説明

電子部品用光硬化性樹脂の製造方法、電子部品用光硬化性樹脂、電子部品用シール材

【課題】ウレタン化プロセスにおいて効率よくウレタン反応を促進させることが可能で、かつ非汚染性を有する電子部品用光硬化性樹脂の製造方法を提供する。当該製造方法により得られる電子部品用光硬化性樹脂、及びこれを用いた電子部品用シール材を提供する。
【解決手段】チタン系触媒の存在下、共役ジエン系重合体ポリオール、又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールと、光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させる反応工程を含み、前記共役ジエン系重合体ポリオール、又は前記共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールにおけるポリオールの水酸基当量(X)と光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物当量(Y)との比(X:Y)を、1:1.5〜1:2.5とする電子部品用光硬化性樹脂の製造方法、その製造方法により得られる電子部品用光硬化性樹脂、及びその光硬化性樹脂を硬化してなる電子部品用シール材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品用光硬化性樹脂の製造方法、電子部品用光硬化性樹脂、電子部品用シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シール材や接着材等の用途に種々の光硬化性樹脂が開発されている。このような光硬化性樹脂を製造するプロセスとして、末端に水酸基を有する重合体の当該末端水酸基を、アクリロイルオキシエチルアクリレートと反応させるウレタン化プロセスが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなプロセスには、ウレタン反応を促進させるために、SnやPbを含む触媒が使用される場合がある。しかし、このような光硬化性樹脂を電子部品に使用する際には、非汚染性が要求されるため、上記SnやPbを含む触媒を使用することはできない。
【0003】
非汚染性の要求を満たすための触媒として、Tiキレート錯体触媒(例えば、特許文献2及び3参照)やTiアルキレート触媒(例えば、特許文献4〜6参照)が提案されている。
【0004】
しかし、既述のウレタン化プロセスにこれらの触媒を単に適用したのでは、反応原料を過剰に投入してしまう場合があり、効率的なウレタン反応を行なえないことがあり、ウレタン化プロセスにおける反応条件を適正化する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−145949号公報
【特許文献2】特開昭57−155255号公報
【特許文献3】特表2001−501534号公報
【特許文献4】特表2004−526858号公報
【特許文献5】特表2006−506416号公報
【特許文献6】特開2007−197507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上から、本発明は、ウレタン化プロセスにおいて効率よくウレタン反応を促進させることが可能で、かつ非汚染性を有する電子部品用光硬化性樹脂の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、当該製造方法により得られる電子部品用光硬化性樹脂、及びこれを用いた電子部品用シール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、当該目的を達成できる本発明に想到した。すなわち、本発明は下記の通りである。
【0008】
[1]チタン系触媒の存在下、共役ジエン系重合体ポリオール、又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールと、光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させる反応工程を含み、前記共役ジエン系重合体ポリオール、又は前記共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールにおけるポリオールの水酸基当量(X)と光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物当量(Y)との比(X:Y)を、1:1.5〜1:2.5とする電子部品用光硬化性樹脂の製造方法。
[2]前記反応工程後に、未反応の前記光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を除去する除去工程を含む[1]に記載の電子部品用光硬化性樹脂の製造方法。
[3]前記除去工程において、前記未反応の光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を除去する処理が、ろ過処理である[2]に記載の電子部品用光硬化性樹脂の製造方法。
[4]前記除去工程において、前記未反応の光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を除去する処理が、溶媒抽出処理である[2]に記載の電子部品用光硬化性樹脂の製造方法。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法により製造される電子部品用光硬化性樹脂。
[6]上記[5]に記載の電子部品用光硬化性樹脂を硬化してなる電子部品用シール材。
[7]ガスケット材である[6]に記載の電子部品用シール材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ウレタン化プロセスにおいて効率よくウレタン反応を促進させることが可能で、かつ非汚染性を有する電子部品用光硬化性樹脂の製造方法を提供することができる。また、当該製造方法により得られる電子部品用光硬化性樹脂、及びこれを用いた電子部品用シール材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[電子部品用光硬化性樹脂及びその製造方法]
