説明

電子部品の実装構造

【課題】演算素子や記憶素子の実装密度を高くし、また実装密度に適合した冷却性能をえる。
【解決手段】ラックの内部に着脱自在に格納されるマザーボード1に、動作することにより発熱する電子部品を装着する電子部品の実装構造であって、演算素子と記憶素子とが対をなすとともにこれら複数対の演算素子と記憶素子とがサブボード3に装着され、そのサブボードの一側部には電気的な接続を行うためのターミナルが設けられ、前記マザーボード1に前記ターミナルが差し込まれる複数列のソケットが設けられ、複数枚の前記サブボード3が互いに一定の間隔をあけて平行になるように前記各ソケットに差し込まれて前記マザーボード1に対して垂直に起立した状態に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中央演算処理装置(CPU)や記憶素子などの電子部品を基板に実装する構造に関し、特に冷却手段と併せて実装する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆるコンピュータの情報処理能力は、中央演算処理装置(CPU)とメモリーとからなるチップセット自体の演算速度を速くすることと併せてそのチップセットの数を多くすることにより増大する。そのため、データセンターやスーパーコンピュータなどでは、チップセットの実装数を可及的に多くすることが試みられている。
【0003】
チップセットを実装する一般的な構造は、ラックと称される筐体の内部に一定の間隔をあけて積層状態に取り付けられるマザーボードに、CPUおよびメモリーを実装し、そのマザーボードをラックの内面に設けられているスロットやソケット(もしくはコネクター)に差し込んでいる。その例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されたシステムは、筐体の内部に設けられたスロットレールに差し込まれるアダプタユニットを備え、そのアダプタユニットの側板が延長されてその延長部分にサイドレールが設けられ、そのサイドレールに各種電装ユニットを着脱できるように構成されている。したがって、各種電装ユニットが装着されたアダプタユニットを上記のスロットレールに沿って筐体の内部に挿入することにより、多数の電装ユニットを筐体の内部に収容でき、実装密度を高くすることができる。
【0004】
また、特許文献2には、マザーボードと複数のプリント基板とによって基板集合体を構成し、これを筐体の内部に収容した構成の電子機器装置が記載されている。この特許文献2に記載されている装置におけるプリント基板は、半導体記憶素子などを実装した低発熱基板と、CPU素子からなる高発熱半導体を実装した高発熱基板とであり、低発熱基板は第1排気機構に臨ませて配置され、高発熱基板はファンによって空気を強制的に流通させる第2排気機構に臨ませて配置されている。すなわち、CPUと記憶素子とはそれぞれ別異の基板に装着され、互いに離隔している。
【0005】
さらに、コンピュータの拡張スロットに差し込まれるボードを、主ボードと補助ボードとに分けて構成した装置が特許文献3に記載されている。その補助ボードは、その上下両面に複数のチップが装着され、この補助ボードが主ボードの上下両面側に、空気が流通する空気路を形成した状態で対向させて積層され、各チップは、主ボードに設けられているトレースを介してインターフェースに接続するように構成されている。したがって、特許文献3に記載された構造では、主ボードの上下両面側に補助ボードが積層されることにより、チップを取り付ける面が、各補助ボードの上下両面であることにより合計で4面になり、1枚の主ボードに対するチップの実装密度を高くすることができ、またチップで生じる熱を空気によって運び去って空冷するように構成されている。
【0006】
上述した特許文献1ないし3に記載されている装置がいわゆる空冷タイプの装置であるのに対して、特許文献4にはCPUなどの高発熱部品を、ヒートパイプを介していわゆる水冷するように構成された構造が記載されている。その高発熱部品は、特許文献3に記載された構造では、印刷基板に取り付けられ、その高発熱部品の上面にはヒートパイプの一端部が熱授受可能に接触させられ、そのヒートパイプの他方の端部は、印刷基板の側部に印刷基板に沿わせて配置されている管の内部に液密性を維持した状態で挿入され、その管の内部に水などの冷却媒体を流すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002ー353664号公報
