説明

電極の接続構造、これに用いる導電性接着剤及び電子機器

【課題】酸化防止皮膜としての有機膜を備える接続用電極を、導電性接着剤を用いて接続することにより、製造工程を簡素化できるとともに、安価に、かつ信頼性の高い接続構造を構成する手段を提供する。
【解決手段】第1の接続用電極2と第2の接続用電極10とが、導電性接着剤層9を介して接続された電極の接続構造であって、少なくとも上記の接続用電極に設けられた有機膜6,11と、上記導電性接着剤層の厚み方向に長径方向を配向して配合されているとともに、平均長径が、少なくとも上記有機膜と上記導電性接着剤層との合計厚みより大きい導電性粒子8とを備え、上記導電性粒子が上記有機膜を突き破って、上記第1の接続用電極と上記第2の接続用電極とに接触させられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電極の接続構造、これに用いる導電性接着剤及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、高機能化の流れの中で、構成部品(たとえば、液晶製品における電子部品)内の接続端子の微小化が進んでいる。このため、エレクトロニクス実装分野においては、そのような端子間の接続を容易に行える導電性接着剤として、フィルム状の導電性接着剤が広く使用されている。たとえば、銅電極からなる接続用電極が設けられたフレキシブルプリント配線板(FPC)やリジッドプリント配線板(PWB又はPCB)等のプリント配線板と、銅電極等の接続用電極が形成されたガラス基板等の配線板間の接続や、プリント配線板とICチップ等の電子部品の接続に、上記導電性接着剤が使用されている。
【0003】
上記導電性接着剤は、絶縁性の樹脂組成物中に、導電性粒子を、配向分散させた異方導電性を有する接着剤である。上記導電性接着剤は、被接着部材同士の間に挟まれ、加熱、加圧される。加熱、加圧により接着剤中の樹脂が流動し、電極表面を封止すると同時に、導電性粒子の一部が対峙する電極間に噛み込まれて電気的接続が達成された状態で接着される。従来、プリント配線板等に設けられる接続用電極の表面には、酸化防止及び導電性の確保を目的として金メッキが施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−79568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の手法においては、銅等で形成された接続用電極の表面にニッケルメッキ層を形成した上に、上記金メッキ層が形成される。このため、電極の製造工程が複雑になるとともに、上記電極を有する配線板及びこれら配線板を有する電子機器の製造コストが増大するという問題がある。
【0006】
接続用電極に上記金メッキを施さない場合は、電極を構成する銅等の配線基材が露出するため酸化しやすく、電極を接続する際の障害になる。このため、上記金メッキに代えて、酸化防止用の有機膜が形成されることが多い。上記有機膜は、接続用電極の表面に水溶性プリフラックス処理(OSP処理:Organic Solderability Preservation)を施すことにより形成される。上記水溶性プリフラックスは、アゾール化合物を含有する酸性水溶液であり、電極表面との間に錯体が形成された状態で有機膜が形成される。
【0007】
一方、電子部品を配線板の電子部品接続用電極に接続する電子部品接続工程において、半田リフロー処理が採用されることが多い。半田リフロー処理は、鉛フリー半田を配線板の電子部品接続用電極の表面に塗着等して電子部品を載置し、リフロー炉に入れることにより行われる。その後、上記電子部品を接続した上記配線板の接続用電極に、配線用のフレキシブルプリント配線板等の接続用電極が上記導電性接着剤を用いて接続される。上記導電性接着剤中の導電性粒子が、上記接続用電極の表面に形成された上記有機膜を突き破るようにして電気的接続が行われる。
【0008】
ところが、上記半田リフロー処理において、上記有機膜に熱が作用して硬質化することが多い。このため、上記導電性接着剤中の導電性粒子が上記有機膜を突き破ることができなくなり、接続不良が生じる恐れがある。一方、上記有機膜を形成していない場合は、接続用電極の表面が酸化して接続不良等が発生することになる。
【0009】
