説明

電子部品及びその製造方法

【課題】製造時にコイルの変形が生じることを抑制できる電子部品及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】本体12は、絶縁性材料からなる直方体状の本体であって、上面S1、底面S2、端面S3,S4及び側面S5,S6を有している。引き出し部18a,18bは、端面S3,S4のそれぞれにおいて本体12から露出しており、側面S5,S6間において延在している。コイル部20は、引き出し部18a,18bを本体12内において接続している。引き出し部18a,18b及びコイル部20は、1枚の金属板16により構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品及びその製造方法に関し、より特定的には、コイルを内蔵している電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品としては、例えば、特許文献1に記載の電子部品が知られている。該電子部品では、基板及び絶縁膜上に接着剤により貼りつけられた導体箔がエッチングにより加工されて、2つの導体パターンが形成されている。そして、基板及び絶縁膜が積層されて積層体が形成されることにより、2つの導体パターン同士が接続されて、コイルが形成されている。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の電子部品では、電子部品の製造時に、導体パターンが変形するおそれがある。より詳細には、電子部品の製造工程には、積層体を積層方向から加圧する圧着工程や、マザー積層体を複数の積層体に分割するカット工程等が存在する。圧着工程やカット工程等では、積層体に対して力が加わるため、導体パターンが変形するおそれがある。特に、特許文献1に記載の電子部品では、2つの導体パターンの一端同士が接続されている。そのため、2つの導体パターンの一端は、自由端となっている。よって、圧着工程やカット工程等において、導体パターンの一端同士にずれが生じやすい。その結果、コイルの特性が所望の特性から変動したり、導体パターン間に接続不良が発生したりするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−329842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、製造時にコイルの変形が生じることを抑制できる電子部品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る電子部品は、絶縁性材料からなる直方体状の本体であって、上面、底面、1対の端面及び1対の側面を有している本体と、前記1対の端面のそれぞれにおいて前記本体から露出している第1の引き出し部及び第2の引き出し部であって、前記1対の側面間において延在している第1の引き出し部及び第2の引き出し部と、前記第1の引き出し部と前記第2の引き出し部とを前記本体内において接続しているコイル部と、を備えており、前記第1の引き出し部、前記第2の引き出し部及び前記コイル部は、1枚の金属部材により構成されていること、を特徴とする。
【0007】
本発明の一形態に係る電子部品の製造方法は、第1の方向に延在している複数本の直線状部、及び、隣り合う前記直線状部間を接続している複数のコイル部を有する1枚のマザー金属部材を準備する工程と、絶縁性材料からなる板状のマザー本体内に前記マザー金属部材を埋め込む工程と、前記複数本の直線状部のそれぞれを2分割するように、前記第1の方向に沿って前記マザー本体をカットすると共に、隣り合う前記コイル部の間において前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って該マザー本体をカットして、複数の本体を得る工程と、を備えていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造時にコイルの変形が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係る電子部品の外観斜視図である。
【図2】マザー金属板をz軸方向から平面視した図である。
【図3】マザー本体をz軸方向から透視した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る電子部品及びその製造方法について説明する。
【0011】
(電子部品の構造)
以下に、一実施形態に係る電子部品の構造について図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る電子部品10の外観斜視図である。図1において、上下方向をz軸方向と定義する。また、電子部品10をz軸方向から平面視したときに、電子部品10の長辺が延在している方向をx軸方向と定義し、電子部品10の短辺が延在している方向をy軸方向と定義する。
