説明

電子決済システム

【課題】交通機関の利用料金等をICカード等の情報記録媒体に記録された電子通貨で支払うことのできる電子決済システムにおいて、情報記録媒体の使用者の手間の増加や決済処理の効率の低下を抑制しつつ、使用者が望まない電子通貨の補充を防止する。
【解決手段】自動改札機2A〜2Nは、ICカード10の電子通貨の残高から利用利金の全部又は一部を減算したときに、該ICカード10の減算後の電子通貨の残高及び識別情報をネットワーク3経由で管理サーバ4に出力する。管理サーバ4は、入力した識別情報に基づいてデータベース5からアドレス情報を読み出して電子通貨の補充を行うか否かを確認するための通知を行い、その後、電子通貨の補充を許可する許可指令が入力されることによってICカード10に対する電子通貨の補充を行うための処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通機関の利用料金等を電子通貨で支払うことのできる電子決済システムに関し、特に電子通貨の残高が設定額以下となった場合に電子通貨の補充を行う電子決済システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードなどに記録された電子通貨の残高が設定金額以下となった場合に、該ICカードに対して電子通貨の補充を自動的に行う電子決済システムが知られている。このようなシステムは、オートチャージ方式の電子決済システムと呼ばれており、例えば特許文献1には、ICカードに記録されている電子バリューから乗車料金を差し引いた際に電子バリューの残高が予め設定された補充判定額以下になると、自動改札機が予め設定された補充額と同額の電子バリューを補充することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−334284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなオートチャージ方式の電子決済システムでは、ICカードの使用者が電子通貨の補充を行わなくても、常に設定額以上の電子通貨がICカードに記録されていることになるので、使用者の手間を大幅に低減することができる。
しかし、上記従来技術においては、自動改札機を通過する際にICカードに記録されている電子通貨の残高が設定額以下となると、たとえ使用者が電子通貨の補充を望まない場合であっても自動的に電子通貨が補充されてしまうという課題ある。一方、電子通貨の補充を行うか否かをその場で使用者に確認することも考えられるが、そうすると自動改札機を通過する人(利用者)の流れを阻害して利用者に不便を与えたり、決済処理の効率が低下したりするおそれがある。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、使用者の手間の増加や決済処理の効率の低下を抑制しつつ、使用者が望まない電子通貨の補充を防止することのできる電子決済システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面による電子決済システムは、電子通貨の残高及び識別情報が記録された情報記録媒体の電子通貨の残高から支払い金額分を減算して決済を行う複数の決済端末機と、情報記録媒体に関連付けられたアドレス情報を格納するデータベースを有し、ネットワークを介して前記複数の決済端末機に接続された決済サーバと、を備えた電子決済システムであって、各決済端末機は、情報記録媒体の電子通貨の残高から前記支払い金額分の全部又は一部を減算したときに、該情報記録媒体の減算後の電子通貨の残高及び識別情報を前記決済サーバへと出力し、前記決済サーバは、決済端末機から入力した前記減算後の電子通貨の残高が設定額以下である場合には、該減算後の電子通貨の残高と共に入力した識別情報に基づいて前記データベースからアドレス情報を読み出し、読み出したアドレス情報を宛先として電子通貨の補充を許可するか否かを確認するための通知を行う一方、前記通知を行った後、電子通貨の補充を許可する許可指令が入力されることにより、前記減算後の電子通貨の残高が前記設定額以下となった情報記録媒体に対する電子通貨の補充を行うための処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