本願発明は、上記問題を解決するために案出されたものであり、酸化防止皮膜としての有機膜を備える接続用電極を、導電性接着剤を用いて接続することにより、製造工程を簡素化できるとともに、安価で、かつ信頼性の高い電極の接続構造、これに用いる導電性接着剤及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の請求項1に記載した発明は、第1の接続用電極と第2の接続用電極とが、導電性接着剤層を介して接続された電極の接続構造であって、少なくとも上記第1の接続用電極に設けられた有機膜と、上記導電性接着剤層の厚み方向に長径方向を配向して配合されているとともに、平均長径が、少なくとも上記有機膜と上記導電性接着剤層との合計厚みより大きい導電性粒子とを備え、上記導電性粒子が上記有機膜を突き破って、上記第1の接続用電極と上記第2の接続用電極とに接触させられているものである。
【0011】
本願発明は、酸化防止用の有機膜が形成された電極に適用される。上記有機膜は、導電性を有しない。このため、上記導電性接着剤中に、上記有機膜を突き破って電気的接続を図る導電性粒子を配合する必要がある。
【0012】
本願発明に係る導電性粒子は、上記導電性接着剤層の厚み方向に長径方向を配向して配合されているとともに、平均長径が、少なくとも上記有機膜と上記導電性接着剤層との合計厚みより大きく設定されている。
【0013】
導電性粒子を、導電性接着剤層の厚み方向に配向することにより、隣り合う接続用電極間の絶縁を維持してこれら電極間の短絡を防止しつつ、多数の電極を一度に、かつ各々を独立して導電接続することができる。
【0014】
また、上記導電性粒子の平均長径を上記のように設定することにより、導電性接着剤を電極間で挟圧した際に、上記導電性粒子を有機膜の内部に突き入れて、上記導電性粒子の先端部を、接続用電極に到達させることが可能となる。
【0015】
上記導電性粒子を採用することにより、導電性粒子の両端部を対向配置される接続用電極間に掛け渡すようにして、これら電極を電気的に導通させることが可能となる。このため、導電性接着剤を介して接続される電極間を確実に導通させることが可能となり、電極間の接続構造の信頼性が高まる。
【0016】
上記接続用電極が設けられた配線板に電子部品を搭載する場合、上記有機膜形成後に、上記電子部品が半田リフロー処理によって上記配線板に接続されるため、上記有機膜が硬質化していることが多い。
【0017】
本願発明を採用することにより、硬質化した有機膜が存在する場合においても、上記導電性粒子が上記有機膜を突き破ることができる。このため、上記接続用電極間の接続を確実に行うことが可能となる。しかも、上記有機膜によって接続用電極の酸化を防止できるため、従来の金メッキを施す場合と比べて、電子機器等の製造コストを大幅に低減させることができる。さらに、半田リフロー工程を非酸化性雰囲気下で行うことにより、この工程中の電極の酸化を防止して、上記接続用電極間の接続をより確実に行うことができる。
【0018】
酸化防止用の有機膜を備えていれば、本願発明に係る接続方法が適用される接続用電極及びこの電極を設けた配線板等は特に限定されることはない。たとえば、プリント配線板等に設けられた電極のみならず、電子部品の電極と配線板の電極とを接続する場合に本願発明に係る電極の接続構造を適用できる。
【0019】
また、半田リフロー処理によって上記有機膜が硬質化した電極のみならず、半田リフロー処理を行わない配線板や電子部品の接続用電極の接続に対して本願発明を適用することができる。また、上記導電性粒子が突き破れる有機膜の厚さが従来に比べて大きくなるため、電極に形成される有機膜の厚さを大きく設定して、耐酸化性を高めることも可能となる。
【0020】
本願発明に係る電極の接続方法を適用できる有機膜の種類は特に限定されることはない。上記水溶性プリフラックス処理は、たとえば、アゾール化合物を含有する酸性水溶液を作用させることにより行われる。上記アゾール化合物として、イミダゾール、2−ウンデシルイイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2,2,4ジフェニルイミダゾール、トリアゾール、アミノトリアゾール、ピラゾール、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、2−ブチルベンゾイミダゾール、2−フェニルエチルベンゾイミダゾール、2−ナフチルベンゾイミダゾール、5−ニトロ−2−ノニルベンゾイミダゾール、5−クロロ−2−ノニルベンゾイミダゾール、2−アミノベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、カルボキシルベンゾトリアゾール等のアゾール化合物を採用することができる。
