説明

電子装置のケース体及びその製造方法

【課題】強度が強く、且つ優れた耐擦傷性及び美しい外観を有する電子装置のケース体及び該ケース体の作製方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る電子装置のケース体は、金属基体と、前記金属基体の表面に形成される第一セラミック塗膜及び第二セラミック塗膜と、を備える。前記金属基体は、複数の凹部と相隣する2つの凹部の間に位置する複数の凸部とが形成されている第一表面を有し、前記凹部は、複数の第一図案区及び複数の第二図案区を備え、前記第一セラミック塗膜は前記第一図案区を被覆し、前記第二セラミック塗膜は前記第二図案区を被覆し、前記第一セラミック塗膜と前記第二セラミック塗膜とは、互いに異なる色である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置のケース体に関し、特に表面にセラミック塗膜が被覆されている電子装置のケース体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信及び情報処理技術の発展に伴い、携帯電話及びパソコンなどの携帯式電子装置が常に開発されている。現在の携帯式電子装置は、絶え間ない新機能の更新だけでなく、流行及び消費者のニーズに合わせるために、外観上においても絶えず創意工夫されている。
【0003】
現在市販されている携帯式電子装置のケース体には、主に2種類ある。1つは、金属ケース体である。該金属ケース体は、色彩が比較的単一であり、たとえ該金属ケース体の表面に、焼付け塗装や電気メッキ層などの保護機能或いは装飾機能を有する塗膜を形成しても、該金属ケース体を落としたりぶつけたりした際、表面の塗膜が剥がれる問題が発生し易く、電子装置の美観を損なう。もう1つは、プラスチックケース体である。該プラスチックケース体は、色彩が比較的に豊かであるが、材料の硬度が不十分であるため、使用していく過程で、表面に擦り傷が出来易く、美観が損なわれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するためのもので、強度が強く、且つ優れた耐擦傷性及び美しい外観を有する電子装置のケース体及び該ケース体の作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る電子装置のケース体は、金属基体と、前記金属基体の表面に形成される第一セラミック塗膜及び第二セラミック塗膜と、を備える。前記金属基体は、複数の凹部と相隣する2つの凹部の間に位置する複数の凸部とが形成されている第一表面を有し、前記凹部は、複数の第一図案区及び複数の第二図案区を備え、前記第一セラミック塗膜は前記第一図案区を被覆し、前記第二セラミック塗膜は前記第二図案区を被覆し、前記第一セラミック塗膜と前記第二セラミック塗膜とは、互いに異なる色である。
【0006】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る電子装置のケース体の製造方法は、第一表面を備える金属基体を提供するステップと、前記第一表面の局部エリアに対して化学エッチング処理を行うことにより、エッチングエリアに凹部を形成すると共に非エッチングエリアに凸部を形成するステップと、前記金属基体に対して第一次熱塗装処理を行うことにより、複数の前記凹部のうちの一部の凹部を被覆する第一セラミック塗膜を前記第一表面に形成するステップと、前記第一次熱塗装処理と異なる色の塗装材料を採用して前記金属基体に対して第二次熱塗装処理を行うことにより、前記第一セラミック塗膜と前記凸部と複数の前記凹部のうちの前記第一セラミック塗膜で被覆されていない凹部とを被覆する第二セラミック塗膜を前記金属基体に形成するステップと、前記第二次熱塗装処理を経た後の前記金属基体を研磨して鏡面仕上げすることによって、前記第一セラミック塗膜及び前記凸部を前記第二セラミック塗膜から露出させるステップと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
従来の技術とは異なり、本発明は、電子装置のケース体の金属基体の表面に凹部を形成した後、該凹部の異なるエリアに異なる色のセラミック塗膜を塗装し、該セラミック塗膜を前記金属基体に強固に接合させる。前記セラミック塗膜は、優れた耐磨耗性、高硬度及び高表面緻密性を有するため、本発明の方法によって得られる電子装置のケース体は、通常のプラスチックや金属材質が持つ欠点を克服することができ、耐磨耗性及び耐損傷性を有し、さらには美しい外観も備え、且つ該美しい外観を持続的に保つことができる。また、本発明の前記電子装置のケース体の表面に形成された模様はユニークであり、優れた装飾効果を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る電子装置のケース体の正面図である。
