説明

電子用途用の化合物の組合せの一部としての重水素化合物

本発明は、電子用途に有用な組合せの少なくとも1種の重水素化アリール−アントラセン化合物に関する。本発明はまた、活性層が2種類の別個のアリール−アントラセン化合物を含み、化合物の少なくとも1種が一部重水素化されている、電子デバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願情報
本出願は、35 U.S.C.§119(e)に基づき、2009年12月9日に出願された米国仮特許出願第61/267928号明細書の優先権を主張するものであり、その全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、少なくとも1種のアントラセン誘導体が少なくとも部分的に重水素化されているアントラセン誘導体の組合せに関する。本発明はまた、少なくとも1つの活性層がそのような組合せを含む電子デバイスに関する。
【0003】
光を発する有機電子デバイス(ディスプレイを構成する発光ダイオードなど)は、多くの種類の電子機器の中に存在する。そのようなデバイスすべてにおいて、有機活性層が2つの電気接触層の間に挟まれている。電気接触層の少なくとも1つは、光が電気接触層を通過できるように光透過性である。電気接触層から電気接触層にかけて電気を流すと、有機活性層は光透過性の電気接触層を通して光を発する。
【0004】
発光ダイオードの活性成分として有機エレクトロルミネセンス化合物を使用することはよく知られている。アントラセン、チアジアゾール誘導体、およびクマリン誘導体などの単純な有機分子は、エレクトロルミネセンスを示すことで知られている。半導体共役ポリマー(semiconductive conjugated polymers)もエレクトロルミネセンス成分として使用されてきたが、そのことは、例えば、米国特許第5,247,190号明細書、米国特許第5,408,109号明細書、および欧州特許出願公開第443861号明細書に開示されている。多くの場合、エレクトロルミネセンス化合物はホスト物質中にドーパントとして存在する。多くのデバイスでは、有機電荷注入層及び/または電荷輸送層が、発光層と陽極及び/または陰極との間に存在する。多くの場合、エレクトロルミネセンス化合物はホスト物質中にドーパントとして存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新規の電子デバイス用の物質が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
少なくとも1種のアリール置換アントラセンが少なくとも1個の重水素置換基を有する、アリール置換アントラセン化合物の組合せが提供される。
【0007】
また、上に示した化合物の組合せを含んでいる活性層を含む電子デバイスも提供される。
【0008】
さらに、(a)アリール置換アントラセン・ホスト化合物と(b)380から750nmの間に発光極大を有するエレクトロルミネセンス可能なアリール置換アントラセン・ドーパント化合物とを含む、電気的活性組成物が提供される。(a)および(b)の化合物の一方または両方が、少なくとも1個の重水素置換基を有する。
【0009】
本明細書で提示する概念がいっそう理解されるように添付図で実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】有機電子デバイスの一例の説明図を含む。
【0011】
図中の物体は、簡単にするためまた明快にするために例示されているのであり、必ずしも縮尺通り描かれてはいないことは、当業者なら理解することである。例えば、図中の一部の物体の大きさは、実施形態をいっそう理解するのを助けるために、他の物体との関係で誇張されていることがある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
多くの態様および実施形態が本明細書に開示されているが、それらは例示的なものであり、限定するものではない。本明細書を読むならば、本発明の範囲の中で他の態様および実施形態が可能であることは、当業者なら理解することである。
【0013】
実施形態のいずれか1つまたはそれ以上における他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および請求項から明らかであろう。詳細な説明では、最初に用語の定義と説明を扱い、その後、重水素化合物、電子デバイス、そして最後に実施例を扱う。
【0014】
1.用語の定義と説明
以下に説明する実施形態の詳細を扱う前に、一部の用語について定義し説明する。
【0015】
本明細書で使用される「脂肪族環(aliphatic ring)」という用語は、非局在パイ電子を持たない環状基(cyclic group)を意味することを意図する。実施形態によっては、脂肪族環に不飽和はない。実施形態によっては、その環は1個の二重結合または三重結合を有する。
【0016】
「アルコキシ」という用語は、RO−基[ここで、Rはアルキルである]を表す。
【0017】
「アルキル」という用語は、結合点が1つある脂肪族炭化水素に由来する基を意味することを意図しており、直鎖状基、分枝状基、または環状基(cyclic group)を含む。この用語はヘテロアルキルを含むことを意図する。「炭化水素アルキル」という用語は、ヘテロ原子を持たないアルキル基を表す。「重水素化アルキル」という用語は、少なくとも1個の利用可能なHがDと置換されている炭化水素アルキルである。実施形態によっては、アルキル基は1〜20個の炭素原子を有する。
【0018】
「分枝状アルキル」という用語は、少なくとも1個の第二級または第三級炭素を有するアルキル基を表す。「第二級アルキル」という用語は、第二級炭素原子を有する分枝状アルキル基を表す。「第三級アルキル」という用語は、第三級炭素原子を有する分枝状アルキル基を表す。実施形態によっては、分枝状アルキル基は第二級または第三級炭素を介して結合する。
【0019】
「アリール」という用語は、結合点が1つある芳香族炭化水素に由来する基を意味することを意図する。「芳香族化合物」という用語は、非局在パイ電子を有する少なくとも1個の不飽和環状基を含む有機化合物を意味することを意図する。この用語は、ヘテロアリールを含むことを意図する。「炭化水素アリール」という用語は、環の中にヘテロ原子を持たない芳香族化合物を意味することを意図する。アリールという用語は、1つの環を有する基、および縮合できるかまたは単結合で結合できる複数の環を有する基を含む。「重水素化アリール」という用語は、アリールに直接結合している少なくとも1個の利用可能なHがDと置換しているアリール基を表す。「アリーレン」という用語は、結合点が2つある芳香族炭化水素に由来する基を意味することを意図する。実施形態によっては、アリール基は3〜60個の炭素原子を有する。
【0020】
「アリールオキシ」という用語は、RO−基[ここで、Rはアリールである]を表す。
【0021】
「化合物」という用語は、分子で構成される帯電していない物質(分子は、原子からさらに構成され、物理的手段では原子を分離できない)を意味することを意図する。「隣接した」という語句は、デバイス中の層を表すのに用いられる場合、1つの層が別の層のすぐ隣にあることを必ずしも意味しない。その一方で、「隣接したR基」という語句は、化学式において隣同士のR基(すなわち、1つの結合でつながれた原子にあるR基)を表すのに用いられる。
【0022】
「重水素化(されている)」という用語は、少なくとも1個のHがDと置換されていることを意味することを意図する。重水素は、天然存在レベルの少なくとも100倍存在する。化合物Xの「重水素化誘導体」は、化合物Xと同じ構造を有するが、Hと置き換わっている少なくとも1個のDを含む。
【0023】
「ドーパント」という用語は、ホスト物質を含む層の中の物質であって、その層の電子的特性あるいはその層の放射線の放出、受容、またはフィルタリングの目的波長が、そうした物質の存在しない層の電子的特性あるいは放射線の放出、受容、またはフィルタリングの波長と比べて変わるようにする、層の中の物質を意味することを意図する。
【0024】
「電気的活性」という用語は、層または物質に言及している場合、電子放射性または電気的放射性(electronic or electro−radiative properties)を示す層または物質を意味することを意図する。電子デバイスでは、電気的活性物質によりデバイスの動作が電子的に促進される。電気的活性物質の例としては、電荷の伝導、注入、輸送または遮断を行う物質(電荷は電子または正孔のいずれかでありうる)、および放射線を発するかまたは電子−正孔ペアの濃度の変化を示す(放射線を受けたとき)物質があるが、これらに限定されない。不活性物質の例としては、平坦化物質、絶縁物質、および環境障壁物質(environmental barrier materials)があるが、これらに限定されない。
【0025】
接頭語の「ヘテロ」は、1つまたは複数個の炭素原子が異なる原子で置換されていることを示す。実施形態によっては、異なる原子は、N、O、またはSである。
【0026】
「ホスト物質」という用語は、ドーパントを加える物質を意味することを意図する。ホスト物質は、放射線の放出、受容、またはフィルタリングを行う能力または電子的特性があってもなくても構わない。実施態様によっては、ホスト物質は高い濃度で存在する。
【0027】
「層」という用語は、「膜」という用語と同義語的に使用され、目的の領域を覆うコーティングを表す。この用語は大きさによって限定されるものではない。この領域は、デバイス全体と同じくらい大きくても、あるいは実際の表示装置など特定の機能領域と同じくらい小さくても、あるいは単一のサブピクセルと同じくらい小さくても構わない。層および膜は、蒸着、液体付着(連続技法および不連続技法)、および熱転写を含め、従来の任意の付着技法で形成できる。連続付着技法としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬被覆、スロットダイコーティング(slot−die coating)、吹付け塗り、および連続ノズルコーティングがあるが、これらに限定されない。不連続付着技法としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷があるが、これらに限定されない。
【0028】
「有機電子デバイス」またはときにはただの「電子デバイス」という用語は、1種または複数種の有機半導体層または有機半導体物質を含むデバイスを意味することを意図する。 すべての基は、特に記載のない限り、置換されていても非置換であってよい。実施形態によっては、置換基は、D、ハロゲン化物、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シアノ、およびNR2[ここで、Rはアルキルまたはアリールである]よりなる群から選択される。
【0029】
特に定義されていない限り、本明細書に用いられている技術用語および科学用語はすべて、本発明が関係する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載する方法および物質と同様または同等の方法および物質を本発明の実施または試験に使用できるが、好適な方法および物質を以下に記載しておく。本明細書で挙げる刊行物、特許出願、特許、および他の文献はすべて、その全体を援用する。矛盾がある場合には、定義を含んでいる本明細書で調整されるであろう。さらに、そうした物質、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0030】
全体を通してIUPAC番号付け方式(IUPAC numbering system)が使用されており、その方式では、周期律表の族は左から右に1〜18の番号が付けられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics,81st Edition,2000)。
【0031】
2.重水素化合物
新規の重水素化合物は、少なくとも1個のDを有するアリール置換アントラセン化合物である。実施形態によっては、化合物は少なくとも10%が重水素化されている。これは、Hの少なくとも10%がDに置換されていることを意味する。実施形態によっては、化合物は少なくとも20%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも30%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも40%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも50%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも60%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも70%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも80%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも90%が重水素化されている。実施形態によっては、化合物は100%が重水素化されている。
【0032】
1つの実施形態では、アリール置換化合物の組合せは、式Iおよび式II:
【0033】
【化1】

