部10aにおいて各段階の予定閾値を演算する。ここで、各段階の予定閾値は、総段階数をS、第1段階の閾値をPth1とすると、第2段階以上の予定閾値P(N)は(N=2,3,・・・,S)、例えば、Pth1=P1として、P(N)=P(N-1)+P1×(1/2)N-1、により演算する。
【0033】
次に、制御部10は、ステップS13において、記憶部15から閾値の差における規定の最大値dmaxと最小値dminとを読み出す。そして、閾値設定部10aにおいて、ステップS12で演算した各段階の予定閾値による各段階の間の予定閾値の差が、それぞれ最大値dmaxと最小値dminとの範囲にあるか否かを判断する。その結果、全ての予定閾値の差が最大値dmaxと最小値dminとの範囲にある場合は、演算した第2段階以上の予定閾値を、当該アプリケーションで使用する閾値として設定して記憶部15に記憶する。
【0034】
例えば、段階的に複数設定される閾値の総段階数Sが「4」の場合、第1段階の閾値Pth1と、ステップS12において演算した第2段階以上の予定閾値P2,P3,P4とによる各段階の間の予定閾値の差が、それぞれ最小値dminと最大値dmaxとの範囲にあれば、演算した予定閾値P2,P3,P4が、正規の閾値Pth2, Pth3, Pth4として設定されて記憶部15に記憶される。したがって、この場合は、図3に示すように、予定閾値P2,P3,P4と記憶部15に記憶される閾値Pth2,Pth3,Pth4とがそれぞれ等しいものとなる。
【0035】
これに対し、演算した最上段階の予定閾値に関連する予定閾値の差が、最小値dminよりも小さい場合、例えば、上記の例において、図4に示すように、予定閾値P3,P4の差のみが、dmin>P4−P3の場合、閾値設定部10aは、第4段階の閾値Pth4を、例えば、Pth4=P3+dminに設定して記憶部15に記憶する。
【0036】
その後、制御部10は、ステップS14において、押圧検出部12によりユーザが入力部11を操作した際の押圧が検出されると、その押圧に基づくデータPdetが、設定された各段階の閾値のうちどれを超えているかを判定する。その結果、Pdet<Pth1の場合は、ユーザによる押圧が不足していると判定、つまり意識して押圧する操作をしていないと判定して、押圧検出部12による押圧の検出を継続する。
【0037】
これに対し、Pth1≦Pdet<Pth2を所定時間満たす場合は、押圧に基づくデータが第1段階の閾値以上であると判定してステップS15−1に移行し、Pth2≦Pdet<Pth3を所定時間満たす場合は、押圧に基づくデータが第2段階の閾値以上であると判定してステップS15−2に移行する。また、Pth3≦Pdet<Pth4を所定時間満たす場合は、押圧に基づくデータが第3段階の閾値以上であると判定してステップS15−3に移行し、Pth4≦Pdetを所定時間満たす場合は、押圧に基づくデータが第4段階の閾値以上であると判定してステップS15−4に移行する。図5は、押圧に基づくデータが第1段階の閾値以上であると判定される場合に押圧検出部12で検出される押圧に基づくデータPdetの変化の一例を破線で示し、押圧に基づくデータが第3段階の閾値以上であると判定される場合に押圧検出部12で検出される押圧に基づくデータPdetの変化の一例を実線で示したものである。すなわち、本実施の形態において、閾値設定部10aは、押圧に基づくデータに関する閾値であって、当該データが閾値以上である場合に所定の処理を行うための閾値を段階的に複数設定する。
【0038】
そして、制御部10は、ステップS15−1においては、アプリケーション処理部13に対して、第1段階の閾値に対応するアプリケーション処理を実行させる。また、ステップS15−2においては、アプリケーション処理部13に対して、第2段階の閾値に対応するアプリケーション処理を実行させる。同様に、ステップS15−3においては、アプリケーション処理部13に対して、第3段階の閾値に対応するアプリケーション処理を実行させ、ステップS15−4においては、アプリケーション処理部13に対して、第4段階の閾値に対応するアプリケーション処理を実行させる。
【0039】
その後、ステップS16において、制御部10は、ステップS15−1乃至S15−4のいずれかにおいて実行されたアプリケーション処理の結果を映像音声出力部14に出力する。
【0040】
このように、本実施の形態においては、閾値設定部10aにおいて、実行されるアプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の段階の数と、予め設定された第1段階の閾値とに基づいて、押圧に基づくデータが増加するに従って閾値の差が順次小さくなるように、第2段階以上の閾値を設定する。したがって、入力部11を操作するユーザの負担を軽減できるとともに、誤操作の発生を低減できる。
【0041】
(第2実施の形態)
本発明の第2実施の形態に係る電子機器では、図1に示した構成において、記憶部15に、多段階で押圧を検出する際の第1段階の閾値Pth1に代えて、多段階で押圧を検出する際の最上段階の閾値に対応する最大閾値Pthmaxが予め設定されて記憶される。この最大閾値Pthmaxは、例えば、閾値の差の最大値dmaxと同様に設定され、例えばPthmax≦dmaxに設定される。