本発明の電子部品用光硬化性樹脂は、チタン系触媒の存在下、共役ジエン系重合体ポリオール、又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールと、光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させる反応工程を経て製造される。
【0011】
当該工程を経ることで、共役ジエン系重合体ポリオール、又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールに光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を反応させて、光硬化性不飽和炭化水素基を導入した光硬化性樹脂が得られる。
【0012】
なお、ここでいう共役ジエン系重合体ポリオール又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールは、後述する水添工程を経て主鎖に不飽和二重結合を持たない水添共役ジエン系重合体ポリオール又は水添共役ジエン/芳香族ビニル系共重合体ポリオール(以下、「本発明に係る水添(共)重合体ポリオール」ということがある)を含むものとする。
【0013】
当該反応工程においては、共役ジエン系重合体ポリオール又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールにおけるポリオールの水酸基当量(X)と光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物当量(Y)との比(X:Y)を、1:1.5〜1:2.5とする。当該比が1:1.5未満では、ウレタン反応が十分に進まず、1:2.5を超えると例えば、過剰のアクリロイルオキシエチルアクリレート(例えば、昭和電工株式会社製)を除去することが困難となってしまう。当該比は、1:1.7〜1:2.3とすることが好ましく、1:1.9〜1:2.1とすることがより好ましい。
【0014】
反応工程において使用されるチタン系触媒としては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンブトキシドダイマー、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド等のチタンアルコキシド;チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテート等のチタンキレート;ポリヒドロキシチタンステアレート等のチタンアシレート;が挙げられる。なかでも、取り扱いの点からチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
チタン系触媒は、ポリマーに対し、100ppm〜1000ppm存在させることが好ましい。
【0015】
上記の本発明に係る共役ジエン系重合体ポリオール又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールに、光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を反応させて、該ポリオールの末端に光硬化性不飽和炭化水素基を導入するためには、光硬化性不飽和炭化水素基がアクリロイル基又はメタクリロイル基であることが好ましい。ここで、光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物としては、アクリロイルイソシアネートやメタクリロイルイソシアネートが好ましく、これらとの反応により、上記の水添(共)重合体ポリオールは(メタ)アクリレート化される。
【0016】
アクリロイルイソシアネートとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられ、メタクリロイルイソシアネートとしては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられる。
【0017】
共役ジエン系重合体ポリオール又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールに、光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を反応させる際の温度は、40〜120℃とすることが好ましく、60〜100℃とすることがより好ましい。
【0018】
本発明の電子部品用光硬化性樹脂の製造方法においては、既述の反応工程の後に、未反応の光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を除去する除去工程を設けたり、反応工程の前に、重合体製造工程、ポリオール製造工程、ポリオールの水添工程といった工程を設けたりしてもよい。以下、これらの工程について説明する。
【0019】
(除去工程)
除去工程においては、反応工程後に、未反応の前記光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を除去する。この未反応の光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を除去する処理としては、ろ過処理及び溶媒抽出処理のいずれかであることが好ましい。ろ過処理は操作の簡便の点で好ましく、溶媒抽出処理は生産効率の点で好ましい。
【0020】
