説明

電極インクおよび電池

【課題】 時間が経っても再現性よく、薄膜電極を精度良く作成することができるインクジェット塗布用電極インクを提供する。
【解決手段】 電極活物質および導電剤粒径が1μm以下であることを特徴とするインクジェット塗布用電極インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極インクおよび電池に係り、特に燃料電池やハイブリッド自動車等のモータ駆動電源として好適な超高出力型リチウムイオン二次電池の薄膜電極作成に適した電極インクおよび電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護運動の高まりを背景として電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、燃料電池車(FCV;ハイブリッド燃料電池車を含む)の導入を促進すべく、これらのモータ駆動電源やハイブリッド用補助電源等の開発が行われている。こうした用途では、繰り返し充放電可能なリチウムイオン二次電池が使用されている。EV、HEV、FCVのモータ駆動のような高出力及び高エネルギー密度が要求される用途では、単一の大型電池は事実上作れず、複数個の電池を直列に接続して構成した組電池を使用することが一般的である。このような組電池を構成する一個の電池として、薄型ラミネートタイプのリチウムイオン電池を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような組電池を構成する一個のリチウムイオン電池の基本構成は、正極と負極をセパレータを介して配置し、これに非水電解液(液体電解質)を満たしたものとなっている。
【0004】
さらに上記液体電解質に比して液絡現象が生じ難く安全性が向上した固体電解質を用いて、正極、負極及びを重ね合わせる方法で作製された固体電解質電池が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。固体電解質電池は電池外部への液漏れが生じにくいので、安全性の高い電池を形成することができる。なお、固体電解質層には固体電解質で形成されたものやセパレータに固体電解質を保持して形成されたものがある。
【特許文献1】特開2003−151526号公報
【特許文献2】特開2002−305028号公報(段落「0033」「0034」)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2に記載のような従来電池の正極では、Al集電箔に、正極活物質と導電剤とバインダに溶剤を加えた正極用スラリー(粘度5000cP程度)を、コーターを用いて塗布・形成している。負極では、Cu集電箔に、負極活物質とバインダに溶剤を加えた負極用スラリー(粘度5000cP程度)を、コーターを用いて塗布・形成している。
【0006】
しかしながら、車両に搭載する駆動用電源として有効利用するためには、より一層の高出力化と共に小型軽量化を図る必要があり、そのためには組電池に用いる電池の個数を増やすだけではなく、個々の電池を超高出力化する必要がある。
【0007】
電池を超高出力化するためには、電極を極力薄くすることが必要である。超高出力型リチウムイオン二次電池の薄膜電極を作成すべく、電極活物質の粒径を数μm以下(例えば、2〜5μm程度)にまで小さくしても、コーターを用いる従来の電極塗工では、数μm以下の膜厚の薄膜電極を精度良く作成することはできない。そのため、コーターを用いる従来の電極塗工では、精度よく得られる50〜100μm程度の膜厚のものが用いられているのが現状である。かかる電極を用いて超高出力型リチウムイオン二次電池を形成して高い電流レートで充放電した場合、電極表面での反応が早く進むため、充電時、あるいは放電時に、電極近傍のイオン濃度が急激に低下する。電極膜厚が厚いと、反応物質であるリチウムイオンの移動距離が長くなり、電解質層側からのイオンの拡散が追いつかなくなり、電極の内部抵抗、ひいては電池抵抗が大きくなり、必要なエネルギーがとり出しにくくなるなど、充放電性能が低下するという問題があった。
【0008】
本出願人は、こうした問題を解決すべく鋭意検討した結果、インクジェット技術を用いて電極塗布を行うことで、数μm以下の膜厚の薄膜電極であっても精度良く作成することができ、上記問題が解決できることを見出した。詳しくは、コーターを用いる従来の電極塗工に用いていた正極用スラリーや負極スラリーでは、時間が経つとスラリー中の電極活物質が沈澱してしまう。そこで、均一な厚さ及び密度の電極が形成されるように、コーターで塗布する前に再度分散させていた。一度かき混ぜるとある程度の時間(24時間程度)は、分散状態が保てたためである。そこで、こうした正極用スラリーや負極スラリーをインクジェットで塗布するのに適した粘度(1000cP以下、好ましくは100cP以下)になるまで更に溶剤を加えて粘度を低くし、これをインクジェット塗布に用いることで良好な結果が得られていた。
【0009】
しかしながら、電極インクを一度かき混ぜてインクジェット塗布装置にセットしても、最初は良好に塗布されるが、1時間程度ですぐに電極活物質が沈澱してしまい、均一なインク組成の液滴を吐出させるのは困難であった。そのため、塗布の厚さ、密度にばらつきが生じ、精度の良い薄膜負極が得られなくなる場合があることがわかった。すなわち、インクジェットで塗布するための電極インクは作り込み難く、時間が経つと再現性が得られ難くなるという問題があることがわかった。
【0010】
そこで、本発明が目的は、時間が経っても再現性よく、薄膜電極を精度良く作成することができるインクジェット塗布用電極インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電極活物質および導電剤粒径が1μm以下であることを特徴とするインクジェット塗布用電極インクにより達成できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインクジェット塗布用電極インクでは、電極活物質および導電剤粒径が1μm以下とすることにより、安定したインクジェット塗布が可能となり、厚さ、密度を精密に制御した超高出力型リチウムイオン二次電池の薄膜電極を提供することができる。その結果、得られた薄膜電極を用いた電池の抵抗は、コーターを用いる従来の電極塗工で得られた電極を用いた電池の抵抗より小さくすることができる。そのため超高出力型リチウムイオン二次電池として高い電流レートで充放電した場合でも、必要なエネルギーをとり出すことができるなど、電池の充放電性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のインクジェット塗布用電極インク(以下、単に電極インクともいう)は、電極活物質および導電剤粒径が1μm以下であることを特徴とするものである。これにより、インクジェット塗布用電極インク中において、電極活物質及び導電剤粒子の分散が十分であり、安定に存在することができる。そのため、長期間放置しておいても、電極活物質及び導電剤粒子が沈殿しない。その結果、該電極インクでは、時間的な制約を受けることなく、安定したインクジェット塗布が可能となり、厚さ、密度を精密に制御した超高出力型リチウムイオン二次電池の薄膜電極を提供することができる。更に、該電極インクでは、バインダを加えなくても、良好な分散状態を長期間保つこともでき、安定したインクジェット塗布が可能となり、厚さ、密度を精密に制御した超高出力型リチウムイオン二次電池の薄膜電極を提供することができる(実施例7参照)。
【0014】
上記電極活物質の粒径は、1μm以下であれば本発明の作用効果を奏することができるため特に制限されないが、好ましくは0.05〜1μm、より好ましくは0.05〜0.5μm、特に好ましくは0.05〜0.1μmの範囲である。電極活物質の粒径が1μmを超える場合には、電極活物質粒子の分散状態が保たれず沈澱してしまいため、安定したインクジェット塗布が困難となる。また電極のより一層の薄膜化を達成するのも困難となる。また、電極活物質の粒径の下限値については特に制限されるものではないが、0.05μm未満の場合には、製造が困難で好ましい放電特性を得ることができないおそれがある。
【0015】
また、導電剤の粒径は、1μm以下であれば本発明の作用効果を奏することができるため特に制限されないが、好ましくは0.005〜0.1μm、より好ましくは0.05〜0.1μmの範囲である。導電剤の粒径が1μmを超える場合には導電剤粒子の分散状態が保たれず沈澱してしまいため、安定したインクジェット塗布が困難となる。また電極のより一層の薄膜化を達成するのも困難となる。一方、導電剤の平均粒径の下限値は、電極のより一層の薄膜化の観点からは特に制限されるものではない。
【0016】
なお、上記電極活物質および導電剤の粒径は、平均粒径をいうものとする。
【0017】
上記電極活物質および導電剤の粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いて観察することにより測定されうる。
【0018】
上記電極活物質および導電剤の粒子の形状としては、いずれも球状の形態のみに制限されず、板状、針状、柱状、角状などの形態であってもよい。これらの粒子の形状は、所望の電池特性(例えば、充放電特性やサイクル耐久性など)を考慮して適宜選択されうる。粒子の形状が球状以外の場合には粒子の形状が一様ではないため、かような場合には粒子の絶対最大長を粒子の平均粒子径とする。ここで「絶対最大長」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離をいう。絶対最大長を測定する際には、電子顕微鏡写真の一定の領域中に存在する各粒子の絶対最大長の平均値を用いることが好ましい。あるいは、本発明に用いる活物質粒子および導電剤粒子をそれぞれ篩分けにより選別する場合には、篩分けに用いる篩の篩い目(メッシュスルーサイズまたはメッシュパスサイズ)を絶対最大長として採用してもよい。なお、電極活物質粒子は、1次粒子が凝集してなる2次粒子であってもよい。
