説明

電子注入用のナノ構造半導体材料を有するアノードを用いたエレクトロルミネッセンス法および素子

本発明の実施形態には、電界放出カソードから隙間を横切って放出される電子をナノ構造の半導体材料に注入して光を発生する方法および素子が含まれ、電子は分離電界放出カソード(separate field emitter cathode)から放出され、隙間に印加された電圧によって加速され、前記アノードの一部をなすナノ構造材料の表面に向かう。ナノ構造材料では、電子は電子−ホール(e−h)再結合され、その結果、エレクトロルミネッセント(EL)放出が起こる。発光素子の好適な実施形態では、真空密閉容器には、電界放出カソードが収容される。前記真空密閉容器には、アノードも収容され、該アノードは、隙間によって前記カソードから隔てられ、前記カソードから放出される電子を受け取るように配置される。前記アノードには、前記カソードからの電子注入を受け取り、前記電子注入に応答して電子を発生する半導体発光ナノ構造が含まれる。外部電極接触部によれば、前記アノードとカソードの間に電圧差を印加して、前記カソードから電子を放出でき、その結果、前記アノードの半導体発光ナノ構造から光子を放出できる。また、本発明の実施形態には、従来の平面型LEDおよびナノワイヤーアレイ型の発光ダイオード並びにCFLに対して、ナノ構造の半導体材料を蛍光体として使用することが含まれる。従来の平面型LEDに使用する場合、前記ナノ構造は、量子ドット、ナノチューブ、樹枝状に分岐したナノ構造、ナノフラワー、四脚構造、三脚構造、軸ヘテロ構造、ナノワイヤーヘテロ構造の形態を取ってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気を光エネルギーに変換する分野に関する。本願発明には、発光素子と表示装置が含まれる。
【背景技術】
【0002】
世界規模のエネルギーの需要の増大という問題に対処するには、エネルギー発生と転換についての継続的なアプローチと、エネルギーの効率的な使用方法が必要である。電気は、主に、照明において消費され、その消費量は、全世界では19%、米国では34%を占めている。最近、米国の照明市場は、以下の各種のタイプのランプに分類される。つまり、63%が白熱ランプであり、35%が蛍光ランプであり、2%がハロゲンランプである。蛍光ランプの効率は15〜25%(50〜80lm/W)であるのに対し、白熱電球の効率は僅か5%(15lm/W)である。
【0003】
固体発光素子は、一般に発光ダイオード(LEDs)に基づいて構成され、高効率、高品質、およびメンテナンスの頻度の低さによって、照明産業に革命をもたらすようなポテンシャルがあり、一般的な照明で消費されるエネルギーを半分に低減できる。例えば、30%の効率(350mAで100lm/W)は、市販の白色LEDにおいて実現されていて、50%の効率(20mAで150lm/W)は、実験室での白色LED装置において実現されている。白熱ランプを(小型の蛍光ランプまたはCFLsを含む)蛍光ランプや固体発光素子に切り換えると、かなりのエネルギーを節約できるので、多くの政府に、白熱ランプの使用を段階的に廃止する規制を可決させる動機を与えた。
【0004】
従来の白熱ランプの光源は、スペクトル幅が広く、心地よい白色光を発生する非干渉性の光を照射するので、多くの人に好まれている。これに対して、特定のLEDは、特定の色の光を放射し、該特定の色の光は、LEDを構成する半導体材料のバンドギャップで決まる。白色光を発生するアプローチの1つとして、異なる色、つまり、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の複数のLEDを用いることがある。
【0005】
別のアプローチとして、蛍光体を用いて、LED、例えば、GaNベースのLEDからの光を青色光または近紫外光に変えること、つまり、蛍光体または蛍光体の混合物を「ポンプ」することがある。複数のLEDアプローチによれば、スペクトル線は狭くなり、該アプローチは、緑色のLEDの効率が低いので実用が制限される。一方で、従来の青色LEDに黄色の蛍光体を塗布すると、金白色の光が得られるが、色を調節できない。LEDの波長を変換する代替の光源を使用するアプローチもあった。波長変換型のLEDを用いた方法の一例が、キムによって2008年8月7日に公開された米国特許公報第2008/0185604号に開示されている。キムによれば、紫外、青色または緑色の波長範囲で放射する発光ダイオードが開示されている。線状の均質なナノワイヤーまたは線状のコアシェルナノワイヤ蛍光体によって、ダイオードからの光が長波長に変換される。
【0006】
従来の発光ダイオードの構造に基づいた固体発光素子に関する別の課題として、従来の固体発光ダイオードが白色照明で実施されたパワーモデルに適合しないことがある。パワーグリッドは、高電圧低電流供給という考えに基づいて設計される。米国においては、住宅および事業用の電気の供給は、一般に、110Vまたは220Vで定格供給され、同様な規定は世界の他の地域で使用されている。従来の一般的な照明器具の理想的で適切な代替品は、白熱電球の代替品として役立ち、電流と電圧のいずれかを大きく上げる必要のある変圧器に頼ることなしに、標準的な住宅または事業用電源における電圧や電流の制約に対処することができる。小型の蛍光電球は、該要求を満足する成功した市販品であるが、その多くは、従来の白熱光源に比べて、スペクトルの心地良さが低下することが分かっている。小型の蛍光電球は、水銀を含むので、環境および健康に対するリスクも生ずる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のブラウン管および同様な素子では、従来の蛍光体、これは一般に遷移金属または貴金属化合物であるが、該蛍光体を励起するために、電子が用いられる。蛍光体では、追加のエネルギーを受け取る前に光子を放射して、電荷を消散する必要があるので、その効率は制限される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態には、電界放出カソードから隙間を横切って放出される電子をナノ構造の半導体材料に注入して光を発生する方法と素子が含まれる。電子は、分離電界放出カソード(separate field emitter cathode)から放出され、隙間に印加される電圧によって、前記アノードの一部をなすナノ構造材料に向けて加速される。ナノ構造材料では、電子は、高効率のエレクトロルミネッセンス(EL)放出の結果、電子−ホール(e−h)の再結合がなされる。発光素子の好適な実施形態では、真空密閉容器は、電界放出カソードを収容する。また、前記真空密閉容器にはアノードが収容され、該アノードは、隙間によって前記カソードから隔てられ、前記カソードから放出される電子を受け取るように配置される。前記アノードは、前記カソードからの電子注入を受け取り、該電子注入に応答して光子を発生する半導体発光ナノ構造を有する。外部電極接触部によれば、前記アノードとカソードの間に電圧差を印加して、前記カソードから電子を放出でき、その結果、前記アノードの半導体発光ナノ構造から光子を放出できる。