【0042】
そして、制御部10は、図2のステップS11において、ユーザにより選択されたアプリケーションの起動処理の実行に同期して、記憶部15から最大閾値Pthmaxと当該アプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の段階の数Sとを読み出す。
【0043】
次に、制御部10は、図2のステップS12において、ステップS11で記憶部15から読み出した最大閾値Pthmaxと、段階的に複数設定される閾値の段階の数Sとに基づいて、各段階の予定閾値P(N)を演算する。ここで、各段階の予定閾値P(N)は、例えば、P(N)=Pthmax×[1-t(t-1)/{S(S+1)}]、により演算する。ただし、当該演算式において、tは、N=1,2,・・・,S、に対して、t=S,・・・,2,1が対応する。
【0044】
その後、制御部10は、図2のステップS13において、第1実施の形態の場合と同様に、記憶部15から閾値の差の最大値dmaxと最小値dminとを読み出して、演算した各段階の予定閾値P(N)による各段階の間の予定閾値の差が、それぞれ最大値dmaxと最小値dminとの範囲にあるか否かを判断する。その結果、全ての予定閾値の差が最大値dmaxと最小値dminとの範囲にある場合は、最大閾値Pthmaxを除く演算した各段階の予定閾値P(N)を、当該アプリケーションで使用する閾値として設定して記憶部15に記憶する。
【0045】
例えば、段階的に複数設定される閾値の段階の数Sが「4」の場合において、ステップS12において演算した各段階の予定閾値P1,P2,P3および予め設定された最大閾値Pthmax(この場合は、Pth4)による各段階の間の予定閾値の差が、それぞれ最小値dminと最大値dmaxとの範囲にある場合、演算した予定閾値P1,P2,P3が閾値Pth1,Pth2,Pth3として設定されて記憶部15に記憶される。したがって、この場合は、図6に示すように、予定閾値P1,P2,P3と記憶部15に記憶された閾値Pth1,Pth2,Pth3とがそれぞれ等しいものとなる。
【0046】
これに対し、演算した最上段階の予定閾値に関連する予定閾値の差が、最小値dminよりも小さい場合、例えば、上記の例において、予定閾値P3,P4の差のみが、dmin>P4−P3の場合は、Pth4-Pth3>dminを満たすように、第3段階の閾値Pth3を、演算した予定閾値P3よりも低く設定して記憶部15に記憶する。
【0047】
その後、制御部10は、第1実施の形態の場合と同様に、図2のステップS14以後の処理を実行する。
【0048】
このように、本実施の形態においては、閾値設定部10aにおいて、実行されるアプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の段階の数と、当該段階のうち最上段階の閾値として予め設定された最大閾値とに基づいて、押圧が増加するに従って順次の閾値の差が小さくなるように、第1段階から最上段階に至る閾値を設定している。したがって、入力部11の押圧操作に対してユーザの負担を軽減できるとともに、誤操作の発生を低減できる。
【0049】
(第3実施の形態)
図1に示した構成においては、操作者が押圧を徐々に強める操作に応じた処理を行うために、押圧に基づくデータが増加するに従って閾値の差が順次小さくなるように、当該閾値を設定した。本発明の第3実施の形態に係る電子機器では、操作者が押圧を徐々に弱める操作に応じた処理を行うために、図1に示した構成において、押圧に基づくデータが減少するに従って閾値の差が順次小さくなるように、当該閾値を設定する。このような閾値は、閾値設定部10aにより設定され、記憶部15に記憶される。
【0050】
本実施の形態においては、閾値設定部10aは、押圧に基づくデータに関する閾値であって、当該データが閾値以下である場合に所定の処理を行うための閾値を段階的に複数設定する。また、第1実施の形態と同様に、本実施の形態においても、アプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の段階の数、および、多段階で検出される押圧に基づくデータに関する第1段階の閾値Pth1が予め設定されて記憶部15に記憶される。その他、記憶部15には、多段階で押圧が検出される場合の閾値の差の最大値dmaxおよび最小値dminなども予め記憶される。
【0051】
次に、図7に示すフローチャートを参照して、本実施の形態に係る電子機器が行う処理について説明する。
【0052】
図7に示すステップS21〜ステップS24は、図2において説明したステップS11〜ステップS14にそれぞれ対応するものである。したがって、以下、第1実施の形態とは異なる部分について重点的に説明する。
【0053】
制御部10は、ステップS22において、ステップS21で記憶部15から読み出した段階的に複数設定される閾値の段階の数と第1段階の閾値とに基づいて、閾値設定部10aにおいて各段階の予定閾値を演算する。ここで、各段階の予定閾値は、総段階数をS、第1段階の閾値をRth4とすると、第2段階以上の予定閾値P(N)は(N=2,3,・・・,S)、例えば、Rth4=R1、またP4を所定の値として、R(N)=P4-R(N-1)-R1×(1/2)N-1、により演算する。ここで、所定の値P4は、アプリケーションに基づく操作を行うのに必要な押圧を考慮して予め適宜設定しておくか、またはユーザの押圧が増加から減少に転じた際の押圧に基づいて設定する値などとすることができる。
