説明

電子黒板システム、電子黒板システムの制御方法、プログラムおよびその記録媒体

【課題】書込可能領域が広く、ユーザーが直感的な操作を行うことのできる電子黒板システムを提供する。
【解決手段】ページ画像に対する書き込み指示を行うための表示画面11aに対する第1方法によるタッチ操作と、表示画面11aに対する第1方法とは異なる第2方法によるタッチ操作とを識別可能に検出し、第2方法による所定のタッチ操作を検出した場合に、上記所定のタッチ操作が行われる前のページデータのページ範囲に第1方法による書き込み指示が可能な拡張書込範囲を付加してページデータのページ範囲を拡張する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルを有する表示装置を備え、上記タッチパネルに対する書き込み操作に応じた画像を上記表示装置に表示させる電子黒板システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、タッチパネルを用いてユーザーからの指示入力を受け付ける表示装置において、ユーザーが指示入力を行う領域を表示中の画像領域外の領域に拡張させることでユーザーの操作性を高める技術がいくつか提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、タッチパネルの入力領域の周辺に設定された操作領域に対して所定の操作が行われた場合に、ディスプレイ画面の周縁に位置するカーソルをこのディスプレイ画面の外側へ向けて移動させるとともに、このカーソルの移動に応じてディスプレイ画面の表示内容をスクロールさせる技術が開示されている。これにより、特許文献2の技術では、タッチパネルを用いたタッチ操作によってディスプレイ画面の外側に設定された表示画像への表示領域の移動制御を可能にしている。
【0004】
また、特許文献2には、LCD有効表示エリアの周囲にマウス操作と同等な操作を認識するエリアを設け、LCD有効表示エリアの辺領域をポインティングした場合には上,下,左および右の辺に対応してカーソルを移動させるとともに表示画面をスクロールさせ、隅領域をポインティングした場合には、左上,右上および左下の隅に対応してマウスにおける複数のボタンの操作(マウスの第1ボタンの押し下げ、第2ボタンの押し下げ、および第1・第2ボタンの同時押し下げ)に対応する処理を行う技術が開示されている。これにより、特許文献2の技術では、タッチパネルを用いてパソコンにおけるマウス操作と同様の操作を行うこと可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−123369号公報(平成14年4月26日公開)
【特許文献2】特開平7−72976号公報(平成7年3月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、タッチパネルの入力面の周縁部を所定の操作を行うための操作領域として機能させるため、電子黒板システムとして用いる場合に、当該操作領域に対して書き込みを行うことができず、書込可能領域が狭くなってしまうという問題がある。また、書込可能領域と操作領域とが明確に示されるわけではないので、ユーザーがこれら両領域を直感的に識別することができないという問題がある。
【0007】
また、上記特許文献2の技術では、LCD有効表示エリアの周囲にタッチペンによるマウス操作と同様の操作を認識するエリアを設け、当該エリアに対するタッチペンによる操作を認識したときに当該操作に応じた処理を行うようになっているが、この構成では、上記エリアには画像が表示されないので、ユーザーが直感的な操作をしにくいという問題がある。また、表示領域の周囲に上記エリアを設ける必要があるので、表示装置のサイズに対する表示領域(電子黒板システムとして用いる場合の書込可能領域)のサイズが比較的小さくなってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、書込可能領域が広く、ユーザーが直感的な操作を行うことのできる電子黒板システムおよびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子黒板システムは、上記の課題を解決するために、ページデータに応じたページ画像を表示する表示画面と、上記表示画面に対するタッチ操作を検出するタッチ操作検出手段とを備えた電子黒板システムであって、上記ページデータは、当該ページデータに対応するページのページ範囲と当該ページ範囲に対するユーザーからの書き込み指示内容とを含むデータであり、上記タッチ操作検出手段は、上記ページ範囲に対する書き込み指示を行うための上記表示画面に対する第1方法によるタッチ操作と、上記表示画面に対する上記第1方法とは異なる第2方法によるタッチ操作とを識別可能に検出し、上記タッチ操作検出手段が上記表示画面に対する上記第2方法による所定のタッチ操作を検出した場合に、上記所定のタッチ操作が行われる前のページデータのページ範囲に上記第1方法による書き込み指示が可能な拡張書込範囲を付加して上記ページデータのページ範囲を拡張する書込範囲拡張処理を行う制御部を備えていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の電子黒板システムの制御方法は、上記の課題を解決するために、ページデータに応じたページ画像を表示する表示画面と、上記表示画面に対するタッチ操作を検出するタッチ操作検出手段とを備えた電子黒板システムの制御方法であって、上記ページデータは、当該ページデータに対応するページのページ範囲と当該ページ範囲に対するユーザーからの書き込み指示内容とを含むデータであり、上記タッチ操作検出手段により、上記ページ範囲に対する書き込み指示を行うための上記表示画面に対する第1方法によるタッチ操作と、上記表示画面に対する上記第1方法とは異なる第2方法によるタッチ操作とを識別可能に検出する検出工程と、上記検出工程において上記表示画面に対する上記第2方法による所定のタッチ操作を検出した場合に、上記所定のタッチ操作が行われる前のページデータのページ範囲に上記第1方法による書き込み指示が可能な拡張書込範囲を付加して上記ページデータのページ範囲を拡張する書込範囲拡張処理を行う拡張工程とを含むことを特徴としている。
【0011】
上記の電子黒板システムおよび電子黒板システムの制御方法によれば、ページ画像に対する書き込み指示を行うための表示画面に対する第1方法によるタッチ操作と、表示画面に対する第1方法とは異なる第2方法によるタッチ操作とを識別可能に検出し、第2方法による表示画面に対する所定のタッチ操作を検出した場合に、上記所定のタッチ操作が行われる前のページデータのページ範囲に上記第1方法による書き込み指示が可能な拡張書込範囲を付加して上記ページデータのページ範囲を拡張する書込範囲拡張処理を行う。これにより、ユーザーがページデータの書込可能範囲を容易に拡張することができる。また、ページデータに対する書き込み指示の入力領域(第1方法による入力領域)と、書込可能範囲を拡張するための指示入力の入力範囲(第2方法による入力領域)とを共通にできるので、書込可能領域が広く、ユーザーが直感的な操作を行うことのできる電子黒板システムを実現できる。
【0012】