ろ過処理としては、ポリマーに対し0.5〜10質量%の水を添加し0.5〜3時間攪拌し1日程度放置して結晶を析出させこれをろ過する処理が挙げられる。溶媒抽出処理としては、共役ジエン系重合体ポリオール又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール:溶媒(ヘプタン等)を1:3〜1:2とし、水:メタノール(質量比)20:80程度の混合物を、共役ジエン系重合体ポリオール又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールの半分量添加して、(1)20〜60分間攪拌し、(2)20〜60分間放置、抽出する処理((1)及び(2)の処理)を少なくとも2回行う処理が挙げられる。
【0021】
(重合体製造工程)
重合体製造工程においては、飽和炭化水素系溶媒中で、ジリチウム開始剤により共役ジエン系単量体、又は共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル系単量体を重合して、共役ジエン系重合体又は共役ジエン/芳香族ビニル系共重合体(以下、「本発明に係る(共)重合体」ということがある)を製造する。本重合はリビングアニオン重合であるために、分子量及び分子量分布を制御して重合できる。分子量は、ジリチウム開始剤と上記単量体の量により所定の分子量の重合体を重合することが可能であり、特に重量平均分子量が5,000以上では、分子量分布が2以下の狭い重合体を得易い。また、所望により、ランダマイザーの存在下にアニオン重合をさせてもよい。
【0022】
上記の共役ジエン系単量体としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中では、1,3−ブタジエン又はイソプレンが硬化後のゴム弾性確保の観点から好ましい。
【0023】
また、芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン又はパラメチルスチレンが硬化後のゴム物性の点で好ましい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい
【0024】
ジリチウム開始剤としては、特に限定されず公知のものを用いることができる。例えば、特公平1−53681号公報には、モノリチウム化合物を第3級アミンの存在下に、二置換ビニル又はアルケニル基含有芳香族炭化水素と反応させてジリチウム開始剤を製造する方法が記載されている。
【0025】
ジリチウム開始剤を製造するときに用いられるモノリチウム化合物としては、エチルリチウム,n−プロピルリチウム,イソプロピルリチウム,n−ブチルリチウム,sec−ブチルリチウム,tert−ブチルリチウム,tert−オクチルリチウム,n−デシルリチウム,フェニルリチウム,2−ナフチルリチウム,2−ブチル−フェニルリチウム,4−フェニル−ブチルリチウム,シクロヘキシルリチウム,シクロペンチルリチウム等が挙げられるが、これらの中で、sec−ブチルリチウムが好ましい。
【0026】
ジリチウム開始剤を製造するときに用いられる第3級アミンとしては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン等の低級脂肪族アミンやN,N−ジフェニルメチルアミン等が挙げられるが、特にトリエチルアミンが好ましい。
【0027】
また、上記二置換ビニル又はアルケニル基含有芳香族炭化水素としては、例えば、1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,4−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,3−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン、1,4−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン等が好ましく挙げられる。
【0028】
上記ジリチウム開始剤の調製、及び(共)重合体の製造において用いられる溶媒としては、反応に不活性な有機溶剤であればよく、脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶媒が用いられ、例えば、n−ブタン、1−ブタン、n−ペンタン、1−ペンタン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、1−ブテン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、1−オクタン、メチルシクロペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ペンテン、2−ペンテン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等から1種あるいは2種選んで使用される。これらのうち、n−ヘキサン、シクロヘキサンが通常用いられる。
【0029】
(ポリオール製造工程)
ポリオール製造工程においては、上記の本発明に係る(共)重合体の、リビングアニオンである重合体末端とアルキレンオキシドとを当量反応させることにより両末端に水酸基を有する共役ジエン系重合体ポリオール又は共役ジエン/芳香族ビニル系共重合体ポリオール(以下、「本発明に係る(共)重合体ポリオール」ということがある)を得る。
【0030】
また、上記の本発明に係る(共)重合体のリビングアニオンである末端と反応して、両末端に水酸基を生成するポリオール化反応に用いるアルキレンオキシドとして、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド等が挙げられる。このポリオール化反応は、重合反応直後に行うのが好ましい。
【0031】
上記ポリオール化反応により得られた本発明に係る(共)重合体ポリオールの重量平均分子量が5,000以上であれば架橋点間分子量を大きくすることができ、光硬化反応後、弾性率を低くかつ伸び大きくできるためゴム材料として好ましく、一方、分子量が40,000以下であれば、ジリチウム触媒で重合を行う際に、重合粘度が高くなりすぎず、重合プロセスとして固形分濃度を下げる必要がないので、低コストとなり好ましい。
【0032】