【0034】
【化2】

【0035】
[式中、
1〜R20は、それぞれの出現において同一または異なっていて、H、D、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シロキサン、およびシリルからなる群から選択され;さらに
Ar1〜Ar6は、同一または異なっていて、アリール基からなる群から選択される]
を含み、
その組合せは少なくとも1個のDを有する。
【0036】
式Iおよび式IIの実施形態によっては、少なくとも1個のDがアリール環の置換基上にある。実施形態によっては、置換基はアルキルおよびアリールから選択される。
【0037】
式Iおよび式IIの実施形態によっては、R1〜R20の少なくとも1個がDである。実施形態によっては、R1〜R20のうちの少なくとも2個がDである。実施形態によっては、少なくとも3個がDであり;実施形態によっては、少なくとも4個がDであり;実施形態によっては、少なくとも5個がDであり;実施形態によっては、少なくとも6個がDであり;実施形態によっては、少なくとも7個がDであり;実施形態によっては、少なくとも8個がDであり;実施形態によっては、少なくとも9個がDであり;実施形態によっては、少なくとも10個がDであり;実施形態によっては、少なくとも11個がDであり;実施形態によっては、少なくとも12個がDであり;実施形態によっては、少なくとも13個がDであり;実施形態によっては、少なくとも14個がDであり;実施形態によっては、少なくとも15個がDであり;実施形態によっては、少なくとも7個がDであり;実施形態によっては、少なくとも7個がDであり;実施形態によっては、少なくとも7個がDであり;実施形態によっては、少なくとも7個がDである。実施形態によっては、R1〜R20のすべてがDである。
【0038】
実施形態によっては、R1〜R20はHおよびDから選択される。実施形態によっては、R1〜R20の1個がDであり、19個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の2個がDであり、18個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の3個がDであり、17個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の4個がDであり、16個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の5個がDであり、15個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の6個がDであり、14個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の7個がDであり、13個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の8個がDであり、12個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の9個がDであり、11個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の10個がDであり、10個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の11個がDであり、9個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の12個がDであり、8個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の13個がDであり、7個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の14個がDであり、6個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の15個がDであり、5個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の16個がDであり、4個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の17個がDであり、3個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の18個がDであり、2個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の19個がDであり、1個がHである。実施形態によっては、R1〜R20の20個がDである。
【0039】
実施形態によっては、R1〜R20の少なくとも1個が、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シロキサン、およびシリルから選択され、R1〜R20の残りがHおよびDから選択される。実施形態によっては、R2は、アルキル、HまたはDから選択される。
【0040】
式Iおよび式IIの実施形態によっては、Ar1〜Ar6の少なくとも1個が重水素化アリールである。実施形態によっては、Ar1およびAr2は重水素化ジアリールから選択される。
【0041】
式Iおよび式IIの実施形態によっては、Ar1〜Ar6は、少なくとも10%が重水素化される。式Iの実施形態によっては、Ar1〜Ar6は、少なくとも20%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも30%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも40%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも50%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも60%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも70%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも80%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも90%が重水素化されており、実施形態によっては、100%が重水素化されている。
【0042】
実施形態によっては、式Iの化合物は、少なくとも10%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも20%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも30%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも40%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも50%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも60%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも70%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも80%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも90%が重水素化されている。実施形態によっては、化合物は100%が重水素化されている。
【0043】
実施態様によっては、Ar1およびAr2は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニル、およびそれらの重水素化誘導体よりなる群から選択される。実施態様によっては、Ar1およびAr2は、フェニル、ナフチル、およびそれらの重水素化誘導体よりなる群から選択される。
【0044】
1つの実施形態では、Ar1およびAr2は、
【0045】
【化3】

【0046】
[式中、
21〜R34は、それぞれの出現において同一または異なっていて、H、またはDからなる群から選択される]
からなる群から選択される。
【0047】
実施形態によっては、Ar3およびAr6は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニル、フェニルナフチレン、ナフチルフェニレン、およびそれらの重水素化誘導体からなる群から選択される。
【0048】
実施形態によっては、Ar1〜Ar6の少なくとも1つがヘテロアリール基である。実施形態によっては、ヘテロアリール基は重水素化されている。実施形態によっては、ヘテロアリール基は、少なくとも10%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも20%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも30%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも40%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも50%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも60%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも70%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも80%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも90%が重水素化されている。実施形態によっては、ヘテロアリール基は100%が重水素化されている。実施態様によっては、ヘテロアリール基は、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、およびそれらの重水素化誘導体から選択される。
【0049】
式Iの実施形態によっては、R1〜R20の少なくとも1つがDであり、Ar1〜Ar2の少なくとも1つが重水素化ジアリールである。実施形態によっては、式Iの化合物は少なくとも10%が重水素化されている。実施形態によっては、化合物は少なくとも20%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも30%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも40%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも50%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも60%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも70%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも80%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも90%が重水素化されている。実施形態によっては、化合物は100%が重水素化されている。
【0050】
式Iを有する化合物の一部の非限定例には、以下の化合物H1〜H14が含まれる。
化合物H1:
【0051】
【化4】