【0009】
また、本発明の実施形態には、従来の平面型LEDおよびナノワイヤーアレイ型の発光ダイオード並びにCFLに対して、ナノ構造の半導体材料を蛍光体として使用することが含まれる。従来の平面型LEDに使用する場合、前記ナノ構造は、量子ドット、ナノチューブ、樹枝状に分岐したナノ構造、ナノフラワー、四脚構造(tetrapod)、三脚構造(tripod)、軸ヘテロ構造、ナノワイヤーヘテロ構造の形態を取ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】本発明に係る電子放出カソードと半導体ナノ構造発光アノードを備えた発光素子の好適な実施形態を示す図である。
【図1B】本発明に係る電子放出カソードと半導体ナノ構造発光アノードを備えた発光素子の好適な実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係る電子放出カソードと半導体ナノ構造発光アノードを備えた発光素子の好適な実施形態を示す図である。
【図3】本発明に係る電子放出カソードと半導体ナノ構造発光アノードを備えた発光素子の好適な実施形態を示す図である。
【図4A】本発明の素子のアノード中で使用される発光ナノワイヤーのヘテロ構造の異なる類型を示す図である。
【図4B】本発明の素子のアノード中で使用される発光ナノワイヤーのヘテロ構造の異なる類型を示す図である。
【図4C】本発明の素子のアノード中で使用される発光ナノワイヤーのヘテロ構造の異なる類型を示す図である。
【図4D】本発明の素子のアノード中で使用される発光ナノワイヤーのヘテロ構造の異なる類型を示す図である。
【図4E】CFLの光源について、図4A〜4Dに示した構造を蛍光体として使用する発光素子を示す図である。
【図5】図1Aに示したような発光素子を形成する製造プロセスの好適な実施形態を示す図である。
【図6】ナノ構造の蛍光体とナノワイヤーアレイのLED光源を備えた発光素子の好適な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態には、電界放出カソードから隙間を横切って放出される電子をナノ構造の半導体材料に注入して、光を生成する方法および素子が含まれる。本発明の方法と素子においては、従来の発光ダイオード(LEDs)中で生じるように、p/n接合を通過する電子による光は発生しない。その代わりに、前記電子は、分離電界放出カソード(separate field emitter cathode)から放出され、隙間の間の電圧によって、前記アノードの一部をなすナノ構造材料の表面に向けて加速される。ナノ構造材料では、高効率のエレクトロルミネッセント(EL)効果の結果、前記電子は電子−ホール(e−h)再結合される。
【0012】
発光素子の好適な実施形態の一つでは、真空密閉容器には、電界放出カソードが収容される。また、前記真空密閉容器には、アノードが収容され、該アノードは、隙間によって前記カソードから隔離され、前記カソードから放出された電子を受け取るように配置される。前記アノードは、前記カソードからの電子注入を受け取り、該電子注入に応答して光子を発生する半導体発光ナノ構造を有する。外部電極接触部によれば、前記アノードとカソードの間に電圧差を印加して、前記カソードから電子を放出でき、その結果、前記アノードの半導体発光ナノ構造から光子を放出できる。
【0013】
本発明の発光素子によれば、数多くの利点がもたらされる。本発明の素子によれば、小さいエネルギー消費で高輝度が得られるので、その結果、発光効率と光取り出し効率が高くなる。本発明の素子は、白熱電球と比べて低温で動作できる。豊富な色(RGBW)、つまり、従来のLEDよりも豊富な色を選択でき、その選択肢はCFL電球と白熱電球よりも遥かに多い。本発明の素子は、調光することができ、モジュール式であって大きさを変更でき、水銀フリーであり、CFL電球よりも環境に対してクリーンであり、薄膜LEDに比べて簡単に素子を製造でき、安価に製造でき、白熱電球(10倍の寿命と推定される)やCFL(2倍の寿命と推定される)に比べて運転寿命が長い。本発明の素子の用途には、一般的な照明、電気標識、発光ダイオードの代用品として、固体発光素子、交通信号灯、自動車用白熱灯器具、表示装置のバックライト、水処理用の紫外線LED、データ保管、情報処理用の青色LEDおよびレーザダイオード、および(1300nmまたは1550nmの波長の)IRで操作する電気通信応用が含まれる。
【0014】
本発明の発光素子の効率は、公知の固体光源で得られた効率を遥かに上回り、好適な実施形態の素子では、その効率は約90%(40〜150lm/W)にできると推定される。好適な実施形態の素子は、従来の電球の形態を取ることができ、従来の高電圧低電流電源で動作できる。前記アノードとカソードの間に適当な隙間を設けて製造すれば、変圧器を用いずに標準的な電圧で確実に動作できる。好適なカーボンナノチューブ電界エミッタからの電界放出では、一般に、約1V/ミクロンの電圧が要求されるので、隙間が約110ミクロンの場合には110Vで動作できる。本発明の素子は、モジュールユニットとして形成されることもでき、一般的な照明、および表示装置、カメラのフラッシュ、キーパッド製品およびバックライドなどの多くの用途で使用するためにスケールアップすることもできる。好適な実施形態では、約50〜200ミクロンの隙間が使用される。前記隙間は、前記材料と前記密閉容器内の圧力に応じて決まる。10−5Torrあるいはそれ以上である真空密閉容器内の所定の圧力に対して、隙間は、10mmまでにすることができ、このような圧力は、変圧器や安定器を使用する場合にも当て嵌まる。
【0015】
好適な実施形態では、エレクトロルミネッセントアノード部は、ガラス基板上のITO表面に、III−V族のナノワイヤーを有する。前記ナノワイヤーの寸法(半径、長さ)は、相対的なファセット/横方向表面が導波放出に所望の寄与をするように最適化することができる。前記ナノワイヤーの配置と配向は、a)前記カソードからの電子流束によって前記ナノワイヤー表面が最適に覆われる、および/または、b)端部ファセットまたは横方向表面から妨げられずに送出される光を最大にするように選ぶことができる。
【0016】
好適な実施形態でのアノードとカソードは、軸方向または半径方向に配置された互いに平行な平板である。別の例示的な実施形態においては、注入型の発光ダイオードは、円筒状に配置されたカソードとアノード部を備え、該円筒状の配置は上述した第1の実施形態の平行平板配置に類似する。つまり、平行平板に代えて、内側の円筒をカソード/電子放出部とし、外側の円筒をアノード/エレクトロルミネセント部とする同心円筒形にすることもできる。この同心円筒形の実施形態の好ましい特徴(カソードとアノード部の部品、色の調節に対するアプローチ、寸法など)は、平行平板の実施形態の特徴に類似する。
【0017】