また、分子量分布が3.0以下であると、低分子量成分や高分子量成分によるさまざまな影響を抑制することができる。特に、粘度は分子量の影響を大きく受けるため、分子量のわずかなブレは粘度バラツキとなる。狭い分子量分布の(共)重合体を合成できる本発明では、再現性良く同じ分子量の(共)重合体を得ることができるため、粘度を安定化させる効果が期待できる。本発明のような液状の材料は、ディスペンサー塗布を行う場合が多く、この場合、材料粘度のバラツキは塗布後の寸法にバラツキを生じるので、粘度の安定化は重要であり、分子量分布が3.0以下であることが好ましい。
【0033】
(ポリオールの水添工程)
ポリオールの水添工程においては、主鎖に二重結合を有する本発明に係る(共)重合体ポリオールに水素添加反応(以下、水添反応という)を行うことにより、主鎖に不飽和二重結合を持たない水添共役ジエン系重合体ポリオール又は水添共役ジエン/芳香族ビニル系共重合体ポリオール(本発明に係る水添(共)重合体ポリオール)を得る。
ここで、(共)重合体とは、「重合体又は共重合体」をいう。
【0034】
本発明方法における水添反応は、有機溶媒中、水素加圧下で水添触媒の存在下で上記本発明に係る(共)重合体ポリオールに水素添加して行われる。本発明方法で用いる水添触媒は、パラジウム−カーボン、還元ニッケル、ロジウム系等不均一系触媒;または、ナフテン酸ニッケル、オクタン酸ニッケル等の有機ニッケル化合物あるいはナフテン酸コバルト、オクタン酸コバルト等の有機コバルト化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物もしくはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムのような有機リチウム化合物を組合せた均一触媒;が使用できる。共触媒として、テトラハイドロフラン、エチレグリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物を用いてもよい。
【0035】
また、他の水添反応方法としては、例えば上記水添前の本発明に係る(共)重合体を、ジシクロペンタジエニルチタンハライド、有機カルボン酸ニッケル、有機カルボン酸ニッケルと周期律表第I〜III族の有機金属化合物からなる水素化触媒、カーボン、シリカ、ケイソウ土等で担持されたニッケル、白金、バラジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム金属触媒やコバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム錯体等を触媒として、1〜100気圧に加圧された水素下、あるいはリチウムアルミニウムハイドライド、p−トルエンスルホニルヒドラジドの存在下、もしくはZr−Ti−Fe−V−Cr合金、Zr−Ti−Nb−Fe−V−Cr合金、LaNi5合金等の水素貯蔵合金の存在下、あるいは1〜100気圧に加圧された水素下で、水素化する方法、また、ジ−p−トリル−ビス(1−シクロペンタジエニル)チタニウム/シクロヘキサン溶液とn−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液を水素下で混合して得られる水素化触媒を用いて、1〜100気圧に加圧された水素下で、水素添加する方法等を挙げることができる。
【0036】
上述の各種水添触媒の中では、遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物の組み合わせからなるチーグラー系水添触媒又はパラジウム−カーボン系水添触媒が好ましい。
かかる遷移金属化合物としては、トリス(アセチルアセトナート)コバルト、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル、トリス(アセチルアセトナート)鉄、トリス(アセチルアセトナート)クロム、トリス(アセチルアセトナート)マンガン、ビス(アセチルアセトナート)マンガン、トリス(アセチルアセトナート)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナート)コバルト、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタン、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、ビス(トリフェニルホスフィン)コバルトジクロライド、ビス(2−ヘキサノエート)ニッケル、ビス(2−ヘキサノエート)コバルト、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラエトキシド等が挙げられる。これらのなかでも、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル、トリス(アセチルアセトナート)コバルトが高い水添活性の面から好ましい。
【0037】
また、チーグラー系水添触媒に用いられるアルキルアルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキクロリド。これらのなかでも、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが水添活性の面から好ましく、トリイソブチルアルミニウムが最も好ましい。
【0038】
チーグラー系水添触媒の使用形態に特に制限はないが、予め遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物とを反応させた触媒溶液を調製し、それを重合溶液に添加する方法を好ましく挙げることができる。かかる際に用いるアルキルアルミニウム化合物の量は、遷移金属化合物1molに対して0.2〜5molが好ましい。上記の触媒調製の反応は、−40〜100℃、好ましくは0〜80℃の温度範囲で行われ、反応時間は1分から3時間の範囲である。
【0039】