前記電子決済システムによれば、情報記録媒体の電子通貨の残高が設定額以下となると電子通貨の補充を行うか否かを確認するための通知が行われ、その後、電子通貨の補充を許可する許可指令が入力されてから電子通貨の補充が行われるので、決済時の処理や手続きの大幅な増加を招くことなく、情報記録媒体の使用者が望まない電子通貨の補充を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態による電子決済システムの概略構成を示す図である。
【図2】管理サーバによって実行されるチャージ関連処理のフローチャートである。
【図3】管理サーバによって実行されるチャージ関連処理のフローチャートである。
【図4】自動改札機によって実行されるチャージ関連処理のフローチャートである。
【図5】上記実施形態による電子決済システムの処理シーケンス図である。
【図6】上記実施形態の変形例による電子決済システムの処理シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態ついて説明する。
図1は、本発明の一実施形態による電子決済システムの概略構成を示している。本実施形態による電子決済システムは、例えば非接触型のICカード(本発明の「情報記録媒体」に相当する)10に記録された電子通貨によって鉄道などの利用料金の支払い(電子決済)を可能にするものであり、図1に示すように、複数の自動改札機(本発明の「決済端末機」に相当する)2A〜2Nと、ネットワーク3を介して複数の自動改札機2A〜2Nに接続された管理サーバ(本発明の「決済サーバ」に相当する)4と、を備える。
【0010】
ICカード10は、外部の機器と接続するためのインターフェース部と、電子通貨の残高や識別情報などを記録する記録部(メモリ部)と、を備える。ICカード10に記録されている電子通貨の残高は、専用の機器(例えば自動改札機)によって書き込み(書き換え)が可能である。また、識別情報は、各ICカードを特定・識別するための情報であって、例えばICカードのユーザIDが該当する。
【0011】
各自動改札機2A〜2Nは、通過する利用者のICカード10に記録された電子通貨の残高から利用料金(本発明の「支払い金額分」に相当する)を減算して決済を行うものであり、ICカード10に記録されている電子通貨の残高や識別情報など情報を読み取る情報読取部と、ICカード10に記録されている電子通貨の残高を書き換え可能な情報書込部と、ICカード10からと読み取った情報や管理サーバ4から提供される情報などを記憶する情報記録部と、自動改札機全体の動作を制御する制御部と、を備える。
【0012】
自動改札機による決済処理は例えば次のようにして行われる。ここでは、降車駅の自動改札機が、利用者のICカード10の電子通貨の残高から利用料金(全額)を減算して決済を行うものとして説明する。
まず乗車駅の自動改札機が通過する利用者のICカード10に乗車駅情報を書き込む。降車駅の自動改札機は、通過する利用者のICカード10から電子通貨の残高、識別情報及び乗車駅情報を読み出し、乗車駅情報に基づいて利用料金を算出し、電子通貨の残高から利用料金を減算する。そして、降車駅の自動改札機は、減算後の電子通貨の残高(すなわち、決済後の電子通貨の残高)をICカード10に書き込んでICカード10の電子通貨の残高を更新すると共にICカード10に記録されている乗車駅情報をクリアする。また、降車駅の自動改札機は、ICカード10の識別情報及び決済後の電子通貨の残高をネットワーク3経由で管理サーバ4へと出力する。
【0013】
管理サーバ4は、前記利用料金の電子決済に関する情報等を集中管理する機能を有する装置であり、各自動改札機2A〜2Nで使用可能なICカードに関する情報を格納したデータベース5を有する。このデータベース5は、管理サーバ4がアクセスして必要な情報を読み出すことができればよく、管理サーバ4に内蔵されるか、図1に示すように、管理サーバ4とは別に設けられる。データベース5に格納されている情報は各ICカードの識別番号に関連付けられており、各ICカードのユーザ情報や各ユーザに電子通貨の補充(チャージ)の許否を確認するメッセージ(以下「チャージ確認メッセージ」という)を通知するためのアドレス情報を含む。このアドレス情報は、例えば各ICカードの使用者の所有する携帯端末機のメールアドレスである。また、ICカードのユーザ情報には、電子通貨の補充を行った場合にその補充額と同額の引き落としを行う口座情報等が含まれる。
【0014】