【0019】
電極活物質及び導電剤粒子としては、自ら調製したものを用いてもよいし、所望の粒径の商品が市販されている場合には、商品を購入して用いてもよい。
【0020】
また、本発明の電極インクでは、「電極活物質粒径/導電剤粒径」の比が、「10/1」以上であることが好ましい。「電極活物質粒径/導電剤粒径」の比を「10/1」以上とすることにより、電極インク中の導電剤の割合を特に規定することなく、電池特性を同等以上にすることができる。例えば、「電極活物質粒径/導電剤粒径」の比が「1/1」では、電極インク中の導電剤の割合を電極活物質量の7割(質量比)まで増やしても、電極活物質粒子表面に吸着する導電剤の粒子間接触によって形成される導電ネットワークがつながりにくくなる(部分的に切断される箇所ができる)。その結果、十分な電池特性を発現させることができない。一方、「電極活物質粒径/導電剤粒径」の比が「10/1」以上では、電極インク中の導電剤の割合が電極活物質量の数%(質量比)程度と極少量であっても、電極活物質粒子表面に吸着する導電剤の粒子間接触によって形成される導電ネットワークがつながるようになる。その結果、十分な電池特性を発現させることができる(図1C、図2C、図3C参照)。
【0021】
また、本発明の電極インクの粘度は、インクジェットで塗布するのに適した粘度であればよく特に制限されるものではないが、100cP以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜100cPである。電極インクの粘度が100cPを超えるとインクジェットノズルを通過できない恐れがある。一方、電極インクの粘度の下限値は特に制限されるものではないが、0.1cP未満であると流量を制御することが困難となる恐れがある。なお、本発明でいう電極インクの粘度は、特に断らない場合には、25℃での粘度をいうものとする。
【0022】
本発明の電極インクの上記要件については、電極活物質および導電剤を含む、正極材料インクおよび負極材料インクの双方に好適に適用することができるものである。
【0023】
一方、電極インクのうち負極材料インクでは、導電剤を含まない場合もある。こうした導電剤を含まない場合の負極材料インクにおいては、負極活物質粒径が1μm以下、好ましくは0.05〜1μm、より好ましくは0.05〜0.1μmの範囲であればよい。更に電極インクの粘度が100cP以下、より好ましくは0.1〜100cPであるのが望ましい。なお、これらの作用効果については、上記した電極インクで説明したと同様の作用効果が得られるため、ここでの説明は省略する。
【0024】
また、本発明の電極インクは、上記したように正極材料インクおよび負極材料インクとに分けられる。
【0025】
このうち、正極材料インクは、電極活物質、電子伝導性を高めるための導電剤及び粘度調整用の溶媒を含むものであればよく、この他にも、バインダ、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、固体電解質(高分子原料や電解液など)、重合開始剤および添加剤などが含まれ得る。
【0026】
また、負極材料インクは、負極活物質、導電剤及び粘度調整用の溶媒を含むものであればよく、この他にも、電子伝導性を高めるための導電剤、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、バインダ、固体電解質(材料)、重合開始剤および添加剤などが含まれ得る。なお、負極材料インクでは、上記導電剤は必須成分ではなく、負極活物質が電子伝導性を持たない場合等に用いればよい。
【0027】
上記正極活物質としては、特に制限されるものではなく、既存のリチウムイオン二次電池に使用可能なものを適宜利用することができる。好ましくは、容量、出力特性に優れた電池を構成できることから、遷移金属とリチウムとの複合酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)である。具体的には、LiCoOなどのLi・Co系複合酸化物、LiNiOなどのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMn4、LiMnOなどのLi・Mn系複合酸化物、LiCr、LiCrOなどのLi・Cr系複合酸化物、LiFeO、LiFeOなどのLi・Fe系複合酸化物、LiなどのLi・V系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したもの(例えば、LiNiCo1−x(0<x<1)等)などが挙げられるが、本発明はこれらの材料に限定されるものではない。これらリチウム−遷移金属複合酸化物は、反応性、サイクル耐久性に優れ、低コストな材料である。そのためこれらの材料を電極に用いることにより、出力特性に優れた電池を形成することができる点で有利である。バイポーラ電池では、上記正極活物質の中でLi−Mn系複合酸化物が望ましい。これは、Li−Mn系複合酸化物を用いることにより、プロファイルを傾けることが可能となり、異常時信頼性が向上するためである。その結果、各単電池層及びバイポーラ電池全体の電圧の検知が容易になる利点を有する。この他、LiFePOなどの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V、MnO、TiS、MoS、MoOなどの遷移金属酸化物や硫化物;PbO、AgO、NiOOHなどを用いることもできる。
【0028】
上記負極活物質としては、特に制限されるものではなく、既存のリチウムイオン二次電池に使用可能なものを適宜利用することができる。具体的には、カーボン、金属化合物、金属酸化物、Li金属化合物、リチウム−金属複合酸化物、ホウ素添加炭素などを用いることができる。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用して用いても良い。好ましくはカーボンもしくはリチウム−遷移金属複合酸化物である。これらを用いることで、容量、出力特性(例えば、電池電圧が高くできるなど)に優れた電池を構成できるからである。なお、リチウム−遷移金属複合酸化物としては、例えば、LiTi12などLiTiで表されるリチウム−チタン複合酸化物などを用いることができる。また、カーボンとしては、例えば、各種の天然黒鉛や人造黒鉛、例えば繊維状黒鉛、鱗片状黒鉛、球状黒鉛などの黒鉛類、グラファイトカーボン、ハードカーボン、ソフトカーボン、アセチレンブラック、カーボンブラックなどを用いることができる。また、金属酸化物としては、例えば、チタン酸化物のほか、SnO、SnO、GeO、GeO、InO、In、PbO、PbO、Pb、Pb、AgO、AgO、Ag、Sb、Sb、Sb、SiO、ZnO、CoO、NiO、FeOなどの遷移金属酸化物などを用いることができる。上記金属化合物としては、LiAl、LiZn、LiBi、LiCd、LiSd、LiSi、Li4.4Pb、Li4.4Sn、Li0.17C(LiC)等が挙げられる。Li金属化合物としては、LiFeN、Li2.6Co0.4N、Li2.6Cu0.4N等が挙げられる。上記ホウ素添加炭素としては、ホウ素添加カーボン、ホウ素添加グラファイト等が挙げられる。ただし、本発明では、これらに制限されるべきものではなく従来公知のものを適宜利用することができる。上記ホウ素添加炭素中のホウ素の含有量は0.1〜10質量%の範囲が望ましいが、これに制限されるべきものではない。バイポーラ電池の場合には、負極活物質として、結晶性炭素材、非結晶性炭素材から選ばれるものが好ましい。これらを用いることで、プロファイルを傾けることが可能となり、各単電池層及びバイポーラ電池全体の電圧の検知が容易になるからである。ここでいう結晶性炭素材とは、グラファイト系炭素材料をいい、上記グラファイトカーボンなどがこれに含まれる。非結晶性炭素材とは、ハードカーボン系炭素材料をいい、上記ハードカーボンなどがこれに含まれる。
【0029】
正極材料インク及び負極材料インクについては、上記正極活物質及び負極活物質の種類以外は、正極材料インクと負極材料インクとで変わらないため、以下にまとめて説明する。
【0030】
上記電子伝導性を高めるための導電剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、種々炭素繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0031】
また、電極インク内での導電剤の割合(質量比)は、上記したように導電剤や電極活物質の粒子サイズ等に応じて適宜決定されるものである。本発明のように電極活物質および導電剤粒径が1μm以下では、電極インク中の導電剤の割合は、粘度調整溶媒を除くインク全量の2〜10質量%、好ましくは4〜6質量%の範囲であればよいが、これらの範囲に制限されるものではない。導電剤の割合(質量比)が10質量%を超える場合には、利用率が低下し、また導電剤が電極活物質表面全体を覆うようになり、イオン伝導性の低下を招くおそれがある。導電剤の比率(質量比)が2質量%未満の場合には、十分な電子伝導性を確保するのが困難となる場合がある。
【0032】