また、水添反応は通常50〜180℃、好ましくは70〜150℃の温度で、また5〜100気圧(5,066.25〜101,325hPa)、好ましくは10〜50気圧(10132.5〜50,662.5hPa)の水素圧で行われる。水添温度が50℃より低いと、また水素圧が5気圧よりも低いと触媒活性が低くなることがあるため好ましくなく、水添温度が180℃を越えると触媒の失活、副反応等が起こりやすくなることがあるため好ましくない。また通常、チーグラー系水添触媒は水添活性の極めて高い触媒であり、水素圧100気圧(101,325hPa)以上とするのは必要性に乏しく装置上の負担が大きくなるので好ましくない。
【0040】
以上のように本発明の製造方法で得られた光硬化性樹脂は、通常、光硬化性組成物として用いられる。光硬化性組成物全体を基準として、その光硬化性樹脂を好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上含有する。光硬化性樹脂以外の配合成分としては、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、光ラジカル重合開始剤、無機充填剤及び/又は有機増粘剤が好適に用いられる。
【0041】
[光硬化性組成物]
本発明に係る光硬化性組成物は、例えば、本発明の光硬化性樹脂を始めとした各成分及び所望により用いられる添加剤成分を温度調節可能な混練機、例えば、一軸押出機,二軸押出機,プラネリーミキサー、二軸ミキサー、高剪断型ミキサー等を用いて混練することにより、製造することができる。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、硬化前の光硬化性組成物の粘度を低減するばかりでなく、硬化後の諸物性も改良する。すなわち、接着強度の向上、硬度の低下、Eb(伸び)及びTb(破断強度)の向上等を図ることができる。この(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、分子量が1,000未満のものが好ましく、150〜600のものがより好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びメトキシトリエチレングリコールアクリレート等が挙げられる。これらのうち、本発明においては、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート及びイソボニルアクリレートが好ましい。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートをいう。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーの配合量は、光硬化性樹脂と(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを合わせて100質量部としたとき、光硬化性樹脂30〜100質量部に対して(メタ)アクリル酸エステルモノマー70〜0質量部が好ましく、さらに好ましくは、光硬化性樹脂40〜90質量部に対して(メタ)アクリル酸エステルモノマー60〜10質量部である。
【0045】
特に、(メタ)アクリル酸エステルモノマーが10質量部以上であれば、光硬化性組成物の粘度低減効果を享受でき、押出し、吐出等をし易くなり、シール材等に形成し易くなる。また、60質量部以下であれば、該組成物の粘度が低くなり過ぎず、形成直後のシール材等が流下しにくくなる。さらに、硬化後のシール材等の接着強度や弾性も確保されるので、気密性が損なわれにくい。
【0046】
光ラジカル重合開始剤としては、分子内開裂型として、ベンゾイン誘導体類、ベンジルケタール類[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア651]、α−ヒドロキシアセトフェノン類[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:ダロキュア1173、イルガキュア184、イルガキュア127]、α−アミノアセトフェノン類[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907、イルガキュア369]、α−アミノアセトフェノン類とチオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン)との併用、アシルホスフィンオキサイド類[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア819]等が挙げられ、水素引き抜き型として、ベンゾフェノン類とアミンの併用、チオキサントンとアミンの併用等が挙げられる。また、分子内開裂型と水素引き抜き型を併用してもよい。なかでもオリゴマー化したα−ヒドロキシアセトフェノン及びアクリレート化したベンゾフェノン類が好ましい。より具体的には、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン][例えば、Lamberti S.p.A製、商品名:ESACURE KIP150等]、アクリル化ベンゾフェノン[例えは、ダイセル・ユー・シー・ビー(株)製、商品名:Ebecryl P136等]、イミドアクリレート等が挙げられる。
【0047】
また、光ラジカル重合開始剤として、上述のもの以外に、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとベンゾフェノンの混合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[(4−メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾイルエチルエーテル、ベンゾイルブチルエーテル、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマーと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンの混合物、イソプロピルチオキサントン、o−ベンゾイル安息香酸メチル及び[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン等も用いることができる。