【0021】
さらに、2−フェニル−4−メチル−5−ベンジルイミダゾール、2,4−ジフェニルイミダゾール、2,4−ジフェニル−5−メチルイミダゾール等の2−フェニルイミダゾール類、5−メチルベンゾイミダゾール、2−アルキルベンゾイミダゾール、2−アリールベンゾイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール類から選ばれる少なくとも1つの有機化合物を含む有機膜は、耐熱性が高いため、酸化防止機能が高く好適である。
【0022】
上記有機膜の平均厚みは、0.05μm以上0.5μm以下であることが好ましい。有機膜の平均厚みが、0.05μm未満の場合は、有機膜の酸化防止機能を確保しにくく、接続用電極の表面が酸化される恐れがある。一方、有機膜の平均厚みが、0.5μmを越えると、導電性粒子による電気的接続を確保できない恐れがある。
【0023】
請求項2に記載した発明のように、上記導電性接着剤層の厚み方向と直交する断面において、短径が0.01〜1μmの導電性粒子を、30,000〜300,000個/mm2 配合するのが好ましい。
【0024】
導電性粒子の短径が0.01μm以下であると、有機膜を突き破る際の強度を確保できない。一方、導電性粒子の短径が1μmを越えると、隣接する導電性粒子間の絶縁性が低下する恐れが大きくなる。
【0025】
導電性粒子の数が30,000個/mm2より少ないと、電極に接触させることのできる導電性粒子数が少なくなる。一方、導電性粒子の数が300,000個/mm2をこえると隣接する導電性粒子が接触する恐れが大きくなり、絶縁性が低下する。
【0026】
導電性粒子の配合量を上記のように設定することにより、導電性接着剤を電極間で挟圧する際に、上記導電性粒子に上記有機膜を突き破らせる力を作用させることができる。また、接続用電極と接触させられる導電性粒子の数を確保できるため、電気抵抗を減じて確実な電極接続構造を得ることができる。
【0027】
上記導電性粒子の形態も特に限定されることはない。例えば、請求項3に記載した発明のように、微細な金属粒子が多数、直鎖状に繋がった形状、又は針形状を有する金属粉末からなる導電性粒子を採用するのが好ましい。
【0028】
この形態の導電性粒子を採用することにより、導電性接着剤層の接合面方向においては、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、厚み方向においては、多数の上記導電性粒子を介して電気的接続を確保することができる。このため、接続用電極間の電気的接続の信頼性が向上する。
【0029】
また、請求項4に記載した発明のように、アスペクト比が5以上の導電性粒子を採用するのが好ましい。ここで言うアスペクト比とは、導電性粒子の平均短径(導電性粒子の断面の長さ)と平均長径(導電性粒子の長さ)の比のことをいう。
【0030】
アスペクト比が5以上の粒子を採用することにより、粒子数を増やしても体積密度増加による隣接電極間の絶縁性が低下する恐れがない。また、電極に対する接触確率も高くなる。
【0031】
上記導電性接着剤の形態も特に限定されることはない。たとえば、流動性のある液状の導電性接着剤を採用し、接続用電極に塗着して上記導電性粒子の長径方向を厚み方向に配向することにより上記接着剤層を構成することができる。
【0032】
また、請求項5に記載した発明のように、上記導電性接着剤層をフィルム状の接着剤から形成することができる。フィルム状の導電性接着剤を採用することにより、取り扱いが容易になるとともに、上記接着剤を介して、加熱圧縮処理を行うことにより、電極を接続する際の作業性が向上する。
【0033】
請求項6に記載した発明は、接続される電極の少なくとも一方に有機膜が形成された電極の接続構造に用いられるフィルム状の導電性接着剤であって、熱硬化性樹脂を含む接着剤成分と、長径方向がフィルムの厚み方向に配向された導電性粒子とを含むとともに、上記導電性粒子は、平均長径が、上記有機膜と電極接続後の接着剤層の厚みとの合計厚みより大きく設定されているものである。
【0034】
