説明

電子部品

【課題】方向識別用のマークを設けることなく、方向を識別できる電子部品を提供することである。
【解決手段】積層体12は、複数の絶縁体層30,32が積層されてなる。コイルL1は、積層体12に内蔵され、かつ、渦巻き状をなすコイル導体40a〜40dにより構成されている。コイルL2は、積層体12に内蔵され、かつ、コイルL1とz軸方向に直交する方向に並んでおり、渦巻き状をなすコイル導体44a〜44dにより構成されている。コイルL1,L2よりもz軸方向の正方向側に位置する絶縁体層30a〜30cは、透明な材料により作製されている。z軸方向から平面視したときに、コイル導体40aが有する形状と、コイル導体44aが有する形状とは異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関し、より特定的には、2つのコイルを内蔵している電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品としては、例えば、特許文献1に記載のチップ型フィルタが知られている。該チップ型フィルタでは、2つのコイルが内蔵されている。該2つのコイルは、ノイズフィルタを構成している。ノイズフィルタは、チップ型フィルタの表面に設けられている端子電極を介して、外部の電気回路と接続可能である。
【0003】
ところで、特許文献1に記載のチップ型フィルタは、積層方向から平面視したときに、端子電極が、チップ型フィルタの上面の中心に対して点対象に配置されている。よって、チップ型フィルタの方向を外観で識別することが困難である。そこで、一般的には、チップ型フィルタの上面に、方向識別用のマークが設けられる。
【0004】
しかしながら、方向識別用のマークを形成する場合には、チップ型フィルタの製造工程数が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−58509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、方向識別用のマークを設けることなく、方向を識別できる電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る電子部品は、複数の絶縁体層が積層されてなる積層体と、前記積層体に内蔵されている第1のコイルであって、渦巻き状をなす第1のコイル導体により構成されている第1のコイルと、前記積層体に内蔵され、かつ、前記第1のコイルと積層方向に直交する方向に並んでいる第2のコイルであって、渦巻き状をなす第2のコイル導体により構成されている第2のコイルと、を備え、前記第1のコイル及び前記第2のコイルよりも積層方向の第1の方向側に位置する前記絶縁体層は、透明な材料により作製され、積層方向から平面視したときに、前記第1のコイル導体が有する形状と、前記第2のコイル導体が有する形状とは異なっていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、方向識別用のマークを設けることなく、電子部品の方向を識別できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係る電子部品の外観斜視図である。
【図2】一実施形態に係る積層体の分解斜視図である。
【図3】電子部品の等価回路図である。
【図4】電子部品を積層方向から平面視した透視図である。
【図5】電子部品の製造時における工程断面図である。
【図6】電子部品の製造時における工程断面図である。
【図7】カット工程での電子部品をz軸方向から平面視した図である。
【図8】変形例である電子部品をz軸方向から平面視した透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態に係る電子部品について図面を参照しながら説明する。
【0011】
(電子部品の構成について)
図1は、一実施形態に係る電子部品10の外観斜視図である。図2は、一実施形態に係る積層体12の分解斜視図である。図3は、電子部品10の等価回路図である。図4は、電子部品10を積層方向から平面視した透視図である。以下、電子部品10の積層方向をz軸方向と定義する。そして、z軸方向から平面視したときに、電子部品10の長辺に沿った方向をx軸方向と定義し、電子部品10の短辺に沿った方向をy軸方向と定義する。
【0012】