また、上記制御部は、上記書込範囲拡張処理において、上記第2方法による上記所定のタッチ操作が行われる前の上記ページ画像の一部が当該タッチ操作前のページ画像の表示領域から外れるように上記ページ画像をスライドさせることによって当該表示領域に生じる余白領域を上記拡張書込範囲とする構成としてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、拡張書込範囲とともに当該拡張書込範囲の近傍のページ画像が表示されるので、ユーザーがページデータを容易に把握することができる。
【0014】
また、上記制御部は、上記拡張書込範囲を付加した後のページデータに対応するページ画像の全体、または上記拡張書込範囲を付加した後のページデータに対応するページ画像のうち上記拡張書込範囲を付加する前のページ画像に対応する画像の画像サイズを変倍することにより、上記拡張書込範囲を付加した後のページデータに対応するページ画像のサイズを上記表示領域のサイズに一致させる構成としてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、拡張書込範囲を含むページデータの全体が表示されるので、書込範囲拡張処理を行った場合であってもユーザーがページデータの全体を容易に把握することができる。
【0016】
また、上記所定のタッチ操作は、上記第2方法によって上記表示画面に触れた状態で上記表示画面に対する接触位置を略直線状に移動させるタッチ操作であり、上記制御部は、当該タッチ操作の軌跡に応じたベクトルを算出し、算出したベクトルに応じて上記拡張書込範囲を付加する位置および上記拡張書込範囲のサイズを決定する構成としてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、ユーザーが拡張書込範囲のサイズを容易かつ直感的に指定することができる。
【0018】
また、上記制御部は、複数ページのページデータが存在する場合に、上記書き込み指示の対象とするページデータ以外のページデータのうちの少なくとも1ページ分のページデータに応じたページ画像の縮小画像を生成し、上記書き込み指示の対象とするページデータのページ画像に上記縮小画像を重畳させた重畳画像を上記表示画面に表示させ、上記タッチ操作検出手段が上記縮小画像を選択するためのタッチ操作を検出した場合に、上記書き込み指示の対象とするページデータを当該タッチ操作によって選択された縮小画像に切り替える構成としてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、書き込み指示の対象とするページデータのページ画像に他のページデータの縮小画像を重畳させて同一画面上に表示することができるので、ユーザーが複数のページデータの内容を視認できる。また、書き込み指示の対象とするページデータを容易に切り替えることができる。
【0020】
また、上記第1方法によるタッチ操作は、所定のペン入力装置を用いた上記表示画面に対するタッチ操作であり、上記第2方法によるタッチ操作は、上記ペン入力装置以外を用いた上記表示画面に対するタッチ操作である構成としてもよい。あるいは、上記第1方法によるタッチ操作は、オン状態とオフ状態とに切り替え可能な所定のペン入力装置をオン状態にして上記表示画面に接触させるタッチ操作であり、上記第2方法によるタッチ操作は、ペン入力装置をオフ状態にして上記表示画面に接触させるタッチ操作、または上記ペン入力装置以外を用いた上記表示画面に対するタッチ操作である構成としてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、第1方法によるタッチ操作と第2方法によるタッチ操作とを適切に識別することができる。
【0022】
なお、上記電子黒板システムは、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記制御部として動作させることにより、上記電子黒板システムをコンピュータにて実現させるプログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に含まれる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の電子黒板システムおよび電子黒板システムの制御方法は上記ページ範囲に対する書き込み指示を行うための上記表示画面に対する第1方法によるタッチ操作と、上記表示画面に対する上記第1方法とは異なる第2方法によるタッチ操作とを識別可能に検出し、上記表示画面に対する上記第2方法による所定のタッチ操作を検出した場合に、上記所定のタッチ操作が行われる前のページデータのページ範囲に上記第1方法による書き込み指示が可能な拡張書込範囲を付加して上記ページデータのページ範囲を拡張する書込範囲拡張処理を行う。
【0024】
それゆえ、ユーザーがページ画像の書込可能範囲を容易に拡張することができる。また、書込可能領域が広く、ユーザーが直感的な操作を行うことができる電子黒板システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電子黒板システムにおける書込領域拡張処理および変倍処理を説明するための模式図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる電子黒板システムの構成を示す模式図である。
【図3】図2に示した電子黒板システムのブロック図である。
【図4】図2に示した電子黒板システムに備えられる発光素子および受光素子の配置を示す模式図である。
【図5】図2に示した電子黒板システムに備えられるペン入力装置の構成を示す模式図である。
【図6】図2に示した電子黒板システムの表示画面に表示される画像の一例を示す模式図である。
【図7】図2に示した電子黒板システムにおけるタッチ操作によるユーザーからの指示入力の受け付け処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】図2に示した電子黒板システムにおける書込領域拡張処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】図2に示した電子黒板システムにおけるタッチ操作に対応するベクトルの算出方法を示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施形態にかかる電子黒板システムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】図10に示した電子黒板システムの表示画面に表示される画像の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について説明する。
【0027】
(1−1.電子黒板システム10の全体構成)
図2は本実施形態にかかる電子黒板システム10の構成を示す模式図であり、図3は電子黒板システム10の機能構成を示すブロック図である。
【0028】
図2および図3に示すように、電子黒板システム10は、表示装置1、ペン入力装置2、および外部装置3を備えている。
【0029】
表示装置1は、表示部11、表示制御部12、タッチパネル部13、ペンデータ受信部14、制御部15、インターフェース部16、および記憶部17を備えている。
