説明

電子線殺菌装置

【課題】1台の電子線照射装置24によって、搬送している容器4の全面に電子線を照射して殺菌する。
【解決手段】回転体12の周囲に円周方向等間隔で複数の容器保持手段14が設けられている。各容器保持手段14は2つの保持部26、26を有しており、2個の容器4、4を縦方向に並べて保持する。回転体12の回転経路内に反転区間C〜Dと直立移送区間D〜B、A〜Cが設けられており、反転区間C〜Dに、接線方向の軸線O1を中心に容器保持手段14を反転させる反転手段16が、そして直立移送区間A〜Cに電子線照射装置24が配置されている。容器供給位置Aで供給され保持部26に保持された容器4は、電子線照射位置Eで電子線を照射された後反転され、その後再び電子線照射位置Eに到達すると、反対側の面に電子線が照射される。容器4は、再度反転された後容器排出位置Bから排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送中の容器に電子線を照射して殺菌を行う電子線殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器の搬送中に電子線照射装置によって電子線を照射することにより殺菌を行う電子線殺菌装置は従来から知られている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。特許文献1に開示された発明に係る「プラスチック空容器の電子線殺菌装置」は、プラスチック空容器を供給する供給機構と、周回機構と、電子線照射機構と、電子線照射済みのプラスチック空容器を排出する排出機構とを備えている。
【0003】
前記周回機構は、供給機構から供給されたプラスチック空容器を真空吸引して固定するとともに、この固定した状態のままでプラスチック空容器を周回および自転させるものであり、プラスチック空容器固定用の複数個のターンテーブルと、ターンテーブル駆動部とを有している。電子線照射機構は、周回機構に同期して、その内周側からプラスチック空容器に電子線を照射することによりこれを殺菌するものである。この発明の構成では、電子線照射機構の電子線照射部は、周回機構の周回軌道上におけるターンテーブルの数と同じ数だけ設けてある。
【0004】
また、特許文献2に記載された「電子線による容器の滅菌装置」は、滅菌処理室に電子線発生部が縦位置として配置され、滅菌処理室の入口側から出口側にかけて容器搬送手段が設けられている。そして、容器を前記電子線発生部の前面位置で回転させる回転付与手段が配設されている。
【0005】
この滅菌装置では、容器は、容器搬送手段(エア搬送コンベヤ)によって滅菌処理室内を進行し、回転付与手段に至ると回転が与えられる。回転しながら搬送される容器は、電子線発生部の照射窓の前を自転しながら通過する。こうして順次搬送される容器は、回転付与手段により自転を与えられて照射窓の前を通過して、電子線の照射を受けて滅菌が行われ、その後、滅菌処理室から排出される。
【特許文献1】特開平11−137645号公報(第3−4頁、図1)
【特許文献2】特開平11−1212号公報(第3−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載された発明の構成では、容器を乗せて固定するターンテーブルの数と同じ数だけ電子線照射部が必要であり、コスト高になるとともに装置全体が大型化するという問題があった。また、特許文献2に記載された発明の構成では、電子線照射部は1個所であるが、容器の全周に電子線を照射するために容器に回転を与えている。このようにエア搬送の途中で容器を自転させる構成のため、高速化ができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、搬送される容器に電子線を照射して殺菌する電子線殺菌装置において、一対の保持部によって2つの容器を縦方向に並べて保持する容器保持手段と、複数の容器保持手段が等間隔で設けられ、これら容器保持手段を循環移送する移送手段と、前記容器保持手段を前記移送手段の進行方向と平行な軸線を中心に回転させることにより反転させる反転手段と、前記容器保持手段によって上下縦方向に保持された2つの容器の上下端に渡って電子線を照射可能な電子線照射装置とを備え、前記移送手段の移送経路における容器供給位置から容器排出位置までの間に、前記反転手段によって容器保持手段を反転させる反転区間と、容器を上下縦方向に並べて直立した姿勢で移送する直立移送区間とを設け、前記電子線照射装置による電子線照射位置をこの直立移送区間に設定し、容器供給位置で供給された容器が電子線照射位置と反転区間を2回通過した後、容器排出位置で排出されるようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子線殺菌装置は、一台の電子線照射装置によって、容器の両側から電子線を照射することができ、容器全面を確実に殺菌することができる。