電子部品10は、図1及び図2に示すように、積層体12、外部電極18a,18b,20,22、引き出し導体42a,46a,48,52a〜52f、コイルL1,L2及びコンデンサCを備えている。積層体12は、直方体形状をなし、図1に示すように、積層体14と積層体16とが積層されて構成され、直方体状をなしている。積層体14は、積層体16よりもz軸方向の負方向側に位置している。外部電極18aは、積層体12のx軸方向の負方向側に位置する側面(表面)に設けられている。外部電極18bは、積層体12のx軸方向の正方向側に位置する側面(表面)に設けられており、外部電極18aと同じ形状を有している。これにより、外部電極18a,18bは、積層体12の互いに対向する側面に設けられている。外部電極20は、積層体12のy軸方向の負方向側に位置する側面(表面)に設けられている。外部電極22は、積層体12のy軸方向の正方向側に位置する側面(表面)に設けられており、外部電極20と同じ形状を有している。これにより、外部電極20,22は、積層体12の互いに対向する側面に設けられている。
【0013】
積層体16は、コイルL1,L2及び引き出し導体42a,46a,48を内蔵している。以下に、積層体16について、図2を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
積層体16は、絶縁体層30a〜30gがz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に積層されることにより構成されている。絶縁体層30a〜30gは、例えば、ポリイミド樹脂等の透明な絶縁性材料からなる矩形状の層である。該絶縁体層30a〜30gは、z軸方向から平面視した場合に、積層体14よりも小さく形成されている。これにより、積層体14は、絶縁体層30a〜30gの四辺からはみ出した状態となっている。
【0015】
コイルL1は、コイル導体40a〜40d及びビアホール導体b1〜b3により構成されている。コイル導体40a〜40dはそれぞれ、絶縁体層30d〜30gの主面上に、例えば、Ag又はPdを主成分とした導電性材料により形成されている。コイル導体40a〜40dはそれぞれ、線状導体が折り曲げられることによって、渦巻き形状をなしている。具体的には、コイル導体40a,40cは、z軸方向の正方向側から平面視したときに、時計回りに旋廻しながら中心に向かっていく渦巻き形状をなしている。コイル導体40b,40dは、z軸方向の正方向側から平面視したときに、反時計回りに旋廻しながら中心に向かっていく渦巻き形状をなしている。
【0016】
ビアホール導体b1〜b3はそれぞれ、絶縁体層30d〜30fをz軸方向に貫通しており、z軸方向に互いに隣り合うコイル導体40a〜40dを接続している。具体的には、ビアホール導体b1は、コイル導体40a,40bを接続している。ビアホール導体b2は、コイル導体40b,40cを接続している。ビアホール導体b3は、コイル導体40c,40dを接続している。これにより、コイル導体40a〜40d及びビアホール導体b1〜b3は、コイルL1を構成している。
【0017】
引き出し導体42aは、絶縁体層30dの主面上に、例えば、Ag又はPdを主成分とした導電性材料により形成されている。そして、引き出し導体42aは、コイル導体40aに接続されていると共に、絶縁体層30dのx軸方向の負方向側に位置する短辺に引き出されている。これにより、コイル導体40aは、外部電極18aに電気的に接続されている。すなわち、コイルL1の一端は、引き出し導体42aを介して、外部電極18aに電気的に接続されている。
【0018】
コイルL2は、コイル導体44a〜44d及びビアホール導体b4〜b6により構成されており、コイルL1とz軸方向に直交するx軸方向に並んでいる。コイル導体44a〜44dはそれぞれ、絶縁体層30d〜30gの主面上において、コイル導体40a〜40dのx軸方向の正方向側に並ぶように、例えば、Ag又はPdを主成分とした導電性材料により形成されている。コイル導体44a〜44dはそれぞれ、線状導体が折り曲げられることによって、渦巻き形状をなしている。具体的には、コイル導体44a,44cは、z軸方向の正方向側から平面視したときに、反時計回りに旋廻しながら中心に向かっていく渦巻き形状をなしている。コイル導体44b,44dは、z軸方向の正方向側から平面視したときに、時計回りに旋廻しながら中心に向かっていく渦巻き形状をなしている。
【0019】
ビアホール導体b4〜b6はそれぞれ、絶縁体層30d〜30fをz軸方向に貫通しており、z軸方向に互いに隣り合うコイル導体44a〜44dを接続している。具体的には、ビアホール導体b4は、コイル導体44a,44bを接続している。ビアホール導体b5は、コイル導体44b,44cを接続している。ビアホール導体b6は、コイル導体44c,44dを接続している。これにより、コイル導体44a〜44d及びビアホール導体b4〜b6は、コイルL2を構成している。
【0020】
引き出し導体46aは、絶縁体層30dの主面上に、例えば、Ag又はPdを主成分とした導電性材料により形成されている。そして、引き出し導体46aは、コイル導体44aに接続されていると共に、絶縁体層30dのx軸方向の正方向側に位置する短辺に引き出されている。これにより、コイル導体44aは、外部電極18bに電気的に接続されている。すなわち、コイルL2の一端は、引き出し導体46aを介して、外部電極18bに電気的に接続されている。
