説明

電子端末用画像表示モジュールおよび全面貼り用粘着シート

【課題】 薄型化した際に、表面保護パネルの割れが生じにくく、かつ表面保護パネルを画像表示パネルに貼付した際に混入した気泡がオートクレーブ処理後に抜けやすく、また高温下に放置しても発泡しにくい電子端末用画像表示モジュール、および当該画像表示パネルに使用する全面貼り用粘着シートを提供する。
【解決手段】 透明な表面保護パネルと、画像表示パネルとを備えた電子端末用画像表示モジュールであって、表面保護パネルと、画像表示パネルとが、両面粘着シートを介して全面貼付され、両面粘着シートが、周波数1Hz、20℃における動的粘弾スペクトルの損失正接が0.6〜1.5であり、かつ80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上である粘着剤層を有することを特徴とする電子端末用画像表示モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話や小型情報端末機などの電子端末用画像表示モジュールおよび該画像表示モジュールに使用する粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化に伴いモジュールの薄型化が要求されており、特に携帯電話端末は、新機種に付加する機能が飽和している状況であり、市場における競争力の確保のため、より一層薄型化された携帯電話端末の開発が顧客吸引力の向上に必須の条件となっている。このような状況下、LCD(Liquid Crystal Display)モジュールなどの既に相当薄型化された画像表示パネルにおいても更なる薄型化の実現が切望されている。
【0003】
従来の携帯電話に使用されていた画像表示部の表面保護パネルは、携帯電話の筐体と額縁状の両面粘着シートで固定されていた(特許文献1)。当該構成のモジュールは、最終の製品状態を製造する際に、取り扱いの容易な両面粘着シートを使用するものであるが、従来の構成では、表面保護パネルが外部の力により変形した際にも画像表示パネルの表層に当たらないようにするため、表面保護パネルと画像表示パネルとの間に空隙が設けられていた。このため従来の構成では、当該空隙部がデッドスペースとなり薄型化を阻害すると共に、表面保護パネルを薄型化すると割れが生じやすい問題があった。
また、従来のタッチパネル用の粘着剤には、高温下での粘着剤層の発泡を抑制する手段として、アクリル系粘着剤のベースポリマーの分子量を調整することや粘着付与樹脂などの種々の添加剤を加える試みが行なわれてきた(特許文献2)。しかしながら、単にこれらの粘着剤を全面貼り用粘着シートに転用しても、表面保護パネルと画像表示パネルとを貼付した際に混入した気泡が、オートクレーブ処理後も抜けない場合があった。
【0004】
【特許文献1】特開2005−187513号公報
【特許文献2】特開2005−255877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、薄型化した際に、表面保護パネルの割れが生じにくく、かつ表面保護パネルを画像表示パネルに貼付した際に混入した気泡がオートクレーブ処理後に抜けやすく、また高温下に放置しても発泡しにくい電子端末用画像表示モジュール、および当該画像表示パネルに使用する全面貼り用粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては、電子端末用画像表示モジュールの表面保護パネルと画像表示パネルとを固着する両面粘着シートが、表面保護パネルの割れを生じにくくし、特定の動的粘弾性スペクトルと貯蔵弾性率を有する粘着剤層が、貼付した際に気泡を混入しにくくし、気泡が混入した場合でもオートクレーブ処理等により排除できるとともに高温下でも気泡の発生を抑制することを見出し、薄型化した際にも表面保護パネルの割れが生じにくく、かつ好適な画像表示が可能な電子端末用画像表示モジュールを実現した。
【0007】
すなわち本発明は、少なくとも透明な表面保護パネルと、画像表示パネルとを備えた電子端末用画像表示モジュールであって、前記表面保護パネルと、画像表示パネルとが、両面粘着シートを介して全面貼付され、前記両面粘着シートが、周波数1Hz、20℃における動的粘弾スペクトルの損失正接が0.6〜1.5であり、かつ80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上である粘着剤層を有する電子端末用画像表示モジュールを提供することにある。
【0008】