【0012】
電子部品10は、本体12、外部電極14(14a,14b)、引き出し部18(18a,18b)及びコイル部20を備えている。本体12は、絶縁性材料からなり、より特定的には、磁性体材料からなっている。本実施形態では、本体12は、熱可塑性樹脂やセルロース等とフェライトとが混合されたペースト状の坏土を固めて焼成した部材である。
【0013】
本体12は、直方体状をなしており、上面S1、下面S2、端面S3,S4及び側面S5,S6を有している。上面S1は、本体12のz軸方向の正方向側の面である。下面S2は、本体12のz軸方向の負方向側の面である。端面S3,S4はそれぞれ、本体12のx軸方向の負方向側及び正方向側の面である。側面S5,S6はそれぞれ、本体12のy軸方向の負方向側及び正方向側の面である。
【0014】
引き出し部18aは、端面S3において本体12から露出しており、側面S5,S6間において延在している。より詳細には、引き出し部18aは、y軸方向に平行な長辺及びx軸方向に平行な短辺を有する長方形状をなしている。引き出し部18aのx軸方向の負方向側の長辺の全体は、本体12の端面S3において露出している。引き出し部18aのy軸方向の負方向側の短辺の全体は、側面S5において露出している。引き出し部18aのy軸方向の正方向側の短辺の全体は、側面S6において露出している。
【0015】
引き出し部18bは、端面S4において本体12から露出しており、側面S5,S6間において延在している。より詳細には、引き出し部18bは、y軸方向に平行な長辺及びx軸方向に平行な短辺を有する長方形状をなしている。引き出し部18bのx軸方向の正方向側の長辺の全体は、本体12の端面S4において露出している。引き出し部18bのy軸方向の負方向側の短辺の全体は、側面S5において露出している。引き出し部18bのy軸方向の正方向側の短辺の全体は、側面S6において露出している。
【0016】
以上のような引き出し部18a,18bは、複数の本体12が一体に構成されているマザー本体が複数の本体12に分割された際に、本体12から露出する。
【0017】
コイル部20は、引き出し部18aと引き出し部18bとを本体12内において接続しており、直線状をなしている。より詳細には、コイル部20のx軸方向の負方向側の端部は、引き出し部18aのy軸方向の中央部分に接続されている。また、コイル部20のx軸方向の正方向側の端部は、引き出し部18bのy軸方向の中央部分に接続されている。
【0018】
以上のように構成された引き出し部18a,18b及びコイル部20は、Cu、Ag等からなる1枚の金属板(金属部材)16により構成されており、H型をなしている。
【0019】
外部電極14aは、本体12の端面S3を覆っており、上面S1、下面S2及び側面S5,S6に折り返されている。これにより、外部電極14aは、引き出し部18aに接続されている。外部電極14aは、例えば、本体12の端面S3に導電性ペーストが塗布されて形成された銀電極上にSnめっき及びNiめっきが施されて形成されている。
【0020】
外部電極14bは、本体12の端面S4を覆っており、上面S1、下面S2及び側面S5,S6に折り返されている。これにより、外部電極14bは、引き出し部18bに接続されている。外部電極14bは、例えば、本体12の端面S4に導電性ペーストが塗布されて形成された銀電極上にSnめっき及びNiめっきが施されて形成されている。
【0021】
(電子部品の製造方法)
次に、一実施形態に係る電子部品10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図2は、マザー金属板116をz軸方向から平面視した図である。図3は、マザー本体112をz軸方向から透視した図である。
【0022】
まず、図2に示すマザー金属板116を準備する。具体的には、Cuからなる1枚の金属板を準備する。そして、金属板に対して打ち抜き加工を施すことにより、図2に示すマザー金属板116を得る。マザー金属板116は、複数の直線状部118及び複数のコイル部20を有している。
【0023】
直線状部118は、y軸方向に延在しており、x軸方向に等間隔に並んでいる。直線状部118のx軸方向における幅は、引き出し部18a,18bのx軸方向における幅の合計と等しい。コイル部20は、x軸方向に隣り合う2本の直線状部118間を接続しており、x軸方向に延在していると共に、y軸方向に等間隔に並んでいる。これにより、マザー金属板116は、図2に示すように、格子状をなしている。
【0024】
次に、ペースト状の坏土を作製する。具体的には、酸化第二鉄(Fe23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)及び酸化銅(CuO)を所定の比率で秤量したそれぞれの材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を800℃で1時間仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕して、フェライトセラミック粉末を得る。
