電子装置とそれに用いるサーマルコネクタ
【課題】ブレードサーバ等、CPUに固定された第一の冷却手段が筐体に固定された第二の冷却手段との間で熱の授受と着脱が可能な電子装置を提供する。
【解決手段】ブレード内部で発生した熱をブレード外に取り出す第一の冷却手段61と、筐体に固定され、第一の冷却手段から伝達される熱を筐体外部に排出するための第二の冷却手段を備え、第二の冷却手段の吸熱部612は、第一の冷却手段の放熱部を内包可能な細長い筒状の穴を備え、更に、第一の冷却手段の放熱部を第二の冷却手段の吸熱部に挿入した時、第一の冷却手段の放熱部と第二の冷却手段の吸熱部との間に形成される細長いパイプ状の間隙と連通する媒体貯留部6321と、媒体貯留部に貯留された熱伝導媒体と、媒体貯留部に貯留された熱伝導媒体を加圧し、間隙に熱伝導媒体を供給する加圧手段とを備える。
【解決手段】ブレード内部で発生した熱をブレード外に取り出す第一の冷却手段61と、筐体に固定され、第一の冷却手段から伝達される熱を筐体外部に排出するための第二の冷却手段を備え、第二の冷却手段の吸熱部612は、第一の冷却手段の放熱部を内包可能な細長い筒状の穴を備え、更に、第一の冷却手段の放熱部を第二の冷却手段の吸熱部に挿入した時、第一の冷却手段の放熱部と第二の冷却手段の吸熱部との間に形成される細長いパイプ状の間隙と連通する媒体貯留部6321と、媒体貯留部に貯留された熱伝導媒体と、媒体貯留部に貯留された熱伝導媒体を加圧し、間隙に熱伝導媒体を供給する加圧手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近年、急速に、その普及が進んでいるブレードサーバ等に代表される電子装置に関し、特に、かかる電子装置に用いるに適したサーマルコネクタとそれを用いた電子装置に関する。
【0002】
なお、ここで、ブレードサーバは、CPU(Central Processoing Unit)、メモリ、ハードディスクなどの装置を実装したブレードが、電源ユニット、ファンユニット、マネージメントモジュール等を搭載したラックに搭載される形で提供される。本発明は、特に、CPUの熱をブレードの外に取り出すヒートパイプと、ヒートパイプで取り出した熱をさらにラック外へ排出する放熱装置の間の熱接続器(サーマルコネクタ)に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、急速にその需要が高まりつつあるブレードサーバにおいては、更なる情報処理能力の向上と、省スペース化が求められている。なお、情報処理能力は、CPU単体の性能の上昇に伴い、年々、飛躍的に向上している。また、1枚のブレードに搭載するCPUの数を増やすことにより、1枚のブレードあたりの情報処理能力の向上も図られている。加えて、ブレードの厚さを薄くすることにより、ラック1台あたりの搭載できるブレードの数を増加させている。このようなCPUの高性能化に伴う発熱量の増加と、ブレードの薄型化によって、ブレードサーバの発熱密度も飛躍的に上昇しており、そのため、かかるサーバの冷却効率の向上が強く望まれている。
【0004】
また、ブレードサーバは、冗長設計と稼動時保守によって、高い信頼性を実現している。冗長設計とは、ブレードサーバの構成を、同じ機能を担う装置を本来必要な数より多く搭載し、故障した装置があっても同じ機能を担う他の装置がカバーできるように設計することである。また、稼動時保守とは、ブレードサーバ内の装置が故障した場合の保守作業を、ブレードサーバの電源を落とさずに行うことにより、サーバの稼動効率を低下しないようにすることである。稼動時保守の実現のために、ブレードサーバの稼動中に、ブレード、又は、電源ユニット、ファンユニット等のそれぞれのユニットが、ラックから着脱可能であることが必要とされる。これは、活線挿抜と呼ばれ、ブレードサーバの特徴でもある。そのため、ブレードに搭載される冷却装置も、同様に、着脱可能であることが必要となる。
【0005】
ここで、ブレードサーバの代表的な構成を説明する。ブレードサーバは、ラックの中に、何台かのシャーシを搭載する。シャーシには、ブレード、電源ユニット、ファンユニット、マネージメントモジュール、通信用モジュールが、それぞれ複数台搭載されている。ブレード、ファンユニット、通信用モジュールは、それぞれバックプレーンを介してマネージメントモジュールと接続されている。ブレードには、CPU、メモリ、チップセット、ハードディスクなどの電子部品が搭載されている。
【0006】
現在、主流である冷却方法は、シャーシに搭載されたファンユニットによりブレード内に空気を流し、各電子部品を冷却する方法である。電子部品の中でも、発熱量の大きなCPUには銅やアルミニウムなどの熱伝導性の高い材料で作られたヒートシンクが取り付けられている。CPUに取り付けられたヒートシンクは、CPUの発熱量の増加に伴って年々大型化してきており、また、ヒートパイプを内蔵するなどといった高性能化も図られてきている。
【0007】
しかしながら、CPUの発熱量の飛躍的な増加と、ブレード薄型化の中にあっては、CPUにヒートシンクを取り付けてブレード内で空気冷却するのは限界になりつつある。
【0008】
そこで、液循環型熱輸送デバイスや、相変化型熱輸送デバイスを用いて、CPUの発熱をブレード外部まで輸送して放熱する冷却システムが考えられる。この冷却システムによれば、ブレード外部の放熱手段として大型のラジエータやチラーが適用できるために、CPUの高い発熱量に対応可能である。一方、この冷却システムにおいては、活線挿抜の実現が課題となる。その解決手段として、ブレード内の熱輸送デバイスとブレード外の熱輸送デバイスを、カプラを使用して接続する方法がある。しかしながら、この方法では、ブレード内の熱輸送デバイスとブレード外熱輸送デバイスの間を、カプラを介して冷媒液が行き来するため、液漏れの危険性がある。
【0009】
液漏れを起こさないためには、ブレード内とブレード外の熱輸送デバイスが完全に閉じていることが望ましい。その場合、ブレード内の熱輸送デバイスと、ブレード外の熱輸送デバイスを、熱抵抗が小さい状態で接続するための熱コネクタが必要である。
【0010】
以下に、熱コネクタに関する公知技術を挙げる。即ち、以下の特許文献1には、冷却に熱コネクタを用いた付属装置と電子装置が開示されている。また、電子装置や産業機械等に使用され、着脱自在で熱を伝えるコネクタが、以下の特許文献2に開示されている。さらに、熱抵抗を増加させることなくヒートパイプと被冷却部材とを着脱可能に接続することができるヒートパイプサーマルコネクタが以下の特許文献3に開示されている。そして、以下の特許文献4には、発熱素子を冷却するためのフィンと外部への放熱手段に固定されたフィンとを接触させると同時に、接触面に熱伝導媒体を介在させる構造が開示されている。
【0011】
【特許文献1】特開2000−13064号公報
【特許文献2】特開2001−91174号公報
【特許文献3】特開2000−356484号公報
【特許文献4】特開平8−116005号公報(特許第3395409号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1に記載されている付属装置の冷却方法は、付属装置内での発熱を、熱コネクタを介して電子装置に輸送し、放熱する方法である。しかし、熱コネクタの具体的な構成については開示されていない。
【0013】
上記特許文献2に記載されている熱伝達コネクタは、凹状断面形状の受容部を有する第一のコネクタ部材と、凸状断面形状の挿入部を持つ第二のコネクタ部材と、第一のコネクタ部材と第二のコネクタ部材の間に介在して熱を伝える櫛歯状コンタクトから構成される。両コネクタ部材と櫛歯状コンタクトはそれぞれ熱伝導性の良好な金属材料からなる。両コネクタ部材を接続すると、櫛歯状コンタクトは第一のコネクタ部材の受容部にならって弾性変形し、固体同士が接触することによって熱を伝える。
【0014】
しかしながら、固体面同士の接触によって熱を伝える方式であるため、接触する面の加工精度(テーパ面の表面粗さ、うねり等)の影響により熱抵抗を低減することが困難な場合がある。
【0015】
上記特許文献3に記載されているヒートパイプサーマルコネクタは、ヒートパイプを半円筒状の収容部に挿入し、押さえつけることにより、ヒートパイプと収容部が接触しており、もって、熱を伝える。
【0016】
しかし、ヒートパイプを収容部に軸方向に挿入する方式であるため、ヒートパイプと収容部が密着する構造にすることが困難であり、熱伝達に有効な接触する面積が小さくなり、熱抵抗を低減することは困難であった。
【0017】
また、固体面同士の接触によって熱を伝える熱コネクタの熱伝達性を向上させる方法として、接触面間にグリスやオイル等の熱伝導媒体を介在させることがある。しかしながら、グリスやオイル等の熱伝導媒体を長期にわたって開放空間で使用すると、熱伝導媒体内の揮発成分が外気に拡散して劣化するという課題があった。
【0018】
上記特許文献4では、櫛歯型の接触熱伝達子間の熱伝達性を向上させるためにオイルを充填し、さらにオイル充填空間を密閉することによりオイルの劣化を防止する構造となっている。ただし、特許文献4において開示されている従来技術では、装置を停止し、オイルを取り除いたうえで密閉装置を分解しないと半導体モジュールを交換できないため、サーバ全体を運転したまま、一部のブレードのみ抜き挿しして交換できない。すなわち、ブレードサーバの特徴である活線挿抜が困難となる。
【0019】
要約すると、ブレードサーバのような、活線挿抜が必要とされる電子装置においては、グリスのような熱伝導媒体を介在させた熱コネクタを用いる場合、グリスの劣化対策と、活線挿抜の両立が課題となる