上記イオン伝導性を高めるためのリチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);LiBETIとも記載)、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)等の有機酸陰イオン塩、またはこれらの混合物などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0033】
上記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、ポリイミドなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0034】
また、電極インクを固体電解質電池の電極作成に用いる場合には、電極インクにも電解質が含まれていることが望ましい。該電極インクを用いて作製された電極では、電極活物質粒子や導電剤粒子間の空隙等に電解質を充填することができ、電極におけるイオン伝導がスムーズになり、電池全体としての出力向上が図れるためである。一方、非水電解液(液体電解質)やゲル電解質(固体電解質の1種)を用いる場合には、電極インク中に電解質が含まれていなくてもよい。これらの場合には、セパレータに電解液を含浸させる際や高分子ゲル電解質層を形成する際に、電極内の電極活物質や導電剤の微粒子間等の空隙部にも液体電解質(電解液)やゲル電解質中の電解液が浸透するので、電極作成に用いる電極インク内に電解質を更に含有させなくともよいといえる。
【0035】
上記固体電解質には、全固体電解質と全固体高分子電解質と高分子ゲル電解質とがある。全固体高分子電解質と、高分子ゲル電解質(単にゲル電解質ともいう)との違いは、以下のとおりである。
【0036】
1)ポリエチレンオキシド(PEO)などの全固体高分子電解質に、通常のリチウムイオン電池で用いられる電解液を含んだものが高分子ゲル電解質である。
【0037】
2)ポリふっ化ビニリデン(PVDF)など、リチウムイオン伝導性をもたない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも高分子ゲル電解質にあたる。
【0038】
3)高分子ゲル電解質を構成するポリマー(ホストポリマーないしポリマーマトリックス)と電解液の比率は幅広く、ポリマー100質量%を全固体高分子電解質、電解液100質量%を液体電解質とすると、その中間体はすべて高分子ゲル電解質にあたる。
【0039】
4)ポリエチレンオキシド(PEO)などの全固体高分子電解質には、リチウム塩(電解質塩)を含むものとする。
【0040】
上記全固体電解質としては、セラミック系の無機のリチウムイオン導電体、例えば、LiN、ナシコン型(Li1+xAlTi2−x(PO))、ペロブスカイト型(La2/3−xLi3xTiO)、リシコン型(Li4−xGe1−x)などが挙げられる。全固体電解質にも、更にリチウム塩(電解質塩)を含んでいてもよい。
【0041】
上記全固体高分子電解質としては、特に限定されるものではなく、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体などのポリアルキレンオキシド系高分子が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系高分子は、BETI、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SOなどのリチウム塩をよく溶解しうる。また、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度が発現する。また、正極インク中に、架橋前の高分子原料(電解質ポリマー)及び重合開始剤を加えておき、正極インクをインクジェット塗布して作成した正極を熱や光などで架橋重合を促進させることで、架橋構造を形成し、優れた機械的強度が発現するようにするのが望ましい。
【0042】
上記高分子ゲル電解質は、ポリマーマトリックス中に電解液を保持させたものをいう。具体的には、イオン導伝性を有する高分子(いわば、固体高分子電解質)に、通常リチウムイオン二次電池で用いられる電解液を含んだもの、さらにリチウムイオン導伝性を持たない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも含まれる。
【0043】
上記高分子ゲル電解質の高分子原料(ポリマーマトリックス)としては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用することができる。好ましくは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリふっ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびそれらの共重合体が望ましく、分子内に架橋性の官能基(炭素−炭素二重結合など)を有するものがより好ましい。この架橋性の官能基を用いて高分子原料を架橋することによって、機械的強度が向上するためである。
【0044】
このうち、イオン導伝性を有する高分子としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体のようなポリアルキレンオキシド系高分子などの公知の固体高分子電解質が挙げられる。PEO、PPOのようなポリアルキレンオキシド系高分子は、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SOなどのリチウム塩をよく溶解しうる。また、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度が発現する。
【0045】
上記リチウムイオン導伝性を持たない高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのゲル化ポリマーを形成するモノマーが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。なお、PAN、PMMAなどは、どちらかと言うとイオン伝導性がほとんどない部類に入るものであるため、上記イオン伝導性を有する高分子とすることもできる。ここでは高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子として例示したものである。
【0046】
上記高分子ゲル電解質に含まれる電解液としては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用することができる。通常リチウムイオン電池で用いられるものであればよく、リチウム塩(電解質塩)と有機溶媒(可塑剤)とを含むものなどを用いることができる。具体的には、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩(電解質塩ないし支持塩)を含み、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン(GBL)等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくともから1種類または2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の有機溶媒(可塑剤)を用いたものなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
【0047】
上記高分子ゲル電解質におけるホストポリマーと電解液との比率(質量比)は、使用目的などに応じて決定すればよいが、イオン伝導度などの観点から、2:98〜90:10の範囲である。
【0048】
上記液体電解質とは、上記高分子ゲル電解質に用いた電解液と同様のものを用いることができるものであり、リチウム塩(電解質塩ないし支持塩)と有機溶媒(可塑剤)とを含むものなどを用いることができる。詳しくは、上記高分子ゲル電解質に用いられる電解液として説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0049】
上記粘度調整用の溶媒としては、特に制限されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、アセトニトリルが挙げられる。ただし、その他の溶媒が用いられても、勿論よい。
【0050】
上記重合開始剤としては、イオン伝導性ポリマーの架橋性基に作用して、架橋反応を進行させるために配合される。開始剤として作用させるための外的要因に応じて、光重合開始剤、熱重合開始剤などに分類される。重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(熱重合用)やベンジルジメチルケタール(BDK)(光重合用)等が挙げられる。重合開始剤の添加量は、上記高分子原料に含まれる架橋性官能基の数に応じて決定される。通常は高分子原料に対して0.01〜1質量%程度である。
【0051】
上記添加剤としては、例えば、電池の性能や寿命を高めるためのトリフルオロプロピレンカーボネート、補強材として各種フィラーなどが挙げられる。これらは、必要に応じて適量含まれる。
【0052】
電極インク中の、電極活物質、導電剤、バインダ、電解質材料(ポリマーマトリックス、電解液など)、リチウム塩、添加剤等の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)を考慮して決定すべきである。例えば、固体電解質電池の電極作成に用いる場合、作成される電極内の固体電解質の配合量が少なすぎると、電極内でのイオン伝導抵抗やイオン拡散抵抗が大きくなり、電池性能が低下してしまう。一方、電極内における固体電解質の配合量が多すぎると、電池のエネルギー密度が低下してしまう。従って、これらの要因を考慮して、目的に合致した電極インク中の各材料の配合量を決定すればよい。