また、本発明は、少なくとも透明な表面保護パネルと、画像表示パネルとを備えた電子端末用画像表示モジュールにおいて、前記表面保護パネルと前記画像表示パネルとを全面貼付する両面粘着シートであって、周波数1Hz、20℃における動的粘弾スペクトルの損失正接が0.6〜1.5であり、かつ80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上である粘着剤層を有する粘着シートを提供することにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子端末用画像表示モジュールは、画像表示部表面に加わった応力を全面貼りされた粘着剤層で吸収する構造を有するため、表面保護パネルの割れが生じにくい。また、当該粘着剤層は、ガラスや透明樹脂基板により形成される表面保護パネルと、画像表示パネルとの剛体同士の貼り合わせの際にも、気泡混入を低減でき、オートクレーブ処理等により気泡の除去も容易であることから、好適な画像表示が可能な電子端末用画像表示モジュールを実現できる。
【0010】
このため、当該電子端末用画像表示モジュールによれば、各種小型電子端末の更なる薄型化を実現でき、特に携帯電話の薄型化に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の電子端末用画像表示モジュール(以下、画像表示モジュールと略記する。)は、少なくとも透明な表面保護パネルと、画像表示パネルとを備えた画像表示モジュールであって、前記表面保護パネルと、前記画像表示パネルとが、両面粘着シートを介して全面貼付され、前記両面粘着シートが、周波数1Hz、20℃における動的粘弾スペクトルの損失正接が0.6〜1.5であり、かつ80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上である粘着剤層を有するものである。
【0012】
[表面保護パネル]
本発明の画像表示モジュールに使用する表面保護パネルは、当該パネルを通して画像を視認できるよう透明なパネルである必要があり、可視光透過率が90%以上のものを好ましく使用でき、95%以上のものをより好ましく使用できる。
【0013】
当該表面保護パネルとしては、通常アクリル板や、ポリカーボネート板、強化ガラス板が使用される。アクリル板やポリカーボネート板は、柔軟性を有するため衝撃により割れを生じるおそれが少なく、また、衝撃により割れが生じても破片が飛散するおそれが少ないため耐衝撃性の観点から好ましく使用できる。一方、強化ガラス板は、高硬度であるため薄型化した場合であっても耐擦傷性に優れるため好ましく使用できる。
【0014】
当該表面保護パネルの厚さは、0.2mm〜2mmであることが好ましく、0.3mm〜1mmであることが特に好ましい。
【0015】
[画像表示パネル]
本発明の画像表示モジュールに使用する画像表示パネルは、一般の画像表示装置に使用されているLCDモジュールや有機ELパネルを使用でき、LCDモジュールは入手が容易であることから好適に使用できる。
【0016】
[両面粘着シート]
本発明の画像表示モジュールに使用する両面粘着シートは、表面保護パネルと画像表示パネルとを全面貼付する両面粘着シートである。
【0017】
当該両面粘着シートに使用する粘着剤層は、周波数1Hz、20℃における動的粘弾性スペクトルの損失正接が0.6〜1.5、好ましくは0.6〜1.0であり、80℃の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上、好ましくは1.0〜3.0×10Paである。粘着剤層の周波数1Hz、20℃における動的粘弾性スペクトルの損失正接が0.6未満の場合は、粘着剤の応力緩和性が低下し気泡が抜けにくくなる。1.5を超える場合は、加工時の粘着剤のはみ出しの原因となる。また80℃の貯蔵弾性率が1.0×10Paを下回る場合は、高温放置時に粘着剤層中に気泡が発生しやすい。
【0018】
粘着剤層の動的粘弾性は、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KSTD)を用いて、同試験機の測定部である直径7.9mmの平行円盤の間に試験片を挟み込み、周波数1Hzでの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)を測定し、損失正接はtanδ=(G”)/(G’)で表される式により算出される。試験片は厚み0.5〜2.5mmの粘着剤を単独で平行円盤の間に挟んでも良いが、基材と粘着剤の積層体を幾重にも重ねて平行円盤の間に挟んでも良い。なお、後者の場合は粘着剤のみの厚さが前記の範囲となるように調整する。粘着剤としての厚さを上記の範囲に調整すると、中間に基材が挟まっていても基材のない場合と同様に粘着剤の動的粘弾性スペクトルを測定できる。
【0019】