しかも、装置の小型化やコストの低減が可能であり、また、高速化も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の電子線による容器の殺菌装置は、移送手段に、2つの保持部によって容器を縦方向に並べて保持する容器保持手段を等間隔で設けて、容器を循環移送し、その移送経路の途中の反転区間に、上下に並べて容器を保持している容器保持手段を、移送手段の進行方向と平行な軸線を中心に上下を反転させる反転手段を設けるとともに、2本の容器を直立した状態で上下に並べて搬送する直立移送区間に電子線照射装置を設け、上下2本の容器に同時に電子線を照射できるように構成し、容器供給位置で容器保持手段に供給された容器が、反転手段と電子線照射装置を2回通過した後、容器排出位置から排出するようにしたことにより、一台の電子線照射装置によって容器全面を確実に殺菌するという目的を達成する。
【実施例1】
【0010】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は本発明の一実施例に係る電子線殺菌装置の全体の構成を示す平面図であり、容器供給手段であるエア搬送コンベヤ2によって搬送されてきたPETボトル等の容器4(後に説明する図2〜図5参照)が、供給グリッパホイール6のグリッパ8(図4参照)に保持されて回転搬送され、電子線殺菌装置10に供給される(供給グリッパホイール6から電子線殺菌装置10に容器4を供給する供給位置を図1中に符号Aで示す)。
【0011】
電子線殺菌装置10には、図2に示すように、回転体(移送手段)12の外周部に円周方向等間隔で複数の容器保持手段14が設けられており、供給グリッパホイール6から供給された容器4を容器保持手段14が保持し、回転体12の回転によって容器保持手段14を回転移送することで、保持した容器4を回転搬送する。容器4の搬送経路には、容器4を保持している容器保持手段14を反転させる反転手段16が設けられており、正立した状態(容器4の口部4aを上方へ向けた状態)で供給された容器4が、この反転手段16によって反転されて倒立状態になる。その後、容器4は、倒立状態で回転搬送された後、再度、反転手段16によって反転されて正立状態に戻され、排出グリッパホイール18のグリッパ20(図5参照)に引き渡されて排出され、エア搬送コンベヤ22によって下流側の次工程に送られる。この実施例では、容器供給位置(図中のA位置)で、容器4が供給グリッパホイール6のグリッパ8から電子線殺菌装置10の容器保持手段14に引き渡され、回転体12によってほぼ2周回転される間に上下を2回反転され、容器排出位置(図中のB位置)で、排出グリッパホイール18のグリッパ20に引き渡されてエア搬送コンベヤ22に排出される。
【0012】
電子線殺菌装置10の外周側の、前記容器供給位置Aよりも容器4の搬送方向のやや下流側に電子線照射装置の照射ユニット24が設けられている(図1および図3参照)。前記容器保持手段14は、後に説明するように、上下2つの容器保持部26、26を有しており、この照射ユニット24は、2つの容器保持部26、26に保持されて垂直状態になっている上下2つの容器4、4に同時に電子線を照射できるような充分な長さを有している。
【0013】
次に、前記電子線殺菌装置10の構成について、図1ないし図5により説明する。なお、図2は前記容器保持手段14の構成を示す斜視図、図3は図1のIII−III線に沿う断面図、図4は図1のIV−IV線に沿う断面図、図5は図1のV−V線に沿う断面図である。回転体12(全体の図示は省略する)の外周に前記容器保持手段14が円周方向等間隔で複数設けられている。容器保持手段14の構成について図2により詳細に説明すると、この実施例では、回転体12の外周部に円周方向等間隔で、コ字状の取付け部材50が、その開口部50aを回転体12の半径方向外方に向けて水平に固定され、これら複数の取付けブロック50に、それぞれ容器保持手段14が取り付けられている。これら各容器保持手段14はそれぞれ2つの容器保持部26、26を有している。なお、この実施例の容器保持手段14は、本特許出願の発明者らが発明し、本出願人が既に出願した特開2003−192095号公報に記載された容器把持手段と同様の構成を有するものであるが、その他の構成とすることも可能である。
