説明

電子的装置のカプセル化方法

【課題】浸透物、特に水蒸気および酸素に対して電子的装置をカプセル化するための、簡単に実施可能であり、かつ同時に優れたカプセル化が達成される方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、浸透物に対する電子的装置、好ましくは光電子的装置のカプセル化にあたり、部分的に結晶質であるポリオレフィンをベースとする感圧接着剤が、前記電子的装置のカプセル化すべき領域の上および/または周りに適用される方法であって、前記ポリオレフィンが、0.86g/cm3から0.89g/cm3までの間の密度と、最低90℃の晶子融点を有する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子的装置(elektronische Anordnung)のカプセル化方法ならびに電子的装置のカプセル化のための感圧接着剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電子的装置、特に光電子的装置は、市場の製品においてますます頻繁に使用されており、または市場導入間近にある。このような装置には、無機電子構造または有機電子構造、例えば有機半導体、有機金属半導体、またはポリマー半導体が含まれ、またはそれらの組合せも含まれる。これらの装置および製品は、所望の用途に応じて硬く、または柔軟に形成され、その際、柔軟な装置に対する需要が次第に増している。このような装置の作製は、例えば凸版印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、平版印刷のような印刷方法によって行われ、または熱転写印刷、インク・ジェット印刷、もしくはデジタル印刷などのいわゆる「ノン・インパクト・プリンティング」のような印刷方法によっても行われる。しかし例えば化学気相蒸着(CVD)、物理気相蒸着(PVD)、プラズマ促進化学または物理蒸着方法(PECVD)、スパッタリング、(プラズマ)エッチングまたは蒸着(Bedampfung)のような真空方法も度々使用されており、その際、構造化は一般的にマスクによって行われる。
【0003】
すでに市販されている、またはその市場潜在力において関心を引く(光)電子の用途に関する例としては、ここでは電気泳動またはエレクトロクロミックを用いた構成物またはディスプレイ、表示装置およびディスプレイ装置における有機発光ダイオードまたはポリマー発光ダイオード(OLEDまたはPLED)、または照明として挙げればエレクトロ・ルミネセンス・ランプ、発光電気化学セル(LLED)、有機太陽電池、好ましくは色素太陽電池またはポリマー太陽電池、無機太陽電池、好ましくは特にケイ素、ゲルマニウム、銅、インジウム、およびセレニウムをベースとする薄層太陽電池、有機電界効果トランジスタ、有機スイッチング素子、有機光増幅器、有機レーザ・ダイオード、有機センサまたは無機センサ、または有機または無機ベースのRFIDトランスポンダも挙げられる。
【0004】
無機および/または有機の(光)電子機器の範囲における、ことのほか有機(光)電子機器の範囲における(光)電子的装置の十分な耐用期間および機能を実現するための技術的な課題として、その中に内包されたコンポーネントを浸透物に対して保護することが考えられる。浸透物とは、多数の低分子有機化合物または低分子無機化合物であり、特に水蒸気および酸素であり得る。
【0005】
無機および/または有機の(光)電子機器の範囲における、ことのほか有機原料を使用する場合の多数の(光)電子的装置は、水蒸気からも酸素からも影響を及ぼされやすく、その際、多くの装置に関して水蒸気の侵入がより大きな問題としてランク付けされる。このため電子的装置の耐用期間中はカプセル化による保護が不可欠であり、というのもそうしなければ、使用期間中ずっと性能が低下していくからである。こうして例えば構成要素の酸化により、エレクトロ・ルミネセンス・ランプ(ELランプ)または有機発光ダイオード(OLED)などのような発光装置の場合は光力が、電気泳動ディスプレイ(EPディスプレイ)の場合はコントラストが、または太陽電池の場合は効率が、非常に短い期間内に激しく低下する可能性がある。
【0006】
無機および/または有機の(光)電子機器の場合、特に有機(光)電子機器の場合、酸素および/または水蒸気のような浸透物に対する浸透バリアとなる柔軟な接着溶液に対する特別な需要がある。それだけでなく、このような(光)電子的装置に対しては多くの更なる要求がある。このため柔軟な接着溶液は、2つの土台の間の優れた付着を達成するだけでなく、それに加えて高いせん断強度および剥離強度、化学耐性、耐老朽化性、高い透明性、簡単な加工性、ならびに高い柔軟性および曲げ性のような特性を満たすべきである。
【0007】
従って従来技術に基づき一般的に行われている手法では、水蒸気および酸素を通り抜けさせない2つの土台の間に電子的装置を据える。その後、引き続き縁での封止が行われる。柔軟でない構成物のためにはガラス、金属土台またはフィルム複合体(例えばEVA層、ポリエステル層およびフルオロポリマー層から成るバックシートにガラスおよび/または金属の硬い土台を組み合わせたもの)が使用され、これらの土台は部分的に高い浸透バリアを提供するが、しかし機械的な負荷に対しては抵抗力が著しく欠落している。さらにこれらの土台は装置全体の厚みを比較的大きくする。金属土台の場合にはこれに加えて透明性がない。これに対し柔軟な装置のためには、多層状に作製可能な透明または不透明なフィルムのような平面土台が両面に用いられる。これに関しては、様々なポリマーからの組合せも、無機層または有機層も使用することができる。このような平面土台の使用は、柔軟で、極めて薄い構造を可能にする。その際、多様な用途のために、例えばフィルム、織布、不織布、および紙、またはそれらからの組合せのような非常に様々な土台が可能である。
【0008】
バリア作用を特徴づけるために、通常は酸素透過率OTR(Oxygen Transmission Rate)および水蒸気透過率(WVTR)(Water Vapor Transmission Rate)が提示される。その際、それぞれの率は、特定の温度および分圧条件ならびに場合によっては相対湿度のような更なる測定条件の下での、面積および時間当りの酸素もしくは水蒸気のフィルムを通り抜ける流量を示す。これらの値が低ければ低いほど、それぞれの材料はカプセル化のためにより適している。その際、浸透性の提示は、単にWVTRまたはOTRに関する値に基づくだけでなく、常に材料の厚みなどのような浸透の平均経路長に関する情報または特定の経路長に基づく規格化も内容として含んでいる。
【0009】
浸透性Pは、気体および/または液体に関する物体の透過性のための尺度である。低いP値は優れたバリア作用を特徴づける。浸透性Pは、定置された条件下での、特定の浸透経路長、分圧、および温度の場合の、定義された材料および定義された浸透物に関する特定の値である。浸透性Pは、拡散項Dおよび溶解度項Sの積で表わされる。すなわち、
P=D
【0010】
溶解度項Sは、ここでは浸透物に対するバリア接着剤の親和力を表わしている。水蒸気の場合は、例えば疎水性材料によって低いS値が達成される。拡散項Dは、バリア材料内での浸透物の可動性に関する尺度であり、かつ分子の可動性または自由体積のような特性に直接的に依存している。強架橋された材料または高結晶質の材料ではしばしば、比較的低いD値が達成される。しかしながら高結晶質の材料は、一般的に透明性が比較的低く、かつ比較的強い架橋は比較的低い柔軟性を生じさせる。浸透性Pは、通常は分子の可動性が増すとともに上昇し、例えば温度が上昇する場合またはガラス転移点を超える場合にも上昇する。
【0011】
水蒸気および酸素の透過性への影響に関し、接着剤のバリア作用を上昇させるための手法は、特に両方のパラメータDおよびSを考慮しなければならない。これらの化学的な特性に加え、浸透性への物理的な影響の効果、特に平均浸透経路長および界面特性(接着剤の表面流動挙動、付着性)も考慮に入れなければならない。理想的なバリア接着剤は、土台上に非常に優れて付着する上に、低いD値およびS値を有している。
【0012】
低い溶解度項Sは、優れたバリア特性を達成するためにはたいてい不十分である。これの古典的な例は、特にシロキサンエラストマーである。この材料は極めて疎水性であり(小さな溶解度項)、しかしその自由に回転可能なSi−O結合(大きな拡散項)によって、水蒸気および酸素に対する比較的低いバリア作用を有する。つまり優れたバリア作用のためには溶解度項Sと拡散項Dの良いバランスが必要である。
【0013】
カプセル化のために、これまではとりわけエポキシドをベースとした液体接着剤および付着剤が使用されてきた(WO98/21287A1(特許文献1);US4,051,195A(特許文献2);US4,552,604A(特許文献3))。これらは強架橋によって低い浸透性を有する。その主要な使用分野は、硬い装置の縁の貼り付けであり、しかし適度な柔軟な装置もである。硬化は熱またはUV放射によって行われる。面全体を貼り付けることは、硬化によって生じる収縮のためにほとんど不可能であり、なぜなら硬化の際、接着剤と土台の間にテンションがかかり、このテンションは他方でまた層間剥離を引き起こすおそれがあるからである。
【0014】
この液体の接着剤の使用は一連の欠点を伴う。低分子の成分(VOC−揮発性有機化合物)が、装置のうちの影響を受けやすい電子構造物を害する可能性があり、かつ生産における取扱いを困難にする可能性がある。この接着剤は、高い費用をかけて、装置のそれぞれの個々の構成要素上に施さなければならない。正確な位置決めを保証するため、高価なディスペンサおよび固定機構を購入する必要がある。加えてこの種の塗布は、迅速で連続的なプロセスの妨げとなり、かつその後に続いて必要なラミネート加工ステップ中は、低い粘性により、狭い制限領域内での定義された層厚および貼り付き幅の達成を困難にする可能性がある。
【0015】
さらに、このような高架橋される接着剤は、硬化後に僅かな柔軟性しか有さない。熱架橋系の使用は狭い温度範囲内に制限される。2成分系の場合は可使時間によって制限され、つまりゲル化までの処理時間が生じていた。高い温度範囲内でも、および特に長い反応時間の場合もまた、影響を受けやすい(光)電子構造物が、この種の系の使用の可能性を制限する。すなわち、(光)電子構造物の場合の最大使用可能温度はしばしば60℃であり、なぜならこの温度を超えると事前損傷がすでに発生し得るからである。特に、有機電子機器を内包しており、かつ透明なポリマーフィルムによって、またはポリマーフィルムおよび無機層から成るアセンブリによってカプセル化された柔軟な装置は、ここで狭い制限範囲を強いる。これは、大きな圧力でのラミネート加工ステップにも当てはまる。より良い保持性を達成するには、ここでは温度負荷ステップをなくすことおよび比較的低い圧力でのラミネート加工が好ましい。
【0016】