【特許文献2】特開平5ー102688号公報
【特許文献3】特表2004ー507067号公報
【特許文献4】特開平5ー135781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように特許文献1に記載されたシステムは、各種電装ユニットをアダプタユニットと同一の平面上に並べるように構成されているから、電装ユニットもしくはその電装ユニットに搭載されている電子部品の数は、アダプタユニットから延長されているサイドレールによって画定される面の面積の大きさに限定され、実装密度が制限される不都合がある。特に、特許文献1に記載された構成では、筐体の上部に設けたファンによって空冷するように構成されているので、各アダプタユニットの間に空気流路を確保する必要があり、そのため電装ユニットをいわゆる平面的に配列せざるを得ないことにより、この点でも実装密度が制限される可能性がある。
【0009】
また、特許文献2に記載された構成では、高発熱基板をファンによる強制換気を行う第2排気機構内に配置しているので、その冷却を積極的に行うことができるが、CPUなどの高発熱部品をまとめて一つの基板に装着しているので、いずれかの高発熱部品に異常が生じた場合には、その基板ごと交換することになり、これがコストの高騰の要因となり、また実装密度を高くできるとしても、CPUと記憶素子との距離が長くなって演算速度が低下する不都合がある。
【0010】
さらに、特許文献3に記載された構成では、補助ボードを用いるので、1枚の主ボードに装着できるチップの数を多くすることができるが、そのチップの配列姿勢は、主ボートと補助ボードとの間に空気路を形成する必要があることにより、主ボードの表面および裏面に平面的に並べるものであり、したがってチップの配列可能数は、主ボードの表面および裏面の面積によって制限され、実装密度を増大できるとしてもその増大効果の少ないものであった。
【0011】
そして、特許文献4に記載された装置は、CPUなどの高発熱部品を、マザーボードに相当する印刷基板の表面に並べて配置するものであるから、上述した特許文献1や特許文献3に記載されている構成のものと同様に、実装密度が制限される不都合がある。また、特許文献4に記載された構成では、ヒートパイプが管の内部に差し込まれているから、高熱発熱部品と実質的に一体化されているヒートパイプを印刷基板ごと取り外すことができず、基板の増設や交換が困難であり、コンピュータなどの電子装置のメンテナンス性が劣る不都合がある。
【0012】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、スペースを有効に利用し、また冷却性に優れ、そのために実装密度を従来になく高くすることのできる電子部品の実装構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、ラックの内部に着脱自在に格納されるマザーボードに、動作することにより発熱する電子部品を装着する電子部品の実装構造において、演算素子と記憶素子とが対をなすとともにこれら複数対の演算素子と記憶素子とがサブボードに装着され、そのサブボードの一側部には電気的な接続を行うためのターミナルが設けられ、前記マザーボードに前記ターミナルが差し込まれる複数列のソケットが設けられ、複数枚の前記サブボードが互いに一定の間隔をあけて平行になるように前記各ソケットに差し込まれて前記マザーボードに対して垂直に起立した状態に保持されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記サブボードは、前記演算素子および記憶素子が取り付けられた回路基板を有し、前記演算素子のうち前記回路基板とは反対側の面に熱授受可能に接触させられたヒートパイプが設けられ、前記回路基板およびヒートパイプが前記回路基板に対して電気的に絶縁された一対の金属板によって挟み付けられるとともに、前記ヒートパイプの少なくとも一方の端部がその金属板の端部にまで延びており、前記演算素子の熱を前記ヒートパイプによって前記金属板の一端部側に運んで放熱させるように構成されていることを特徴とする電子部品の実装構造である。
【0015】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記金属板の端部に熱授受可能に接触する伝熱ブロックを備えた水冷用レールが前記ラックの内部に設けられ、その水冷用レールの内部に前記ヒートパイプから熱を奪う冷却水が流通させられていることを特徴とする電子部品の実装構造である。