前記粘着剤層には、公知のアクリル系、ゴム系、シリコーン系の粘着樹脂を使用することができる。そのなかでも、反復単位として炭素数2〜14のアルキル基を有するアクリル酸エステルに由来する反復単位を含有するアクリル系共重合体が、耐光性・耐熱性・コストの点から好ましい。このようなアクリル系共重合体としては、例えば、n−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、エチルアクリレート等に由来する反復単位を含むアクリル系共重合体があげられる。また反復単位として、側鎖に水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの極性基を有するアクリル酸エステルやその他のビニル系単量体に由来する反復単位を含有するものも好ましい。
【0020】
さらに、炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー50質量%以上、カルボキシル基を含有するビニルモノマーが1〜20質量%、水酸基含有モノマー0.05〜5質量%を必須成分として調製されるアクリル共重合体(a)が更に好ましい。
【0021】
また、アクリル系共重合体は2種類以上混合して用いても良い。前記アクリル共重合体(a)と、炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを主成分とし、アミド基を含有する、重量平均分子量が10万以下のアクリル系共重合体(b)を混合した混合物が最も好ましく用いられる。アクリル系共重合体(b)の添加量は、アクリル系共重合体(a)100質量部に対し、5〜50質量部、好ましくは5〜30質量部である。
【0022】
前記アクリル系共重合体は、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、紫外線照射法、電子線照射法によって共重合させることにより得ることができる。アクリル系共重合体(a)のゲルパーミエッションクロマトグラフ(GPC)で測定される標準ポリスチレン換算で測定した重量平均分子量(ゲルパーミエッションクロマトグラフィー、東ソー社製SC−8020、高分子量カラムTSKgelGMHHR−H、溶媒:テトラヒドロフラン)は、40万〜140万が好ましく、更に好ましくは、60万〜120万である。
【0023】
また、粘着剤層の凝集力をあげるために、架橋剤を添加するのが好ましい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤等が挙げられる。架橋剤の添加量としては、粘着剤層のゲル分率が25〜90%になるよう添加するのが好ましい。さらに好ましいゲル分率は、40〜85%である。そのなかでも50〜80%が特に好ましい。ゲル分率は、養生後の粘着剤層をトルエン中に浸漬し、24時間放置後に残った不溶分の乾燥後の質量を測定し、元の質量に対する百分率で表す。
【0024】
さらに粘着剤層の粘着力を向上させるため、透明性を低下させない範囲で、具体的には全光線透過率が90%を下回らない範囲で、粘着付与樹脂を添加しても良い。本発明の粘着シートの粘着剤層に添加する粘着付与樹脂は、ロジンやロジンのエステル化物等のロジン系樹脂;ジテルペン重合体やα−ピネン−フェノール共重合体等のテルペン系樹脂;脂肪族系(C5系)や芳香族系(C9)等の石油樹脂;その他、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。透明性を考慮し、100℃14日放置後の粘着剤層のb*値(大きいほど黄色味が強い)を6以下にするためには、不飽和二重結合が少ない水添ロジンや不均化ロジンのエステル化物や、脂肪族や芳香族系石油樹脂、高Tgアクリル樹脂等を粘着剤層に添加することが好ましい。粘着付与樹脂の添加量としては、粘着剤樹脂がアクリル系共重合体である場合は、アクリル系共重合体100質量部に対して5〜60質量部を添加するのが好ましい。
【0025】
本発明の粘着シートに使用する粘着剤には、上記以外に公知慣用の添加剤を添加することができる。例えば、ガラスへの接着性を向上するために、0.001〜0.005質量%の範囲でシランカップリング剤を添加することができる。その他、可塑剤、軟化剤、充填剤、顔料、難燃剤等が添加できる。
【0026】
本発明の粘着シートの300mm/minでの180°剥離接着力は、ガラス、偏光板、アクリル板に対してそれぞれ5〜15N/20mmであることが好ましい。
【0027】
本発明の粘着シートは、芯材を有する両面粘着シートであっても芯材を有さない両面粘着シートであってもよい。芯材を有さない態様の粘着シートは、画像表示モジュールの薄型化に好適であり、また、貼付面に印刷層等による段差がある場合にも当該段差に好適に追従できるため好ましい。一方、芯材を有する態様の粘着シートは、再剥離作業時にも好適に再剥離が可能となるため好ましく、また、画像表示モジュールへの適用時に一定の厚さが必要な場合にも好適に厚みを調整できる。
【0028】