【図2】図1に示した電子装置のケース体のII−II線に沿った断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電子装置のケース体の金属基体の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電子装置のケース体の作製方法において、使用した遮蔽冶具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る電子装置のケース体10は、金属基体12と、該金属基体12の表面に交互に形成される第一セラミック塗膜14及び第二セラミック塗膜16と、を備える。
【0010】
図2及び図3を併せて参照すると、前記金属基体12は、ステンレス、アルミ合金などの金属からなり、その厚さは約0.4〜0.6mmである。本実施形態において、前記金属基体12の厚さは0.5mmである。前記金属基体12は、第一表面122(外表面)及び該第一表面122の反対側の第二表面124(内表面)を備える。前記第一表面122には、複数の凹部125及び相隣する2つの凹部125の間に設けられた凸部126が備えられている。前記凹部125の水平面の位置は、前記凸部126の水平面の位置より低い。前記凹部125の表面は粗面であり、その表面粗度Raは約1.3〜2.0μmである。また、前記凹部125は、複数の第一図案区1251及び複数の第二図案区1253を備え、該第一図案区1251及び第二図案区1253は、縦横に交互に配列させるのが好ましい。前記複数の凸部126は、互いに間隔をあけて設置されるか、又は連続して設置される。前記凸部126の組み合せは、1種の模様を形成するが、前記凹部125と前記凸部126とは、交互に形成するのが好ましい。
【0011】
前記第一セラミック塗膜14は前記第一図案区1251を被覆し、前記第二セラミック塗膜16は前記第二図案区1253を被覆する。前記第一セラミック塗膜14と前記第二セラミック塗膜16とに互いに異なる色を持たせることで、前記金属基体12の表面に必要な模様を形成することができる。前記第一セラミック塗膜14、前記第二セラミック塗膜16及び前記凸部126は、前記電子装置のケース体10の外表面を共同で構成する。前記第一セラミック塗膜14及び前記第二セラミック塗膜16の各表面は、好ましくは、前記凸部126の頂面と面一に位置する。前記第一セラミック塗膜14及び前記第二セラミック塗膜16は、酸化アルミニウム(Al)、四酸化三鉄(Fe)及び酸化チタン(TiO)などの酸化物セラミック材料の中の1種によって構成され、且つその厚さ(即ち、前記凹部125の深さ)は約0.1mm〜0.12mmであり、表面粗度は0.1μm〜0.3μmである。前記セラミック材料自身が色を有するため、色に対する需要に応じて、前記第一セラミック塗膜14及び前記第二セラミック塗膜16のセラミック材料を選択することができる。例えば、酸化アルミニウムによって製造して得たセラミック塗膜は白色であり、四酸化三鉄によって製造して得たセラミック塗膜は黒色であり、酸化チタンによって製造して得たセラミック塗膜は紺色である。
【0012】
本発明の電子装置のケース体10の作製方法は、以下のステップを備える。
【0013】
(1)、第一表面122及び該第一表面122の反対側の第二表面124を備えた金属基体12を提供する。
【0014】
(2)、前記第一表面122において、予め設定した局部エリアに対してエッチング処理を行い、これにより、エッチングされたエリア(エッチングエリア)の表面位置が、エッチングされないエリア(非エッチングエリア)の表面位置よりも低くなり、その結果、エッチングエリアには、前記凹部125が形成されると共に、前記非エッチングエリアには、前記凸部126が形成される。前記エッチング処理の工程は、化学エッチング或いはレーザーエッチングなどの方法を採用する。本実施形態においては、化学エッチング法を採用する。具体的には、先ず、インク層によって、前記金属基体12及び前記第一表面122のエッチングする必要がない表面を遮蔽して、エッチングする必要があるエリアを露出させる。次に、前記金属基体12を化学エッチング溶液の中に浸漬してエッチング処理を行い、前記第一表面122のエッチングエリア(つまり前記凹部125)の位置を非エッチングエリア(つまり前記凸部126)の位置より低くした後、前記インク層を除去する。この際、前記エッチングの深さは、約0.1mm〜0.12mmである。
【0015】