【0048】
本発明に係る光硬化性組成物に配合される光ラジカル重合開始剤量は、光硬化性樹脂及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜6質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜4質量部、さらに好ましくは1〜3質量部である。
【0049】
本発明に係る光硬化性組成物に、無機充填剤及び/又は有機増粘剤を配合すると、組成物に揺変性(チクソトロピー)を持たせ、組成物の成形性を向上させることができる。
無機充填剤としては、シリカ(SiO2)、アルミナ、チタニア及び粘度鉱物等が挙げられ、中でもシリカ粉末、疎水処理したシリカ粉末又はこれらの混合物が好ましい。より具体的には、乾式法により微粉化したシリカ微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル300等]、このシリカ微粉末をトリメチルジシラザンで変性した微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルRX300等]及び上記シリカ微粉末をポリジメチルシロキサンで変性した微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルRY300等]等が挙げられる。
【0050】
無機充填剤の平均粒径は、増粘性、チクソトロピーの付与の観点から、5〜50μmが好ましく、5〜12μmがより好ましい。
本発明に係る光硬化性組成物に配合される無機充填剤量は、光硬化性樹脂及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜7質量部、さらに好ましくは1〜5質量部である。
【0051】
有機増粘剤としては、水添ひまし油、アマイドワックス又はこれらの混合物が好ましい。有機増粘剤として具体的には、ひまし油(主成分がリシノール酸の不乾性油)の水添品である水添ひまし油[例えば、ズードケミー触媒(株)製、商品名:ADVITROL100、楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン305等]及びアミド結合を有する化合物である高級アマイドワックス[例えば、楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン6500等]等が挙げられる。
【0052】
本発明に係る光硬化性組成物に配合される有機増粘剤量は、光硬化性樹脂及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜7質量部、さらに好ましくは1〜5質量部である。
【0053】
本発明に係る光硬化性組成物においては、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーに加えて、又はその代替として、末端(メタ)アクリレートオリゴマーを配合することができる。この末端(メタ)アクリレートオリゴマーを配合することにより、光硬化性組成物の粘度を調節することができ、また、物理的には、硬度の低下、Eb(伸び)及びTb(破断強度)の向上等を図ることができる。
【0054】
なお、末端(メタ)アクリレートオリゴマーとは、片末端又は両末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有するオリゴマーをいう。末端(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、透湿性、耐候性及び耐熱性の点から、炭化水素系のオリゴマー、すなわち、水添オリゴマー、末端(メタ)アクリレート水添オリゴマーが好ましい。末端(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは5,000〜40,000である。重量平均分子量がこの範囲であると、液体原料として取り扱い易く、かつ硬化物が低硬度であるという利点がある。
【0055】
末端(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリオール(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0056】
エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。または、イソシアネートと変性させ、末端の水酸基をアクリル酸でエステル化することもできる。
【0057】
ポリオール(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0058】
本発明に係る光硬化性組成物に配合される末端(メタ)アクリレートオリゴマー量は、光硬化性樹脂及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100質量部に対し、30〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは40〜90質量部である。但し、所望により、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと末端(メタ)アクリレートオリゴマーを相互置換してもよい。
【0059】
本発明に係る光硬化性組成物には、さらに、安定化剤等を加えてもよい。安定化剤としては、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート][例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:IRGANOX245、旭電化工業(株)製、商品名:アデカスタブAO−70等]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン[例えば、旭電化工業(株)製、商品名:アデカスタブAO−80等]等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0060】