本発明の粘着シートは、厚さが20〜300μm、好ましくは30〜200μm、より好ましくは40〜150μmである。本発明の粘着シートの厚さを50μmを超える厚さにするためには、紫外線等の活性エネルギー線硬化型の固形分100%のモノマー部分重合物を粘着剤層に用いて厚膜化するか、粘着剤層同士を重ね貼り合わせするか、芯材にフィルム基材を用い両面に粘着剤層を設けるなど、で達成できる。
【0029】
芯材を有する態様において使用する芯材としてはフィルム基材を好ましく使用でき、厚さが3〜100μmの透明なフィルム基材が特に好適である。フィルム基材の透過率は90%以上が好ましい。
【0030】
本発明に用いるフィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0031】
また、フィルム基材には、粘着剤層との密着性を向上させる目的で、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施すことができる。
【0032】
また、基材には、その他配合材料として帯電防止剤を添加し帯電防止機能を付与することができる。ノニオン系としてポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸グリセリンエステル、アルキルポリエチレンイミン等を挙げることができる。カチオン系としてアルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩、アルキルイミダゾリン誘導体等を挙げることができる。またエチレンオキサイドを骨格に持つアクリレート化合物なども使用することができる。導電性高分子としてポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン及びこれらの誘導体を使用することができる。金属酸化物としてアンチモンドープ型酸化錫(ATO)、錫ドープ型酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ型酸化亜鉛、アンチモン副酸化物などを使用することができる。またその他にリチウムイオンなどの金属イオンを混合するイオン伝導型の帯電防止剤も用いることができる。
【0033】
本発明の粘着シートは、一般的に使用されている方法で作成できる。例えば、フィルム基材または離型シート上に粘着剤層を形成して製造することができる。具体的には、粘着剤の組成物を基材フィルムに直接塗布し乾燥または硬化・重合するか、或いは、いったん離型シート上に塗布し、乾燥または硬化・重合し、粘着剤層を形成後、同様にして離型シート上に作成した粘着剤層又は基材フィルムに貼り合わせる方法などにより製造できる。
【0034】
[画像表示モジュール]
本発明の画像表示モジュールは、その構成中に、少なくとも、透明な表面保護パネルと、画像表示パネルとを有するものである。そして、表面保護パネルと、画像表示パネルとが、両面粘着シートを介して全面貼付された構成の画像表示モジュールである。
【0035】
本発明の画像表示モジュールは、表面保護パネル下部に空隙部を有しないために、薄型化に適した構成である。本発明の画像表示モジュールは、その厚さが薄い場合に好適に使用でき、画像表示モジュール全体の厚さが、1m〜5mmであることが好ましく、1.5mm〜2mmであることが特に好ましい。
【0036】
本発明の画像表示モジュールの構成の代表例を図1に示す。図1の構成は、画像表示パネル3と、透明な表面保護パネル2とが両面粘着シート1により全面貼付された構成である。当該構成においては、最表層に設けられた表面保護パネル2側から、当該表面保護パネルを通して、表示画像を視認できる。
【0037】
本発明の画像表示モジュールには、必要に応じて他の構成要素が付加されていてもよく、例えば、画像表示パネル3の下層にフレキシブルプリント回路(FPC)基板などが設けられた構成であってもよい。画像表示モジュールがバックライト型の画像表示パネルである場合には、バックライトモジュール5が、図1の構造に付加される(図2)。また、表面保護パネル2の更に表層に表面保護フィルム6が設けられた構成(図3)や、表面保護パネル2の粘着剤と接する面の一部に印刷層7が施された構成(図4)であってもよい。
【0038】
表面保護フィルム6が設けられた構成のものは、表面保護パネル2の傷つきや割れを防ぎ、また、割れが生じた際にも破片の飛散を防止できるため好ましい。
【0039】
表面保護フィルム6としては、ハードコート層を有する樹脂フィルムからなるハードコートフィルムに粘着剤層が設けられた構成のものを好ましく使用できる。
【0040】