【0020】
本発明は、このような従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、放熱部と吸熱部が着脱自在で、設計仕様より導かれる所定の熱抵抗より小さい状態で放熱部と吸熱部を接続するサーマルコネクタ、および、CPUブレードをサーバフレームに繰り返し着脱を行ってもサーマルコネクタを用いた冷却装置の特性が劣化することのない電子装置とそれに用いるに適したサーマルコネクタの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するために、本発明では、筐体内部に複数のブレードを収納した電子装置であって、前記筐体の少なくとも一方の側面から着脱自在であり、さらに内部に少なくともCPU、メモリ、チップセット等の電子部品を搭載したブレードと、前記ブレード内部で発生した熱をブレード外に取り出す第一の冷却手段と、前記筐体に固定され、前記第一の冷却手段から伝達される熱を前記筐体外部に排出するための第二の冷却手段とを備え、前記第一の冷却手段の放熱部は細長い柱状であり、柱の長手方向が前記ブレードの着脱方向と概略平行となるように前記ブレードに固定されており、前記第二の冷却手段の吸熱部は、前記第一の冷却手段の放熱部を内包できる細長い筒状の穴を備え、前記第一の冷却手段の放熱部を前記第二の冷却手段の吸熱部に挿入したときに前記第一の冷却手段の放熱部と前記第二の冷却手段の吸熱部の間にできる細長いパイプ状の間隙と連通する媒体貯留部と、前記媒体貯留部に貯留された熱伝導媒体と、前記媒体貯留部に貯留された前記熱伝導媒体を加圧し、前記間隙に前記熱伝導媒体を供給する加圧手段とを備え、前記第一の冷却手段の放熱部と前記第二の冷却手段の吸熱部が着脱可能な接続部(サーマルコネクタ)を用いる構成とした。
【0022】
また、本発明のサーマルコネクタは、前記熱伝導媒体が外気と触れない密閉構造とするシール部材を備え、前記第一の冷却手段の放熱部を前記第二の冷却手段の吸熱部から分離する際に前記熱伝導媒体を、前記媒体貯留部へ戻すためのキャップを備えた。
【0023】
このため、前記第一の冷却手段の放熱部と前記第二の冷却手段の吸熱部の間の熱抵抗を設計仕様より導かれる所定の値より小さくでき、また、前記熱伝導媒体内の揮発性成分が外気に放散して劣化することを抑制でき、さらに、前記第一の冷却手段の放熱部と前記第二の冷却手段の吸熱部の着脱が繰返しできるようになった。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、第一の冷却手段の放熱部と第二の冷却手段の吸熱部の間隙に熱伝導媒体を加圧して流入させる加圧手段を設け、前記第一の冷却手段の放熱部と前記第二の冷却手段の吸熱部の間の熱抵抗を設計仕様より導かれる所定の値より小さくできる。
【0025】
また、媒体貯留部と前記間隙を気密に保つシール部材を設けたことにより前記熱伝導媒体の劣化を抑制できる。
【0026】
さらに、前記第一の冷却手段の放熱部が前記第二の冷却手段の吸熱部から抜き取られるときに、前記間隙内の前記熱伝導媒体を前記媒体貯留部へ掻き戻す構造を設けたため、前記第一の冷却手段の放熱部を前記第二の冷却手段の吸熱部に挿入し、前記間隙に前記熱伝導媒体を充填することを繰返し行うことが可能である。
【0027】
このため、ブレードサーバのような筐体との着脱が容易な電子装置の、ブレードに搭載されたCPUに装着された第一の冷却手段が着脱自在で、かつ、第一の冷却手段から、筐体に固定された第二の冷却手段にCPUからの熱を伝達可能なサーマルコネクタ、および、これを用いる高性能で信頼性の高い電子装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を用いて詳細に説明する。
【0029】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1である、ブレードサーバ等を搭載するラックマウント方式の電子装置の構成を示す概念斜視図である。この図1は、説明を理解し易くするために電子装置の一部を透視して示している。なお、図1に示すように、ラックマウントキャビネット1は、筐体2および、蓋体3を含み、IEC(International Electrical Commission)規格/EIA(The Electrical Industries Association)規格等の特定の規格に基づく形状で形成された複数の棚4を有している。複数の棚4には、個々の機能を持ったブレードサーバ5を選択して自由な配置で搭載でき、これにより、システム構成の柔軟性と拡張性とを併せ持つことを可能としている。
【0030】
図2は、本発明におけるブレードサーバ5の構成の概略を示す斜視図である。この図2において、ブレードサーバ5は、サーバフレーム51内に、CPU52を搭載した複数のCPUブレード53、複数のCPUブレード53を接続するバックプレーン54、並びに、この図2には示していないが、電源モジュール、スイッチモジュール、マネージメントモジュール等を搭載している。
【0031】
CPUブレード53は、ブレードサーバ5の運用時において、保守等のために、サーバフレーム51に対し、それぞれ図の矢印に示す方向へ、挿入71/抜き取り72される場合がある。なお、ブレードサーバ5が稼動時であっても、ブレードサーバ5に搭載されたCPUブレード53のうち、任意のものが着脱可能(活線挿抜)であることは、ブレードサーバ5の重要な特徴である。
【0032】
電子装置の高性能化及び高機能化に伴って、上記図1のラックマウントキャビネット1に搭載される個々のブレードサーバ5も多数となる状況に対応して、ブレードサーバ5が搭載されるラックマウントキャビネット1における棚4の数量の増大を図るためにも、上記ラックマウントキャビネット1に搭載される個々のブレードサーバ5の小形化、及び、冷却装置の省スペース化が強く望まれている。一方、電子装置に搭載されるCPU52等の半導体デバイスは、その高性能化に伴って、発熱量も増大している。さらに、作業内容によって発熱量も大きく変動するという状況下にあっては、効率の良い冷却手法の実現が強く要求されている。
【0033】
上述した特徴を持つと共に、上述した種々の要求が求められるブレードサーバ53に対応し、かかる要求を満たすための本発明になる冷却装置6について、添付の図3の概要図を用いながら、以下に説明する。
【0034】
この図3からも明らかなように、冷却装置6は、第一の冷却装置(以下、では「手段」という)61、第二の冷却手段62、及び、サーマルコネクタ63により構成される。
【0035】
第一の冷却手段61は、その吸熱部611がCPU52に対し、設計仕様により導かれる所定の熱抵抗より小さい状態で、接続されており、当該CPU52の発熱をCPUブレード53の後方、すなわち、図3の右方向へ輸送する。第一の冷却手段61はCPUブレード53内に搭載されており、CPUブレード53と一体化されて着脱される。CPUブレード53をサーバフレーム51に装着した状態において、第一の冷却手段61の放熱部612は、CPUブレード53からバックプレーン54を突き抜けた位置に配置される。
【0036】
なお、第一の冷却手段61の内部には冷媒液が封入されており、相変化を利用して効率的に熱を輸送する。又は、第一の冷却手段61内に封入された冷媒液を循環させて、効率的に熱を輸送する。
【0037】
第二の冷却手段62は、第一の冷却手段61からサーマルコネクタ63を介して吸熱し、最終的にサーバフレーム51外へ放熱する。第二の冷却手段62の吸熱部621はサーバフレーム51内に搭載されており、第一の冷却手段61の放熱部612とサーマルコネクタ63を介して、熱抵抗が設計仕様より導かれる所定の値より小さい状態で接続している。
【0038】
第二の冷却手段62の内部には冷媒液が封入されており、冷媒液を循環させることによって、第二の冷却手段62の吸熱部621から第二の冷却手段62の放熱部622へ熱を輸送する。又は、第二の冷却手段62は、内部に封入された冷媒液の相変化を利用して熱を輸送してもよい。
【0039】
第二の冷却手段62の放熱部622は、空気との熱交換を行うラジエータであり、サーバフレーム51の後方に設置されている。これに代えて、図示していないが、第二の冷却手段62の放熱部622はサーバフレーム51の外で放熱する第三の冷却手段の吸熱部に放熱するものでもよい。また、同じく図示していないが、第二の冷却手段62の放熱部622はサーバフレーム51の外に設置されており、ラジエータまたはチラーユニット等で放熱するものでもよい。
【0040】
上記第一の冷却手段61及び第二の冷却手段62は、それぞれ、冷媒液を内包するが、それぞれが閉じた系であるために液漏れ等の危険性はない。
【0041】
本明細書において、サーマルコネクタ63は、第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621を熱抵抗が設計仕様より導かれる所定の値より小さい状態で接続し、かつ、第一の冷却手段61の放熱部612を第二の冷却手段62の吸熱部621から着脱可能にする構造である。
【0042】
次に、本実施例におけるサーマルコネクタ63の詳細な構造について、図4〜図9を用いて説明する。
【0043】
図4は、CPUブレード53がサーバフレーム51に挿入されていない状態でのサーマルコネクタ63周りの断面図である。
【0044】
サーマルコネクタ63は、熱伝導媒体631、ソケット632、ピストン633、キャップ634より構成される。また、CPUブレード53側に搭載された第一の冷却手段61には、バネ635が固定されている。