【0016】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記伝熱ブロックは、前記一対の金属板の端部を挟み付けて接触する一対の分割ブロックを有することを特徴とする電子部品の実装構造である。
【0017】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記一対の分割ブロックは、前記マザーボードの前記サブボードが装着される面側に、該面に直立して配置されるとともに、各分割ブロック同士の上端側の間隔と下端側の間隔とが広狭に変化するように高さ方向の中央部で回転自在に支持され、かつ各分割ブロックの対向面は、上端側での間隔が広くなる傾斜面であることを特徴とする電子部品の実装構造である。
【発明の効果】
【0018】
この発明では、演算素子と記憶素子とが対をなすように構成され、これらがいわゆるチップセットを構成しており、その複数対の演算素子および記憶素子がサブボードに装着されている。その複数のサブボードがマザーボートの一方の面側にマザーボードに対して垂直に立設した状態となるように、マザーボードのソケットに差し込まれてマザーボードに取り付けられている。したがって、各演算素子および記憶素子は、マザーボートの前記一方の面に対向させていわゆる平らに配列されずに、立てた状態に配列されている。言い換えれば、面積の小さい側面をマザーボードに対向させている。そのため、マザーボードの一方の面上に並べられる演算素子およぞ記憶素子の数が多くなり、実装密度を高くすることができる。また、サブボードには演算素子と記憶素子とが対を成して装着されているので、演算を行うにあたってデータを相互に伝送し合う素子同士の距離が短くなり、演算速度を向上させて、コンピュータなどの電子装置の小型化だけでなく、高能力化を図ることができる。さらに、演算素子などに異常が生じた場合、マザーボードを交換することなく、その異常のある素子が装着されているサブボードを交換すればよいので、交換部品数が少なくなってメンテナンスに要するコストの低廉化を図ることができる。
【0019】
また、この発明では、高密度化によって、演算素子の周囲のスペースが狭くなることがあるが、演算素子で発生した熱は、空気によるだけでなく、ヒートパイプによってサブボードの端部側(金属板の端部側)に運んで放散させるので、演算素子の冷却性能に優れ、高密度化に伴う熱処理問題を解消することができる。
【0020】
特に請求項3の発明によれば、いわゆる水冷することになるので、冷却性能を向上させることができる。その場合、ヒートパイプもしくは金属板を水冷用レール内部に差し込まずに、伝熱ブロックを介して冷却水に熱を伝達するように構成されているから、サブボードをマザーボードに対して着脱するにあたり、漏水などの危険を未然に防止することができる。言い換えれば、サブボードの着脱が容易になる。
【0021】
また、伝熱ブロックを一対の分割ブロックによって構成し、これらの分割ブロックによってサブボードの端部、より具体的には金属板の端部を挟み付けるように構成することにより、サブボードの着脱性に支障を来すことなく、冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係る実装構造の一例を説明するための斜視図である。
【図2】そのサブボードの一つを示す斜視図である。
【図3】そのサブボードの分解斜視図である。
【図4】そのサブボードの正面図である。
【図5】そのサブボードの模式的な断面図である。
【図6】サブボードとマザーボードのソケットとの相対関係を説明するための図である。
【図7】サブボードと水冷用レールとの連結状態を示す部分的な斜視図である。
【図8】伝熱ブロックの一例を示す模式図である。
【図9】マザーボードを搭載したラックを一部省略して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。この発明に係る実装構造は、電子部品をサブボードに装着し、そのサブボードをマザーボートの一方の面に起立状態(立てた状態)に取り付けるものであって、図1にその一例を斜視図で示してある。マザーボード1は矩形の平板体であって、電気的な接続を行うための回路(図示せず)を備えており、その左右の両側縁部に水冷用レール2が配置され、また中央部にこれらの水冷用レール2と対を成す二本の水冷用レール2が互いに平行に配置されている。これら互いに対を成す水冷用レール2の間に複数のサブボード3が配置されている。