注入型の発光素子の好適な実施形態は、次のような性能パラメータ、つまり、90%を超える電子から光子への転換、100%までの光の引き抜き、98%のガラス透過(透過率は90.7%であり、1.8%は吸収され、7.5%は反射される)を伴って作動すると予想される。その効率は40〜150L/W以上であり、総輝度は500〜1000Lであり、運転温度は、冷熱(<50C)であり、色(CRI)は良好(92)であり、寿命は50,000時間であり、入力電力は6W@150L/Wであり、出力は900Lである。
【0018】
ここで、本発明の好適な実施形態を図面を参照して論じる。図面は、模式図を含んでいるが、当業者であれば、当該技術分野における一般的な知識と以下の詳細な説明を考慮すれば理解できる。図中において、特徴部分は強調するために誇張されていて、実寸ではない。
【0019】
図1Aは、発光素子10の好適な実施形態を示している。前記素子は、電界放出カソード14を収容する真空密閉容器12を有する。また、真空密閉容器12には、アノード16が収容され、該アノードは、隙間18によってカソードから隔てられ、カソードから放出される電子を受け取るように配置される。隙間18は、絶縁スペーサ19によって定められる。アノード16は、カソード14から注入された電子を受け取り、電子の注入に応答して光子を発生する半導体発光ナノ構造20を有する。外部電極接続部22によって、アノード16とカソード14の間に電圧差を印加でき、カソードから電子放出を励起でき、その結果、アノードの半導体発光ナノ構造から光子を放出できる。真空密閉容器12と基部24は、標準的な電球の形状を取っていて、電極22は突起部として図示されているが、従来のネジ−ソケット接続も使用できる。外部電源からの出力を変換するのに変圧器が必要な場合、基部24に変圧器26を収容してもよい。電子放出ナノ構造として使用できるように、トンネル電子放出素子を用いて、カソード14を形成してもよい。図1Aの実施形態において、ナノ構造の電子放出素子の例は、好ましくは垂直配向されたカーボンナノチューブ28である。例示的な実施形態の一つでは、注入型の発光アノードは、エレクトロルミネッセントナノワイヤアレイを用いて、平板カソード部と平行平板アノード部を対面させて配置される。カソードまたは電子放出素子は、銅板またはグリッドの一表面に分散して、あるいはアレイ状に配置されたカーボンナノチューブ(CNT)からなると好ましい。前記銅板またはグリッドは、所望ならば複数のポストまたは銅ナノロッドアレイを用いて形成できる。CNTの配向と空間配置によれば、放出される電子流束を最適化できる。
【0020】
他のナノ構造の電子放出素子を用いて、電界放出カソードを形成することもできる。好適なナノ構造の電子放出素子には、例えば、アルミニウム、金、クロム、銅、酸化インジウムスズなどの金属板上で成長した垂直配向のCNT、SiNiナノワイヤーおよびZnOナノワイヤーが含まれる。他の好適な電子放出素子には、LaB、ケイ化コバルトナノワイヤー、およびInナノワイヤー、ケイ素ナノワイヤーが含まれる。他の好適なナノチューブ電子放出素子には、ケイ化コバルトナノチューブ、Inナノチューブ、ケイ化ニッケルナノチューブ、ケイ素ナノチューブ、ZnOナノチューブが含まれる。Cuグリッド、ITOガラス、ZnO/ガラスなどの導電マトリックス上に垂直または横方向に配置された金属ナノワイヤー/ナノチューブが使用されてもよい。例えば、ZnOナノワイヤーなどの特定の材料が、カソード上においてナノ構造の電子放出素子として使用されてもよく、アノード上において(この例では紫外線光子を放出する)発光ナノ構造材料として使用されてもよいことが注目されるべきである。特定の好適な実施形態では、同一のナノ構造材料は、アノードとカソードの一部となっていて、光子と電子を放出する役割を担うことがそれぞれ要求される。
【0021】
好適な実施形態でのアノードは、金属電極上にアレイ状またはランダムに分散して配置される複数の発光半導体ナノワイヤーを有すると好ましい。前記ナノワイヤーは、現在使用できる何らかの方法(および将来開発される可能性のある方法)で成長されてもよく、前記方法には、化学気相成長法(CVD)、有機金属気相成長法(MOCVD)、分子ビームおよび化学ビームエピタキシ(CBEおよびMBE)(金属あるいはシーディング酸化物材料を用いても用いなくてもよい)、HVPE(ハイブリッド気相エピタキシ)、溶液合成およびテンプレート補助式の電気化学合成などが含まれる。CVD、MOCVD、MBEなどを用いて、ナノワイヤーを、酸化インジウムチタン(ITO)、FTO、縮退ドープしたケイ素、金属(銅)などの導電基板上に直接成長させる。後に電極として使用できる金属コーティングされた基板を用いて、溶液成長が実行されてもよい。ナノワイヤーは、制御された寸法で製造されてもよく、導電率を調節できてもよく、バンドギャップを調節できてもよく、可撓性の表面特性を有してもよい。典型的なナノワイヤーは、1〜100μmの範囲の長さと2〜100nmの範囲の直径を有する。ナノワイヤーの長さが長く幅が狭いと、電子が吸着する表面が広くなるので好ましい。
【0022】
前記アノードのナノ構造のエレクトロルミネッセント材料は、これに限定される訳ではないが、p型半導体であると好ましい。p型半導体の例には、p型GaNとp型ZnOが挙げられる。GaNとZnOは、約3.4eVの直接バンドギャップを有し、紫外線を放出する。紫外エレクトロルミネッセント放出は、浄水などの衛生および殺菌用途に直接使用されてもよいし、電気標識、一般的な照明などの用途向けの色の調節が可能なRGB蛍光体の励起光源として使用されてもよい。
【0023】
アノードに適したナノ構造の半導体材料には、AlGaN、GaN、InGaN、AlInGaN、InN、AlGaInP、AlGaAs、GaAs、AlInGaAs、AlInGaAsP、AlInGaAsN、AlInGaPN、CdSe、CdS、CdTe、CdSSe、CdSSeTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnCdS、ZnCdSe、ZnCdTe、ZnO、ZnCdO、MgZnO、ZnBeO、ZnMgCdO、ZnMgBeOなどから形成されるナノワイヤーが含まれる。ナノワイヤー成長用の材料に、GaN、InGaN、AlInN、AlGaN、AlInGaNなどのIII族窒化物、例えば、GaAs、InGaAs、AlInGaAs、InP、InGaP、AlInGaP、InAsP、AlInGaAsP、AlInGaAsPN(希薄窒化物)などのIII族ヒ化物およびリン化物、ZnO、CdSe、ZnS、BeZnCdO、MgZnCdO、ZnCdS、ZnCdTe、ZnSSeTeなどのII−VI族半導体、およびSiおよびSiGeナノ構造などのIV族半導体、並びにVなどの他の酸化物半導体を選ぶことも含まれる。In1−xGaN合金のような特定の組成の系の範囲内において、Gaの割合xを変えると、赤外線の領域から可視光の領域を通って紫外線の領域までのエネルギーをカバーするようにハンドギャップを調整できる。