【0045】
熱伝導媒体631は、CPUブレード53の稼動時に第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621との間に介在し、熱抵抗が設計仕様より導かれる所定の値より小さい状態で接触させるものである。熱伝導媒体631は、たとえば熱伝導グリス、熱伝導コンパウンド、オイル等である。ソケット632の一部は、図3に示す第二の冷却手段62の吸熱部を構成する。
【0046】
図4に示すとおり、CPUブレード53がサーバフレーム51に挿入されていない状態においては、熱伝導媒体631の大部分は媒体貯留部6321に貯留されている。媒体貯留部6321は、ソケット632、ピストン633、及び、キャップ634で仕切られている。
【0047】
この媒体貯留部6321の3箇所の封止部について説明する。キャップ634には、ソケット632とキャップ634の間を封止するため、少なくとも一つのシール部材6341(例えばOリング)が取り付けられている。また、ピストン633には、ピストン633とキャップ634の間を封止するために少なくとも一つのシール部材6331(例えばOリング)が取り付けられている。さらに、ピストン633には、ソケット632とピストン633の間を封止するために、少なくとも一つのシール部材6332(例えばOリング)が取り付けられている。従って、上述したシール部材6341、6331及び6332によって、媒体貯留部6321で熱伝導媒体631は気密封止される。
【0048】
熱伝導媒体631は、長期間外気に触れていると、含有する揮発性成分が大気に放散し、熱伝導性能の低下や、固着などの劣化をおこす恐れがある。本発明のサーマルコネクタ構造においては、媒体貯留部6321が気密封止されているために、熱伝導媒体631が劣化しにくいという特徴がある。
【0049】
次に、CPUブレード53がサーバフレーム51に挿入される過程でのサーマルコネクタ63の動作を説明する。
【0050】
図5は、CPUブレード53がサーバフレーム51に完全に挿入されている状態でのサーマルコネクタ63周りの断面図である。
【0051】
CPUブレード53がサーバフレーム51に挿入される過程は、図4から図5の状態へ変化する過程である。
【0052】
バネ635の一端6351は、図4のように第一の冷却手段61に接している。又は、図示していないが、バネ635の一端6351はCPUブレード53に接していてもよい。CPUブレード53をサーバフレーム51に挿入していくと、バネ635の前記一端6351は、CPUブレード53の挿入と同期して挿入方向71へ移動する。CPUブレード53をサーバフレーム51に挿入していくと、バネ635の一端6352は、ピストン633と接触し、挿入方向71へピストン633を押す。これにより、ピストン633は媒体貯留部6321内の熱伝導媒体631を加圧する。
【0053】
この時の媒体貯留部周辺6322の拡大図を、添付の図6に示す。ピストン633によって加圧された媒体貯留部6321内の熱伝導媒体631は、第一の冷却手段61の放熱部612とソケット632の間隙636内に流入する。この時、ピストン633に設けたシール部材6331及び6332により、熱伝導媒体631が抜き取り方向72へ抜け出るのを防げる。また、この過程で、媒体貯留部6321の容積は減少する。
【0054】
次に、図5に示すCPUブレード53がサーバフレーム51に完全に挿入された状態について説明する。
【0055】
この時、間隙636に流入した熱伝導媒体6311によって第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621は熱抵抗が設計仕様より導かれる所定の値より小さい状態で接続される。また、間隙636に流入した熱伝導媒体6311は、シール部材6341、6331及び6332によって気密封止される。これにより、CPUブレード53が稼動している際も、熱伝導媒体6311の劣化を抑えることができる。
【0056】
一方、熱伝導媒体6311には、何等かの原因で気体が混入することが考えられる。混入した気体は、第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621の間の熱の伝達を阻害する。ここで、媒体貯留部6321と間隙636内の熱伝導媒体6311は、バネ635により加圧されている。これにより、熱伝導媒体6311内に混入した気体は圧縮され、混入した気体の体積又はその外周面積を縮小し、もって、熱伝達の低下を抑制する。
【0057】
続いて、CPUブレード53をサーバフレーム51から抜き取る過程、即ち、図5から図4へ変化する際のサーマルコネクタ63の動作について説明する。
【0058】
この時、第一の冷却手段61の放熱部612とキャップ634は、図7〜9を用いて詳細に説明する連結機構64によって連結されている。よって、CPUブレード53をサーバフレーム51から抜き取る時に、キャップ634は第一の冷却手段61の放熱部612に連なって抜き取り方向72へ移動する。この過程で、間隙636に介在する熱伝導媒体6311の大部分は、図4及び5に示すキャップ634のシール部材6341によって、抜き取り方向72へ掻き戻される。これにより、媒体貯留部6321の容積が増加しつつ、第一の冷却手段61の放熱部612は抜き取られていく。
【0059】
キャップ634が図4に示される位置まで移動したところで、連結機構64は分離し、キャップ634は図4に示される位置で停止する。第一の冷却手段61の放熱部612がソケット632から抜き取られる際、第一の冷却手段61の放熱部612の表面に付着した熱伝導媒体631は、シール部材6331によって払拭される。
【0060】
第一の冷却手段61の放熱部612が、ソケット632から完全に抜き取られると、媒体貯留部6321は、シール部材6341、6331及び6332によって気密封止される。サーマルコネクタ63は、上記図4に示した状態となる。これにより、上述した挿入・抜き取りの過程を繰返し行うことが可能となる。
【0061】
次に、図7〜9を用いて、本実施例における連結機構64を説明する。
図7は、第一の冷却手段61の放熱部612がキャップ634の先端に触れた直後で、かつ、キャップ634が初期位置から動いていない状態での断面図である。図8は、上記図7の状態から少し第一の冷却手段61の放熱部612を挿入し、連結機構64が連結し始めた状態における断面図である。図9は、上記図8の状態から、さらに第一の冷却手段61の放熱部612を挿入し、もって、連結機構64が完全に連結した状態での断面図である。
【0062】
図7に示すように、第一の冷却手段612がソケット632に挿入されていない状態では、連結部64は嵌合しておらず、キャップ634の連結部は第一の冷却手段61の放熱部の連結部613内に挿入が可能である。
【0063】
キャップ634が挿入方向71へ動く際は、キャップ634に設けた途中まで直線状で途中から螺旋状となっている溝6342がソケット632に設けたピン6323にそって動くことにより、図8に示すように回転する。図9に示すようにキャップ634が完全に回転すると、第一の冷却手段61の放熱部612の先端に設けた連結部613とキャップ634の先端に設けた連結部6343が嵌合する。これにより、第一の冷却手段61の放熱部612とキャップ634が連結する。
【0064】
一方、キャップ634が抜き取り方向72へ動く際には、挿入過程と同様の仕組みで、挿入過程とは逆方向に回転することにより、第一の冷却手段61の放熱部612とキャップ634が分離する。
【0065】
本実施例によれば、図5の第一の冷却手段61の放熱部612とソケット632の間隙636に熱伝導媒体631を流入させるという構成にしたため、第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621の間の熱抵抗を設計仕様より導かれる所定の値より小さくできる。また、本実施例によれば、図5の媒体貯留部6321、および、間隙636がシール部材6331、6332、6341によって気密構造となるため、熱伝導媒体631の劣化を抑制できる。さらに、本実施例によれば、図5の第一の冷却手段61の放熱部612をソケット632から抜き取るとき、間隙636内の熱伝導媒体6311がキャップ634によって媒体貯留部6321に掻き戻されるため、第一の冷却手段61の放熱部612をソケット632に挿入し、その間隙636に熱伝導媒体631を充填することを繰返し行うことが可能である。
【0066】
<実施例2>
本発明のサーマルコネクタにおける連結機構に関する他の実施例を、図10を用いて説明する。
【0067】
本実施例においては、第一の冷却手段61、第二の冷却手段62、サーマルコネクタの構成は本発明の第一の実施例と同様であるが、連結機構を図2のサーバフレーム51の背面側、すなわち、図2における右側から工具を用いてキャップ634bに付属したボルト6344を回転させることにより、キャップ634bと第一の冷却手段61の放熱部612bを締結する構造とした点に違いがある。
【0068】
図2のCPUブレード53をサーバフレーム51から抜き取る前に、サーバフレーム51の背面側、すなわち、図10における右側から工具を用いて、キャップ634bに付属するボルト6344を第一の冷却手段61の放熱部612bのメネジ部614に締結することにより、第一の冷却手段61の放熱部612bとキャップ634bが連結する。なお、ソケット632cには、第一の冷却手段61の放熱部612bをソケット632cに挿入するときに、キャップ634bがソケット632cから飛び出さないように、ストッパ6324を設けている。