そして、管理サーバ4は、自動改札機2A〜2Nの少なくとも一つからICカードの識別情報及び決済後の電子通貨の残高(以下単に「決済後残高」という)がネットワーク3を介して入力されると、入力された決済後残高を確認し、必要に応じて当該ICカードに対して電子通貨の自動補充(オートチャージ)を行うための処理を実行する。ここで、ICカードに対して電子通貨の自動補充を行うための処理とは、ICカードに対する電子通貨の補充を管理サーバ4が直接的に行う場合と、管理サーバ4が自動改札機2A〜2Nを介して間接的に行う場合との両方を含む。本実施形態における管理サーバ4は、各自動改札機2A〜2Nに電子通貨の補充指令(チャージ指令)を出力することにより、自動改札機2A〜2Nのいずれかを介して間接的にICカードに対する電子通貨の補充を行う。
【0015】
次に、ICカードに対する電子通貨の自動補充に関し、管理サーバ4及び各自動改札機2A〜2Nによって実行される処理(チャージ関連処理)について説明する。
図2は、管理サーバ4によって実行される第1のチャージ関連処理を示すフローチャートである。この処理は、自動改札機2A〜2Nの少なくとも一つからICカードの識別情報及び決済後残高が入力されると開始される。ここでは一つの自動改札機からICカードの識別情報及び決済後残高が入力された場合について説明するが、複数の自動改札機からICカードの識別情報及び決済後残高が入力された場合には並列処理が実施される。
【0016】
図2において、ステップS1では、入力された決済後残高と予め設定された第1判定額(本発明の「第2の設定額」に相当する)とを比較する。そして、決済後残高>第1判定額であればステップS2に進み、決済後残高≦第1判定額であればステップS5に進む。この第1判定額は、ICカードに対して電子通貨の自動補充を行うか否かを判定するために用いられるものであり、全てのICカードについて一律に設定されてもよいし、ICカード毎に個別に設定されてもよい。第1判定額がICカード毎に設定される場合には、各ICカードの第1判定額を識別情報に関連付けてデータベース5に格納しておき、前記比較を行う前に、入力されたICカードの識別情報に基づいて第1判定額をデータベース5から読み出すようにする。
【0017】
ステップS2では、入力された決済後残高と予め設定された第2判定額(本発明の「設定額」に相当する)とを比較する。そして、決済後残高≦第2判定額であればステップS3に進み、決済後残高>第2判定額であれば本フローを終了する。この第2判定額は、前記第1判定額よりも大きな額として設定されており、ICカードの使用者にチャージ確認メッセージを通知するか否かを判定するために用いられる。前記第1判定額と同様、全てのICカードについて一律に設定されてもよいし、ICカード毎に個別に設定されてもよい。第2判定額がICカード毎に設定される場合には、各ICカードの第2判定額を識別情報に関連付けてデータベース5に格納しておき、前記比較を行う前に、入力されたICカードの識別情報に基づいて第2判定額をデータベース5から読み出すようにする。
【0018】
ステップS3では、決済後残高と共に入力されたICカードの識別情報に基づいてデータベース5を検索して当該識別情報に関連付けられたアドレス情報を読み出す。ここではアドレス情報としてICカードの使用者の所有する携帯端末機のメールアドレスが読み出すものとする。
【0019】
ステップS4では、チャージ確認メッセージを作成し、作成したチャージ確認メッセージをステップS4で読み出されたアドレス情報によって特定される宛先に通知する。ここでは、チャージ確認メッセージとしてステップS3で読み出されたメールアドレスを送信先に設定した電子メールを作成して送信する。このチャージ確認メッセージは、ICカードの使用者が電子通貨の補充に関する各種設定を行うチャージ設定画面にアクセスするためのアドレス情報(インターネットアドレス)を含んでおり、また、必要に応じてICカードの使用者の便宜のためのその他の情報を含むことができる。
【0020】
上記ステップS1〜S4により、決済後残高が第1判定額よりも大きいものの第2判定額以下となったICカードの使用者には、自身が使用しているICカードの電子通貨の補充を行うか否かを確認するための通知が行われる。この通知によって、ICカードの使用者は、電子通貨の残高を確認することができるとともに自身の所有する携帯端末機等を利用してチャージ設定画面にアクセスすることができる。
なお、詳細な説明は省略するが、前記チャージ設定画面は管理サーバ4側で用意されたものであり、該チャージ設定画面にアクセスするにはアクセス認証が必要である。また、前記チャージ設定画面は、アクセスしたICカードの使用者がチャージの許否を選択できるとともにチャージを許可する場合にその補充額(チャージ額)を選択できるように構成されている。そして、ICカードの使用者が自身の携帯端末機等を介して前記チャージ設定画面にアクセスしチャージ許可及びチャージ額を選択することにより、管理サーバ4にはチャージ許可指令、チャージ額及びチャージが許可されたICカードの識別情報が入力される。