【0025】
このフェライトセラミック粉末に対して結合剤(熱可塑性樹脂、セルロース等)と可塑剤、湿潤材、溶剤を加えてミキサー、混錬機等で混合、脱気を行う。これにより、ペースト状の坏土を得る。
【0026】
次に、板状のマザー本体112を作製するための型にマザー金属板116をセットし、型にペースト状の坏土を流し込む。これにより、図3に示すように、板状のマザー本体112内にマザー金属板116を埋め込む。この後、マザー本体112に対して、静水圧プレスによる圧着を施す。
【0027】
次に、マザー本体112を図3の点線に沿ってカットして、未焼成の複数の本体12を得る。より詳細には、複数の直線状部118のそれぞれを2分割するように、y軸方向に沿ってマザー本体112をカットする。これにより、直線状部118は、引き出し部18a,18bに分割される。そして、カット面(すなわち、端面S3,S4)において引き出し部18a,18bの長辺が露出する。また、隣り合うコイル部20の間(中間)においてx軸方向に沿ってマザー本体112をカットする。これにより、カット面(すなわち、側面S5,S6)において引き出し部18a,18bの短辺が露出する。
【0028】
次に、未焼成の本体12に、脱バインダー処理及び焼成を施す。更に、本体12の表面に、バレル研磨処理を施して、面取りを行う。
【0029】
次に、Agを主成分とする導電性材料からなる導電性ペーストを、本体12の端面S3,S4の全面、並びに、上面S1、下面S2及び側面S5,S6の一部に塗布する。そして、塗布した導電性ペーストを所定条件で焼き付ける。これにより、外部電極14a,14bとなるべき銀電極を形成する。更に、外部電極14a,14bとなるべき銀電極の表面に、Niめっき/Snめっきを施すことにより、外部電極14a,14bを形成する。以上の工程により、電子部品10が完成する。
【0030】
(効果)
以上のように構成された電子部品10及びその製造方法によれば、製造時にコイルの変形が生じることを抑制できる。より詳細には、特許文献1に記載の電子部品の製造工程には、積層体を積層方向から加圧する圧着工程や、マザー積層体を複数の積層体に分割するカット工程等が存在する。圧着工程やカット工程等では、積層体に対して力が加わるため、導体パターンが変形するおそれがある。特に、特許文献1に記載の電子部品では、2つの導体パターンの一端同士が接続されている。そのため、2つの導体パターンの一端は、自由端となっている。よって、圧着工程やカット工程等において、導体パターンの一端同士にずれが生じやすい。その結果、コイルの特性が所望の特性から変動したり、導体パターン間に接続不良が発生したりするおそれがある。
【0031】
これに対して、電子部品10では、引き出し部18aは、端面S3において本体12から露出しており、側面S5,S6間において延在している。引き出し部18bは、端面S4において本体12から露出しており、側面S5,S6間において延在している。更に、コイル部20は、引き出し部18aと引き出し部18bとを本体12内において接続している。更に、引き出し部18a,18b及びコイル部20は、1枚の金属板16により構成されている。このような構造を有する引き出し部18a,18b及びコイル部20は、y軸方向に延在している複数本の直線状部118及びx軸方向に延在している複数のコイル部20を有する1枚のマザー金属板116が埋め込まれたマザー本体112を、以下の方法によりカットすることで得られる。具体的には、複数本の直線状部118のそれぞれを2分割するように、y軸方向に沿ってマザー本体112をカットすると共に、隣り合うコイル部20の間においてx軸方向に沿ってマザー本体112をカットする。
【0032】
ここで、格子状のマザー金属板116では、直線状部118及びコイル部20が途中で途切れていないため、自由端が存在しない。そのため、マザー本体112の圧着工程やカット工程において、マザー本体112に力が加わったとしても、マザー金属板116は、変形しにくい。その結果、電子部品10及びその製造方法によれば、製造時にコイルの変形が生じることを抑制できる。
【0033】
また、コイル部20を直線状とすることにより、例えば、ミアンダ形状をなすコイル部の長さに比べてコイル部20の長さが短くなる。その結果、コイル部20の剛性が高くなり、コイル部20が変形しにくくなる。
【0034】
また、マザー金属板116は、打ち抜き加工により作製されている。そのため、マザー金属板116に比較的に厚い金属板を用いることが可能である。その結果、引き出し部18a,18b及びコイル部20の断面積を大きくすることが可能となり、電子部品10の直流抵抗値を低減することが可能となる。
【0035】