白色光の場合、ナノワイヤー蛍光体、例えば、xが0.5に近い値を有するIn1−xGaNナノワイヤーは、赤色光と緑色光とを組み合わせた光を放出すると好ましい。ナノワイヤーは、直接バンドギャップを有するIII−V族およびII−VI族の半導体材料からなり、均一組成を有していて、合成中に、ありふれた方法を使って、主要な特性を調製して合成できる。さらに、ナノワイヤー超格子、半径方向ヘテロ構造および分岐ヘテロ構造の成長によって、ナノワイヤー構造を制御して加工すると、機能を高めることと特有の材料を組み合わせることが可能になる。AlInGan、AlGaInAsP、MgCdZnO、CdZnSSeTeなどのナノワイヤーおよびヘテロ構造中の組成(合金)を変えれば、発光色を自在に調節できる。有機ナノワイヤー半導体は、[Ru(bpy)3]2+(PF6−)2などであり(ここで、bpyは2,2’−ビピリジンである)、共役重合体は、ポリ(フェニレンビニレン)(PPV)、ポリパラフェニレン(PPP)、ポリフルオレン(PF)およびその誘導体などである。
【0024】
前記発光は、一般に、例えば、GaN、ZnOなどの広いバンドギャップを有する材料からの紫外/青色発光、およびInGaN、CdSe、AlInGaPなどの狭いバンドギャップを有する半導体からの緑色/赤色発光である。バンドギャップ工学によれば、発光色(紫外、可視、赤外)、色の混合(白)および色質管理(演色性および色温度)を調節できる。アノードの半導体発光ナノ構造材料によれば、大きな接合面積として有効な領域、あるいはナノ構造の全体またはその一部によって形成されて活性を有する再結合領域が得られる。アノードの発光材料を半導体ナノワイヤーにすれば、小型化のフィーチャー(feature)(直径<500nm)、狭い粒度分布、非凝集性および大きな表面/体積比が得られる。種々のヘテロ構造または超格子によれば、従来の酸化物蛍光体に比べて優れた電荷損失(導電率)が得られる。前記ナノ構造は、量子ドット、ナノワイヤー、ナノチューブ、樹脂状に分岐したナノ構造、ナノフラワー、四脚構造、三脚構造、軸方向ヘテロ構造、コアシェル(半径方向)ヘテロ構造の形態を取ってもよい。ナノ構造成長材料の選択は広範に及び、発光色(紫外、RGB、赤外)、色の混合(白)および色質管理(演色性および色温度)などを単純かつ簡単に調節できる。一例としてGaNの場合、ナノワイヤーにする場合に比べて、GaNを薄膜状に形成する場合は、製造時に高価な基板(例えば、SiC、サファイア)が必要になるので、これらの利点が特に顕著である。GaNナノワイヤーは、他の種類の半導体ナノワイヤーに比べて頑強である。さらに、緑色および赤色に発光するナノワイヤー中に、GaN/InGaNヘテロ構造のInGaNナノワイヤーを合成すれば、色を簡単に調節できる。本発明の素子においては、半導体ナノワイヤーによれば、放射を伴う電子−ホール再結合をもたらす電子のナノワイヤーへの電子照射に続いて、エレクトロルミネッセンスが得られる。本発明の特定の用途に用いる半導体ナノワイヤーは、成長法の違い、多方面にわたる材料選択、およびヘテロ構造の形成、バンドギャップの調節などの能力に応じて選ばれる。
【0025】
別の例としてZnOの場合、材料コストが低く、毒性のある前駆体を含まず、化学気相成長法(CVD)および溶液法から簡単に合成でき、実質的には全ての基板から単結晶ナノワイヤーを成長できる。ZnOの場合、マグネシウムまたはベリリウムとカドミウムとを合金化することによって、色をさらに簡単に調節できる。合金化すれば、紫外まで(ZnMgOおよびZnBeO)、あるいは可視スペクトルまで(ZnCdO)調節できる。Pr3+、Eu3+、Er3+などの貴金属イオンをドープすると、合成中、例えば、溶液からのナノワイヤーの成長中に、紫外から赤外まで簡単に色を調節できる。好適な実施形態では、N型ZnOは、カソードのナノ構造電子放出素子としてもアノードのナノ構造発光素子としても使用される。
【0026】
別の例では、広いバンドギャップを有する半導体ナノ構造を用いるだけで、紫外光のみを放射する素子を製造できる。紫外光源には、多くの重要な用途がある。用途の一例には、水処理用光源とすることがある。赤外線(1300nmまたは1550nm)を放射する半導体材料を用いると、本発明の素子は、多くの電子通信用光源として有用である。
【0027】
特定の構造の例には、組成の異なる、またはp/nドーピングされた円筒状のシェルを半径方向に形成するナノワイヤーが含まれる。該シェルによれば、量子井戸中への光子の閉じ込めによって、放出効率を高めることができ、色を調節/混合できる。軸方向での実現可能な別の例は、組成の異なる、またはp/nドーピングされたエンドツーエンドロッドを形成することである。該エンドツーエンドロッドによれば、同様に、色を調節/混合できる。樹脂形状での別の実現可能な例、つまり、親(parent)ナノワイヤーから垂直に成長する娘(daughter)ナノワイヤーの例では、電子を注入およびe−h再結合する表面積が増えるので、色の調節/混合に加えて、放出効率を高めることができる。
【0028】
ナノ構造のp型GaNは、p型GaNナノワイヤーがアレイ状をなしたもの、または分散したものであると好ましい。該p型GaNナノワイヤーは、化学気相成長法または有機金属化学気相成長、MBEなどによって、触媒としてニッケル、金を備え、ドーパントとしてマグネシウム(ジメチルマグネシウム)を備えたサファイア基板上で成長する。他の発光ナノワイヤーには、GaNナノワイヤー上に塗布されたp型GaNまたはp型InGaNシェルが含まれる。発光ヘテロ構造は、n型GaN/InGaN/p型GaNコア/鞘ナノワイヤー、またはn型GaN(InGaN/GaN)n MQW/p型GaNコア/多重シェルナノワイヤーヘテロ構造のように使用することもできる。
【0029】
好ましい実施形態では、アノードには、p型ZnOナノワイヤーがアレイ状をなす発光ナノ構造式のp型ZnOが含まれる。該p型ZnOナノワイヤーは、CVD、MOCVD、MBE法によって、ドーパントとして窒素、リン、ヒ素、またはインジウム/窒素、ガリウム/窒素を備えたサファイア、ガラスなどの基板上で成長する。これに代えて、n型ZnO/p型ZnO、ZnO/CdZnO/p型ZnO、Zn)/(CdZnO/ZnO)n MQW/p型ZnOコア/シェルまたはコア/多重シェルナノワイヤーヘテロ構造などが用いられてもよい。
【0030】