上記導電性粒子として、請求項1から請求項5に係る電極の接続構造に採用された導電性粒子を採用できる。この構成を採用することにより、導電性粒子を、接続される電極間に掛け渡すようにして接続することができる。したがって、信頼性の高い電極の接続構造を構成することができる。
【0035】
上記接着剤成分として、熱硬化性樹脂を主成分とし、これに硬化剤、各種フィラーを添加したものを採用できる。上記熱硬化性樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂等を採用できる。
【0036】
請求項7に記載した発明は、上記導電性接着剤の厚み方向と直交する断面において、短径が0.01〜1μmの導電性粒子を、30,000〜300,000個/mm2 配合して、上記導電性接着剤を構成したものである。
【0037】
本願の請求項8に記載した発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電極の接続構造を備える電子機器に関するものである。本願発明に係る電極の接続構造は、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ等のカメラ、ポータブルオーディオプレーヤー、ポータブルDVDプレーヤー、ノートパソコン等の電子機器内に採用される部材等の電極接続構造に適用することができる。
【発明の効果】
【0038】
本願発明に係る電極の接続方法を採用することにより、電極の製造工程を簡素化して製造コストを低減させることができるとともに、電極間の確実な電気的接続を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本願発明に係る接続方法の概略手順を示す図である。
【図2】図1(e)に示す接続工程おけるII−II線に対応する断面の拡大断面図である。
【図3】本願発明に係る接続構造の拡大断面図である。
【図4】図3に示す接続構造を模式的に表した拡大断面図である。
【図5】図4におけるV−V線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1の(a)〜(e)に、本願発明に係る接続方法の概略手順を示す。なお、本実施形態は、電子部品7を、半田リフロー処理を用いて接続したリジッドプリント配線板1の接続用電極2と、配線用のフレキシブルプリント配線板3の接続用電極11とを接続する電極の接続構造に、本願発明に係る電極の接続構造を適用したものである。
【0041】
図1(a)に示すように、リジッドプリント配線板1の縁部に、配線接続用電極2が形成されている。図1(b)に示すように、上記配線接続用電極2の表面を覆うようにして酸化防止皮膜としての有機膜6を形成する有機膜形成工程が行われる。なお、リジッドプリント配線板1の電子部品搭載用の電極に、上記有機膜を形成して、上記半田リフロー処理を用いることなく電子部品の接続を行うこともできる。
【0042】
上記有機膜6は、電極表面を水溶性プリフラックス処理(OSP処理:Organic Solderability Preservation)を施すことにより形成される。
【0043】
上記水溶性プリフラックス処理は、アゾール化合物を含有する酸性水溶液を作用させることにより行われる。上記アゾール化合物として、たとえば、イミダゾール、2−ウンデシルイイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2,2,4ジフェニルイミダゾール、トリアゾール、アミノトリアゾール、ピラゾール、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、2−ブチルベンゾイミダゾール、2−フェニルエチルベンゾイミダゾール、2−ナフチルベンゾイミダゾール、5−ニトロ−2−ノニルベンゾイミダゾール、5−クロロ−2−ノニルベンゾイミダゾール、2−アミノベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、カルボキシルベンゾトリアゾール等のアゾール化合物が挙げられる。
【0044】
さらに、2−フェニル−4−メチル−5−ベンジルイミダゾール、2,4−ジフェニルイミダゾール、2,4−ジフェニル−5−メチルイミダゾール等の2−フェニルイミダゾール類、5−メチルベンゾイミダゾール、2−アルキルベンゾイミダゾール、2−アリールベンゾイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール類から選ばれる少なくとも1つ有機化合物を含む有機膜は、耐熱性が高いため、酸化防止機能が高く好適である。
