説明

電子銃組立用の溶接自動機

【課題】 本発明は、例えば、CRT(陰極線管)における電子銃の組立に使用されるレーザー溶接自動機に関し、生産性の向上と、パーツの位置決め精度の向上が課題である。
【解決手段】 エッチスプリング11bを保持して電子銃アッセンブリ11aにおける溶接部への位置決めをするとともに、当該溶接部の近傍にエッチスプリングを移動させる搬送位置決め手段13と、該搬送位置決め手段によって移動させた後のエッチスプリングの一部を前記溶接部に当接させると共に所望の圧力で加圧する加圧手段2とを有する溶接自動機であって、前記加圧手段2が、エアーシリンダーの駆動により前記エッチスプリング11bを加圧する電子銃組立用の溶接自動機である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、CRT(陰極線管)における電子銃の組立に使用されるレーザー溶接自動機に係り、更に詳しくは、パーツのセッティングの位置決めを正確且つ確実に遂行できる電子銃組立用の溶接自動機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、図3に示すように、CRT10における電子銃11の組立において、図4に示すように、電子銃アッセンブリ11aの先端部に4個の弾性支持体(これをエッチスプリングと称する、以下同じ)11bがレーザー溶接(a部)によって固定されている。
【0003】前記エッチスプリング11bは、電子銃11の先端部において円周方向に均等配置で溶接される。この溶接作業は、図5に示すように、レーザー溶接ユニット12によって、パーツフィーダーから切り出されたエッチスプリング11bが1個ずつ供給され、該エッチスプリング11bが旋回アーム13先端部のチャックユニット13aに位置決めして保持される。その後、当該旋回アーム13が回転して所定位置まで回転した後に停止する。該旋回アーム上の直動ガイドに沿って前記チャックユニット13aが移動し、エッチスプリング11bの一部が電子銃アッセンブリ11aの先端部における溶接部に当接する。
【0004】前記エッチスプリング11bは、スプリング14によって加圧され、電子銃アッセンブリ11aの先端部に当該エッチスプリング11bの一端部がセットされた後に、溶接ユニット15によりレーザー溶接されるものである。これを、4回繰り返して、4個のエッチスプリング11bが電子銃アッセンブリ11aの先端部に各々溶着されて、電子銃11の組立が完了する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記エッチスプリング11bを旋回アーム13の回転で移動させるので、組立工数を低減すべく、前記旋回アーム13が高速で回転されると、チャックユニット13aの慣性で、電子銃アッセンブリ11aを過剰に加圧してパーツの変形が生じるおそれがある。
【0006】また、電子銃アッセンブリ11aとの接触の際に反動によりエッチスプリング11bの姿勢が乱れることがあり、その場合には該エッチスプリング11bの位置決めが不完全な状態のままレーザー溶接されることがある。更に、スプリング14の反力によるエッチスプリング11bへの加圧方法であるので、弾性力にバラツキのあるスプリングにおいて最適条件を求めるのに手間が掛かるのと、長時間の使用により当該スプリングの弾性力が弱って交換する必要がある、等の課題がある。本発明に係る電子銃組立用の溶接自動機は、このような課題を解消するために提案されたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る電子銃組立用の溶接自動機の上記課題を解決するための要旨は、エッチスプリングを保持して電子銃アッセンブリにおける溶接部への位置決めをするとともに、当該溶接部の近傍にエッチスプリングを移動させる搬送位置決め手段と、該搬送位置決め手段によって移動させた後のエッチスプリングの一部を前記溶接部に当接させると共に所望の圧力で加圧する加圧手段とを有する溶接自動機であって、前記加圧手段が、エアーシリンダーの駆動により前記エッチスプリングを加圧することである。
【0008】前記加圧手段は、電子銃アッセンブリの溶接部から離間した状態で、エッチスプリングを支持するチャックユニットを前進させて前記エッチスプリングを前記溶接部に当接させ、且つ、該エッチスプリングの前記溶接部への加圧力を制御する制御手段を有することを含むものである。