アノード中で用いられるエレクトロルミネッセントナノ構造材料は、小さな形状係数(small form factor)、大きな表面積、および高い放出効率を有すると都合がよい。カソード部とアノード部の設置領域は、単一の発光素子ユニットまたはモジュールに対して20μm×20μm程度の大きさにすることができ、大面積の素子ユニットを形成して、および/または数個のユニットを一緒に傾けて、あるいは集合させて、アレイおよび他の構造を形成して、1000mm×1000mmまでスケールアップできる。さらに、前記ユニットは、異なる色、大きさを有するピクセルと考えることができるので、表示パネルを形成できる。そのため、注入型の発光ダイオード発光素子を製造するには、比較的安価な材料を少量だけ使用すればよい。前記アノードは、所望の大きさ/面積を有して、これらに限られる訳ではないが、平板状、円筒状、櫛状プレートなどを含む種々の異なる形状を取ることができる。薄膜の場合よりも材料、合成プロセスおよび処理が安価であり、半導体材料の単結晶ナノワイヤーの成長は、薄膜に関する格子整合基板による制限を受けず、低コストのCVDおよび溶液合成などから導体上に直接実行できるので、製造コストは安くなる。
【0031】
半導体発光ナノ構造が、垂直または水平方向の半導体ナノワイヤー30の領域であると好ましい。ナノワイヤー30の領域はいくつかの区画に分けられていて、その分けられたナノワイヤー30の領域の区画に、種類の異なるナノワイヤーが含まれていると好ましい。該種類の異なるナノワイヤーによれば、光子が複合的に寄与することによって、可視スペクトルの大部分をカバーして、白色光を発生することができる。ナノワイヤー30は、酸化インジウムスズなどの透明電極32上に配置され、透明電極32は透明基板34上に配置される。本発明のフルスペクトル放出素子の一例では、ガラス基板上に形成された酸化インジウムスズ電極上で赤色放出、青色放出、および緑色放出ナノワイヤーを組み合わせたものを含むアノードが使用される。AlInGaP(R)/InGaP(G)/InGaN(B)ナノワイヤーの組み合わせによれば、フルスペクトル放出が得られる。
【0032】
図1Aの実施形態では、(発光素子の主軸に対して平行または一致して配置される)軸方向に配置された平行プレートとして、アノード16とカソード14が示されているが、必要とされる電子注入、つまり、カソード14からアノード16の半導体発光ナノ構造への電子注入が、隙間を介して可能であり、アノード16とカソード14を電気的に離隔できるならば、他の多くの物理的な配置を使用することができる。複数個のアノードとカソードの組を素子中で使用できることも注目されるべきであり、本発明の素子は、複数個の真空密閉容器を備えて、該真空密閉容器に分離されたカソードとアノードの組を備えてもよい。2組の場合のように、1個の素子に1組または複数組のカソードとアノードの組を備えてもよく、前記アノードの透明ITO基板は、送出される光が最大になるように外側に面していて、前記二組のアノードとカソードは、平行をなして電気的に接続され、入力される交流電圧と同じ周波数で運転される変圧器(例えば、100−220V/50−60Hz wall power)に配線される。一組の場合でも同じように、ITO基板は、送出される光が最大になるように外側に面していて、前記カソードとアノードのユニットは、入力される交流電圧よりも高い周波数で運転される変圧器に配線される。前記変圧器は、バックライトで使用されるものと同じ型であってもよく、前記バックライトは、600Vより大きい電圧で冷陰極蛍光ランプ(CCFLs)を用いる。前記隙間の間の電圧は、調光できるように、特定の範囲内で調節できる。
【0033】
図1Bには、図1Aの素子中で使用できる2つの部分からなるアノードの配置の一例が示されている。図1Aに由来する参照番号が、同様な部分に付されて使用される。さらに、図1Aの配置には、アノードの背面に、追加の発光半導体ナノ構造30aを含んでもよいことが示される。外側に向けた発光半導体ナノ構造30aによれば、更なる輝度が得られ、該ナノ構造30aは、波長変換器としても動作できる。
【0034】
図2は、同心円状に配置された電界放出カソード42と半導体ナノ構造アノード44を用いる別の好適な発光素子40の実施形態の概略図を示している。アノード44は電子透過性であり、ナノワイヤーなどの半導体発光ナノ構造46は、アノード44の外表面に配置されてもよい。従来のネジ−ソケット接続部46によれば、発光素子40を従来の照明ソケット中で使用できる。図3は、半径方向に配置された平板状の電界放出カソード52と半導体ナノ構造アノード54を使用するさらに別の好適な発光素子50の実施形態の概略図を示している。垂直方向に延びる半導体ナノワイヤー56が、アノードの好適な発光素子構造として図示され、ナノワイヤー56は、酸化インジウムスズ電極などのプレート電極58上に形成される。電界放出構造として、カーボンナノチューブが図示され、該電界放出構造は、カソード電極62上に形成される。カソード52とアノード54は、図2中の一端から片持支持される。
【0035】
当業者によれば、図1〜3の実施形態は、幾つかの例示的な構造を示すものであると理解される。本発明の電子注入型の発光アノード素子について、種々の大きさと形状を有する真空密閉容器、アノードとカソードの形状および構造を使用できる。半導体発光ナノ構造は、(広いスペクトルの白色発光を含む)所望のバンド幅の発光を生ずる機能を示す蛍光体を備えるように選ぶことができ、従来の蛍光体は、真空密閉容器12の内表面などで使用される。図3には、真空密閉容器12の内表面に層として形成されるような蛍光体64が示されている。例示的な一実施形態では、青色/紫外発光ナノワイヤーによれば、前記アノードの一部と、緑色、赤色、および/または黄色の蛍光体(ナノワイヤー、量子ドット、従来の蛍光体など)で被覆された真空チューブの内壁が形成される。
【0036】
好適な素子の実施形態の発光アノードの一部として使用される半導体ナノワイヤーには、垂直および水平方向に向いたナノワイヤーが含まれてもよい。前記垂直および水平方向に向いたナノワイヤーは、図1〜3の好適な素子の実施形態のように、電子の注入と印加した電圧差に応答して高発光する(コア−シェル構造などの)ナノワイヤーヘテロ構造を有する。ナノワイヤー中のヘテロ構造の組成と形態を調節し、多数のタイプのナノワイヤーまたは多数のナノワイヤー領域を使用すれば、電磁スペクトルの全体に及ぶ発光色の範囲を調節できる。
【0037】
図4A〜4Dには、本発明の素子のアノード中で使用できる種類の異なる発光ナノワイヤーヘテロ構造が示されている。図4Aには、コア/シェル/シェルナノワイヤー構造が示されている。ヘテロ構造には、例えばn型GaNなどのコア70、InGaNなどの第1のシェル72およびp型GaNなどの第2のシェル74が含まれる。図4Bには、例えば、GaN/InGaNなどの異なる材料から構成されて、交互に配置された領域76,78を有する軸方向のヘテロ構造ナノワイヤーが示される。図4Cには、幹状ナノワイヤー80と枝状ナノワイヤー82を有する分岐状ナノワイヤー構造が示されている。図4Dには、第2の枝84を有する多分岐状ナノワイヤー構造が示されている。
【0038】
図4Aの種類の構造を形成する方法には、組成が異なる円筒シェルを半径方向に形成すること、あるいはp/nドープすることが含まれる。このことは、初めに、例えば、MOCVDを用いて、所望の組成で成長させて均一のナノワイヤーを形成し、次に、ナノワイヤー表面上に均一な蒸気相を堆積するのに好ましいように合成条件を変えて、相似形をなすシェルを優先的に成長させることによって実現できる。引き続き異なる反応物および/またはドーパントを導入すると、ほぼ任意の組成を有する複数のシェル構造が製造される。