【0069】
また、抜き取り過程において、キャップ634bが図4に示す位置に移動したときに、ボルト6344をはずすことにより、第一の冷却手段61の放熱部612bとキャップ634bが分離する。
【0070】
本実施例では、図2のサーバフレーム51の背面側から工具を用いて、キャップ634bと第一の冷却手段61の放熱部612を締結する構造としたことにより、本発明の実施例1のサーマルコネクタにおける連結機構と比べて、簡素な構造にすることができるという特徴があり、電子装置製造における複雑な工程を改善することができる。一方、本発明の実施例1においては、図4の第一の冷却手段61の放熱部612をソケット632に挿入する際に、自動的に第一の冷却手段61の放熱部612とキャップ634が連結されるが、本実施例においては、第一の冷却手段61の放熱部612bをソケット632bに挿入するのとは別の作業で第一の冷却手段61の放熱部612bとキャップ634bを連結する必要があるという特徴がある。
【0071】
<実施例3>
本発明のサーマルコネクタに関する、さらに他の実施例を、図11を用いて説明する。本実施例は、サーマルコネクタの熱伝導媒体631の充填方法に関するものであり、第一の冷却手段61、第二の冷却手段62、熱伝導媒体充填機構以外のサーマルコネクタの構成は、上記の本発明の実施例1と同様である。
【0072】
本実施例では、媒体貯留部6321bをソケット632cとは独立した位置に設けることに特徴がある。
【0073】
図11に示すように、ソケット632cとは独立した位置に媒体貯留部6321bを設け、媒体流入孔623でソケット632cと連結する。媒体貯留部6321b内の熱伝導媒体631を加圧することにより、媒体流入孔623より間隙636へ熱伝導媒体631が流入する。熱伝導媒体631の加圧は、ロッド637によって行う。
【0074】
ロッド637は、図3のCPUブレード53に取り付けられることによって、CPUブレード53と連動して熱伝導媒体631を加圧する方向へ押されて移動し、熱伝導媒体631を加圧する。このとき、ロッド637は図示していないバネを介して図3のCPUブレード53に取り付けられていてもよい。
【0075】
あるいは、ロッド637はCPUブレード53とは異なる手段で熱伝導媒体631を加圧する方向へ押されて移動してもよい。このとき、媒体貯留部6321bは、ピストン633b側が図11の右側へ向いている状態で設置されていてもよい。
【0076】
本実施例においても、媒体貯留部6321bと間隙636は、シール部材6331b、6332b、および、6341bによって、実施例1と同様に気密構造となっている。
【0077】
これにより、図4〜6で説明した場合と同様に、図3の第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621の間の熱抵抗を設計仕様より導かれる所定の値より小さくできる。
【0078】
本実施例は、上記実施例1と比較して、媒体貯留部6321bの配置の自由度が高くなるという利点がある。
【0079】
また、上記実施例1では、図6に示した媒体貯留部6321の周辺6322は、部品点数が多く、複雑な構造となっているが、それと比較して本実施例の媒体貯留部6321bの周辺は、部品点数が少なく、簡素な構造となっている。
【0080】
一方、上記実施例1では、図5のピストン633は第一の冷却手段61によって押されるが、本実施例では、図11のピストン633bは第一の冷却手段61とは異なるロッド637によって押さなくてはならないという特徴がある。
【0081】
以上、本発明によれば、図3の第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621の間隙636に熱伝導媒体631を流入させるという構成にしたため、第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621の間の熱抵抗を設計仕様より導かれる所定の値より小さくできる。
また、本発明によれば、図5の媒体貯留部6321(実施例3においては6321b)と間隙636が、シール部材6331、6332、6341(実施例3においては6331b、6332b、6341)によって気密構造となるため、熱伝導媒体631の劣化の抑制が可能である。
【0082】
さらに、本実施例によれば、図5の第一の冷却手段61の放熱部612をソケット632から抜き取るとき、間隙636内の熱伝導媒体6311がキャップ634(実施例2においては634b)によって媒体貯留部6321(実施例3においては6321b)に掻き戻されるため、第一の冷却手段61の放熱部612をソケット632に挿入し、その間隙636に熱伝導媒体631を充填することを繰返し行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明におけるブレードサーバ等を搭載するラックマウント方式の電子装置の構成を示す概念斜視図である。
【図2】本発明におけるブレードサーバの構成の概略を示す構成斜視図である。
【図3】本発明における、CPUから発生する熱の伝達経路を示す概念断面図である。
【図4】本発明における、CPUブレードがサーバフレームに挿入されていない状態でのサーマルコネクタの詳細断面図である。
【図5】本発明における、CPUブレードがサーバフレームに完全に挿入されている状態でのサーマルコネクタの詳細断面図である。
【図6】本発明における、サーマルコネクタ内の熱伝導媒体の動きを示す断面図である。
【図7】本発明における、連結機構の一実施例を示す図である。
【図8】本発明における、連結機構の一実施例を示す図である。
【図9】本発明における、連結機構の一実施例を示す図である。
【図10】本発明における、連結機構の一実施例を示す図である。
【図11】本発明における、熱伝導媒体充填機構の一実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1…ラックマウントキャビネット、2…本体筐体、3…蓋体、4…棚、5…ブレードサーバ、6…冷却装置、51…サーバフレーム、52…CPU、53…CPUブレード、54…バックプレーン、61…第一の冷却手段、62…第二の冷却手段、63…サーマルコネクタ、64、64b…連結機構、71…挿入方向、72…抜き取り方向、611…吸熱部、612、612b…放熱部、613…連結部、614…メネジ部、621…吸熱部、622…放熱部、623…媒体流入孔、631…熱伝導媒体、632、632b、632c…ソケット、633…ピストン、634…キャップ、635…バネ、636…間隙、637…ロッド、6311…熱伝導媒体、6321、6321b…媒体貯留部、6323…ピン、6324…ストッパ、6331、6331b、6332、6332b…シール部材、6342…溝、6343…連結部、6344…ボルト。
【技術分野】
【0001】
本発明は、近年、急速に、その普及が進んでいるブレードサーバ等に代表される電子装置に関し、特に、かかる電子装置に用いるに適したサーマルコネクタとそれを用いた電子装置に関する。
【0002】
なお、ここで、ブレードサーバは、CPU(Central Processoing Unit)、メモリ、ハードディスクなどの装置を実装したブレードが、電源ユニット、ファンユニット、マネージメントモジュール等を搭載したラックに搭載される形で提供される。本発明は、特に、CPUの熱をブレードの外に取り出すヒートパイプと、ヒートパイプで取り出した熱をさらにラック外へ排出する放熱装置の間の熱接続器(サーマルコネクタ)に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、急速にその需要が高まりつつあるブレードサーバにおいては、更なる情報処理能力の向上と、省スペース化が求められている。なお、情報処理能力は、CPU単体の性能の上昇に伴い、年々、飛躍的に向上している。また、1枚のブレードに搭載するCPUの数を増やすことにより、1枚のブレードあたりの情報処理能力の向上も図られている。加えて、ブレードの厚さを薄くすることにより、ラック1台あたりの搭載できるブレードの数を増加させている。このようなCPUの高性能化に伴う発熱量の増加と、ブレードの薄型化によって、ブレードサーバの発熱密度も飛躍的に上昇しており、そのため、かかるサーバの冷却効率の向上が強く望まれている。
【0004】
また、ブレードサーバは、冗長設計と稼動時保守によって、高い信頼性を実現している。冗長設計とは、ブレードサーバの構成を、同じ機能を担う装置を本来必要な数より多く搭載し、故障した装置があっても同じ機能を担う他の装置がカバーできるように設計することである。また、稼動時保守とは、ブレードサーバ内の装置が故障した場合の保守作業を、ブレードサーバの電源を落とさずに行うことにより、サーバの稼動効率を低下しないようにすることである。稼動時保守の実現のために、ブレードサーバの稼動中に、ブレード、又は、電源ユニット、ファンユニット等のそれぞれのユニットが、ラックから着脱可能であることが必要とされる。これは、活線挿抜と呼ばれ、ブレードサーバの特徴でもある。そのため、ブレードに搭載される冷却装置も、同様に、着脱可能であることが必要となる。
【0005】
ここで、ブレードサーバの代表的な構成を説明する。ブレードサーバは、ラックの中に、何台かのシャーシを搭載する。シャーシには、ブレード、電源ユニット、ファンユニット、マネージメントモジュール、通信用モジュールが、それぞれ複数台搭載されている。ブレード、ファンユニット、通信用モジュールは、それぞれバックプレーンを介してマネージメントモジュールと接続されている。ブレードには、CPU、メモリ、チップセット、ハードディスクなどの電子部品が搭載されている。