【0054】
次に、閾値設定部10aは、ステップS22で演算した各段階の予定閾値による各段階の間の予定閾値の差が、それぞれ最大値dmaxと最小値dminとの範囲にあるか否かを判断する。その結果、全ての予定閾値の差が最大値dmaxと最小値dminとの範囲にある場合は、演算した第2段階以下の予定閾値を、当該アプリケーションで使用する閾値として設定して記憶部15に記憶する。
【0055】
例えば、段階的に複数設定される閾値の総段階数Sが「4」の場合、第1段階の閾値Rth4と、ステップS22において演算した第2段階以下の予定閾値とによる各段階の間の予定閾値の差が、それぞれ最小値dminと最大値dmaxとの範囲にあれば、演算した予定閾値が、それぞれ正規の閾値Rth3,Rth2,Rth1として設定されて記憶部15に記憶される。したがって、この場合は、図8に示すような閾値が正規の閾値Rth3,Rth2,Rth1として設定される。
【0056】
これに対し、演算した最下段階の予定閾値に関連する予定閾値の差が、最小値dminよりも小さい場合、例えば、第3段階の閾値Rth2と第4段階の閾値Rth1との差のみが、dminよりも小さくなる場合、閾値設定部10aは、第4段階の閾値Rth1を、例えば、Rth1=Rth2-dminに設定して記憶部15に記憶する。なお、このようにして設定される各段階の閾値は、ゼロ以下にならないように設定するのが望ましい。ゼロよりも小さい押圧は検出することができず、押圧検出部12により検出される押圧がゼロの場合には、例えば触感呈示部によりユーザの指などに触感を呈示することができないためである。
【0057】
その後、制御部10は、ステップS24において、押圧検出部12によりユーザが入力部11を操作した際の押圧が検出されると、その押圧に基づくデータRdetが、設定された各段階の閾値のうちどれ以下になっているかを判定する。その結果、Rdet>Pth4の場合は、ユーザによる押圧が減少していないと判定して、押圧検出部12による押圧の検出を継続する。
【0058】
これに対し、Rth4<Rdet≦Pth4を所定時間満たす場合は、押圧に基づくデータが第1段階の閾値以下であると判定してステップS25−1に移行し、Rth3<Rdet≦Rth4を所定時間満たす場合は、押圧に基づくデータが第2段階の閾値以下であると判定してステップS25−2に移行する。また、Rth2<Rdet≦Rth3を所定時間満たす場合は、押圧に基づくデータが第3段階の閾値以下であると判定してステップS25−3に移行し、Rth1<Rdet≦Rth2を所定時間満たす場合は、押圧に基づくデータが第4段階の閾値以下であると判定してステップS25−4に移行する。すなわち、本実施の形態において、閾値設定部10aは、押圧に基づくデータに関する閾値であって、当該データが閾値以下である場合に所定の処理を行うための閾値を段階的に複数設定する。なお、Rdet≦Rth1の場合は、ユーザによる押圧が解除されたと判定、つまり入力部11からユーザの指などが離れたと判定して、処理を終了する。
【0059】
このように、本実施の形態においては、閾値設定部10aは、押圧に基づくデータに関する閾値であって、当該データが閾値以下である場合に所定の処理を行うための閾値を段階的に複数設定する。また、本実施の形態においては、閾値設定部10aは、押圧に基づくデータが減少するに従って閾値の差が順次小さくなるように、当該閾値を設定する。したがって、入力部11の押圧操作に対してユーザの負担を軽減できるとともに、誤操作の発生を低減できる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、予定閾値を算出する演算式は、アプリケーションに応じて適宜変更することも可能である。また、ユーザが操作を行う際の押圧に基づくデータに関する閾値の各段階の差の最大値および最小値は、ユーザの状態やアプリケーションによって異なる場合がある。したがって、多段階で押圧が検出される場合の閾値の差の最大値dmaxおよび最小値dminは、ユーザが任意に変更できるようにしてもよい。
【0061】
また、第1実施の形態では、例えば、予定閾値P3,P4の差のみが、dminを満たさない場合、第4段階の閾値Pth4を、Pth4=P3+dminに設定するようにしたが、第2実施の形態の場合と同様に、Pth4-Pth3>dminを満たすように、第3段階の閾値Pth3を、演算した予定閾値P3よりも低く補正してもよい。
【0062】
また、過度の押圧で入力部11が押圧されて電子機器が損傷することを防止するために、押圧に基づくデータに関する閾値に損傷防止のための上限閾値を設け、図2のステップS14以後の処理において、検出された押圧に基づくデータPdetが上限閾値を超えると映像音声出力部14により映像や音声でユーザに警告するようにしてもよい。また、電子機器が触感呈示部を備える場合には、触感によりユーザに警告するようにしてもよい。
【0063】