表面保護フィルム6は、外観上の問題や、エッジ部の引っかかりによる剥がれの問題から、少なくとも総厚さが150μm以下であることが好ましく、総厚さが60〜150μmであることが特に好ましい。また、当該厚さにおいて好適な表面保護特性を有するためには、樹脂フィルムの弾性率が3〜7GPa、厚さが38〜100μmであり、ハードコート層の厚さが5〜25μmであり、ハードコートフィルムのハードコート層表面の鉛筆硬度が3H以上であり、粘着剤層の厚さが5〜20μmであることが好ましい。
【0041】
表面保護パネル2の粘着剤と接する面の一部に印刷層7を有する構成によれば、画像表示部以外の部分に、印刷層7による装飾を施すことができるため好ましい。
【0042】
当該印刷層7は、表面保護パネル2の意匠性付与のためにスクリーン印刷により形成される多色印刷層が好ましい。また、表面保護パネル2の材質がガラスである場合、当該印刷層の密着性を上げるためプライマー層を設けたガラスを好ましく使用できる。
【0043】
本発明の画像表示モジュールは、透明な表面保護パネルと画像表示パネルとを、両面粘着シートを介して全面貼付することによって製造できる。
【0044】
当該貼付工程は、表面保護パネル又は前記画像表示パネルのいずれかに上記の両面粘着シートを貼付けた後、両者を貼り合わせる工程であり、当該工程においては、貼付時の気泡混入を低減させるために真空貼り装置を用いることが好ましい。真空貼り装置を使用することで、表面保護パネルと画像表示パネルのように、2枚の剛体のパネルを両面粘着テープで貼り合わせても、気泡が混入しにくくなる。
【0045】
[携帯電子端末]
本発明の画像表示モジュールは、薄型化に適したモジュールであるため、携帯電話をはじめ、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯情報端末、電子辞書、デジタル音楽プレイヤー、デジタル動画プレイヤー、携帯ゲーム機器、携帯型GPS、カメラ、ビデオハンドヘルドPCなどの各種の小型電子端末や携帯型の電子端末に好適に適用できる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例および比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0047】
[アクリル共重合体の調製]
<アクリル共重合体(1)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート96.5重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5重量部、アクリル酸3.0重量部と重合開始剤として2,2'−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量80万のアクリル共重合体(1)を得た。
【0048】
<アクリル共重合体(2)>
アクリル共重合体の調製攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル98.0重量部、N−ビニルピロリドン2.0重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル1.0重量部とを酢酸エチル100部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量2万のメタクリル共重合体(2)を得た。
【0049】
[粘着剤の調製]
<粘着剤A>
上記アクリル共重合体(1)100重量部に、上記アクリル共重合体(2)を5重量部添加し、酢酸エチルで希釈し樹脂固形分45%の粘着剤Aを得た。
【0050】
<粘着剤B>
上記アクリル共重合体(1)100重量部に、上記アクリル共重合体(2)を10重量部添加し、酢酸エチルで希釈し樹脂固形分45%の粘着剤Bを得た。
【0051】
<粘着剤C>
上記アクリル共重合体(1)100重量部に、上記アクリル共重合体(2)を2重量部添加し、酢酸エチルで希釈し樹脂固形分45%の粘着剤Cを得た。
【0052】
<粘着剤D>
上記アクリル共重合体(1)100重量部を酢酸エチルで希釈し樹脂固形分45%の粘着剤Dを得た。
【0053】
(実施例1)
上記粘着剤A/100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製コロネートL−45、固形分45%)を0.7重量部添加し15分攪拌後、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ75μmのポリエステルフィルム(以下#75剥離フィルム)上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工して、75℃で5分間乾燥した。得られた粘着シートと、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルム(以下#38剥離フィルム)を貼り合わせた。その後23℃で5日間熟成し厚さ50μmの、ゲル分率75%の基材レス粘着シートを得た。