【0006】
現在、主流である冷却方法は、シャーシに搭載されたファンユニットによりブレード内に空気を流し、各電子部品を冷却する方法である。電子部品の中でも、発熱量の大きなCPUには銅やアルミニウムなどの熱伝導性の高い材料で作られたヒートシンクが取り付けられている。CPUに取り付けられたヒートシンクは、CPUの発熱量の増加に伴って年々大型化してきており、また、ヒートパイプを内蔵するなどといった高性能化も図られてきている。
【0007】
しかしながら、CPUの発熱量の飛躍的な増加と、ブレード薄型化の中にあっては、CPUにヒートシンクを取り付けてブレード内で空気冷却するのは限界になりつつある。
【0008】
そこで、液循環型熱輸送デバイスや、相変化型熱輸送デバイスを用いて、CPUの発熱をブレード外部まで輸送して放熱する冷却システムが考えられる。この冷却システムによれば、ブレード外部の放熱手段として大型のラジエータやチラーが適用できるために、CPUの高い発熱量に対応可能である。一方、この冷却システムにおいては、活線挿抜の実現が課題となる。その解決手段として、ブレード内の熱輸送デバイスとブレード外の熱輸送デバイスを、カプラを使用して接続する方法がある。しかしながら、この方法では、ブレード内の熱輸送デバイスとブレード外熱輸送デバイスの間を、カプラを介して冷媒液が行き来するため、液漏れの危険性がある。
【0009】
液漏れを起こさないためには、ブレード内とブレード外の熱輸送デバイスが完全に閉じていることが望ましい。その場合、ブレード内の熱輸送デバイスと、ブレード外の熱輸送デバイスを、熱抵抗が小さい状態で接続するための熱コネクタが必要である。
【0010】
以下に、熱コネクタに関する公知技術を挙げる。即ち、以下の特許文献1には、冷却に熱コネクタを用いた付属装置と電子装置が開示されている。また、電子装置や産業機械等に使用され、着脱自在で熱を伝えるコネクタが、以下の特許文献2に開示されている。さらに、熱抵抗を増加させることなくヒートパイプと被冷却部材とを着脱可能に接続することができるヒートパイプサーマルコネクタが以下の特許文献3に開示されている。そして、以下の特許文献4には、発熱素子を冷却するためのフィンと外部への放熱手段に固定されたフィンとを接触させると同時に、接触面に熱伝導媒体を介在させる構造が開示されている。
【0011】
【特許文献1】特開2000−13064号公報
【特許文献2】特開2001−91174号公報
【特許文献3】特開2000−356484号公報
【特許文献4】特開平8−116005号公報(特許第3395409号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1に記載されている付属装置の冷却方法は、付属装置内での発熱を、熱コネクタを介して電子装置に輸送し、放熱する方法である。しかし、熱コネクタの具体的な構成については開示されていない。
【0013】
上記特許文献2に記載されている熱伝達コネクタは、凹状断面形状の受容部を有する第一のコネクタ部材と、凸状断面形状の挿入部を持つ第二のコネクタ部材と、第一のコネクタ部材と第二のコネクタ部材の間に介在して熱を伝える櫛歯状コンタクトから構成される。両コネクタ部材と櫛歯状コンタクトはそれぞれ熱伝導性の良好な金属材料からなる。両コネクタ部材を接続すると、櫛歯状コンタクトは第一のコネクタ部材の受容部にならって弾性変形し、固体同士が接触することによって熱を伝える。
【0014】
しかしながら、固体面同士の接触によって熱を伝える方式であるため、接触する面の加工精度(テーパ面の表面粗さ、うねり等)の影響により熱抵抗を低減することが困難な場合がある。
【0015】
上記特許文献3に記載されているヒートパイプサーマルコネクタは、ヒートパイプを半円筒状の収容部に挿入し、押さえつけることにより、ヒートパイプと収容部が接触しており、もって、熱を伝える。
【0016】
しかし、ヒートパイプを収容部に軸方向に挿入する方式であるため、ヒートパイプと収容部が密着する構造にすることが困難であり、熱伝達に有効な接触する面積が小さくなり、熱抵抗を低減することは困難であった。
【0017】
また、固体面同士の接触によって熱を伝える熱コネクタの熱伝達性を向上させる方法として、接触面間にグリスやオイル等の熱伝導媒体を介在させることがある。しかしながら、グリスやオイル等の熱伝導媒体を長期にわたって開放空間で使用すると、熱伝導媒体内の揮発成分が外気に拡散して劣化するという課題があった。
【0018】
上記特許文献4では、櫛歯型の接触熱伝達子間の熱伝達性を向上させるためにオイルを充填し、さらにオイル充填空間を密閉することによりオイルの劣化を防止する構造となっている。ただし、特許文献4において開示されている従来技術では、装置を停止し、オイルを取り除いたうえで密閉装置を分解しないと半導体モジュールを交換できないため、サーバ全体を運転したまま、一部のブレードのみ抜き挿しして交換できない。すなわち、ブレードサーバの特徴である活線挿抜が困難となる。
【0019】
要約すると、ブレードサーバのような、活線挿抜が必要とされる電子装置においては、グリスのような熱伝導媒体を介在させた熱コネクタを用いる場合、グリスの劣化対策と、活線挿抜の両立が課題となる
【0020】
本発明は、このような従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、放熱部と吸熱部が着脱自在で、設計仕様より導かれる所定の熱抵抗より小さい状態で放熱部と吸熱部を接続するサーマルコネクタ、および、CPUブレードをサーバフレームに繰り返し着脱を行ってもサーマルコネクタを用いた冷却装置の特性が劣化することのない電子装置とそれに用いるに適したサーマルコネクタの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するために、本発明では、筐体内部に複数のブレードを収納した電子装置であって、前記筐体の少なくとも一方の側面から着脱自在であり、さらに内部に少なくともCPU、メモリ、チップセット等の電子部品を搭載したブレードと、前記ブレード内部で発生した熱をブレード外に取り出す第一の冷却手段と、前記筐体に固定され、前記第一の冷却手段から伝達される熱を前記筐体外部に排出するための第二の冷却手段とを備え、前記第一の冷却手段の放熱部は細長い柱状であり、柱の長手方向が前記ブレードの着脱方向と概略平行となるように前記ブレードに固定されており、前記第二の冷却手段の吸熱部は、前記第一の冷却手段の放熱部を内包できる細長い筒状の穴を備え、前記第一の冷却手段の放熱部を前記第二の冷却手段の吸熱部に挿入したときに前記第一の冷却手段の放熱部と前記第二の冷却手段の吸熱部の間にできる細長いパイプ状の間隙と連通する媒体貯留部と、前記媒体貯留部に貯留された熱伝導媒体と、前記媒体貯留部に貯留された前記熱伝導媒体を加圧し、前記間隙に前記熱伝導媒体を供給する加圧手段とを備え、前記第一の冷却手段の放熱部と前記第二の冷却手段の吸熱部が着脱可能な接続部(サーマルコネクタ)を用いる構成とした。
【0022】
また、本発明のサーマルコネクタは、前記熱伝導媒体が外気と触れない密閉構造とするシール部材を備え、前記第一の冷却手段の放熱部を前記第二の冷却手段の吸熱部から分離する際に前記熱伝導媒体を、前記媒体貯留部へ戻すためのキャップを備えた。
【0023】
このため、前記第一の冷却手段の放熱部と前記第二の冷却手段の吸熱部の間の熱抵抗を設計仕様より導かれる所定の値より小さくでき、また、前記熱伝導媒体内の揮発性成分が外気に放散して劣化することを抑制でき、さらに、前記第一の冷却手段の放熱部と前記第二の冷却手段の吸熱部の着脱が繰返しできるようになった。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、第一の冷却手段の放熱部と第二の冷却手段の吸熱部の間隙に熱伝導媒体を加圧して流入させる加圧手段を設け、前記第一の冷却手段の放熱部と前記第二の冷却手段の吸熱部の間の熱抵抗を設計仕様より導かれる所定の値より小さくできる。
【0025】
また、媒体貯留部と前記間隙を気密に保つシール部材を設けたことにより前記熱伝導媒体の劣化を抑制できる。
【0026】
さらに、前記第一の冷却手段の放熱部が前記第二の冷却手段の吸熱部から抜き取られるときに、前記間隙内の前記熱伝導媒体を前記媒体貯留部へ掻き戻す構造を設けたため、前記第一の冷却手段の放熱部を前記第二の冷却手段の吸熱部に挿入し、前記間隙に前記熱伝導媒体を充填することを繰返し行うことが可能である。
【0027】
このため、ブレードサーバのような筐体との着脱が容易な電子装置の、ブレードに搭載されたCPUに装着された第一の冷却手段が着脱自在で、かつ、第一の冷却手段から、筐体に固定された第二の冷却手段にCPUからの熱を伝達可能なサーマルコネクタ、および、これを用いる高性能で信頼性の高い電子装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を用いて詳細に説明する。