【0045】
上記接続用電極2の表面に水溶性プリフラックス処理を施す手法として、例えば、スプレー法、シャワー法、浸漬法等が用いられる。その後、水洗、乾燥させることにより、上記有機膜6が形成される。上記水溶性プリフラックスの温度は、25℃〜40℃が好ましく、水溶性プリフラックスと電極2との接触時間は、30秒〜60秒が好ましい。
【0046】
上記形成された有機膜6の膜厚は、0.05μm以上0.5μm以下の範囲であることが望ましい。上記有機膜の膜厚が0.05μm未満であると、十分な酸化防止機能を確保できない。一方、上記有機膜の膜厚が0.5μmを越えると、導電性接着剤中の導電性粒子を上記電極に十分に接触させることができず、接続抵抗が大きくなる。
【0047】
上記有機膜6を形成することにより、上記電子部品接続工程等において、上記接続用電極2の酸化を防止することができる。また、従来のように、電極に金メッキを施す必要がないため、製造工程を簡略化して、製造コストを低減させることができる。
【0048】
上記水溶性プリフラックス処理を施した後に、電子部品7が上記リジッドプリント配線板1に接続される。本実施形態では、上記リジッドプリント配線板1上の図示しない電子部品接続用電極の表面に鉛フリーハンダを印刷手法等によって塗着し、電子部品7を載置した後にリフロー炉に入れることにより、上記電子部品7が所定の電極に接続される。
【0049】
なお、上記電子部品接続用電極に金メッキを施して上記電子部品を搭載することもできるし、上記接続用電極2と同様の水溶性プリフラックス処理を施した後に、後に説明する上記接続用電極2と同様に、フィルム状の導電性接着剤を用いた手法によって電子部品7を接続することもできる。
【0050】
上記電子部品7を半田リフロー処理によって接続した後、上記リジッドプリント配線板1の上記接続用電極2に、配線用のフレキシブルプリント配線板3の接続用電極が接続される。
【0051】
図1(d)及び図2に示すように、本実施形態では、上記リジッドプリント配線板1の上記配線接続用電極2の表面に、エポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂を主成分とし、潜在性硬化剤と、導電性粒子8を含有するフィルム状の導電性接着剤9aを載置する。そして、上記導電性接着剤9aを所定の温度に加熱した状態で、リジッドプリント配線板1の方向へ所定の圧力で加圧することにより、上記導電性接着剤9aを上記接続用電極2上に仮接着する。なお、ペースト状の導電性接着剤を、上記有機膜6が形成された接続用電極2の表面に塗着し、磁場を作用させながら上記導電性粒子8を配向させて、接着剤層を設けることもできる。
【0052】
次に、図2に示すように、配線用のフレキシブルプリント配線板3の接続用電極10を下向きにした状態で、上記リジッドプリント配線板1の表面に形成された接続用電極2と、上記フレキシブルプリント配線板3の接続用電極10とを位置合わせし、フレキシブルプリント配線板3を、上記導電性接着剤9aを介して上記リジッドプリント配線板1上に載置する。
【0053】
なお、本実施形態では、上記フレキシブルプリント配線板3の接続用電極10の表面にも、上記リジッドプリント配線板1の接続用電極2と同様の水溶性プリフラックス処理が施されて、酸化防止用の有機膜11が形成されている。
【0054】
その後、上記導電性接着剤9aを所定の温度に加熱した状態で、上記リジッドプリント配線板1と上記フレキシブルプリント配線板3とを所定の圧力で挟圧することにより、上記リジッドプリント配線板1の接続用電極2と上記フレキシブルプリント配線板3の接続用電極10とが、上記導電性接着剤9aを介して圧着される。上記導電性接着剤9aは、熱硬化性樹脂を主成分としているため、加熱することにより基材9bが一旦軟化するが、加熱を継続することにより硬化させられる。上記状態であらかじめ設定した硬化時間を経過した後に、上記加圧状態を解除して冷却することにより、リジッドプリント配線板1の接続用電極2と上記フレキシブルプリント配線板3の接続用電極10とが、上記導電性接着剤9aから形成された接着剤層9を介して、電気的導通を確保しながら接続される。
【0055】