【0039】
反応物の活性化と添加が触媒の活性点で生じ、ナノワイヤー表面上で生じない場合、図4Bの軸方向に延びる構造を形成する方法、つまり、一次元軸方向に成長させる方法が実現される。軸方向へのナノワイヤーヘテロ構造の成長に対するアプローチによれば、ナノクラスター触媒を用いたナノワイヤーの合成方法を開発できる。該方法においては、成長時間に応じて半導体ナノワイヤーの長さは制御され、続いてナノワイヤーを成長させるために、ナノワイヤーの成長に必要な異なる反応物が導入される。
【0040】
図4Cと4Dの分岐状構造の形成方法によれば、例えば、HVPE(ハイブリッド気相エピタキシ)のMOCVDを用いて、所望の組成のナノワイヤーが形成され、そして組成、ドーピングあるいはヘテロ構造が異なる、1または複数の世代の枝の次の成長が、その前に、それらを適用したか否かに関わらず生じる。ナノワイヤーの幹および/または枝は、軸方向または半径方向に均一なヘテロ構造であってもよい。図4Cと4Dの構造によれば、さらに、電子注入とe−h再結合用の表面積が増加するので、色の調節/混合に加えて放出効率が高められる。
【0041】
本発明の電子注入型のエレクトロルミネッセンス発光素子において、ナノ構造の発光素子アノードを適用することに加えて、他の適用例では、図4A〜4Dのナノワイヤー構造を、光の波長を変換する一般的な蛍光体として使用してもよい。本発明の実施形態には、例えば、従来の平面LED光源、ナノワイヤーアレイ発光ダイオードおよび小型蛍光灯CFLの蛍光体としてナノ構造半導体材料を使用することも含まれる。従来の平面LEDまたは他の光源中で使用する場合、ナノ構造は、量子ドット、ナノチューブ、分岐した樹脂状ナノ構造、ナノフラワー、四脚構造、三脚構造、軸方向にヘテロ構造をなすナノワイヤーヘテロ構造の形態をなしてもよい。追加の好適な実施形態には、以下の文献中に開示されたナノ構造の蛍光体が含まれる。つまり、M.S.Gudiksen,L.J.Lauhon,J.Wang,D.Smith,and C.M.Lieber”Growth of Nanowire Superlattice Structure for Nanoscale Photonics and Electronics,”Nature 415,617−620(2002)(axial heterostructures)、L.J.Lauhon,M.S.Gudiksen,D.Wang,and C.M.Lieber”Epitaxial Core−Shell and Core−Multi−Shell Nanowire Heterostructures,”Nature 420,57−61(2002)(core/shell heterostructures)、D.Wang,F.Qian,C.Yang,Z.Zhong and C.M.Lieber,”Rational Growth of Branched and Hyperbranched Nanowire Structures,”Nano Lett.4,871−874(2004)(branch nanowire heterostructures)、Wei−Tang Yao,et.al.,”Architectural Control Syntheses of CdS and CdSe Nanoflowers,Branched Nanowires,and Nanotrees via a Solvothermal Approach in a Mixed Solution and Their Photocatalytic Property”,J.Phys.Chem.B,2006,110(24),pp 11704−11710.(nanoflower structures)、Min−Yeol Choia,Hyun−Kyu Parka,Mi−Jin Jina,Dae Ho Yoonb and Sang−Woo Kim,”Mass production and characterization of free−standing ZnO nanotripods by thermal chemical vapor deposition,”Journal of Crystal Growth Volume 311,Issue 3,15 January 2009,Pages 504−507(nano tripods)、Zhao YN,CaO MS,Jin HB,Shi XL,Li X,Agathopoulos S.,”Combustion oxization synthesis of unique cage−like nanotetrapod ZnO and its optical property,”J Nanosci Nanotechnol.2006 Aug.6(8):2525−8、Young−wook Jun,Jin−sil Choi,and Jinwoo Cheon,”Shape Control of Semiconductor and Metal Oxide Nanocrystals through Nonhydrolytic Colloidal Routes,”Angew.Chem.Int.Ed.2006,45,3414−3439(2006);(tripods)、Qi Pang,et.al.,”CdSe Nano−tetrapods:Controllable Synthesis,Structure Analysis,and Electronic and Optical Properties”,Chem.Mater.,2005,17(21),pp 5263−5267、B.I.Kharisov,”A Review for Synthesis of Nanoflowers”,Recent Patents on Nanotechnology,2(3)2008,190−200.に開示されたナノ構造の蛍光体が含まれる。
【0042】
図4A〜4Dの構造は高効率であり、好適には、異なる材料、または、例えば、シングル型のナノ構造から幅広の発光スペクトルを実現するドープ材を含んでもよい。図4Eには、本発明の発光素子が示される。密閉容器の内面に形成された蛍光体86は、図4A〜4Dに示され、ここで論じられるようなナノ構造である。光源88は、概念的に示されていて、LED、LEDアレイ、およびCFLなどから構成される。蛍光ランプおよび小型蛍光ランプ(CFLs)では、一般に、水銀原子から励起される紫外光が使用されて、蛍光体から蛍光が励起され、可視光が発生する。ここで使用される蛍光体は、金属の蛍光塩と貴金属の蛍光塩の混合比率を変えて構成される。色調節、色温度および演色性を改善する可視スペクトルの全領域に及ぶ発光を得るために、これらの蛍光体は、均一またはヘテロ構造のナノワイヤーに結合されるナノワイヤー蛍光体に置き換えられてもよい。高効率のナノワイヤー蛍光体を使用すれば、現行の蛍光およびCFL製品の効率、色質、および寿命を改善できる。ナノ構造の蛍光体86は密閉容器12の内面に示されているが、該蛍光体を、光源の電極上に形成することもできる。高効率のエレクトロルミネッセントナノ構造によれば、上述したように、発光効率と光取り出し効率が高くなり、色調節/色の多様性、色温度および演色性が改善されるなどの利点が得られる。組成が異なり、ドープ型であり、ヘテロ構造をなす種々のナノ構造は、導電性の透明基板(例えば、ITO、ZnO)上で簡単に成長できるので、このような電極は、発光素子用の電極の一つとして直接使用できる。さらに、エレクトロルミネッセントナノワイヤーによれば、高解像度(>>1000lpi)を実現でき、表示装置用途で開発できる。