本発明に係る光硬化性組成物に配合される安定化剤量は、光硬化性樹脂及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3質量部、さらに好ましくは0.5〜2質量部である。
【0061】
さらに、本発明に係る光硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、密着性向上のための、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系炭化水素、ロジン誘導体等の各種粘着付与剤、チタンブラック等の着色剤等の添加剤を添加することができる。
【0062】
[電子部品用シール材]
本発明の電子部品用シール材は、電子部品用光硬化性樹脂を例えば、本発明に係る光硬化性組成物として硬化させてなる。
【0063】
具体的には、光硬化性組成物を被着体に塗布し、エネルギー線照射により硬化させることにより、本発明のシール材を製造することができる。
被着体としては、例えば、硬質樹脂からなるものも使用することができるが、加工性等から金属製のものが好ましい。金属としては特に制限はなく、例えば、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム/亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、マグネシウム板、マグネシウム合金板等の中から、適宜選択して用いることができる。また、マグネシウムを射出成形したものも用いることができる。耐食性の点から、無電解ニッケルめっき処理を施した金属が好適である。この無電解ニッケルめっき処理方法としては、従来金属素材に適用されている公知の方法、例えば硫酸ニッケル,次亜リン酸ナトリウム,乳酸,プロピオン酸等を適当な割合で含有するpH4.0〜5.0程度で、かつ温度85〜95℃程度の水溶液からなる無電解ニッケルめっき浴中に、金属板を浸漬する方法等を用いることができる。
【0064】
また、シール材の用途としては、HDD用等のガスケット、インクタンク用シール、液晶シール等の電子部品が挙げられる。シール材の厚さは、用途により適宜選定することができるが、通常0.1〜2.0mm程度である。
【0065】
上記光硬化性組成物の被着体等の基材への塗布は、該組成物を必要に応じて温度調節し、一定粘度に調整した塗液を用いて任意の方法で行うことができ、例えばグラビアコート、ロールコート、スピンコート、リバースコート、バーコート、スクリーンコート、ブレードコート、エアーナイフコート、ディッピング、ディスペンシング、インクジェット等の方法を用いることができる。上記光硬化性組成物を塗布し、成形した後、エネルギー線を照射することにより塗布層を硬化させて、シール材を得ることができる。
【0066】
反応・硬化させるために用いられる活性エネルギー線とは、紫外線及び電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を指すが、本発明においては紫外線が好ましい。紫外線源としては、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波方式エキシマランプ等を挙げることができる。紫外線を照射する雰囲気としては、窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気あるいは酸素濃度を低下させた雰囲気が好ましいが、通常の空気雰囲気でも十分に硬化させることができる。照射雰囲気温度は、通常10〜200℃とすることができる。
また、硬化後に再度活性エネルギー線を照射したり、熱を加えることにより性状を安定化させることもできる。
【0067】
活性エネルギー線の照射によって反応・硬化させた後の、タイプAデュロメータにより測定した、この硬化物のJIS−A硬度が55以下であれば十分なシール性を得ることができるので好ましい。同様な観点から、より好ましくは10〜55、さらに好ましくは20〜55、特に好ましくは25〜52である。
【0068】
また、上記硬化後の透湿度が40g/m2・24h以下であると、シール材やガスケットとしての機能が十分に発揮されるので好ましい。特に好ましくは15g/m2・24h以下である。
【0069】
シール材において、シール層の断面形状は、良好なシール性を確保しつつHDD等の電子機器又は印刷機器内のスペースを効率良く使用する観点から、シール層の幅1に対してシール層の高さが0.2〜2.0であることが好ましく、0.3〜2.0がより好ましい。一度で高さが得られない場合は複数回に分けて塗布することができる。この場合、一段塗布するごとにエネルギー線を照射して硬化させることも可能である。
【0070】
本発明の電子部品用シール材は、ガスケット材として好適であり、特に、ハードディスク装置用ガスケット材として好適である。
【実施例】
【0071】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、重量平均分子量はGPC法(Gel Permeation Chromatography)を用い、ポリスチレン換算により重量平均分子量を得た。
【0072】
(重合体の製造)
充分に脱水精製したシクロヘキサン溶媒中に、1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン1モルを添加した後、トリエチルアミン2モル、sec−ブチルリチウム2モルを順次添加し、50℃で2時間撹拌して、ジリチウム重合開始剤を調製した。
【0073】