図3は、リジッドプリント配線板1とフレキシブルプリント配線板3の接続構造の断面図である。また、図4は、図3における断面の接続構造を模式的に示す拡大断面図である。これらの図から明らかなように、上記接合工程において、上記フィルム状の接着剤9aが、上記配線板1,3の間で挟圧されて対向する電極を覆うように変形させられ、導電性接着剤層9が形成されている。
【0056】
図4に示すように、本実施形態に係る導電性接着剤には、長径方向を接着剤層9の厚み方向に配向した導電性粒子8が配合されている。
【0057】
本実施形態に係る上記導電性接着剤9aに配合された導電性粒子8は、微細な金属粒子が多数直鎖状に繋がった形態、又は針形状の形態を有している。この形態の金属粒子を採用することにより、導電性接着剤層9の面方向においては、リジッドプリント配線板1の隣り合う接続用電極2,2間、又はフレキシブルプリント配線板3に設けた接続用電極10,10間の絶縁を維持して、これら電極間の短絡を防止しつつ、導電性接着剤層9の厚み方向においては、対接させられた多数の電極2,10を一度に、かつ各々を独立して導通接続することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、図4に示すように、上記導電性粒子8の長径方向の寸法Lを、接続用電極2の表面に設けた有機膜6の厚みT1 と、上記接続用電極10の表面に設けた有機膜11の厚みT2 と、接続後の導電性接着剤層9の厚みDの合計厚みHよりも大きく設定している。
【0059】
上記構成の導電性粒子8を採用すると、上記図1(e)に示す接続工程において、上記フィルム状接着剤が挟圧されることにより、上記導電性接着剤層9の両側面から上記導電性粒子8が突出させられるとともに、その先端部分が、上記有機膜6,11を突き破って上記接続用電極2,10にそれぞれ当接させられる。
【0060】
図4に示すように、上記導電性粒子8は、上記接続用電極2,10を掛け渡すように位置させられて、上記接続用電極2,10が電気的に接続される。したがって、この接続構造を採用することにより、上記接続用電極2,10を確実に接続することが可能となり、信頼性の高い電極の接続構造5を構成することができる。
【0061】
なお、上記導電性粒子8の長径方向の寸法Lを、接続用電極2の表面に設けた有機膜6の厚みT1 と、上記接続用電極10の表面に設けた有機膜11の厚みT2 及び上記導電性接着剤層の厚みDの合計厚み(T1 +T2 +D=H)より大きく設定することにより、上記導電性粒子を導電性接着剤層9から突出させることが可能となり、電極間の電気抵抗を低減させることができる。
【0062】
また、本実施形態に係る上記導電性粒子8は、アスペクト比が5以上に設定されている。上記導電性粒子8のアスペクト比を5以上に設定することにより、粒子数を増やしても体積密度増加による隣接電極間の絶縁性が低下する恐れがない。また、電極に対する接触確率も高くなる。このため、これら電極を確実に接続することが可能となる。ここで言うアスペクト比とは、図4に示す導電性粒子8の平均短径(導電性粒子8の断面の長さRの平均値)と平均長径(導電性粒子8の長さLの平均値)の比のことをいう。
【0063】
さらに、本実施形態では、図5に示す上記導電性接着剤層9の厚み方向と直交する断面において、短径Rの平均値が0.2μm、長径Lの平均値が3μmの導電性粒子が、30,000〜300,000個/mm2 となるように配合している。なお、上記導電性粒子のアスペクト比は15となる。
【0064】
上記構成の導電性粒子の配合量を上記のように設定することにより、上記有機膜6,11を突き破って電極に接触する導電性粒子の数を確保することが可能となり、信頼性の高い電極の接続構造を得ることができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記導電性接着剤9aは、フィルム形状を有するものを採用している。フィルム形状の接着剤を採用することにより、導電性粒子長径方向をフィルムの厚み方向に容易に配向させることができる。また、接着剤の取り扱いが容易になるとともに、上記加熱加圧処理を容易に行うことができる。また、加熱圧縮処理によって、導電性粒子8の先端部を上記導電性接着剤層9から突出させて、接続用電極2,10の表面に容易に到達させることができる。
【0066】