【0021】
引き出し導体48は、絶縁体層30gの主面上に、例えば、Ag又はPdを主成分とした導電性材料により形成されている。そして、引き出し導体48は、コイル導体40d,44dに接続されていると共に、絶縁体層30gのy軸方向の正方向側の長辺に引き出されている。これにより、コイル導体40d,44dは、外部電極22に電気的に接続されている。すなわち、コイルL1,L2の他端は、引き出し導体48を介して、外部電極22に電気的に接続されている。
【0022】
積層体14は、LTCC(Low Temperature Co−fired Ceramics)基板であり、直方体状をなしている。積層体14は、z軸方向から平面視したときに、積層体16よりも大きくなるように形成されている。また、積層体14は、コンデンサC及び引き出し導体52a〜52fを内蔵している。積層体14は、積層体16よりもz軸方向の負方向側に設けられている。よって、コンデンサCは、コイルL1,L2よりも積層方向の負方向側に設けられている。
【0023】
積層体14は、絶縁体層32a〜32lが積層されることにより構成されている。絶縁体層32a〜32lは、例えば、誘電体材料からなる矩形状の層である。なお、絶縁体層32a〜32lは、12枚記載されているが、12枚以上であってもよい。そのため、図2では、絶縁体層32fと絶縁体層32gとの間を点線で繋いで、絶縁体層32fと絶縁体層32gとの間に更なる絶縁体層32が設けられていてもよいことを示している。
【0024】
コンデンサCは、コンデンサ導体50a〜50fにより構成されている。コンデンサ導体50a〜50fはそれぞれ、絶縁体層32d〜32iの主面上に、例えば、Ag又はPdを主成分とした導電性材料により形成されている。コンデンサ導体50a〜50fはそれぞれ、矩形状を有している。
【0025】
引き出し導体52a〜52fはそれぞれ、絶縁体層32d〜32iの主面上に、例えば、Ag又はPdを主成分とした導電性材料により形成されている。引き出し導体52a,52c,52eはそれぞれ、コンデンサ導体50a,50c,50eに接続されていると共に、絶縁体層32d,32f,32hのy軸方向の負方向側の長辺に引き出されている。これにより、コンデンサ導体50a,50c,50eは、外部電極20に電気的に接続されている。引き出し導体52b,52d,52fはそれぞれ、コンデンサ導体50b,50d,50fに接続されていると共に、絶縁体層32e,32g,32iのy軸方向の正方向側の長辺に引き出されている。これにより、コンデンサ導体50b,50d,50fは、外部電極22に電気的に接続されている。
【0026】
コンデンサ導体50a〜50f及び引き出し導体52a〜52fが以上の構成を有することにより、コンデンサ導体50a〜50fは、コンデンサCを構成している。より詳細には、コンデンサ導体50a〜50fは、絶縁体層32a〜32lがz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に積層されることにより、z軸方向に対向するもの同士でコンデンサCを構成している。そして、引き出し導体52a,52c,52eが、外部電極20に接続され、引き出し導体52b,52d,52fが、外部電極22に接続されている。これにより、コンデンサ導体50b,50d,50fは、コンデンサCの第2の電極を構成し、コンデンサ導体50a,50c,50eは、コンデンサCの第1の電極を構成している。
【0027】
ここで、コンデンサCの第1の電極(コンデンサ導体50b,50d,50f)は、外部電極22に電気的に接続されており、コイルL1,L2の他端も、外部電極22に電気的に接続されている。その結果、コンデンサC及びコイルL1,L2は、図3に示すように、T型LCノイズフィルタを構成している。
【0028】
ところで、電子部品10は、方向認識用のマークを設けることなく、方向を識別可能とするために、以下に説明する構成を有している。具体的には、図2及び図4に示すように、z軸方向から平面視したときに、コイルL1を構成しているコイル導体40の内、z軸方向の最も正方向側に位置しているコイル導体40aが有する形状と、コイルL2を構成しているコイル導体44の内、z軸方向の最も正方向側に位置しているコイル導体44aが有する形状とは異なっている。具体的には、z軸方向から平面視したときに、コイル導体40aの最も外側を周回する部分に囲まれている領域の形状と、コイル導体44aの最も外側を周回する部分に囲まれている領域の形状とは異なっている。本実施形態では、z軸方向から平面視したときに、コイル導体40aの最も外側を周回する部分に囲まれている領域及びコイル導体44aの最も外側を周回する部分に囲まれている領域は、共に長方形状をなしている。そして、コイル導体40aの最も外側を周回する部分に囲まれている領域が形成している長方形は、コイル導体44aの最も外側を周回する部分に囲まれている領域が形成している長方形よりも、x軸方向に長い。これにより、コイル導体40aの最も外側を周回する部分に囲まれている領域が形成している長方形の面積は、コイル導体44aの最も外側を周回する部分に囲まれている領域が形成している長方形の面積よりも大きい。