【0029】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1である、ブレードサーバ等を搭載するラックマウント方式の電子装置の構成を示す概念斜視図である。この図1は、説明を理解し易くするために電子装置の一部を透視して示している。なお、図1に示すように、ラックマウントキャビネット1は、筐体2および、蓋体3を含み、IEC(International Electrical Commission)規格/EIA(The Electrical Industries Association)規格等の特定の規格に基づく形状で形成された複数の棚4を有している。複数の棚4には、個々の機能を持ったブレードサーバ5を選択して自由な配置で搭載でき、これにより、システム構成の柔軟性と拡張性とを併せ持つことを可能としている。
【0030】
図2は、本発明におけるブレードサーバ5の構成の概略を示す斜視図である。この図2において、ブレードサーバ5は、サーバフレーム51内に、CPU52を搭載した複数のCPUブレード53、複数のCPUブレード53を接続するバックプレーン54、並びに、この図2には示していないが、電源モジュール、スイッチモジュール、マネージメントモジュール等を搭載している。
【0031】
CPUブレード53は、ブレードサーバ5の運用時において、保守等のために、サーバフレーム51に対し、それぞれ図の矢印に示す方向へ、挿入71/抜き取り72される場合がある。なお、ブレードサーバ5が稼動時であっても、ブレードサーバ5に搭載されたCPUブレード53のうち、任意のものが着脱可能(活線挿抜)であることは、ブレードサーバ5の重要な特徴である。
【0032】
電子装置の高性能化及び高機能化に伴って、上記図1のラックマウントキャビネット1に搭載される個々のブレードサーバ5も多数となる状況に対応して、ブレードサーバ5が搭載されるラックマウントキャビネット1における棚4の数量の増大を図るためにも、上記ラックマウントキャビネット1に搭載される個々のブレードサーバ5の小形化、及び、冷却装置の省スペース化が強く望まれている。一方、電子装置に搭載されるCPU52等の半導体デバイスは、その高性能化に伴って、発熱量も増大している。さらに、作業内容によって発熱量も大きく変動するという状況下にあっては、効率の良い冷却手法の実現が強く要求されている。
【0033】
上述した特徴を持つと共に、上述した種々の要求が求められるブレードサーバ53に対応し、かかる要求を満たすための本発明になる冷却装置6について、添付の図3の概要図を用いながら、以下に説明する。
【0034】
この図3からも明らかなように、冷却装置6は、第一の冷却装置(以下、では「手段」という)61、第二の冷却手段62、及び、サーマルコネクタ63により構成される。
【0035】
第一の冷却手段61は、その吸熱部611がCPU52に対し、設計仕様により導かれる所定の熱抵抗より小さい状態で、接続されており、当該CPU52の発熱をCPUブレード53の後方、すなわち、図3の右方向へ輸送する。第一の冷却手段61はCPUブレード53内に搭載されており、CPUブレード53と一体化されて着脱される。CPUブレード53をサーバフレーム51に装着した状態において、第一の冷却手段61の放熱部612は、CPUブレード53からバックプレーン54を突き抜けた位置に配置される。
【0036】
なお、第一の冷却手段61の内部には冷媒液が封入されており、相変化を利用して効率的に熱を輸送する。又は、第一の冷却手段61内に封入された冷媒液を循環させて、効率的に熱を輸送する。
【0037】
第二の冷却手段62は、第一の冷却手段61からサーマルコネクタ63を介して吸熱し、最終的にサーバフレーム51外へ放熱する。第二の冷却手段62の吸熱部621はサーバフレーム51内に搭載されており、第一の冷却手段61の放熱部612とサーマルコネクタ63を介して、熱抵抗が設計仕様より導かれる所定の値より小さい状態で接続している。
【0038】
第二の冷却手段62の内部には冷媒液が封入されており、冷媒液を循環させることによって、第二の冷却手段62の吸熱部621から第二の冷却手段62の放熱部622へ熱を輸送する。又は、第二の冷却手段62は、内部に封入された冷媒液の相変化を利用して熱を輸送してもよい。
【0039】
第二の冷却手段62の放熱部622は、空気との熱交換を行うラジエータであり、サーバフレーム51の後方に設置されている。これに代えて、図示していないが、第二の冷却手段62の放熱部622はサーバフレーム51の外で放熱する第三の冷却手段の吸熱部に放熱するものでもよい。また、同じく図示していないが、第二の冷却手段62の放熱部622はサーバフレーム51の外に設置されており、ラジエータまたはチラーユニット等で放熱するものでもよい。
【0040】
上記第一の冷却手段61及び第二の冷却手段62は、それぞれ、冷媒液を内包するが、それぞれが閉じた系であるために液漏れ等の危険性はない。
【0041】
本明細書において、サーマルコネクタ63は、第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621を熱抵抗が設計仕様より導かれる所定の値より小さい状態で接続し、かつ、第一の冷却手段61の放熱部612を第二の冷却手段62の吸熱部621から着脱可能にする構造である。
【0042】
次に、本実施例におけるサーマルコネクタ63の詳細な構造について、図4〜図9を用いて説明する。
【0043】
図4は、CPUブレード53がサーバフレーム51に挿入されていない状態でのサーマルコネクタ63周りの断面図である。
【0044】
サーマルコネクタ63は、熱伝導媒体631、ソケット632、ピストン633、キャップ634より構成される。また、CPUブレード53側に搭載された第一の冷却手段61には、バネ635が固定されている。
【0045】
熱伝導媒体631は、CPUブレード53の稼動時に第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621との間に介在し、熱抵抗が設計仕様より導かれる所定の値より小さい状態で接触させるものである。熱伝導媒体631は、たとえば熱伝導グリス、熱伝導コンパウンド、オイル等である。ソケット632の一部は、図3に示す第二の冷却手段62の吸熱部を構成する。
【0046】
図4に示すとおり、CPUブレード53がサーバフレーム51に挿入されていない状態においては、熱伝導媒体631の大部分は媒体貯留部6321に貯留されている。媒体貯留部6321は、ソケット632、ピストン633、及び、キャップ634で仕切られている。
【0047】
この媒体貯留部6321の3箇所の封止部について説明する。キャップ634には、ソケット632とキャップ634の間を封止するため、少なくとも一つのシール部材6341(例えばOリング)が取り付けられている。また、ピストン633には、ピストン633とキャップ634の間を封止するために少なくとも一つのシール部材6331(例えばOリング)が取り付けられている。さらに、ピストン633には、ソケット632とピストン633の間を封止するために、少なくとも一つのシール部材6332(例えばOリング)が取り付けられている。従って、上述したシール部材6341、6331及び6332によって、媒体貯留部6321で熱伝導媒体631は気密封止される。
【0048】
熱伝導媒体631は、長期間外気に触れていると、含有する揮発性成分が大気に放散し、熱伝導性能の低下や、固着などの劣化をおこす恐れがある。本発明のサーマルコネクタ構造においては、媒体貯留部6321が気密封止されているために、熱伝導媒体631が劣化しにくいという特徴がある。
【0049】
次に、CPUブレード53がサーバフレーム51に挿入される過程でのサーマルコネクタ63の動作を説明する。
【0050】
図5は、CPUブレード53がサーバフレーム51に完全に挿入されている状態でのサーマルコネクタ63周りの断面図である。
【0051】
CPUブレード53がサーバフレーム51に挿入される過程は、図4から図5の状態へ変化する過程である。
【0052】
バネ635の一端6351は、図4のように第一の冷却手段61に接している。又は、図示していないが、バネ635の一端6351はCPUブレード53に接していてもよい。CPUブレード53をサーバフレーム51に挿入していくと、バネ635の前記一端6351は、CPUブレード53の挿入と同期して挿入方向71へ移動する。CPUブレード53をサーバフレーム51に挿入していくと、バネ635の一端6352は、ピストン633と接触し、挿入方向71へピストン633を押す。これにより、ピストン633は媒体貯留部6321内の熱伝導媒体631を加圧する。
【0053】
この時の媒体貯留部周辺6322の拡大図を、添付の図6に示す。ピストン633によって加圧された媒体貯留部6321内の熱伝導媒体631は、第一の冷却手段61の放熱部612とソケット632の間隙636内に流入する。この時、ピストン633に設けたシール部材6331及び6332により、熱伝導媒体631が抜き取り方向72へ抜け出るのを防げる。また、この過程で、媒体貯留部6321の容積は減少する。
【0054】
次に、図5に示すCPUブレード53がサーバフレーム51に完全に挿入された状態について説明する。
【0055】
この時、間隙636に流入した熱伝導媒体6311によって第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621は熱抵抗が設計仕様より導かれる所定の値より小さい状態で接続される。また、間隙636に流入した熱伝導媒体6311は、シール部材6341、6331及び6332によって気密封止される。これにより、CPUブレード53が稼動している際も、熱伝導媒体6311の劣化を抑えることができる。
【0056】