【0052】
[式中、x+y+z+n=1〜26]
化合物H2:
【0053】
【化5】

【0054】
[式中、x+y+z+p+n=1〜30]
化合物H3:
【0055】
【化6】

【0056】
[式中、x+y+z+p+n+r=1〜32]
化合物H4:
【0057】
【化7】

【0058】
[式中、x+y+z+p+n=1〜18]
化合物H5:
【0059】
【化8】

【0060】
[式中、x+y+z+p+n+q=1〜34]
化合物H6:
【0061】
【化9】

【0062】
[式中、x+y+z+n=1〜18]
化合物H7:
【0063】
【化10】

【0064】
[式中、x+y+z+p+n=1〜28]
化合物H8:
【0065】
【化11】

【0066】
化合物H9:
【0067】
【化12】

【0068】
化合物H10:
【0069】
【化13】

【0070】
化合物H11:
【0071】
【化14】

【0072】
化合物H12:
【0073】
【化15】

【0074】
化合物H13:
【0075】
【化16】

【0076】
化合物H14:
【0077】
【化17】

【0078】
式IIを有する化合物の一部の非限定例には、以下の化合物E1〜E4が含まれる。
化合物E1:
【0079】
【化18】

【0080】
化合物E2:
【0081】
【化19】

【0082】
化合物E3
【0083】
【化20】

【0084】
化合物E4:
【0085】
【化21】

【0086】
非重水素化類似化合物は、C−C結合またはC−N結合を生じることになる任意の技法で作ることができる。様々なそのような技法(Suzuki、Yamamoto、Stille、およびPd触媒またはNi触媒のC−Nカップリングなど)が知られている。次いで新規の重水素化合物は、重水素化前駆体物質を用いるか、あるいは、より一般的には、ルイス酸H/D交換触媒(例えば、三塩化アルミニウムまたはエチルアルミニウムクロライド(ethyl aluminum chloride)、またはCF3COOD、DCIなどの酸等)の存在下で、非重水素化合物を重水素化溶媒(d6−ベンゼンなど)で処理することにより、同じような仕方で調製できる。例示的な調製物を実施例に示す。重水素化のレベルは、NMR分析および質量分析法(大気圧固体分析プローブ質量分析法(ASAP−MS)など)によって求めることができる。過重水素化(perdeuterated)または部分重水素化された芳香族化合物またはアルキル化合物の出発物質は、市販品供給元(commercial source)から購入できるか、または周知の方法を用いて得ることができる。そのような方法の幾つかの例は、a)“Efficient H/D Exchange Reactions of Alkyl−Substituted Benzene Derivatives by Means of the Pd/C−H2−D2O System” Hiroyoshi Esaki,Fumiyo Aoki,Miho Umemura,Masatsugu Kato,Tomohiro Maegawa,Yasunari Monguchi,and Hironao Sajiki Chem.Eur.J.2007,13,4052−4063. b)“Aromatic H/D Exchange Reaction Catalyzed by Groups 5 and 6 Metal Chlorides” GUO,Qiao−Xia,SHEN,Bao−Jian;GUO,Hai−Qing TAKAHASHI,Tamotsu Chinese Journal of Chemistry,2005,23,341−344; c)“A novel deuterium effect on dual charge−transfer and ligand−field emission of the cis−dichlorobis(2,2’−bipyridine)iridium(III)ion” Richard J.Watts,Shlomo Efrima,and Horia Metiu J.Am.Chem.Soc.,1979,101(10),2742−2743; d)“Efficient H−D Exchange of Aromatic Compounds in Near−Critical D20 Catalysed by a Polymer−Supported Sulphonic Acid”Carmen Boix and Martyn Poliakoff Tetrahedron Letters 40(1999)4433−4436; e)米国特許第3849458号明細書; f)“Efficient C−H/C−D Exchange Reaction on the Alkyl Side Chain of Aromatic Compounds Using Heterogeneous Pd/C in D2O”Hironao Sajiki,Fumiyo Aoki,Hiroyoshi Esaki,Tomohiro Maegawa,and Kosaku Hirota Org.Lett.,2004,6(9),1485−1487の中に見出すことができる。
【0087】
本明細書に記載の化合物は、液体付着技法を用いて膜にすることができる。驚くべきことに、こうした化合物は、予想外にも類似の非重水素化合物と比べて非常に特性が向上している。本明細書に記載の化合物を持つ活性層を含んだ電子デバイスは、大幅に向上した寿命を持つ。加えて、量子効率が高くかつ彩度が良好な状態で、その寿命の増大が達成される。さらに、本明細書に記載の重水素化合物は、非重水素化類似体よりも空気露出耐性(air tolerance)が大きい。そのため、物質の調製および精製の両方における処理耐久性(processing tolerance)が増大しうるし、またその物質を用いた電子デバイスが形成されうる。
【0088】
3.電子デバイス
本明細書に記載のエレクトロルミネセンス物質を含んでいる1つまたは複数の層を有することから恩恵を受けることのできる有機電子デバイスとしては、(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、またはダイオードレーザー)、(2)エレクトロニクスの処理による信号を検出するデバイス(例えば、光検出器、光伝導セル、フォトレジスター、光電スイッチ、フォトトランジスター、光電管、IR検出器)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(例えば、光電変換装置または太陽電池)、および(4)1つまたは複数の有機半導体層を含んでいる1つまたは複数の電子部品を含むデバイス(例えば、トランジスターまたはダイオード)があるが、これらに限定されない。
【0089】
有機電子デバイス構造の1つの説明図を図1に示す。デバイス100は、第1電気接触層である陽極層110と、第2電気接触層である陰極層160と、それらの間にある電気活性層140とを有する。陽極の隣には正孔注入層120がある。正孔注入層の隣には、正孔輸送物質を含む正孔輸送層130がある。陰極の隣には、電子輸送物質を含む電子輸送層150があってよい。デバイスでは、陽極110の隣の1つまたは複数の更なる正孔注入層または正孔輸送層(図示せず)及び/または陰極160の隣の1つまたは複数の更なる電子注入層または電子輸送層(図示せず)を使用してよい。
【0090】
層120〜150は、個別にも集合的にも活性層と呼ばれる。
【0091】
1つの実施形態では、種々の層の厚さの範囲は以下の通りである:陽極110は500〜5000Åで、1つの実施形態では1000〜2000Åであり;正孔注入層120は50〜2000Åで、1つの実施形態では200〜1000Åであり;正孔輸送層130は50〜2000Åで、1つの実施形態では200〜1000Åであり;電気活性層140は10〜2000Åで、1つの実施形態では100〜1000Åであり;層150は50〜2000Åで、1つの実施形態では100〜1000Åであり;陰極160は200〜10000Åで、1つの実施形態では300〜5000Åである。デバイス中の電子−正孔再結合域の場所(したがってデバイスの発光スペクトル)は、各層の相対的厚さによって影響されうる。層の厚さの所望の比率は、使用する物質のまさにその性質によって異なるであろう。
【0092】
デバイス100の用途に応じて、電気活性層140は、印加電圧によって活性化される発光層であってよいか(発光ダイオードまたは発光電気化学セルの場合など)、あるいはバイアス印加電圧の有無にかかわりなく放射エネルギーに反応して信号を発生する物質の層(光検出器の場合など)であってよい。光検出器の例としては、光伝導セル、フォトレジスター、光電スイッチ、フォトトランジスター、および光電管、および光起電力セルがあり、これらの用語は、Markus,John,Electronics and Nucleonics Dictionary,470 and 476(McGraw−Hill,Inc.1966)に記載されている通りである。
【0093】
本明細書に記載した新規の重水素化物質の1種または複数種が、デバイスの1つまたは複数の活性層中に存在してよい。重水素化物質は、非重水素化物質と組み合わせて、あるいは他の重水素化物質と組み合わせて使用してよい。
【0094】
実施形態によっては、少なくとも1種の重水素化合物を有する新規の組合せは、電気的活性層140用のホスト/ドーパント物質として有用である。実施形態によっては、発光(emissive)物質も重水素化されている。実施形態によっては、少なくとも1つの更なる層が重水素化物質を含む。実施形態によっては、更なる層は正孔注入層120である。実施形態によっては、更なる層は正孔輸送層130である。実施形態によっては、更なる層は電子輸送層150である。
【0095】
実施形態によっては、電子デバイスは、正孔注入層、正孔輸送層、電気活性層、および電子輸送層よりなる群から選択される層の任意の組合せにおいて重水素化物質を有する。
【0096】
実施形態によっては、デバイスは、処理に役立つようにまたは機能を向上させるために、更なる層を有する。そうした層の一部または全部が重水素化物質を含むことができる。実施形態によっては、有機デバイスの層すべてが重水素化物質を含む。実施形態によっては、有機デバイスの層すべてが重水素化物質から本質的になる。
【0097】
a.電気的活性層
式IおよびIIの化合物の新規の組合せは、層140中で電気的活性ドーパント物質と組み合わせるホスト物質として有用である。その化合物は、単独で、あるいは第2ホスト物質と組み合わせて用いることができる。新規の重水素化合物は、任意の色を発するドーパント用のホストとして使用できる。実施形態によっては、新規の重水素化合物は緑色発光または青色発光物質用のホストとして使用する。
【0098】
実施形態によっては、電気的活性層は、式IおよびIIを有するホストとドーパントとの組合せから本質的になる。実施形態によっては、電気的活性層は、式Iを有する第1ホスト物質、第2ホスト物質、および式IIの電気的活性ドーパントから本質的になる。第2ホスト物質の例としては、クリセン類、フェナントレン類、トリフェニレン類、フェナントロリン類、ナフタレン類、アントラセン類、キノリン類、イソキノリン類、キノキサリン類、フェニルピリジン類、ベンゾジフラン類、および金属キノリネート錯体(metal quinolinate complexes)があるが、これらに限定されない。
【0099】
電気的活性組成物中に存在する式IIのドーパント材料の量は一般に、組成物の全重量を基準にして3〜20重量%の範囲であり、実施態様によっては、5〜15重量%である。第2ホストが存在する場合、式Iを有する第1ホストと第2ホストとの比率は一般に、1:20〜20:1の範囲であり、実施態様によっては、5:15〜15:5である。実施態様によっては、式Iを有する第1ホスト物質は、全ホスト物質の少なくとも50重量%であり、実施態様によっては、少なくとも70重量%である。
【0100】
実施態様によっては、第2ホスト物質は式IIIを有する。
【0101】
【化22】

【0102】
[式中、
Ar7は、それぞれの出現において同一または異なっていて、アリール基であり;
Qは、多価アリール基および
【0103】
【化23】

【0104】
よりなる群から選択され;
Tは、(CR’)a、SiR2、S、SO2、PR、PO、PO2、BR、およびRよりなる群から選択され;
Rは、それぞれの出現において同一または異なっていて、アルキル、およびアリールよりなる群から選択され;
R’は、それぞれの出現において同一または異なっていて、Hおよびアルキルよりなる群から選択され;
aは、1〜6の整数であり;さらに
nは、0〜6の整数である]
nは0〜6の値を取りうるが、一部のQ基では、nの値は基の化学的性質による制約を受けることが理解されるであろう。実施態様によっては、nは0または1である。
【0105】
式IIIの実施態様によっては、隣接したAr基は結合してカルバゾールなどの環を形成する。式IVでは、「隣接した」とは、Ar基が同じNに結合していることを意味する。
【0106】
実施態様によっては、Ar7は独立に、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、ナフチル、フェナントリル、ナフチルフェニル、およびフェナントリルフェニルよりなる群から選択される。クアテルフェニルより多い、5〜10個のフェニル環を有する類似体も使用できる。
【0107】
実施態様によっては、Ar7の少なくとも1つが少なくとも1つの置換基を有する。ホスト物質の物理特性または電子特性を変えるために、置換基を存在させることができる。実施態様によっては、置換基によりホスト物質の加工性が改善される。実施態様によっては、置換基により、ホスト物質の溶解度が増大し、かつ/またはそのTgが増大する。実施態様によっては、置換基は、D、アルキル基、アルコキシ基、シリル基、シロキサン、およびそれらの組合わせよりなる群から選択される。
【0108】
実施態様によっては、Qは少なくとも2個の縮合環を有するアリール基である。実施態様によっては、Qは3〜5個の縮合芳香族環を有する。実施態様によっては、Qは、クリセン、フェナントレン、トリフェニレン、フェナントロリン、ナフタレン、アントラセン、キノリンおよびイソキノリンよりなる群から選択される。
【0109】
ドーパントは、380から750nmの間に発光極大を有するエレクトロルミネセンス可能な電気的活性物質である。実施態様によっては、ドーパントは、赤色、緑色、または青色の光を発する。
【0110】
電気的活性層中のドーパントとして使用できるエレクトロルミネセンス(「EL」)物質としては、小分子有機ルミネセンス化合物、ルミネセンス金属錯体、共役ポリマー、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。小分子有機ルミネセンス化合物の例としては、クリセン類、ピレン類、ペリレン類、ルブレン類、クマリン類、アントラセン類、チアジアゾール類、それらの誘導体、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。金属錯体の例としては、金属キレート化オキシノイド化合物があるが、これらに限定されない。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)類、ポリフルオレン類、ポリ(スピロビフルオレン)類、ポリチオフェン類、ポリ(p−フェニレン)類、それらのコポリマー、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0111】
赤色発光物質の例としては、ペリフラテン類(periflanthenes)、フルオランテン類、およびペリレン類があるが、これらに限定されない。赤色発光物質は、例えば、米国特許第6,875,524号明細書および米国特許出願公開第2005−0158577号明細書に記載されている。
【0112】
緑色発光物質の例としては、ジアミノアントラセン類およびポリフェニレンビニレンポリマーがあるが、これらに限定されない。緑色発光物質は、例えば、公開されたPCT出願の国際公開第2007/021117号パンフレットに開示されている。
【0113】
青色発光物質の例としては、ジアリールアントラセン類、ジアミノクリセン類、ジアミノピレン類、およびポリフルオレンポリマーがあるが、これらに限定されない。青色発光物質は、例えば、米国特許第6,875,524号明細書、ならびに米国特許出願公開第2007−0292713号明細書および第2007−0063638号明細書に開示されている。
【0114】
実施態様によっては、ドーパントは有機化合物である。実施態様によっては、ドーパントは、高分子ではないスピロビフルオレン化合物およびフルオランテン化合物よりなる群から選択される。
【0115】
実施態様によっては、ドーパントは、アリールアミン基を有する化合物である。実施態様によっては、電気的活性ドーパントは以下の式から選択される。
【0116】
【化24】

【0117】
[式中、
Aは、それぞれの出現において同一または異なっていて、3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
Q’は、単結合であるか、または3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
pおよびqは独立に1〜6の整数である]
【0118】
上記の式の実施態様によっては、各式中のAおよびQ’の少なくとも1つが、少なくとも3個の縮合環を有する。実施態様によっては、pおよびqは1に等しい。
【0119】
実施態様によっては、Q’はスチリル基またはスチリルフェニル基である。
【0120】
実施態様によっては、Q’は、少なくとも2個の縮合環を有する芳香族基である。実施態様によっては、Q’は、ナフタレン、アントラセン、クリセン、ピレン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、およびルブレンよりなる群から選択される。
【0121】
実施態様によっては、Aは、フェニル、ビフェニル、トリル、ナフチル、ナフチルフェニル、およびアントラセニル基よりなる群から選択される。
【0122】
実施態様によっては、ドーパントは以下の式を有する。
【0123】
【化25】