【0030】
制御部15は、記憶部17に記憶されている各種情報および各種制御を実施するためのプログラムを読み出して演算処理や判定処理を行い、これらの処理結果に基づいて表示装置1の各部に制御信号を送って当該各部の動作を制御する。なお、制御部15は、例えば、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路である。
【0031】
記憶部17は、制御部15の処理で用いられる各種プログラムや各種情報、ページデータ、および各種画像データなどを記憶する記憶手段である。
【0032】
表示制御部12は、制御部15の指示に応じた画像を表示させるように表示部11の動作を制御し、表示部11の表示画面11aに上記画像を表示させる。
【0033】
表示部11は、表示制御部12からの指示に応じた画像を表示する表示手段である。本実施形態では、表示部11として60インチサイズの液晶表示装置を用いている。なお、表示部11は画像データに応じた画像を表示できるものであればよく、例えば、プラズマディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネセンス)ディスプレイ、CRTなどを用いてもよい。また、表示部11のサイズについても特に限定されるものではない。
【0034】
タッチパネル部13は、発光部41、アドレスデコーダ42、受光部43、アドレスデコーダ44、およびA/D変換部(A/Dコンバータ)45を備えており、制御部15の指示に応じてユーザーからのタッチ操作を検出する処理を行うとともに、その検出結果を制御部15に伝達する。
【0035】
発光部41は赤外光を照射する多数の発光素子41a,41bからなり、受光部43は上記各発光素子41a,41bから照射された赤外光を受光する多数の受光素子43a,43bからなる。なお、上記発光素子41a,41bとしては、例えば赤外光を発光する発光ダイオード(LED)などを用いることができる。
【0036】
具体的には、図4に示すように、矩形形状からなる表示画面11aの周縁部を取り囲む枠部11bの長辺のうちの1辺に発光素子41a,41a,・・・が所定ピッチ(本実施形態では4.35mm毎)で配置され、当該長辺に対向するもう一方の長辺に各発光素子41a,41a,・・・から出射される赤外光を受光する受光素子43a,43a,・・・が所定ピッチ(本実施形態では4.35mm毎)で配置されている。また、枠部11bの短辺のうちの1辺に発光素子41b,41b,・・・が所定ピッチ(本実施形態では4.35mm毎)で配置され、当該長辺に対向するもう一方の長辺に各発光素子41b,41b,・・・から出射される赤外光を受光する受光素子43b,43b,・・・が所定ピッチ(本実施形態では4.35mm毎)で配置されている。
【0037】
なお、本実施形態では、各発光素子41aおよび41bから照射される赤外光のホバリングギャップは約3mmに設定されている。すなわち、各発光素子41aおよび41bから照射された赤外光は、表示画面11aから約3mm離れた位置を表示画面11aに対して平行に進み、当該発光素子41a,41bに対応する受光素子43aおよび43bに入射するようになっている。
【0038】
また、本実施形態では、枠部11bの長辺には308個の発光素子41a、受光素子43aが設けられ、短辺には174個の発光素子41b、受光素子43bが設けられているが、図4では、便宜上、これらのうちの一部のみを描いている。
【0039】
また、発光部41(各発光素子41a,41b)はアドレスデコーダ42に接続されており、受光部43(各受光素子43a,43b)はアドレスデコーダ44およびA/D変換部45に接続されている。
【0040】
アドレスデコーダ42は、制御部15からの指示に応じて、発光素子41a,41a,・・・および発光素子41b,41b,・・・のいずれかを選択する信号を発光部41へ出力する。すなわち、制御部15が各発光素子を順次発光させるための信号をアドレスデコーダ42へ出力すると、これに応じて、アドレスデコーダ42が各発光素子を順次選択し、選択した発光素子を順次発光させる。
【0041】
アドレスデコーダ44は、制御部15からの指示に応じて、赤外光の受光処理を行う受光素子を選択する信号を受光部43へ出力する。すなわち、制御部15は、各発光素子を順次発光させるための信号をアドレスデコーダ42に出力するとともに、当該信号に同期した、発光させる発光素子に対応する受光素子に受光処理を行わせるための信号をアドレスデコーダ42へ出力する。これにより、アドレスデコーダ44が各受光素子に受光処理を行わせる。各受光素子は、アドレスデコーダ44によって選択されたときに、受光した赤外光の強度を電圧値で示す強度信号をA/D変換部45へ出力する。
【0042】
A/D変換部45は、各受光素子から入力される強度信号をデジタル信号に変換して制御部15に伝達する。例えば、A/D変換部45は、各受光素子から入力される強度信号を8ビットのデジタル信号へ変換して制御部15へ出力する。
【0043】
制御部15は、各発光素子を順次発光させるとともに、発光させた発光素子に対応する受光素子に受光処理を行わせる処理を繰り返すことにより、全ての受光素子からの強度信号を取得する。例えば、制御部15は、発光素子41a,41a,・・・,41aを端から順次発光させるとともにこれら各発光素子に対応する受光素子43a,43a,・・・,43aから強度信号を取得し、次に、発光素子41b,41b,・・・,41bを端から順次発光させるとともにこれら各発光素子に対応する受光素子43b,43b,・・・,43bから強度信号を取得する。
【0044】
また、制御部15は、各受光素子から取得した強度信号から当該各受光素子での受光量を計算し、当該受光素子によって受光する赤外光が発光素子から受光素子までの光路において遮断されたか否かを判定する。すなわち、ある受光素子での受光量が予め定められている閾値を超過している場合、制御部15は、当該受光素子が受光する赤外光は遮断されていないと判定し、上記閾値以下である場合、制御部15は当該受光素子が受光する赤外光が遮断されていると判定する。このようにして、制御部15は、受光する赤外光の光路が遮断されている受光素子を特定する。
【0045】
これにより、ペン入力装置2あるいはペン入力装置2以外の物を表示画面11aに接触させて表示画面11a上のいずれかの位置を指示している場合は、その接触位置に応じた位置を通る光路が遮断され、制御部15は、特定した受光素子の位置からペン入力装置2あるいはペン入力装置2以外の物で指示された表示画面11a上の位置を算出する。例えば、表示画面11aの長辺方向をx軸方向、短辺方向をy軸方向とする場合、座標(xi,0)の位置にある受光素子43a、および座標(0,yi)の位置にある受光素子43bでの受光量が閾値以下であり、他の受光素子での受光量が閾値を超過している場合、制御部15は、表示画面11a上の指示位置(接触位置)の座標を(xi,yi)と算出する。
【0046】