一方、熱伝導媒体6311には、何等かの原因で気体が混入することが考えられる。混入した気体は、第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621の間の熱の伝達を阻害する。ここで、媒体貯留部6321と間隙636内の熱伝導媒体6311は、バネ635により加圧されている。これにより、熱伝導媒体6311内に混入した気体は圧縮され、混入した気体の体積又はその外周面積を縮小し、もって、熱伝達の低下を抑制する。
【0057】
続いて、CPUブレード53をサーバフレーム51から抜き取る過程、即ち、図5から図4へ変化する際のサーマルコネクタ63の動作について説明する。
【0058】
この時、第一の冷却手段61の放熱部612とキャップ634は、図7〜9を用いて詳細に説明する連結機構64によって連結されている。よって、CPUブレード53をサーバフレーム51から抜き取る時に、キャップ634は第一の冷却手段61の放熱部612に連なって抜き取り方向72へ移動する。この過程で、間隙636に介在する熱伝導媒体6311の大部分は、図4及び5に示すキャップ634のシール部材6341によって、抜き取り方向72へ掻き戻される。これにより、媒体貯留部6321の容積が増加しつつ、第一の冷却手段61の放熱部612は抜き取られていく。
【0059】
キャップ634が図4に示される位置まで移動したところで、連結機構64は分離し、キャップ634は図4に示される位置で停止する。第一の冷却手段61の放熱部612がソケット632から抜き取られる際、第一の冷却手段61の放熱部612の表面に付着した熱伝導媒体631は、シール部材6331によって払拭される。
【0060】
第一の冷却手段61の放熱部612が、ソケット632から完全に抜き取られると、媒体貯留部6321は、シール部材6341、6331及び6332によって気密封止される。サーマルコネクタ63は、上記図4に示した状態となる。これにより、上述した挿入・抜き取りの過程を繰返し行うことが可能となる。
【0061】
次に、図7〜9を用いて、本実施例における連結機構64を説明する。
図7は、第一の冷却手段61の放熱部612がキャップ634の先端に触れた直後で、かつ、キャップ634が初期位置から動いていない状態での断面図である。図8は、上記図7の状態から少し第一の冷却手段61の放熱部612を挿入し、連結機構64が連結し始めた状態における断面図である。図9は、上記図8の状態から、さらに第一の冷却手段61の放熱部612を挿入し、もって、連結機構64が完全に連結した状態での断面図である。
【0062】
図7に示すように、第一の冷却手段612がソケット632に挿入されていない状態では、連結部64は嵌合しておらず、キャップ634の連結部は第一の冷却手段61の放熱部の連結部613内に挿入が可能である。
【0063】
キャップ634が挿入方向71へ動く際は、キャップ634に設けた途中まで直線状で途中から螺旋状となっている溝6342がソケット632に設けたピン6323にそって動くことにより、図8に示すように回転する。図9に示すようにキャップ634が完全に回転すると、第一の冷却手段61の放熱部612の先端に設けた連結部613とキャップ634の先端に設けた連結部6343が嵌合する。これにより、第一の冷却手段61の放熱部612とキャップ634が連結する。
【0064】
一方、キャップ634が抜き取り方向72へ動く際には、挿入過程と同様の仕組みで、挿入過程とは逆方向に回転することにより、第一の冷却手段61の放熱部612とキャップ634が分離する。
【0065】
本実施例によれば、図5の第一の冷却手段61の放熱部612とソケット632の間隙636に熱伝導媒体631を流入させるという構成にしたため、第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621の間の熱抵抗を設計仕様より導かれる所定の値より小さくできる。また、本実施例によれば、図5の媒体貯留部6321、および、間隙636がシール部材6331、6332、6341によって気密構造となるため、熱伝導媒体631の劣化を抑制できる。さらに、本実施例によれば、図5の第一の冷却手段61の放熱部612をソケット632から抜き取るとき、間隙636内の熱伝導媒体6311がキャップ634によって媒体貯留部6321に掻き戻されるため、第一の冷却手段61の放熱部612をソケット632に挿入し、その間隙636に熱伝導媒体631を充填することを繰返し行うことが可能である。
【0066】
<実施例2>
本発明のサーマルコネクタにおける連結機構に関する他の実施例を、図10を用いて説明する。
【0067】
本実施例においては、第一の冷却手段61、第二の冷却手段62、サーマルコネクタの構成は本発明の第一の実施例と同様であるが、連結機構を図2のサーバフレーム51の背面側、すなわち、図2における右側から工具を用いてキャップ634bに付属したボルト6344を回転させることにより、キャップ634bと第一の冷却手段61の放熱部612bを締結する構造とした点に違いがある。
【0068】
図2のCPUブレード53をサーバフレーム51から抜き取る前に、サーバフレーム51の背面側、すなわち、図10における右側から工具を用いて、キャップ634bに付属するボルト6344を第一の冷却手段61の放熱部612bのメネジ部614に締結することにより、第一の冷却手段61の放熱部612bとキャップ634bが連結する。なお、ソケット632cには、第一の冷却手段61の放熱部612bをソケット632cに挿入するときに、キャップ634bがソケット632cから飛び出さないように、ストッパ6324を設けている。
【0069】
また、抜き取り過程において、キャップ634bが図4に示す位置に移動したときに、ボルト6344をはずすことにより、第一の冷却手段61の放熱部612bとキャップ634bが分離する。
【0070】
本実施例では、図2のサーバフレーム51の背面側から工具を用いて、キャップ634bと第一の冷却手段61の放熱部612を締結する構造としたことにより、本発明の実施例1のサーマルコネクタにおける連結機構と比べて、簡素な構造にすることができるという特徴があり、電子装置製造における複雑な工程を改善することができる。一方、本発明の実施例1においては、図4の第一の冷却手段61の放熱部612をソケット632に挿入する際に、自動的に第一の冷却手段61の放熱部612とキャップ634が連結されるが、本実施例においては、第一の冷却手段61の放熱部612bをソケット632bに挿入するのとは別の作業で第一の冷却手段61の放熱部612bとキャップ634bを連結する必要があるという特徴がある。
【0071】
<実施例3>
本発明のサーマルコネクタに関する、さらに他の実施例を、図11を用いて説明する。本実施例は、サーマルコネクタの熱伝導媒体631の充填方法に関するものであり、第一の冷却手段61、第二の冷却手段62、熱伝導媒体充填機構以外のサーマルコネクタの構成は、上記の本発明の実施例1と同様である。
【0072】
本実施例では、媒体貯留部6321bをソケット632cとは独立した位置に設けることに特徴がある。
【0073】
図11に示すように、ソケット632cとは独立した位置に媒体貯留部6321bを設け、媒体流入孔623でソケット632cと連結する。媒体貯留部6321b内の熱伝導媒体631を加圧することにより、媒体流入孔623より間隙636へ熱伝導媒体631が流入する。熱伝導媒体631の加圧は、ロッド637によって行う。
【0074】
ロッド637は、図3のCPUブレード53に取り付けられることによって、CPUブレード53と連動して熱伝導媒体631を加圧する方向へ押されて移動し、熱伝導媒体631を加圧する。このとき、ロッド637は図示していないバネを介して図3のCPUブレード53に取り付けられていてもよい。
【0075】
あるいは、ロッド637はCPUブレード53とは異なる手段で熱伝導媒体631を加圧する方向へ押されて移動してもよい。このとき、媒体貯留部6321bは、ピストン633b側が図11の右側へ向いている状態で設置されていてもよい。
【0076】
本実施例においても、媒体貯留部6321bと間隙636は、シール部材6331b、6332b、および、6341bによって、実施例1と同様に気密構造となっている。
【0077】
これにより、図4〜6で説明した場合と同様に、図3の第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621の間の熱抵抗を設計仕様より導かれる所定の値より小さくできる。
【0078】
本実施例は、上記実施例1と比較して、媒体貯留部6321bの配置の自由度が高くなるという利点がある。
【0079】
また、上記実施例1では、図6に示した媒体貯留部6321の周辺6322は、部品点数が多く、複雑な構造となっているが、それと比較して本実施例の媒体貯留部6321bの周辺は、部品点数が少なく、簡素な構造となっている。
【0080】
一方、上記実施例1では、図5のピストン633は第一の冷却手段61によって押されるが、本実施例では、図11のピストン633bは第一の冷却手段61とは異なるロッド637によって押さなくてはならないという特徴がある。
【0081】
以上、本発明によれば、図3の第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621の間隙636に熱伝導媒体631を流入させるという構成にしたため、第一の冷却手段61の放熱部612と第二の冷却手段62の吸熱部621の間の熱抵抗を設計仕様より導かれる所定の値より小さくできる。
また、本発明によれば、図5の媒体貯留部6321(実施例3においては6321b)と間隙636が、シール部材6331、6332、6341(実施例3においては6331b、6332b、6341)によって気密構造となるため、熱伝導媒体631の劣化の抑制が可能である。