【0043】
図5には、カーボンナノチューブカソード、および図1Aに係るナノワイヤーアノードを有する素子の完成品を形成する好適な方法が示される。ステップ90において、製造によりあるいは市場で入手して、カーボンナノチューブを得る。ステップ92において、前記カーボンナノチューブを精製してアモルファスカーボンを取り除く。ステップ94において、前記カーボンナノチューブを有機バインダとともに、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)などの溶液中に分散する。有機バインダには、例えば、アクリル酸または(ニトロセルロースなどの)セルロースをベースとする感光性の有機バインダを用いることができる。SnOなどの導電フィラーと、ガラスフリット粉末などの接着改良材を溶液に添加することもできる。次に、ステップ96において、前記カーボンナノチューブを基板上に印刷する。印刷後、粘着テーピング、(軟質ゴムローラーなどを用いた)機械的摩擦、(真空中で数サイクル運転する)電界放出プロセス、またはレーザ放射などによって、前記ナノワイヤーを垂直方向に整列してもよい。好適な基板には、金属(Cr、Al、Au、ITO)がパターニングされたガラスが含まれる。パターニングによって、例えば、表示装置用のピクセルのアレイを製造でき、固体金属層は、例えば、一般的な照明用の電極として使用できる。ステップ98において、熱処理によって有機バインダが取り除かれる。前記熱処理は、複数のステップであってもよい。例えば、前記熱処理には、例えば、120℃までの比較的低温の乾燥ステップの後、空気中での350℃の焼成ステップと、窒素ガス中での400℃での焼成ステップの2つの焼成ステップが含まれてもよい。典型的には、初めに約5〜8μmで印刷されたものは、熱処理後に約2μmまで低減される。ステップ100において、分離プロセスによって、ガラス基板などの基板上にスペーサが形成される。ステップ102において、酸化インジウムスズなどの電極を前記基板上に堆積する。次に、ステップ104において、発光ナノワイヤーを電極上で垂直または水平方向に成長させる。ステップ106において、前記アノードとカソードを、それらの間にあって、スペーサによって設けられた隙間に結合する。次に、前記アノードと前記カソードを電極に取り付けて真空密閉容器を形成した形態にすると、前記素子は完成する。
【0044】
図6には、別の好適な発光素子が示されていて、該発光素子において発光ナノ構造100を使用すると、発光素子の垂直配向ナノワイヤーアレイ102で、選択された波長範囲の発光が得られる。垂直配向ナノワイヤーアレイ102は、異なる材料を用いて、当該技術分野において公知のナノワイヤー形成法によって基板上に形成されてもよい。図6に係る好適な素子の実施形態では、まず初めに、透明サファイアまたは石英基板104上に、ZnO単結晶薄膜106が溶液法などで成長される。ナノインプリントリソグラフィー(NIL)は、ニッケル金属粒子をSiNxマスクのテンプレートをパターニングするために使用される。次に、GaNナノワイヤーなどのナノワイヤー102を、気相−液相−固相成長法(VLS)または選択した領域でのMOVPE法のいずれかなどの好適な方法で成長させる。ヘテロ構造は、GaNナノワイヤーコアの周りに形成される。つまり、LED構造は、MQW構造とp−GaN(またはP−AlGaN)接触層を備えて成長してもよい。前記ナノワイヤーLEDは、図4A〜4Dの構造のように、ナノワイヤー蛍光体を分散させてカプセル化される。ナノワイヤー102の先端を露出するために、ナノワイヤー102の頂部は平坦化またはエッチング処理される。金属はp−GaNシェルに接触するように気化され、前記素子は、酸化インジウムスズと反射面またはミラー110などのように、基板と頂部接触部108を結合すれば完成する。フルスペクトルの白色光などの光112は、図6で見ると下部から放射している。図6に係る追加の好適な素子の実施形態は、「Vertical GroupIII−V Nanowires on Si,Heterostructures,Flexible Arrays and Fabrication」と表題を付けられて、2009年10月28日に出願されたPCT/US2009/062356に開示された方法および素子に係るナノワイヤーのアレイに関するものである。別の好適な実施形態では、「Nanowire Array−Based Light Emitting Diodes and Lasers」と表題を付けられて、2007年12月18日に出願されたPCT/US07/88001に開示されたようなLED光源を有するナノ構造の蛍光体が使用される。
【0045】
本発明の特定の実施形態が示されて説明されたが、他の改変、置換および代替が、当業者には明らかであることが理解される必要がある。このような改変、置換および代替は、添付の請求の範囲から決定されるべきである本発明の精神および範囲から逸脱せずになされる。
【0046】
本発明の種々の特徴は、添付の請求の範囲において説明されている。
【0047】
(優先権の主張および関連出願の参照)
本願は、米国特許法第119条に基づいて、2008年12月4日に出願された先の米国仮特許出願番号第61/119,938と2008年12月10日に出願された先の米国特許出願番号第61/121,333についての優先権を主張する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空密閉容器と、
前記真空密閉容器内にある電界電子放出カソードと、
前記真空密閉容器内にあって、隙間によって前記カソードから隔離され、前記カソードから放出される電子を受け取るように配置されたアノードと、からなる発光素子であって、
前記アノードは、半導体発光ナノ構造を有し、
前記半導体発光ナノ構造は、前記カソードから電子注入され、該電子注入に応答して光子を発生する、
発光素子。
【請求項2】
前記アノードと前記カソードの間に電圧差を印加して、前記カソードからの電子放出を励起し、前記半導体発光ナノ構造から光子を放出させる外部電極接触部をさらに含む、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記電圧差を変換する変圧器をさらに含む、