【0014】
この実施例では、2つの容器保持部26、26が同一の構成を有しているので、各構成部分には同一の符号を付して説明する。取付けブロック50の開口部50aには、ロッド54の両端に中央部が固定された2枚の平行な板ばね(支持板)56が回転自在に支持されている。前記取付けブロック50は前述のように、回転体12の外周に放射方向を向けて固定されており、従って、その開口部50a間に支持されているロッド54は、前記回転体12の接線方向を向いている。さらに、両板ばね56間の、前記ロッド54の両側にはそれぞれスプリング58が連結されて、両板ばね56の端部56a同士を互いに接近する方向に常時引き付けている。さらに、二枚の板ばね56の両端部56a(図2の上方と下方の端部)には、それぞれ、互いに向かい合う一対の保持プレート60が取り付けられており、これら向かい合う一対の保持プレート60によって前記容器保持部26、26が構成されている。これら保持プレート60の向かい合う面には、中央に容器4のネック部(この実施例ではフランジ部4bの下側の部分4c)に当接する円弧状の凹面60aが形成され、その両側に、外方へ向かって拡大するガイド面60bが形成されている。
【0015】
容器保持部26、26を構成する両側の保持プレート60は二枚の板ばね56の端部56aに固定され、前記スプリング58によって互いに引き付けられており、容器4は、フランジ部4bの下側の部分4cが両側の保持プレート60のガイド面60bを通ってこれら保持プレート60を外側に押し開きながら円弧状凹面60a間に入り込み、その後スプリング58によって両側の保持プレート60が戻ることにより保持される。また、各保持プレート60には、円弧状凹面60aの両側にガイド面60bが形成されているので、向かい合う円弧状凹面60a間には、どちらのガイド面60b側からも出入りできるようになっている。前記板ばね56、スプリング58および一組の保持プレート60からなる容器保持部26、26等によって容器保持手段14が構成されており、この実施の形態の容器保持手段14には、中央のロッド54の中心軸線、つまり回転体12の接線方向の軸線O1を中心とした対称の位置にそれぞれ容器保持部26、26が設けられ、2つの容器4を縦方向に並べて保持できるようになっている。
【0016】
前記ロッド54の長さ方向の中央部には、後に説明するガイドレール62に係合するU字状凹部64aが両端部に形成された係合部材64が固定されている。この係合部材64は、図2〜図5に示すように、両側の板ばね56に対して傾斜して取り付けられている。一方、回転体12の外周部付近には、前記係合部材64のU字状凹部64aに係合して、回転体12の回転移動とともに、2つの容器保持部26、26の上下を入れ替えるように、前記ロッド54の軸線O1を中心に容器保持手段14を約180度回転させるガイドレール62が配置されている。このガイドレール62は、前記反転手段16を構成するもので、図4および図5に示すように、回転体12の外部に設置した固定支柱63に取り付けられたガイドレール支持手段63aに支持されており、容器4や容器保持手段14等と干渉しない位置に設置されている。このガイドレール62は、供給グリッパホイール6から電子線殺菌装置10へ容器4を供給する容器供給位置A(図1および図4参照)で、供給グリッパホイール6側(図4の左側)に位置している先端62a(図1および図2参照)が前記係合部材64のU字状凹部64aに係合する。
【0017】
そして、電子線殺菌装置10から排出グリッパホイール18へ容器4を排出する容器排出位置Bに向かうに従って、ガイドレール62は、次第に高さが上昇するとともに、回転体12の内側に入った後、次第に下降する。つまり。ガイドレール62の位置が、ロッド54の通過する位置の周囲を捻れながら180度回転する。図4中の破線で示す容器保持手段14および容器4は反転途中の状態を示しており、前記のように180度位置が変わると、2つの容器4が完全に上下が逆になった状態になる。この実施例では、図1中の電子線照射手段24が設けられた電子線の照射位置Eよりも下流側のC位置から、約半周先のD位置までの間が、前記ガイドレール62によって容器保持手段14およびその保持部26、26に保持されている2つの容器4の上下を反転させる反転区間である。また、容器排出位置Bから容器供給位置Aまでの間は、上方の容器保持部26だけが容器4を保持しており、従って、前記反転区間の終了した位置Dから容器排出位置Bまでの間および容器供給位置Aから反転区間の開始する位置Cまでの間が、上下縦方向に並べて保持された2つの容器4が、軸線を鉛直方向に向けて移送される直立移送区間になっている。これらガイドレール62と容器保持手段14の係合部材64とによって、容器保持手段14を回転体12の接線方向の軸線O1を中心に回転させることにより反転させる反転手段16が構成されている。