また、コイル部20の両端はそれぞれ、引き出し部18a,18bのy軸方向の中央に接続されている。これにより、コイル部20から側面S5までの距離とコイル部20から側面S6までの距離とが等しくなる。その結果、コイル部20から側面S5までの距離及びコイル部20から側面S6までの距離の両方を大きくすることができるので、コイル部20と側面S5との間、及び、コイル部20と側面S6との間をより多くの磁束が通過できるようになる。よって、電子部品10のインダクタンス値が大きくなる。また、コイル部20の幅のみならず、コイル部20の厚みも比較的に自由に設計できるので、所望のインピーダンスを得るための設計自由度が向上する。
【0036】
(その他の実施形態)
本発明に係る電子部品及びその製造方法は、前記実施形態に係る電子部品10及びその製造方法に限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。
【0037】
電子部品10及びその製造方法では、ペースト状の坏土を型に流し込むことによりマザー本体112を作製しているが、マザー本体112の作製方法はこれに限らない。例えば、セラミックグリーンシートが積層されることによってマザー本体112が作製されてもよい。
【0038】
また、坏土によっては本体12の焼成は不要である。
【0039】
また、コイル部20は直線状であるとしたが、コイル部20の形状はこれに限らない。コイル部20は、引き出し部18a,18bを接続していればよく、例えば、蛇行した形状であるミアンダ状をなしていてもよい。
【0040】
また、金属板16及びマザー金属板116の代わりに、金属箔及びマザー金属箔が用いられてもよい。この場合、本体12及びマザー本体112は、複数の絶縁体層及び複数のセラミックグリーンシートが積層されて構成され、金属箔及びマザー金属箔は、絶縁体層やセラミックグリーンシートに接着剤により貼り付けられる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明は、電子部品及びその製造方法に有用であり、特に、製造時にコイル部が変形することを抑制できる点において優れている。
【符号の説明】
【0042】
S1 上面
S2 下面
S3,S4 端面
S5,S6 側面
10 電子部品
12 本体
14a,14b 外部電極
16 金属板
18a,18b 引き出し部
20 コイル部
112 マザー本体
116 マザー金属板
118 直線状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性材料からなる直方体状の本体であって、上面、底面、1対の端面及び1対の側面を有している本体と、
前記1対の端面のそれぞれにおいて前記本体から露出している第1の引き出し部及び第2の引き出し部であって、前記1対の側面間において延在している第1の引き出し部及び第2の引き出し部と、
前記第1の引き出し部と前記第2の引き出し部とを前記本体内において接続しているコイル部と、
を備えており、
前記第1の引き出し部、前記第2の引き出し部及び前記コイル部は、1枚の金属部材により構成されていること、
を特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記コイル部は、直線状であること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記複数の本体が一体に構成されているマザー本体が該複数の本体に分割された際に、前記第1の引き出し部及び前記第2の引き出し部は、前記本体から露出すること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電子部品。
【請求項4】
第1の方向に延在している複数本の直線状部、及び、隣り合う前記直線状部間を接続している複数のコイル部を有する1枚のマザー金属部材を準備する工程と、
絶縁性材料からなる板状のマザー本体内に前記マザー金属部材を埋め込む工程と、
前記複数本の直線状部のそれぞれを2分割するように、前記第1の方向に沿って前記マザー本体をカットすると共に、隣り合う前記コイル部の間において前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って該マザー本体をカットして、複数の本体を得る工程と、
を備えていること、
を特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記マザー金属部材は、格子状をなしていること、
を特徴とする請求項4に記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−12527(P2013−12527A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143044(P2011−143044)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】