電子透かし情報の抽出装置
【課題】 フレーム境界探索処理を行わず、少ない演算量でキャリア信号から効率的に電子透かし情報のシンボルを抽出する。
【解決手段】 時間/周波数変換部21は、Nサンプルからなるフレーム毎に1シンボルずつ電子透かし情報が埋め込まれたキャリア信号を受け取り、N/2サンプルからなるサブフレームに分割する。相関算出部24は、各サブフレームとシンボルを示す各サブ基準信号との各相関度を各々算出する。相関判定部25は、サブフレーム毎に各サブ基準信号との各相関度の中から最も高いものを選択し、その相関度が閾値を越えている場合には、その相関度の得られたサブ基準信号に基づき当該サブフレームのデコード結果を求める。また、相関判定部25は、奇数番目のサブフレーム、偶数番目のサブフレームの各グループのうち閾値以上の相関度の発生個数が多いグループのデコード結果を選択する。
【解決手段】 時間/周波数変換部21は、Nサンプルからなるフレーム毎に1シンボルずつ電子透かし情報が埋め込まれたキャリア信号を受け取り、N/2サンプルからなるサブフレームに分割する。相関算出部24は、各サブフレームとシンボルを示す各サブ基準信号との各相関度を各々算出する。相関判定部25は、サブフレーム毎に各サブ基準信号との各相関度の中から最も高いものを選択し、その相関度が閾値を越えている場合には、その相関度の得られたサブ基準信号に基づき当該サブフレームのデコード結果を求める。また、相関判定部25は、奇数番目のサブフレーム、偶数番目のサブフレームの各グループのうち閾値以上の相関度の発生個数が多いグループのデコード結果を選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オーディオ信号等のキャリア信号に埋め込まれた電子透かし情報を抽出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ信号を電子透かし情報の担い手であるキャリア信号とし、このオーディオ信号自体に電子透かし情報を埋め込んで伝送する技術が各種提案されている。図11はこの種の電子透かし情報の埋め込み装置の構成例を示すブロック図である。この埋め込み装置では、ビット“0”を示す擬似乱数列とビット“1”を示す擬似乱数列に各々FFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)を施し、かつ、それにより得られる各スペクトラム列のスペクトラムエンベロープを平坦化した2種類のスペクトラム列が予め用意されている。ここで、擬似乱数列は、例えばPN系列による1024個からなる擬似乱数の列である。そして、埋め込み装置では、これらの2種類のスペクトラム列が電子透かし情報を構成するシンボル(ここではビット“0”とビット“1”)を示す基準信号として用いられ、フレーム単位でのキャリア信号への基準信号の埋め込みが行われる。
【0003】
さらに詳述すると、埋め込み装置において、時間/周波数変換部1は、キャリア信号を所定サンプル数からなるフレームに分割し、フレーム単位でキャリア信号にFFTを施こす。エンベロープ検出部2は、このFFTにより得られるスペクトラム列のエンベロープを検出する。
【0004】
一方、スイッチ3は、当該フレームに埋め込むシンボルがビット“0”である場合にはビット“0”用の平坦化されたスペクトラム列を選択し、当該フレームに埋め込むシンボルがビット“1”である場合にはビット“1”用の平坦化されたスペクトラム列を選択する。エンベロープ付与部4は、このスイッチ3により選択されたスペクトラム列に対して、キャリア信号から得られたスペクトラムエンベロープを乗算し、当該スペクトラムエンベロープを有するスペクトラム列として出力する。乗算器5は、エンベロープ付与部4が出力するスペクトラム列に対して、予め指定されたスケーリングファクタを乗算して出力する。このスケーリングファクタは、電子透かし埋め込み後のキャリア信号において電子透かし情報を聴感上目立たせなくするために乗算される係数である。
【0005】
加算器6は、元の1フレーム分のキャリア信号のスペクトラム列と乗算器5が出力するスペクトラム列とを加算して出力する。このようにして、電子透かし情報のシンボルの埋め込まれた1フレーム分のキャリア信号のスペクトラム列が得られる。このスペクトラム列が時間領域のキャリア信号に戻され、音として放音され、あるいはネットワークを介して配信され、あるいは記憶媒体に記録される。
【0006】
図12は以上のような埋め込み装置により電子透かし情報のシンボルが埋め込まれたキャリア信号からシンボルを抽出する抽出装置の構成例を示すブロック図である。この抽出装置には、埋め込み装置において使用されたものと同様なビット“0”用の擬似乱数列のスペクトラム列を平坦化したものとビット“1”用の擬似乱数列のスペクトラム列を平坦化したものが用意されている。
【0007】
この抽出装置において、時間/周波数変換部11は、キャリア信号を受け取って、所定サンプル数からなるフレームに分割し、フレーム単位でキャリア信号にFFTを施こす。スペクトラム平坦化部12は、このFFTにより得られるスペクトラム列を平坦化し、各スペクトラムの振幅が1であるスペクトラム列を出力する。
【0008】
相関算出部13は、スペクトラム平坦化部12により平坦化されたスペクトラム列とビット“0”用の平坦化されたスペクトラム列との相関度(以下、第1の相関度という)と、スペクトラム平坦化部12により平坦化されたスペクトラム列とビット“1”用の平坦化されたスペクトラム列との相関度(以下、第2の相関度という)とを算出する。ここで、相関度は、2つのスペクトラム列の相関の程度であり、例えば相互相関係数である。
【0009】
相関判定部14は、フレーム毎に、相関算出部13から得られる第1の相関度と第2の相関度とを比較し、第1の相関度が第2の相関度より大きく、かつ、閾値以上である場合には、キャリア信号に埋め込まれたシンボルはビット“0”であると判断し、第2の相関度が第1の相関度より大きく、かつ、閾値以上である場合には、キャリア信号に埋め込まれたシンボルはビット“1”であると判断し、判断したビットを抽出結果として出力する。
【0010】
ここで、抽出装置の時間/周波数変換部11と埋め込み装置の時間/周波数変換部1は、互いに非同期にキャリア信号をフレームに区切る。このため、時間/周波数変換部1がキャリア信号をフレームに区切る際のフレーム境界と、時間/周波数変換部11がキャリア信号をフレームに区切る際のフレーム境界との間にはずれが生じる。従って、何ら策を講じないと、抽出装置では、埋め込み装置側でシンボルを埋め込んだフレームに対してずれたフレームからシンボルを抽出することとなり、正常にシンボルを抽出することが困難になる。
【0011】
そこで、図12に示す抽出装置では、フレーム境界探索制御部15が相関判定部14に供給される第1の相関度と第2の相関度とを監視し、両相関度が閾値よりも小さい場合には、一方の相関度が高くなるように、時間/周波数変換部11がキャリア信号をフレームに区切る際のフレーム境界をシフトさせる制御を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2009−530677号公報
【特許文献2】特開2010−8876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上述した従来の抽出装置において、フレーム境界を探索するための処理は、多大なる演算量を必要とする処理であった。例えば特許文献1に記載の技術では、フレーム境界を1サンプルずつずらしながらキャリア信号における各フレームの信号とシンボルを示す基準信号との相関算出を行い、高い相関度の得られるフレーム境界を探索するようにしている。このような探索処理は、非常に演算量が多く、また、フレーム境界の探索を終えるまでの所要時間が長くなる。このため、例えばシンボルの埋め込まれたキャリア信号をリアルタイムに受信し、受信したキャリア信号からシンボルをリアルタイムに抽出するような抽出処理をCPUに実行させる場合に、キャリア信号の受信開始からシンボルの抽出開始までの遅延時間が長くなるという問題がある。また、このような抽出処理では、フレーム境界の探索処理時にCPUの演算量がピークとなり、その際の演算量が非常に大きなものとなる。このため、抽出処理を行うCPUとして、単位時間当たりの最大演算量の大きなものを使用しなければならないという問題がある。フレーム境界の探索処理の所要時間を短くするために、例えば特許文献2において提案されているように、最初、キャリア信号におけるシンボルの埋め込み領域の大体の位置を求める概略探索を行い、その後、概略探索において求められた概略位置付近においてフレーム境界の位置についての詳細探索を行う、という方法を採ることも考えられる。この方法の採用により、フレーム境界の探索処理に費やすCPUの演算量をある程度減らすことはできるが、それでも、探索処理に相当な演算量が必要となり、シンボル抽出が開始されるまでの所要時間を短くすることができない。このため、リアルタイムに受信されるキャリア信号からリアルタイムにシンボルを抽出する、といったリアルタイムなシンボル抽出が困難であった。また、このフレーム境界の探索処理は1回だけ実行すれば良いのでなく時々実施する必要がある。何故ならば、キャリア信号の受信が一旦停止したり、受信対象のキャリア信号が他のキャリア信号に切り換わる場合があり、さらに、そのような一旦停止や切り換えがない状況でも、キャリア信号の伝送系を制御するクロックの周波数に揺らぎが生じる場合があるからである。このため、リアルタイムにキャリア信号を受信しながらシンボルを抽出する場合には、度々発生する演算量の多い探索処理を実行可能な動作周波数を有するDSPやCPUが必要であった。
【0014】
この発明は以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、演算量の大きいフレーム境界探索処理が不要であり、少ない演算量でキャリア信号から効率的に電子透かし情報をシンボルを抽出することができる抽出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、所定サンプル数からなるフレーム毎に電子透かし情報を構成する1シンボルを示す基準信号が埋め込まれたキャリア信号を受け取り、この受け取ったキャリア信号を、各々前記フレームを構成するサンプル数よりも少ないサンプル数からなり、かつ、各々時間軸方向に沿って前記フレームと同じ周期で並び、かつ、時間軸方向における位置が各種類間で互いにずれたM種類のサブフレームに区切るサブフレーム分割手段と、前記サブフレーム分割手段により区切られた各サブフレームについて、電子透かし情報を構成する各種のシンボルを示す各基準信号の一部の区間をなす各サブ基準信号との相関度を算出し、サブフレーム内の信号との相関度が最大となったサブ基準信号に対応したシンボルをデコード結果として算出するデコード手段と、前記サブフレーム分割手段により区切られたM種類のサブフレームの各種類毎に、電子透かし情報を構成する各種のシンボルに対応した各サブ基準信号との各相関度の最大値が閾値以上であるサブフレームを求め、M種類のサブフレームの中から前記相関度の最大値が閾値以上であるサブフレームの個数が最大であるサブフレームの種類を選択し、選択した種類の各サブフレームから算出されたデコード結果を選択して出力するデコード結果選択手段とを具備することを特徴とする電子透かし情報の抽出装置を提供する。
【0016】
この発明によれば、M種類のサブフレームの中には埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム内に収まるサブフレームとキャリア信号のフレーム境界を跨ぐサブフレームが存在する。ここで、後者の種類のサブフレームは、互いに異なるシンボルが埋め込まれる可能性のある2つのフレームの信号成分により前半部分と後半部分が構成された信号成分を含むので、サブ基準信号との相関度が低くなる可能性が高い。一方、前者の種類のサブフレームは、シンボルの埋め込まれたフレームに包含されているため、いずれかのシンボルに対応したサブ基準信号との相関度が高くなる。このため、前者の種類のサブフレームがデコード結果選択手段により選択される。このようにして、埋め込まれたシンボルを示している確率の高いデコード結果がデコード結果選択手段により選択される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の第1実施形態である電子透かし情報の抽出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態においてシンボルの埋め込みのために使用される基準信号とシンボルの抽出のために使用されるサブ基準信号との関係を例示する図である。
【図3】同実施形態の第1の動作例を示すタイムチャートである。
【図4】同実施形態の第2の動作例を示すタイムチャートである。
【図5】この発明の第2実施形態である電子透かし情報の抽出装置においてシンボルの埋め込みのために使用される基準信号とシンボルの抽出のために使用されるサブ基準信号との関係を例示する図である。
【図6】同実施形態の第1の動作例を示すタイムチャートである。
【図7】同実施形態の第2の動作例を示すタイムチャートである。
【図8】この発明の第3実施形態である電子透かし情報の抽出装置においてシンボルの埋め込みのために使用される基準信号とシンボルの抽出のために使用されるサブ基準信号との関係を例示する図である。
【図9】同実施形態の第1の動作例を示すタイムチャートである。
【図10】同実施形態の第2の動作例を示すタイムチャートである。
【図11】電子透かし情報の埋め込み装置の構成例を示すブロック図である。