【0053】
また、本発明の電極インクの製造方法としては、特に制限されるべきものではない。例えば、(1)上記した電極インクに用いられる各材料を所定の配合量にて加え、これらを混合して電極活物質粒子および導電剤粒子を十分に均一に分散させて所望の粘度の電極インクとしてもよい(実施例1〜3参照)。また、(2)正極活物質、粘度調整用の溶媒、更に必要に応じてバインダ等の任意成分を所定の配合量にて加えて混合し、電極活物質粒子が十分に均一に分散された電極活物質インクを予め作成する。同様に、導電剤、粘度調整用の溶媒、さらに必要に応じてバインダ等の任意成分を所定の配合量にて加えて混合し、導電剤粒子が十分に均一に分散された粘度の導電剤インクを予め作成する。次に作成した正極活物質インクおよび導電剤インクを混ぜ合わせ、更に粘度調整用の溶媒を適量加えて所望の粘度になるように調整して電極インクを作成しても良い(実施例4〜6参照)。上記(1)の電極インクの製造方法は、上記(2)の電極インクの製造方法に比して、攪拌が容易であるというメリットがある。一方、上記(2)の電極インクの製造方法は、上記(1)の電極インクの製造方法に比して、攪拌が確実であるというメリットがある。ただし、これらに制限されるものではない。
【0054】
上記混合攪拌手段は、溶媒中に1μm以下に微粒子化した電極活物質粒子や導電剤粒子を十分に均一に分散することができるものであればよく、従来公知の各種の攪拌・混合・攪拌装置を用いることができるなど、特に制限されるものではない。好ましくは、これらの混合攪拌操作を迅速且つ確実に行えるものが望ましい。こうした混合攪拌手段としては、例えば、ホモジナイザーや攪拌脱泡機などの装置を用いることができる。
【0055】
次に、本発明の電極の製造方法は、上記電極インクをインクジェット塗布によって作成することを特徴とするものである。これらは、上記電極インクを用いることで、長持間放置しても安定したインクジェット塗布が可能となり、厚さ、密度を精密に制御した超高出力型リチウムイオン二次電池に適した薄膜電極を提供することができるものである。
【0056】
ここで、インクジェット塗布、詳しくはインクジェット方式で印刷する塗布方法(インクジェット法)とは、インクジェットプリンタのノズルからインク(電極インク)を液滴として集電体(または基材フィルム)上に塗布する方法である。
【0057】
上記インクジェット法には、ピエゾ素子方式、サーマルインクジェット方式、continuance方式の3つの方式があり、そのいずれをも採用しえるものであるが、電池材料の熱安定性の観点から、ピエゾ素子方式を用いるのが望ましい。ピエゾ素子方式は、一般にドロップオンデマンド方式として知られている、電圧を印加すると変形するセラミックス(ピエゾ素子)を用いて液体を吐出する、ピエゾ型を用いる方式をいう。ピエゾ素子方式は、電極インクに含まれる電解質材料等の熱安定性に優れ、塗布する各インク量を可変することができる。さらには、比較的高粘度の液体を他のインクジェットヘッドに比べて確実・安定に、かつ精確に吐出することができ、粘度10〜100Pa・s(10〜100cP)程度の液体の吐出に有効に用いることができる点で優れている。
【0058】
上記ピエゾ型のインクジェットヘッド内部は、一般的に、インクを貯留する液室が形成され、この液室はインク導入部を介して前記液室に連なっている構造を有する。インクジェットヘッドの下方部位には、ノズルが多数配列形成されている。また、インクジェットヘッドの上方部位には、前記液室内のインクをノズルから吐出するための圧電素子と、この圧電素子を動作させるためのドライバーとが配備されている。かようなインクジェットヘッドの構造は一実施形態に過ぎず、特に限定されない。
【0059】
インク導入部がプラスチックであった場合、インクに含まれ得る溶媒が、前記プラスチック部分を溶解させる恐れがある。従って、インク導入部は耐溶媒性に優れた金属製のものが好ましい。
【0060】
上記電極インクをインクジェット塗布する方法としては、特に限定されない。例えば、電極インク用のインクジェットヘッドを一つ設け、その複数の微小径ノズルの液体吐出動作を、それぞれ独立に制御することにより、集電体(または基材)表面に液滴を塗布する方法が挙げられる。あるいは、電極インク用にインクジェットヘッドを複数設けると共に、これらインクジェットヘッドの液体吐出動作を独立に制御して、集電体(または基材)表面に一度に複数の液滴を同時に塗布する方法等が挙げられる。かような塗布方法により塗布の速度を上げることができ、短時間で電極を作成することができる。また、かような塗布方法において、液体吐出動作を独立に制御するには、特に限定されない。例えば、上述のインクジェットヘッドを用いたインクジェットプリンタを、市販のコンピュータなどに連結させ、適当なソフトにより所望するパターンを作成して、かようなソフトからの電気信号により制御を行えばよい。適当なソフトとしては、Power Point(マイクロソフト社製)、AutoCAD(AutoDesk社製)などの市販のソフトを用いることができる。ただし、市販ソフトに制限されるものではなく、新たに開発したソフトを用いてもよい。
【0061】
また、25℃での電極インクの粘度については、上記した通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0062】
また、集電体(または基材)上に塗布した電極インクを乾燥させる手段としては、通常雰囲気、好ましくは真空雰囲気下、20〜200℃、好ましくは80〜150℃で、1分〜8時間、好ましくは3分〜1時間行えばよい。しかし、これに限定されず、塗布した電極インクに含まれる溶媒量などに応じて適宜決定すればよい。
【0063】
集電体(または基材)上に塗布した電極インクに高分子材料(固体電解質材料)及び重合開始剤が含まれる場合には、電極インクを塗布後に高分子材料(固体電解質材料)を重合硬化(化学架橋)する。かかる重合硬化条件は、重合開始剤の種類に応じて適宜決定すればよい。例えば、光重合開始剤を用いた場合には、アルゴン、窒素などの不活性雰囲気下、好ましくは真空雰囲気下、0〜150℃、好ましくは20〜40℃で、1分〜8時間、好ましくは3分〜1時間、紫外線を照射して行う。また、熱重合開始剤では、上記乾燥条件下で、同時に熱重合硬化させればよい。
【0064】
さらに、上記の方法により製造された電極にプレス操作を行ってもよい。このプレス操作を行うことで、得られる電極の表面をより平坦化させることが可能となる。前記プレス操作に用いられる装置および条件は特に制限されず、従来公知の装置および方法が適宜用いられうる。
【0065】
なお、工業的な生産過程においては、生産性を向上させるために、最終的な電池のサイズよりも大きい電極を作製し、これを所定の大きさにカットする工程を採用してもよい。
【0066】
上記インクジェット方式による塗布方法は、上記したものに限定されない。例えば、電極インク中には電解質材料を加えず、該電極インクを塗布、乾燥させた後に、必要があれば、電解液を含浸したり、高分子ゲル電解質スラリーを塗布してもよい。該含浸ないし塗布方法は特に限定されず、アプリケーターやコーターなどを用いれば微量の供給も可能である。また、集電体上ではなく、適当な離型可能な基材上に電極インクを塗布して電極を作成してもよい。この場合には、電極インクを塗布して電極を形成した後に、該電極上に別途作成した電解質層を積層してもよいほか、本発明では、電解質インクをインクジェット塗布して電解質層を作成してもよい。これにより、集電体上に、一方の電極(正極ないし負極)、電解質層、もう一方の電極(負極または正極)を全てインクジェット塗布により積層させて、単電池層を作成することができる。更に上記集電体についても、適当な基材上に、集電体インクをインクジェット塗布して集電体を作成することで、集電体を含む電池要素(電池積層体)を全てインクジェット塗布により形成することもできる。
【0067】
本発明の電極は、上記電極インクをインクジェット塗布によって作成されたものであることを特徴とするものである。かかる電極は、安定したインクジェット塗布により形成されているため、厚さ、密度を精密に制御した超高出力型リチウムイオン二次電池に適した電極を提供することができる。
【0068】
本発明の電極には、バイポーラ型電池に用いるバイポーラ電極、バイポーラ型でない電池(一般電池という)に用いる電極(一般電極という)のいずれであってもよい。ここで、一般電極は、正極集電体の両側の表面に、電極インクのうち正極材料インクを用いて作成された正極と、負極集電体の両側の表面に、電極インクのうち負極材料インクを用いて作成された負極の2種類がある。ただし、電池の両端に位置する一般電極では、正極ないし負極集電体の片側の表面にのみ、正極材料インクないし負極材料インクを用いて作成された正極ないし負極を用いてもよい。一方、バイポーラ電極は、集電体の一方の面に、正極材料インクを用いて作成された正極と、該集電体の他方の面に、負極材料インクを用いて作成された負極との双方を備えたものである。ただし、電池の両端に位置するバイポーラ電極では、集電体の片側の表面にのみ、正極材料インクないし負極材料インクを用いて作成された電極を用いてもよい。なお、上記電極は、基材となる集電体上に形成される電極層のみを電極としてもよいし、基材となる集電体を含めたものであってもよく、いずれの実施形態も本発明でいう電極に含まれるものとする。
【0069】
以下の電極の説明では、基材となる集電体を含めて形で、集電体と電極層に分けてそれぞれ説明する。
【0070】
[集電体]