さらに、上記各実施の形態において、各段階の閾値に対応するアプリケーション処理は、押圧に基づくデータが当該段階の閾値に達した際であってもよいし、当該段階の閾値を超えた際でもよい。同様に、第3実施の形態においては、押圧に基づくデータが所定の閾値以下である場合に所定の処理を行う場合について説明したが、押圧に基づくデータが所定の閾値未満である場合に当該所定の処理を行ってもよい。
【0064】
また、上述した各実施の形態は、それぞれを別個に実施することができるのはもちろんであるが、第1〜第3実施の形態のそれぞれの全部または一部を、適宜組み合わせて実施することもできる。例えば、押圧に基づくデータに関する閾値について、上述した第1実施の形態の一部と第3実施の形態の一部とを組み合わせて、押圧に基づくデータが増加する方向および現出する方向のそれぞれについて閾値の組を設定することにより処理を行うようにもできる。
【0065】
また、上述した第3実施の形態において、第2実施の形態と同様の思想に基づいて、記憶部15に、多段階で押圧を検出する際の第1段階の閾値Pth1に代えて、多段階で押圧を検出する際の最下段階の閾値に対応する最下閾値Pthminが予め設定されて記憶されるようにもできる。この最大閾値Pthminは、例えば、閾値の差の最小値dminと同様に設定され、例えばPthmin≧dminに設定されるようにしてもよい。すなわち、この場合、閾値設定部10aは、アプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の段階の数と、当該段階のうち最下段階の閾値として予め設定された最小閾値とに基づいて、最下段階の閾値を除く残りの段階の閾値を設定する。
【符号の説明】
【0066】
10 制御部
10a 閾値設定部
11 入力部
12 押圧検出部
13 アプリケーション処理部
14 映像音声出力部
15 記憶部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧に基づくデータに関する閾値であって所定の処理を行うための閾値を段階的に複数設定する制御部を備え、
前記制御部は、前記押圧に基づくデータが増加するに従って前記閾値の差が順次小さくなるように当該閾値を設定する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記制御部は、アプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の段階の数と、予め設定された第1段階の閾値とに基づいて、第2段階以上の閾値を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、アプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の段階の数と、当該段階のうち最上段階の閾値として予め設定された最大閾値とに基づいて、前記最上段階の閾値を除く残りの段階の閾値を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
押圧に基づくデータに関する閾値であって所定の処理を行うための閾値を段階的に複数設定する制御部を備え、
前記制御部は、前記押圧に基づくデータが減少するに従って前記閾値の差が順次小さくなるように当該閾値を設定する、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
前記制御部は、アプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の段階の数と、予め設定された第1段階の閾値とに基づいて、第2段階以下の閾値を設定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記制御部は、アプリケーションによって段階的に複数設定される閾値の段階の数と、当該段階のうち最下段階の閾値として予め設定された最小閾値とに基づいて、前記最下段階の閾値を除く残りの段階の閾値を設定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項7】
押圧に基づくデータに関する閾値であって、当該データが閾値以上である場合に所定の処理を行うための第1組の閾値と、当該データが閾値以下である場合に所定の処理を行うための第2組の閾値とをそれぞれ段階的に複数設定する制御部を備え、
前記制御部は、
前記押圧に基づくデータが増加するに従って前記第1組の閾値の差が順次小さくなるように当該第1組の閾値を設定し、
前記押圧に基づくデータが減少するに従って前記第2組の閾値の差が順次小さくなるように当該第2組の閾値を設定する
ことを特徴とする電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−12253(P2013−12253A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231091(P2012−231091)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【分割の表示】特願2012−119736(P2012−119736)の分割
【原出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】