【0009】本発明に係る電子銃組立用の溶接自動機によれば、搬送位置決め手段によって、チャックユニットで支持されたエッチスプリングが溶接対象の電子銃アッセンブリの溶接部から若干離間した位置で、一旦、移動停止される。そして、加圧手段によって前記チャックユニットが前進し、前記エッチスプリングの一部が電子銃アッセンブリの溶接部に当接する。このチャックユニットの前進動作は、エアーシリンダーによって、その移動速度及び加圧力が、例えば、減圧弁(レギュレータ)等の制御手段で任意に微調整することができる。よって、従来例のようなスプリングを何度も交換して最も適当なものを選択するという手間が掛からない。また、スプリングの場合において生じていたような、長期的な使用で加圧力が変化するというおそれもなくなる。
【0010】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係る電子銃組立用の溶接自動機について図面を参照して説明する。なお、発明の理解の容易のため従来例に対応する部分には従来例と同一符号を付けて説明する。
【0011】本発明の電子銃組立用の溶接自動機1は、図1に示すように、パーツフィーダから供給された導電性の弾性体であるエッチスプリング11bを、搬送位置決め手段である旋回アーム13上のチャックユニット13aの先端に位置決めしてチャックさせ、歯車3の回転駆動により、旋回アーム13を時計方向に回転させて、エッチスプリング11bの一部を、加圧手段により電子銃アッセンブリ11aの先端部に当接させるものである。
【0012】前記旋回アーム13には、前記チャックユニット13aを電子銃アッセンブリ11a側に前進させ、更にそこから後退させる加圧手段としてのエアーシリンダー2が設けられている。
【0013】前記エアーシリンダー2には、前記チャックユニット13aの前進及び後退する時の移動速度を調節する流量制御弁が設けられており、電子銃アッセンブリ11aにエッチスプリング11bを当接させた後に当該エッチスプリング11bを加圧する加圧力を調節する、制御手段としての減圧弁が設けられている。
【0014】このような本発明の電子銃組立用の溶接自動機1による、エッチスプリング11bを溶接する電子銃アッセンブリの組立について説明する。まず、パーツフィーダーに投入されたエッチスプリング11bが横向きに整列された後に、切り出し部で切り出される。そして、部品供給アームに前記エッチスプリング11bが吸着されて移動され、旋回アーム13のチャックユニット13aに載置される。
【0015】チャックユニット13aに載置されたエッチスプリング11bは、そのチャック先端部においてチャックシリンダーでチャックされる。チャックユニット13aは、旋回アーム13の歯車3側の基端部へ後退させた状態にある。なお、ストッパー部材5は、旋回アーム13が下部初期位置に反時計方向に回転して戻ってきた際の、アーム位置決めとなるものである。
【0016】図2に示すように、このチャックされたエッチスプリング11bの端部に、位置決めアーム4が前進して当該アーム4の位置決め部4aが当接し、当該エッチスプリング11bの位置決めが完了する。
【0017】エッチスプリング11bの位置決めがされた後に、図1に示すように、歯車3が時計方向に回転し、旋回アーム13が破線で示す下部初期位置から時計方向に回転される。
【0018】前記旋回アーム13は、所定の角度回転した後に、ストッパーピンに当接して所定の位置で回転停止される。旋回アーム13上のチャックユニット13aに吸着されて保持されていたエッチスプリング11bは、溶接対象の電子銃アッセンブリ11aから若干離間した位置に至って静止する。
【0019】前記旋回アーム13の回転は、従来例よりも高速に行われる。例えば、エッチスプリング11bの1本につき、その高速化によって約0.5秒の短縮となるものである。
【0020】前記旋回アーム13の回転停止後に、該アーム13に備えられたエアーシリンダー2が制御手段によって駆動され、チャックユニット13aが図中において右方向へ前進する。前記エッチスプリング11bの一部が電子銃アッセンブリ11aの端部の外周面に当接し、且つ、所望の圧力にて加圧される。
【0021】前記エッチスプリング11bの一部と電子銃アッセンブリ11aの端部の外周面とが当接し加圧作用された後に、マルチフォーカスレンズを用いたレーザー溶接ユニット12によって、2点同時に溶接される(図4のa部参照)。