【0124】
[式中、
Yは、それぞれの出現において同一または異なっていて、3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
Q’’は、芳香族基、二価のトリフェニルアミン残基、または単結合である]
【0125】
実施態様によっては、ドーパントはアリールアセンである。実施態様によっては、ドーパントは非対称アリールアセンである。
【0126】
実施態様によっては、ドーパントは式IVを有するクリセン誘導体である。
【0127】
【化26】

【0128】
[式中、
''は、それぞれの出現において同一または異なっていて、D、アルキル、アルコキシ アリール、フルオロ、シアノ、ニトロ、−SO212[ここで、R'''はアルキルまたはパーフルオロアルキルである]よりなる群から選択され、ここで、隣接したR''基は結合して5員または6員の脂肪族環を形成していてよく;
Ar8〜Ar11は、同一または異なっていて、アリール基よりなる群から選択され;さらに
eは、それぞれの出現において同一または異なっていて、0〜5の整数である]
【0129】
実施態様によっては、式VIのドーパントは重水素化されている。実施態様によっては、アリール基は重水素化されている。実施態様によっては、アルキル基は重水素化されている。実施態様によっては、ドーパントは少なくとも50%が重水素化されており、実施態様によっては、少なくとも60%が重水素化されており、実施態様によっては、少なくとも70%が重水素化されており、実施態様によっては、少なくとも80%が重水素化されており、実施態様によっては、少なくとも90%が重水素化されており、実施態様によっては、100%が重水素化されている。
【0130】
緑色ドーパントの一部の非限定例は、以下に示す化合物D1〜D8である。
【0131】
【化27】

【0132】
【化28】

【0133】
【化29】

【0134】
【化30】

【0135】
【化31】

【0136】
青色ドーパントの一部の非限定例は、以下に示す化合物D9〜D16である。
【0137】
【化32】

【0138】
【化33】

【0139】
【化34】

【0140】
【化35】

【0141】
【化36】

【0142】
実施形態によっては、電気活性ドーパントは、アミノ置換クリセン類およびアミノ置換アントラセン類よりなる群から選択される。
【0143】
実施態様によっては、本明細書に記載した新規の重水素化合物は、エレクトロルミネセンス物質であり、電気的活性物質として存在する。
【0144】
b.デバイスの他の層
デバイス中の他の層は、そのような層に有用であることが知られている任意の物質で作ることができる。
【0145】
陽極110は、正の電荷担体を注入するのに特に効率的な電極である。それは、例えば、金属を含む物質、混合金属、合金、金属酸化物または混合金属酸化物で作ることができるか、またはそれは導電性ポリマーにすることができるか、あるいはそれらの混合物にすることもできる。好適な金属としては、11族の金属、4〜6族の金属、および8〜10族の遷移金属がある。陽極を光透過性にする場合、12族、13族および14族の金属の混合金属酸化物(インジウム−スズ−酸化物など)が一般的に使用される。陽極110は、“Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer,”Nature vol.357,pp 477−479(11 June 1992)に記載されているようにポリアニリンなどの有機物質を含むこともできる。生じた光を見ることができるように、陽極および陰極のうちの少なくとも1つが、望ましくは少なくとも部分的に透明である。
【0146】
正孔注入層120は正孔注入物質を含み、有機電子デバイスにおいて1つまたは複数の機能を有しうる。その機能としては、下にある層の平坦化、電荷輸送特性及び/または電荷注入特性、不純物(酸素または金属イオンなど)の除去、および有機電子デバイスの性能を促進または向上させる他の側面があるが、それらに限定されない。正孔注入物質は、ポリマー、オリゴマー、または小分子でありうる。それらは、溶液、分散液、懸濁液、エマルジョン、コロイド状混合物、または他の組成物の形であり得る液体から付着させるか、あるいは蒸着させることができる。
【0147】
正孔注入層は、ポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などの高分子材料(プロトニック酸がドープされることが多い)によって形成させることができる。プロトニック酸は、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)などであってよい。
【0148】
正孔注入層は、銅フタロシアニンおよびテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)などの電荷移動化合物などを含むことができる。
【0149】
実施形態によっては、正孔注入層は、少なくとも1種の導電性ポリマーおよび少なくとも1種のフッ素化酸ポリマー(fluorinated acid polymer)を含む。そのような物質については、例えば、米国特許出願公開第2004−0102577号明細書、米国特許出願公開第2004−0127637号明細書、および米国特許出願公開第2005/205860号明細書に記載されている。
【0150】
実施形態によっては、正孔輸送層130は式Iの新規の重水素化合物を含む。層130の他の正孔輸送物質の例は、例えば、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,Vol.18,p.837−860,1996,by Y.Wangに要約されている。正孔輸送分子および正孔輸送ポリマーの両方を使用できる。通常用いられる正孔輸送分子は以下のものである:N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、a−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP)、1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(□−NPB)、およびポルフィリン化合物(porphyrinic compounds)(銅フタロシアニンなど)。通常用いられる正孔輸送ポリマーには、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)−ポリシラン、およびポリアニリンがある。正孔輸送分子(上述したものなど)をポリマー(ポリスチレンおよびポリカーボネートなど)にドープすることによって、正孔輸送ポリマーを得ることも可能である。場合によっては、トリアリールアミンポリマー、特にトリアリールアミン−フルオレンコポリマーが使用される。場合によっては、ポリマーおよびコポリマーは架橋性である。架橋性の正孔輸送ポリマーの例は、例えば、米国特許出願公開第2005−0184287号明細書および公開されたPCT出願の国際公開第2005/052027号パンフレット中に見出すことができる。実施形態によっては、正孔輸送層は、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンおよびペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸−3,4,9,10−二無水物などのp−ドーパントがドープされる。
【0151】
実施形態によっては、電子輸送層150は式Iの新規の重水素化合物を含む。層150に使用できる他の電子輸送物質の例としては、金属キレートオキシノイド化合物(トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)など);ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニル−フェノラト)アルミニウム(III)(BAlQ);およびアゾール化合物(2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)および3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI)など);キノキサリン誘導体(2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなど);フェナントロリン誘導体(9,10−ジフェニルフェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)など);およびそれらの混合物がある。電子輸送層は、n−ドーパント(Csまたは他のアルカリ金属など)がドープされていてもよい。層150は、電子輸送を促進するために機能することも、層界面での励起子の失活を防止するための正孔注入層または閉じ込め(confinement)層として働くこともできる。好ましくは、この層は電子移動性を促進し、励起子の失活を低減する。
【0152】
陰極160は、電子または負の電荷担体を注入するのに特に効率的な電極である。陰極は、陽極よりも仕事関数の小さい任意の金属または非金属であってよい。陰極用の物質は、1族のアルカリ金属(例えば、Li、Cs)、2族の(アルカリ土類)金属、12族の金属(希土類元素およびランタニドを含む)、およびアクチニドから選択できる。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウムおよびマグネシウムなどの物質、ならびにそれらの組合せを使用できる。動作電圧を下げるために、有機層と陰極層との間にLi含有またはCs含有の有機金属化合物、LiF、CsF、およびLi2Oを付着させることもできる。
【0153】
有機電子デバイス中に別の層を設けることが知られている。例えば、注入される正電荷の量を制御するため、かつ/または層のバンドギャップを一致させるため、あるいは保護層として機能するための、陽極110と正孔注入層120との間の層(図示せず)があってよい。当該技術分野において知られている層を使用でき、それには、銅フタロシアニン、酸窒化ケイ素、フルオロカーボン類、シラン類、または金属(Ptなど)の極薄層がある。あるいはまた、陽極層110、活性層120、130、140、および150、または陰極層160の一部または全部を表面処理して、電荷担体輸送効率を増大させることができる。各成分層の物質の選択は、好ましくは、デバイスが高いエレクトロルミネセンス効率となるように正電荷と負電荷を釣り合わせることにより決定する。
【0154】
各機能層は、複数の層で構成できることが理解される。
【0155】
好適な基板上に個々の層を順次蒸着させることを含め、さまざまな技法でデバイスを作製できる。ガラス、プラスチック、および金属などの基板を使用できる。熱蒸発、化学蒸着などの従来の蒸着手法を使用できる。あるいはまた、スピンコーティング、浸漬塗装、ロール間技法(roll−to−roll techniques)、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷などの従来のコーティング技法または印刷技法(但し、それらに限定されない)を用いて、適切な溶媒の分散液または溶液から有機層を施すことができる。
【0156】
本発明はまた、2つの電気接触層の間に配置された少なくとも1つの活性層を含む電子デバイスであって、デバイスの少なくとも1つの活性層が式1およびIIのアントラセン化合物を含む電子デバイスに関する。デバイスは、更なる正孔輸送層および電子輸送層を有することがしばしばある。
【0157】
効率の高いLEDを実現するために、正孔輸送物質のHOMO(最高被占軌道)は、陽極の仕事関数と一致するのが望ましく、また電子輸送物質のLUMO(最低空軌道)が陰極の仕事関数と一致するのが望ましい。物質の化学的適合性および昇華温度も、電子輸送物質および正孔輸送物質を選択する際の重要な考慮事項である。
【0158】
本明細書に記載のアントラセン化合物で作られたデバイスの効率は、デバイス中の他の層を最適化することによってさらに改善できると考えられる。例えば、Ca、BaまたはLiFなどのさらに効率的な陰極を使用できる。動作電圧の低減または量子効率の増大をもたらす形状化基板および新規の正孔輸送物質も、使用できる。種々の層のエネルギー準位を調整するため、またエレクトロルミネセンスを促進するため、更なる層を加えることもできる。
【0159】
本発明の化合物は、光ルミネセンス性であることが多く、OLED以外の用途(酸素感受性の指示薬およびバイオアッセイにおけるルミネセンス性指示薬など)に有用でありうる。
【実施例】
【0160】
以下の実施例は、本発明の特定の特徴および利点を示す。それらは、本発明を例示することを意図したものであり、限定するものではない。百分率はすべて、特に記載がない限り、重量百分率である。
【0161】
ドーパント物質の合成
(1)ドーパントD6は以下のようにして調製した。
【0162】
中間体(a)の合成:
【0163】
【化37】