なお、タッチパネル部13の構成はこれに限るものではなく、ユーザーによる表示画面へのタッチ動作を検出できる構成であればよい。例えば、赤外線遮断方式に限らず、抵抗膜方式、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式、超音波表面弾性波方式、音響パルス認識方式、振動検出方式、電磁誘導方式、画像認識方式、あるいは光センサ内蔵LCD方式のタッチパネル部を用いてもよい。また、例えば、液晶表示パネル、プラズマディスプレイ、有機ELパネル等の表示パネルの表示画面上に、ユーザーのタッチ操作を検出するためのタッチパネル部(例えば赤外線遮断方式のタッチパネル部等)を取り付けたオーバーレイ構造であってもよく、タッチパネル部を表示パネルと一体化させた構造であってもよい。
【0047】
ペンデータ受信部14は、ペン入力装置2のペンデータ送信部25から送信されるペンデータを受信する。
【0048】
本実施形態では、図2に示すように、ペンデータ受信部14としての超音波マイクが表示部11の表示画面の周囲に設けられた枠部11bに設けられており、この超音波マイクにより、ペン入力装置2のペンデータ送信部25から超音波によって送信されたペンデータを受信するようになっている。なお、図2に示した例ではペンデータ受信部14としての超音波マイクを2つ備えているが、超音波マイクの個数はこれに限るものではない。
【0049】
また、本実施形態では、ペンデータを超音波によって送受信するものとしているが、これに限るものではなく、タッチパネル部13の処理を妨げない方法でペンデータを送受信できればよい。例えば、超音波方式に代えて、IR(赤外線)方式、無線方式、Bluetooth(登録商標)等を用いてもよい。
【0050】
インターフェース部16は、表示装置1に対して通信可能に接続された外部装置3との間で通信を行うためのものである。表示装置1と外部装置3との接続方法は特に限定されるものではなく、有線であっても無線であってもよい。
【0051】
制御部15は、タッチパネル部13を用いて検出したユーザーの表示画面11aに対するタッチ位置を示す位置データ、およびペンデータ受信部14によって受信したペンデータを、インターフェース部16を介して外部装置3に出力させる。また、制御部15は、表示制御部12を制御し、ペン入力装置2によってタッチ操作された表示画面11a上の位置を示す画像を表示画面11aに表示させる。あるいは、ペン入力装置2によってタッチ操作された表示画面11a上の位置の軌跡に応じて文字、線、図形等を表示画面11aにおけるタッチ操作に応じた位置に表示させる。
【0052】
また、制御部15は、インターフェース部16を介して外部装置3から受信したデータに応じて表示装置1の各部を制御する。例えば、外部装置3から受信した画像データに応じた画像を表示部11に表示させる。
【0053】
外部装置3は、表示装置1との通信を行うインターフェース部32と、表示装置1から受信した位置データおよびペンデータに応じた処理を行うデータ処理部33と、表示装置1から受信した位置データおよびペンデータを記憶するデータ記憶部34とを備えている。データ処理部33における処理の詳細については後述する。なお、本実施形態では、表示装置1と外部装置3とが通信可能に接続されている構成について説明するが、これに限らず、表示装置1と外部装置3とが一体的に形成されていてもよい。この場合、表示装置1の制御部15と外部装置3の制御部31とが共通の処理回路によって形成されていてもよい。
【0054】
図5はペン入力装置2の外観を示す模式図である。図2および図5に示すように、ペン入力装置2は、ペン先スイッチ21、メニューボタン22、モード/色切替ボタン23、ペン制御部24、およびペンデータ送信部25を備えている。
【0055】
ペン制御部24は、演算部、制御プログラムを記憶するメモリ、および演算に伴う一時的なデータを記憶するメモリ等を備えている(いずれも図示せず)からなり、ペン先スイッチ21、メニューボタン22、およびモード/色切替ボタン23が検出したユーザーの操作内容に応じた信号であるペンデータを、ペンデータ送信部25を介して表示装置1に送信させる。
【0056】
ペン先スイッチ(接触検出手段)21は、ユーザーがペン入力装置2のペン先を指示対象物に接触させたときにオン状態になり、ペン先が何にも接触していない場合にはオフ状態となる機械式スイッチである。なお、ペン先スイッチ21は、ペン先が指示対象物に対して接触しているか否かを検出できる構成であればよく、機械式スイッチに限るものではない。例えば、光学式スイッチ等であってもよい。ペン制御部24は、ペン先スイッチ21がオン状態になったことを検出すると、ペン入力装置2がオン状態であることを示す信号(ペンデータ)を、ペンデータ送信部25を介して表示装置1に送信させる。
【0057】
なお、ペン先スイッチ21は円錐の先端部を丸めた形状を有しており、先端から上記ホバリングギャップ(約3mm)だけ離れた位置の径は約4mmであり、発光素子41aおよび41bのギャップ(本実施形態では4.35mm)よりもやや短く設定されている。ただし、ペン先スイッチ21の形状はこれに限るものではない。
【0058】
図6は、表示装置1の表示画面11aに表示される画像の一例を示す模式図である。この図に示す例では、表示画面11aの右上部に、複数のメニューアイコンからなるメニューアイコン群51が表示されている。上記各メニューアイコンに対応するメニューは特に限定されるものではないが、例えば、ペン入力装置2によって書き込む文字や線の色を変更するためのメニュー、ペン入力装置2によって書き込む文字や線の太さを変更するためのメニュー、書き込まれている文字や線をペン入力装置2によるタッチ操作よって消去するためのメニュー(消しゴム機能)、表示画像を変倍(拡大あるいは縮小)させるためのメニュー、ペン入力装置2によって表示画面上のオブジェクトあるいは範囲を指定する処理を行うためのメニュー、直前に行った操作を元に戻す(やり直す)ためのメニュー、他のページに移行するためのメニュー、ページデータを保存するためのメニュー、ページデータを印刷するためのメニュー、ページデータを所定の送信先に送信するためのメニュー、各種設定を変更するためのメニュー、所定のフォルダを開くためのメニューなどが挙げられる。また、本実施形態ではメニューアイコン群51を表示画面11aに表示させているが、これに限らず、例えば表示装置1の枠部11b等にベゼルスイッチとして設けてもよい。
【0059】
例えば、ユーザーは、ペン入力装置2の先端部で所望するメニューに対応するメニューアイコンをタッチ操作することにより、当該メニューに応じた処理を指示することができる。
【0060】
また、表示画面11aにおけるメニューアイコン群51以外の領域にペン入力装置2の先端部を接触させることにより、文字や線、図形等を書き込むことができる。
【0061】
また、ペン制御部24は、メニューボタン22あるいはモード/色切替ボタン23が操作されたことを検知すると、当該ボタンに予め割り当てられた機能に応じた信号(ペンデータ)を、ペンデータ送信部25を介して表示装置1に送信させる。例えば、ペン制御部24は、メニューボタン22が操作されると、予め設定されたユーザーが選択可能なメニューのうちメニューボタン22の操作回数に応じたメニューを表示させるための要求を表示装置1に送信し、表示部11に表示させる。また、ペン制御部24は、モード/色切替ボタン23が操作されると、その時点で選択されているメニューを実行させるための信号を表示装置1に送信する。上記メニューとしては、例えば、上記メニューアイコンに対応するメニューと同様であってもよく、異なっていてもよい。