【0022】その後、チャックユニット13aにおいて、エッチスプリング11bの吸着作用が解除され、エアーシリンダー2によって左方向に後退される。そして、旋回アーム13が歯車3の反時計方向への回転駆動により、下部初期位置に戻される。一方、上部において、電子銃アッセンブリ11aが水平方向に所要回転(例えば90゜)されて、次の溶接作業に備える。再び、パーツフィーダからエッチスプリング11bがチャックユニット13aに供給されて、上記溶接作業が一つの電子銃アッセンブリ11aに対して4個のエッチスプリング11bが溶接されるものである。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る電子銃組立用の溶接自動機は、エッチスプリングを保持して電子銃アッセンブリにおける溶接部への位置決めをするとともに、当該溶接部の近傍にエッチスプリングを移動させる搬送位置決め手段と、該搬送位置決め手段によって移動させた後のエッチスプリングの一部を前記溶接部に当接させると共に所望の圧力で加圧する加圧手段とを有する溶接自動機であって、前記加圧手段が、エアーシリンダーの駆動により前記エッチスプリングを加圧するので、旋回移動時に溶接部に直接パーツを衝撃的に当接させないことでパーツに与える負荷が軽減されて品質の向上となる。また、エアーシリンダーの制御装置で加圧速度若しくは加圧力を任意に且つ容易に調節することができるとともに、スプリングを使用した時のような部品交換による加圧力の調整という手間が省かれる。前記搬送位置決め手段によってエッチスプリングが溶接部の近傍に移動され、一旦、移動停止された後にエアーシリンダーで当接移動されることから、旋回アーム等の移動速度を従来例よりも早くしても、エッチスプリングの位置ズレのおそれが無く、生産性が向上する。
【0024】前記加圧手段は、電子銃アッセンブリの溶接部から離間した状態でエッチスプリングを支持するチャックユニットを前進させて前記エッチスプリングを前記溶接部に当接させ、且つ、該エッチスプリングの前記溶接部への加圧力を制御できるので、エッチスプリングの位置決めや加圧力を高精度に設定することができて、電子銃及び該電子銃を使用するCRTの品質向上となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子銃組立用の溶接自動機の使用状態を示す説明図である。
【図2】同本発明に係る電子銃組立用の溶接自動機に搬送・吸着されたエッチスプリングを位置決めする様子を示す説明図である。
【図3】電子銃をCRTに組み付けた状態の斜視図である。
【図4】電子銃アッセンブリにエッチスプリングを溶接して電子銃を組立ることを示す説明図である。
【図5】従来例に係る電子銃組立用の溶接自動機の使用状態説明図である。
【符号の説明】
1 電子銃組立用の溶接自動機、 2 エアーシリンダー、3 歯車、 4 位置決めアーム、4a 位置決め部、 5 ストッパー部材、10 CRT、 11 電子銃、11a 電子銃アッセンブリ、 11b エッチスプリング、12 レーザー溶接ユニット、 13 旋回アーム、13a チャックユニット、 14 スプリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 エッチスプリングを保持して電子銃アッセンブリにおける溶接部への位置決めをするとともに、当該溶接部の近傍にエッチスプリングを移動させる搬送位置決め手段と、該搬送位置決め手段によって移動させた後のエッチスプリングの一部を前記溶接部に当接させると共に所望の圧力で加圧する加圧手段とを有する溶接自動機であって、前記加圧手段が、エアーシリンダーの駆動により前記エッチスプリングを加圧すること、を特徴とする電子銃組立用の溶接自動機。
【請求項2】 加圧手段は、電子銃アッセンブリの溶接部から離間した状態で、エッチスプリングを支持するチャックユニットを前進させて前記エッチスプリングを前記溶接部に当接させ、且つ、該エッチスプリングの前記溶接部への加圧力を制御する制御手段を有すること、を特徴とする請求項1に記載の電子銃組立用の溶接自動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2003−36785(P2003−36785A)
【公開日】平成15年2月7日(2003.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−222966(P2001−222966)
【出願日】平成13年7月24日(2001.7.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】