【0021】
一方、ステップS2において決済後残高≦第1判定額であればステップS5に進み、当該ICカードに対するチャージ指令を各自動改札機2A〜2Nに出力する。このチャージ指令は前記決済後残高と共に入力されたICカードの識別情報及びチャージ額を含む。ICカードの識別情報は、各自動改札機2A〜2Nにおいてチャージ対象であるICカードを特定するために利用される。また、チャージ額は、前記第2判定額よりも大きな額であればよく、全てのICカード10について一定としてもよいし、ICカード毎に個別に設定されてもよい。チャージ額が個別に設定されている場合には、各ICカードのチャージ額を識別情報に関連付けてデータベース5に格納しておき、前記チャージ指令を出力する前に、決済後残高とともに入力されたICカードの識別情報に基づいてチャージ額をデータベース5から読み出す。
【0022】
ステップS6では、自動改札機2A〜2Nのいずれかから前記チャージ指令に対するチャージ完了メッセージの通知を受けたか(受信したか)否かを判定する。このチャージ完了メッセージは、前記チャージ指令のチャージ対象であるICカードに対してチャージ処理を行った自動改札機によって作成され、管理サーバ4へと通知されるものである(後述する図3のステップS24を参照)。そして、自動改札機2A〜2Nのいずれかから前記チャージ指令に対するチャージ完了メッセージを受信するとステップS7に進む。
【0023】
ステップS7では、ステップS5で出力したチャージ指令を解除するための解除指令を各自動改札機2A〜2Nに出力する。この解除指令により、各自動改札機2A〜2NにおいてICカードに対するチャージ指令がキャンセルされる。
【0024】
図3は、管理サーバ4によって実行される第2チャージ処理を示すフローチャートである。この処理は、ICカードの使用者が前記チャージ用設定画面にアクセスしてチャージ許可及びチャージ額を選択すると、すなわち、チャージ許可指令、チャージ額及びチャージが許可されたICカードの識別情報が入力されると開始される。
【0025】
図3において、ステップS11では、チャージが許可されたICカードに対するチャージ指令を各自動改札機2A〜2Nに出力する。このチャージ指令は、入力されたチャージ額及びチャージが許可されたICカードの識別情報を含む。チャージが許可されたICカードの識別情報は、各自動改札機2A〜2Nにおいてチャージ対象であるICカードを特定するために利用される。
【0026】
ステップS12では、図2のステップS6と同様、自動改札機2A〜2Nのいずれかからチャージ完了メッセージを受けたか否かを判定する。
ステップS13では、図2のステップS7と同様、ステップS11で出力したチャージ指令を解除する解除指令を各自動改札機2A〜2Nに出力する。これにより、各自動改札機2A〜2Nにおいて前記チャージ指令がキャンセルされる。
【0027】
図4は、各自動改札機によって実行されるチャージ関連処理を示すフローチャートである。このチャージ処理は、管理サーバ4からチャージ指令が入力されると開始され、その解除指令が入力されるまで実行される。なお、上述したように、管理サーバ4から入力されるチャージ指令には、チャージ対象であるICカード(チャージ対象ICカード)を特定するための識別情報及びチャージ額が含まれている。
図4において、ステップS21では、通過する利用者のICカードから識別情報を読み込む。
ステップS22では、チャージ対象ICカードであるか否かを判断する。具体的には、ステップS21で読込んだ識別情報と、前記チャージ指令に含まれる識別情報とを比較して、両者が一致していればチャージ対象ICカードであると判断してステップS23に進み、両者が不一致であれば本フローを終了する。
【0028】
ステップS23では、通過する利用者のICカード(すなわち、チャージ対象ICカード)から電子通貨の残高を読み込む。
ステップS24では、ステップS24で読み込んだ電子通貨の残高と前記第2判定額とを比較する。そして、電子通貨の残高≦第2判定額であればステップS25に進み、電子通貨の残高>第2判定額であればすでにチャージ処理が行われていると判断して本フローを終了する。
【0029】
ステップS25では、チャージ対象ICカードに対してチャージ処理を実行する。すなわち、ステップS23で読み込んだ電子通貨の残高に前記チャージ指令に含まれるチャージ額を加算し、加算後の電子通貨をチャージ対象ICカードに書き込む。