【0164】
35g(300mM)の2−メチル−2−ヘキサノールおよび17.8gのアントラセン(100mM)を50mLのトリフルオロ酢酸に加え、窒素下で一晩還流させた。溶液はすぐに黒ずんで、褐色の不均一物質になった。これを室温まで冷やして、窒素気流下で蒸発させ、塩化メチレン中に抽出した。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、蒸発乾燥させた。得られた固体をシリカカラム(ヘキサンを使用)で抽出し、淡黄色の溶液を回収した。粘稠な黄色油にまるまで蒸発させ、ゆっくり冷却してアセトン/メタノールから再結晶させ、それからメタノールで再結晶させた。NMR分析により構造が確認された。
【0165】
中間体(b)の合成:
【0166】
【化38】

【0167】
6.0g(16mM)の中間体(a)(純粋な2,6異性体)を100mLのジクロロエタンに入れ、2.10mLの臭素(40mM)を、室温で攪拌しながら4時間かけて滴加した。これを水中に注ぎ、亜硫酸ナトリウムを加えて残りの臭素を消費した。次いでこれを塩化メチレン中に抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた物質を塩化メチレン溶離剤でアルミナカラム中に通してから蒸発させ、メタノールを加えて淡黄色固体を沈殿させた。収量:約7.2g
【0168】
中間体(c)の合成:
【0169】
【化39】

【0170】
グローブボックス内の25gのブロモカルバゾール(77.7mM)に18.9g(155mM)のボロン酸を加えた。これに、1.0gのPd2DBA3(1.0mM)、0.5gのP(t−Bu)3(2.1mM)および20gの炭酸ナトリウム(200mM)を加え、その全体を50mLの水と共に200mLのジオキサン中に溶かした。グローブボックス内において、これを、マントルで1時間の間50℃で混合・加熱してから、窒素下で一晩中穏やかに温めた(可変抵抗器の最小設定値)。その溶液はすぐに暗紫色になり、約50Cに近づくと暗褐色になった。グローブボックスの外側で褐色溶液に水を加えると、黄色油性層が分離した。DCMを加えて、有機層を分離させた。濾過液を硫酸マグネシウムで乾燥させて、明るいオレンジ色の溶液が生じさせ、それを蒸発させると白色固体が生じた。蒸発させて容積を小さくし、ヘキサンを加えた後、白色固体を濾別した。洗液が無色になるまで固体をメタノールでよく洗ってから、エーテルですすぎ、吸引乾燥して21gの白色固体を得た。構造はNMR分析法で確認した。
【0171】
中間体(d)の合成:
【0172】
【化40】

【0173】
0.4gのPd2DBA3、0.4gの1,1’−ビス(ジフェニルホスフィン)フェロセン(DPPF)および4.3gのナトリウムtert−ブトキシドをグローブボックス内で混ぜ合わせて、200mLのキシレンに溶かした。15分間攪拌してから、25gの3−ヨード−ブロモベンゼンを加えた。15分間攪拌してから、10gのカルバゾールを加え、その混合物を還流させた。空冷コンデンサーを用いて晩に還流させた。溶液はすぐに暗紫色/褐色になったが、約80Cに達するとそれは暗赤褐色になり濁った。ほぼ還流するくらいまでの加熱を一晩行うと、溶液は暗褐色になり透明になった。グローブボックスの外側において窒素気流中で蒸発させてから、DCMに溶かし、DCM/ヘキサンを用いて、シリカおよび塩基性アルミナの床(ソックスレー内に積み重ねたもの)で抽出した(ソックスレー)。濃いオレンジ色の溶液を回収し、蒸発乾燥させた。濃いオレンジ色の油が残った。これをメタノールで洗ってから、エーテル中に溶かし、メタノールで再沈殿させた。橙褐色の油を蒸発させてエーテル中の容積を小さくし、次いでアセトン/メタノールを加えてオフホワイトの固体を沈殿させた(収量:約6.4g)。これを濾過で回収し、少量のアセトンで洗い、吸引乾燥した。構造はNMR分析法で確認した。
【0174】
中間体(e)の合成:
【0175】
【化41】

【0176】
グローブボックス内において4.8gの中間体(d)(0.01M)に1.7gのアミン(0.01M)を加えた。これに、0.10gのPd2DBA3(0.11mM)、0.045gのP(t−Bu)3(0.22mM)および1.1gのt−BuONaを加え、そのすべてを25mLのトルエンに溶かした。触媒物質を加えると、穏やかな発熱が起きた。これを、グローブボックス内においてマントルで窒素下において80℃で2時間、暗褐色の溶液(粘稠)の状態で加熱した。冷却後、溶液は、β−アルミナクロマトグラフィーによりDCMで溶出させて分離精製を行った。明るい紫色/青色の光ルミネセンスを伴った暗黄色の溶液を回収した。これを窒素中で蒸発させて容積を小さくして、粘稠なオレンジ色の油を生じさせた。これは冷却すると固化して暗黄色ガラスになった。これを攪拌しながらメタノール/DCM中に入れ、淡黄色/白色の固体として結晶化するようにさせた。収量は約5gであった。構造はNMR分析法で確認した。
【0177】
ドーパントD6の合成:
【0178】
【化42】

【0179】
グローブボックス内の1.32gの中間体(b)(2.5mM)に、2.81g(5mM)の中間体(e)および0.5gのt−BuONa(5mM)を50mLのトルエンと共に加えた。これに、0.2gのPd2DBA3(0.2mM)、0.08gのP(t−Bu)3(0.4mM)(10mLのトルエンに溶かしたもの)を加えた。混合すると、溶液はゆっくり発熱し、黄褐色になった。これを、グローブボックス内においてマントルで窒素下において約100℃で1時間の間、混合加熱した。すぐに溶液は暗紫色になったが、約80℃になると、暗黄緑色になり、はっきりした緑色のルミネセンスを伴っていた。可変抵抗器の最低設定値で一晩攪拌した。冷却した後、その物質をグローブボックスから取り出し、酸性アルミナのプラグを通して濾過し、トルエンおよび塩化メチレンで溶出させた。濃いオレンジ色の溶液を蒸発させて容積を小さくした。これをシリカカラムに通した(トルエン:ヘキサン(60:40)を使用)。橙黄色の溶液を回収したが、これはTLCでは青色の主要スポットを示した。これをヘキサン:トルエン(80:20)に再度溶かし、酸性アルミナに通して80%ヘキサン/トルエンで溶出させた。速く移動する青色のバンド(アントラセンおよびモノアミノ化アントラセン)は廃棄した。得られた黄色のバンドを蒸発させて容積を小さくし、トルエン/アセトン/メタノールから結晶化させた。これをメタノールおよびヘキサンで洗い、吸引乾燥して、易流動性の微結晶性黄色粉末を得た。構造はNMR分析法で確認した。
【0180】
(2) ドーパントD12である、N6,N12−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−N6,N12−ビス(4’’−イソプロピルテルフェニル−4−イル)クリセン−6,12−ジアミンを以下のように調製した。
【0181】
【化43】

【0182】
ドライボックス内において、6,12−ジブロモクリセン(0.54g、1.38mmol)、N−(2,4−ジメチルフェニル)−N−(4’−イソプロピルテルフェニル−4−イル)アミン(1.11g、2.82mmol)、トリス(tert−ブチル)ホスフィン(0.028g、0.14mmol)およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.063g、0.069mmol)を丸底フラスコ中で混ぜ合わせ、20mlの乾燥トルエンに溶かした。溶液を1分間攪拌し、その後、ナトリウムtert−ブトキシド(0.29g,3.03mmol)および10mlの乾燥トルエンを加えた。マントルヒーターを追加して、反応を3日間60Cに加熱した。その後、反応混合物を室温まで冷やし、1インチのシリカゲルのプラグおよび1インチのセライトに通して濾過し、トルエン(500mL)で洗った。減圧下で揮発分を除去すると、黄色固体が得られた。粗生成物は、クロロホルム−ヘキサンの勾配(0%〜40%)を使用して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーでさらに精製した。DCMおよびアセトニトリルからの再結晶により、0.540g(40%)の生成物が黄色固体として得られた。1H NMR(CDCl3)は構造と一致する。
【0183】
(3) ドーパントD13である、N6,N12−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−N6,N12−ビス(4’’−tert−オクチルテルフェニル−4−イル)クリセン−6,12−ジアミンは、D12の合成と似た手順で作った。
【0184】
【化44】