本発明で用いることのできる集電体としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを利用することができる。例えば、アルミニウム箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、SUSとアルミニウムのクラッド材あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく使える。また、金属表面に、アルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウム箔を集電体として用いることが好ましい。
【0071】
正極と負極集電体を分けて用いる場合には、正極集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、SUS、チタンなどの導電性金属を用いることができるが、アルミニウムが特に好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えば、銅、ニッケル、銀、SUSなどの導電性金属を用いることができるが、SUS及びニッケル等が特に好ましい。また、正極集電体と負極集電体とは、互いに直接あるいは第三の材料からなる導電性を有する中間層を介して電気的に接続していれば良い。
【0072】
さらに、集電体についても、スプレーコート、更にはスクリーン印刷方式やインクジェット方式などの薄膜製造技術により、所望の形状に製膜して形成したものを利用することもできる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などの金属粉末を主成分として、これにバインダ(樹脂)、溶剤を含む集電体金属ペーストを加熱して成形してなるものである。これら金属粉末は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよいし、さらに、製法上の特徴を生かして金属粉末の種類の異なるものを多層に積層したものであってもよい。上記バインダとしては、特に制限されるべきものではなく、たとえば、エポキシ樹脂など、従来公知の樹脂バインダ材料を用いることができるほか、導電性高分子材料を用いても良い。
【0073】
集電体の厚さは、通常通りでよく特に限定されないが、1〜100μm程度である。好ましくは電極の薄膜化の観点から、集電体の厚さは100μm以下、好ましくは1〜50μmであるのが望ましい。
【0074】
[正極層]
正極層は、正極活物質および電子伝導性を高めるための導電剤を含む。この他にも、バインダ、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、固体電解質(材料)および添加剤などが含まれ得る。これらの正極層を構成する各成分については、電極インクの項で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0075】
[負極層]
負極層は、負極活物質を含む。この他にも、電子伝導性を高めるための導電剤、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、バインダ、固体電解質(材料)および添加剤などが含まれ得る。これらの負極層を構成する各成分についても、電極インクの項で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0076】
また、各電極(正極または負極)内での導電剤の割合(質量比)は、導電剤や電極活物質の粒子サイズ等に応じて適宜決定されるものである。例えば、電極活物質の平均粒径が1μm以下では、導電剤の割合(質量比)は、各電極(正極または負極)全量に対して2〜10質量%、好ましくは4〜6質量%の範囲である。導電剤の割合(質量比)が10質量%を超える場合には、利用率が低下し、また導電剤が活物質表面全体を覆うようになり、イオン伝導性の低下を招くおそれがある。導電剤の比率(質量比)が2質量%未満の場合には、十分な電子伝導性を確保するのが困難となる場合がある。
【0077】
電極における、電極活物質、導電剤、バインダ、電解質材料(ポリマーマトリックス、電解液など)、リチウム塩、添加剤等の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)を考慮して決定すべきである。例えば、固体電解質電池に用いる場合、電極内における固体電解質の配合量が少なすぎると、電極内でのイオン伝導抵抗やイオン拡散抵抗が大きくなり、電池性能が低下してしまう。一方、電極内における固体電解質の配合量が多すぎると、電池のエネルギー密度が低下してしまう。従って、これらの要因を考慮して、目的に合致した固体電解質量を決定する。
【0078】
電極の厚さは、特に限定するものではなく、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)を考慮して決定すべきである。本発明では、電極をインクジェット方式で塗布形成することから薄膜電極に適しているが、厚い膜厚の電極であっても問題なく形成することができる。したがって、従来のコーター塗布方法による場合と同様の電極の厚さ10〜500μm程度であってもよい。更に、従来のコーター塗布では形成困難な数μm以下の薄膜電極とすることもできる。電極の薄膜化の観点からが、電極の厚さは、15μm以下、好ましくは1〜15μm、より好ましくは1〜10μm、特に5〜10μmの範囲であることが望ましい。これにより、電極の薄膜化、ひいては電池の薄型・小型軽量化を図ることができるためである。電極の厚さが15μmを超える場合には、電極の薄膜化が困難となるおそれがある。なお、電極の厚さの下限値は特に制限されるものではない。ここでいう電極の厚さとは、集電体の片側に形成される電極層の厚さを言うものとする。
【0079】
以下、本発明の電極インク、およびこれをインクジェット塗布によって作成した電極につき図面を用いて説明する。
【0080】
図1は、後述する実施例1に用いた電極インク及びこれを用いて得られた電極の様子を模式的に表すものである。詳しくは、図1Aは、本発明の電極インクとして、電極活物質及び導電剤粒径が1μm以下で尚且つ「電極活物質粒径/導電剤粒径」の比が「10/1」以上の要件を満足する電極活物質及び導電剤を用いて作成した直後のインク内の様子を模式的に表した拡大イメージ図である。図1Bは、図1Aの電極インクを作成後、長期間(1日程度:観察時は1日経過後であるが、一週間後にも目立った沈殿は確認されなかった。以下同様。)放置した後のインク内の様子を模式的に表した拡大イメージ図である。図1Cは、集電体上に、図1Bの電極インクをインクジェット塗布によって作成した電極の様子を模式的に表した概略断面図である。
【0081】
本実施形態の電極インクは、粒径1μm以下で尚且つ「電極活物質粒径/導電剤粒径」比が「10/1」以上の電極活物質及び導電剤と、バインダとを量り取り、インクジェット塗布に適した粘度になるように溶媒を適量加えて分散を行って作成したものである。そのため、図1Aに示す作成直後であっても、図1Bに示す長期間(1日程度)静置した後であっても、電極インク5では、電極活物質2及び導電剤3の微粒子、更にバインダ3が溶媒4中に十分に均一に分散した状態のままで、長期間安定して維持されるものである。さらに、図1Bに示す長期間放置した後の電極インク5を、インクジェット塗布装置(図示せず)を用いて、基材である集電体上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより電極を作成したところ、安定したインクジェット塗布が可能であり、図1Cに示すように、集電体6上に、厚さ、密度を精密に制御した薄膜電極7を得ることができる。また、得られた電極7では、活物質1粒子の周りに、十分な導電剤3粒子が覆っているため、電池抵抗を小さくすることができる。尚、バインダも電極中の各粒子間を結着するように含有されているが、図1Cでは、バインダは省略している(以後の図2C、図3C、図4Cでも同様である)。
【0082】
図2は、後述する実施例2に用いた電極インク及びこれを用いて得られた電極の様子を模式的に表すものである。詳しくは、図2Aは、本発明の電極インクとして、粒径が好適な100nmの電極活物質及び導電剤を用いて作成した直後のインク内の様子を模式的に表した拡大イメージ図である。図2Bは、図2Aの電極インクを作成後、長期間(1日程度:観察時は1日経過後であるが、一週間後にも目立った沈殿は確認されなかった。以下同様。)放置した後のインク内の様子を模式的に表した拡大イメージ図である。図2Cは、集電体上に、図2Bの電極インクをインクジェット塗布によって作成した電極の様子を模式的に表した概略断面図である。
【0083】
本実施形態の電極インクは、粒径1μm以下の電極活物質及び導電剤と、バインダとを量り取り、インクジェット塗布に適した粘度になるように溶媒を適量加えて分散を行って作成したものである。そのため、図2Aに示す作成直後であっても、図2Bに示す長期間(1日程度)静置した後であっても、電極インク5では、電極活物質2および導電剤3の微粒子、更にバインダ3が溶媒4中に十分に均一に分散した状態のままで、長期間安定して維持されるものである。さらに、図2Bに示す長期間放置した後の電極インク5を、インクジェット塗布装置(図示せず)を用いて、基材である集電体上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより電極を作成したところ、安定したインクジェット塗布が可能であり、図2Cに示すように、集電体6上に、厚さ、密度を精密に制御した薄膜電極7を得ることができる。また、得られた電極7では、「電極活物質粒径/導電剤粒径」の比が最適な「10/1」以上の要件を満足しない(実施例2は「2/1」の例)ので(実施例2は「2/1」の例)、図1と同様の配合量では、活物質1粒子の周りに十分な導電剤2粒子を覆わせることができない。即ち、導電ネットワークの形成が不十分となるおそれがある。そこで、本実施形態では、図1の実施形態に比して、導電剤2の配合比率を相対的に増やすことにより、図2Cに示すように、活物質1粒子の周りに、十分な導電剤2粒子を覆わせることができ、電池抵抗を小さくすることができる。