【図12】従来の電子透かし情報の抽出装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、この発明の一実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態である電子透かし情報の抽出装置の構成を示すブロック図である。この抽出装置は、前掲図11の埋め込み装置により電子透かし情報のシンボルが埋め込まれたキャリア信号を受信し、受信したキャリア信号からシンボルを抽出する装置である。なお、本発明は、図1に示す抽出装置が実行する各処理をパーソナルコンピュータや携帯電話の各種の電子機器のCPU等に実行させるプログラムとして実現してもよい。
【0019】
図1において、時間/周波数変換部21には、Nサンプルからなるフレーム毎に1シンボルずつ電子透かし情報が埋め込まれたキャリア信号が供給される。時間/周波数変換部21は、サブフレーム分割手段としての機能を有している。すなわち、受け取ったキャリア信号を時間軸上において占める位置が互いに異なったM種類のサブフレームに区切る機能である。ここで、同一種類の各サブフレームは、各々キャリア信号の時間軸方向に沿ってフレームと同じ周期で並ぶ。また、異なる種類のサブフレームは、各々の時間軸方向における位置が1フレームに満たない間隔だけ互いにずれている。従って、キャリア信号を区切った各フレームに着目すると、1つのフレーム内にM種類のサブフレームのサブフレーム境界(同一種類に属するサブフレームの先行サブフレームと後続サブフレームの境界)が含まれた状態となる。この状態において、M種類のサブフレームのサブフレーム境界は、時間軸上において等間隔に並んでいてもよく、非等間隔に並んでいてもよい。また、M種類のサブフレームを各々構成するサンプル数は、N/Mであってもよく、N/Mより多くてもよく、N/Mより少なくてもよい。
【0020】
本実施形態における時間/周波数変換部21は、受信されるキャリア信号を、時間軸上においてN/Mサンプルずつ互いにずれており、かつ、各々がN/MサンプルからなるM種類のサブフレームに区切る。より具体的には、本実施形態における時間/周波数変換部21は、受信されるキャリア信号をN/2サンプルからなるサブフレームに区切り、N/2サンプルからなる奇数番目のサブフレームと、同じくN/2サンプルからなる偶数番目のサブフレームという2種類のサブフレームを発生させる。そして、時間/周波数変換部21は、サブフレーム毎にキャリア信号にFFTを施す。スペクトラム平坦化部22は、このFFTにより得られるスペクトラム列を平坦化し、各スペクトラムの振幅が1であるスペクトラム列を出力する。
【0021】
コードブック23は、シンボル抽出のために用いるサブ基準信号を記憶している。図2は、シンボル埋め込みのための基準信号とシンボル抽出のためのサブ基準信号との関係を示す図である。この例では、埋め込み装置側において、1フレームを構成するNサンプルと同数のサンプルからなる擬似乱数列であって、ビット“0”を示す擬似乱数列とビット“1”を示す擬似乱数列に各々FFTを施し、このFFTにより得られる各スペクトラム列を平坦化した各スペクトラム列がシンボル埋め込みのための基準信号として用いられる。そして、抽出装置において、コードブック23には、これらの基準信号が示す各擬似乱数列の一部の区間を示す各信号が、ビット“0”を抽出するためのサブ基準信号、ビット“1”を抽出するためのサブ基準信号として記憶されている。ここで、ビット“0”を抽出するためのサブ基準信号は、ビット“0”の埋め込みに用いる擬似乱数列(Nサンプル)のほぼ中央の領域を占めるN/2サンプルからなる擬似乱数列にFFTを施し、平坦化したスペクトラム列である。また、ビット“1”を抽出するためのサブ基準信号は、ビット“1”の埋め込みに用いる擬似乱数列(Nサンプル)のほぼ中央の領域を占めるN/2サンプルからなる擬似乱数列にFFTを施し、平坦化したスペクトラム列である。
【0022】
相関算出部24および相関判定部25は、サブフレーム分割手段たる時間/周波数変換部21により区切られたキャリア信号の各サブフレームについて、電子透かし情報を構成する各種のシンボルを示す各基準信号の一部の区間をなす各サブ基準信号との相関度を算出し、サブフレーム内の信号との相関度が最大となったサブ基準信号に対応したシンボルをデコード結果として算出するデコード手段として機能する。さらに詳述すると、相関算出部24は、スペクトラム平坦化部22から得られる各サブフレームの平坦化されたスペクトラム列の各々について、2種類(ビット“0”に対応したものとビット“1”に対応したもの)のサブ基準信号(スペクトラム列)との相関度(相互相関係数)を各々算出する。そして、相関判定部25は、サブフレーム毎に2種類の相関度のうち最も高いものを選択し、その選択した相関度が閾値を越えている場合には、その相関度の得られたサブ基準信号が示すシンボル(ビット“0”または“1”)を当該サブフレームにおけるデコード結果とする。
【0023】
また、相関判定部25は、サブフレーム分割手段たる時間/周波数変換部21により区切られた各サブフレームの各種類毎に、電子透かし情報を構成する各種のシンボルに対応した各サブ基準信号との各相関度の最大値が閾値以上であるサブフレームを求め、各種類のサブフレームの中から相関度の最大値が閾値以上であるサブフレームの個数が最大であるサブフレームの種類を選択し、選択した種類の各サブフレームから算出されたデコード結果を選択して出力するデコード結果選択手段として機能する。さらに詳述すると、本実施形態における相関判定部25は、サブフレームを奇数番目のサブフレームと偶数番目のサブフレームの2種類に分け、この2種類のサブフレームの種類毎に、各種のシンボルに対応したサブ基準信号との相関度が閾値以上であるサブフレームの一定区間における発生個数を求める。そして、奇数番目のサブフレームのグループおよび偶数番目のサブフレームのグループのうち閾値以上の相関度が得られたサブフレームの発生個数の多い方を選択し、選択したサブフレームのグループから得られたデコード結果を選択して出力するのである。
【0024】
図3および図4は各々本実施形態の動作例を示すタイムチャートである。これらの図において、キャリア信号を示すストライプは、縦方向の実線により区切られている。この縦方向の実線は、埋め込み装置側において各々1シンボルの埋め込みを行う各フレームのフレーム境界を示している。また、図3および図4において、デコード結果を示すストライプは、縦方向の実線により区切られている。この縦方向の実線は、時間/周波数変換部21がキャリア信号を複数のサブフレームに区切った際の各サブフレームのサブフレーム境界を示している。そして、図3および図4のキャリア信号を示すストライプにおいて、各フレームを示す各矩形内には各フレームに埋め込まれたシンボル(ビット“0”または“1”)が示されており、デコード結果を示すストライプにおいて、各サブフレームを示す矩形内には各サブフレームにおけるデコード結果が示されている。
【0025】
図3に示す動作例では、シンボル埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界と、抽出装置の時間/周波数変換部21がキャリア信号をサブフレームに区切る際の奇数番目のサブフレームの開始点とが一致している。この場合において、図3の左端に図示されたキャリア信号の1フレームに着目すると、この1フレームにはビット“1”に対応した擬似乱数列に対して、シンボル埋め込み前のキャリア信号のスペクトラムエンベロープを付与した信号成分が含まれている。そして、1番目のサブフレームは、このフレームの前半に相当するので、同フレームに埋め込まれたビット“1”用の擬似乱数列の中央のN/2サンプルの前半のサンプル列を含んでいる。従って、1番目のサブフレームに関しては、ビット“1”を示すサブ基準信号との相関度が他のシンボルを示すサブ基準信号との相関度よりも高く、かつ、閾値よりも高くなり、デコード結果は“1”となる。
【0026】
一方、2番目のサブフレームは、上記1フレームの後半に相当し、同フレームに埋め込まれたビット“1”用の擬似乱数列の中央のN/2サンプルの後半のサンプル列を含んでいる。従って、この2番目のサブフレームも、ビット“1”を示すサブ基準信号との相関度が他のシンボルを示すサブ基準信号との相関度よりも高くなり、かつ、閾値よりも高くなる。従って、2番目のサブフレームのデコード結果も“1”となる。
【0027】
3番目以降の各サブフレームについても同様であり、例えばビット“0”の埋め込まれた2番目のフレームの前半に相当する3番目のサブフレームではデコード結果が“0”、後半に相当する4番目のサブフレームでも、デコード結果が“0”となる。
【0028】
このように埋め込み時のフレーム境界と抽出時の奇数番目のサブフレームの開始点とが一致する状況では、奇数番目のサブフレームのグループと、偶数番目のサブフレームのグループの両方において、サブ基準信号との相関度が閾値以上となるサブフレームが多数発生し、優劣を付けがたい状況になる。この場合の対処の方法として次の2つが考えられる。第1の態様は、各グループ間においてサブ基準信号との相関度が閾値以上となるサブフレームが同数である場合には、例えば奇数番目のサブフレームのグループから得られたデコード結果を最終的なデコード結果として選択する態様である。第2の態様は、奇数番目のサブフレームのグループと偶数番目のサブフレームのグループとの間でサブ基準信号との相関度が閾値以上となるサブフレームの数に差が出るように、相関度との比較に用いる閾値を増加させる態様である。
【0029】
図4に示す動作例では、シンボル埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界に対して、抽出装置の時間/周波数変換部21がキャリア信号をサブフレームに区切る際の奇数番目のサブフレームの開始点が所定サンプル数だけ後方にずれている。この場合において、1番目のサブフレームは、ビット“1”用の擬似乱数列の埋め込まれたフレームの中央付近の位置を占めている。従って、1番目のサブフレームに関しては、ビット“1”を示すサブ基準信号との相関度が他のシンボルを示すサブ基準信号との相関度よりも高く、かつ、閾値よりも高くなり、デコード結果は“1”となる。
【0030】
一方、2番目のサブフレームは、ビット“1”が埋め込まれた1番目のフレームとビット“0”が埋め込まれた2番目のフレームとのフレーム境界を跨いでいる。このため、2番目のサブフレームでは、ビット“0”に対応したサブ基準信号との相関度とビット“1”に対応したサブ基準信号との相関度の両方が閾値よりも低くなり、デコード結果は不定(“?”)となる。3番目以降の各サブフレームについても同様であり、例えばビット“0”の埋め込まれた2番目のフレームに包含される3番目のサブフレームではビット“0”に対応したサブ基準信号との相関度が高くなって、デコード結果が“0”となり、2番目のフレームと3番目のフレームとのフレーム境界を跨ぐ4番目のサブフレームでは、全てのサブ基準信号との相関度が低くなってデコード結果が不定となる。
【0031】
このように、図4に示す動作例において、フレームに包含された奇数番目のサブフレームのグループではいずれかのサブ基準信号との相関度が高くなってデコード結果が得られ、フレーム境界を跨ぐ偶数番目のサブフレームのグループではすべてのサブ基準信号との相関度が閾値より小さくなり、デコード結果が不定となる。そこで、相関判定部25は、奇数番目のサブフレームのグループから得られたデコード結果を最終的なデコード結果として選択して出力するのである。
【0032】
このようにして、奇数番目のサブフレームのグループを選択すると、以後、相関算出部24は、奇数番目のサブフレームのみについて、各種のシンボルに対応したサブ基準信号との相関度を算出し、相関判定部25は、各相関度と閾値との比較を行うことによりキャリア信号に埋め込まれたシンボルを判定する。
【0033】
以上説明した本実施形態によれば、演算量の多いフレーム境界探索を行うことなく、キャリア信号に埋め込まれたシンボルを抽出することができる。また、奇数番目のサブフレームのグループおよび偶数番目のサブフレームのグループの一方を選択するために、キャリア信号の全サブフレームのデコードを行う必要はなく、例えば先頭の所定個数のサブフレームについてのみデコードを行えばよい。従って、電子透かし情報の抽出装置におけるCPUやDSPの能力を高くすることなく、リアルタイムに受信されるキャリア信号からリアルタイムにシンボルを抽出することができる。また、従来、電子透かし情報の抽出処理の演算量において、フレーム境界探索処理の実行時に演算量がピークとなり、このピークの演算量を処理することができるように高速のCPUやDSPを使用する必要があった。しかし、本実施形態によれば、フレーム境界探索処理が不要となり、抽出処理の演算量が平準化され、抽出処理におけるピークの演算量が小さくなるので、抽出処理に用いるCPUやDSPのコストを低減することができる。
【0034】
<第2実施形態>
図5は、この発明の第2実施形態である電子透かし情報の抽出装置においてシンボルの埋め込みのために使用される基準信号とシンボルの抽出のために使用されるサブ基準信号との関係を例示する図である。
【0035】