【0185】
比較例A
この例は、非重水素化合物(比較化合物A)の製法を例示するものである。
【0186】
【化45】

【0187】
この化合物は、以下の方式に従って調製できる。
【0188】
【化46】

【0189】
化合物2の合成
機械式撹拌器、滴下漏斗、温度計およびN2バブラーを取り付けた3Lのフラスコに、1.5Lの乾燥塩化メチレン中に含まれるアントロン54g(275.2ミリモル)を加えた。フラスコを氷浴で冷却し、83.7ml(559.7ミリモル)の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(「DBU」)を1.5時間にわたって滴下漏斗で加えた。溶液はオレンジに変わり、不透明になり、それから深紅に変わった。まだ冷たい溶液に、溶液の温度を5℃未満に保ちつつ、注射器で約1.5時間かけてトリフル酸無水物(triflic anhydride)を58ml(345.0ミリモル)加えた。室温で3時間反応を進行させ、その後、1mLのトリフル酸無水物をさらに加え、室温での攪拌を30分間継続した。500mLの水をゆっくり加えると、層が分離した。水層を3×200mLのジクロロメタン(「DCM」)で抽出し、一緒にした有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、回転蒸発で濃縮して赤色油を得た。シリカゲルによるカラムクロマトグラフィーに続いてヘキサンで結晶化すると、43.1g(43%)の黄褐色粉末が得られた。
【0190】
化合物3の合成
窒素充填グローブボックス内の磁気攪拌棒を備えた200mLのケルダール反応フラスコに、アントラセン−9−イルトリフルオロメタンスルホネート(6.0g、18.40ミリモル)、ナフタレン(Napthalen)−2−イル−ボロン酸(3.78g、22.1ミリモル)、三塩基性リン酸カリウム(17.50g、82.0ミリモル)、パラジウム(II)アセテート(0.41g、1.8ミリモル)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.52g、1.8ミリモル)およびTHF(100mL)を加えた。ドライボックスから取り出した後、反応混合物を窒素で洗浄し、脱気水(50mL)を注射器で加えた。次いで、凝縮器を取り付けて反応を一晩還流させた。反応はTLCで監視した。反応が完了してから、混合物を室温まで冷却した。有機層を分離し、水層をDCMで抽出した。有機部分を一緒にし、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。得られた固体をアセトンおよびヘキサンで洗浄し、濾過した。シリカゲルによるカラムクロマトグラフィーで精製すると、4.03g(72%)の生成物が淡黄色の結晶物質として得られた。
【0191】
化合物4の合成:
9−(ナフタレン−2−イル)アントラセン(11.17g(36.7ミリモル))を100mLのDCM中に懸濁させた。6.86g(38.5ミリモル)のN−ブロモスクシンイミドを加え、100Wのランプの照明をあてながら混合物を攪拌した。黄色の透明な溶液が形成され、その後に沈殿が生じた。反応はTLCで監視した。1.5時間後に、反応混合物を部分的に濃縮して塩化メチレンを除去し、その後、アセトニトリルで結晶化させて12.2gの淡黄色結晶(87%)を得た。
【0192】
化合物7の合成:
窒素が充填されたグローブボックス内にある攪拌子を備えた500mLの丸底フラスコに、ナフタレン−1−イル−1−ボロン酸(14.2g、82.6ミリモル)、1−ブロモ−2−ヨードベンゼン(25.8g、91.2ミリモル)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.2g、1.4ミリモル)、炭酸ナトリウム(25.4g、240ミリモル)、およびトルエン(120mL)を加えた。ドライボックスから取り出した後、反応混合物を窒素で洗浄し、脱気水(120mL)を注射器で加えた。次いで、反応フラスコに凝縮器を取り付け、反応を15時間還流させた。反応はTLCで監視した。反応混合物を室温まで冷却した。有機層を分離し、水層をDCMで抽出した。有機部分を一緒にし、溶媒を減圧下で除去して黄色油を得た。シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーで精製すると、13.6gの透明な油(58%)が得られた。
【0193】
化合物6の合成:
磁気攪拌棒、還流凝縮器(窒素管路に接続されているもの)および油浴を備えた1リットルのフラスコに、4−ブロモフェニル−1−ナフタレン(28.4g、10.0ミリモル)、ビス(ピナコレート(pinacolate))ジボロン(40.8g、16.0ミリモル)、Pd(dppf)2Cl2(1.64g、2.0ミリモル)、酢酸カリウム(19.7g、200ミリモル)、およびDMSO(350mL)を加えた。混合物を窒素で15分間泡立たせてから、Pd(dppf)2Cl2(1.64g、0.002モル)を加えた。この過程の間に、混合物は暗褐色に徐々に変化した。反応を120℃(油浴)で窒素下において18時間攪拌した。冷却後に、混合物を氷水中に注ぎ、クロロホルム(3×)で抽出した。有機層を水(3×)および飽和ブライン(1×)で洗い、MgSO4で乾燥させた。濾過し、溶媒を除去した後、残留物をシリカゲルカラムによるクロマトグラフィーで精製した。生成物を含む部分を一緒にし、溶媒を回転蒸発によって除去した。得られた白色固体をヘキサン/クロロホルムで結晶化し、真空オーブン内において40℃で乾燥させて生成物を白色結晶フレークとして得た(15.0g、収率45%)。1Hおよび13C−NMRスペクトルは、予期された構造と一致する。
【0194】
比較化合物Aの合成
グローブボックス内の250mLのフラスコに、(2.00g、5.23ミリモル)、4,4,5,5−テトラメチル−2−(4−(ナフタレン−4−イル)フェニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(1.90g、5.74ミリモル)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.24g、0.26ミリモル)、およびトルエン(50mL)を加えた。反応フラスコをドライボックスから取り出し、窒素注入口付き凝縮器を取り付けた。脱気した炭酸ナトリウム水溶液(2M、20mL)を注射器で加えた。反応を一晩にわたって攪拌しかつ90℃に加熱した。反応はHPLCで監視した。室温まで冷却した後、有機層を分離した。水層をDCMで2回洗い、一緒にした有機層を回転蒸発で濃縮して、灰色の粉末を得た。中性アルミナによる濾過、ヘキサンによる沈殿、およびシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーによって精製すると、2.28gの白色粉末(86%)が得られた。
【0195】
米国特許出願公開第2008−0138655号明細書に記載されているようにして生成物をさらに精製して、HPLCでの純度を少なくとも99.9%および不純物の吸光度を0.01以下にした。
【0196】
あるいはまた、化合物Aは、以下に示したプロセスの図式に従って市販の出発物質から合成できる。
【0197】
【化47】

【0198】
実施例1
この実施例は、式Iを有する化合物(化合物H14)の製法を例示するものである。
【0199】
【化48】

【0200】
窒素雰囲気下において、AlCl3(0.48g、3.6ミリモル)を、比較例Aの比較化合物A(5g、9.87ミリモル)のペルジュウテロベンゼン(perdeuterobenzene)またはベンゼン−D6(C66)(100mL)溶液に加えた。得られた混合物を室温で6時間攪拌し、その後、D2O(50mL)を加えた。層を分離させてから、水層をCH2Cl2(2×30mL)で洗浄した。一緒にした有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、揮発分を回転蒸発で除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した。重水素化生成物H1(x+y+n+m=21〜23)を白色粉末として得た(4.5g)。
【0201】
米国特許出願公開第2008−0138655号明細書に記載されているようにして生成物をさらに精製して、HPLCでの純度を少なくとも99.9%にし、不純物の吸光度を0.01以下にした。その物質は、上記から、比較化合物Aと同じレベルの純度であることが判明した。
【0202】
化合物は以下に示す構造を有していた。
【0203】
【化49】

【0204】
上式において、「D/H」は、この原子位置におけるHまたはDの確率がほぼ等しいことを示す。この構造は、1H NMR、13C NMR、2D NMRおよび1H−13C HSQC(異核種単一量子コヒーレンス法(Heteronuclear Single Quantum Coherence))で確認された。
【0205】
E3とE4を比較した例
これらの例は、式IIの重水素化ドーパントを有するデバイスの製造および性能を示す。
【0206】
デバイスは、ガラス基板上に以下の構造を有していた。
【0207】
陽極=インジウム・スズ・酸化物(ITO):50nm
正孔注入層=HIJ1(50nm)(導電性ポリマーと高分子フッ素化スルホン酸との水性分散液である)。そのような物質は、例えば、米国特許出願公開第2004/0102577号明細書、米国特許出願公開第2004/0127637号明細書、米国特許出願公開第2005/0205860号明細書、および公開されたPCT出願の国際公開第2009/018009号パンフレットに記載されている。
【0208】
正孔輸送層=ポリマーP1(これは非架橋のアリールアミンポリマーである)(20nm)
電気的活性層=13:1のホスト:ドーパント(40nm)(表1に示す)
電子輸送層=ET1(これは金属キノレート誘導体である)(10nm)
陰極=CsF/Al(1.0/100nm)
【0209】
【表1】

【0210】
OLEDデバイスは、溶液処理と熱蒸発技法とを併用することによって作製した。パターン化インジウム・スズ・酸化物(ITO)で被覆されたガラス基板(Thin Film Devices,Incからのもの)を使用した。こうしたITO基板は、シート抵抗が30オーム/平方であり光透過率が80%であるITOで被覆されたCorning 1737ガラスをベースにしている。パターン化ITO基板を、洗浄剤水溶液中で超音波を使って清浄にし、蒸留水ですすいだ。その後、パターン化ITOをアセトン中で超音波を使って清浄にし、イソプロパノールですすぎ、窒素流で乾燥させた。
【0211】
デバイスの作製の直前に、清浄にしたパターン化ITO基板を紫外オゾンで10分間処理した。冷却直後に、HIJ1の水性分散液を、ITO表面を覆うようにスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。冷却後、次いで基板を正孔輸送物質の溶液でスピンコーティングし、次いで加熱して溶媒を除去した。冷却後、基板を電子放出層溶液でスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。基板をマスキングし、真空チャンバーに入れた。電子輸送層を熱蒸発によって付着させ、その後、CsF層を付着させた。次いで真空中でマスクを変え、Al層を熱蒸発で付着させた。チャンバーのガス抜きを行い、ガラスの蓋、乾燥剤、および紫外線硬化性エポキシを用いてデバイスをカプセル化した。
【0212】
OLED試料は、(1)電流−電圧(I−V)曲線、(2)エレクトロルミネセンスの輝度 対 電圧、および(3)エレクトロルミネセンススペクトル 対 電圧を測定して特徴を決定した。3種類の測定はすべて同時にコンピュータで実行し制御した。ある一定電圧でのデバイスの電流効率は、LEDのエレクトロルミネセンス輝度を、デバイスを作動させるのに必要な電流で割ることによって求める。単位はcd/Aである。電力効率は、電流効率にpiを乗じ、動作電圧で割ったものである。単位はlm/Wである。デバイスのデータを、表2に示す。
【0213】
【表2】

【0214】
本発明の重水素化ドーパントでは、デバイスの寿命が大幅に増大しているが、他のデバイス特性は保たれていることが分かる。エミッターE4を使用した場合、非重水素化ドーパントE3を有する比較デバイスは平均計画T50が184,800時間であった。重水素化ドーパントE4では、デバイスは平均計画T50が332,100時間である。
【0215】
実施例4
この実施例は、重水素化レベルの制御された式Iを有する化合物を合成するのに使用できる、一部の重水素化中間化合物の調製を例示するものである。
【0216】
中間体4A:
【0217】
【化50】