最近では、熱硬化可能な液体接着剤に対する代替案として、放射線硬化型接着剤も度々使用されるようになっている(US2004/0225025A1(特許文献4))。放射線硬化型接着剤の使用は、電子的装置に長く持続する熱負荷をかけることを回避する。しかしながら、一般的にはUV放射線のほかにIR放射線も非常に高い割合で放出されるので、照射によって装置の短期的な点状の加熱が引き起こされる。さらに上に挙げたVOC、収縮、層間剥離、および低い柔軟性のような液体接着剤の欠点は、同様に解決されないままである。問題は、光開始剤または増感剤からの追加的な揮発性成分または分解生成物によって生じ得る。それに加え装置がUV光を通さなければならない。
【0017】
特に有機電子機器の構成要素や使用されるポリマーの多くは、しばしばUV負荷に対して影響を受けやすいので、比較的長く続く屋外使用は、更なる追加的な保護措置、例えば更なるカバーフィルムなしでは不可能である。このカバーフィルムは、UV硬化型接着剤系の場合、UV硬化後に初めて施すことができ、これは追加的に製造の複雑さを高めおよび装置の厚みを厚くする。
【0018】
US2006/0100299A1(特許文献5)は、電子的装置をカプセル化するためのUV硬化可能な感圧接着テープを開示している。この感圧接着テープは、軟化点が60℃超のポリマー、軟化点が30℃未満の重合可能なエポキシド樹脂、および光開始剤の組合せをベースとする接着剤を含んでいる。このポリマーは、ポリウレタン、ポリイソブチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリレート、またはポリエステル、ただし特にアクリレートであり得る。UV架橋は、十分なせん断強度を達成するために行われる。
【0019】
アクリレート系接着剤は、UV放射線および様々な化学物質に対する非常に優れた耐性を有しているが、しかし異なる下地への接着力のバラツキが非常に大きい。ガラスまたは金属のような極性の下地に対する接着力は非常に高い一方で、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンのような非極性の下地に対する接着力は、どちらかといえば低い。この場合は、界面での拡散の危険が特に大きな程度で生ずる。加えてこのアクリレート系接着剤は非常に極性が強く、これは、特に水蒸気の拡散を、後の架橋にもかかわらず助長する。重合可能なエポキシド樹脂の使用によって、この傾向はさらに強化される。
【0020】
US2006/0100299A1(特許文献5)に記載の感圧接着剤としての実施形態は、簡単な適用という利点を有しているが、しかし同様に、含まれる光開始剤によって生じ得る分解生成物、構成の必然的なUV透過性、および硬化後の柔軟性の低下という欠陥がある。これに加え、粘着性および特に凝集性の維持に必要であるエポキシド樹脂または別の架橋剤の割合が少ないことによって、液体接着剤によるよりずっと少ない架橋密度しか達成できない。
【0021】
WO2007/087281A1(特許文献6)は、電子的用途、特にOLEDのための、ポリイソブチレン(PIB)をベースとする透明で柔軟な感圧接着テープを開示している。その際、500,000g/mol超の分子量でのポリイソブチレン、および水素化環状樹脂が使用される。任意に、光重合可能な樹脂および光開始剤を使用することができる。ポリイソブチレンをベースとする接着剤は、その低い極性に基づき、水蒸気に対する優れたバリアを有しているが、しかし高い分子量の場合でさえ凝集性が比較的低く、このため、室温ですでに、また温度上昇の際には特に、負荷下でのクリープ傾向を確認することができるが、そのためにこの接着剤は、低いせん断強度を有している。低分子の成分の割合を随意に減少させることはできず、なぜならそうでないと付着性が明らかに低下し、かつ界面浸透性が増すからである。接着剤の非常に低い凝集性のゆえに必要とされる高い割合の機能性樹脂を使用すると、接着剤の極性が再び上昇し、従って溶解度項が大きくなる。
【0022】
これに対し、クリープ傾向を低減するためにしっかりと架橋された感圧接着剤は確かに優れた凝集性を示すが、しかし表面流動挙動が低下する。この感圧接着剤は、不十分にしか土台表面の粗さに適応できず、これにより界面での浸透が上昇する。加えてこのしっかりと架橋された感圧接着剤は、比較的少ない程度でしか、負荷下で現れるような変形エネルギーを散逸させられない。この両方の現象によって接着力が減少する。これに対して僅かに架橋された感圧接着剤は、確かに粗い表面上をうまく流れることができ、かつ変形エネルギーを散逸させることができ、これにより付着性への要求を満たすことができるが、しかしこの感圧接着剤は、低い凝集性のゆえに、不十分にしか負荷に耐えられない。
【0023】
加えて、従来技術からは、詳細には説明されていない、バリア特性のない感圧接着剤が知られており(WO03/065470A1(特許文献7))、この感圧接着剤は、電子構成物において転写式接着剤として使用される。この接着剤は機能性充填剤を含んでおり、この機能性充填剤は、構成物内で酸素または水蒸気と反応する。これにより構成物内でのスカベンジャーの簡単な適用が可能である。外から構成物を封止するために、透過性の低い更なる付着剤を使用する。
【0024】
梱包部門において広く一般に使用されるような、例えば段ボール封緘用のホットメルト接着剤や、(光)電子構成物内でも実質的に自己粘着性を示す梱包フィルムの封止層などの、ポリオレフィン系のホットメルト接着剤が知られている。しかしこれらのホットメルト接着剤は、貼り付けるためには加熱が必要であり、またそれには電子構成物を損傷する危険をはらんでいるという欠点を有している。
【0025】
一般的に感圧接着剤は、液体接着剤やホットメルト接着剤とは違い、比較的高分子のポリマーのために、表面上での優れた濡れおよび付着のためにはある程度の時間、十分な圧力、および粘性成分と弾性成分との優れたバランスを必要とする。一般的に接着剤を後から架橋することは、接着剤の収縮を引き起こす。これは界面での付着性の低下を引き起こす可能性があり、ここでもまた浸透性を上昇させ得る。
【0026】
可能な限り良好な封止性と、簡単な取扱い方を達成するために、バリア特性を有している、感圧接着剤に基づく解決手法の上述の様々な欠点が回避された接着剤に対する需要が生じている。(光)電子構成部品の封止に優れた接着剤は、酸素、特に水蒸気に対する僅かな浸透性、装置上の十分な付着性、および良好な流動性を併せ持たなければならない。装置への付着性が低い場合は、界面でのバリア作用を低下させ、これにより接着剤の特性に関係なく、酸素および水蒸気の侵入を可能にする。接着剤と土台の間の接触が徹底されている場合にのみ、接着剤の特性が、接着剤のバリア作用に対する決定的な因子となる。たとえ接着テープの支持体が良好なバリア特性を有していたとしても、接着剤を通り抜ける浸透は弱点である。これは、アクリレート、ポリウレタン、またはケイ素をベースとする感圧接着剤をそのような用途のために使用しようとするこれまでの努力の盲点である。このため、感圧接着剤の断面積を雰囲気に対して最小限にとどめることが望ましいが、これは、層厚(接着剤塗布量)が少しでなければならないことを意味している。それにもかかわらず十分な付着性を達成するためには、感圧接着剤が、僅かな接着剤塗布量にもかかわらず良好に付着するという特性を有していなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】WO98/21287A1
【特許文献2】US4,051,195A
【特許文献3】US4,552,604A
【特許文献4】US2004/0225025A1
【特許文献5】US2006/0100299A1
【特許文献6】WO2007/087281A1
【特許文献7】WO03/065470A1
【特許文献8】EP1311559B1
【特許文献9】US2007/0135552A1
【特許文献10】WO02/026908A1
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】「Chemistry and Technology of UV and EB formulation for Coatings, Inks and Paints」(Vol. 1, 1991, SITA, London)
【非特許文献2】A. G. Erlat et.al, 「47th Annual Technical Conference Proceedings−Society of Vacuum Coaters」、2004、p. 654〜659
【非特許文献3】M. E. Gross et.al, 「46th Annual Technical Conference Proceedings−Society of Vacuum Coaters」、2003、p. 89〜92
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の課題は、簡単に実施可能でありかつ同時に優れたカプセル化が達成される、浸透物、特に水蒸気および酸素に対して電子的装置をカプセル化するための方法を提供することである。それにより(光)電子的装置の耐用期間を、適切な、特に柔軟な接着剤の使用によって延長することも意図される。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、請求項1に記載の方法によって上述の問題を解決する。並列の解決策は、請求項6および16に記載されている。好ましい態様および変形形態はそれぞれの従属請求項の主題である。
【0031】
本発明はまず、上述の欠点にもかかわらず、これまで感圧接着剤に関して説明した欠点を生じさせずにまたは減少させて、感圧接着剤を電子的装置のカプセル化のために使用することが可能であるという知見に基づく。特殊なポリオレフィンをベースとする感圧接着剤が、電子的装置をカプセル化するために特に適していることが判明した。ポリフレフィンをベースとする、とは、この意味では、主としてポリオレフィンがエラストマー成分の機能を受け持つことを意味している。ポリオレフィンは、単独でエラストマー成分として存在すると好適であるか、またはいずれにせよしかし全エラストマー成分の合計含有率に関して少なくとも50重量%の割合で存在することが好ましい。
【0032】
この特殊なポリオレフィンとは、0.86g/cmから0.89g/cmまでの間の密度、ならびに最低90℃の晶子融点(Kristallitschmelzpunkt)を持つようなポリオレフィンのことである。密度のこの下限値は、ポリオレフィンが十分な結晶構造を持つことを明示するものである。しかしながら結晶質の比率が過大となると、ポリオレフィンは硬くなり、接着剤での使用には最早不向きとなる。0.89g/cmという最大密度は、この限界を示したものである。特にそのようなポリオレフィンは、粘着樹脂と組み合わされる。その結果生じる感圧接着剤は、好適にも23℃で粘着性を示す。部分的に結晶質であるポリオレフィンは、これまで感圧接着の用途のためには使用されていない。というのも、これに粘着特性を付与することが当業者には不可能であるように思われたからである。それだけに、その実現に成功した後は、正にこの新しいタイプの感圧接着剤が、カプセル化の用途のために非常に適していることが判明したのはそれだけ意外であった。
【0033】