本実施形態では、シンボル埋め込みに用いた擬似乱数列の複数個所からより小規模な複数の擬似乱数列を取り出し、これらの擬似乱数列からシンボル抽出のための複数種類のサブ基準信号を生成し、この複数種類のサブ基準信号を用いてシンボル抽出を行う。図5に示す例では、ビット“0”抽出のためのサブ基準信号として、サブ基準信号CODE0a、CODE0b、CODE0cが示され、ビット“1”抽出のためのサブ基準信号として、サブ基準信号CODE1a、CODE1b、CODE1cが示されている。ここで、サブ基準信号CODE0aおよびCODE1aは、ビット“0”または“1”の埋め込みのための1フレーム(Nサンプル)分の擬似乱数列から前半のN/2サンプルの擬似乱数列を取り出し、このN/2サンプルの擬似乱数列にFFTを施すことにより得られるスペクトラム列を平坦化したものである。また、サブ基準信号CODE0bおよびCODE1bは、ビット“0”または“1”の埋め込みのための1フレーム(Nサンプル)分の擬似乱数列から中央のN/2サンプルの擬似乱数列を取り出し、このN/2サンプルの擬似乱数列にFFTを施すことにより得られるスペクトラム列を平坦化したものである。また、サブ基準信号CODE0cおよびCODE1cは、ビット“0”または“1”の埋め込みのための1フレーム(Nサンプル)分の擬似乱数列から後半のN/2サンプルの擬似乱数列を取り出し、このN/2サンプルの擬似乱数列にFFTを施すことにより得られるスペクトラム列を平坦化したものである。
【0036】
本実施形態における相関算出部24(図1参照)は、サブフレーム毎に、これらのサブ基準信号CODE0a、CODE0b、CODE0c、CODE1a、CODE1b、CODE1cの各々とキャリア信号との各相関度を算出する。そして、本実施形態における相関判定部25(図1参照)は、相関算出部24により算出される各相関度に基づいて各サブフレームをデコードするとともに、デコード結果を次の6種類に分類し、デコード結果の種類毎にサブ基準信号との相関度が閾値以上となったサブフレーム数を求め、このサブフレーム数が最大となる種類のデコード結果を選択して出力するのである。
【0037】
デコード結果a1:奇数番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の前半部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果a2:偶数番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の前半部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果b1:奇数番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の中央部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果b2:偶数番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の中央部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果c1:奇数番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の後半部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果c2:偶数番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の後半部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
【0038】
図6および図7は、各々本実施形態の動作例を示すタイムチャートである。これらの図において、デコード結果aは、上記デコード結果a1およびa2を、デコード結果bは、上記デコード結果b1およびb2を、デコード結果cは、上記デコード結果c1およびc2を総称するものである。
【0039】
図6に示す動作例では、埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界と、抽出時におけるキャリア信号の奇数番目のサブフレームの開始点が一致している。このような状況において、デコード結果aに関しては、奇数番目のサブフレームとサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度が高くなってデコード結果a1が得られ、偶数番目のサブフレームとサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度が低くなってデコード結果a2が不定となる可能性が高い。何故ならば、ビット“0”または“1”が埋め込まれたフレームは、ビット“0”または“1”に対応した埋め込み用の擬似乱数列に元のキャリア信号のスペクトラムエンベロープを付与した信号成分を含んでおり、同フレームの前半部分である奇数番目のサブフレームは、この信号成分の前半部分を含むので、同擬似乱数列のスペクトラム列と近似したスペクトラム列を有している。一方、サブ基準信号CODE0aおよびCODE1aは、ビット“0”または“1”に対応した埋め込み用の擬似乱数列の前半部分から生成されたサブ基準信号であり、これも同擬似乱数列のスペクトラム列と近似したスペクトラム列を含む。従って、フレームの前半部分である奇数番目のサブフレームでは、このサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度が高くなるのである。
【0040】
同様の理由により、デコード結果cに関しては、偶数番目のサブフレームとサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度が高くなってデコード結果c2が得られ、奇数番目のサブフレームとサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度が低くなってデコード結果c1が不定となる可能性が高い。
【0041】
また、デコード結果bに関しては、奇数番目のサブフレームと偶数番目のサブフレームの両方において、サブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度が高くなってデコード結果b1およびb2が得られる可能性が高い。何故ならば、キャリア信号において各フレームの中央部分には、サブ基準信号CODE0bまたはCODE1bに対応した擬似乱数列のスペクトラム列と近似したスペクトラム列を持った信号成分が含まれていると考えられる。そして、キャリア信号においてフレームの前半部分である奇数番目のサブフレームの後半部分は、このサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bに対応した擬似乱数列に近い擬似乱数列の前半部分を含んでいる。また、キャリア信号においてフレームの後半部分である偶数番目のサブフレームの前半部分は、このサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bに対応した擬似乱数列に近い擬似乱数列の後半部分を含んでいる。従って、奇数番目のサブフレームおよび偶数番目のサブフレームの両方において、サブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度が高くなる可能性が高い。
【0042】
この例では、埋め込み時においてキャリア信号の1フレームに埋め込まれた擬似乱数列の前半部分および後半部分に相当するものが、抽出時には奇数番目のサブフレームおよび偶数番目のサブフレームに含まれている。このため、デコード結果aおよびcの基となる相関度と、デコード結果bの基となる相関度とを比較した場合、前者の相関度の方が高くなり、前者のデコード結果の方が信頼できるデコード結果となる。
【0043】
図7に示す動作例では、シンボル埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界に対して、抽出装置の時間/周波数変換部21がキャリア信号をサブフレームに区切る際の奇数番目のサブフレームの開始点が所定サンプル数だけ後方にずれている。このため、奇数番目のサブフレームは、埋め込み時におけるキャリア信号の1フレーム内に包含されているが、偶数番目のサブフレームは、埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界を跨いでいる。このため、奇数番目のサブフレームでは、サブフレームとサブ基準信号との相関度が高くなってデコード結果としてビット“0”または“1”が得られ、偶数番目のサブフレームでは、サブフレームとサブ基準信号との相関度が低くなってデコード結果が不定となる。
【0044】
また、図7に示す動作例では、奇数番目のサブフレームは、埋め込み時のキャリア信号の1フレームの中央付近の位置を占めている。このため、奇数番目のサブフレームでは、埋め込み用の擬似乱数列の中央部分を用いて生成されたサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度が他のサブ基準信号との相関度よりも高くなる。従って、この例では、各種のデコード結果の中でデコード結果b1が最も信頼できるデコード結果となる。
【0045】
そこで、本実施形態において相関判定部25は、上記6種類のデコード結果の中に不定でないデコード結果の発生回数が最大であるデコード結果が複数発生した場合に、現状よりも閾値を高くすることにより、不定でないデコード結果の発生個数が単独一位であるデコード結果を1種類発生させ、そのデコード結果を選択する。このようにすることで、上記6種類のデコード結果の中から最も信頼できるデコード結果を選択することができる。
【0046】
本実施形態においても上記第1実施形態と同様な効果が得られる。また、本実施形態によれば、上記第1実施形態と比べると、相関度を算出するサブ基準信号の種類が増えるのでその分だけ演算量が増すが、各サブ基準信号とサブフレームとの相関度の最大値が上記第1実施形態よりも高くなり、より信頼度の高いデコード結果を得ることができる。
【0047】
<第3実施形態>
上記第1および第2実施形態では、キャリア信号をフレーム長の1/2(N/2サンプル)の長さを持ったサブフレームに分割し、サブフレーム毎にサブ基準信号との相関度を算出した。これに対し、本実施形態では、キャリア信号をN/Mサンプル(Mは2以上の整数)からなるM種類のサブフレームに分割し、サブフレーム毎にサブ基準信号との相関度を算出する。また、本実施形態では、各シンボルの種類毎に、同シンボルの埋め込みのための擬似乱数列をM分割した各擬似乱数に基づいて、同シンボルを抽出するのに用いるM種類のサブ基準信号を生成する。以下、M=3の場合について本実施形態の具体例を説明する。
【0048】
図8は、M=3の場合について、シンボルの埋め込みのために使用される基準信号とシンボルの抽出のために使用されるサブ基準信号との関係を例示する図である。図8に示す例では、ビット“0”に対応したサブ基準信号として、サブ基準信号CODE0a、CODE0b、CODE0cが示され、ビット“1”に対応したサブ基準信号として、サブ基準信号CODE1a、CODE1b、CODE1cが示されている。ここで、サブ基準信号CODE0aおよびCODE1aは、ビット“0”または“1”を示す1フレーム(Nサンプル)分の擬似乱数列を3等分したうちの先頭のN/3サンプルの擬似乱数列にFFTを施し、この結果得られるスペクトラム列を平坦化したものである。また、サブ基準信号CODE0bおよびCODE1bは、ビット“0”または“1”を示す1フレーム(Nサンプル)分の擬似乱数列を3等分したうちの中央のN/3サンプルの擬似乱数列にFFTを施し、この結果得られるスペクトラム列を平坦化したものである。また、サブ基準信号CODE0cおよびCODE1cは、ビット“0”または“1”を示す1フレーム(Nサンプル)分の擬似乱数列を3等分したうちの最後のN/3サンプルの擬似乱数列にFFTを施し、この結果得られるスペクトラム列を平坦化したものである。
【0049】
本実施形態における相関算出部24(図1参照)は、キャリア信号をN/Mサンプル(=N/3サンプル)からなるサブフレームに分割した各サブフレーム毎に、これらのサブ基準信号CODE0a、CODE0b、CODE0c、CODE1a、CODE1b、CODE1cの各々とキャリア信号との各相関度を算出する。そして、本実施形態における相関判定部25(図1参照)は、相関算出部24により算出される各相関度に基づいてシンボルをデコードするとともに、デコード結果を次の9種類に分類し、デコード結果の種類毎にサブ基準信号との相関度が閾値以上となったサブフレーム数を求め、このサブフレーム数が最大となる種類のデコード結果を選択して出力するのである。
【0050】
デコード結果a1:3k+1番目(kは整数)のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の先頭部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果a2:3k+2番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の先頭部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果a3:3k+3番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の先頭部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果b1:3k+1番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の中央部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果b2:3k+2番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の中央部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果b3:3k+3番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の中央部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果c1:3k+1番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の最後尾部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果c2:3k+2番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の最後尾部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果c3:3k+3番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の最後尾部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