【0218】
CCl4(500mL)中にアントラセン−d10(18.8g、0.10モル)を含む溶液に、無水臭化銅(II)(45g、0.202モル)を一度に加えた。反応混合物を、還流させながら12時間攪拌し加熱した。褐色の塩化第二銅が徐々に白色の臭化銅(I)に変わり、臭化水素が徐々に発生する(塩基浴吸収装置(base bath absorber)に接続されている)。反応の終了時に、臭化銅(I)を濾過で取り除き、200gのアルミナが充填された35−mmのクロマトカラムに四塩化炭素溶液を通した。カラムを200mlのCH2Cl2で溶離する。一緒にした溶離液を蒸発乾燥させると、レモンイエローの固体として9−ブロモアントラセン−d9が24g(87%)得られる。それは、不純物である出発物質(約2%)およびジブロモ副生成物(約2%)を含んでいる。この物質を精製せずに直接、更なるカップリング反応に用いた。この中間体は、ヘキサンまたはシクロヘキサンを用いた再結晶でさらに精製して純粋な化合物を得ることができる。
【0219】
中間体4B:
【0220】
【化51】

【0221】
d5−ブロモベンゼン(MW162、100g、0.617モル)に、93mLの50%H2SO4と494mLのHOAcとの混合溶媒を室温で加えた。その後、粉末I2(MW254、61.7g、0.243モル)を加え、その後に粉末NaIO4(MW214、26.4g、0.123モル)を加えた。混合物を4時間にわたって激しく攪拌し90℃に加熱した。暗紫色の溶液が、微細な白色沈殿を含む薄オレンジ色の混合物に変化した。混合物を一晩、室温になるまで冷ました。その間に、生成物が板状の微結晶(microcrystalline plates)として沈殿した。混合物を濾過し、10%チオ硫酸ナトリウムNa223(50mL)で2回、次いで水で洗浄した。それをCH2Cl2に溶かし、フラッシュカラムを実施した。淡黄色の結晶物質が124g(70%)得られた。濾過液をCH2Cl2(50mL×3)で抽出し、一緒にしたCH2Cl2を10%チオ硫酸ナトリウムNa223(50mL)で2回洗浄し、次いで水で洗浄した。乾燥させ、溶媒を蒸発させた後、フラッシュカラムを実施して、純粋な生成物をさらに32g(17.5%)得た。全部で156gである(収量:88%)。
【0222】
中間体4C:
【0223】
【化52】

【0224】
ナフタレン(naphalene)−d8(MW136、68g、0.5モル)をCH2Cl2(800mL)、H20(80mL)および臭化水素酸(MW:81、d=1.49、100g;67.5mLの49%水溶液;0.6モル)中に含む攪拌溶液に、過酸化水素(FW:34、d=1.1g/mL、56g;51.5mLの30%水溶液;0.5モル)を30分間にわたって10〜15℃でゆっくり加えた。反応は、TLCでその進行を監視しながら、室温で40時間放置した。臭素化が完了した後、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物を10%チオ硫酸ナトリウムNa2S2O3(50mL)で2回洗浄し、次いで水で洗浄した。純粋な生成物を、ヘキサン(100%)を用いたシリカゲル(100〜200メッシュ)によるフラッシュカラムクロマトグラフィーで分離し、その後で蒸留して、純粋な1−ブロモ−ナフテン−d7を透明な液体として得た(85g)。収量はおよそ80%である。
【0225】
中間体4D:
【0226】
【化53】

【0227】
300mlの乾燥1,4−ジオキサン中に1−ブロモナフタレン−d7(21.4g、0.10モル)、ビス(ピナコラト)ジボロン(38g、0.15モル)、酢酸カリウム(19.6g、0.20モル)を含む混合物を、窒素で15分間泡立たせた。次いで、Pd(dppf)2Cl2−CH2Cl2(1.63g、0.002モル)を加えた。その混合物を100℃(油浴)で18時間加熱した。冷却後、混合物をCELITに通して濾過し、次いで50mLになるまで濃縮し、その後水を加え、エーテルで3回(100mL×3)抽出した。有機層を水(3×)およびブライン(1×)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過して濃縮した。残留物をシリカゲルカラム(溶離剤:ヘキサン)にかけて、白色の液体(副生成物であるナフタレン(naphalene)およびジボロン酸エステル(diboronic ester)を有する)を得た。それゆえに、蒸留により精製をさらに行って透明な粘稠液体を得た。収率:21g(82%)。
【0228】
中間体4E:
【0229】
【化54】

【0230】
トルエン(300mL)中に1−ブロモ−4−ヨード−ベンゼン−D4(10.95g、0.0382モル)と1−ナフタレン(naphalene)ボロン酸エステル−D7(10.0g、0.0383モル)とを含む混合物に、Na2CO3(12.6g、0.12モル)およびH2O(50mL)、アリクアント(登録商標)(3g)を加えた。その混合物を窒素で15分間泡立たせた。その後Pd(PPh3)4(0.90g、2%)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で12時間還流させた。冷却した後、反応混合物を分離し、有機層を水で洗浄し、分離、乾燥、濃縮を行った。シリカを加えて濃縮した。残留溶媒を蒸発させた後、溶離剤としてヘキサンを用いたフラッシュカラムにかけて粗生成物を得た。蒸留でさらに精製を行って(135〜140℃/100ミリトールのものを回収)、透明な粘稠液体を得た(8.76g、収率78%)。
【0231】
中間体4F:
【0232】
【化55】

【0233】
200mlの乾燥1,4−ジオキサン中に1−ブロモ−フェニル−4−ナフタレン−d11(22g、0.075モル)、ビス(ピナコラト)ジボロン(23g、0.090モル)、酢酸カリウム22g、0.224モル)を含む混合物を、窒素で15分間泡立たせた。その後Pd(dppf)2Cl2□CH2Cl2(1.20g、0.00147モル)を加えた。その混合物を100℃(油浴)で18時間加熱した。冷却後、混合物をCELITに通して濾過し、次いで50mLになるまで濃縮し、その後水を加え、エーテルで3回(100mL×3)抽出した。有機層を水(3×)およびブライン(1×)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過して濃縮した。残留物をシリカゲルカラム(溶離剤:ヘキサン)にかけて、白色の液体(副生成物であるナフタレン(naphalene)およびジボロン酸エステルを有する)を得た。それゆえに、溶離剤としてヘキサンを用いたシリカゲルカラムを再度実行することにより精製をさらに行った。溶媒を蒸発させ、およそ80mLのヘキサンになるまで濃縮し、白色の結晶生成物が形成された後、それを濾過して、20.1gの生成物(収率81%)を得た。
【0234】
中間体4G:
【0235】
【化56】

【0236】
トルエン(500mL)中に含まれる中間体4A(18.2g)および中間体4Fボロン酸エステル(25.5g)に、Na2CO3(31.8g)およびH2O(120mL)、アリクアント(登録商標)(5g)を加えた。その混合物を窒素で15分間泡立たせた。その後Pd(PPh3)4(1.5g、1.3%)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で12時間還流させた。冷却した後、反応混合物を分離し、有機層を水で洗浄し、分離、乾燥、濃縮を行って約50mLにし、MeOH中に注いだ。固体を濾過して黄色の粗生成物(約28.0g)を得た。粗生成物を、水、HCl(10%)、水およびメタノールで洗浄した。それをCHCl3に再び溶かし、MgSO4で乾燥させ、濾過した。濾過液にシリカゲルを加え、濃縮して乾燥させ、溶離剤としてヘキサンのみを用いてシリカゲル(0.5Kg)で精製し(合計50Lのヘキサンを通し、再生利用は5Lのヘキサンのみを使用)、白色の生成物を得た。
【0237】
中間体4H:
【0238】
【化57】

【0239】
CH2Cl2(450mL)中に9−(4−ナフタレン−1−イル)フェニルアントラセン−D20、中間体4G(MW400.6、20.3g、0.05モル)を含む、氷浴で冷やされた溶液中に、CH2Cl2(150mL)に臭素(MW160、8.0g、0.05モル)を溶かしたものをゆっくり加えた(20分間)。すぐに反応が起こり、色が淡黄色に変化した。Na2S2O3の溶液(2M 100mL)を加え、15分間攪拌した。次いで水層を分離し、有機相をNa2CO3(10%、50mL)で洗浄し、その後に水で3回洗浄した。分離してからMgSO4で乾燥させ、溶媒を蒸発させた後、100mLまで残した。メタノール(200mL)中に注ぎ、濾過して23.3gの純粋な化合物(MW478.5、収率97.5%)を得た。HPLCにより、100%の純度であることが分かる。
【0240】
中間体4I:
【0241】
【化58】

【0242】
ナフタレン−D8(13.6g、0.10モル)と、ビス(ピナコラト)ジボロン(27.93g、0.11モル)と、ジ−μ−メトキソビス(1,5−シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)[Ir(OMe)COD]2(1.35g、2ミリモル、2%)と、4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジン(1.1g、4ミリモル)との混合物を、シクロヘキサン(200mL)に加えた。混合物をN2で15分間脱気し、その後85℃(油浴)で一晩加熱した(暗褐色溶液)。混合物をシリカゲルのパッドに通した。画分を回収し、乾燥するまで濃縮した。ヘキサンを加えた。濾過液を濃縮し(液体)、シリカゲルカラムに通し、ヘキサンで洗って透明な液体を得た。それは純粋ではなかったので、シリカゲルカラムで再び精製し、ヘキサンで洗い、その後に135℃/100ミリトールで蒸留して、純粋な白色の粘稠液体を得た。それを凝固させて白色粉末を得た(18.5g。収率70%)。
【0243】
中間体4J:
【0244】
【化59】

【0245】
丸底フラスコ(100mL)中に、9−ブロモアントラセン−d9(MW266、2.66g、0.01モル)、ナフタレン−2−ボロン酸(MW172、1.72g、0.01モル)を加え、その後にトルエン(30mL)を加えた。その混合物をN2で10分間洗浄した。その後、水(10mL)に溶かしたNa2CO3(2M、10mL(2.12g)0.02モル)を加えた。混合物を引き続きN2で10分間洗浄した。触媒量のPd(PPh34(0.25g、2.5%、0.025ミリモル)を加えた。混合物を一晩還流させた。その後、分離した有機層をメタノール中に注ぎ、水、HCl(10%)、水およびメタノールで洗浄した。これにより2.6gの純粋な白色生成物が得られる。(収率:83%)。
【0246】
中間体4K:
【0247】
【化60】