【0054】
(実施例2)
上記粘着剤A/100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製コロネートL−45、固形分45%)を0.7重量部添加し15分攪拌後、#75剥離フィルム上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工して75℃で5分間乾燥した。得られた粘着シートをローラーで気泡が入らないように2枚貼り合わせ、23℃で5日間熟成し厚さ100μm、ゲル分率75%の基材レス粘着シートを得た。
【0055】
(実施例3)
上記粘着剤B/100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製コロネートL−45、固形分45%)を0.66重量部添加し15分攪拌後、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ75μmのポリエステルフィルム(以下#75剥離フィルム)上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工して、75℃で5分間乾燥した。得られた粘着シートと、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルム(以下#38剥離フィルム)を貼り合わせた。その後23℃で5日間熟成し厚さ50μmの、ゲル分率72%の基材レス粘着シートを得た。
【0056】
(比較例1)
上記粘着剤C/100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製コロネートL−45、固形分45%)を0.72重量部添加し15分攪拌後、#75剥離フィルム上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工して、75℃で5分間乾燥した。得られた粘着シートと、#38剥離フィルムを貼り合わせた。その後23℃で5日間熟成し総厚50μm、ゲル分率80%の基材レス粘着シートを得た。
【0057】
(比較例2)
上記粘着剤A/100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製コロネートL−45、固形分45%)を0.3重量部添加し15分攪拌後、#75剥離フィルム上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工して、75℃で5分間乾燥した。得られた粘着シートと、#38剥離フィルムを貼り合わせた。その後23℃で5日間熟成し総厚50μm、ゲル分率55%の基材レス粘着シートを得た。
【0058】
(比較例3)
上記粘着剤D/100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製コロネートL−45、固形分45%)を0.74重量部添加し15分攪拌後、#75剥離フィルム上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工して、75℃で5分間乾燥した。得られた粘着シートと、#38剥離フィルムを貼り合わせた。その後23℃で5日間熟成し総厚50μm、ゲル分率80%の基材レス粘着シートを得た。
【0059】
[粘弾性スペクトルの測定]
上記実施例及び比較例で得られた粘着シートを、厚さが2mmになるよう貼り合わせ試験片とし、レオメトリックス社製粘弾性試験機アレス2KSTDに直径7.9mmの平行円盤を装着し、平行円盤に試験片を挟み込み、温度分散法、周波数1Hz、測定温度範囲は−30〜100℃で粘弾性スペクトル測定し、20℃の損失正接、80℃の貯蔵弾性率G'を読み取った。
【0060】
[試験片の作成]
化学強化処理した、対角2インチで厚さ0.8mmの石塚ガラス製クリスターナIG3に、同一サイズの実施例、比較例の粘着シートを常温・常圧下でハンドロールで貼り合わせ、粘着シート付きガラスパネルを作成する。次に、パナソニックモバイルコミュニケーションズ製携帯電話P901iSから、2インチの画像表示パネルを取り外す。前記画像表示パネルと前記粘着シート付きガラスパネルを、日立設備エンジニアリング株式会社製真空テープ貼付機(WL−300NS)で真空下貼付し試験片とした。
【0061】
[気泡の有無の観察]
上記試験片を、50℃・5kgf/m2,20分のオートクレーブ処理し、試験片の中央および4隅の計5点における、貼付時の気泡の個数を50倍のマイクロスコープで測定した。その後、60℃90%RHの環境試験器中に放置した。放置後、サンプルの中央および4隅の計5点における気泡の有無を、50倍のマイクロスコープで観察した。判定は、○:気泡なし、×:気泡あり、とした。
【0062】
[画像表示試験]