【0051】
図9および図10は、各々本実施形態の動作例を示すタイムチャートである。これらの図において、デコード結果aは、上記デコード結果a1〜a3を、デコード結果bは、上記デコード結果b1〜b3を、デコード結果cは、上記デコード結果c1〜c3を総称するものである。
【0052】
図9に示す動作例では、埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界と、抽出時におけるキャリア信号の3k+1番目のサブフレームの開始点が一致している。このような状況において、デコード結果aに関しては、3k+1番目のサブフレームとサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度が高くなってデコード結果a1が得られ、3k+3番目および3k+3番目の各サブフレームとサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度が低くなってデコード結果a2、a3が不定となる可能性が高い。何故ならば、サブ基準信号CODE0aおよびCODE1aは、埋め込み用の1フレーム分の擬似乱数列の先頭部分から生成されたサブ基準信号であり、キャリア信号においてフレームの先頭部分である3k+1番目のサブフレームは、このサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aに対応した擬似乱数列のスペクトラム列と近似したスペクトラム列を持った信号成分を含んでいる可能性が高いからである。
【0053】
同様の理由により、デコード結果bに関しては、3k+2番目のサブフレームとサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度が高くなってデコード結果b2が得られ、3k+1番目および3k+3番目の各サブフレームとサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度が低くなってデコード結果b1、b3が不定となる可能性が高い。また、デコード結果cに関しては、3k+3番目のサブフレームとサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度が高くなってデコード結果c3が得られ、3k+1番目および3k+2番目の各サブフレームとサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度が低くなってデコード結果c1、c2が不定となる可能性が高い。
【0054】
図10に示す動作例では、シンボル埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界に対して、抽出装置の時間/周波数変換部21がキャリア信号をサブフレームに区切る際の3k+1番目のサブフレームの開始点が所定サンプル数だけ後方にずれている。このため、3k+1番目および3k+2番目の各サブフレームは、埋め込み時におけるキャリア信号の1フレーム内に包含されているが、3k+3番目のサブフレームは、埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界を跨いでいる。このため、3k+1番目および3k+2番目の各サブフレームでは、サブフレームとサブ基準信号との相関度が高くなってデコード結果としてビット“0”または“1”が得られ、3k+3番目のサブフレームでは、サブフレームとサブ基準信号との相関度が低くなってデコード結果が不定となる。
【0055】
上記第2実施形態と同様、本実施形態における相関判定部25は、上記9種類のデコード結果の中に不定でないデコード結果の発生回数が最大(同率一位)であるデコード結果が複数発生した場合に、現状よりも閾値を高くすることにより、不定でないデコード結果の発生個数が単独一位であるデコード結果を1種類発生させ、そのデコード結果を選択する。このようにすることで、上記9種類のデコード結果の中から最も信頼できるデコード結果を選択することができる。本実施形態においても上記第2実施形態と同様な効果が得られる。
【0056】
<他の実施形態>
以上、この発明の第1〜第3実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0057】
(1)埋め込み装置側において、キャリア信号に対して、連続したWシンボル(例えばW=64)からなる電子透かし情報を周期的に繰り返し埋め込んでもよい。また、その際に、埋め込み装置では、1周期分のWシンボルからなるシンボル列の先頭シンボルを電子透かし情報の境界を示すスタートビットとする。そして、埋め込みに用いる擬似乱数列は、スタートビットとしての“0”または“1”に対応したものと、それに続くデータビットとしての“0”または“1”に対応したものを、別個の擬似乱数列とする。
【0058】
このような態様において抽出装置では、データビットとしてのビット“0”または“1”に対応したサブ基準信号に加えて、スタートビットとしてのビット“0”または“1”に対応したサブ基準信号をコードブック23に記憶させる。そして、相関算出部24は、このコードブック23に記憶された全ての種類のサブ基準信号とサブフレームとの各相関度を算出する。また、相関判定部25は、これらの各種類のサブ基準信号とサブフレームとの各相関度のうち最大の相関度の得られたサブ基準信号に対応したシンボルをデコード結果とするのである。この態様においても上記各実施形態と同様な効果が得られる。
【0059】
この態様において、キャリア信号における最初のWフレームについて、上記各実施形態に開示の技術を実施し、M種類のサブフレームの中から1種類のサブフレームを選択するようにしてもよい。例えば上記第1実施形態にこの態様を適用する場合、まず、最初のWフレームについて上記第1実施形態を実施し、奇数番目のサブフレームのデコード結果を採用するか、偶数番目のサブフレームのデコード結果を採用するかを選択する。この最初のWフレームのデコードの際、スタートビットの埋め込まれたサブフレームが判明する。そこで、このスタートビットの埋め込まれたサブフレームに基づいて、次のWシンボルからなるシンボル列の先頭シンボルの位置(スタートビットの位置)を推定し、その位置以降の選択した種類のW個のサブフレーム(W個の奇数番目のサブフレームまたはW個の偶数番目のサブフレーム)のデコードを周期的に繰り返すのである。
【0060】
(2)上記各実施形態において、M種類のサブフレームの中から1種類のサブフレームを選択したとき、この選択したサブフレームの境界と埋め込み時におけるフレーム境界とのずれが大きい場合がある。このずれが大きいと、正常なシンボル抽出を継続することが困難になる場合があり得る。そこで、このようなサブフレーム境界の理想状態からのずれに合わせてサブフレーム境界を微調整する手段を抽出装置に設けてもよい。例えば上記第1実施形態において、奇数番目のサブフレームのグループと、偶数番目のサブフレームのグループについて、サブ基準信号との相関度を算出し、この相関度に基づいて例えば奇数番目のサブフレームのグループを選択したとする。このとき、サブフレーム境界の微調整のための処理を次のように行うのである。まず、奇数番目のサブフレームのグループのサブフレーム境界を元の位置からLサンプルだけ一方向(例えば後方)にシフトして、各種シンボルに対応したサブ基準信号とその奇数番目のサブフレームとの相関度を算出する。次に、奇数番目のサブフレームのサブフレーム境界を元の位置からLサンプルだけ+方向(例えば前方)にシフトして、各種シンボルに対応したサブ基準信号とその奇数番目のサブフレームとの相関度を算出する。そして、サブフレーム境界をシフトする前の各サブフレームから得られたサブ基準信号との間の相関度と、サブフレーム境界を−方向にシフトした各サブフレームから得られたサブ基準信号との間の相関度と、サブフレーム境界を+方向にシフトした各サブフレームから得られたサブ基準信号との間の相関度の3者を比較する。この結果、サブフレーム境界を−方向にシフトした条件での相関度または+方向にシフトした条件での相関度の一方がサブフレーム境界をシフトする前の相関度よりも上昇した場合には、このシフト後のサブフレーム境界を新たなサブフレーム境界としてデコード処理に用いるのである。この態様において、Lは固定された数であってもよいが、Lを擬似乱数としてもよい。すなわち、キャリア信号のデコード中にM種類のサブフレームの中から1種類のサブフレームを選択する操作を複数回繰り返す場合に、その都度、擬似乱数Lを発生させ、サブフレーム境界の微調整に用いるのである。また、M種類のサブフレームの中から1種類のサブフレームを選択するためのデコードを行う際、例えば選択したサブフレームにおいて得られた相関度が小さい場合にはLを大きな値とし、相関度が大きい場合はLを小さな値とするという具合に、相関度をLに対応付ける関数を予め定義しておき、この関数を利用してLの値を決めてもよい。
【0061】
(3)上記各実施形態では、相前後する2つのサブフレーム(種類の異なるサブフレーム)間に隙間を設けなかったが、隙間を設けてもよい。また、上記各実施形態では、相前後する2つのサブフレーム(種類の異なるサブフレーム)はオーバラップさせなかったが、先行するサブフレームの最後尾部分と後続のサブフレームの先頭部分をオーバラップさせてもよい。また、上記各実施形態では、M種類のサブフレームは時間軸上において等間隔で並んだが、例えば第1のサブフレームと第2のサブフレームの開始点間の間隔に対して、第2のサブフレームと第3のサブフレームの開始点間の間隔は短く、第3のサブフレームと第4のサブフレームの開始点間の間隔はそれよりさらに短い、という具合に各サブフレームを非等間隔に並べてもよい。
【0062】
(4)上記各実施形態では、シンボルを示す擬似乱数列にキャリア信号のスペクトラムエンベロープを付与したものと、キャリア信号とをミキシングする、という周波数領域での操作によりシンボルが埋め込まれたキャリア信号を処理対象とした。しかしながら、これはあくまでも一例であり、この発明は、これ以外の各種のアルゴリズムによりシンボルの埋め込まれたキャリア信号からシンボルを抽出する抽出装置に適用可能である。例えばキャリア信号を帯域分割し、これにより得られる複数のサブバンド信号のうちの一部の帯域のサブバンド信号をシンボルを示す基準信号に置き換え、あるいはその基準信号によりサブバンド信号を変調し、他の帯域のサブバンド信号と合成するという時間領域での埋め込みアルゴリズムによりシンボルの埋め込まれたキャリア信号を処理対象としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
21……時間/周波数変換部、22……スペクトラム平坦化部、23……コードブック、24……相関算出部、25……相関判定部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、オーディオ信号等のキャリア信号に埋め込まれた電子透かし情報を抽出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ信号を電子透かし情報の担い手であるキャリア信号とし、このオーディオ信号自体に電子透かし情報を埋め込んで伝送する技術が各種提案されている。図11はこの種の電子透かし情報の埋め込み装置の構成例を示すブロック図である。この埋め込み装置では、ビット“0”を示す擬似乱数列とビット“1”を示す擬似乱数列に各々FFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)を施し、かつ、それにより得られる各スペクトラム列のスペクトラムエンベロープを平坦化した2種類のスペクトラム列が予め用意されている。ここで、擬似乱数列は、例えばPN系列による1024個からなる擬似乱数の列である。そして、埋め込み装置では、これらの2種類のスペクトラム列が電子透かし情報を構成するシンボル(ここではビット“0”とビット“1”)を示す基準信号として用いられ、フレーム単位でのキャリア信号への基準信号の埋め込みが行われる。
【0003】
さらに詳述すると、埋め込み装置において、時間/周波数変換部1は、キャリア信号を所定サンプル数からなるフレームに分割し、フレーム単位でキャリア信号にFFTを施こす。エンベロープ検出部2は、このFFTにより得られるスペクトラム列のエンベロープを検出する。
【0004】