【0018】
前記構成の電子線殺菌装置10の作動について説明する。容器供給手段(エア搬送コンベヤ)2によって吊り下げられた状態で搬送されてきた容器4は、供給グリッパホイール6のグリッパ8に保持されて回転搬送される。この実施の形態では、供給グリッパホイール6のグリッパ8は、容器4のネック部に形成されたフランジ4bの上方の部分4dを保持する(図4参照)。
【0019】
供給グリッパホイール6のグリッパ8に保持された容器4が電子線殺菌装置10への供給位置Aに接近すると、電子線殺菌装置10の回転体(移送手段)12に円周方向等間隔で固定されているコ字状の取付け部材50に取り付けられている容器保持手段14の、上下二つの容器保持部26、26のうち下方に位置している容器保持部26(容器供給位置Aを示す図4の下側の容器保持部26参照)の両側の保持プレート60間に、フランジ4bの下方の部分4cが挿入される。なお、二つの容器保持部26、26は、供給グリッパホイール6から電子線殺菌装置10への容器供給位置Aでは、図4に示すように、鉛直方向の上下に位置している。
【0020】
両保持プレート60はそれぞれ板ばね56に固定され、スプリング58によって互いに引き付けられているので、供給グリッパホイール6のグリッパ8に保持されている容器4は、両保持プレート60のガイド面60bを押し広げつつ通過して円弧状凹部60a内に嵌入する。この電子線殺菌装置10の運転の開始時は、図4の下側の保持部26だけが容器4を保持した状態になる。一方、容器保持手段14と一体の係合部材64は、下向きのU字状凹部64aがガイドレール62の先端62aに係合する。なお、この時点では、上向きのU字状凹部64aには、ガイドレール62の末端部62bが係合した状態になっている(図1および図4参照)。
【0021】
供給グリッパホイール6および電子線殺菌装置10の回転体12がともに回転して、グリッパ8と容器保持手段14の容器保持部26とが離れていくと、容器4は供給グリッパホイール6のグリッパ8から外れて容器保持部26側に保持され、電子線殺菌装置10の回転体12の回転によって回転搬送される。この電子線殺菌装置10の容器供給位置Aよりもさらに下流側となる反転開始位置Cまでは直立移送区間であり、この区間内に電子線照射位置Eが設定されている。この電子線照射位置Eに対応させ電子線殺菌装置10を構成する回転体12の半径方向内方側を向けて電子線照射装置の照射ユニット24が配置されており(図1および図3参照)、通過する容器4の上下端に渡って電子線が照射される。この照射(容器4に対する1回目の照射)では、容器保持手段14の下方に位置している保持部26が保持している容器4の、回転体12の半径方向外方側を向いているほぼ半分の面が電子線により殺菌される(図3の下側の保持部26に保持されている容器4のハッチングをした部分が殺菌される)。
【0022】
回転体12の回転に伴って、照射ユニット24の前面側を通過した後、容器保持手段14が反転区間C〜Dに入ると、係合部材64のU字状凹部64aはガイドレール62の形状に沿って上方へ、かつ半径方向内方側へ移動し、二つの容器保持部26、26の上下が入れ替わるように容器保持手段14を回転させる。このように二つの容器保持部26、26が180度回転して上下が入れ替わると、一方の容器保持部(図4の下方に位置している容器保持部)26に保持されている容器4は、下側で正立した状態から上側で倒立した状態に反転される。
【0023】
容器保持手段14が反転区間C〜Dを通過する間に、上下の保持部26、26がロッド54を中心に180度回転し、下側の保持部26に正立した状態で保持されていた容器4は完全に倒立した状態になる(図5の上方の容器4参照)。その後、電子線殺菌装置10の回転体12がさらに回転して容器排出位置Bに到達する。容器排出位置Bには、グリッパ20を備えた排出グリッパホイール18が配置されているが、このグリッパ20は、下方側の保持部26に保持されている容器4を掴む高さに位置しており、運転開始直後のこの時点では、下方の容器保持部26が容器4を保持していないので、容器保持手段14は排出位置Bをそのまま通過する。
【0024】