熱可塑性を利用した加工で知られるような慣用の部分的に結晶質であるポリオレフィン、例えばポリエチレン、またはポリプロピレン、または、結晶度および曲げ弾性率を若干低下させたそれらのコポリマーなどは、粘着樹脂を添加しても、粘着性を有することはない。
【0034】
ブチルゴムまたはEPDMゴムなどのように、結晶度が僅かであるか、または完全に欠落している特殊な軟質ポリオレフィンも、粘着性を示さない、すなわち、有意な接着力を持ち合わせてはいない。そのような軟質ポリオレフィンから成る非常に平滑な層は、ガラスやプラスチックガラスなどの非常に平滑な下地の上に容易に付着可能であり、天然ゴム、ブチルゴム、または高軟質PVCから成る平滑な層と同様の挙動を示す。そのような材料は、自重に耐えることができるために、ひとりでに剥がれ落ちたりはしないが、これに剥離負荷が加わると、そのガラス温度が感圧接着剤と比べて余りにも低過ぎるために、実際には何の抵抗も示さない。それ以外にもそのような材料は、十分な結晶度が皆無であるか、またはすでにブロック(ベール)として納入されるために、保管時には溶け合って合体してしまう。そのような材料は、感圧接着剤の形態においても、低温クリープを示すが、これは、接着力を増大させる目的で粘着樹脂を添加することにより、さらに一段と増強されてしまう。
【0035】
プラストマーとも呼ばれるコモノマーの比率が高いランダムコポリマーは、硬質ポリオレフィン用の柔軟剤として販売され、軟質で、それほど結晶質ではなく、またそれゆえに原則的に粘着性を示すように調整することができるものの、しかしタイプにより40℃から60℃までの間の晶子融点を有するために、熱せん断強度を持つ感圧接着剤を作り出すのは一切不可能となっている。それ以外にも粘着樹脂を使用する場合は、粘着樹脂および場合により可塑剤を配合した接着剤処方においては100℃を大幅に下回る融点を有するポリオレフィン・プラストマーの(示差走査熱量計(DSC)により決定される)晶子融解ピークが消失してしまう、すなわちたとえ室温であっても、結晶質の領域により網状組織の形成を欠くために、せん断強度は全く与えられないことになることが判明した。従ってそのような軟質プラストマーが適しているのは、有意な接着力(すなわち、0.1N/cmを上回る接着力)および耐熱性に対する要求とは無縁の、樹脂を含まない、または少なくとも樹脂の少ない、可塑剤を含まない表面保護フィルムだけに限られている。
【0036】
本発明に従った接着剤は、後述するように、特殊なポリオレフィンをベースとして用意されて、電子的装置のカプセル化すべき領域に適用されるようになっている。この接着剤は感圧接着剤であるので、適用は、事前固化またはそれに類することを行う必要がないために特に簡単である。感圧接着剤の態様によっては、以後の処理も必要なくなる。感圧接着テープとして提供することにより、感圧接着剤の適用すべき量を簡単に配量して自動的に適用することも可能となる。それに加え、ポリオレフィンをベースとする感圧接着剤を使用した場合は、これが溶融物からコーティングされる場合には、溶剤の放出を生じることもない。
【0037】
本発明に従って電子的装置のカプセル化方法に使用される感圧接着剤は、密度が0.86g/cmから0.89g/cmまでの間、好ましくは0.86g/cmから0.88g/cmまでの間、特に好ましくは0.86g/cmから0.87g/cmまでの間の部分的に結晶質であるポリオレフィンを含有する。晶子融点は、最低90℃、好ましくは最低115℃、特に好ましくは最低135℃である。それに加え、好ましい態様では感圧接着剤に粘着樹脂が含有されている。粘着樹脂は、純粋なポリマーの接着力を増大させるための、粘着性を持たせる対象となるポリマーよりも高いガラス温度を持つ添加剤である。好ましくは、光電子的装置のカプセル化方法である。
【0038】
本発明の意味においては、室温では粘着性を示さないものの、室温は上回るが100℃未満、特に70℃未満である場合にこの特性を示す接着剤も、感圧接着剤に含まれる。そのような接着剤が好ましいのは、高められた使用温度におけるせん断強度が優先的に重視される場合である。従ってそのような接着剤は、高められた温度で貼り付けられることになるが、この温度は、装置を損傷するおそれから100℃を上回らないようにする。熱の作用抜きで適用を簡単に行うことができるようにし、それにより電子的装置の熱害も排除されるように、好ましいのは、23℃で粘着性を示す接着剤である。
【0039】
接着剤の範囲において、感圧接着剤は特にその永続的な接着性および柔軟性を特色とする。永続的な粘着性を有する材料は、付着特性および凝集特性の適切な組合せをいつでも有していなければならない。この特徴が、例えば完全に反応していない状態ではほとんど凝集性を供しない反応性接着剤と感圧接着剤を区別している。優れた付着性のためには、付着特性および凝集特性のバランスが最適であるように感圧接着剤を調整することが重要である。
【0040】
ここでは、記載の感圧接着剤によって完全に取り囲むことだけをカプセル化と呼ぶのではなく、(光)電子的装置のカプセル化すべき領域上での感圧接着剤の部分的な適用、例えば電子構造物の片面を覆うこと、または縁取ることもすでにカプセル化と呼ぶ。
【0041】
感圧接着剤の成分の選択によって、およびそれによる、後述する非極性ポリオレフィンフィルムを軟化温度が高い非極性粘着樹脂と組みあわせた結果として生じる非常に低い極性によって、水蒸気および酸素のような浸透物の、しかし特に水蒸気の低い通過性が達成される。それに加えてさらに、非常に有利な実施形態においては、純粋なポリオレフィンおよび他の感圧接着剤に比べ、酸素浸透性の更なる低下が達成される。
【0042】
以下に述べるような更なる成分によって、(光)電子的装置の要求に応じ、例えば架橋反応によって、特性を有利に要求に適応させることができる。
【0043】
つまり本発明の利点は、他の感圧接着剤に比べ、様々な土台上、特に(いわゆる低表面エネルギー(LSE)表面を持つ)非極性土台上での優れた界面付着性に伴う酸素およびとりわけ水蒸気に対する非常に優れたバリア特性、晶子の網状組織の形成による優れた凝集特性、および、液体接着剤に比べ、高い柔軟性、および(光)電子的装置内でのおよびカプセル化の際の/カプセル内での簡単な適用という利点の組合せである。感圧接着剤の実施形態に応じて、ポリオレフィンをベースとする接着剤は、化学物質および熱、湿気、または光など環境の及ぼす影響に対する優れた耐性を提供する。さらに特定の実施形態では透明な接着剤もあり、この接着剤は、入射光または出射光の減少を非常に少なく保つので、(光)電子的装置における用途に特に使用することができる。
【0044】
つまり上述の部分的に結晶質であるポリオレフィンをベースとする感圧接着剤は、特にアクリレート、シリコーン、エチレン−ビニルアセテート、およびスチレン−ブロックコポリマー(スチレンと1,3−ジエンから成るビニル芳香族系ブロックコポリマー)の特定の実施形態をベースとする感圧接着剤に比べ、優れた加工性およびコーティング性のほかに、付着および凝集に関する優れた製品特性を特色とし、ならびに酸素に対する優れたバリア作用、および水蒸気に対する非常に優れたバリア作用を特色とする。
【0045】
このような感圧接着剤は、簡単に電子的装置内に組み込むことができ、特に、高い柔軟性が必要な装置内にも組み込むことができる。この感圧接着剤のさらに別の特別に有利な特性は、様々な土台上、特に低エネルギー表面上での同じように優れた付着性、高いせん断強度、および高い柔軟性である。これに加え、土台に対する非常に優れた付着性により、低い界面浸透性も達成される。
【0046】
低エネルギー表面を貼り合わせる際には通常、天然ゴム、スチレンブロックコポリマー、および/またはアクリレートをベースとする接着剤が使用される。天然ゴム系接着剤は、多くは溶剤を含有し、耐老化性およびUV安定性に劣っている。しかし、通例はスチレン−イソプレン−スチレン−ブロックコポリマーをベースとするスチレンブロックコポリマー系接着剤は、溶剤なしで加工可能であるが、耐老化性およびUV安定性については同様に劣っている。これらのゴム系接着剤は、いずれの種類とも、低エネルギー表面上に優れた付着性を有している。水素化されたスチレン−ブロックコポリマーをベースとする接着剤は、非常に高価ではあるが、タックおよび接着力は比較的僅かとなっている。この接着剤も同様に、100℃を大幅に下回る温度ですでに軟化してしまう。アクリレート系接着剤は、耐老化性およびUV安定性には優れるが、例えばポリオレフィンなどの低エネルギー非極性ポリマー上への付着性は、これまでのあらゆる努力にかかわらず劣悪であり、このため貼り付けるべき表面には、溶剤を含有したプライマーを用いた前処理を施す必要がある。シリコーン系感圧接着剤は、耐老化性およびUV安定性に優れると同時に、低エネルギー表面上での優れた付着性を示すが、極端に高価であるほか、慣用のシリコーン被覆されたライナーにより覆うことも(そこから再び剥がし取ることも)不可能である。(光)電子構造物をカプセル化するためのここに記載の処方を使用することにより、上に挙げた利点を兼ね備え、かつこれらの利点によりカプセル化プロセスを加速および簡略化させる有利な装置が得られる。
【0047】
感圧接着剤の特定の実施形態では、熱を用いた工程または照射が必要なく、架橋反応による収縮が生じず、また感圧接着剤が帯状の材料として、または電子的装置に相応に適応された形において存在するので、感圧接着剤を簡単で、かつ速く、少ない圧力下で、(光)電子構成物のカプセル化プロセスに組み込むことができる。熱負荷および機械的負荷のような、様々な処理ステップに伴って通常生じる欠点を、こうして最小化することができる。平面的なバリア材料(例えばガラス、特に薄いガラス、金属酸化物をコーティングしたフィルム、金属フィルム、多層の土台材料)により(光)電子構成物の少なくとも一部をラミネート加工することによるカプセル化は、非常に優れたバリア作用を伴って、簡単なロール・ツー・ロール・プロセスにおいて可能である。構成全体の柔軟性は、感圧接着剤の柔軟性のほかに、(光)電子構成物もしくは平坦なバリア材料の幾何学形状および厚みのような更なる因子に依存する。しかし感圧接着剤の高い柔軟性は、非常に薄く、曲げやすく、かつ可撓性の(光)電子構成物の実現を可能にする。使用した「曲げやすい」という概念は、特定の半径、特に5mmの半径のドラムのような曲げられた物体の湾曲を損傷なく倣うことができる特性と理解され得る。
【0048】
(光)電子構成物のカプセル化のためには、感圧接着剤の適用前、適用の間または適用後にこれが加熱されると非常に有利である。それにより感圧接着剤はより良好に流れることができ、(光)電子的装置と感圧接着剤の間の界面での浸透が回避されることになる。その際の温度は、流動を適宜助長するために、好ましくは30℃超、さらに好ましくは50℃超とすべきである。もっとも、(光)電子的装置を損傷しないためにも、高過ぎる温度が選定されてはならない。温度は、可能な限り100℃未満とすべきである。50℃から70℃までの温度が最適温度範囲であることがわかっている。さらにそれに追加して、またはその代わりに、感圧接着剤も同様に、適用前、適用の間、または適用後に加熱されると有利である。
【0049】