さらに、上記アスペクト比を有する導電性粒子の長径方向を、フィルム形状を有する導電性接着剤の厚み方向に配向させることにより、リジッドプリント配線板1の隣り合う接続用電極2,2間、又はフレキシブルプリント配線板3の隣り合う接続用電極10,10間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、対向する多数の電極間を、一度に、かつ各々を独立して導通接続することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態では、上記有機膜6を形成した後に、電子部品7を接続するために、半田リフロー処理が施されている。このため、リジッドプリント配線板1の接続用電極2に形成した上記有機膜6がリフロー炉で作用する熱によって硬質化している。
【0068】
本実施形態では、上記導電性粒子8の長径方向の長さを上記のように設定することにより、上記フィルム状の導電性接着剤9aが、上記接続用電極2,10の間で挟圧される際に、上記導電性粒子の長径方向に挟圧力が作用し、上記有機膜6,11を容易に突き破らせることができる。このため、上記導電性粒子8の端部が、接続用電極2,10の表面に容易に到達し、確実な電気的接続を図ることができる。
【0069】
以下に、本願発明の実施例及び比較例について説明する。なお、本願発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
実施例
(導電性接着剤の作製)
導電性粒子として、長径Lの平均値が3μm、短径Rの平均値が0.2μmである直鎖状ニッケル微粒子を用いた。また、絶縁性の熱硬化樹脂として、2種類のビスフェノールA型の固形エポキシ樹脂〔(1)ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート1256、及び(2)エピコート1004〕、ナフタレン型エポキシ樹脂〔(3)大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロン4032D〕を使用した。また、熱可塑性であるポリビニルブチラール樹脂〔(4)積水化学工業(株)製、商品名エスレックBM−1〕を使用し、マイクロカプセル型潜在性硬化剤としては、(5)マイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤〔旭化成エポキシ(株)製、商品名ノバキュアHX3941〕を使用した。これら(1)〜(5)を重量比で(1)35/(2)20/(3)25/(4)10/(5)30の割合で配合した。
【0071】
これらエポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、潜在製硬化剤及び有機膜分解成分を、セロソルブアセテートに溶解して、分散させた後、三本ロールによる混練を行い、固形分が50重量%である溶液を作製した。この溶液に、固形分の総量(Ni粉末+樹脂)に占める割合で表される金属充填率が0.01体積%となるように上記Ni粉末を添加した後、遠心攪拌ミキサーを用いて攪拌することにより、Ni粉末を均一に分散し、接着剤用の複合材料を作製した。ついで、この複合材料を離型処理したPETフィルム上にドクターナイフを用いて塗布した後、磁束密度100mTの磁場中、60℃で30分間、乾燥、固化させて、塗膜中の直鎖状粒子が磁場方向に配向した厚さ35μmのフィルム状の異方導電性をもつ導電性接着剤を作製した。なお、接合前の導電性粒子の密度は37,000個/mm2である。
【0072】
(プリント配線板の作製)
幅150μm、長さ4mm、高さ18μmの銅電極である接続用電極が150μm間隔で30個配列されたフレキシブルプリント配線板を用意した。接続用電極には、2−フェニル−4−メチル−5−ベンジルイミダゾールを含む酸化防止膜を形成した。その熱分解温度は310℃、平均膜厚は0.20μmであった。
【0073】
(電極接続構造の作製)
上記フレキシブルプリント配線板を、窒素をフローすることによって酸素濃度1%以下としたリフロー炉槽内において、ピーク温度を260℃とした半田リフロー処理を施した。その後、フレキシブルプリント配線板同士を、連続する30箇所の接続抵抗が測定可能なデイジーチェーンを形成するように対向させて配置した。これらフレキシブルプリント配線板の間に作製した上記導電性接着剤を挟み、190℃に加熱しながら、5MPaの圧力を作用させて、導電性接着剤層9の厚みDが1.5μmの厚みになるまで加圧して、フレキシブルプリント配線板同士の接合体を得た。
【0074】
(接続構造の評価)