【0024】
そのサブボード3の一例を図2ないし図5に示してある。サブボード3は、二つの演算素子(CPU)4と、それぞれのCPU4と対を成す六つ(合計12個)の記憶素子(DIMM)5とが一方の面に装着された回路基板6を有し、その回路基板6の一側部(特に、突出させた一側部)に電気的な導通を行うためのターミナル7が形成されている。このサブボード3の外装は、アルミニウムもしくはその合金などから構成された一対の金属板8a,8bによって構成されており、一方の金属板であるボトムプレート8bは、上記の回路基板6のうちの演算素子4や記憶素子5が装着されていないいわゆる裏面に、ゴムや合成樹脂などからなる絶縁板9を介してあてがわれている。なお、ここで説明している具体例では、各金属板8a,8bは、回路基板6とほぼ等しい幅であり、長さは回路基板6の両側に突出するように回路基板6より長くなっている。
【0025】
一方、回路基板6の表面側には、回路基板6との間に演算素子4や記憶素子5を挟み付けた状態にヒートパイプ10が配置されている。ヒートパイプ10は、従来知られている構成と同様のものであって、銅などの金属管の内部に水などの作動流体を封入するとともに、毛管圧力を生じるウイックを必要に応じてその金属管の内部に設け、主として、その作動流体の蒸発潜熱によって熱を輸送するように構成されている。また、ヒートパイプ10は、図3や図5に示すように、扁平状に形成されており、二本のヒートパイプ10が用いられている。これらのヒートパイプ10と演算素子4との間には、図5に示すように、両者の間の隙間を埋めて熱抵抗を低減するためにシート状もしくはペースト状の伝熱材11が介在させられている。また、記憶素子5の数が多く、また演算素子4よりも薄いことにより、演算素子4のうえには伝熱材11を介して熱拡散板12が配置され、ヒートパイプ10はその熱拡散板12に熱伝達可能に接触している。
【0026】
他方の金属板であるトッププレート8aは、上記の各素子4,5や熱拡散板12およびヒートパイプ10を回路基板6との間に挟み付けるように回路基板6のいわゆる表面側にあてがわれている。このトッププレート8aは、上記のボトムプレート8bとほぼ等しい幅および長さであって、その長手方向の両端部は厚肉に形成され、各プレート8a,8bをビスなどで締結した場合に、各プレート8a,8bの中央部での間隔をある程度維持して各素子4,5や回路基板6などを過度に挟み付けないように構成されている。また、その厚肉の部分には、前述したヒートパイプ10の端部を密着状態で挿入させることのできるスリット13が形成されている。さらに、トッププレート8aの両端部における厚肉の部分には、サブボード3をマザーボード1に固定するためのビス(図示せず)を貫通させる貫通孔14が形成されている。
【0027】
マザーボード1は、図1に示す例では、上記のサブボード3を一列に12個で、二列(合計24個)に配列するように構成されている。マザーボード1の一方の面(仮に上面とする)には、サブボード3をこのように配列して取り付けるためのソケット15が設けられている。このソケット15は、従来知られているものと同様の構成であって、その内部に電気的な接続を行うための金属端子が設けられ、前記ターミナル7を差し込むことにより各サブボード3とマザーボード1とを導通させるように構成されている。このソケット15が上述した水冷用レール2の間に、互いに平行に、かつマザーボード1に対していわゆる上向きに配置されており、ここにサブボード3を差し込むことによりサブボード3をマザーボード1に対して垂直に起立した状態に保持させるように構成されている。さらに、各ソケット15は、図6に示すように、ターミナル7と同程度の長さであって、サブボード3の全長より短く形成されている。すなわち、サブボード3がソケット15の左右両側に突出するように構成されている。
【0028】
上記のサブボード3の長さは、水冷用レール2同士の間隔より僅かに短い程度であって、そのサブボード3の両端部から水冷用レール2に熱を伝達して各素子4,5を冷却するように構成されている。そのための構成について説明すると、図7にその一例を示してある。ここに示す例では、水冷用レール2は、断面が矩形を成す銅などの金属製の軸状の部材であって、サブボード3側を向く面(仮に内側面とする)には、伝熱ブロック16が密着状態に取り付けられている。この伝熱ブロック16は、サブボード3におけるヒートパイプ10で運ばれた熱を水冷用レール2に伝達するためのものであって、直方体状の二つの分割ブロックによって構成されており、これらの分割ブロックは、水冷用レール2と同様の金属によって形成されている。各分割ブロックの対向面の間は、サブボード3の端部を図7の上側から差し込むスロットであって、その間隔は、サブボード3の端部の両側面に密着するようにサブボード3の厚さとほぼ等しい間隔に設定されている。