浸透物に対する電子的装置のカプセル化方法の好ましい態様では、感圧接着剤を接着テープの構成部品として提供することができる。この種の体裁は、感圧接着剤の特に簡単で、かつ均等な適用を可能にする。
【0050】
その際、「接着テープ」という一般的な表現は、一実施形態では、片面または両面に感圧接着剤が付与された支持体材料を含む。接着剤は、多層に塗布されてもかまわない。多層構造とする場合は、同時押出し、ラミネート、またはコーティングにより、複数の層が上下に積み重ねられるようにするとよい。この支持体材料は、全ての平面的な形成物、例えば二次元に延びたフィルムまたはフィルム切片、延びた長さおよび限られた幅を有するテープ、テープ切片、ダイカット、多層構成物、およびその類似物を含む。その際、多様な用途のために、例えばプラスチックフィルム、金属フィルム、織編布、不織布、および紙のような非常に様々な支持体を接着剤と組み合わせることができる。
【0051】
さらに「接着テープ」という表現は、いわゆる「転写式接着テープ」、つまり支持体のない接着テープも含んでいる。転写式接着テープの場合、接着剤は逆に適用前に、抗付着特性を有する剥離層が備えられた(柔軟な)ライナーの間に塗布されている。適用のためには、通常は、まずライナーを取り除き、接着剤を適用し、かつその後で場合により第2のライナーを取り除く。この感圧接着剤は、このように直接的に、(光)電子的装置内の2つの表面の結合のために使用できる。
【0052】
「接着テープ」という概念には、ロール式の接着テープが含まれるだけでなく、それどころかこれは、カットテープとも、ダイカットテープとも呼ばれるものであるが、後者については、一般にはラベルとも呼ばれている。
【0053】
接着テープの支持体材料として、ここではポリマーフィルム、複合フィルム、または有機層および/または無機層を備えたフィルムまたは複合フィルムを使用することが好ましい。このようなフィルム/複合フィルムは、一般的に流通しているフィルム作製に使用される全てのプラスチック、ガラス、または金属から成ることができ、これに限定されるわけではないが例示的に言及するとすれば、すなわちポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル−特にポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、またはほかにもアルミニウムフィルムなどの金属フィルムが挙げられる。
【0054】
加えて支持体は、有機または無機のコーティングまたは層と組み合わせることができる。これは例えば塗装、印刷、蒸着、スパッタリング、同時押出し、またはラミネート加工のような通常の方法によって行うことができる。これに限定されるわけではないが例示的に言及するとすれば、ここでは例えば金属、ケイ素およびアルミニウムの酸化物または窒化物、酸化インジウムスズ(ITO)、または例えばゾルゲルコーティングなどで使用が見受けられるような金属有機化合物が挙げられる。
【0055】
これらのフィルム/複合フィルム、特にポリマーフィルムは、酸素および水蒸気に対する浸透バリアを備えることが特に好ましく、その際この浸透バリアは、包装分野に対する要求を上回る(WVTR<10−1g/(md);OTR<10−1cm/(md bar))。酸素(OTR)および水蒸気(WVTR)に関する浸透性の決定は、DIN53380第3部またはASTM F−1249に基づき行われる。酸素透過性は、23℃および相対湿度50%で測定される。水蒸気透過性は、37.5℃および相対湿度90%で決定される。結果は50μmのフィルム厚へ規格化される。
【0056】
感圧接着剤の特定の実施形態では、(光)電子的装置の要求に応じて、弾性および粘性の特性、ならびに(後からの)架橋反応によるバリア作用を変化させることができる。これは、(光)電子的装置に適応させて、熱によっても、電磁放射線、好ましくはUV放射線、電子線、またはガンマ放射線によっても行うことができる。ただしその際には、感圧接着剤の高い柔軟性が維持され続けなければならない。さらに必要ならば、電子的装置上に感圧接着剤を適用する前に、架橋を行うことが好ましい。そうすることで、架橋のために場合によっては必要な例えば熱の形での、またはUV照射による、またはそれに類するエネルギー供給が電子構造物を傷つける可能性がなくなる。
【0057】
さらに好ましくは、特定の実施形態においては、スペクトルの可視光(約400nm〜800nmの波長領域)内で透明な感圧接着剤が使用される。その際「透明性」とは、光の可視領域において、接着剤の平均透過率が少なくとも75%、好ましくは90%より高いことを意味する。支持体を備えた感圧接着テープとしての実施形態の場合、構成全体の最大透過率は、これに加え、使用される支持体の種類および構成の種類に依存する。所望の透明性は、特に無色の粘着樹脂を使用することで達成可能である。
【0058】
接着剤の透過率をVISスペクトルで測定した。VISスペクトルの吸収は、Kontron社のUVIKON923で実施された。測定されるスペクトルの波長領域は、400nmから800nmまでの間の全周波数を1nmの解像度で含んでいる。このために接着剤をPET支持体上に施し、かつ測定の前に、参照として支持体のエンプティチャネル測定(Leerkanalmessung)を全ての波長領域について実施した。結果を提示するため、上記領域内での透過測定の平均値が求められた。
【0059】
そのためこのような感圧接着剤は、(光)電子構造物を覆う面全体の使用にも適している。面全体を貼り付けることは、電子構造物がほぼ中心に配置される場合、縁封止と比べ、浸透物が構造物に達する前に浸透物が面全体にくまなく拡散するにちがいないという利点を提供する。これにより浸透経路は明らかにより長くなる。浸透経路は透過性に反比例するので、この実施形態では、例えば液体接着剤による縁封止に比べて延長された浸透経路が、総合的なバリア性に良い影響を及ぼす。
【0060】
(光)電子的装置の電子構造物は、しばしばUV放射線に対して抵抗力がない。このため感圧接着剤がさらにUVブロック性に形成される場合が特に有利なことが判明した。「UVブロック性」という概念は、ここでは、相応の波長領域における最大20%、好ましくは最大10%、さらに好ましくは最大1%の平均透過度を示す。好ましい様態では、感圧接着剤が320nm〜400nmの波長領域(UVA放射線)、好ましくは280nm〜400nmの波長領域(UVAおよびUVB放射線)、さらに好ましくは190nm〜400nmの波長領域(UVA、UVB、およびUVC放射線)においてUVブロック性に形成されている。
【0061】
感圧接着剤のUVブロック作用は特に、感圧接着剤にUV吸収剤などの光保護剤または適切な充填剤を添加することによって達成することができる。光保護剤としては、例えばHALS(ヒンダードアミン系光安定剤)、ベンズイミダゾール誘導体、およびそれ以外の、例えばCiba社の商標ChimassorbまたはTinuvinにより当業者には既知の光保護剤が適している。充填剤としては、UV吸収性に優れることから特に二酸化チタンが適しているが、可視領域においても透明性を示すナノスケールの二酸化チタンは、ことのほか適している。
【0062】
上記で説明した感圧接着剤は、従来型の天然ゴムやスチレン−ジエン−ブロックコポリマーなどの合成ゴムをベースとする感圧接着剤に比べ、熱、天候の影響およびUV光に対する非常に優れた耐性を示す。この耐性は特に水素化樹脂の使用によって保証される。
【0063】
電子的装置のカプセル化方法のために使用される上記で説明した感圧接着剤には、密度が0.86g/cmから0.89g/cmまでの間であり、最低90℃の晶子融点を持つ、部分的に結晶質であるポリオレフィンが含有される。当業者には周知であるように、(部分的な)結晶化度は、DSCにより、グラフに少なくとも1つの融解による吸熱ピークがある場合に確認できる。ポリエチレンやポリプロピレンなどの部分的に結晶質であるポリオレフィンは、これまで当業者の間では、その硬さのほかにも、結晶化の傾向が高いために、感圧接着剤には不向きであるとされていた。意外なことにも、上述の特性を有するポリオレフィンから、非常に多くの下地上で、特に非極性ラッカーやオレフィンポリマーなどの低エネルギー表面上でも傑出した付着性を示す、高い耐老化性、接着力、タック、およびせん断強度を持った感圧接着剤を製造することができる。この感圧接着剤は、それに加えてさらに、水および酸素に対する、特に水蒸気に対する傑出したバリア作用を有している。このポリオレフィンは、好ましくは0.5〜10g/10min、非常に好ましくは3〜8g/10minのメルトインデックスを有している。このポリオレフィンの曲げ弾性率は、好ましくは50MPa未満、非常に好ましくは26MPa未満である。
【0064】
カプセル化のために使用されるポリオレフィンには、好ましくはエチレン、プロピレン、またはブテン−(1)が重量に関して主成分として含有されるほか、C2−からC10−オレフィンまでの中から、非常に好ましくは、C2−からC10−α−オレフィンまで、および4−メチルペンテン−(1)の中から選ばれる少なくともさらにもう1つのコモノマーが含有される。非常に適しているのは、プロピレンとエチレン、エチレンとオクテン、ブテン−(1)とプロピレンのコポリマー、ならびに、プロピレンとブテン−(1)とエチレン、およびプロピレンとブテン−(1)と4−メチルペンテン−(1)のターポリマーである。
【0065】
ポリオレフィンは、様々に、例えばランダムコポリマーとして、ブロックコポリマーとして、グラフトポリマーとして、または、異相ポリプロピレン(インパクトポリプロピレンとも呼ばれる。または完全には正しくないが一般にはポリプロピレンブロックコポリマーと呼ばれる)におけるような、いわゆる反応器ブレンドとして、構成されることができる。
【0066】
ポリオレフィンの結晶サイズ(結晶の平均径)は100nm未満であることが好ましく、それにより接着剤は高い透明性を有することになる。そのようなポリオレフィンは、例えばジルコンをベースとするメタロセン触媒を使用して製造することができる。このポリオレフィンの(シクロヘキサノール中で厚さ2mmのプレス加工物で測定した)ヘイズ値は、8未満であることが好ましい。
【0067】
ポリオレフィンの密度は、ISO1183に基づき求められ、g/cmで表わされる。メルトインデックスは、ISO1133に基づき2.16kgで検査され、g/cmで表わされる。本特許明細書に記載される値は、当業者には周知であるように、ポリマーの主モノマーにより、様々な温度で決定されるものであるが、この温度は、主にエチレンまたは1−ブテンを含有したポリマーでは190℃、主にプロピレンを含有したポリマーでは230℃となっている。曲げ弾性率(flexural modulus)は、ASTM D790(2%セカント)に基づき決定することができる。晶子融点(Tcr)および融解熱は、DSC(Mettler社DSC822)を使用して10℃/minの加熱速度でISO3146に基づき求められ、複数の融解ピークが生じた場合は、温度が最高のものが選択される。これは、100℃を超す融解ピークだけが感圧接着剤処方の中で維持され続けて有効となるのに対して、100℃をかなり下回る融解ピークは、実質的に維持され続けることはなく、製品特性に何の影響も及ぼさないからである。融解熱により、一方では調合物の接着力とタックが決まり、他方では特に温間(すなわち70℃以上)のせん断強度が決まる。このためポリオレフィンの融解熱は、接着技術の諸特性の最適妥協をはかるためにも、非常に重要であり、3J/gから15J/gまでの間にあることが好ましいが、5J/gから18J/gまでの間にあると非常に好適である。感圧接着剤自体の融解熱も同様に、接着技術の諸特性の最適妥協をはかるためには非常に重要であり、1J/gから6J/gまでの間にあることが好ましいが、2J/gから5J/gまでの間にあると非常に好適である。