【0084】
図3は、後述する実施例3に用いた電極インク及びこれを用いて得られた電極の様子を模式的に表すものである。詳しくは、図3Aは、本発明の電極インクとして、粒径が好適な100nmで、「電極活物質粒径/導電剤粒径」比が「10/1」以上の要件を満足する電極活物質及び導電剤を用いて作成した直後のインク内の様子を模式的に表した拡大イメージ図である。図3Bは、図3Aの電極インクを作成後、長期間(1日程度:観察時は1日経過後であるが、一週間後にも目立った沈殿は確認されなかった。以下同様。)放置した後のインク内の様子を模式的に表した拡大イメージ図である。図3Cは、集電体上に、図3Bの電極インクをインクジェット塗布によって作成した電極の様子を模式的に表した概略断面図である。
【0085】
本実施形態の電極インクは、粒径100nmで、「電極活物質粒径/導電剤粒径」比が「10/1」以上の電極活物質及び導電剤と、バインダとを量り取り、インクジェット塗布に適した粘度になるように溶媒を適量加えて分散を行って作成したものである。そのため、図3Aに示す作成直後であっても、図3Bに示す長期間(1日程度)静置した後であっても、電極インク5では、電極活物質2及び導電剤3の微粒子、更にバインダ3が溶媒4中に十分に均一に分散した状態のままで、長期間安定して維持されるものである。さらに、図3Bに示す長期間放置した後の電極インク5を、インクジェット塗布装置(図示せず)を用いて、基材である集電体上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより電極を作成したところ、安定したインクジェット塗布が可能であり、図3Cに示すように、集電体6上に、厚さ、密度を精密に制御した薄膜電極7を得ることができる。また、得られた電極7では、「電極活物質粒径/導電剤粒径」比を最適化することにより、図2の実施形態に比して導電剤の配合比率が相対的に少なくても、活物質1粒子の周りに十分な導電剤3粒子が覆っているため、電池抵抗を小さくすることができる。
【0086】
一方、図4は、後述する比較例1に用いた電極インク及びこれを用いて得られた電極の様子を模式的に表すものである。詳しくは、図4Aは、従来のコーター塗布に用いられる高粘度の電極スラリーをインクジェット塗布に適した粘度になるように溶媒を適量加えて電極インクとしたものである。即ち、コーター塗布に適した粒径が1μmを超える電極活物質、粒径1μm以下の導電剤を用いて作成した直後のインク内の様子を模式的に表した拡大イメージ図である。図4Bは、図4Aの電極インクを作成後、長期間(1日程度)放置した後のインク内の様子を模式的に表した拡大イメージ図である。図4Cは、集電体上に、図4Bの電極インクを従来のコーター塗布によって作成した電極の様子を模式的に表した概略断面図である。図4Dは、集電体上に、図4Bの電極インクをインクジェット塗布によって作成した電極の様子を模式的に表した概略断面図である。
【0087】
背景技術で説明したように、従来のコーター塗布に用いられる高粘度の電極スラリーに更に溶媒を適量加えてなる電極インクは、粒径が1μmを超える電極活物質と、導電剤と、バインダとを量り取り、インクジェット塗布に適した粘度になるように溶媒を適量加えて分散を行って作成したものである。そのため、図4Aに示す作成直後の電極インク5では、電極活物質2粒子、導電剤3微粒子、更にバインダ3が溶媒4中に十分に均一に分散した状態となっている。しかしながら、図4Bに示すように、比較的短期間(1時間程度)静置しただけでも、電極インク5は、電極活物質2が沈澱してしまい、不均一になってしまう。さらに、図4Bに示す電極インク5を再分散させて、従来のコーター塗布装置を用いて、基材である集電体上にコーター塗布を行って電極を作成したが、数μm以下の薄膜電極は作成できなかった。そのため、集電体6上に、厚さ、密度が比較的精度良くするためには、図4Cに示すように、従来と同様に20μm程度の厚い電極7とする必要がある。それでも、本発明のインクジェット塗布のように厚さ、密度を精密に制御することはできない。そのため、得られた厚い電極7では、本発明のように電池抵抗を小さくすることはできない(後述する表1の結果及び従来技術における電池の抵抗が比較例1と同等である点を参照のこと)。さらに、図4Bに示す電極インク5を再分散させて、インクジェット塗布装置(図示せず)を用いて、基材である集電体上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより電極を作成した。しかしながら、安定したインクジェット塗布が困難であり、図1Dに示すように、集電体6上に、塗布の厚さ、密度にばらつきが生じ、精度の良い薄膜負極7は得られなかった。そのため、得られた電極7では、活物質1粒子の周りに、十分な導電剤3粒子が覆っているため、電池抵抗を小さくすることができる(後述する表1の結果参照)。
【0088】
次に、本発明の電池の種類としては、特に制限されるものではない。
【0089】
例えば、電池の構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、捲回型(円筒型)電池など特に制限されるべきものではなく、従来公知のいずれの構造にも適用し得るものである。好ましくは、積層型(扁平型)電池である。これは、捲回型の電池では、電解質層(セパレータ代替材)にも捲回方向に引張り応力がかかるため当該方向の強度が必要となるが、積層型では捲回型と比較して当該方向の強度が必要ないためである。そのため、絶縁微粒子でセパレータの機能を果たすことが容易である。
【0090】
同様に電池の電解質層の種類で区別した場合にも、特に制限されるべきものではなく、液体電解質(電解液)型電池、固体電解質(詳しくは、高分子ゲル電解質型電池および全固体高分子電解質)型電池のいずれにも適用しえるものである。好ましくは、固体電解質型電池である。これは、固体電解質型電池では、液漏れが生じないので、液絡の問題が無く信頼性が高く、かつ簡易な構成で出力特性に優れた電池を形成することができる。
【0091】
同様に、電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、バイポーラ型ではない(内部並列接続タイプ)電池(一般電池)およびバイポーラ型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得るものである。バイポーラ型ではない一般電池を積層する場合は正極、負極それぞれからリード線をとり、そのリード線を介して隣の電池と接続される。そのため、リード線の長さに相当する電子伝導のパスが長くなり、電池の出力が低くなる。それに対して、バイポーラ型電池は、集電体を介して、電極の積層方法に電流が流れるため、バイポーラ型でない電池に比して、電流の流れる距離が短くて電流が流れる部分の断面積も大きいので、電子伝導のパスが格段に短くなり、ロスが少なくできる。その分、高出力になるためである。よって、バイポーラ型でない電池に比べて電池の電圧が高く、容量、出力特性に優れた電池を構成できる。
【0092】
電池の電極材料ないし電極間を移動する金属イオンで見た場合には、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カリウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池など特に制限されるべきものではなく、従来公知のいずれの電極材料等にも適用し得るものである。好ましくは、リチウムイオン電池である。これは、リチウムイオン電池では、1電極単位(セルないし単電池層ともいう)の電圧が大きく、高エネルギー密度、高出力密度が達成でき、車両の駆動電源用や補助電源用として優れているためである。
【0093】
本発明の電池は、一次電池および二次電池のいずれにも適用し得るものであるが、燃料電池やハイブリッド自動車等のモータ駆動電源として、繰り返し充放電して用いることができる点で便利であることから、二次電池に適用するのが望ましい。
【0094】
したがって、以下の説明では、積層式でバイポーラ型のリチウムイオン二次電池を例にとり説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるべきものではない。
【0095】
以下、本発明に係るリチウムイオン電池の実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0096】
図5〜8に本発明のリチウムイオン電池の好適な実施形態の1つである積層式でバイポーラ型のリチウムイオン二次電池(単にバイポーラ電池と略記する)の基本構成の概略を説明する。図5は、バイポーラ電池を構成するバイポーラ電極の構造を模式的に表わした概略断面図を示す。図6は、バイポーラ電池を構成する電解質層を挟んでリチウムイオンを挿入脱離できる正極および負極を対向させた電池素子(以下、単に単電池層ともいう)の構造を模式的に表わした概略断面図を示す。図7は、バイポーラ電池の全体構造を模式的に表わした概略断面図を示す。図8は、バイポーラ電池内に複数積層された単電池層が直列に接続されてなることを(記号化して)概念的に表わした概略図を示す。
【0097】