(3)、前記第一表面122全体に対してサンドブラスト処理を行い、前記第一表面122により大きな表面粗度を与える。該サンドブラスト処理を経た前記第一表面122の粗度(Ra)は、1.3μm〜2.0μmである。このサンドブラスト処理の工程において、前記金属基体12の表面粗度を増大させることにより、後々、熱塗装処理される前記第一セラミック塗膜14及び前記第二セラミック塗膜16の各々と前記金属基体12との結合力を高めることができる。
【0016】
(4)、図4に示すように、複数のスルーホール22を有する遮蔽治具20によって、前記第一表面122を遮蔽する。複数の前記スルーホール22は、組み合わせて、予め設定した透かし彫り模様24を形成する。該透かし彫り模様24は、複数の前記凹部125のうちの一部の凹部125に対応しており、当該一部の凹部125を前記遮蔽治具20から露出させて、前記第一図案区1251を得る。この際、前記第一表面122の他のエリアは、前記遮蔽治具20により遮蔽されている。
【0017】
(5)、前記遮蔽治具20により遮蔽されている前記第一表面122に対して、第一次熱塗装処理を行って、前記透かし彫りの模様24に対応する前記第一図案区1251に前記第一セラミック塗膜14を形成する。該ステップは、好ましくは、サンドブラスト処理が終わった後4時間以内に行う。前記第一次熱塗装処理は、酸素−アセチレンをガスとし、空気を送りガスとする火焔塗装法を採用する。塗装材料は、酸化アルミニウム、四酸化三鉄、酸化チタンなどの酸化物セラミック材料の中の何れか1種である。後で行う研磨工程を容易にするために、前記第一セラミック塗膜14の厚さを約0.12mm〜0.14mmにし、上述したエッチングの深さより大きくする。本実施形態において、この第一次熱塗装処理は、四酸化三鉄を塗装材料とする。
【0018】
(6)、前記遮蔽冶具20を除去して、前記金属基体12に対して、第二次熱塗装処理を行って、該金属基体12の上面に、前記第二セラミック塗膜16を形成する。前記第二セラミック塗膜16は、前記凹部125のうちの前記第一図案区1251を除いたエリア(即ち、前記第二図案区1253)、前記第一セラミック塗膜14及び前記凸部126を被覆する。前記第二次熱塗装処理も、前記火焔塗装法を採用する。塗装材料は、酸化アルミニウム、四酸化三鉄、酸化チタンなどの酸化物セラミック材料の中の何れか1種である。前記第一セラミック塗膜14及び前記第二セラミック塗膜16に異なる色を与えるため、第二次熱塗装処理に採用する塗装材料は、前記第一次熱塗装処理の塗装材料と異なるようにする。前記第二セラミック塗膜16の厚さは、約0.12mm〜0.14mmである。本実施形態において、この第二次熱塗装処理は、酸化チタンを塗装材料とする。
【0019】
(7)、第二次熱塗装処理を行った後の前記金属基体12を研磨して、鏡面仕上げを行い、その後、前記第一セラミック塗膜14及び凸部126を、前記第二セラミック塗膜16から露出させる。この際、前記電子装置のケース体10の表面は、金属及びセラミックとの2種類の異なる材料によって構成され、前記第一セラミック塗膜14と前記第二セラミック塗膜16とは、異なる色であるため、前記第一セラミック塗膜14、前記第二セラミック塗膜16及び前記凸部126は、互いに組み合わさって、前記金属基体12の上面において、華麗に重ね合わさった模様が描かれている。研磨して鏡面仕上げされた前記第一セラミック塗膜14及び前記第二セラミック塗膜16の厚さは約0.1mm〜0.12mmであり、表面粗度は約0.1μm〜0.3μmである。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記電子装置のケース体10の前記金属基体12の表面に前記凹部125を形成した後、該凹部125の異なるエリアに異なる色のセラミック塗膜を塗装し、且つ該セラミック塗膜を前記金属基体12に強固に接合させる。セラミック塗膜は、優れた耐磨耗性、高硬度及び高表面緻密性を有するため、本発明の方法によって得られた前記電子装置のケース体10は、通常のプラスチック或いは金属材質が持つ欠点を克服することができ、耐磨耗性及び耐損傷性を有し、さらには美しい外観も備え、且つ該美しい外観を持続的に保つことができる。また、本発明の前記電子装置のケース体10の表面に形成された模様はユニークであり、優れた装飾効果を持つ。
【0021】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は前記実施形態に制限されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形又は修正が可能であり、該変形又は修正も、本発明の特許請求の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0022】
10 電子装置のケース体
12 金属基体
14 第一セラミック塗膜
16 第二セラミック塗膜
20 遮蔽治具
22 スルーホール
24 透かし彫り模様