【0062】
なお、メニューボタン22およびモード/色切替ボタン23に割り当てる機能は特に限定されるものではなく、任意に設定可能である。例えば、従来のパソコン等で用いられているマウスにおける右ボタンおよび左ボタンと同様の機能をメニューボタン22およびモード/色切替ボタン23に割り当ててもよい。
【0063】
(1−2.電子黒板システム10の動作)
次に、電子黒板システム10の動作について説明する。
【0064】
(1−2−1.タッチ操作による指示入力の受付処理)
まず、タッチ操作によるユーザーからの指示入力の受付処理について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0065】
はじめに、制御部15は、記憶部17に記憶させている指フラグおよびペンフラグをリセットする(S1)。指フラグおよびペンフラグの詳細については後述する。
【0066】
次に、制御部15は、表示画面に対する接触(タッチ操作)を検出したか否かを判断する(S2)。なお、本実施形態では、赤外線遮断方式のタッチパネルを用いているので、受光部43における何れかの受光素子において赤外線が遮断されたことを検出したか否かに応じて表示画面に対する接触が行われたか否かを判断する。
【0067】
S2において表示画面に対する接触を検出していないと判断した場合、制御部15は後述するS9の処理に移行する。
【0068】
一方、S2において表示画面に対する接触を検出したと判断した場合、制御部15は、ペン入力装置2がオン状態であるか否かを判断する(S3)。具体的には、制御部15は、ペンデータ受信部14がペン入力装置2からペン先スイッチ21がオン状態になっていることを示す信号(ペンデータ)を受信したか否かに応じてペン入力装置2がオン状態であるか否かを判断する。
【0069】
そして、ペン入力装置2がオン状態であると判断した場合、制御部15は、ペンフラグをセットする(S4)。具体的には、制御部15は、記憶部17に記憶させているペンフラグの値をペン入力装置2がオン状態であることを示す値に更新する。すなわち、ペンフラグは、オン状態のペン入力装置2によって表示画面11aへの接触が行われたことを示すフラグである。
【0070】
一方、ペン入力装置2がオン状態ではないと判断した場合、制御部15は、指フラグをセットする(S5)。具体的には、制御部15は、記憶部17に記憶させている指フラグの値をペン入力装置2がオフ状態であることを示す値に更新する。すなわち、指フラグは、オン状態のペン入力装置2以外の物(例えば、ユーザーの指や指示棒、あるいはオフ状態のペン入力装置2など)によって表示画面11aへの接触が行われたことを示すフラグである。
【0071】
次に、制御部15は、受光部43の受光結果に基づいて、表示画面11aにおける接触された位置の座標を算出し(S6)、算出した座標データと、ペンフラグおよび指フラグの状態を示すフラグデータとをインターフェース部16を介して外部装置3に送信させる(S7)。なお、外部装置3における処理については後述する。
【0072】
その後、制御部15は、表示画面11aに対する接触状態が継続しているか否かを判断し(S8)、継続している場合にはS6およびS7の処理を繰り返す。
【0073】
また、S8において接触状態が終了したと判断した場合、およびS2において表示画面に対する接触を検出していないと判断した場合、制御部15は、タッチ操作によるユーザーからの指示入力の受け付け処理を終了するか否かを判断する(S9)。そして、終了すると判断した場合には処理を終了し、終了しないと判断した場合にはS1の処理に戻る。なお、タッチ操作によるユーザーからの指示入力の受け付け処理を終了するか否かの判断は、例えば、ユーザーからの終了指示がなされたか否か、あるいは電子黒板システム10の電源がオフされたか否か等に応じて行えばよい。
【0074】
(1−2−2.書込範囲拡張処理)
次に、書込範囲拡張処理について、図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。書込範囲拡張処理とは、書き込み指示の対象とするページデータ(編集中のページデータ)に応じたページ画像の周囲に、ユーザーのタッチ操作に応じて書込処理を行える領域である拡張書込範囲を付加した拡張ページ画像を生成する処理である。
【0075】
まず、外部装置3の制御部31は、インターフェース部32を介して表示装置1から座標データおよびフラグデータを受信すると(S11)、受信したフラグデータに基づいてペンフラグがセットされているか否かを判断する(S12)。
【0076】
そして、S12においてペンフラグがセットされていると判断した場合、制御部31は、受信した座標データはペン入力装置2をオン状態にして書き込まれたデータであると判断し、データ処理部33を制御して接触された位置に応じた所定の処理(ペン入力処理)を行わせる(S13)。
【0077】
なお、上記ペン入力処理の内容は特に限定されるものではなく、従来の電子黒板システムと同様の処理であってもよい。例えば、表示画面11aにおけるページ画像に対するタッチ操作であった場合、タッチ位置の軌跡に応じた線や文字を編集中のページデータに付加するとともに、当該ページデータに応じた画像であるページ画像(ページ画像データ)に反映させて表示装置1に送信する。また、メニューアイコンに対するタッチ操作であった場合、当該メニューアイコンに応じた処理を行わせる。なお、選択されているメニューアイコンとページ画像に対する接触位置とに応じて処理内容を決定するようにしてもよい。
【0078】
一方、S12においてペンフラグがセットされていないと判断した場合、制御部31は、受信した座標データに基づいて接触位置の軌跡に対応するベクトル(方向および長さ)を算出する(S14)。図9は、上記ベクトルの算出方法を示す説明図である。この図に示すように、制御部31は、受信した座標データに基づいて、指(オン状態のペン入力装置2以外の物)による接触が開始された位置の座標(xi,yi)と、指が離された位置の座標(xj,yj)とを検出し、この検出結果に基づいて上記ベクトルを算出する。
【0079】
次に、制御部31は、S14で算出したベクトルに応じて書込範囲拡張処理(S15)、および縮小処理(変倍処理)(S16)を行う。
【0080】
図1は、書込範囲拡張処理および変倍処理を説明するための模式図である。この図に示すように、指によるタッチ操作(書込領域拡張指示、第2方法によるタッチ操作)が行われる前の状態(デフォルト設定の状態)では、表示画面11aの全域に編集中のページデータのページ画像の全体が表示されており、このページ画像の全域に対して書き込み可能になっている。
【0081】
そして、指によるタッチ操作が行われると、制御部15は当該タッチ操作のベクトルに応じて、表示画面11aに表示されていたページ画像の一部が表示画面11aの外部に移動するように当該ページ画像をスライド(平行移動)させ、このスライドによって表示画面11aに生じる余白領域を新たな書込領域である拡張書込範囲としてページ画像に付加する。
【0082】