【0068】
接着剤のポリオレフィン含有率は、特に感圧接着剤が非常に優れたタック(定着性(Anfassvermoegen)、接着性)を達成すべきである場合は、60重量%未満であることが好ましいが、40重量%未満であると非常に好適であり、30重量%未満であると非常に好適である。
【0069】
接着剤のポリオレフィン含有率は、別の実施形態では、水蒸気に対する非常に優れた浸透バリアが達成されるべきである場合は、30重量%を上回ることが好ましく、50重量%を上回ると完全に好適である。この場合は、十分な付着性を達成するために、接着剤を適用の直前に加熱することが不可欠となることがある。もっともこの実施形態では、樹脂の含有率が低下するために、酸素浸透性が増大する点が短所となっている。
【0070】
このポリオレフィンは、ゴム系接着剤である場合は、天然ゴムや合成ゴムなどの既知のエラストマーと組みあわせることができる。天然ゴム、SBR、NBR、または不飽和スチレンブロックコポリマーなどの不飽和エラストマーがごく微量だけ使用されることが好ましいが、これらは全く使用されなくても非常に好適である。改質が所望される場合には、ポリイソブチレン、ブチルゴム、EPM、HNBR、EPDMまたは水素化されたスチレンブロックコポリマーなどの飽和主鎖を持つ合成ゴムが好ましい。これは、それに加えてさらに、不飽和タイプよりも優れた耐候性を示す。もっとも、優れた透明性を達成するためには、ゴムと組み合わせない方が好ましい。
【0071】
意外なことにも、従来型のゴム系接着剤とは対照的に、ポリオレフィンをベースとする接着剤の接着性(タック)および接着力は、添加される樹脂の多分散性に極端に依存することが判明した。多分散性は、分子量分布の数平均に対する重量平均の比であり、ゲル浸透クロマトグラフィーにより求めることができる。このため粘着樹脂として、多分散性が2.1未満、好ましくは1.8未満、非常に好ましくは1.6未満の粘着樹脂が使用される。多分散性が1.0から1.4までの樹脂により、最高のタックを達成することができる。
【0072】
感圧接着剤用の粘着樹脂としては、ロジン(例えばバルサム樹脂)またはロジン誘導体(例えば不均化、二量化、またはエステル化されたロジン)をベースとする、好ましくは部分的にまたは完全に水素化された樹脂が非常に適していることが判明した。ありとあらゆる粘着樹脂の中で、この粘着樹脂は感圧接着剤に最高のタック(接着性、定着性)を付与するが、これは、1.0から1.2までというその低多分散性によるものと思われる。テルペンフェノール樹脂も同様に適しているが、これによっては、ほどほどのタックしかもたらされない。もっとも、せん断強度および耐老化性については、非常に優れたものとなる。ポリテルペン樹脂は通例、その分子量分布が広いために、あまり適していない。
【0073】
炭化水素樹脂も同様に好ましい。なぜならこれは、おそらくはその極性により、優れた相溶性を示すからである。これは例えば、クマロン−インデン樹脂などの芳香族系樹脂、および/または、スチレンまたはa−メチルスチレンをベースとする樹脂、または、ピペリレンなどのC5−モノマーまたは分解装置(Cracker)のC5、C8またはC9留分の重合から生ずる脂環式炭化水素樹脂である。これらの樹脂は、部分的に水素化された形態であることが好ましいが、完全に水素化された形態であると非常に好適である。炭化水素樹脂は、芳香族類を含有した炭化水素樹脂、または、例えばRegalite1125やEscorez5320などのシクロペンタジエンのポリマーの完全な水素化により得られることが特に好ましい。前述の粘着樹脂は、単独で使用することも、混合して使用することも可能である。その際、室温で固体の樹脂も液体の樹脂も使用することができる。
【0074】
高い耐老化性およびUV安定性を保証するため、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の水素化度を有する水素化樹脂が好ましい。
【0075】
粘着樹脂の量は、130〜350phrであることが好ましいが、200〜240phrであると非常に好適である(phrは、ポリマー、すなわち本発明の場合はポリオレフィンの重量部を100としたときの重量部を意味する)。
【0076】
バリア特性を高めるためには、非極性であり、さらに、30℃より高いDACP値(ジアセトンアルコール曇り点)および50℃より高いMMAP値(混合メチルシクロヘキサンアニリン点)、特に37℃より高いDACP値および60℃より高いMMAP値を有する非極性粘着樹脂が使用される。DACP値およびMMAP値は、それぞれ特定の溶剤中での溶解度を示す。この範囲を選択することによって、特に高い浸透バリアが、とりわけ水蒸気に対して達成される。
【0077】
感圧接着剤には、一種または複数種の添加剤が含有されることが好ましく、これは、可塑剤、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、プロセス安定化剤、光保護剤、加工助剤、UVブロッカー、ポリマーから成る群から選択されることが非常に好ましい。
【0078】
好ましい実施形態においては接着剤に、液体可塑剤、例えば脂肪族系(パラフィン系または分岐系)、脂環族系(ナフテン系)、および芳香族系の鉱油、フタル酸、トリメット酸、クエン酸、またはアジピン酸のエステル、ラノリン、液体ゴム(例えば低分子のニトリルゴム、ブタジエンゴム、またはポリイソプレンゴム)、イソブテンおよび/またはブテンから成る液体ポリマー、粘着樹脂、特に上に挙げた部類の粘着樹脂の原料をベースとする、融点が40℃未満の液体樹脂および軟質樹脂などの液体可塑剤が含有される。非常に好ましいのは、イソブテンホモポリマーやイソブテン−ブテン−コポリマーなどの液体イソブテンポリマー、および、フタル酸、トリメット酸、クエン酸、またはアジピン酸のエステル、特にそれらの分岐オクチルアルコールエステルまたは分岐ノニルアルコールエステルである。鉱油は、ポリオレフィンに接着性を付与するためには非常に適しているが、貼り付けの対象である下地の中に入り込んでしまうことがある。このため接着剤には、鉱油が実質的に含有されないことが好ましい。
【0079】
液体可塑剤の代わりに、非常に軟質の、結晶質ではないも同然のオレフィンポリマー(プラストマー)をポリオレフィンに追加して使用することもできる。これは、例えばExact(商標)、Engage(商標)、またはTafmer(商標)という商標で知られている、エチレン、プロピレン、ブテン−(1)、ヘキセン−(1)、4−メチルペンテン(1)、またはオクテン−(1)と組みあわせた、エチレンまたはプロピレンのコポリマーまたはターポリマー、あるいはエチレン、プロピレンと、ブテン−(1)、ヘキセン−(1)、4−メチルペンテン(1)またはオクテン−(1)からなるターポリマーであることが好ましいが、その際に、曲げ弾性率は好ましくは20MPa未満であり、および/または、晶子融点は好ましくは60℃未満であり、および/または、密度は0.86g/cmから0.87g/cmの間である。さらに別の好ましいオレフィンポリマーは、EPDM、すなわち、好ましくはエチレン含有率が40〜70重量%であり、ムーニー粘度(条件1+4、125℃)が50未満でありおよび/または密度が0.88g/cm未満、非常に好ましくは0.87g/cm未満である、エチレン、プロピレンと、エチリデンノルボルネンなどのジエンからなるターポリマーである。そのようなオレフィンポリマーは、非常に軟質ではあるが、しかし液体可塑剤と比べて、比較的硬いために、その量については、本発明に従ったポリオレフィンに対して100phr超と、非常に多くするのがよい。
【0080】
粘着樹脂の融点(軟化点)(DIN ISO4625に基づき決定される)にも同様に大きな意義がある。(天然ゴムまたは合成ゴムをベースとする)ゴム系感圧接着剤の接着力は、一般的には粘着樹脂の融点が高いほど増大する。上述のポリオレフィンについては、挙動がそれとは逆になるように思われる。100℃から140℃までの高い融点を有する粘着樹脂は、この点で、融点が100℃未満である粘着樹脂よりも不利である。高タックと高接着力が要求される特殊な用途では、樹脂の融点を事実上低下させるために、低軟化点の粘着樹脂が使用されるか、または市販製品を可塑剤と組み合わせる。その混融点は、粘着樹脂と可塑剤から成る、両成分とも当該接着剤と同じ比率で存在している均質な混合物を使用して求められる。このようにして設定され、求められた融点は、45℃から100℃までの範囲にあることが好ましい。
【0081】
しかしながら大半の用途では、接着剤のバリア作用が最も重要である。これについては、樹脂の量だけでなく、軟化点も重要であることが判明した。すなわち、酸素に対するバリア作用を極めて優れたものとすべきであり、かつ接着効果がなおも十分である場合は、最低100℃の融点を持つ樹脂、またはこれと同等の樹脂と可塑剤から成る混合物が好ましい。
【0082】
浸透バリアの改善が最も重要な場合は、そのような実施形態用として、軟化点が90℃を上回る、特に100℃を上回る樹脂が好ましい。使用される樹脂/可塑剤の融点は、70℃を上回ること、特に80℃を上回ることが好ましい。これを選択することによって、特に酸素に対する高い浸透バリアが達成される。
【0083】
感圧接着剤の接着力、タック、凝集性、およびバリア作用の間の最適バランスを達成するために、軟化温度は(光)電子構成物に対する要求に応じて調整される。
【0084】
エラストマー成分として天然ゴムまたは不飽和スチレンブロックコポリマーをベースとする従来型の接着剤には一般に、ポリマー鎖に二重結合を有しているこのエラストマー成分の酸化分解を回避するための、フェノール系酸化防止剤が含有される。しかしながら本発明において使用される接着剤には、酸化の影響を受けやすい二重結合を持たないポリオレフィンが含有され、このため、酸化防止剤についても、これを使用せずに済ませることができる。ただし、特性を最適化するために、使用される自己粘着タイプの接着剤ないしは感圧接着剤は、ほかにも、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、難燃剤、顔料、UV吸収剤、オゾン劣化防止剤、金属失活剤、光保護剤、および/または難燃剤などの他の添加剤と混合することができる。
【0085】