【0029】
また、これらの分割ブロックは、その高さ方向の中間部を前記水冷用レール2の内側面に垂直な方向に向けて貫通させたビス17によって水冷用レール2に取り付けられ、かつそのビス17を中心にして僅か回転するように構成されている。さらに、各分割ブロックの対向面は、図8に模式的に示すように、上端部側での間隔が下端部側での間隔より広くなるように僅かに傾斜した傾斜面とされている。これは、サブボード3の外側面と分割ブロックの内面とを、より良く密着させるためのものであり、各分割ブロック同士の間に形成されているスロットに前述したサブボード3の端部を上側から差し込む場合、スロットの上側が開いていることにより容易に差し込むことができ、また深く差し込んだ場合には、各分割ブロックの下端側の間隔が押し広げられかつそれに伴って上端側の間隔が狭められることにより、サブボード3の外側面と分割ブロックの内面とが確実に密着し、両者の間の熱抵抗を小さくすることができる。
【0030】
さらに、水冷用レール2について説明すると、水冷用レール2は熱伝導性の良好な材料によって形成されており、その内部には互いに連通した通水管路がその全長に亘って形成されている。その通水管路に水などの冷却用流体を給排するために、供給ポート2aと排出ポート2bとが水冷用レール2の長手方向での一端部に形成されている。これらの各ポート2a,2bは、後述するラックの内部に設けられている給水管や配水管に接続され、適宜な冷却設備で冷却された流体を通水管路に連続的に供給してサブボード3を冷却するように構成されている。
【0031】
多数のサブボード3を搭載したマザーボード1は、図9に示すように、ラック18の内部に一定の間隔を空けて多段に配置される。なお、図9で符号19は、電源部である。したがって1台のラック18に搭載されるサブボード3の数は、上述した例では、「(マザーボード1の段数)×24」であり、演算素子4あるいはチップセットの数は「(マザーボード1の段数)×24×2」となる。
【0032】
したがって、この発明による実装構造によれば、各素子4,5はマザーボード1に直接搭載せずに、マザーボード1に対して着脱できるサブボード3に配置してあるから、いずれかの素子4,5に異常が生じた場合には、その異常のある素子4,5が取り付けられているサブボード3を交換することにより、異常を解消することができる。その場合、交換することになる素子4,5もしくはチップセットは、上記の例では二つであり、マザーボード1の全体を交換する場合に比較して、素子4,5もしくはチップセットの交換数がはるかに少なくなり、メンテナンスコストを大幅に低廉化することができる。
【0033】
また、サブボード3はそのターミナル7をマザーボード1のソケット15に差し込んでマザーボード1に取り付けられ、その状態で長手方向の両端部が伝熱ブロック16に挟み込まれているから、サブボード3はそのソケット15や伝熱ブロック16から引き抜けばマザーボード1から取り外すことができる。したがってこの発明によれば、サブボード3あるいはチップセットの交換を容易に行うことができ、また水冷構造であっても漏水などの不都合は生じない。
【0034】
さらに、この発明では、各素子4,5はマザーボード1に対して立てた状態に配置される。すなわち、各素子4,5は面積の小さい面をマザーボード1の表面に対向させた状態で配置され、マザーボード1の表面側の空間を有効に利用したいわゆる立体配置の状態になる。したがって、この発明によれば、マザーボード1上に並べることのできる素子4,5の数が多くなって、実装密度を高めることができる。
【0035】