一方、スイッチ3は、当該フレームに埋め込むシンボルがビット“0”である場合にはビット“0”用の平坦化されたスペクトラム列を選択し、当該フレームに埋め込むシンボルがビット“1”である場合にはビット“1”用の平坦化されたスペクトラム列を選択する。エンベロープ付与部4は、このスイッチ3により選択されたスペクトラム列に対して、キャリア信号から得られたスペクトラムエンベロープを乗算し、当該スペクトラムエンベロープを有するスペクトラム列として出力する。乗算器5は、エンベロープ付与部4が出力するスペクトラム列に対して、予め指定されたスケーリングファクタを乗算して出力する。このスケーリングファクタは、電子透かし埋め込み後のキャリア信号において電子透かし情報を聴感上目立たせなくするために乗算される係数である。
【0005】
加算器6は、元の1フレーム分のキャリア信号のスペクトラム列と乗算器5が出力するスペクトラム列とを加算して出力する。このようにして、電子透かし情報のシンボルの埋め込まれた1フレーム分のキャリア信号のスペクトラム列が得られる。このスペクトラム列が時間領域のキャリア信号に戻され、音として放音され、あるいはネットワークを介して配信され、あるいは記憶媒体に記録される。
【0006】
図12は以上のような埋め込み装置により電子透かし情報のシンボルが埋め込まれたキャリア信号からシンボルを抽出する抽出装置の構成例を示すブロック図である。この抽出装置には、埋め込み装置において使用されたものと同様なビット“0”用の擬似乱数列のスペクトラム列を平坦化したものとビット“1”用の擬似乱数列のスペクトラム列を平坦化したものが用意されている。
【0007】
この抽出装置において、時間/周波数変換部11は、キャリア信号を受け取って、所定サンプル数からなるフレームに分割し、フレーム単位でキャリア信号にFFTを施こす。スペクトラム平坦化部12は、このFFTにより得られるスペクトラム列を平坦化し、各スペクトラムの振幅が1であるスペクトラム列を出力する。
【0008】
相関算出部13は、スペクトラム平坦化部12により平坦化されたスペクトラム列とビット“0”用の平坦化されたスペクトラム列との相関度(以下、第1の相関度という)と、スペクトラム平坦化部12により平坦化されたスペクトラム列とビット“1”用の平坦化されたスペクトラム列との相関度(以下、第2の相関度という)とを算出する。ここで、相関度は、2つのスペクトラム列の相関の程度であり、例えば相互相関係数である。
【0009】
相関判定部14は、フレーム毎に、相関算出部13から得られる第1の相関度と第2の相関度とを比較し、第1の相関度が第2の相関度より大きく、かつ、閾値以上である場合には、キャリア信号に埋め込まれたシンボルはビット“0”であると判断し、第2の相関度が第1の相関度より大きく、かつ、閾値以上である場合には、キャリア信号に埋め込まれたシンボルはビット“1”であると判断し、判断したビットを抽出結果として出力する。
【0010】
ここで、抽出装置の時間/周波数変換部11と埋め込み装置の時間/周波数変換部1は、互いに非同期にキャリア信号をフレームに区切る。このため、時間/周波数変換部1がキャリア信号をフレームに区切る際のフレーム境界と、時間/周波数変換部11がキャリア信号をフレームに区切る際のフレーム境界との間にはずれが生じる。従って、何ら策を講じないと、抽出装置では、埋め込み装置側でシンボルを埋め込んだフレームに対してずれたフレームからシンボルを抽出することとなり、正常にシンボルを抽出することが困難になる。
【0011】
そこで、図12に示す抽出装置では、フレーム境界探索制御部15が相関判定部14に供給される第1の相関度と第2の相関度とを監視し、両相関度が閾値よりも小さい場合には、一方の相関度が高くなるように、時間/周波数変換部11がキャリア信号をフレームに区切る際のフレーム境界をシフトさせる制御を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2009−530677号公報
【特許文献2】特開2010−8876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上述した従来の抽出装置において、フレーム境界を探索するための処理は、多大なる演算量を必要とする処理であった。例えば特許文献1に記載の技術では、フレーム境界を1サンプルずつずらしながらキャリア信号における各フレームの信号とシンボルを示す基準信号との相関算出を行い、高い相関度の得られるフレーム境界を探索するようにしている。このような探索処理は、非常に演算量が多く、また、フレーム境界の探索を終えるまでの所要時間が長くなる。このため、例えばシンボルの埋め込まれたキャリア信号をリアルタイムに受信し、受信したキャリア信号からシンボルをリアルタイムに抽出するような抽出処理をCPUに実行させる場合に、キャリア信号の受信開始からシンボルの抽出開始までの遅延時間が長くなるという問題がある。また、このような抽出処理では、フレーム境界の探索処理時にCPUの演算量がピークとなり、その際の演算量が非常に大きなものとなる。このため、抽出処理を行うCPUとして、単位時間当たりの最大演算量の大きなものを使用しなければならないという問題がある。フレーム境界の探索処理の所要時間を短くするために、例えば特許文献2において提案されているように、最初、キャリア信号におけるシンボルの埋め込み領域の大体の位置を求める概略探索を行い、その後、概略探索において求められた概略位置付近においてフレーム境界の位置についての詳細探索を行う、という方法を採ることも考えられる。この方法の採用により、フレーム境界の探索処理に費やすCPUの演算量をある程度減らすことはできるが、それでも、探索処理に相当な演算量が必要となり、シンボル抽出が開始されるまでの所要時間を短くすることができない。このため、リアルタイムに受信されるキャリア信号からリアルタイムにシンボルを抽出する、といったリアルタイムなシンボル抽出が困難であった。また、このフレーム境界の探索処理は1回だけ実行すれば良いのでなく時々実施する必要がある。何故ならば、キャリア信号の受信が一旦停止したり、受信対象のキャリア信号が他のキャリア信号に切り換わる場合があり、さらに、そのような一旦停止や切り換えがない状況でも、キャリア信号の伝送系を制御するクロックの周波数に揺らぎが生じる場合があるからである。このため、リアルタイムにキャリア信号を受信しながらシンボルを抽出する場合には、度々発生する演算量の多い探索処理を実行可能な動作周波数を有するDSPやCPUが必要であった。
【0014】
この発明は以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、演算量の大きいフレーム境界探索処理が不要であり、少ない演算量でキャリア信号から効率的に電子透かし情報をシンボルを抽出することができる抽出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、所定サンプル数からなるフレーム毎に電子透かし情報を構成する1シンボルを示す基準信号が埋め込まれたキャリア信号を受け取り、この受け取ったキャリア信号を、各々前記フレームを構成するサンプル数よりも少ないサンプル数からなり、かつ、各々時間軸方向に沿って前記フレームと同じ周期で並び、かつ、時間軸方向における位置が各種類間で互いにずれたM種類のサブフレームに区切るサブフレーム分割手段と、前記サブフレーム分割手段により区切られた各サブフレームについて、電子透かし情報を構成する各種のシンボルを示す各基準信号の一部の区間をなす各サブ基準信号との相関度を算出し、サブフレーム内の信号との相関度が最大となったサブ基準信号に対応したシンボルをデコード結果として算出するデコード手段と、前記サブフレーム分割手段により区切られたM種類のサブフレームの各種類毎に、電子透かし情報を構成する各種のシンボルに対応した各サブ基準信号との各相関度の最大値が閾値以上であるサブフレームを求め、M種類のサブフレームの中から前記相関度の最大値が閾値以上であるサブフレームの個数が最大であるサブフレームの種類を選択し、選択した種類の各サブフレームから算出されたデコード結果を選択して出力するデコード結果選択手段とを具備することを特徴とする電子透かし情報の抽出装置を提供する。
【0016】
この発明によれば、M種類のサブフレームの中には埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム内に収まるサブフレームとキャリア信号のフレーム境界を跨ぐサブフレームが存在する。ここで、後者の種類のサブフレームは、互いに異なるシンボルが埋め込まれる可能性のある2つのフレームの信号成分により前半部分と後半部分が構成された信号成分を含むので、サブ基準信号との相関度が低くなる可能性が高い。一方、前者の種類のサブフレームは、シンボルの埋め込まれたフレームに包含されているため、いずれかのシンボルに対応したサブ基準信号との相関度が高くなる。このため、前者の種類のサブフレームがデコード結果選択手段により選択される。このようにして、埋め込まれたシンボルを示している確率の高いデコード結果がデコード結果選択手段により選択される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の第1実施形態である電子透かし情報の抽出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態においてシンボルの埋め込みのために使用される基準信号とシンボルの抽出のために使用されるサブ基準信号との関係を例示する図である。
【図3】同実施形態の第1の動作例を示すタイムチャートである。
【図4】同実施形態の第2の動作例を示すタイムチャートである。
【図5】この発明の第2実施形態である電子透かし情報の抽出装置においてシンボルの埋め込みのために使用される基準信号とシンボルの抽出のために使用されるサブ基準信号との関係を例示する図である。
【図6】同実施形態の第1の動作例を示すタイムチャートである。
【図7】同実施形態の第2の動作例を示すタイムチャートである。
【図8】この発明の第3実施形態である電子透かし情報の抽出装置においてシンボルの埋め込みのために使用される基準信号とシンボルの抽出のために使用されるサブ基準信号との関係を例示する図である。
【図9】同実施形態の第1の動作例を示すタイムチャートである。
【図10】同実施形態の第2の動作例を示すタイムチャートである。
【図11】電子透かし情報の埋め込み装置の構成例を示すブロック図である。
【図12】従来の電子透かし情報の抽出装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、この発明の一実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態である電子透かし情報の抽出装置の構成を示すブロック図である。この抽出装置は、前掲図11の埋め込み装置により電子透かし情報のシンボルが埋め込まれたキャリア信号を受信し、受信したキャリア信号からシンボルを抽出する装置である。なお、本発明は、図1に示す抽出装置が実行する各処理をパーソナルコンピュータや携帯電話の各種の電子機器のCPU等に実行させるプログラムとして実現してもよい。
【0019】
図1において、時間/周波数変換部21には、Nサンプルからなるフレーム毎に1シンボルずつ電子透かし情報が埋め込まれたキャリア信号が供給される。時間/周波数変換部21は、サブフレーム分割手段としての機能を有している。すなわち、受け取ったキャリア信号を時間軸上において占める位置が互いに異なったM種類のサブフレームに区切る機能である。ここで、同一種類の各サブフレームは、各々キャリア信号の時間軸方向に沿ってフレームと同じ周期で並ぶ。また、異なる種類のサブフレームは、各々の時間軸方向における位置が1フレームに満たない間隔だけ互いにずれている。従って、キャリア信号を区切った各フレームに着目すると、1つのフレーム内にM種類のサブフレームのサブフレーム境界(同一種類に属するサブフレームの先行サブフレームと後続サブフレームの境界)が含まれた状態となる。この状態において、M種類のサブフレームのサブフレーム境界は、時間軸上において等間隔に並んでいてもよく、非等間隔に並んでいてもよい。また、M種類のサブフレームを各々構成するサンプル数は、N/Mであってもよく、N/Mより多くてもよく、N/Mより少なくてもよい。
【0020】
本実施形態における時間/周波数変換部21は、受信されるキャリア信号を、時間軸上においてN/Mサンプルずつ互いにずれており、かつ、各々がN/MサンプルからなるM種類のサブフレームに区切る。より具体的には、本実施形態における時間/周波数変換部21は、受信されるキャリア信号をN/2サンプルからなるサブフレームに区切り、N/2サンプルからなる奇数番目のサブフレームと、同じくN/2サンプルからなる偶数番目のサブフレームという2種類のサブフレームを発生させる。そして、時間/周波数変換部21は、サブフレーム毎にキャリア信号にFFTを施す。スペクトラム平坦化部22は、このFFTにより得られるスペクトラム列を平坦化し、各スペクトラムの振幅が1であるスペクトラム列を出力する。
【0021】
コードブック23は、シンボル抽出のために用いるサブ基準信号を記憶している。図2は、シンボル埋め込みのための基準信号とシンボル抽出のためのサブ基準信号との関係を示す図である。この例では、埋め込み装置側において、1フレームを構成するNサンプルと同数のサンプルからなる擬似乱数列であって、ビット“0”を示す擬似乱数列とビット“1”を示す擬似乱数列に各々FFTを施し、このFFTにより得られる各スペクトラム列を平坦化した各スペクトラム列がシンボル埋め込みのための基準信号として用いられる。そして、抽出装置において、コードブック23には、これらの基準信号が示す各擬似乱数列の一部の区間を示す各信号が、ビット“0”を抽出するためのサブ基準信号、ビット“1”を抽出するためのサブ基準信号として記憶されている。ここで、ビット“0”を抽出するためのサブ基準信号は、ビット“0”の埋め込みに用いる擬似乱数列(Nサンプル)のほぼ中央の領域を占めるN/2サンプルからなる擬似乱数列にFFTを施し、平坦化したスペクトラム列である。また、ビット“1”を抽出するためのサブ基準信号は、ビット“1”の埋め込みに用いる擬似乱数列(Nサンプル)のほぼ中央の領域を占めるN/2サンプルからなる擬似乱数列にFFTを施し、平坦化したスペクトラム列である。