図5に示したように、本発明のバイポーラ電池では、図5〜8に示したように、1枚の集電体11の片面に正極12を設け、もう一方の面に負極13を設けたバイポーラ電極15を、電解質層14を挟み隣合うバイポーラ電極15の正極12と負極13が対向するようになっている。すなわち、バイポーラ電池21では、集電体11の片方の面上に正極12を有し、他方の面上に負極13を有するバイポーラ電極15を、電解質層14を介して複数枚積層した構造の電極積層体(電池要素部)17からなるものである。また、電極積層体17の最上層と最下層の電極(電流取り出し用の電極)15a、15bは、集電体11に必要な片面のみの電極(正極12または負極13)を形成した構造としてもよい(図7参照のこと)。該電流取り出し用の電極15a、5bも、バイポーラ電極の1種とみることもできる。また、バイポーラ電池21では、最上層と最下層の電極の集電体11ないし強電タブにそれぞれ正極および負極リード18、19が接合されている。
【0098】
バイポーラ電極の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。シート状電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できるのであれば、バイポーラ電極の積層回数を少なくしてもよい。
【0099】
また、バイポーラ電池21では、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電極積層体17部分を電池外装材20に減圧封入し、電極リード18、19を電池外装材20の外部に取り出した構造とするのがよい(図7、8参照のこと)。軽量化の観点からは、該外装材20に高分子−金属複合ラミネートフィルムを用い、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、電極積層体7を収納し減圧封入(密封)し、電極リード18、19を外装材20の外部に取り出した構成とするのが好ましい。このバイポーラ電池21の基本構成は、図8に示すように、電解質層を挟んで正極および負極を対向させた電池素子(単電池層(単セル))16が直列に接続された構成ともいえるものである。
【0100】
以下、本発明の電池の構成要素ごとに簡単に説明するが、本発明がこれらに何ら制限されるべきものでないことは言うまでもない。即ち、本発明では、図1〜4で説明した好適な態様の1つである積層式でバイポーラ型のリチウムイオン二次電池と、バイポーラ型でないリチウムイオン二次電池の構成要素とは、電池内の電気的な接続形態(電極構造)以外は同じである。そのため、以下にまとめて説明する。ただし、本発明がこれらに制限されるべきものではないことはいうまでもない。例えば、リチウムイオン二次電池以外の電池でも、活物質の種類が異なる以外は同じであるため、以下の説明は省略する。
【0101】
[電極(集電体、正極層及び負極層)]
電極(集電体、正極層及び負極層)に関しては、本発明に係る電極の項で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0102】
[電解質層]
また、本発明の電解質層としては、特に制限されるべきものではない。その使用目的に応じて、(a)高分子ゲル電解質、(b)高分子固体電解質または(c)これらポリマー電解質を含浸させたセパレータ(不織布セパレータを含む)、(d)液体電解質を含浸させたセパレータ(不織布セパレータを含む)のいずれにも適用し得るものである。
【0103】
(a)高分子ゲル電解質
上記ゲルポリマー電池にて説明した高分子ゲル電解質を用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【0104】
本発明におけるゲル電解質中の電解液の割合としては、特に制限されるべきものではないが、イオン伝導度などの観点から、数質量%〜98質量%程度とするのが望ましい。
【0105】
また、本発明では、ゲル電解質に含まれる電解液の量は、ゲル電解質内部で略均一になるようにしてもよいし、中心部から外周部に向けて傾斜的に少なくしていってもよい。前者は、より広範囲で反応性を得ることができるため好ましく、後者は、外周部の全固体高分子電解質部の電解液に対するシール性を高めることができる点で好ましい。中心部から外周部に向けて傾斜的に少なくしていく場合には、上記ホストポリマーには、リチウムイオン伝導性のあるポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)およびそれらの共重合体を用いることが望ましい。
【0106】
(b)高分子固体電解質
上記真性ポリマー電池にて説明した固体高分子電解質を用いることができるため、ここでの説明は省略する。なお、固体高分子電解質中には、イオン伝導性を確保するために上記リチウム塩が含まれる。またPEO、PPOのようなポリアルキレンオキシド系高分子は、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SOなどのリチウム塩をよく溶解しうる。また、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度が発現する。
【0107】
(c)上記ポリマー電解質を含浸(ないし担持等)させたセパレータ(不織布セパレータを含む)
セパレータに含浸等させることのできるポリマー電解質としては、既に説明した(a)および(b)と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【0108】
上記セパレータとしては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを用いることができるものであり、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーからなる多孔性シート(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレータなど)などを用いることができる。有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質を持つ上記ポリオレフィン系微多孔質セパレータは、電解質(電解液)との反応性を低く抑えることができるという優れた効果を有するものである。
【0109】
該ポリマーの材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリイミドなどが挙げられる。
【0110】
上記セパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできないが、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。セパレータの厚さが、かかる範囲にあることでセパレータに微粒が食い込むことによって発生する短絡の防止と、高出力のために電極間を狭くすることが望ましいという理由から、厚さ方向の機械的強度と高出力性の確保という効果がある。また電池を複数接続する場合には、電極面積が増大することから、電池の信頼性を高めるために上記範囲のなかでも厚形のセパレータを用いることが望ましい。
【0111】
上記セパレータの微細孔の径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。セパレータの微細孔の平均径が、上記範囲にあることで熱によってセパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きるという理由から、異常時信頼性が上がり、その結果として耐熱性が向上するという効果がある。すなわち、過充電で電池温度が上昇していったとき(異常時)に、セパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きることで、電池(電極)の正極(+)から負極(−)側にLiイオンが通れなくなり、それ以上は充電できなくなる。そのため過充電できなくなり、過充電が解消する。その結果、電池の耐熱性(安全性)が向上するほか、ガスがでて電池外装材の熱融着部(シール部)が開くのを防止できる。ここでセパレータの微細孔の平均径は、セパレータを走査電子顕微鏡等で観察し、その写真をイメージアナライザ等で統計的に処理した平均径として算出される。
【0112】
上記セパレータの空孔率は20〜50%であることが望ましい。セパレータの空孔率が、上記範囲にあることで電解質(電解液)の抵抗による出力低下の防止と、微粒がセパレータの空孔(微細孔)を貫くことによる短絡の防止という理由から出力と信頼性の両方を確保するという効果がある。ここでセパレータの空孔率とは、原材料レジンの密度と最終製品のセパレータの密度から体積比として求められる値である。
【0113】
上記セパレータへのポリマー電解質の含浸量は、セパレータの保持能力範囲まで含浸させればよいが、当該保持能力範囲を超えて含浸させてもよい。これは、電解質にシール部を設け、電解質層からの電解液の染み出しを防止できるため、該電解質層に保持できる範囲であれば含浸可能である。
【0114】
電解質を保持させる為に用いる不織布セパレータとしては、特に制限されるべきものではなく、繊維を絡めてシート化することにより製造することができる。また、加熱によって繊維同士を融着することにより得られるスパンボンド等も用いることができる。すなわち、繊維を適当な方法でウェブ(薄綿)状またはマット状に配列させ、適当な接着剤あるいは繊維自身の融着力により接合して作ったシート状のものであればよい。上記接着剤としては、製造及び使用時の温度下で十分な耐熱性を有し、ゲル電解質に対しても反応性や溶解性等がなく安定したものであれば、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用できる。また、使用繊維としては、特に制限されるものではなく、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを用いることができ、使用目的(電解質層に要求される機械強度など)に応じて、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性を得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。すなわち、あまり不織布のかさ密度が大きすぎると、電解質層中の非電解質材料が占める割合が大きくなりすぎ、電解質層におけるイオン伝導度などを損なうおそれがあるためである。