この発明による上述した実装構造における各素子4,5は、通電されて動作することにより発熱する。その熱は、伝熱材11や熱拡散板12を介してヒートパイプ10に伝達される。ヒートパイプ10は、前述したように、封入された作動流体が蒸発して流動した後に放熱かつ凝縮することにより潜熱の形で熱を輸送する伝達部材である。そのヒートパイプ10の両端部が水冷用レール2に密着している伝熱ブロック16に挟み付けられて間接的に伝熱ブロック16に接触しているから、各素子4,5から伝達された熱によって作動流体が蒸発し、その蒸気が、冷却されている両端部側に流動して放熱する。すなわち、ヒートパイプ10から各金属板8a,8bを介して伝熱ブロック16に熱が伝達され、さらにその伝熱ブロック16から水冷用レール2内の冷却水に熱が伝達される。したがって、発熱部材となっている各素子4,5は、水冷用レール2の内部を流通している冷却水によって間接的に水冷される。その場合、ヒートパイプ10は、銅などの金属の熱伝導率に比較して数倍ないし数十倍、高い熱伝導率を有しているから各素子4,5と冷却水との間の熱抵抗が小さく、各素子4,5を効率良く冷却することができる。そのため、この発明に係る上記の実装構造によれば、各素子4,5をいわゆる立体配置することにより実装密度が高くなり、それに伴って発熱密度が高くなるものの、その発熱密度に応じた高い冷却性能を有しているので、十分実用に供し得るものとなっている。
【0036】
なお、上記の具体例では、1枚のサブボード3に二つの演算素子4もしくは二対のチップセットを実装した構成を示したが、この発明では1枚のサブボード3に一つもしくは三つ以上の演算素子もしくはチップセットを実装するように構成してもよく、さらに回路基板6の両面に各素子やチップセットを実装するように構成してもよい。同様に、この発明では、マザーボードの表裏の両面にサブボードを取り付けるように構成してもよい。また、上記の具体例では、マザーボードをラックの内部に水平に配置するように構成した例を示したが、マザーボードはラック内で垂直に立てて配置してもよく、その場合、サブボードは水平に配置されることになる。さらに、この発明では、冷却水による冷却と併せて強制空冷を併用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…マザーボード、 2…水冷用レール、 3…サブボード、 4…演算素子(CPU)、 5…記憶素子(DIMM)、 6…回路基板、 7…ターミナル、 10…ヒートパイプ、 15…ソケット、 16…伝熱ブロック、 18…ラック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックの内部に着脱自在に格納されるマザーボードに、動作することにより発熱する電子部品を装着する電子部品の実装構造において、
演算素子と記憶素子とが対をなすとともにこれら複数対の演算素子と記憶素子とがサブボードに装着され、
そのサブボードの一側部には電気的な接続を行うためのターミナルが設けられ、
前記マザーボードに前記ターミナルが差し込まれる複数列のソケットが設けられ、
複数枚の前記サブボードが互いに一定の間隔をあけて平行になるように前記各ソケットに差し込まれて前記マザーボードに対して垂直に起立した状態に保持されている
ことを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項2】
前記サブボードは、前記演算素子および記憶素子が取り付けられた回路基板を有し、
前記演算素子のうち前記回路基板とは反対側の面に熱授受可能に接触させられたヒートパイプが設けられ、
前記回路基板およびヒートパイプが前記回路基板に対して電気的に絶縁された一対の金属板によって挟み付けられるとともに、前記ヒートパイプの少なくとも一方の端部がその金属板の端部にまで延びており、
前記演算素子の熱を前記ヒートパイプによって前記金属板の一端部側に運んで放熱させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の実装構造。
【請求項3】
前記金属板の端部に熱授受可能に接触する伝熱ブロックを備えた水冷用レールが前記ラックの内部に設けられ、
その水冷用レールの内部に前記ヒートパイプから熱を奪う冷却水が流通させられている
ことを特徴とする請求項2に記載の電子部品の実装構造。
【請求項4】
前記伝熱ブロックは、前記一対の金属板の端部を挟み付けて接触する一対の分割ブロックを有することを特徴とする請求項3に記載の電子部品の実装構造。
【請求項5】
前記一対の分割ブロックは、前記マザーボードの前記サブボードが装着される面側に、該面に直立して配置されるとともに、各分割ブロック同士の上端側の間隔と下端側の間隔とが広狭に変化するように高さ方向の中央部で回転自在に支持され、かつ各分割ブロックの対向面は、上端側での間隔が広くなる傾斜面であることを特徴とする請求項4に記載の電子部品の実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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