説明

電子眼鏡

【課題】電源オンオフの誤動作を低減することにより信頼性の高い電源制御システムを有する電子眼鏡を提供することを目的とする。
【解決手段】レンズとフレームと電源を備えた電子眼鏡において、前記フレームの片方のテンプルの人体に接触する部分に3個以上の電極を設け、前記電極のうち任意の2つの電極間に電圧を印加することにより発生する電極間抵抗値を利用して前記電源のオンオフの切り替えを行う抵抗検知制御回路を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子眼鏡に使用される電源スイッチの制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気的に焦点距離を可変させる電子眼鏡として、レンズの中に液晶などの誘電体材料を封入し、これに電圧をかけて誘電率を変化させることで屈折率を制御する方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
電子眼鏡の電源スイッチ装置として提案されている構成を、図5の従来の電子眼鏡の電源スイッチ装置の概略図に示す。図5に示すように、電子眼鏡には鼻パッド2が蝶足50に保持されており、鼻パッド2と蝶足50は上下移動可能な状態に構成されている。蝶足50の端部には、電源スイッチ51が備えられており、内部に固定電極と可動電極が設けられている。可動電極は、蝶足50の端部に固定されており、電子眼鏡を装着することにより、鼻パッド2と蝶足50が鼻に押されて、上方向(図示のA方向)に移動し、電源スイッチ51内部において、固定電極と可動電極が接触することにより、スイッチがオンの状態になる。
【0004】
電子眼鏡を取り外すと、鼻パッド2が鼻から離れることにより、鼻パッド2と蝶足50が下方に移動し、電源スイッチ51内部の固定電極と可動電極が離れることによりスイッチがオフの状態になる(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−352445号公報
【特許文献2】特開2002−297088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の技術では、頭の動きや運動などによって、電子眼鏡が動いたりずれたりすることにより、鼻パッドと鼻との接触状態が不安定となり、電源スイッチの固定電極と可動電極の接触状態が不安定となり、電源オンオフが誤動作を起こすという課題を有していた。また眼鏡をかける人の癖として、ずれてきた眼鏡フレームを指で押し上げたときにも、鼻バッドと鼻との接触部が離れて、眼鏡を装着している状態でも、電源オンオフの誤動作を起こすという課題を有していた。また、スイッチ電極部の汚れやごみ等の付着、眼鏡のずれ等によっても電源オンオフの誤動作を起こすという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電源オンオフの誤動作を低減することで信頼性の高い電源制御システムを持つ電子眼鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電子眼鏡は、レンズとフレームと電源を備えた電子眼鏡において、前記フレームの片方のテンプルの人体に接触する部分に3個以上の電極を設けたことを特徴としたものである。
【0008】
さらに、本発明の電子眼鏡は、前記電極のうち任意の2つの電極間に電圧を印加することにより発生する電極間抵抗値を利用して前記電源のオンオフの切り替えを行う抵抗検知制御回路を有することを特徴としたものである。
【0009】
さらに、本発明の電子眼鏡は、レンズとフレームと電源を備えた電子眼鏡において、前記フレームのすべてのテンプルの人体に接触する部分に3個以上の電極を設けたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子眼鏡によれば、電源オンオフの切り替え制御の誤動作を大幅に低減し、信頼性の高い電源スイッチ装置を、簡単な構成で安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の電子眼鏡の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1について、図1、図2、図3を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態1における電子眼鏡の概略図である。可変焦点レンズ1はリム3により保持されている。電子眼鏡装着時に鼻に密着して電子眼鏡を保持する部分には、鼻パッド2が設けられている。両側のテンプル4は、電子眼鏡装着時に顔側面および耳部に、電子眼鏡が安定して保持されるように構成されている。片側のテンプル4の顔側面あるいは耳部に接触する部分に、4個の電極12が設けられている。図1においては、4個の電極を設けた場合を図示しているが、特にこれに限定されるものではなく、3個以上の複数の電極であればよい。