なお、ページ画像をスライドさせる量は、ベクトルの長さと同じにしてもよく、ベクトルの長さに予め設定した倍率を乗じた量(ベクトルの長さに比例した量)にしてもよく、ベクトルの長さによらず一定にしてもよく、ベクトルの長さを複数段階に分類した各グループとスライドさせる量とを予め対応付けておき、ベクトルの長さに対応するグループに応じた量に設定してもよい。
【0083】
また、スライドさせる方向は、ベクトルに応じた方向であってもよく、ベクトルの方向を基準方向(例えば図9のx方向)に対する角度に応じて複数段階に分類した各角度範囲とスライドさせる方向とを予め対応付けておき、ベクトルの方向に対応する角度範囲に応じた方向に設定してもよい。
【0084】
また、制御部15は、ページ画像をスライドさせる前(書込範囲拡張処理前)に表示画面11aに表示されていたページ画像全体のサイズが表示画面11aにおける拡張書込範囲以外の領域のサイズに一致するように当該ページ画像を縮小(変倍)する。
【0085】
その後、制御部31は、編集中のページデータを、書込範囲拡張処理前のページ画像を縮小した画像と拡張書込範囲の画像とを組み合わせたページデータに更新するとともに(S17)、更新後のページデータに応じたページ画像(拡張ページ画像)を表示画面11aに表示させるための表示データを生成し(S18)、表示装置1に送信する。なお、書込領域の変更履歴を記憶部17に記憶させておき、ユーザーからの指示に応じて過去の書込領域の状態に戻せるようにしてもよい。
【0086】
その後、制御部31は電子黒板システム10の処理を終了するか否かを判断し(S19)、終了しない場合にはS11の処理に戻る。
【0087】
以上のように、本実施形態にかかる電子黒板システム10は、ページ画像に対する書き込み指示を行うための表示画面11aに対するペン入力装置2によるタッチ操作(第1方法によるタッチ操作)と、ペン入力装置2以外によるタッチ操作(第2方法によるタッチ操作)とを識別可能に検出し、ペン入力装置2以外による所定のタッチ操作を検出した場合に、当該タッチ操作が行われる前のページ画像の周囲に拡張書込範囲を付加した拡張ページ画像を生成する書込範囲拡張処理を行う。
【0088】
これにより、ユーザーがページ画像の書込可能範囲を容易に拡張することができる。また、書き込み指示をペン入力装置2によって入力するための領域と、書込範囲拡張処理をペン入力装置2以外により入力するための領域とを共通にできるので、書込可能領域が広く、ユーザーが直感的な操作を行うことができる。
【0089】
また、本実施形態では、変倍処理により、書込範囲拡張処理後のページデータに応じたページ画像のサイズを書込範囲拡張処理前のページ画像のサイズに一致させて表示画面11aに表示させる。これにより、拡張書込範囲を含むページデータの全体が表示されるので、書込範囲拡張処理を行った場合であってもユーザーがページデータの全体を容易に把握することができる。
【0090】
また、例えば、ページデータの書込可能範囲と表示画面11aにおける表示範囲とが一致する標準(デフォルト)設定のページデータに対して必要に応じて拡張書込範囲を適宜付加して書込可能領域を拡張することができるので、ユーザーが最終的なページの範囲を書き込み開始直後から意識する必要がなく、ページデータの範囲を必要に応じて適宜変更できる。
【0091】
なお、上記特許文献1,2の技術では、表示領域のサイズよりも大きな画像データの一部を表示領域に表示させた状態で当該表示領域の周縁に触れる操作を行ったときに、画像データにおけるそれまで非表示領域であった領域を表示させるように表示画面をスクロールさせるようになっており、必要に応じて拡張書込範囲を適宜付加することについては何ら考慮されていない。また、画像データをページ単位で管理することについても考慮されておらず、ユーザーが表示画面に表示される画像と画像データの全体像との関係を把握しにくく、また画像データの非表示領域の内容を視認できない。
【0092】
なお、本実施形態では、表示画面11aに表示されている画像の一部が表示領域から外れるようにスライドさせることによって表示領域に生じた余白領域を拡張書込範囲とした後、書込範囲拡張処理前に表示されていた画像を縮小(変倍)して書込範囲拡張処理後のページデータ、および当該ページデータのページ画像に含める構成について説明したが、これに限るものではない。例えば、スライド処理を行わず、書込範囲拡張処理前に表示されていた画像を指によるタッチ操作に対応するベクトルに応じて縮小処理し、この縮小処理によって表示領域に生じる余白領域を拡張書込範囲とすることにより、書込範囲拡張処理前のページデータと拡張書込範囲とを含むページデータ、および当該ページデータのページ画像を生成するようにしてもよい。例えば、図1の場合、表示画面11aの左下角部を固定点として拡張領域生成前の表示画像をベクトルに応じた変倍率で縮小し、それによって生じる余白領域
を拡張領域とするようにしてもよい。あるいは、拡張領域生成前の表示画像をベクトルに応じた変倍率で縮小し、縮小後の画像を表示画面11aにおけるベクトル方向の端部に配置することにより、拡張領域とするようにしてもよい。
【0093】
また、本実施形態では、指によるタッチ操作に応じたスライド処理および変倍処理によって書き込み領域の拡張処理を行った後に当該拡張領域に対するペン入力装置2による文字や線等の入力を受け付けるようになっている。ただし、これに限らず、表示画面11aに表示されている画像をスライドさせることによって拡張領域を生成した後、この状態で拡張領域に対するペン入力装置2による文字や線等の書き込みを受け付け、受け付けた文字や線等に応じたペン入力処理を行ってから、拡張領域の生成前に表示されていた画像を変倍してページデータに含めるようにしてもよい。
【0094】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1と同様の機能を有する部材については実施形態1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0095】
本実施形態にかかる電子黒板システム10の構成は実施形態1に示したものと略同様である。ただし、本実施形態では、複数ページのページデータが存在する場合に、編集中のページデータに応じた画像が表示されている表示画面11aの一部に、他のページデータのサムネイル画像(縮小画像)を表示させ、サムネイル画像に対する操作を行うことによって編集するページデータを任意に切り替えることができるようになっている。
【0096】
図10は本実施形態にかかる電子黒板システム10における処理の流れを示すフローチャートである。なお、表示装置1におけるタッチ操作による指示入力の受け付け処理は実施形態1と同様である。
【0097】
まず、外部装置3の制御部31は、複数ページ分のページデータがあるか否かを判断する(S21)。そして、複数ページ分のページデータが存在しない場合、制御部31は、ページデータに応じた画像を表示画面11aの全域に表示させるための表示データを生成し、表示装置1に送信する(S22)。
【0098】
一方、複数ページ分のページデータが存在する場合、制御部31は、各ページデータの縮小画像データ(あるいはサムネイル画像データ)を生成し(S23)、編集中のページデータを表示画面11aの全域に表示させるための画像に編集中のページデータ以外のページデータの縮小画像データを重畳させた重畳表示データを生成して表示装置1に送信する(S24)。