【0022】
相関算出部24および相関判定部25は、サブフレーム分割手段たる時間/周波数変換部21により区切られたキャリア信号の各サブフレームについて、電子透かし情報を構成する各種のシンボルを示す各基準信号の一部の区間をなす各サブ基準信号との相関度を算出し、サブフレーム内の信号との相関度が最大となったサブ基準信号に対応したシンボルをデコード結果として算出するデコード手段として機能する。さらに詳述すると、相関算出部24は、スペクトラム平坦化部22から得られる各サブフレームの平坦化されたスペクトラム列の各々について、2種類(ビット“0”に対応したものとビット“1”に対応したもの)のサブ基準信号(スペクトラム列)との相関度(相互相関係数)を各々算出する。そして、相関判定部25は、サブフレーム毎に2種類の相関度のうち最も高いものを選択し、その選択した相関度が閾値を越えている場合には、その相関度の得られたサブ基準信号が示すシンボル(ビット“0”または“1”)を当該サブフレームにおけるデコード結果とする。
【0023】
また、相関判定部25は、サブフレーム分割手段たる時間/周波数変換部21により区切られた各サブフレームの各種類毎に、電子透かし情報を構成する各種のシンボルに対応した各サブ基準信号との各相関度の最大値が閾値以上であるサブフレームを求め、各種類のサブフレームの中から相関度の最大値が閾値以上であるサブフレームの個数が最大であるサブフレームの種類を選択し、選択した種類の各サブフレームから算出されたデコード結果を選択して出力するデコード結果選択手段として機能する。さらに詳述すると、本実施形態における相関判定部25は、サブフレームを奇数番目のサブフレームと偶数番目のサブフレームの2種類に分け、この2種類のサブフレームの種類毎に、各種のシンボルに対応したサブ基準信号との相関度が閾値以上であるサブフレームの一定区間における発生個数を求める。そして、奇数番目のサブフレームのグループおよび偶数番目のサブフレームのグループのうち閾値以上の相関度が得られたサブフレームの発生個数の多い方を選択し、選択したサブフレームのグループから得られたデコード結果を選択して出力するのである。
【0024】
図3および図4は各々本実施形態の動作例を示すタイムチャートである。これらの図において、キャリア信号を示すストライプは、縦方向の実線により区切られている。この縦方向の実線は、埋め込み装置側において各々1シンボルの埋め込みを行う各フレームのフレーム境界を示している。また、図3および図4において、デコード結果を示すストライプは、縦方向の実線により区切られている。この縦方向の実線は、時間/周波数変換部21がキャリア信号を複数のサブフレームに区切った際の各サブフレームのサブフレーム境界を示している。そして、図3および図4のキャリア信号を示すストライプにおいて、各フレームを示す各矩形内には各フレームに埋め込まれたシンボル(ビット“0”または“1”)が示されており、デコード結果を示すストライプにおいて、各サブフレームを示す矩形内には各サブフレームにおけるデコード結果が示されている。
【0025】
図3に示す動作例では、シンボル埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界と、抽出装置の時間/周波数変換部21がキャリア信号をサブフレームに区切る際の奇数番目のサブフレームの開始点とが一致している。この場合において、図3の左端に図示されたキャリア信号の1フレームに着目すると、この1フレームにはビット“1”に対応した擬似乱数列に対して、シンボル埋め込み前のキャリア信号のスペクトラムエンベロープを付与した信号成分が含まれている。そして、1番目のサブフレームは、このフレームの前半に相当するので、同フレームに埋め込まれたビット“1”用の擬似乱数列の中央のN/2サンプルの前半のサンプル列を含んでいる。従って、1番目のサブフレームに関しては、ビット“1”を示すサブ基準信号との相関度が他のシンボルを示すサブ基準信号との相関度よりも高く、かつ、閾値よりも高くなり、デコード結果は“1”となる。
【0026】
一方、2番目のサブフレームは、上記1フレームの後半に相当し、同フレームに埋め込まれたビット“1”用の擬似乱数列の中央のN/2サンプルの後半のサンプル列を含んでいる。従って、この2番目のサブフレームも、ビット“1”を示すサブ基準信号との相関度が他のシンボルを示すサブ基準信号との相関度よりも高くなり、かつ、閾値よりも高くなる。従って、2番目のサブフレームのデコード結果も“1”となる。
【0027】
3番目以降の各サブフレームについても同様であり、例えばビット“0”の埋め込まれた2番目のフレームの前半に相当する3番目のサブフレームではデコード結果が“0”、後半に相当する4番目のサブフレームでも、デコード結果が“0”となる。
【0028】
このように埋め込み時のフレーム境界と抽出時の奇数番目のサブフレームの開始点とが一致する状況では、奇数番目のサブフレームのグループと、偶数番目のサブフレームのグループの両方において、サブ基準信号との相関度が閾値以上となるサブフレームが多数発生し、優劣を付けがたい状況になる。この場合の対処の方法として次の2つが考えられる。第1の態様は、各グループ間においてサブ基準信号との相関度が閾値以上となるサブフレームが同数である場合には、例えば奇数番目のサブフレームのグループから得られたデコード結果を最終的なデコード結果として選択する態様である。第2の態様は、奇数番目のサブフレームのグループと偶数番目のサブフレームのグループとの間でサブ基準信号との相関度が閾値以上となるサブフレームの数に差が出るように、相関度との比較に用いる閾値を増加させる態様である。
【0029】
図4に示す動作例では、シンボル埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界に対して、抽出装置の時間/周波数変換部21がキャリア信号をサブフレームに区切る際の奇数番目のサブフレームの開始点が所定サンプル数だけ後方にずれている。この場合において、1番目のサブフレームは、ビット“1”用の擬似乱数列の埋め込まれたフレームの中央付近の位置を占めている。従って、1番目のサブフレームに関しては、ビット“1”を示すサブ基準信号との相関度が他のシンボルを示すサブ基準信号との相関度よりも高く、かつ、閾値よりも高くなり、デコード結果は“1”となる。
【0030】
一方、2番目のサブフレームは、ビット“1”が埋め込まれた1番目のフレームとビット“0”が埋め込まれた2番目のフレームとのフレーム境界を跨いでいる。このため、2番目のサブフレームでは、ビット“0”に対応したサブ基準信号との相関度とビット“1”に対応したサブ基準信号との相関度の両方が閾値よりも低くなり、デコード結果は不定(“?”)となる。3番目以降の各サブフレームについても同様であり、例えばビット“0”の埋め込まれた2番目のフレームに包含される3番目のサブフレームではビット“0”に対応したサブ基準信号との相関度が高くなって、デコード結果が“0”となり、2番目のフレームと3番目のフレームとのフレーム境界を跨ぐ4番目のサブフレームでは、全てのサブ基準信号との相関度が低くなってデコード結果が不定となる。
【0031】
このように、図4に示す動作例において、フレームに包含された奇数番目のサブフレームのグループではいずれかのサブ基準信号との相関度が高くなってデコード結果が得られ、フレーム境界を跨ぐ偶数番目のサブフレームのグループではすべてのサブ基準信号との相関度が閾値より小さくなり、デコード結果が不定となる。そこで、相関判定部25は、奇数番目のサブフレームのグループから得られたデコード結果を最終的なデコード結果として選択して出力するのである。
【0032】
このようにして、奇数番目のサブフレームのグループを選択すると、以後、相関算出部24は、奇数番目のサブフレームのみについて、各種のシンボルに対応したサブ基準信号との相関度を算出し、相関判定部25は、各相関度と閾値との比較を行うことによりキャリア信号に埋め込まれたシンボルを判定する。
【0033】
以上説明した本実施形態によれば、演算量の多いフレーム境界探索を行うことなく、キャリア信号に埋め込まれたシンボルを抽出することができる。また、奇数番目のサブフレームのグループおよび偶数番目のサブフレームのグループの一方を選択するために、キャリア信号の全サブフレームのデコードを行う必要はなく、例えば先頭の所定個数のサブフレームについてのみデコードを行えばよい。従って、電子透かし情報の抽出装置におけるCPUやDSPの能力を高くすることなく、リアルタイムに受信されるキャリア信号からリアルタイムにシンボルを抽出することができる。また、従来、電子透かし情報の抽出処理の演算量において、フレーム境界探索処理の実行時に演算量がピークとなり、このピークの演算量を処理することができるように高速のCPUやDSPを使用する必要があった。しかし、本実施形態によれば、フレーム境界探索処理が不要となり、抽出処理の演算量が平準化され、抽出処理におけるピークの演算量が小さくなるので、抽出処理に用いるCPUやDSPのコストを低減することができる。
【0034】
<第2実施形態>
図5は、この発明の第2実施形態である電子透かし情報の抽出装置においてシンボルの埋め込みのために使用される基準信号とシンボルの抽出のために使用されるサブ基準信号との関係を例示する図である。
【0035】
本実施形態では、シンボル埋め込みに用いた擬似乱数列の複数個所からより小規模な複数の擬似乱数列を取り出し、これらの擬似乱数列からシンボル抽出のための複数種類のサブ基準信号を生成し、この複数種類のサブ基準信号を用いてシンボル抽出を行う。図5に示す例では、ビット“0”抽出のためのサブ基準信号として、サブ基準信号CODE0a、CODE0b、CODE0cが示され、ビット“1”抽出のためのサブ基準信号として、サブ基準信号CODE1a、CODE1b、CODE1cが示されている。ここで、サブ基準信号CODE0aおよびCODE1aは、ビット“0”または“1”の埋め込みのための1フレーム(Nサンプル)分の擬似乱数列から前半のN/2サンプルの擬似乱数列を取り出し、このN/2サンプルの擬似乱数列にFFTを施すことにより得られるスペクトラム列を平坦化したものである。また、サブ基準信号CODE0bおよびCODE1bは、ビット“0”または“1”の埋め込みのための1フレーム(Nサンプル)分の擬似乱数列から中央のN/2サンプルの擬似乱数列を取り出し、このN/2サンプルの擬似乱数列にFFTを施すことにより得られるスペクトラム列を平坦化したものである。また、サブ基準信号CODE0cおよびCODE1cは、ビット“0”または“1”の埋め込みのための1フレーム(Nサンプル)分の擬似乱数列から後半のN/2サンプルの擬似乱数列を取り出し、このN/2サンプルの擬似乱数列にFFTを施すことにより得られるスペクトラム列を平坦化したものである。
【0036】
本実施形態における相関算出部24(図1参照)は、サブフレーム毎に、これらのサブ基準信号CODE0a、CODE0b、CODE0c、CODE1a、CODE1b、CODE1cの各々とキャリア信号との各相関度を算出する。そして、本実施形態における相関判定部25(図1参照)は、相関算出部24により算出される各相関度に基づいて各サブフレームをデコードするとともに、デコード結果を次の6種類に分類し、デコード結果の種類毎にサブ基準信号との相関度が閾値以上となったサブフレーム数を求め、このサブフレーム数が最大となる種類のデコード結果を選択して出力するのである。
【0037】
デコード結果a1:奇数番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の前半部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果a2:偶数番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の前半部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果b1:奇数番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の中央部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果b2:偶数番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の中央部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果c1:奇数番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の後半部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果c2:偶数番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の後半部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
【0038】
図6および図7は、各々本実施形態の動作例を示すタイムチャートである。これらの図において、デコード結果aは、上記デコード結果a1およびa2を、デコード結果bは、上記デコード結果b1およびb2を、デコード結果cは、上記デコード結果c1およびc2を総称するものである。