122 第一表面
124 第二表面
125 凹部
126 凸部
1251 第一図案区
1253 第二図案区

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基体と、前記金属基体の表面に形成される第一セラミック塗膜及び第二セラミック塗膜と、を備える電子装置のケース体であって、前記金属基体は、複数の凹部と相隣する2つの凹部の間に位置する複数の凸部とが形成されている第一表面を有し、前記凹部は、複数の第一図案区及び複数の第二図案区を備え、前記第一セラミック塗膜は前記第一図案区を被覆し、前記第二セラミック塗膜は前記第二図案区を被覆し、前記第一セラミック塗膜と前記第二セラミック塗膜とは、互いに異なる色であることを特徴とする電子装置のケース体。
【請求項2】
前記第一セラミック塗膜及び前記第二セラミック塗膜の各表面は、前記金属基体の複数の凸部の頂面と面一に位置することを特徴とする請求項1に記載の電子装置のケース体。
【請求項3】
複数の前記凸部は、互いに間隔をあけて設置されるか、又は連続的に設置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子装置のケース体。
【請求項4】
複数の前記凹部と複数の前記凸部は、交互に配列され、前記第一図案区と前記第二図案区は、交互に配列されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の電子装置のケース体。
【請求項5】
前記第一セラミック塗膜及び前記第二セラミック塗膜の材料は、酸化物セラミック材料であり、且つ酸化アルミニウム、四酸化三鉄及び酸化チタンの中の何れか1種であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の電子装置のケース体。
【請求項6】
第一表面を備える金属基体を提供するステップと、前記第一表面の局部エリアに対して化学エッチング処理を行うことにより、エッチングエリアに凹部を形成すると共に非エッチングエリアに凸部を形成するステップと、前記金属基体に対して、第一次熱塗装処理を行うことにより、複数の前記凹部のうちの一部の凹部を被覆する第一セラミック塗膜を前記第一表面に形成するステップと、前記第一次熱塗装処理と異なる色の塗装材料を採用して、前記金属基体に対して第二次熱塗装処理を行うことにより、前記第一セラミック塗膜と、前記凸部と、複数の前記凹部のうちの前記第一セラミック塗膜で被覆されていない凹部と、を被覆する第二セラミック塗膜を前記金属基体に形成するステップと、前記第二次熱塗装処理を経た後の前記金属基体を研磨して鏡面仕上げすることによって、前記第一セラミック塗膜及び前記凸部を前記第二セラミック塗膜から露出させるステップと、を備えることを特徴とする電子装置のケース体の作製方法。
【請求項7】
前記第一次熱塗装処理及び前記第二次熱塗装処理は、全て酸素−アセチレンをガスとし、空気を送りガスとする火焔塗装法を採用し、該火焔塗装法に用いられる塗装材料は、酸化アルミニウム、四酸化三鉄及び酸化チタンの中の1種であり、前記第二次熱塗装処理が採用する塗装材料は、前記第一次熱塗装処理が採用する塗装材料と異なることを特徴とする請求項6に記載の電子装置のケース体の作製方法。
【請求項8】
前記研磨工程を経ていない前記第一セラミック塗膜の厚さは、前記化学エッチング処理のエッチングの深さより大きいことを特徴とする請求項7に記載の電子装置のケース体の作製方法。
【請求項9】
前記化学エッチング処理した後で、且つ前記第一次熱塗装処理の前に、前記第一表面に対して、サンドプラスト処理を行い、該第一表面の粗度を1.3μm〜2.0μmにするステップをさらに備えることを特徴とする請求項6から8の何れか一項に記載の電子装置のケース体の作製方法。
【請求項10】
前記第一次熱塗装処理は、透かし彫りの模様が形成されている遮蔽冶具によって前記第一表面を遮蔽し、且つ前記透かし彫りの模様を複数の前記凹部のうちの前記一部の凹部に対応させ、該一部の凹部を前記遮蔽冶具から露出させて第一図案区を得て、該第一図案区に前記第一セラミック塗膜を形成することを特徴とする請求項6から9の何れか一項に記載の電子装置のケース体の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−94667(P2013−94667A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227752(P2012−227752)
【出願日】平成24年10月15日(2012.10.15)
【出願人】(505177003)深▲セン▼富泰宏精密工業有限公司 (138)
【出願人】(508155310)富士康(香港)有限公司 (185)
【Fターム(参考)】