4個の電極12は、抵抗検知制御回路7にそれぞれ電気的に接続されている。図示はしていないが、可変焦点レンズ1を駆動するための電源を備えている。さらに電極と抵抗検知制御回路7を駆動するための第2の電源を備えている。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態1における電子眼鏡の詳細図である。電子眼鏡を装着時に顔側面あるいは耳部に接触するように片側のテンプル4に設けられた4個の電極(D1〜D4)12は、電極D1用配線13、電極D2用配線14、電極D3用配線15および電極D4用配線16により、それぞれ抵抗検知制御回路7に電気的に接続されている。さらに抵抗検知制御回路7は、可変焦点レンズ制御用配線17により可変焦点レンズ1を駆動する電源(図示されていない)に電気的に接続されている。4個の電極(D1〜D4)12と電極D1〜D4用の4本の配線と可変焦点レンズ制御用配線17は、テンプル4と電気的に絶縁されて設けられている。抵抗検知制御回路7は、4個の電極(D1〜D4)12のすべての2極間の電極D1−D2、電極D1−D3、電極D1−D4、電極D2−D3、電極D2−D4、電極D3−D4の6組の電極間抵抗値を検知し、6組の電極間抵抗値に応じて、電源オンオフの切り替え制御を行う。
【0015】
テンプル4の材料としては、電気絶縁性があり、加工性、着色性、弾力性、耐久性に優れるセルロイド、アセテート、セルロースプロピオネート、ポリアミド樹脂が好適であるが、特にこれに限定されるものではなく、その他の樹脂材料を用いることも可能である。テンプル4に電気導電性のある金属材料を用いることも可能であるが、その場合には、4個の電極(D1〜D4)12、電極D1〜D4用の4本の配線および可変焦点レンズ制御用配線17と電気絶縁を保つために、絶縁材料を用いてテンプル4との電気絶縁を保つ必要がある。
【0016】
図3は、本発明の実施の形態1における抵抗検知制御回路7の動作の説明図である。抵抗検知をするために4個の電極に電圧を印加して得られる6組の電極間抵抗値の時間変化を示している。
【0017】
本発明の電子眼鏡の装着状態の判断は以下のようにして行う。電子眼鏡が装着された状態は、4個の電極(D1〜D4)12の6組のすべての電極間抵抗値のうち、いずれか一組の電極間抵抗値が、電源オンオフ判定時間以上の間、電源オンオフ判定抵抗値以下になったときとする。電子眼鏡が取り外された状態は、4個の電極(D1〜D4)12の6組の電極間抵抗値が同時にすべて、電源オンオフ判定時間以上の間、電源オンオフ判定抵抗値以上になったときとする。以下、電源オンオフの切り替え制御について、図3を用いて詳細に説明する。
【0018】
図3のToからTa間は、電子眼鏡を装着していない状態を示している。電子眼鏡を装着していない状態では、4個の電極(D1〜D4)12の6組の電極間抵抗値は、すべて電気的に絶縁された状態になっているために、電源オンオフ判定抵抗値よりも大きな値となっている。
【0019】
図3のTaは、電子眼鏡を装着した時刻である。電子眼鏡を装着すると、4個の電極(D1〜D4)12は顔側面あるいは耳部に接触する。ただし、電子眼鏡の装着状態により、すべての電極が顔側面や耳部に接触する保証はなく、少しずれた状態で電子眼鏡を装着したり、電極部の汚れやごみ等により一部の電極が顔側面および耳部と接触しない可能性がある。図3においては、電極D4が顔側面や耳部と非接触の状態で電子眼鏡が装着された場合を示している。電極D4が浮いた状態になっているために、電極D4を含む電極間抵抗値D1−D4、D2−D4、D3−D4の3組の電極間抵抗値は、電源オンオフ判定抵抗値よりも大きな状態で保持される。電極D1、D2、D3の電極は顔側面あるいは耳部に接触するために、電極間抵抗値D1−D2、D1−D3、D2−D4の電極間抵抗値は、電源オンオフ判定抵抗値よりも低下する。電極間抵抗値D1−D2、D1−D3、D2−D4のうち、電極間抵抗値D1−D2が最も早く電源オンオフ判定抵抗値よりも小さくなっている。従って抵抗検知制御回路7は、電極間抵抗値D1−D2が電源オンオフ判定抵抗値よりも小さくなったTbから電源オンオフ判定時間経過したTcの時点で、電源をオンにする。
【0020】
図3のTfは、電子眼鏡を取り外した時刻である。電子眼鏡を取り外すと、4個の電極(D1〜D4)12はすべて、顔側面あるいは耳部から離れるために、6組の電極間抵抗値はすべて電源オンオフ判定抵抗値よりも大きくなる。抵抗検知制御回路7は、6組のすべての電極間抵抗値が電源オンオフ判定抵抗値よりも大きくなったTgから電源オンオフ判定時間経過したThにおいて、電源をオフにする。
【0021】