【0039】
図6に示す動作例では、埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界と、抽出時におけるキャリア信号の奇数番目のサブフレームの開始点が一致している。このような状況において、デコード結果aに関しては、奇数番目のサブフレームとサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度が高くなってデコード結果a1が得られ、偶数番目のサブフレームとサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度が低くなってデコード結果a2が不定となる可能性が高い。何故ならば、ビット“0”または“1”が埋め込まれたフレームは、ビット“0”または“1”に対応した埋め込み用の擬似乱数列に元のキャリア信号のスペクトラムエンベロープを付与した信号成分を含んでおり、同フレームの前半部分である奇数番目のサブフレームは、この信号成分の前半部分を含むので、同擬似乱数列のスペクトラム列と近似したスペクトラム列を有している。一方、サブ基準信号CODE0aおよびCODE1aは、ビット“0”または“1”に対応した埋め込み用の擬似乱数列の前半部分から生成されたサブ基準信号であり、これも同擬似乱数列のスペクトラム列と近似したスペクトラム列を含む。従って、フレームの前半部分である奇数番目のサブフレームでは、このサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度が高くなるのである。
【0040】
同様の理由により、デコード結果cに関しては、偶数番目のサブフレームとサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度が高くなってデコード結果c2が得られ、奇数番目のサブフレームとサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度が低くなってデコード結果c1が不定となる可能性が高い。
【0041】
また、デコード結果bに関しては、奇数番目のサブフレームと偶数番目のサブフレームの両方において、サブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度が高くなってデコード結果b1およびb2が得られる可能性が高い。何故ならば、キャリア信号において各フレームの中央部分には、サブ基準信号CODE0bまたはCODE1bに対応した擬似乱数列のスペクトラム列と近似したスペクトラム列を持った信号成分が含まれていると考えられる。そして、キャリア信号においてフレームの前半部分である奇数番目のサブフレームの後半部分は、このサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bに対応した擬似乱数列に近い擬似乱数列の前半部分を含んでいる。また、キャリア信号においてフレームの後半部分である偶数番目のサブフレームの前半部分は、このサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bに対応した擬似乱数列に近い擬似乱数列の後半部分を含んでいる。従って、奇数番目のサブフレームおよび偶数番目のサブフレームの両方において、サブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度が高くなる可能性が高い。
【0042】
この例では、埋め込み時においてキャリア信号の1フレームに埋め込まれた擬似乱数列の前半部分および後半部分に相当するものが、抽出時には奇数番目のサブフレームおよび偶数番目のサブフレームに含まれている。このため、デコード結果aおよびcの基となる相関度と、デコード結果bの基となる相関度とを比較した場合、前者の相関度の方が高くなり、前者のデコード結果の方が信頼できるデコード結果となる。
【0043】
図7に示す動作例では、シンボル埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界に対して、抽出装置の時間/周波数変換部21がキャリア信号をサブフレームに区切る際の奇数番目のサブフレームの開始点が所定サンプル数だけ後方にずれている。このため、奇数番目のサブフレームは、埋め込み時におけるキャリア信号の1フレーム内に包含されているが、偶数番目のサブフレームは、埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界を跨いでいる。このため、奇数番目のサブフレームでは、サブフレームとサブ基準信号との相関度が高くなってデコード結果としてビット“0”または“1”が得られ、偶数番目のサブフレームでは、サブフレームとサブ基準信号との相関度が低くなってデコード結果が不定となる。
【0044】
また、図7に示す動作例では、奇数番目のサブフレームは、埋め込み時のキャリア信号の1フレームの中央付近の位置を占めている。このため、奇数番目のサブフレームでは、埋め込み用の擬似乱数列の中央部分を用いて生成されたサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度が他のサブ基準信号との相関度よりも高くなる。従って、この例では、各種のデコード結果の中でデコード結果b1が最も信頼できるデコード結果となる。
【0045】
そこで、本実施形態において相関判定部25は、上記6種類のデコード結果の中に不定でないデコード結果の発生回数が最大であるデコード結果が複数発生した場合に、現状よりも閾値を高くすることにより、不定でないデコード結果の発生個数が単独一位であるデコード結果を1種類発生させ、そのデコード結果を選択する。このようにすることで、上記6種類のデコード結果の中から最も信頼できるデコード結果を選択することができる。
【0046】
本実施形態においても上記第1実施形態と同様な効果が得られる。また、本実施形態によれば、上記第1実施形態と比べると、相関度を算出するサブ基準信号の種類が増えるのでその分だけ演算量が増すが、各サブ基準信号とサブフレームとの相関度の最大値が上記第1実施形態よりも高くなり、より信頼度の高いデコード結果を得ることができる。
【0047】
<第3実施形態>
上記第1および第2実施形態では、キャリア信号をフレーム長の1/2(N/2サンプル)の長さを持ったサブフレームに分割し、サブフレーム毎にサブ基準信号との相関度を算出した。これに対し、本実施形態では、キャリア信号をN/Mサンプル(Mは2以上の整数)からなるM種類のサブフレームに分割し、サブフレーム毎にサブ基準信号との相関度を算出する。また、本実施形態では、各シンボルの種類毎に、同シンボルの埋め込みのための擬似乱数列をM分割した各擬似乱数に基づいて、同シンボルを抽出するのに用いるM種類のサブ基準信号を生成する。以下、M=3の場合について本実施形態の具体例を説明する。
【0048】
図8は、M=3の場合について、シンボルの埋め込みのために使用される基準信号とシンボルの抽出のために使用されるサブ基準信号との関係を例示する図である。図8に示す例では、ビット“0”に対応したサブ基準信号として、サブ基準信号CODE0a、CODE0b、CODE0cが示され、ビット“1”に対応したサブ基準信号として、サブ基準信号CODE1a、CODE1b、CODE1cが示されている。ここで、サブ基準信号CODE0aおよびCODE1aは、ビット“0”または“1”を示す1フレーム(Nサンプル)分の擬似乱数列を3等分したうちの先頭のN/3サンプルの擬似乱数列にFFTを施し、この結果得られるスペクトラム列を平坦化したものである。また、サブ基準信号CODE0bおよびCODE1bは、ビット“0”または“1”を示す1フレーム(Nサンプル)分の擬似乱数列を3等分したうちの中央のN/3サンプルの擬似乱数列にFFTを施し、この結果得られるスペクトラム列を平坦化したものである。また、サブ基準信号CODE0cおよびCODE1cは、ビット“0”または“1”を示す1フレーム(Nサンプル)分の擬似乱数列を3等分したうちの最後のN/3サンプルの擬似乱数列にFFTを施し、この結果得られるスペクトラム列を平坦化したものである。
【0049】
本実施形態における相関算出部24(図1参照)は、キャリア信号をN/Mサンプル(=N/3サンプル)からなるサブフレームに分割した各サブフレーム毎に、これらのサブ基準信号CODE0a、CODE0b、CODE0c、CODE1a、CODE1b、CODE1cの各々とキャリア信号との各相関度を算出する。そして、本実施形態における相関判定部25(図1参照)は、相関算出部24により算出される各相関度に基づいてシンボルをデコードするとともに、デコード結果を次の9種類に分類し、デコード結果の種類毎にサブ基準信号との相関度が閾値以上となったサブフレーム数を求め、このサブフレーム数が最大となる種類のデコード結果を選択して出力するのである。
【0050】
デコード結果a1:3k+1番目(kは整数)のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の先頭部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果a2:3k+2番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の先頭部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果a3:3k+3番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の先頭部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果b1:3k+1番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の中央部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果b2:3k+2番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の中央部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果b3:3k+3番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の中央部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果c1:3k+1番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の最後尾部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果c2:3k+2番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の最後尾部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
デコード結果c3:3k+3番目のサブフレームと、埋め込み用の擬似乱数列の最後尾部分を用いて生成したサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度に基づいて生成されたデコード結果
【0051】
図9および図10は、各々本実施形態の動作例を示すタイムチャートである。これらの図において、デコード結果aは、上記デコード結果a1〜a3を、デコード結果bは、上記デコード結果b1〜b3を、デコード結果cは、上記デコード結果c1〜c3を総称するものである。
【0052】
図9に示す動作例では、埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界と、抽出時におけるキャリア信号の3k+1番目のサブフレームの開始点が一致している。このような状況において、デコード結果aに関しては、3k+1番目のサブフレームとサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度が高くなってデコード結果a1が得られ、3k+3番目および3k+3番目の各サブフレームとサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aとの相関度が低くなってデコード結果a2、a3が不定となる可能性が高い。何故ならば、サブ基準信号CODE0aおよびCODE1aは、埋め込み用の1フレーム分の擬似乱数列の先頭部分から生成されたサブ基準信号であり、キャリア信号においてフレームの先頭部分である3k+1番目のサブフレームは、このサブ基準信号CODE0aまたはCODE1aに対応した擬似乱数列のスペクトラム列と近似したスペクトラム列を持った信号成分を含んでいる可能性が高いからである。
【0053】
同様の理由により、デコード結果bに関しては、3k+2番目のサブフレームとサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度が高くなってデコード結果b2が得られ、3k+1番目および3k+3番目の各サブフレームとサブ基準信号CODE0bまたはCODE1bとの相関度が低くなってデコード結果b1、b3が不定となる可能性が高い。また、デコード結果cに関しては、3k+3番目のサブフレームとサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度が高くなってデコード結果c3が得られ、3k+1番目および3k+2番目の各サブフレームとサブ基準信号CODE0cまたはCODE1cとの相関度が低くなってデコード結果c1、c2が不定となる可能性が高い。