【0029】
更に、コイル導体40aの中心に位置し、かつ、コイル導体40aが設けられていない空白領域の面積は、コイル導体44aの中心に位置し、かつ、コイル導体44aが設けられていない空白領域の面積よりも大きい。本実施形態では、コイル導体40aの中心には、図2及び図4に示すように、コイル導体40aが設けられていない空白領域B1が設けられている。一方、コイル導体44aの中心には、図2に示すように、コイル導体44aが設けられていない空白領域が設けられていない。
【0030】
また、コイル導体40a,40bよりもz軸方向の正方向側に位置している絶縁体層30a〜30cは、透明な材料により構成されている。本実施形態では、前記の通り、絶縁体層30a〜30gは、透明な材料により構成されている。
【0031】
(効果)
本実施形態に係る電子部品10によれば、方向識別用のマークを設けることなく、電子部品10の方向を識別できる。より詳細には、電子部品10では、外部電極20には接地電位が印加され、外部電極22には電位が印加されない。そのため、電子部品10の方向を間違うことなく、電子部品10を回路基板に実装する必要がある。ところが、外部電極20,22が同じ形状を有しているために、外部電極20,22の形状を見ただけでは、電子部品10の方向を識別することができない。
【0032】
そこで、電子部品10では、更に、コイル導体40a,44aよりもz軸方向の正方向側に位置する絶縁体層30a〜30cは、透明な材料により構成されている。更に、z軸方向の最も正方向側に位置するコイル導体40a,44aは、異なる形状を有している。これにより、電子部品10のz軸方向の正方向側に位置する上面をカメラにより撮像することで、コイル導体40a,44aを撮像することができる。そして、コイル導体40a,44aの形状を確認することにより、電子部品10の方向を識別することができる。
【0033】
なお、電子部品10では、コイル導体40a,44aの最も外側を周回する部分に囲まれている領域の形状を異ならせている。コイル導体40a,44aの最も外側を周回する部分に囲まれている領域の形状は、コイル導体40a,44aの線状導体の形状等の詳細な形状に比べて、識別し易い。よって、電子部品10では、カメラの解像度が低い場合であっても、電子部品10の方向を識別することができる。
【0034】
また、電子部品10では、コイル導体40aが設けられていない空白領域B1が設けられている。一方、コイル導体44aの中心には、図4に示すように、コイル導体44aが設けられていない空白領域が設けられていない。よって、電子部品10では、空白領域B1の有無を確認することによっても、電子部品10の方向を識別できる。また、コイル導体44aの中心に空白領域が設けられている場合には、コイル導体40aの空白領域B1の大きさとコイル導体44aの空白領域の大きさとを比較することによって、電子部品10の方向を識別できる。
【0035】
また、コイル導体40a,44aの最も外側を周回する部分に囲まれている領域の大きさと、空白領域の大きさとを調整することによって、コイルL1,L2のインダクタンス値を略同じにすることができる。
【0036】
(製造方法について)
以下に、電子部品10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図5及び図6は、電子部品10の製造時における工程断面図である。図7は、カット工程での電子部品10をz軸方向から平面視した図である。図5及び図6では、1個分の電子部品10の製造工程が示されているが、実際には、複数の電子部品10がマトリクス状に配置された状態で一括して製造されている。
【0037】
まず、図2に示すような積層体14を作製する。より詳細には、所定の材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕して、セラミック粉末を得る。
【0038】
このセラミック粉末に対して結合剤と可塑剤、湿潤材、分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法により、シート状に形成して乾燥させ、絶縁体層32a〜32lとなるべきセラミックグリーンシートを得る。
【0039】
次に、絶縁体層32d〜32iとなるべきセラミックグリーンシート上には、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などを主成分とする導電性ペーストがスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布されることにより、コンデンサ導体50a〜50f及び引き出し導体52a〜52fが形成される。