図3のTdからTe間は、電子眼鏡を装着した状態で運動したり、たとえば階段の上り下りのような頭部の動きにより、電子眼鏡が不安定に動いているときの電極間抵抗値の変動状態を示している。電子眼鏡が不安定に動くと、TdとTe間に示すように、4個の電極(D1〜D4)12の各電極と、顔側面および耳部との接触状態が不安定となり、電極間抵抗値が図3に示すように不安定な状態となり、電源オンオフ判定時間を以上の間、電源オンオフ判定抵抗値を超えた変動が生じる。このような場合でも抵抗検知制御回路7により電源をオフにすることはない。4個の電極(D1〜D4)12の6組の電極間抵抗値が同時にすべて、電源オンオフ判定時間以上、電源オンオフ判定抵抗値を超える場合に電源オフの切り替え制御の判断を行うことにより、このような場合でも、電子眼鏡を装着している状態と判断して、電源オンの状態を保持することができる。
【0022】
図3のTeからTf間は、電子眼鏡を装着している状態で、一部の電極にごみや汚れが付着した場合や、電子眼鏡の装着状態がずれた場合などにより、一部の電極が顔側面や耳部と接触しない状態を示している。図6では、これまで顔側面あるいは耳部と接触していた電極D3がTeの時間に浮きが生じたことにより、電極D3を含む電極間抵抗値D1−D3、D2−D3が電源オンオフ判定抵抗値よりも大きくなった状態を示している。このような場合も同様に、4個の電極(D1〜D4)12の6組の電極間抵抗値を検知して電源オフの切り替え制御を行うことにより、電子眼鏡を装着している状態と判断して、電源オンの状態を保持することができる。
【0023】
以上のように、実施の形態1においては、4個の電極(D1〜D4)12の6組の電極間抵抗値の状態に応じて電源オンオフの切り替え制御を行うことにより、たとえば電子眼鏡装着時の運動や頭の動きによる電子眼鏡の動きやずれ、あるいは電極部のごみや汚れ、あるいは電子眼鏡の装着状態のずれになどによる電源オンオフの切り替え制御の誤動作を大幅に防止することができる電子眼鏡を実現することができる。
【0024】
(実施の形態2)
実施の形態1においては、複数の電極を片方のテンプル4に構成した場合を示したが、特に片側だけに限定されるものではなく、図4の本発明の実施の形態1における両側テンプル配置の電源スイッチ装置の概略図に示すように両側のテンプル4の顔側面や耳部に接触する部分に複数の電極を設けても、同様に信頼性の高い電源スイッチのオンオフ制御機能を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明にかかる電子眼鏡は、顔側面および耳部に接触する部分に電極を設けて電源スイッチとして用いるために、電子眼鏡の装着者が電源スイッチを意識することなく自動的に電源がオンオフすることが可能で、操作上便利で快適であるとともに電源の切り忘れを防止することができるという効果があり、電子遠近両用眼鏡等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1における電子眼鏡の概略図
【図2】本発明の実施の形態1における電子眼鏡の詳細図
【図3】本発明の実施の形態1における電源オンオフの切り替え制御の説明図
【図4】本発明の実施の形態2における電子眼鏡の概略図
【図5】従来の電子眼鏡の概略図
【符号の説明】
【0027】
1 可変焦点レンズ
2 鼻パッド
3 リム
4 テンプル
7 抵抗検知制御回路
12 4個の電極(D1〜D4)
13 電極D1用配線
14 電極D2用配線
15 電極D3用配線
16 電極D4用配線
17 可変焦点レンズ制御用配線
50 蝶足
51 電源スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズとフレームと電源を備えた電子眼鏡において、
前記フレームの片方のテンプルの人体に接触する部分に3個以上の電極を設けた電子眼鏡。
【請求項2】
前記電極のうち任意の2つの電極間に電圧を印加することにより発生する電極間抵抗値を利用して前記電源のオンオフの切り替えを行う抵抗検知制御回路を有する請求項1に記載の電子眼鏡。
【請求項3】
前記抵抗検知制御回路は、全ての組み合わせの電極間抵抗値のうち、いずれかひとつの電極間抵抗値が、所定の時間以上で所定の抵抗値よりも小さい時に前記電源をオンする請求項2に記載の電子眼鏡。
【請求項4】
前記抵抗検知制御回路は、全ての組み合わせの電極間抵抗値が、所定の時間以上で所定の抵抗値よりも大きい時に前記電源をオフする請求項2に記載の電子眼鏡。
【請求項5】
レンズとフレームと電源を備えた電子眼鏡において、
前記フレームのすべてのテンプルの人体に接触する部分に3個以上の電極を設けた電子眼鏡。
【請求項6】
前記電極のうち任意の2つの電極間に電圧を印加することにより発生する電極間抵抗値を利用して前記電源のオンオフの切り替えを行う抵抗検知制御回路を有する請求項5に記載の電子眼鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−80243(P2009−80243A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248622(P2007−248622)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】