一次酸化防止剤が使用されることが好ましいが、ほかにも二次酸化防止剤が使用されると非常に好適である。好ましい実施形態において、本発明に従った接着剤には、最低2phr、非常に好ましくは6phrの一次酸化防止剤、または、好ましくは最低2phr、特に最低6phrの、一次酸化防止剤と二次酸化防止剤を組み合わせたものが含有されるが、後者については、一次酸化防止剤の官能基および二次酸化防止剤の官能基が異なる分子の中に存在する必要はなく、むしろ両者の官能基が同じ1つの分子の中に統合されるようにしてもよい。二次酸化防止剤の量は、好ましくは最大5phr、非常に好ましくは0.5〜1phrである。意外なことにも、一次酸化防止剤(例えば立体阻害性フェノール、またはCAS181314-48-7などのC-ラジカルスカベンジャー)と、二次酸化防止剤(例えば硫黄化合物、亜リン酸塩、または立体阻害性アミン)を組み合わせたものにより、相溶性の向上がもたらされることが判明した。わけても特に、一次酸化防止剤、好ましくは相対分子量が500ダルトンを超す立体阻害性フェノールを、好ましくは相対分子量が500ダルトンを超す、硫黄化合物の部類、または亜リン酸塩の部類から選ばれた二次酸化防止剤と組み合わせたものが好ましく、これについては、フェノール官能基、硫黄含有官能基、および亜リン酸塩官能基が、3つの分子の中にばらばらに存在する必要はなく、むしろ2つ以上の官能基が同じ1つの分子の中に統合されるようにしてもよい。
【0086】
更なる実施形態では、本発明に従って使用される感圧接着剤を、表面上に流す前または場合によっては後にも架橋することが好ましく、その際さらに、材料の高い可撓性および優れた付着性を可能にするような架橋度を得るよう努められる。架橋後に、感圧接着剤が少なくとも20%の破断伸びを有することが好ましい。このような破断伸びは、感圧接着剤のできるだけ柔軟な様態に関して特に好ましい。破断伸びは、300mm/minの伸び速度および23℃の温度で決定される。
【0087】
好ましいやり方では、感圧接着剤はUV放射線または電子線によって架橋される。架橋に関する従来技術の詳細な説明および重要な方法パラメータは、例えば「Chemistry and Technology of UV and EB formulation for Coatings, Inks and Paints」(Vol. 1, 1991, SITA, London)(非特許文献1)から当業者に知られている。これに加え、高エネルギー照射を可能にする別の方法も使用することができる。
【0088】
必要な放射線量を減らすため、粘弾性材料に架橋剤および/または架橋促進剤を混入させることができ、特にUV放射線により、電子線により、および/または熱により励起可能な架橋剤および/または促進剤によって行われる。放射線架橋に適した架橋剤は、例えば以下の官能基を含むモノマーまたはポリマーである。すなわち、アクリレートまたはメタクリレート、エポキシド、ヒドロキシ、カルボキシ、ビニル、ビニルエーテル、オキセタン、チオール、アセトアセテート、イソシアネート、アリル、または概して不飽和の化合物。使用されるモノマーまたはポリマーは、架橋度の要求に応じて二官能性または多官能性であることができる。
【0089】
さらに好ましい形態では、感圧接着剤が熱活性化可能な架橋剤によって架橋される。このために、好ましくは過酸化物、酸または酸無水物、金属キレート、二官能性または多官能性エポキシド、二官能性または多官能性水酸化物、ならびに二官能性または多官能性イソシアネートが混入され、これは、例えば酸無水物に関してEP1311559B1(特許文献8)に記載されているように行われる。
【0090】
前述の官能基を備えたモノマー性架橋剤のほかに、これらの架橋基によって官能化されたポリマーが使用されることが好ましい。Kraton FGシリーズ(例えばKraton FG1901またはKraton FG1924)、Asahi Tuftec M1913もしくはTuftec M1943またはSepton HG252(SEEPS-OH)のような官能化されたブロックコポリマーを有利に使用することができる。さらに別の好ましいブロックコポリマーとして、例えばDaicel社の商品名Epofriend A1005、A1010、またはA1020が入手可能である。適切な架橋剤(例えば多価イソシアネート、アミン、エポキシド、アルコール、チオール、フェノール類、グアニジン類、メルカプタン類、カルボン酸、または酸無水物)を添加することにより、これらのブロックコポリマーを熱または放射線によって架橋することができる。酸または酸無水物により変性されたブロックコポリマー(例えばKraton FGシリーズ)とエポキシ化ブロックコポリマー(例えばDaicel Epofriendシリーズ)との組合せも有利に利用し得る。これにより、モノマー架橋剤を使わずに架橋を達成することができ、このため架橋が不完全な場合も、モノマー成分が残らない。さらにもう1つの可能性として、Kaneka社の商品名Epionで入手可能であるような、官能基化されたポリイソブチレンが使用される。これは、縮合反応、ヒドロシラン、または、電子線などの上述の各種技術、他の架橋剤または遊離基開始剤を利用して結合することができる。官能化されたモノマーまたはポリマーの混合物も同様に使用可能である。
【0091】
さらに別の実施形態では感圧接着剤は充填剤も含んでおり、これに限定されるわけではないが例示的に言及するとすれば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、窒化物、ハロゲン化物、炭化物、またはアルミニウムの、ケイ素の、ジルコニウムの、チタンの、スズの、亜鉛の、鉄の、もしくはアルカリ(土類)金属の混合酸化物化合物/混合水酸化物化合物/混合ハロゲン化物化合物が挙げられる。これは本質的にアルミナであり、例えば酸化アルミニウム、ベーマイト、バイヤライト、ギブサイト、ダイアスポア、およびその類似物である。ことのほか適しているのは層状ケイ酸塩、例えばベントナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ヘクトライト、カオリナイト、ベーマイト、雲母、バーミキュライト、またはそれらの混合物である。しかしカーボンブラック、または炭素の更なる変態、例えばカーボンナノチューブ、ガラスまたはソリッドガラスブロック(Vollglaskoerper)またはポリマーから成る中空体、特に中空球、あるいは、ガラスファイバーまたはポリマーファイバーも使用することができる。
【0092】
好ましくは、感圧接着剤の充填剤としてナノスケールおよび/または透明な充填剤が使用される。ここでは、充填剤が少なくとも1つの寸法において最大限の延びが約100nm、好ましくは約10nmである場合、その充填剤をナノスケールと呼ぶ。特に好ましくは、小板状の晶子構造および高いアスペクト比を有する塊状で透明な充填剤が、均一な分布で使用される。小板状の晶子構造および100を大きく超えるアスペクト比を有する充填剤は、一般的に数nmの厚みしか有さず、しかし晶子の長さもしくは幅は最大数μmであり得る。このような充填剤も同様にナノ粒子と呼ぶ。加えて、小さな寸法での充填剤の粒子状の様態は、感圧接着剤の透明な形態のために特に有利である。
【0093】
感圧接着剤マトリクス内で、前述の充填剤によりラビリンス状の構造を構成することによって、例えば酸素および水蒸気の拡散経路は、酸素および水蒸気が感圧接着剤層を通り抜けて浸透することを減少させるように長められる。結合剤マトリクス内で充填剤がより良く分散できるように、充填剤を有機化合物によって表面変性させることができる。このような充填剤の使用自体は、例えばUS2007/0135552A1(特許文献9)およびWO02/026908A1(特許文献10)から知られている。
【0094】
本発明の更なる有利な実施形態では、酸素および/または水蒸気と特別なやり方において相互作用し得る充填剤も使用される。この場合、(光)電子的装置内に侵入する酸素または水蒸気は、この充填剤と化学的または物理的に結合される。この充填剤は「ゲッター」、「スカベンジャー」、「乾燥剤」、または「吸収材」とも呼ばれる。このような充填剤には、これに限定されるわけではないが例示的に言及するとすれば、酸化性金属と、金属および遷移金属のハロゲン化物、塩、ケイ酸塩、酸化物、水酸化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩と、過塩素酸塩と、活性炭およびその変種が挙げられる。例として、塩化コバルト、塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化リチウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、二酸化ケイ素(シリカゲル)、酸化アルミニウム(活性アルミニウム)、硫酸カルシウム、硫酸銅、亜ジチオン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ベントナイト、モンモリロナイト、珪藻土、ゼオライト、およびアルカリ(土類)金属の酸化物、例えば酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化鉄、および酸化マグネシウム、またはカーボンナノチューブが挙げられる。さらに、例えばポリオレフィンコポリマー、ポリアミドコポリマー、PETコポリエステル、またはハイブリッドポリマーをベースとしたさらに別の吸収材などのような有機吸収剤も使用することができ、これらはたいてい例えばコバルトのような触媒と組み合わせて使用される。更なる有機吸収剤は、例えば弱架橋されたポリアクリル酸、アスコルビン酸塩、グルコース、没食子酸、または不飽和油脂である。
【0095】
バリア作用に関する充填剤のできるだけ優れた有効性を達成するため、充填剤の割合が少なくなり過ぎないようにするべきである。この割合は、好ましくは少なくとも5重量%、さらに好ましくは少なくとも10重量%、およびことさら好ましくは少なくとも15重量%である。典型的には充填剤は、感圧接着剤の接着力が強く下げられ過ぎることのないようにか、または他の特性を損なうことのないようにしながら、できるだけ高い割合で使用される。このためこの割合は、一形態では最大95重量%、好ましくは最大70重量%、さらに好ましくは最大50重量%である。
【0096】
さらに、充填剤のできるだけ細かい分布およびできるだけ高い表面積が有利である。これはより高い効率およびより高い積載能力を可能にし、かつ特にナノスケールの充填剤によって達成される。
【0097】
感圧接着剤の作製および処理は溶液、分散液からならびに溶融物から行うことができる。好ましくは作製および処理は溶液または溶融物から行われる。好ましい変形例は、溶液からの接着剤の作製である。その際、感圧接着剤の成分は、適切な溶剤、例えばトルエン中、またはベンジン、トルエンおよびアセトンから成る混合物中に溶解され、そして一般的に既知の方法によって支持体上に施される。溶液からの方法の場合、一部の方法を挙げるとすれば、ドクターブレード、ナイフ、ローラ、またはノズルによるコーティングが知られている。
【0098】