【0099】
S22またはS24の処理を行った後、制御部31は、表示装置1から座標データおよびフラグデータを受信することを監視する(S25)。そして、表示装置1から座標データおよびフラグデータを受信すると、制御部31は、受信したフラグデータに基づいてペンフラグがセットされているか否かを判断する(S26)。
【0100】
そして、S26においてペンフラグがセットされていると判断した場合、制御部31は、受信した座標データはペン入力装置2をオン状態にして書き込まれたデータであると判断し、データ処理部33を制御して接触された位置に応じた所定の処理(ペン入力処理)を行わせる(S27)。この処理は図8におけるS13の処理と同様である。
【0101】
一方、S26においてペンフラグがセットされていないと判断した場合、制御部31は、受信した座標データに基づいて、縮小画像に対する処理か否かを判断する(S28)。そして、縮小画像に対する処理ではないと判断した場合、S30〜S33の処理を行う。なお、S30〜S33の処理は図8におけるS15〜S18の処理と同様である。
【0102】
そして、S27またはS30〜S33の処理を行った後、制御部31は電子黒板システム10の処理を終了するか否かを判断し(S34)、終了しない場合にはS21の処理に戻る。
【0103】
一方、S28において縮小画像に対する処理であると判断した場合、制御部31は、ページ切り替え指示(縮小画像を選択するためのタッチ操作)であるか否かを判断する(S35)。本実施形態では、縮小画像に対してペン入力装置2以外でダブルタッチ操作(2度押し操作、すなわち所定時間以内に接触/非接触を2回繰り返す操作)した場合にページ切り替え指示がなされたと判断するようになっている。
【0104】
そして、S35においてページ切り替え指示であると判断した場合、制御部31は、編集中のページデータをダブルタッチ操作された縮小画像に対応するページデータに切り替え(S36)、S23の処理に戻る。
【0105】
図11の(a)〜(c)はこの場合の表示画面11aに表示される画像の推移を示す説明図である。図11の(a)は、編集対象であるページBの画像が表示画面11aの全域に表示され、非編集対象ページであるページAの縮小画像がページBの画像の一部に重畳して表示されている状態を示している。また、図11の(b)のようにページAの縮小画像をダブルタッチ操作する場合を示している。図11の(b)のようにページAの縮小画像をダブルタッチ操作すると、編集対象ページがページAに切り替えられ、図11の(c)に示すように、ページAの画像を表示画面11aの全域に表示させ、このページAの画像の一部にページBの縮小画像を重畳させた画像(重畳画像)が表示される。
【0106】
一方、S35においてページ切り替え指示ではないと判断した場合、制御部31は、縮小画像の移動指示であるか否かを判断する(S37)。本実施形態では、縮小画像の一部に触れたまま指(ペン入力装置2以外の物)を表示画面11a上で移動させた場合に、縮小画像の移動指示であると判断するようになっている。
【0107】
そして、縮小画像の移動指示であると判断した場合、縮小画像の重畳位置を指の接触位置に応じて移動させた重畳表示データを再生成して表示装置1に送信し(S38)、S25の処理に戻る。また、縮小画像の移動指示ではないと判断した場合には、そのままS25の処理に戻る。
【0108】
以上のように、本実施形態にかかる電子黒板システム10は、複数ページのページデータが存在する場合に、編集対象のページデータ(書き込み指示の対象とするページデータ)の画像を表示画面11aの略全域に表示させるとともに、この編集対象のページデータの画像に非編集対象のページデータ(書き込み指示の対象とするページデータ以外のページデータのうちの少なくとも1ページ分のページデータ)の縮小画像を重畳させて表示させる。そして、縮小画像に対してページデータの切り替え指示が行われたときに、当該縮小画像に対応するページデータを編集対象のページデータに切り替え、当該ページデータの画像を表示画面の略全域に表示させるとともに、その他のページデータの縮小画像を重畳させて表示させる。
【0109】
これにより、ユーザーが、複数ページのページデータの内容を容易に把握するとともに、ページデータの切り替え処理を簡単な操作で行うことができる。したがって、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【0110】
なお、上記各実施形態では、書込領域に対する線や文字の書き込み指示をペン入力装置2で行い、書き込み領域の拡張指示、縮小画像に対するページデータの切り替え指示、および縮小画像の移動指示を指(ペン入力装置2以外の物)で行う構成について主に説明したが、これに限らず、書込領域に対する線や文字の書き込み指示と、書き込み領域の拡張指示、縮小画像に対するページデータの切り替え指示、および縮小画像の移動指示とを識別可能な方法で指示入力できればよい。
【0111】
また、上記各実施形態では、表示装置1と外部装置3とが別々に設けられて通信可能に接続されている構成について説明したが、これに限るものではなく、外部装置3の各部の機能を表示装置1の内部に備えてもよい。すなわち、表示装置1と外部装置3とを一体化させてもよい。
【0112】
また、本実施形態では、編集中のページデータに応じた画像を表示画面11aの略全域に表示させる場合について説明したが、これに限らず、ページデータに応じた画像の表示領域を表示画面11aにおける所定範囲に設定してもよい。
【0113】
また、本実施形態において、電子黒板システム10(表示装置1、外部装置3)に備えられる各部(各ブロック)、特に表示装置1の制御部15、外部装置3の制御部31およびデータ処理部33を、CPU等のプロセッサを用いてソフトウェアによって実現してもよい。この場合、電子黒板システム10(表示装置1、外部装置3)は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである電子黒板システム10(表示装置1、外部装置3)の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、電子黒板システム10(表示装置1、外部装置3)に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによって達成される。
【0114】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0115】
また、電子黒板システム10(表示装置1、外部装置3)を通信ネットワークと接続可能に構成し、通信ネットワークを介して上記プログラムコードを供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0116】
また、電子黒板システム10(表示装置1、外部装置3)の各ブロックは、ソフトウェアを用いて実現されるものに限らず、ハードウェアロジックによって構成されるものであってもよく、処理の一部を行うハードウェアと当該ハードウェアの制御や残余の処理を行うソフトウェアを実行する演算手段とを組み合わせたものであってもよい。