前記容器保持手段14が再び容器供給位置Aに到達すると、エア搬送コンベヤ2から容器4を受け取って回転搬送する供給グリッパホイール6のグリッパ8が、容器保持手段14の下側に位置している空の保持部26に、次の容器4を引き渡す。この時点で、容器保持手段14は、上下の容器保持部26、26にそれぞれ容器4、4を保持した状態になる。このとき2本の容器4、4は、図4に示すように、下側の保持部26に保持されている容器4が正立した状態で、上側の保持部26に保持されている容器4が倒立した状態で、軸線を鉛直方向に向けて上下縦方向に並んでいる。
【0025】
上下2つの容器4、4を縦方向に並べた状態で保持した容器保持手段14は、電子線照射装置の照射ユニット24が設けられている電子線照射位置Eに到達して電子線を照射される。前回この照射ユニット24において電子線が照射された容器4は、その後の反転区間C〜Dで、回転体12の接線方向を向いているロッド54を中心に反転されており、電子線を照射された部分が図3の右側に位置している。従って、この電子線照射位置Eを2度目に通過する容器4(図3の上方に位置している容器4)は、前回電子線照射されていない部分(図3の左側に位置している部分)が電子線照射装置24側を向いており、この容器4の残りの部分と、下側の容器保持部26に保持されている容器4の、電子線照射装置24側の半分に、それら2つの容器4の上下端に渡って電子線が照射されて殺菌される。上側の容器保持部26に保持されている容器4は、下側に位置していた時と、反転した後の上側に位置している状態での2回の電子線の照射を受けて外周面全体が殺菌されたことになる。
【0026】
電子線照射位置Eを通過した容器保持手段14は、容器供給位置Aから反転開始位置Cまでの直立移送区間から再び反転区間C〜Dに入り、前記ガイドレール62の移動軌跡に従って反転され、上側に位置していた保持部26が下側に移動し、下側に位置していた保持部26が上側に移動して、全面が殺菌された容器4が下側に正立した状態で保持され、一方、回転体12の半径方向外方側の半分の面が殺菌された容器4は、殺菌された面を半径方向内方に向けた状態で倒立する。
【0027】
前記容器保持手段14が反転区間C〜Dを通過して容器排出位置Bに来ると、下側の容器保持部26に保持されている容器4が、排出グリッパホイール18のグリッパ20に保持されて容器保持部26から取り出され、回転搬送されてエア搬送コンベヤ22に排出される。容器保持手段14は、容器排出位置Bから容器供給位置Aまでの間は、上側の容器保持部26だけが容器4を保持した状態で移動し、容器供給位置Aで、供給グリッパホイール6のグリッパ8から下側の容器保持部26に容器4が引き渡される。このように1つの容器4が、電子線殺菌装置10の回転体12の回転によって電子線照射位置Eと反転区間を2回通過して搬送され、容器保持手段14の下側の容器保持部26に保持されて正立した状態と、上側の容器保持部26に保持されて倒立した状態での2回に渡り電子線照射装置の照射ユニット24の前面を通過して電子線の照射を受けるようにしているので、1つの電子線照射装置24を配置するだけで、容器4を連続的に搬送する間にその外周面全体を完全に殺菌することができる。なお、前記電子線照射位置Eは、容器供給位置Aと反転開始位置Cとの間に設けてあるが、この位置に限るものではなく、反転区間の終了する位置Dから容器排出位置Bまでの直立移送区間に設定してもよい。
【実施例2】
【0028】
図6は第2の実施例に係る電子線殺菌装置の、電子線照射装置が配置されている電子線照射位置Eでの縦断面図であり、前記第1実施例の図3に対応する図である。この実施例では、容器保持手段の構成だけが第1実施例と異なっており、その他の構成は同一なので、異なる部分についてだけ説明し、その他の部分については同一の符号を用いて必要な部分だけ説明する。この実施例の容器保持手段114は、ロッド154の両端に中央部が固定された2枚の平行な支持板156の両端部に、バキュームテーブルから構成された容器保持部126、126が設けられている。
【0029】
これら両バキュームテーブル126、126は、それぞれの外側の面に、保持する容器4、4の底面の形状にほぼ一致するくぼみ126a、126aが形成され、さらに、このくぼみ126a、126aの中央部に、図示しないバキューム源に接続されたバキューム孔126b、126bが形成されている。この実施例では、容器4を搬送する容器供給手段(搬送コンベヤ)は、容器4を乗せて立てた状態で搬送するトップチェーンコンベヤであり、スターホイールを介して電子線殺菌装置10内に供給する。搬送コンベヤおよびスターホイールの容器搬送面が、前記容器保持手段114の上側に位置する容器保持部であるバキュームテーブル126の上面にほぼ一致しており、上側のバキュームテーブル126に対して容器4の供給および排出を行う。