請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記真空密閉容器を支持し、前記変圧器を収容する基部をさらに含む、
請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記隙間は、約50〜200ミクロンの範囲にある、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項6】
前記隙間は約110ミクロンであり、
前記電界電子放出カソードは、カーボンナノチューブからなる、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項7】
前記アノードと前記カソードの間に前記隙間を設けるスペーサをさらに含む、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項8】
前記半導体発光ナノ構造は、半導体ナノワイヤーからなる、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項9】
前記半導体ナノワイヤーは、異なる波長バンドで光子を放出する複数の種類のナノワイヤーからなる、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項10】
前記アノードと前記カソードは、前記隙間によって隔離された平行平板からなる、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項11】
前記アノードと前記カソードは、同心円状に配置され、前記隙間によって隔離される、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項12】
前記アノードは、透明基板、前記基板上にある電極、および前記電極上に配置された前記半導体発光ナノ構造からなる、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項13】
前記半導体発光ナノ構造は、半導体ナノワイヤーからなる、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項14】
前記半導体ナノワイヤーは、コアシェル型のヘテロ構造のナノワイヤーからなる、
請求項13に記載の発光素子。
【請求項15】
前記半導体ナノワイヤーは、軸方向に延びるヘテロ構造のナノワイヤーからなる、
請求項13に記載の発光素子。
【請求項16】
前記半導体ナノワイヤーは、幹と枝を有するヘテロ構造のナノワイヤーからなる、
請求項13に記載の発光素子。
【請求項17】
前記半導体ナノワイヤーは、III−V族のナノワイヤーからなる、
請求項13に記載の発光素子。
【請求項18】
前記半導体ナノワイヤーは、III族の窒化物ナノワイヤーからなる、
請求項17に記載の発光素子。
【請求項19】
前記半導体ナノワイヤーは、III族のヒ化物ナノワイヤーからなる、
請求項17に記載の発光素子。
【請求項20】
前記半導体ナノワイヤーは、III族のリン化物ナノワイヤーからなる、
請求項17に記載の発光素子。
【請求項21】
前記半導体ナノワイヤーは、II−VI族のナノワイヤーからなる、
請求項13に記載の発光素子。
【請求項22】
前記半導体ナノワイヤーは、IV族のナノワイヤーからなる、
請求項13に記載の発光素子。
【請求項23】
前記半導体ナノワイヤーは、合金化された半導体ナノワイヤーからなる、
請求項13に記載の発光素子。
【請求項24】
前記半導体ナノワイヤーは、ドープされたナノワイヤーからなる、
請求項13に記載の発光素子。
【請求項25】
前記半導体ナノワイヤーは、サファイア基板上において、ドープされたp型GaNのアレイまたは分散を構成する、
請求項13に記載の発光素子。
【請求項26】
前記p型GaNナノワイヤーにはMgがドープされる、
請求項25に記載の発光素子。
【請求項27】
前記半導体ナノワイヤーは、Mg、BeおよびCdの内の一つがドープされたp型のZnOナノワイヤーからなる、
請求項13に記載の発光素子。
【請求項28】
前記半導体ナノワイヤーは、異なる発光波長範囲を有する複数の異なる種類のナノワイヤーからなる、
請求項13に記載の発光素子。
【請求項29】
前記半導体発光ナノ構造は、半導体ナノチューブからなる、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項30】
前記アノードの背面側に、半導体発光ナノ構造をさらに含む、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項31】
前記真空密閉容器内にあって、隙間によって前記カソードから隔離され、前記カソードから放出される電子を受け取るように配置された追加のアノードをさらに含み、
前記追加のアノードには、前記カソードから電子注入され、該電子注入に応答して光子を発生する半導体発光ナノ構造が含まれる、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項32】
前記真空密閉容器の内表面に配置された蛍光体をさらに含む、
請求項1に記載の発光素子。
【請求項33】
発光方法であって、
前記方法は、
電子放出を励起して、電子を周囲環境中に放出するステップと、
半導体発光ナノ構造によって、前記環境から前記電子を受け取って、前記半導体発光ナノ構造からエレクトロルミネッセンス応答を引き起こすステップと、を含む、
発光方法。
【請求項34】
光源と、
コアシェルシェル型のナノワイヤー、軸配向されたナノ構造の蛍光体、幹と枝を有するナノワイヤー構造、量子ドット、ナノチューブ、ナノフラワー、四脚構造および三脚構造の内の一つから構成されるナノ構造のヘテロ接合蛍光体と、からなる、
発光素子。
【請求項35】
前記光源は、ヘテロ接合ナノワイヤーのアレイからなり、
前記ナノ構造のヘテロ接合蛍光体によって、ヘテロ接合ナノワイヤーのアレイはカプセル化される、
請求項34に記載の発光素子。

【図4E】
image rotate

【図5】
image rotate

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−511240(P2012−511240A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539740(P2011−539740)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/066782
【国際公開番号】WO2010/065860
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(505088684)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (18)
【Fターム(参考)】