【0040】
次に、各セラミックグリーンシートを積層する。具体的には、上から順に絶縁体層32a〜32lを重ねて静水圧プレスなどにより圧着を行う。この後、焼成を施して、積層体14のマザー積層体が得られる。
【0041】
次に、図5(a)に示すように、ポリイミド樹脂からなる絶縁体層30gを、積層体14上にフォトリソグラフィにより形成する。次に、図5(b)に示すように、絶縁体層30g上に、Ag又はPdを主成分とした導電性材料からなる導電層40dA,44dAをスパッタリングや蒸着等のドライめっき法により形成する。
【0042】
次に、導電層40dA,44dA上に感光性レジストを塗布、乾燥した後、この感光性レジストにマスクフィルムを当てて所望の部分を露光する。次に、感光性レジストを現像し、図5(c)に示すように、導電層40dA,44dAの不要な部分が露出した形状を有するレジストパターン70aを形成する。
【0043】
次に、露出した部分の導電層40dA,44dAをエッチングにて除去した後、レジストパターン70aを除去することにより、図6(a)に示すように、コイル導体40d,44d及び引き出し導体48(図6(a)には不図示)を形成する。
【0044】
次に、図6(b)に示すように、ポリイミド樹脂からなる絶縁体層30fを、絶縁体層30g及びコイル導体40d,44d及び引き出し導体48上にフォトリソグラフィにより形成する。この際、絶縁体層30fのビアホール導体b3,b6が形成されるべき位置に、ビアホールhを形成する。
【0045】
次に、図6(c)に示すように、絶縁体層30f上に、導電層40cA,44cAをドライめっき法により形成する。この際、ビアホールhに導電性材料が充填され、ビアホール導体b3,b6が形成される。この後、この導電層40cA,44cAには、図5(c)〜図6(c)を用いて説明した処理が施される。これにより、コイル導体40c,44c及び絶縁体層30eが、絶縁体層30f上に形成される。更に、図5(c)〜図6(c)を用いて説明した処理が繰り返されて、コイル導体40a,40b,44a,44b、引き出し導体42a,46a及び絶縁体層30dが形成される。この後、コイル導体40a,44a、引き出し導体42a,46a及び絶縁体層30d上にポリイミド樹脂からなる絶縁体層30a〜30cが形成される。
【0046】
この後、積層体12のマザー積層体がダイサーによりカットされて、個々の積層体12に切り離される。この際、図7の点線部分に示すように、絶縁体層30a〜30fが形成されていない部分をダイサーが通過するように、マザー積層体をカットする。更に、カットした積層体12に対してバレルを施す。これにより、積層体12の角の面取りが行われる。
【0047】
最後に、外部電極18a,18b,20,22を形成する。具体的には、Ag及び樹脂からなる導電性ペーストを塗布し、硬化させて銀電極を形成する。次に、銀電極上にNiめっき及びSnめっきを施して、外部電極18a,18b,20,22を形成する。以上の工程を経て、電子部品10が完成する。
【0048】
(変形例)
以下に、電子部品10の変形例について図面を参照しながら説明する。図8は、電子部品10の変形例である電子部品10aをz軸方向から平面視した透視図である。なお、図8の電子部品10と同じ構成については、同じ参照符号を付してある。
【0049】
電子部品10aでは、外部電極20,22は、積層体12の側面から上面に折り返されるようにして設けられている。そして、図8に示すように、電子部品10aでは、z軸方向において最も正方向側に設けられているコイル導体40'a,44'aは、z軸方向から平面視したときに、外部電極20,22と重なっていない。これにより、絶縁体層30a〜30cに欠陥が発生することによって、コイル導体40'a,44'aと外部電極20,22との間の絶縁状態が崩れることが抑制される。
【0050】
なお、コイル導体40a〜40d,44a〜44dは、z軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に並んでいる。しかしながら、コイル導体40a〜40d,44a〜44dは、z軸方向の負方向側から正方向側へとこの順に並んでいてもよい。なお、この場合には、コイル導体40d,44dがz軸方向の最も正方向側に位置している。更に、コイル導体40d,44dは、引き出し導体48を介して外部電極22に接続されている。よって、コイル導体40d,44dは、z軸方向から平面視したときに、外部電極22と重なってしまう。そこで、この場合には、コイル導体40d,44dが、z軸方向から平面視したときに、外部電極20と重なっていなければよい。
【0051】