【0054】
図10に示す動作例では、シンボル埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界に対して、抽出装置の時間/周波数変換部21がキャリア信号をサブフレームに区切る際の3k+1番目のサブフレームの開始点が所定サンプル数だけ後方にずれている。このため、3k+1番目および3k+2番目の各サブフレームは、埋め込み時におけるキャリア信号の1フレーム内に包含されているが、3k+3番目のサブフレームは、埋め込み時におけるキャリア信号のフレーム境界を跨いでいる。このため、3k+1番目および3k+2番目の各サブフレームでは、サブフレームとサブ基準信号との相関度が高くなってデコード結果としてビット“0”または“1”が得られ、3k+3番目のサブフレームでは、サブフレームとサブ基準信号との相関度が低くなってデコード結果が不定となる。
【0055】
上記第2実施形態と同様、本実施形態における相関判定部25は、上記9種類のデコード結果の中に不定でないデコード結果の発生回数が最大(同率一位)であるデコード結果が複数発生した場合に、現状よりも閾値を高くすることにより、不定でないデコード結果の発生個数が単独一位であるデコード結果を1種類発生させ、そのデコード結果を選択する。このようにすることで、上記9種類のデコード結果の中から最も信頼できるデコード結果を選択することができる。本実施形態においても上記第2実施形態と同様な効果が得られる。
【0056】
<他の実施形態>
以上、この発明の第1〜第3実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0057】
(1)埋め込み装置側において、キャリア信号に対して、連続したWシンボル(例えばW=64)からなる電子透かし情報を周期的に繰り返し埋め込んでもよい。また、その際に、埋め込み装置では、1周期分のWシンボルからなるシンボル列の先頭シンボルを電子透かし情報の境界を示すスタートビットとする。そして、埋め込みに用いる擬似乱数列は、スタートビットとしての“0”または“1”に対応したものと、それに続くデータビットとしての“0”または“1”に対応したものを、別個の擬似乱数列とする。
【0058】
このような態様において抽出装置では、データビットとしてのビット“0”または“1”に対応したサブ基準信号に加えて、スタートビットとしてのビット“0”または“1”に対応したサブ基準信号をコードブック23に記憶させる。そして、相関算出部24は、このコードブック23に記憶された全ての種類のサブ基準信号とサブフレームとの各相関度を算出する。また、相関判定部25は、これらの各種類のサブ基準信号とサブフレームとの各相関度のうち最大の相関度の得られたサブ基準信号に対応したシンボルをデコード結果とするのである。この態様においても上記各実施形態と同様な効果が得られる。
【0059】
この態様において、キャリア信号における最初のWフレームについて、上記各実施形態に開示の技術を実施し、M種類のサブフレームの中から1種類のサブフレームを選択するようにしてもよい。例えば上記第1実施形態にこの態様を適用する場合、まず、最初のWフレームについて上記第1実施形態を実施し、奇数番目のサブフレームのデコード結果を採用するか、偶数番目のサブフレームのデコード結果を採用するかを選択する。この最初のWフレームのデコードの際、スタートビットの埋め込まれたサブフレームが判明する。そこで、このスタートビットの埋め込まれたサブフレームに基づいて、次のWシンボルからなるシンボル列の先頭シンボルの位置(スタートビットの位置)を推定し、その位置以降の選択した種類のW個のサブフレーム(W個の奇数番目のサブフレームまたはW個の偶数番目のサブフレーム)のデコードを周期的に繰り返すのである。
【0060】
(2)上記各実施形態において、M種類のサブフレームの中から1種類のサブフレームを選択したとき、この選択したサブフレームの境界と埋め込み時におけるフレーム境界とのずれが大きい場合がある。このずれが大きいと、正常なシンボル抽出を継続することが困難になる場合があり得る。そこで、このようなサブフレーム境界の理想状態からのずれに合わせてサブフレーム境界を微調整する手段を抽出装置に設けてもよい。例えば上記第1実施形態において、奇数番目のサブフレームのグループと、偶数番目のサブフレームのグループについて、サブ基準信号との相関度を算出し、この相関度に基づいて例えば奇数番目のサブフレームのグループを選択したとする。このとき、サブフレーム境界の微調整のための処理を次のように行うのである。まず、奇数番目のサブフレームのグループのサブフレーム境界を元の位置からLサンプルだけ一方向(例えば後方)にシフトして、各種シンボルに対応したサブ基準信号とその奇数番目のサブフレームとの相関度を算出する。次に、奇数番目のサブフレームのサブフレーム境界を元の位置からLサンプルだけ+方向(例えば前方)にシフトして、各種シンボルに対応したサブ基準信号とその奇数番目のサブフレームとの相関度を算出する。そして、サブフレーム境界をシフトする前の各サブフレームから得られたサブ基準信号との間の相関度と、サブフレーム境界を−方向にシフトした各サブフレームから得られたサブ基準信号との間の相関度と、サブフレーム境界を+方向にシフトした各サブフレームから得られたサブ基準信号との間の相関度の3者を比較する。この結果、サブフレーム境界を−方向にシフトした条件での相関度または+方向にシフトした条件での相関度の一方がサブフレーム境界をシフトする前の相関度よりも上昇した場合には、このシフト後のサブフレーム境界を新たなサブフレーム境界としてデコード処理に用いるのである。この態様において、Lは固定された数であってもよいが、Lを擬似乱数としてもよい。すなわち、キャリア信号のデコード中にM種類のサブフレームの中から1種類のサブフレームを選択する操作を複数回繰り返す場合に、その都度、擬似乱数Lを発生させ、サブフレーム境界の微調整に用いるのである。また、M種類のサブフレームの中から1種類のサブフレームを選択するためのデコードを行う際、例えば選択したサブフレームにおいて得られた相関度が小さい場合にはLを大きな値とし、相関度が大きい場合はLを小さな値とするという具合に、相関度をLに対応付ける関数を予め定義しておき、この関数を利用してLの値を決めてもよい。
【0061】
(3)上記各実施形態では、相前後する2つのサブフレーム(種類の異なるサブフレーム)間に隙間を設けなかったが、隙間を設けてもよい。また、上記各実施形態では、相前後する2つのサブフレーム(種類の異なるサブフレーム)はオーバラップさせなかったが、先行するサブフレームの最後尾部分と後続のサブフレームの先頭部分をオーバラップさせてもよい。また、上記各実施形態では、M種類のサブフレームは時間軸上において等間隔で並んだが、例えば第1のサブフレームと第2のサブフレームの開始点間の間隔に対して、第2のサブフレームと第3のサブフレームの開始点間の間隔は短く、第3のサブフレームと第4のサブフレームの開始点間の間隔はそれよりさらに短い、という具合に各サブフレームを非等間隔に並べてもよい。
【0062】
(4)上記各実施形態では、シンボルを示す擬似乱数列にキャリア信号のスペクトラムエンベロープを付与したものと、キャリア信号とをミキシングする、という周波数領域での操作によりシンボルが埋め込まれたキャリア信号を処理対象とした。しかしながら、これはあくまでも一例であり、この発明は、これ以外の各種のアルゴリズムによりシンボルの埋め込まれたキャリア信号からシンボルを抽出する抽出装置に適用可能である。例えばキャリア信号を帯域分割し、これにより得られる複数のサブバンド信号のうちの一部の帯域のサブバンド信号をシンボルを示す基準信号に置き換え、あるいはその基準信号によりサブバンド信号を変調し、他の帯域のサブバンド信号と合成するという時間領域での埋め込みアルゴリズムによりシンボルの埋め込まれたキャリア信号を処理対象としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
21……時間/周波数変換部、22……スペクトラム平坦化部、23……コードブック、24……相関算出部、25……相関判定部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定サンプル数からなるフレーム毎に電子透かし情報を構成する1シンボルを示す基準信号が埋め込まれたキャリア信号を受け取り、この受け取ったキャリア信号を、各々前記フレームを構成するサンプル数よりも少ないサンプル数からなり、かつ、各々時間軸方向に沿って前記フレームと同じ周期で並び、かつ、時間軸方向における位置が各種類間で互いにずれたM種類のサブフレームに区切るサブフレーム分割手段と、
前記サブフレーム分割手段により区切られた各サブフレームについて、電子透かし情報を構成する各種のシンボルを示す各基準信号の一部の区間をなす各サブ基準信号との相関度を算出し、サブフレーム内の信号との相関度が最大となったサブ基準信号に対応したシンボルをデコード結果として算出するデコード手段と、
前記サブフレーム分割手段により区切られたM種類のサブフレームの各種類毎に、電子透かし情報を構成する各種のシンボルに対応した各サブ基準信号との各相関度の最大値が閾値以上であるサブフレームを求め、M種類のサブフレームの中から前記相関度の最大値が閾値以上であるサブフレームの個数が最大であるサブフレームの種類を選択し、選択した種類の各サブフレームから算出されたデコード結果を選択して出力するデコード結果選択手段と
を具備することを特徴とする電子透かし情報の抽出装置。
【請求項2】
前記デコード手段は、1種類のシンボルを示すサブ基準信号として当該シンボルを示す基準信号の複数個所から抽出された複数種類のサブ基準信号を使用して前記相関度を算出することを特徴とする請求項1に記載の電子透かし情報の抽出装置。
【請求項3】
前記デコード結果選択手段は、デコード結果の選択を行った後、前記サブフレームのサブフレーム境界を微調整し、この微調整後のサブフレーム境界において前記キャリア信号を区切って前記相関度を算出する処理を前記デコード手段に行わせ、相関度が改善された場合に、以後、微調整後のサブフレーム境界において前記相関度の算出を前記デコード手段に行わせることを特徴とする請求項1または2に記載の電子透かし情報の抽出装置。
【請求項4】
前記デコード結果選択手段は、キャリア信号からのシンボルの抽出を継続している期間内に、前記M種類のサブフレームの中から1種類のサブフレームを選択する処理を複数回実行することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の電子透かし情報の抽出装置。
【請求項1】
所定サンプル数からなるフレーム毎に電子透かし情報を構成する1シンボルを示す基準信号が埋め込まれたキャリア信号を受け取り、この受け取ったキャリア信号を、各々前記フレームを構成するサンプル数よりも少ないサンプル数からなり、かつ、各々時間軸方向に沿って前記フレームと同じ周期で並び、かつ、時間軸方向における位置が各種類間で互いにずれたM種類のサブフレームに区切るサブフレーム分割手段と、
前記サブフレーム分割手段により区切られた各サブフレームについて、電子透かし情報を構成する各種のシンボルを示す各基準信号の一部の区間をなす各サブ基準信号との相関度を算出し、サブフレーム内の信号との相関度が最大となったサブ基準信号に対応したシンボルをデコード結果として算出するデコード手段と、
前記サブフレーム分割手段により区切られたM種類のサブフレームの各種類毎に、電子透かし情報を構成する各種のシンボルに対応した各サブ基準信号との各相関度の最大値が閾値以上であるサブフレームを求め、M種類のサブフレームの中から前記相関度の最大値が閾値以上であるサブフレームの個数が最大であるサブフレームの種類を選択し、選択した種類の各サブフレームから算出されたデコード結果を選択して出力するデコード結果選択手段と
を具備することを特徴とする電子透かし情報の抽出装置。
【請求項2】
前記デコード手段は、1種類のシンボルを示すサブ基準信号として当該シンボルを示す基準信号の複数個所から抽出された複数種類のサブ基準信号を使用して前記相関度を算出することを特徴とする請求項1に記載の電子透かし情報の抽出装置。
【請求項3】
前記デコード結果選択手段は、デコード結果の選択を行った後、前記サブフレームのサブフレーム境界を微調整し、この微調整後のサブフレーム境界において前記キャリア信号を区切って前記相関度を算出する処理を前記デコード手段に行わせ、相関度が改善された場合に、以後、微調整後のサブフレーム境界において前記相関度の算出を前記デコード手段に行わせることを特徴とする請求項1または2に記載の電子透かし情報の抽出装置。
【請求項4】
前記デコード結果選択手段は、キャリア信号からのシンボルの抽出を継続している期間内に、前記M種類のサブフレームの中から1種類のサブフレームを選択する処理を複数回実行することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の電子透かし情報の抽出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−13791(P2012−13791A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148039(P2010−148039)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
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