代案となるのが、溶融物からの作製および処理である。この場合はバッチ方式、連続方式のいずれとも、適切な作製プロセスに数えられる。非常に好ましいのは、押出機を使用した感圧接着剤の連続製造、およびそれに引き続いて接着剤を相応に高温に加熱して行われる、コーティングされるべき土台上への直接コーティングである。感圧接着剤のためのコーティング方法としては、シート押出ダイを使用した押出しコーティング、およびカレンダーコーティングが好ましく、非粘着タイプの溶融型接着剤である場合は、シート押出ダイ、ホットメルトグルーガン、および接着剤の紡糸用ノズルが好ましい。さらに別の実施形態として、ラミネート、および、支持体(例えばフィルム)との同時押出しがある。
【0099】
該感圧接着剤は、(光)電子的装置の面全体を貼り付けるために使用することができるか、または然るべき処理をした後で、感圧接着剤または感圧接着テープからダイカット、ロールまたはその他の成形体を作製することができる。感圧接着剤/感圧接着テープの然るべきダイカットおよび成形体は、その後、好ましくは貼り付けるべき土台上に、例えば(光)電子的装置の縁取り(Umrandungen)または境界画定(Begrenzung)として貼り付けられる。ダイカットまたは成形体の形状の選択に制限はなく、(光)電子的装置の種類に依存して選択される。平面的なラミネート加工が可能であることは、液体接着剤に比べて浸透物の横からの侵入により浸透経路長が長くなることによって、感圧接着剤のバリア特性に関する利点となる。なぜなら、浸透経路長が浸透に反比例的に影響を及ぼすからである。
【0100】
感圧接着剤が支持体を備えた平面的な形成物の形で提供される場合には、支持体の厚みが好ましくは約1μm〜約350μm、さらに好ましくは約2μm〜約250μm、および特に好ましくは約12μm〜約150μmの範囲内であることが好ましい。最適な厚みは、(光)電子的装置、最終用途、および感圧接着剤の実施形態の種類に依存する。僅かな合計厚みを達成することが求められる(光)電子構成物については、厚みが1〜12μmの範囲にある極薄の支持体が使用されるが、それにより構成物内に組み込むための工数が増大する。浸透バリアの性能を支持体により高めると同時に、構成物の強度を増大することが重要課題の場合は、150μmから350μmまでの間の非常に厚い支持体が使用される。この支持体により、保護効果は高まるが、その一方で構成物の可撓性は低下する。大半の(光)電子構成物にとって、カプセル化の解決手段の最適妥協策となる好ましい範囲は、12μmから150μmまでの間である。
【0101】
以下に、本発明の更なる詳細、目的、特徴、および利点を、好ましい実施例に基づきさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】第1の(光)電子的装置の概略図である。
【図2】第2の(光)電子的装置の概略図である。
【図3】第3の(光)電子的装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0103】
図1は、(光)電子的装置1の第1の態様を示している。この装置1は土台2を有しており、この土台上に電子構造物3が配置されている。この土台2自体が浸透物に対するバリアとして形成されており、従って電子構造物3のカプセルの一部を構成している。電子構造物3の上方に、しかもここでは電子構造物から空間的に間隔をあけて、バリアとして形成された更なるカバー4が配置されている。
【0104】
感圧接着剤5は、電子構造物3を側面の側でもカプセル化するため、かつ同時にカバー4を電子的装置1のその他の部分と結合させるため、電子構造物3の横で周囲を取り囲むように、土台2上に配置されている。感圧接着剤5はカバー4を土台2と結合させる。感圧接着剤5はこれに加え、相応に厚い形状によって電子構造物3からカバー4を隔離することを可能にする。
【0105】
感圧接着剤5は、ここでは一般的な形において述べられており、かつ以下に実施例においてさらに詳しく説明するような、本発明に従った感圧接着剤をベースとした感圧接着剤である。感圧接着剤5は、ここでは土台2をカバー4と結合させる機能を担うだけでなく、加えて浸透物に対するバリア層も形成しており、こうして電子構造物2を、水蒸気および酸素のような浸透物に対して側面からもカプセル化する。
【0106】
加えてここでは、感圧接着剤5が両面接着テープからのダイカットの形において提供される。このようなダイカットは特に簡単な適用を可能にする。
【0107】
図2は(光)電子的装置1の代替案としての構成を示している。ここでもまた、土台2上に配置されており、かつ土台2によって下からカプセル化されている電子構造物3が示されている。この場合は電子構造物の上および側面で、感圧接着剤5が面全体に配置されている。そのため電子構造物3は、上側からは感圧接着剤5によって完全にカプセル化される。その後、感圧接着剤5上にカバー4が施される。このカバー4は、前述の構成とは異なり、すでに感圧接着剤によってバリアが提供されているので、必ずしも高いバリア要求を満たさなければならないわけではない。カバー4は、例えば機械的な保護機能を果たし得るだけであり、ただしこのカバーをさらに浸透バリアとして設けることもできる。
【0108】
図3は、(光)電子的装置1の更なる代替案としての構成を示している。これまでの構成とは異なり、この場合は2つの感圧接着剤5a、bが設けられており、これらの感圧接着剤は、ここでは同一に作られている。第1の感圧接着剤5aは、土台2上に面全体に配置されている。この場合、感圧接着剤5a上に電子構造物3が配置され、この電子構造物は感圧接着剤5aによって固定されている。感圧接着剤5aおよび電子構造物3から成るこのアセンブリは、その後更なる感圧接着剤5bによって面全体を覆われ、これにより電子構造物3は感圧接着剤5a、bによって全ての面においてカプセル化される。ここでもまた、感圧接着剤5b上にカバー4が設けられている。
【0109】
従ってこの構成では、土台2もカバー4も、必ずしもバリア特性を有さなければならないわけではない。しかしそれでも、電子構造物3への浸透物の浸透をさらに制限するためにバリア特性を付与してもよい。
【0110】
特に図2、図3に関し、ここでは概略的な図示であることを指摘しておく。特にこれらの図からは、感圧接着剤5が、ここでは好ましくはそれぞれ均等な層厚で塗布されることが明白ではない。従って電子構造物への移行部では、図においてそう見えるような鋭い角が形作られるのではなく、移行部は流動的であり、そしてむしろ、充填されていないかまたは気体で充填された小さな領域が残り得る。しかしながら場合によっては、特に真空下で適用が実施される場合は、下地への適合を行うこともできる。さらに感圧接着剤を局所的に異なる強さで圧迫し、これにより、フロープロセスによってエッジ構造部での高さの差をある程度ならすことができる。図示した寸法も原寸に比例しているわけではなく、むしろわかりやすい図示だけを目的としたものである。特に電子構造物自体は、一般的には比較的平坦に形成される(しばしば1μm厚未満)。
【0111】
図示した全ての実施例では、感圧接着剤5の適用が感圧接着テープの形において行われている。これは原則的に、支持体を備えた両面感圧接着テープ、または転写式接着テープであり得る。ここでは転写式接着テープとしての構成が選択されている。
【0112】
感圧接着剤の厚みは、好ましくは約1μm〜約150μm、さらに好ましくは約5μm〜約75μm、および特に好ましくは約12μm〜50μmである。土台上での付着性の向上および/または(光)電子構成物の内部の減衰効果を達成すべきである場合は、50μmから150μmまでの間の厚めの層厚が使用される。しかしこの場合は、浸透断面が増大する点で不利である。
【0113】
浸透性が最も重要な場合は、1μmから12μmまでの間の微小な層厚が使用されるが、それにより、浸透断面が小さくなると同時に、横からの浸透も、また(光)電子構成物の合計厚みも低減されることになる。もっとも、それにより土台上の付着性が低減されてしまうこともある。
【0114】
上述の特に好ましい厚み範囲内には、感圧接着剤の薄い厚みと、これにより横からの浸透を減少させる浸透断面が少なくなることと、十分に付着する結合を作るための十分に厚い感圧接着剤フィルムとの間の優れた妥協点がある。最適な厚みは、(光)電子構成物、最終用途、感圧接着剤の実施形態の種類、および場合によっては、平坦な土台に依存する。
【0115】

別の記載がない限り、以下の例における量の記載は全て、全体の組成に対する重量パーセントまたは重量部である。条件については別途記載がない限り、23℃(室温RT)、相対湿度50%で測定を実施した。
【0116】
接着力
接着力の測定は以下のように実施した。すなわち、定義された被接着下地としてスチール面およびポリエチレンプレート(PE)を用いた。試験すべき貼り付け可能な平面要素を、幅20mmおよび長さ約25cmに裁断し、把持区間を設け、かつその後すぐに、それぞれ選択された被接着下地上に、4kgのスチールローラによって10m/minの送りで5回押し付けた。感圧接着層の厚みは、30μmである。その後すぐ、このようにして貼り付けた平面要素を、引張試験機(Zwick社)を用いて180°の角度で、室温で、および300mm/minで被接着下地から剥ぎ取り、かつこのために必要であった力を測定した。測定値(単位はN/cm)は、3回の個別の測定からの平均値として示した。
【0117】
浸透性
酸素(OTR)および水蒸気(WVTR)に関する浸透性の測定は、DIN53380第3部またはASTM F-1249に基づいて行われた。このために感圧接着剤を50μmの層厚で、浸透可能な膜上に施した。酸素透過性に関しては23℃および50%の相対湿度で、測定装置Mocon OX-Tran2/21を使用して測定された。水蒸気透過性は37.5℃および90%の相対湿度で、測定装置Mocon Permatran W3/33を使用して測定された。
【0118】
耐用期間試験
(光)電子構成物の耐用期間を測定するための尺度としてカルシウム試験を採用した。このために窒素雰囲気下で、20×20mm2の大きさの薄いカルシウム層をガラスプレート上に堆積させる。カルシウム層の厚みは約100nmである。カルシウム層をカプセル化するために、支持体材料としてのPET/CPPバリアフィルムを備えた接着テープを使用する(ASTM F-1249およびDIN53380第3部および上で挙げた条件に基づき、WVTR=8×10-2g/m2*dおよびOTR=6×10-2cm/m2*bar)。接着剤は、バリアフィルムのCPP側に塗布した。そのようにして得た接着テープは、全ての側の5mmの縁で直接的にガラス板上に付着させて、カルシウム面の上に適用される。
【0119】
この試験は、例えばA. G. Erlat et. al.「47th Annual Technical Conference Proceedings-Society of Vacuum Coaters」、2004、p. 654〜659(非特許文献2)、およびM. E. Gross et. al.「46th Annual Technical Conference Proceedings-Society of Vacuum Coaters」、2003、p. 89〜92(非特許文献3)に記載されているようなカルシウムと水蒸気および酸素との反応に基づいている。その際、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムへの変化によって増大するカルシウム層の光透過を監視する。カルシウム層のない構成物の透過が90%に達することを耐用期間の終わりとする。測定条件として23℃および50%の相対湿度を選択する。サンプルは、感圧接着剤を25μmの層厚で面全体に、かつ気泡がない状態で貼り付けた。