【0030】
前記搬送コンベヤによって搬送されてきた容器4は、供給スターホイールを介して、電子線殺菌装置10に設けられている容器保持手段114の上側のバキュームテーブル126に引き渡される。バキュームテーブル126a上に乗せられた容器4は、バキューム孔126bから吸引されて保持される。上側のバキュームテーブル126に容器4を保持した状態で容器保持手段114が電子線照射装置の照射ユニット24の前面側の電子線照射位置Eに到達すると、容器4は回転体12の半径方向外方側から電子線を照射されて、外面のほぼ半分が殺菌される。図6の上側のバキュームテーブル126に保持されている容器4のハッチングを入れた部分が電子線を照射されて殺菌された部分である。
【0031】
容器保持手段114が回転体12の回転に伴って回転移動し、反転区間C〜Dにはいると、前記第1実施例と同様に反転される。この実施例では、外部から供給された容器4は上側のバキュームテーブル126に保持されるので、反転すると下側のバキュームテーブル126に底面を吸着されて倒立した状態で搬送される。
【0032】
反転区間C〜Dをすぎて、そのまま排出位置Bを通過し、供給位置Aに到達すると、次の容器4が、上側に位置しているバキュームテーブル126に供給される。その後、容器保持手段114が電子線照射装置の照射ユニット24の前面側の電子線照射位置Eに到達すると、上下のバキュームテーブル126、126にそれぞれ保持されている容器4の照射ユニット24側の面に電子線が照射されて殺菌される。下側のバキュームテーブル126に保持されている容器4は2回目の照射であり、上側のバキュームテーブル126に保持されている容器4は1回目の電子線照射を受ける(図6の上下二つの容器4のハッチングを入れた部分が電子線を照射された部分である)。この第2実施例の場合も、前記第1実施例と同様に、容器4を回転体12の接線方向の軸線(ロッド154の中心軸線)を中心に反転させて、上下の位置で2回電子線照射装置24からの電子線照射を行うことによって、容器4を連続的に搬送する間にその外周面全体を殺菌することができる。
【実施例3】
【0033】
前記各実施例に係る電子線殺菌装置10では、回転体12の周囲に円周方向等間隔で容器保持手段14、114を設け、回転体12の回転によって容器保持手段14、114に保持された容器4を回転搬送し、容器4の反転および電子線の照射を行ったが、容器4を保持する容器保持手段14、114を循環移送する移送手段は、回転体12の周囲を円形に回転させる場合に限るものではなく、所定の経路を循環移送するものであれば適用可能である。第7図は、第3の実施例に係る電子線殺菌装置210の全体の構成を示す平面図であり、上流側の円形スプロケット270と下流側の円形スプロケット272との間に掛け回したチェーン274に、等間隔で複数の容器保持手段(図示を省略)を設け、これら各容器保持手段に2本の容器を縦方向に並べて保持させ、両スプロケット270、272の周囲を循環移送する間に上下を反転させるようにしている。
【0034】
電子線照射装置224は、容器を搬送する経路の直線搬送部に設けられており、この電子線照射装置224の設けられている電子線照射位置Eは、容器保持手段が2つの容器を鉛直方向に並べた状態で保持して移送される直立移送区間になっている。そして、この電子線照射位置E以外のいずれかの位置に、容器保持手段を反転させる反転区間が設けられている。反転区間を設ける位置は、両スプロケット270、272間の直線搬送部でもよく、スプロケット270、272の周囲を回転移送する区間でも良い。各スプロケット270、272間の直線搬送部に反転区間を設けた場合には、容器保持手段をチェーンの進行方向と平行な軸線を中心に回転させる。また、各スプロケット270、272の周囲を回転移送する区間に反転手段を設けた場合には、第1実施例と同様に、容器保持手段をスプロケット(回転体)270、272の接線方向の軸線を中心に回転させる。この回転体の接線方向の軸線は、進行方向と平行な軸線に含まれるものである。また、2本の容器の上下を反転させる反転手段は、前記第1実施例の構成と同様にガイドレールと容器保持手段に設けた係合部材とにより構成してもよく、その他の構成でも良い。
【0035】