【0117】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、タッチパネルを有する表示装置を備え、上記タッチパネルに対する書き込み操作に応じた画像を上記表示装置に表示させる電子黒板システムに適用できる。
【符号の説明】
【0119】
1 表示装置
2 ペン入力装置
3 外部装置
10 電子黒板システム
11 表示部
11a 表示画面
11b 枠部
12 表示制御部
13 タッチパネル部(タッチ操作検出手段)
14 ペンデータ受信部(タッチ操作検出手段)
15 制御部(タッチ操作検出手段)
16 インターフェース部
17 記憶部
21 ペン先スイッチ
22 メニューボタン
23 モード/色切替ボタン
24 ペン制御部
25 ペンデータ送信部
31 制御部
32 インターフェース部
33 データ処理部
34 データ記憶部
41 発光部
41a,41b 発光素子
42 アドレスデコーダ
43 受光部
43a,43b 受光素子
44 アドレスデコーダ
45 A/D変換部
51 メニューアイコン群


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ページデータに応じたページ画像を表示する表示画面と、上記表示画面に対するタッチ操作を検出するタッチ操作検出手段とを備えた電子黒板システムであって、
上記ページデータは、当該ページデータに対応するページのページ範囲と当該ページ範囲に対するユーザーからの書き込み指示内容とを含むデータであり、
上記タッチ操作検出手段は、上記ページ範囲に対する書き込み指示を行うための上記表示画面に対する第1方法によるタッチ操作と、上記表示画面に対する上記第1方法とは異なる第2方法によるタッチ操作とを識別可能に検出し、
上記タッチ操作検出手段が上記表示画面に対する上記第2方法による所定のタッチ操作を検出した場合に、上記所定のタッチ操作が行われる前のページデータのページ範囲に上記第1方法による書き込み指示が可能な拡張書込範囲を付加して上記ページデータのページ範囲を拡張する書込範囲拡張処理を行う制御部を備えていることを特徴とする電子黒板システム。
【請求項2】
上記制御部は、上記書込範囲拡張処理において、上記第2方法による上記所定のタッチ操作が行われる前の上記ページ画像の一部が当該タッチ操作前のページ画像の表示領域から外れるように上記ページ画像をスライドさせることによって当該表示領域に生じる余白領域を上記拡張書込範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項3】
上記制御部は、上記拡張書込範囲を付加した後のページデータに対応するページ画像の全体、または上記拡張書込範囲を付加した後のページデータに対応するページ画像のうち上記拡張書込範囲を付加する前のページ画像に対応する画像の画像サイズを変倍することにより、上記拡張書込範囲を付加した後のページデータに対応するページ画像のサイズを上記表示領域のサイズに一致させることを特徴とする請求項2に記載の電子黒板システム。
【請求項4】
上記制御部は、上記第2方法による上記所定のタッチ操作が行われる前の上記ページデータに応じたページ画像を縮小する縮小処理を行い、当該縮小処理によって当該タッチ操作が行われる前のページ画像の表示領域に生じる余白領域を上記拡張書込範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項5】
上記所定のタッチ操作は、上記第2方法によって上記表示画面に触れた状態で上記表示画面に対する接触位置を略直線状に移動させるタッチ操作であり、
上記制御部は、当該タッチ操作の軌跡に応じたベクトルを算出し、算出したベクトルに応じて上記拡張書込範囲を付加する位置および上記拡張書込範囲のサイズを決定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子黒板システム。
【請求項6】
上記制御部は、
複数ページのページデータが存在する場合に、上記書き込み指示の対象とするページデータ以外のページデータのうちの少なくとも1ページ分のページデータに応じたページ画像の縮小画像を生成し、
上記書き込み指示の対象とするページデータのページ画像に上記縮小画像を重畳させた重畳画像を上記表示画面に表示させ、
上記タッチ操作検出手段が上記縮小画像を選択するためのタッチ操作を検出した場合に、上記書き込み指示の対象とするページデータを当該タッチ操作によって選択された縮小画像に切り替えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子黒板システム。
【請求項7】
上記第1方法によるタッチ操作は、所定のペン入力装置を用いた上記表示画面に対するタッチ操作であり、
上記第2方法によるタッチ操作は、上記ペン入力装置以外を用いた上記表示画面に対するタッチ操作であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電子黒板システム。
【請求項8】
上記第1方法によるタッチ操作は、オン状態とオフ状態とに切り替え可能な所定のペン入力装置をオン状態にして上記表示画面に接触させるタッチ操作であり、
上記第2方法によるタッチ操作は、ペン入力装置をオフ状態にして上記表示画面に接触させるタッチ操作、または上記ペン入力装置以外を用いた上記表示画面に対するタッチ操作であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電子黒板システム。
【請求項9】
ページデータに応じたページ画像を表示する表示画面と、上記表示画面に対するタッチ操作を検出するタッチ操作検出手段とを備えた電子黒板システムの制御方法であって、
上記ページデータは、当該ページデータに対応するページのページ範囲と当該ページ範囲に対するユーザーからの書き込み指示内容とを含むデータであり、
上記タッチ操作検出手段により、上記ページ範囲に対する書き込み指示を行うための上記表示画面に対する第1方法によるタッチ操作と、上記表示画面に対する上記第1方法とは異なる第2方法によるタッチ操作とを識別可能に検出する検出工程と、
上記検出工程において上記表示画面に対する上記第2方法による所定のタッチ操作を検出した場合に、上記所定のタッチ操作が行われる前のページデータのページ範囲に上記第1方法による書き込み指示が可能な拡張書込範囲を付加して上記ページデータのページ範囲を拡張書込範囲拡張処理を行う拡張工程とを含むことを特徴とする電子黒板システムの制御方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電子黒板システムを動作させるプログラムであって、コンピュータを上記制御部として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−146017(P2012−146017A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2044(P2011−2044)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】