【0120】
サンプルの作製
例1〜例8ならびに比較例V5では、感圧接着剤をバッチプロセスで溶融物から、ラボ用混練機を使用して、ポリマーの晶子融点に応じて120〜190℃で作製した。接着剤の温度を120℃から160℃までの間、層厚を30乃至50μmとして、コーティングの対象である土台(シリコーン被覆された剥離紙)上への直接コーティングを行う。コーティング法として、カレンダーコーティングを使用する。接着力を測定するために、感圧接着剤を23μmのPETフィルム上にラミネートする。浸透試験のために、サンプルを同じやり方で調製したが、感圧接着剤のラミネートを、PETフィルム上にではなく、浸透可能な膜上に行ったことにより、感圧接着剤についての測定を実施することができた。
【0121】
処方
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
【表3】

【0125】
【表4】

【0126】
【表5】

【0127】
【表6】

【0128】
【表7】

【0129】
【表8】

【0130】
【表9】

【0131】
これらの成分を、ベンジン、トルエン、およびアセトンから成る混合物(6:2:2)中に溶解し、かつこの溶液から、未処理のPET支持体(または浸透測定用に、1.5g/mでシリコーン被覆された剥離紙)上にコーティングし、120℃で15分間乾燥する。接着層の厚みは30μm乃至50μmである。
【0132】
比較例V2
組成がEHA78%、ステアリルアクリレート19%、およびアクリル酸3%のアクリレートをアセトンおよびベンジン中で重合し、かつこの溶液から、未処理のPET支持体(または浸透測定用に、1.5g/mでシリコーン被覆された剥離紙)上にコーティングし、120℃で15分間乾燥し、そしてポリマー成分に対して0.2%のアルミニウムキレートで架橋した。接着層の厚みは30μm乃至50μmである。
【0133】
比較例V3
Levamelt456(エチレンビニルアセテート)60%およびForal FG85 40%から成る混合物をアセトン中に溶かし、そしてこの溶液から、未処理のPET支持体(または浸透測定用に、1.5g/mでシリコーン被覆された剥離紙)上にコーティングし、そして120℃で15分間乾燥する。接着層の厚みは30μm乃至50μmである。
【0134】
比較例V4
市場で入手可能なシリコーン系感圧接着剤であるGE Bayer Silikons社のSilgrip PSA529を過酸化ベンゾイルと混合し、そしてこの溶液から、未処理のPET支持体(または浸透測定用に、1.5g/mでフルオロシリコーン被覆された剥離紙)上にコーティングし、そして120℃で15分間乾燥し、架橋する。接着層の厚みは30μm乃至50μmである。
【0135】
【表10】

【0136】
結果
浸透測定の結果を表1に示す。中でも特に使用した樹脂が感圧接着剤の浸透特性に及ぼす影響が明らかにされている。例2のRegalite R1100のように軟化温度が高い非極性樹脂により、水蒸気透過率(WVTR)も、また酸素透過率(OTR)も低下している。
【0137】
【表11】

【0138】
例1、例4および5および例8には、何よりも特に晶子融点および組成をそれぞれ異にする、様々なポリマーが含まれている。浸透性は、例6および8において使用されるようなプロピレンとコモノマーとしてのブテン-(1)および4-メチルペンテン-(1)から成るターポリマーで最小となり、非常に有利である。
【0139】
例7および6では、それ以外の例において使用されるホワイトオイルOndina 933に代わる、可塑剤としてのポリイソブチレンOppanol B10の使用が有利であることが明らかである。それにより、何よりも特にサンプルの水蒸気透過率が低下している。
【0140】
例6および8と比較例V5とを比較すると、同じポリマーをベースとするホットメルト接着剤に対する、本発明に従った感圧接着剤の利点が明らかである。この樹脂を添加することによって、概ね等しい水蒸気透過率で、酸素透過率はさらに低下している。
【0141】
上記で説明したポリオレフィンをベースとする感圧接着剤は、例えばアクリレート、エチレンビニルアセテートまたはシリコーンなどの他のタイプの感圧接着剤(比較例V2〜V4)と比較すると、水蒸気および酸素の透過性、特に水蒸気の透過性が僅かとなっている。例えば例V1に示されるような、スチレンブロックコポリマーをベースとする感圧接着剤は、これに似通った僅かな透過性を示しているが、しかしポリオレフィン系接着剤の非常に有利な実施例により、これを凌駕することができる。それに加えてさらに本発明に従った感圧接着剤により、例えばポリエチレンなどの特に非極性表面上へのより優れた付着性が達成される。
【0142】
【表12】

【0143】
接着力については、ポリオレフィン系感圧接着剤(例1〜8)が、層厚が約30μmと微小であっても、極性、非極性いずれの土台上でも優れた付着性を示しており、特定の実施例においては、浸透特性が似通っているスチレンブロックコポリマー(V1)を、接着力でははるかに凌駕することができる。
【0144】
【表13】

【0145】
本発明に従った感圧接着剤の非極性表面上での非常に優れた付着性、および特に水蒸気に対するバリア作用により、光電子構成物の耐用期間の延長が達成されることになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸透物に対する電子的装置、好ましくは光電子的装置のカプセル化するにあたり、
部分的に結晶質であるポリオレフィンをベースとする感圧接着剤を、電子的装置のカプセル化すべき領域の上および/または周りに適用する方法であって、
ポリオレフィンが、0.86g/cm3から0.89g/cm3までの間の密度と、最低90℃の晶子融点を有している、上記方法。
【請求項2】
感圧接着剤が、接着テープの形で提供されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
感圧接着剤および/または電子的装置のカプセル化するべき領域が、感圧接着剤の適用前、適用の間、および/または適用後に加熱されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
感圧接着剤が、電子的装置への適用後に架橋されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
感圧接着剤の適用が、これに続く硬化なしで行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
特に請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法における、浸透物に対して電子的装置、好ましくは光電子的装置をカプセル化するための感圧接着剤の使用において、
部分的に結晶質であるポリオレフィンをベースとする感圧接着剤を作製すること、
ポリオレフィンが、0.86g/cmから0.89g/cmまでの間の密度を有すること、および、
ポリオレフィンが、最低90℃の晶子融点を有すること
を特徴とする、使用。
【請求項7】
ポリオレフィンが、0.86g/cmから0.88g/cmまでの間、好ましくは0.86g/cmから0.87g/cmまでの間の密度を有すること、および/または、
ポリオレフィンが、最低115℃、好ましくは最低135℃の晶子融点を有すること
を特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
ポリオレフィンが、少なくとも一種の粘着樹脂と組み合わされること、
樹脂の量が、好ましくは130〜350phr、非常に好ましくは200〜240phrであること
を特徴とする請求項6または7に記載の使用。
【請求項9】
感圧接着剤が、好ましくは、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%の水素化度を有する水素化樹脂を含むこと特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載の使用。
【請求項10】
感圧接着剤が一種または複数種の添加剤、好ましくは、可塑剤、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、プロセス安定化剤、光保護剤、加工助剤、UVブロッカー、ポリマーから成る群から選択される一種または複数種の添加剤を含むことを特徴とする請求項6〜9のいずれか一つに記載の使用。
【請求項11】
感圧接着剤が一種または複数種の充填剤、好ましくはナノスケールの充填剤、透明な充填剤、および/またはゲッターおよび/またはスカベンジャー充填剤を含むことを特徴とする請求項6〜10のいずれか一つに記載の使用。
【請求項12】
感圧接着剤が透明に形成されていること、
好ましくは、感圧接着剤が400nm〜800nmの波長領域において少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも90%の平均透過度を有することを特徴とする請求項6〜11のいずれか一つに記載の使用。
【請求項13】
感圧接着剤が、320nm〜400nmの波長領域において、好ましくは280nm〜400nmの波長領域において、さらに好ましくは190nm〜400nmの波長領域においてUVブロック性に形成され、その際、最大20%、好ましくは最大10%、さらに好ましくは最大1%の平均透過度をUVブロック性と呼ぶことを特徴とする請求項6〜12のいずれか一つに記載の使用。
【請求項14】
感圧接着剤が、100g/m・d未満、好ましくは40g/m・d未満のWVTRを有すること、および/または
感圧接着剤が、10000g/m・d・bar未満、好ましくは5000g/m・d・bar未満のOTRを有することを特徴とする請求項6〜13のいずれか一つに記載の使用。
【請求項15】
感圧接着剤が、接着テープとして、特に支持体のない接着テープとして形成されることを特徴とする請求項6〜14のいずれか一つに記載の使用。
【請求項16】
電子構造物、特に有機電子構造物と、感圧接着剤とを備えた電子的装置であって、
その際、前記電子構造物が少なくとも部分的に感圧接着剤によってカプセル化されている電子的装置において、
前記感圧接着剤が、請求項6〜15のいずれか一つに従って使用されていることを特徴とする前記電子的装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−144169(P2010−144169A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284383(P2009−284383)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】