アルゴン置換した7リットルの重合リアクターに、脱水精製したシクロヘキサン1.35kg、22.9質量%の1,3ブタジエンモノマーのヘキサン溶液を2.67kg、1.6モル/リットルのOOPS(2−2’−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン)のヘキサン溶液を209.4ml添加した後、0.5モル/リットルのジリチウム重合開始剤を223.5ml添加して重合を開始させた。
【0074】
重合リアクターを50℃に昇温しながら、1.5時間重合を行った後、1モル/リットルのエチレンオキシドのシクロヘキサン溶液を220.4ml添加し、さらに2時間撹拌した後、50mlのイソプロピルアルコールを添加した。重合体のヘキサン溶液をイソプロピルアルコール中に沈殿させ、十分に乾燥させて重合体ポリオールを得た。この重合体ポリオールは両末端OH基ポリブタジエンであり、重量平均分子量は、7,500、分子量分布は1.25であった。
【0075】
(実施例1)
重合体ポリオール120gを、十分に脱水精製したヘプタン1リットルに溶解した後、予め別容器で調製したナフテン酸ニッケル、トリエチルアルミニウム、ブタジエンが1:3:3(モル比)の触媒液を共重合体溶液中のブタジエン部1,000モルに対してニッケル1モルになるように仕込んだ。密閉反応容器に水素を27,580hPa(400psi)に加圧添加して、110℃にて4時間水添反応を行った。その後、3規定濃度の塩酸で触媒残渣を抽出分離し、さらに遠心分離をして触媒残渣を沈降分離した。
【0076】
その後、水添重合体ポリオールとヘプタンとの体積比が1:1となるように、濃縮を行い、系中の水分率を200ppm以下とした。次に、水添重合体ポリオールにおけるポリオールの水酸基当量(X)と光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物当量(Y)との比が下記表1に示すようにアクリロイルオキシエチルアクリレートを添加し、80℃の状態で、それぞれにチタンテトライソプロポキシド(マツモトファインケミカル株式会社製のオルガチックスTA−10)の含有量が300〜2000ppmとなるように添加して5時間攪拌し電子部品用光硬化性樹脂を作製した。
【0077】
作製した電子部品用光硬化性樹脂に光重合開始剤を添加した後、UV照射し、アクリレート化(=ウレタン反応)が進んでいれば硬度が上がるとの知見に基づき、アクリロイル−イソシアネートと水添重合体との反応性を硬度に置き換えて測定した。結果を下記表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
(実施例2)
チタン系触媒としてチタンテトライソプロポキシドの代わりにチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル株式会社製のオルガチックスTC−750)を使用した以外は実施例1と同様にして電子部品用光硬化性樹脂を作製した。作製した電子部品用光硬化性樹脂を実施例1と同様にして、硬度を測定して反応率を評価した。結果を下記表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
(比較例1)
Ti系触媒の代わりにBi系触媒(オクチル酸ビスマス)を使用した以外は実施例1と同様にして電子部品用光硬化性樹脂を作製した。作製した電子部品用光硬化性樹脂を実施例1と同様にして、硬度を測定して反応率を評価した。結果を下記表3に示す。
【0082】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン系触媒の存在下、共役ジエン系重合体ポリオール、又は共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールと、光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させる反応工程を含み、
前記共役ジエン系重合体ポリオール、又は前記共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールにおけるポリオールの水酸基当量(X)と光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物当量(Y)との比(X:Y)を、1:1.5〜1:2.5とする電子部品用光硬化性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記反応工程後に、未反応の前記光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を除去する除去工程を含む請求項1に記載の電子部品用光硬化性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記除去工程において、前記未反応の光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を除去する処理が、ろ過処理である請求項2に記載の電子部品用光硬化性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記除去工程において、前記未反応の光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を除去する処理が、溶媒抽出処理である請求項2に記載の電子部品用光硬化性樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法により製造される電子部品用光硬化性樹脂。
【請求項6】
請求項5に記載の電子部品用光硬化性樹脂を硬化してなる電子部品用シール材。
【請求項7】
ガスケット材である請求項6に記載の電子部品用シール材。

【公開番号】特開2010−285469(P2010−285469A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138044(P2009−138044)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【出願人】(597155181)ニチジュン化学株式会社 (2)
【Fターム(参考)】