この実施例では、容器搬送コンベヤ202によって搬送されてきた容器がインフィードスクリュー276によって所定の間隔に切り離されて供給ホイール206に受け渡され、さらに、電子線殺菌装置210に供給される。電子線殺菌装置210の容器保持手段は、上下2つの容器保持部にそれぞれ容器を保持して搬送するようになっており、電子線照射位置Eを通過する際には、直立した状態で、下方に位置する場合と上方に位置する場合の2回にわたって電子線の照射を受ける。容器保持部に保持されて、循環経路をほぼ2回搬送され、その間に2回の電子線照射を受けた容器は、排出ホイール218に引き渡されて電子線殺菌装置210から排出され、搬送コンベヤ222によって次の工程に送られる。この実施例でも、前記各実施例と同様に、1箇所の電子線照射装置224によって容器の全周を殺菌することができるので、装置の構成を簡素化することができる。
【実施例4】
【0036】
図8は第4の実施例に係る電子線殺菌装置310の構成を簡略化して示す図であり、この実施例も、容器を保持する容器保持手段の移送経路が前記各実施例と異なっているが、その他の構成は前記各実施例と同様であるのでその説明は省略する。この実施例では、供給ホイール306と排出ホイール318に対向する大径のスプロケット380と、2つの小径スプロケット382、384間にチェーン386が掛け回されており、容器保持手段の2つの容器保持部に保持された容器は、これら3個のスプロケット380、382、384の周囲を循環搬送される。
【0037】
二つの小径スプロケット382、384間の、容器を直線的に搬送する区間に電子線照射装置324が配置されている。この電子線照射装置324によって容器に電子線を照射する電子線照射位置Eは、容器保持手段が保持している二つの容器が鉛直状態で上下に並んでいる直立移送区間に設置されており、この電子線照射位置E以外に容器保持手段を上下反転させる反転区間が設けられている。この反転区間は、前記第3実施例と同様に、各スプロケット380、382、384間の容器を直線的に搬送する直線搬送部に設けてもよく、また、スプロケット380、382、384の周囲を回って容器を回転搬送する区間に設けてもよい。さらに、直線搬送部と回転搬送する区間にまたがって設けてもよい。この実施例でも、前記各実施例と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】電子線殺菌装置の配置を示す平面図である。(実施例1)
【図2】前記電子線殺菌装置に設けられた容器保持手段を示す斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図1のV−V線に沿う断面図である。
【図6】電子線殺菌装置の要部の縦断面図である。(実施例2)
【図7】電子線殺菌装置の全体の構成を簡略化して示す平面図である。(実施例3)
【図8】電子線殺菌装置の全体の構成を簡略化して示す平面図である。(実施例4)
【符号の説明】
【0039】
A 容器供給位置
B 容器排出位置
C〜D 反転区間
A〜C 直立移送区間
D〜B 直立移送区間
4 容器
10 電子線殺菌装置
12 移送手段(回転体)
14 容器保持手段
16 反転手段
24 電子線照射装置
26 容器保持部
54 係合部材
62 ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される容器に電子線を照射して殺菌する電子線殺菌装置において、
一対の保持部によって2つの容器を縦方向に並べて保持する容器保持手段と、複数の容器保持手段が等間隔で設けられ、これら容器保持手段を循環移送する移送手段と、前記容器保持手段を前記移送手段の進行方向と平行な軸線を中心に回転させることにより反転させる反転手段と、前記容器保持手段によって上下縦方向に保持された2つの容器の上下端に渡って電子線を照射可能な電子線照射装置とを備え、
前記移送手段の移送経路における容器供給位置から容器排出位置までの間に、前記反転手段によって容器保持手段を反転させる反転区間と、容器を上下縦方向に並べて直立した姿勢で移送する直立移送区間とを設け、前記電子線照射装置による電子線照射位置をこの直立移送区間に設定し、
容器供給位置で供給された容器が電子線照射位置と反転区間を2回通過した後、容器排出位置で排出されることを特徴とする電子線殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−29709(P2007−29709A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130511(P2006−130511)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】