ステップS26では、チャージ完了メッセージを作成して管理サーバ4に通知する。チャージ完了メッセージには、チャージ処理を実行したICカードの識別情報が含まれており、これにより、管理サーバ4は解除すべきチャージ指令を特定することができる。
【0030】
図5は、上記実施形態による電子決済システムの処理シーケンス図である。この処理シーケンス図は、決済後のICカードの電子通貨の残高が前記第1判定額よりも大きく前記第2判定額以下の場合を示している。
降車駅の自動改札機は、通過する利用者のICカードから乗車駅情報、電子通貨の残高及び識別情報を入力すると、電子通貨の残高から利用料金を減算して決済を行い、ICカードの決済後残高及び識別情報を管理サーバに出力する。管理サーバは、入力された決済後残高が第1判定額以上で第2判定額未満であると判断すると、当該ICカードの使用者の所有する携帯端末機にチャージ確認メッセージを通知する。この通知を受けたICカードの利用者が前記携帯端末機を介してチャージ設定画面にアクセスしてチャージ許可及びチャージ額を選択すると、管理サーバにチャージ許可指令及びチャージ額が入力される。管理サーバはチャージ許可指令を入力すると、当該ICカードに対するチャージ指令(チャージ額を含む)を全ての自動改札機に出力し、各自動改札機はチャージ対象となるICカードの識別情報及チャージ額を記録する。その後、各自動改札機は、使用されるICカードがチャージ対象のICカードであるか否かを記録した識別情報に基づいて判断し、チャージ対象のICカードの電子通貨の残高が第2判定額未満であることを確認すると、当該ICカードに対するオートチャージを実行する。その後、オートチャージを実行した自動改札機はチャージ完了メッセージを管理サーバに出力し、管理サーバは全ての自動改札機に解除指令を出力する。
【0031】
本実施形態による電子決済システムによれば、ICカードの電子通貨の残高が第2判定額未満となると、ICカードの使用者の所有する携帯端末機にチャージ確認メッセージが通知され、このチャージ確認メッセージに基づきICカードの使用者がチャージを許可した場合にICカードに対するオートチャージが実施される。一方、ICカードの電子通貨の残高が第1判定額(<第2判定額)未満となると、前記チャージ確認メッセージを通知することなく、ICカードに対するオートチャージが実施される。これにより、ICカードの電子通貨の残高不足を抑制しつつ利用者の望まないチャージを防止することができ、よりユーザフレンドリーな電子決済システムとすることができる。
【0032】
上記実施形態では、ICカードの記録された電子通貨によって利用料金を支払うようにしているが、ICカードに代えてICカード機能付き携帯端末機としてもよい(上記実施形態の変形例)。この場合、各自動改札機2A〜2Nは、通過する利用者のICカード機能付き携帯端末機に記録された電子通貨の残高から利用料金を減算して決済を行い、データベース5には各ICカード機能付き携帯端末機のメールアドレスを格納しておく。
そして、図2のステップS3において、決済後残高≦第2判定額であるICカード機能付き携帯端末機のメールアドレスを読み出し、図2のステップS4において、ステップS3で読み出したメールアドレスを送信先に設定したチャージ確認メッセージを作成して送信する。その他については基本的に上記実施形態と同様の処理とすることができる。
【0033】
但し、ICカード機能付き携帯端末機の場合には、当該ICカード機能付き携帯端末機によってチャージ設定画面にアクセスすることができる。そこで、決済後残高≦第2判定額であるICカード機能付き携帯端末機の利用者が当該ICカード機能付き携帯端末機によってチャージ設定画面にアクセスしてチャージ許可及びチャージ額を選択すると、管理サーバ4はその場で(すなわち、オンラインで)当該ICカード機能付き携帯端末機に対して電子通貨の補充を行うようにする。つまり、管理サーバ4が直接的に電子通貨の補充を行う。このようにすれば、上記図3の処理、すなわち、チャージ許可指令に基づく各自動改札機へのチャージ指令の出力とその解除指令の出力が不要になるので、その分、システムの負担を軽減できる。
【0034】
図6は、管理サーバが自動改札機を介さずに直接的に電子通貨の補充を行う場合の電子決済システムの処理シーケンス図であり、図5に対応するものである。