【0082】
さらに、本実施例によれば、図5の第一の冷却手段61の放熱部612をソケット632から抜き取るとき、間隙636内の熱伝導媒体6311がキャップ634(実施例2においては634b)によって媒体貯留部6321(実施例3においては6321b)に掻き戻されるため、第一の冷却手段61の放熱部612をソケット632に挿入し、その間隙636に熱伝導媒体631を充填することを繰返し行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明におけるブレードサーバ等を搭載するラックマウント方式の電子装置の構成を示す概念斜視図である。
【図2】本発明におけるブレードサーバの構成の概略を示す構成斜視図である。
【図3】本発明における、CPUから発生する熱の伝達経路を示す概念断面図である。
【図4】本発明における、CPUブレードがサーバフレームに挿入されていない状態でのサーマルコネクタの詳細断面図である。
【図5】本発明における、CPUブレードがサーバフレームに完全に挿入されている状態でのサーマルコネクタの詳細断面図である。
【図6】本発明における、サーマルコネクタ内の熱伝導媒体の動きを示す断面図である。
【図7】本発明における、連結機構の一実施例を示す図である。
【図8】本発明における、連結機構の一実施例を示す図である。
【図9】本発明における、連結機構の一実施例を示す図である。
【図10】本発明における、連結機構の一実施例を示す図である。
【図11】本発明における、熱伝導媒体充填機構の一実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1…ラックマウントキャビネット、2…本体筐体、3…蓋体、4…棚、5…ブレードサーバ、6…冷却装置、51…サーバフレーム、52…CPU、53…CPUブレード、54…バックプレーン、61…第一の冷却手段、62…第二の冷却手段、63…サーマルコネクタ、64、64b…連結機構、71…挿入方向、72…抜き取り方向、611…吸熱部、612、612b…放熱部、613…連結部、614…メネジ部、621…吸熱部、622…放熱部、623…媒体流入孔、631…熱伝導媒体、632、632b、632c…ソケット、633…ピストン、634…キャップ、635…バネ、636…間隙、637…ロッド、6311…熱伝導媒体、6321、6321b…媒体貯留部、6323…ピン、6324…ストッパ、6331、6331b、6332、6332b…シール部材、6342…溝、6343…連結部、6344…ボルト。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内部に複数のブレードを収納した電子装置であって、
前記筐体の少なくとも一方の側面から着脱自在であり、かつ、内部に少なくともCPU、メモリを含む電子部品を搭載したブレードと、
前記ブレード内部で発生した熱をブレード外に取り出す第一の冷却手段と、
前記筐体に固定され、前記第一の冷却手段から伝達される熱を前記筐体外部に排出するための第二の冷却手段とを備えており、
前記第一の冷却手段の放熱部は細長い柱状であり、かつ、当該柱状体の長手方向が前記ブレードの着脱方向と概略平行となるように前記ブレードに固定されており、
前記第二の冷却手段の吸熱部は、前記第一の冷却手段の放熱部を内包可能な細長い筒状の穴を備えており、更に、
前記第一の冷却手段の放熱部を前記第二の冷却手段の吸熱部に挿入した時に、前記第一の冷却手段の放熱部と前記第二の冷却手段の吸熱部との間に形成される細長いパイプ状の間隙と連通する媒体貯留部と、
前記媒体貯留部に貯留された熱伝導媒体と、
前記媒体貯留部に貯留された前記熱伝導媒体を加圧し、前記間隙に前記熱伝導媒体を供給する加圧手段とを備えており、もって、
前記第一の冷却手段の放熱部と前記第二の冷却手段の吸熱部との間に着脱可能な接続部を構成したことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子装置において、前記第一の冷却手段の放熱部を前記第二の冷却手段の吸熱部から抜き取る際に、前記間隙内の前記熱伝導媒体を前記間隙内から排除し、前記媒体貯留部へ流入させることを特徴とする電子装置。
【請求項3】
請求項1記載の電子装置において、前記第一の冷却手段の放熱部が前記第二の冷却手段の吸熱部に接続された状態において、前記媒体貯留部と前記間隙を密閉構造とするための封止部材を備えたことを特徴とする電子装置。
【請求項4】
請求項1記載の電子装置において、前記第一の冷却手段の放熱部が前記第二の冷却手段の吸熱部から抜き取られた状態において、前記媒体貯留部を密閉構造とするための封止部材を備えたことを特徴とする電子装置。
【請求項5】
請求項1記載の電子装置において、前記媒体貯留部に貯留された前記熱伝導媒体を加圧するためのバネを、前記ブレード又は前記第一の冷却手段にその一端を固定して備えたことを特徴とする電子装置。
【請求項6】
放熱部と吸熱部とを、熱抵抗が設計仕様により導かれる所定の値より小さい状態で接続するサーマルコネクタであって、前記放熱部と前記吸熱部との間隙と連通する媒体貯留部と、前記媒体貯留部に貯留された熱伝導媒体と、前記媒体貯留部に貯留された前記熱伝導媒体を加圧して前記間隙に前記熱伝導媒体を供給する加圧手段とを備えており、もって、前記放熱部と前記吸熱部との間に着脱可能な接続部を構成することを特徴とするサーマルコネクタ。
【請求項1】
筐体内部に複数のブレードを収納した電子装置であって、
前記筐体の少なくとも一方の側面から着脱自在であり、かつ、内部に少なくともCPU、メモリを含む電子部品を搭載したブレードと、
前記ブレード内部で発生した熱をブレード外に取り出す第一の冷却手段と、
前記筐体に固定され、前記第一の冷却手段から伝達される熱を前記筐体外部に排出するための第二の冷却手段とを備えており、
前記第一の冷却手段の放熱部は細長い柱状であり、かつ、当該柱状体の長手方向が前記ブレードの着脱方向と概略平行となるように前記ブレードに固定されており、
前記第二の冷却手段の吸熱部は、前記第一の冷却手段の放熱部を内包可能な細長い筒状の穴を備えており、更に、
前記第一の冷却手段の放熱部を前記第二の冷却手段の吸熱部に挿入した時に、前記第一の冷却手段の放熱部と前記第二の冷却手段の吸熱部との間に形成される細長いパイプ状の間隙と連通する媒体貯留部と、
前記媒体貯留部に貯留された熱伝導媒体と、
前記媒体貯留部に貯留された前記熱伝導媒体を加圧し、前記間隙に前記熱伝導媒体を供給する加圧手段とを備えており、もって、
前記第一の冷却手段の放熱部と前記第二の冷却手段の吸熱部との間に着脱可能な接続部を構成したことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子装置において、前記第一の冷却手段の放熱部を前記第二の冷却手段の吸熱部から抜き取る際に、前記間隙内の前記熱伝導媒体を前記間隙内から排除し、前記媒体貯留部へ流入させることを特徴とする電子装置。
【請求項3】
請求項1記載の電子装置において、前記第一の冷却手段の放熱部が前記第二の冷却手段の吸熱部に接続された状態において、前記媒体貯留部と前記間隙を密閉構造とするための封止部材を備えたことを特徴とする電子装置。
【請求項4】
請求項1記載の電子装置において、前記第一の冷却手段の放熱部が前記第二の冷却手段の吸熱部から抜き取られた状態において、前記媒体貯留部を密閉構造とするための封止部材を備えたことを特徴とする電子装置。
【請求項5】
請求項1記載の電子装置において、前記媒体貯留部に貯留された前記熱伝導媒体を加圧するためのバネを、前記ブレード又は前記第一の冷却手段にその一端を固定して備えたことを特徴とする電子装置。
【請求項6】
放熱部と吸熱部とを、熱抵抗が設計仕様により導かれる所定の値より小さい状態で接続するサーマルコネクタであって、前記放熱部と前記吸熱部との間隙と連通する媒体貯留部と、前記媒体貯留部に貯留された熱伝導媒体と、前記媒体貯留部に貯留された前記熱伝導媒体を加圧して前記間隙に前記熱伝導媒体を供給する加圧手段とを備えており、もって、前記放熱部と前記吸熱部との間に着脱可能な接続部を構成することを特徴とするサーマルコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−80506(P2010−80506A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244238(P2008−244238)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 グリーンネットワーク・システム技術研究開発プロジェクト(グリーンITプロジェクト) エネルギー利用最適化データセンタ基盤技術の研究開発 最適抜熱方式の検討とシステム構成の開発 気化冷却システム及び自然熱利用省エネ空調システムの開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 グリーンネットワーク・システム技術研究開発プロジェクト(グリーンITプロジェクト) エネルギー利用最適化データセンタ基盤技術の研究開発 最適抜熱方式の検討とシステム構成の開発 気化冷却システム及び自然熱利用省エネ空調システムの開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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