上記接合体において、上下の接続用電極とこれに挟まれた導電性接着剤の積層体について、上記30箇所の抵抗値を四端子法により求め、求めた値を30で除することにより、接続された1箇所あたりの接続抵抗を求めた。そして、接続抵抗の値が、50mオーム以下の場合を、導電性を確保したものとした。
【0075】
上記のようにして作製した接合体を85℃85%RHの高温高湿槽中に500hr静置した後、同様に接続抵抗を測定した。そして、接続抵抗の上昇率が50%以下の場合を、接続信頼性が良好と判断した。
【0076】
比較例
比較例として、上記導電性粒子として、直径が0.5μmの球状粒子を採用した他は、上記実施例と同じ手法及び材料から得られた同一寸法の電極接続構造を用いた。
【0077】
【表1】

【0078】
(評価結果)
表1から明らかなように、長径Lの値を、有機膜6の厚みT1 と、有機膜11の厚みT2 と、接着剤層9の厚みDの合計厚みHより大きく設定することにより、より電気抵抗の低い電極の接続構造を得ることができる。
【0079】
本願発明の範囲は、上述の実施形態に限定されることはない。今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものでないと考えられるべきである。本願発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
電極接続構造において、酸化防止皮膜として採用される有機膜が、電子部品を接続する半田リフロー工程において硬質化した場合であっても、確実な電気的接続を確保することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 配線板(リジッドプリント配線板)
2 第1の接続用電極
3 配線板(フレキシブルプリント配線板)
6 有機膜
5 電極の接続構造
7 電子部品
8 導電性粒子
9 導電性接着剤層
10 第2の接続用電極
11 有機膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接続用電極と第2の接続用電極とが、導電性接着剤層を介して接続された電極の接続構造であって、
少なくとも上記第1の接続用電極に設けられた有機膜と、
上記導電性接着剤層の厚み方向に長径方向を配向して配合されているとともに、平均長径が、少なくとも上記導電性接着剤層と上記有機膜との合計厚みより大きい導電性粒子とを備え、
上記導電性粒子が上記有機膜を突き破って、上記第1の接続用電極と上記第2の接続用電極とに接触させられている、電極の接続構造。
【請求項2】
上記導電性接着剤層の厚み方向と直交する断面において、短径が0.01〜1μmの導電性粒子が、30,000〜300,000個/mm2 配合されている、請求項1に記載の電極の接続構造。
【請求項3】
上記導電性粒子は、微細な金属粒子が多数、直鎖状に繋がった形状、又は針形状を有する金属粉末である、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電極の接続構造。
【請求項4】
上記導電性粒子のアスペクト比が5以上である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電極の接続構造。
【請求項5】
上記導電性接着剤層がフィルム状導電性接着剤から形成されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電極の接続構造。
【請求項6】
接続される電極の少なくとも一方に有機膜が形成された電極の接続構造に用いられるフィルム状の導電性接着剤であって、
熱硬化性樹脂を含む接着剤成分と、
長径方向がフィルムの厚み方向に配向された導電性粒子とを含むとともに、
上記導電性粒子は、平均長径が、上記有機膜と電極接続後の接着剤層の厚みとの合計厚みより大きく設定されている、導電性接着剤。
【請求項7】
上記導電性接着剤の厚み方向と直交する断面において、短径が0.01〜1μmの導電性粒子が、30,000〜300,000個/mm2 配合されている、請求項6に記載の導電性接着剤。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電極の接続構造を備える、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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