また、電子部品10,10a内には、コイルL1,L2及びコンデンサCからなる回路素子がアレイ状に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、電子部品に有用であり、特に、方向識別用のマークを設けることなく、電子部品の方向を識別できる点において優れている。
【符号の説明】
【0053】
B1 空白領域
C コンデンサ
L1,L2 コイル
b1〜b6 ビアホール導体
10,10a 電子部品
12,14,16 積層体
18a,18b,20,22 外部電極
30a〜30g,32a〜32l 絶縁体層
40a〜40d,44a〜44d コイル導体
50a〜50f コンデンサ導体
42a,46a,48,52a〜52f 引き出し導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層されてなる積層体と、
前記積層体に内蔵されている第1のコイルであって、渦巻き状をなす第1のコイル導体により構成されている第1のコイルと、
前記積層体に内蔵され、かつ、前記第1のコイルと積層方向に直交する方向に並んでいる第2のコイルであって、渦巻き状をなす第2のコイル導体により構成されている第2のコイルと、
を備え、
前記第1のコイル及び前記第2のコイルよりも積層方向の第1の方向側に位置する前記絶縁体層は、透明な材料により作製され、
積層方向から平面視したときに、前記第1のコイル導体が有する形状と、前記第2のコイル導体が有する形状とは異なっていること、
を特徴とする電子部品。
【請求項2】
積層方向から平面視したときに、前記第1のコイル導体の最も外側を周回する部分に囲まれている領域の形状と、前記第2のコイル導体の最も外側を周回する部分に囲まれている領域の形状とは異なっていること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
積層方向から平面視したときに、前記第1のコイル導体の最も外側を周回する部分に囲まれている領域の面積は、前記第2のコイル導体の最も外側を周回する部分に囲まれている領域の面積よりも大きいこと、
を特徴とする請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第1のコイル導体の中心に位置し、かつ、該第1のコイル導体が設けられていない第1の空白領域の面積は、前記第2のコイル導体の中心に位置し、かつ、該第2のコイル導体が設けられていない第2の空白領域の面積よりも大きいこと、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
前記第1のコイル及び前記第2のコイルによりも積層方向の第2の方向側に位置するように前記積層体に内蔵されているコンデンサと、
前記積層体の表面に設けられ、前記コンデンサの第1の電極、前記第1のコイルの第1の端部及び前記第2のコイルの第1の端部が接続されている第1の外部電極と、
前記積層体の表面に設けられ、前記コンデンサの第2の電極が接続されている第2の外部電極と、
を更に備え、
前記第1のコイル、前記第2のコイル及び前記コンデンサは、ノイズフィルタを構成していること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電子部品。
【請求項6】
前記第1の外部電極と前記第2の外部電極とは、前記積層体の互いに対向する側面に設けられていると共に、同じ形状を有していること、
を特徴とする請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記積層体の表面に設けられ、前記第1のコイルの第2の端部と接続されている第3の外部電極と、
前記積層体の表面に設けられ、前記第2のコイルの第2の端部と接続されている第4の外部電極と、
を更に備えていること、
を特徴とする請求項5又は請求項6のいずれかに記載の電子部品。
【請求項8】
前記第1の外部電極及び前記第2の外部電極は、前記積層体の側面及び上側に設けられており、
積層方向において最も第1の方向側に設けられている前記第1のコイル導体及び前記第2のコイル導体は、積層方向から平面視したときに、前記第1の外部電極及び前記第2の外部電極と重なっていないこと、
を特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の電子部品。
【請求項9】
積層方向において最も第1の方向に設けられている前記第1のコイル導体及び前記第2のコイル導体は、前記第1の外部電極に接続されており、かつ、積層方向から平面視したときに、前記第2の外部電極と重なっていないこと、
を特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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