上記試験片を、50℃・5kgf/m2,20分のオートクレーブ処理し、上記試験片作成時に使用したパナソニックモバイルコミュニケーションズ製P901iSに再度接続し、電源を入れて画像表示部を観察した。画像表示部全体の画像が良好に視認できるものを○、画像の一部に欠落もしくは画像にゆらぎが見えるものを×とした。
【0063】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の電子端末用画像表示モジュールの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の電子端末用画像表示モジュールの一例を示す断面図である。
【図3】本発明の電子端末用画像表示モジュールの一例を示す断面図である。
【図4】本発明の電子端末用画像表示モジュールの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1:両面粘着シート
2:表面保護パネル
3:画像表示パネル
4:筐体
5:バックライトモジュール
6:表面保護フィルム
7:印刷層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも透明な表面保護パネルと、画像表示パネルとを備えた電子端末用画像表示モジュールであって、
前記表面保護パネルと、画像表示パネルとが、両面粘着シートを介して全面貼付され、
前記両面粘着シートが、周波数1Hz、20℃における動的粘弾スペクトルの損失正接が0.6〜1.5であり、かつ80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上である粘着剤層を有することを特徴とする電子端末用画像表示モジュール。
【請求項2】
前記両面粘着シートの厚さが20〜300μmである請求項1に記載の電子端末用画像表示モジュール。
【請求項3】
前記粘着シートがフィルム基材の両面に粘着剤層を設けた請求項1又は2に記載の電子端末用画像表示モジュール
【請求項4】
前記表面保護パネルが、前記粘着剤層と接する面に、印刷層を1層以上有する請求項1〜3のいずれかに記載の電子端末用画像表示モジュール。
【請求項5】
前記表面保護パネルが、強化ガラス製である請求項1〜4のいずれかに記載の電子端末用画像表示モジュール。
【請求項6】
携帯電話用筐体内に、請求項1〜5のいずれかに記載の電子端末用画像表示モジュールを、画像表示部として有することを特徴とする携帯電話。
【請求項7】
少なくとも透明な表面保護パネルと、画像表示パネルとを備えた電子端末用画像表示モジュールにおいて、前記表面保護パネルと前記画像表示パネルとを全面貼付する両面粘着シートであって、前記両面粘着シートが、周波数1Hz、20℃における動的粘弾スペクトルの損失正接が0.6〜1.5であり、かつ80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上である粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。
【請求項8】
前記粘着シートの粘着剤が、炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー50質量%以上、カルボキシル基を含有するビニルモノマーが1〜20質量%、水酸基含有モノマー0.05〜5質量%を必須成分として調製されるアクリル共重合体(a)と、炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを主成分とし、アミド基を含有するビニルモノマーの共重合体(b)とからなり、上記共重合体(b)の重量平均分子量が10万以下の粘着剤からなる請求項7に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記表面保護パネルの表層に飛散防止用の表面保護フィルムが全面貼付された請求項5に記載の電子端末用画像表示モジュール。
【請求項10】
少なくとも透明な表面保護パネルと画像表示パネルとが、両面粘着シートを介して全面貼付された電子端末用画像表示モジュールを製造する方法であって、
前記表面保護パネル又は前記画像表示パネルに請求項7又は8に記載の両面粘着シートを貼付けた後、真空貼り装置によって前記表面保護パネルと前記画像表示パネルとを両面粘着シートを介して全面貼付する工程を有することを特徴とする電子端末用画像表示モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−231358(P2008−231358A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76671(P2007−76671)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】