降車駅の自動改札機は、通過する利用者のICカード機能付携帯端末機から乗車駅情報、電子通貨の残高及び識別情報を入力すると、電子通貨の残高から利用料金を減算して決済を行い、決済後残高及び識別情報を管理サーバに出力する。管理サーバは、入力された決済後残高が第1判定額以上で第2判定額未満であると判断すると、当該ICカード機能付き携帯端末機にチャージ確認メッセージを通知する。この通知を受けたICカード機能付き携帯端末機を介してチャージ設定画面にアクセスして利用者がチャージ許可及びチャージ額を選択すると、チャージ許可指令及びチャージ額が管理サーバに入力され、管理サーバは当該ICカード機能付き携帯端末機に対するオートチャージをオンラインで実行する。
【0035】
なお、上記実施形態及びその変形例では、降車駅の自動改札機がICカード又はICカード機能付き携帯端末機の電子通貨の残高から利用料金を減算して決済を行い、決済後残高及び識別情報を管理サーバに出力している。このため、特にICカードに対する電子通貨の補充は原則として乗車駅の自動改札機によって行われることになる。しかし、これに限るものではなく、例えば、乗車駅の自動改札機がICカード又はICカード機能付き携帯端末機の電子通貨の残高から最低利用料金を減算し、その減算後の電子通貨の残高及び識別情報を管理サーバに出力するようにしてもよい。この場合においては、前記最低利用料金が本発明の「支払い金額分の一部」に相当する。
【符号の説明】
【0036】
2A〜2N…自動改札機、3…ネットワーク、4…管理サーバ、5…データベース、10…ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子通貨の残高及び識別情報が記録された情報記録媒体の前記電子通貨の残高から支払い金額分を減算して決済を行う複数の決済端末機と、
情報記録媒体に関連付けられたアドレス情報を格納するデータベースを有し、ネットワークを介して前記複数の決済端末機に接続された決済サーバと、
を備えた電子決済システムであって、
各決済端末機は、情報記録媒体の電子通貨の残高から前記支払い金額分の全部又はその一部を減算したときに、該情報記録媒体の減算後の電子通貨の残高及び識別情報を前記決済サーバに出力し、
前記決済サーバは、決済端末機から入力した減算後の電子通貨の残高が設定額以下である場合には、該減算後の電子通貨の残高と共に入力した識別情報に基づいて前記データベースからアドレス情報を読み出し、読み出したアドレス情報を宛先として電子通貨の補充を許可するか否かを確認するための通知を行う一方、
前記通知を行った後、電子通貨の補充を許可する許可指令が入力されることにより前記減算後の電子通貨の残高が前記設定額以下となった情報記録媒体に対する電子通貨の補充を行うための処理を実行する、電子決済システム。
【請求項2】
前記決済サーバは、前記許可指令が入力されると、前記電子通貨の補充が許可された情報記録媒体の識別情報を含む補充指令を前記複数の決済端末機に出力し、
各決済端末機は、前記決済サーバから入力した補充指令に含まれる識別情報と一致する識別情報を有する情報記録媒体が使用され、かつ、該情報記録媒体の電子通貨の残高が前記設定額以下である場合に、該情報記録媒体に対して電子通貨の補充を行う、請求項1に記載の電子決済システム。
【請求項3】
前記情報記録媒体は、ICカード又はICカード機能付き携帯端末機である、請求項1又は2に記載の電子決済システム。
【請求項4】
前記情報記録媒体は、ICカード機能付き携帯端末機であり
前記情報記録媒体に関連付けられたアドレス情報は、前記ICカード機能付き携帯端末機のアドレス情報である、請求項1又は2に記載の電子決済システム。
【請求項5】
前記決済サーバは、前記通知に基づいて前記ICカード機能付き携帯端末機から前記許可指令が入力されると、該ICカード機能付き携帯端末機に対してオンラインで電子通貨の補充を行う、請求項4に記載の電子決済システム。
【請求項6】
前記決済サーバは、決済端末機から入力した前記減算後の電子通貨の残高が前記設定額よりも低い第2の設定額以下である場合には、前記通知を行うことなく、当該情報記録媒体に対する電子通貨の補充を行うための処理を実行する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の電子決済システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−43329(P2012−43329A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185949(P2010−185949)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】