【0248】
CH2Cl2(50mL)中に9−2’−ナフチル−アントラセン(anthacene)−d9、中間体4J(2.6g 0.0083モル)を含む溶液を、CH2Cl2(5mL)中に臭素(1.33g、0.0083モル)を含む溶液に滴加し、30分間攪拌した。その後水層を分離し、有機相をNa2CO3(10%、10mL)で洗浄し、その後に水で3回洗浄した。分離してからMgSO4で乾燥させ、溶媒を蒸発させた後、20mLまで残した。メタノール(100mL)中に注ぎ、濾過すると、純粋な化合物が得られる(3.1g、収率96%)。
【0249】
中間体4L
【0250】
【化61】

【0251】
トルエン(約60mL)中に9−ブロモアントラセン−D9、中間体4K(2.66g、0.01モル)と4,4,5,5−テトラメチル−2−(ナフタレン−2−イル−D7)−1,3,2−ジオキサボロラン(2.7g、0.011モル)とを含む混合物に、Na2CO3(4.0g、0.04モル)およびH2O(20mL)を加えた。その混合物を窒素で15分間泡立たせた。次いでPd(PPh34(0.20g、2.0%)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で18時間還流させた(黄色固体)。反応混合物を冷却した後、それをMeOH(200mL)に注いだ。固体を濾過して黄色の粗生成物を得た。粗生成物を水で洗浄し、さらにメタノールで洗浄した。それをCHCl3に再び溶かし、MgSO4で乾燥させ、濾過した。濾過液にシリカゲルを加え、濃縮し、乾燥させ、ヘキサンを溶離剤として用いてシリカゲルで精製して、純粋な生成物を得た。(3.0g、収率94%)。
【0252】
中間体4M:
【0253】
【化62】

【0254】
CH2Cl2(50mL)中に9−2’−ナフチル−アントラセン(anthacene)−d9、中間体4L(2.8g 0.00875モル)を含む溶液に、CH2Cl2(5mL)中に臭素(1.4g、0.00875モル)を含む溶液を滴加し、30分間攪拌した。その後、Na2S2O3溶液(2M 10mL)を加え、その混合物を15分間攪拌した。その後、水層を分離し、有機相をNa2CO3(10%、10mL)で洗浄し、その後に水で3回洗浄した。分離してからMgSO4で乾燥させ、溶媒を蒸発させた後、20mLまで残した。メタノール(100mL)中に注ぎ、濾過すると、純粋な化合物が得られる(3.3g、収率95%)。
【0255】
実施例5
この実施例は、中間体4Hと中間体4Iとからの化合物H8の合成について示す。
【0256】
【化63】

【0257】
DME(350mL)中に9ブロモ−10−(4−ナフタレン−1−イル)フェニルアントラセン−D19中間体4H(14.84g、0.031モル)および2−ナフタレンボロン酸エステル中間体4I(10.0g、0.038モル)を含む混合物に、K2CO3(12.8g、0.093モル)およびH2O(40mL)を加えた。その混合物を窒素で15分間泡立たせた。次いでPd(PPh34(0.45g、1.3%)を加えた。混合物を窒素雰囲気下で12時間還流させた。冷却した後、反応混合物を濃縮して約150mLにし、MeOH中に注いだ。固体を濾過して淡黄色の粗生成物を得た。粗生成物を水で洗浄し、さらにメタノールで洗浄した。それをCHCl3に再び溶かし、MgSO4で乾燥させ、濾過した。濾過液にシリカゲルを加え、濃縮し、乾燥させ、ヘキサン:クロロホルム(3:1)を溶離剤として用いてシリカゲル(0.5Kg)で精製して、白色生成物を得た。(15g、収率91%)
【0258】
実施例6
この実施例は、中間体4Kからの化合物H11の合成を例示するものである。
【0259】
【化64】

【0260】
丸底フラスコ(100mL)中に、9−ブロモ−10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン、中間体4K(1.96g、0.05モル)、4−(ナフタレン−1−イル)フェニルボロン酸(1.49g、0.06モル)を加え、その後、トルエン(30mL)を加えた。混合物をN2で10分間洗浄した。その後に、水(8mL)に溶かしたNa2CO3(1.90g、0.018モル)を加え、それに続いてAliquent(登録商標)(1mL)を加えた。混合物を引き続きN2で10分間洗浄した。触媒量のPd(PPh34(116mg)を加えた。混合物を一晩還流させた。水性相が分離した後、有機層をメタノール(100mL)中に注いで白色固体を回収した。それを濾過し、クロロホルム:ヘキサン(1:3)を用いてシリカゲルカラムを実施してさらに精製を行い、純粋な白色化合物を得た(2.30g、収率90%)。
【0261】
実施例7
この実施例は、中間体4Kと中間体4Fとからの化合物H9の合成を示す。
【0262】
【化65】

【0263】
丸底フラスコ(100mL)中に、9−ブロモ−10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−D8、中間体4K(0.70g、0.0018モル)、4−(ナフタレン−1−イル)フェニルボロン酸−D11、中間体4F(0.7g、0.002モル)を加え、その後にトルエン(10mL)を加えた。その混合物をN2で10分間洗浄した。その後に、水(3mL)に溶かしたNa2CO3(0.64g、0.006モル)を加え、それに続いてAliquat(登録商標)(0.1mL)を加えた。混合物を引き続きN2で10分間洗浄した。触媒量のPd(PPh34(0.10g)を加えた。混合物を一晩還流させた。水性相が分離した後、有機層をメタノール(100mL)中に注いで白色固体を回収した。それを濾過し、クロロホルム:ヘキサン(1:3)を用いてシリカゲルカラムを実施してさらに精製を行い、純粋な白色化合物を得た(0.90g、収率95%)。
【0264】
化合物H10、H12およびH13を類似の方法で調製した。
【0265】
本発明の重水素化ドーパントを有する組合せでは、デバイスの寿命が大幅に増大しているが、他のデバイス特性は維持されていることが分かる。計画寿命は、非重水素化ドーパントの寿命の2倍に近づく。
【0266】
概要および実施例において上で述べた作業のすべてが必要であるわけではないこと、特定作業の一部は必要ではないことがあること、また説明したものに加えて1つまたは複数の更なる作業が実行されうることに留意されたい。またさらに、列挙されている作業の順序は、必ずしもそれらが実行される順序ではない。
【0267】
上記の明細書により、各概念が特定の実施形態に関連して説明された。しかし、以下の請求項に記載した本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正および変更を行うことができることは、当業者により理解される。したがって、明細書および図は、制限的な意味ではなく例示的なものと見なすべきであり、そのような修正はすべて本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0268】
上記において、便益、他の利点、および問題の解決法は、特定の実施形態に関連して説明されている。しかし、便益、利点、問題の解決法、ならびにいずれかの便益、利点、または解決法をもたらしうるかまたはより顕著なものにしうるどの特徴も、いずれかまたはすべての請求項の重要な特徴、必須の特徴、または基本的特徴と解釈すべきではない。
【0269】
明快にするために別々の実施形態の文脈において本明細書で説明されている特定の複数の特徴を、1つの実施形態で兼ね備えさせることもできることを理解すべきである。その逆に、簡潔にするために1つの実施形態の文脈で説明されている様々な特徴を、別個に、あるいは任意の副次的な組合せで備えさせることもできる。さらに、範囲内に示されている値に言及する場合、それはその範囲内の各値およびすべての値を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリール置換アントラセン化合物の組合せであって、式Iおよび式II:
【化1】

【化2】

[式中、
1〜R20は、それぞれの出現において同一または異なっていて、H、D、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シロキサン、およびシリルからなる群から選択され;さらに
Ar1〜Ar6は、同一または異なっていて、アリール基からなる群から選択される]
を含み、
前記組合せが少なくとも1個のDを有する、
アリール置換アントラセン化合物の組合せ。
【請求項2】
少なくとも10%が重水素化されている、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
少なくとも50%が重水素化されている、請求項1に記載の組合せ。
【請求項4】
100%が重水素化されている、請求項1に記載の組合せ。
【請求項5】
前記少なくとも1個のDがアリール環上にある、請求項1に記載の組合せ。
【請求項6】
1〜R20の少なくとも1個がDである、請求項1に記載の組合せ。
【請求項7】
1〜R20がHおよびDから選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項8】
14およびR18の少なくとも1個がアルキル基から選択され、R1〜R13、R15〜R17およびR19〜R20がHおよびDから選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項9】
Ar1〜Ar6の少なくとも1つが重水素化アリールである、請求項1に記載の組合せ。
【請求項10】
Ar1およびAr2が重水素化ジアリールから選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項11】
Ar1〜Ar6が少なくとも20%重水素化されている、請求項1に記載の組合せ。
【請求項12】
Ar1およびAr2が、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニル、およびそれらの重水素化誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の組合せ。
【請求項13】
Ar3〜Ar6が、フェニル、アルキル置換フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニル、フェニルナフチレン、ナフチルフェニレン、およびそれらの重水素化誘導体からなる群から選択される、請求項12に記載の組合せ。
【請求項14】
Ar1およびAr2が、
【化3】

[式中、
21〜R34は、それぞれの出現において同一または異なっていて、H、またはDからなる群から選択される]
からなる群から選択される、請求項13に記載の組合せ。
【請求項15】
第1電気接触層と第2電気接触層とそれらの間の少なくとも1つの活性層とを含む有機電子デバイスであって、前記活性層がアリール置換アントラセン化合物の組合せを含み、前記アリール置換アントラセン化合物が式Iおよび式II:
【化4】

【化5】

[式中、
1〜R20は、それぞれの出現において同一または異なっていて、H、D、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シロキサン、およびシリルからなる群から選択され;さらに
Ar1〜Ar6は、同一または異なっていて、アリール基からなる群から選択される]
を含み、
前記組合せが少なくとも1個のDを有する、
有機電子デバイス。
【化6】

[式中、
21〜R34はそれぞれの出現において同一または異なっていて、H、またはDからなる群から選択される]

【図1】
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【公表番号】特表2013−513690(P2013−513690A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543077(P2012−543077)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/068950
【国際公開番号】WO2011/071507
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】