【0115】
不織布セパレータの空孔率は50〜90%であることが好ましい。空孔率が50%未満では、電解質の保持性が悪化し、90%超では強度が不足する。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは1〜200μmであり、特に好ましくは1〜50μmである。厚さが1μm未満では電解質の保持性が悪化し、200μmを超える場合には抵抗が増大することになる。
【0116】
(d)液体電解質を含浸させたセパレータ(不織布セパレータを含む)
セパレータに含浸等させることのできる液体電解質(電解液)としては、既に説明した(a)の電解液、詳しくは上記した電極に含まれ得る高分子ゲル電解質に含有される電解液を用いることができるため、ここでの説明は省略する。また、セパレータについては、上記(c)で用いることのできるセパレータと同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【0117】
なお、上記(1)〜(4)の電解質層は、1つの電池の中で併用してもよい。
【0118】
また、高分子電解質は、電解質層、正極活物質層、負極活物質層に含まれ得るが、同一の高分子電解質を使用してもよく、層によって異なる高分子電解質を用いてもよい。
【0119】
ところで、現在好ましく使用される高分子電解質用のホストポリマーは、PEO、PPOのようなポリエーテル系高分子である。このため、高温条件下における正極側での耐酸化性が弱い。従って、溶液系のリチウムイオン電池で一般に使用される、酸化還元電位の高い正極剤を使用する場合には、負極の容量が、高分子電解質層を介して対向する正極の容量より少ないことが好ましい。負極の容量が対向する正極の容量より少ないと、充電末期に正極電位が上がり過ぎることを防止できる。なお、正極および負極の容量は、正極および負極を製造する際の理論容量として、製造条件から求めることができる。完成品の容量を測定装置で直接測定してもよい。
【0120】
ただし、負極の容量を対向する正極の容量と比べて少ないと、負極電位が下がりすぎて電池の耐久性が損なわれる恐れがあるので充放電電圧に注意する必要がある。例えば、一のセル(単電池層)の平均充電電圧を使用する正極活物質の酸化還元電位に対して適切な値に設定して、耐久性が低下しないように注意する。
【0121】
電池を構成する電解質層の厚さは、特に限定するものではなく、通常、1〜200μmであり、特に好ましくは1〜50μmである。厚さが1μm未満では電解質の保持性が悪化し、200μmを超える場合には抵抗が増大することになる。しかしながら、コンパクトな積層式でバイポーラ型のリチウムイオン二次電池を得るためには、電解質としての機能が確保できる範囲で極力薄くすることが好ましい。特に従来にない数μm以下の薄膜電極を利用する場合には、これに対応する薄い電解質層を採用するのが望ましい。
【0122】
[絶縁シール層]
絶縁シール層は、バイポーラ電池の場合に、集電体同士が接触したり、電解液が漏れ出したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こるのを防止する目的で、各電極の周囲に形成されてなるものである。
【0123】
該絶縁シール層としては、絶縁性、電解液の漏出や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよく、例えば、エポキシ樹脂、ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが使用できるが、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
【0124】
[強電タブ]
強電タブは、バイポーラ電池の場合に、必要に応じて最外層の電極を構成する集電体に取り付けられる。用いる場合には、端子としての機能を有するほか、薄型化の観点からは極力薄い方がよい。しかしながら、積層されてなる正極、負極、電解質層および集電体はいずれも機械的強度が弱いため、これらを両側から挟示し支持するだけの強度を持たせることが望ましい。さらに、強電タブでの内部抵抗を抑える観点からも、強電タブの厚さは、通常0.1〜2mm程度が望ましいといえる。
【0125】
強電タブの材質は、通常のリチウムイオン二次電池で用いられる材質を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。
【0126】
電流取り出し用の正極側の強電タブと負極用の強電タブとの材質は、同一の材質を用いてもよいし、異なる材質のものを用いてもよい。さらに、これら正極側および負極側の強電タブは、材質の異なるものを多層に積層したものであってもよい。
【0127】
正極および負極側の強電タブは、集電体と同じサイズであればよいが、特に制限されるものではない。
【0128】
[正極および負極リード]
図8に示すように、正極リード8および負極リード9に関しては、通常リチウムイオン二次電池で用いられる公知のリードを用いることができる。該正極および負極リードの材質も、通常のリチウムイオン二次電池で用いられる材質を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、鉄、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。電極リード全体の抵抗増加を抑える観点からは、Cuを用いることが望ましい。さらに電池外装材の高分子材料との密着性を向上させるために、電極リードに表面被覆層を形成してもよい。表面被覆層にはNiが最も好適に使用できるが、Ag、Auといった金属材料も同様に使用可能である
[電池外装材(電池ケース)]
バイポーラ電池は、外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、図8に示すように、電池積層体全体を電池外装材(電池ケース)10に収容するとよい。電池外装材としては、軽量化の観点から、金属を高分子絶縁体で被覆したアルミラミネートパックなどの高分子−金属を複合したラミネートフィルム(単に、高分子−金属複合ラミネートフィルムとも称する)のような従来公知の電池外装材が好ましい。
【0129】
上記高分子−金属複合ラミネートフィルムとしては、特に制限されるべきものではなく、高分子フィルム間に金属フィルムを配置し全体を積層一体化してなる従来公知のものを使用することができる。具体例としては、例えば、高分子フィルムからなる外装保護層(ラミネート最外層)、金属フィルム層、高分子フィルムからなる熱融着層(ラミネート最内層)のように配置し全体を積層一体化してなるものが挙げられる。詳しくは、外装材に用いられる高分子−金属複合ラミネートフィルムは、上記金属フィルムの両面に、高分子フィルムとして、まず耐熱絶縁樹脂フィルムを形成し、少なくとも片面側の耐熱絶縁樹脂フィルム上に熱融着絶縁性フィルムが積層されたものである。かかるラミネートフィルムは、適当な方法にて熱融着させることにより、熱融着絶縁性フィルム部分が融着して接合し熱融着部が形成される。上記金属フィルムとしては、アルミニウムフィルム等が例示できる。また、上記絶縁性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテトラフタレートフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ナイロンフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ポリエチレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)、ポリプロピレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)等が例示できる。ただし、本発明の外装材は、これらに制限されるべきものではない。
【0130】
こうした高分子−金属複合ラミネートフィルムでは、超音波溶着等により熱融着絶縁性フィルムを利用して1対ないし1枚(袋状)のラミネートフィルムの熱融着による接合を、容易かつ確実に行うことができる。よって、本発明では、こうした高分子−金属複合ラミネートフィルムを用いて、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、電池積層体を収納し密封した構成とするのが好ましい。なお、電池の長期信頼性を最大限高めるためには、高分子−金属複合ラミネートシートの構成要素である金属フィルム同士を直接接合してもよい。金属フィルム間にある熱融着性樹脂を除去もしくは破壊して金属フィルム同士を接合するには超音波溶着を用いることができる。
【0131】
電池外装材に高分子−金属複合ラミネートフィルムを用いる場合、上記正極および負極リードは、上記熱融着部に挟まれて該電池外装材の外部に露出される構造とすればよい。また、熱伝導性に優れた高分子−金属複合ラミネートフィルムを用いることが、自動車の熱源から効率よく熱を伝え、電池内部を電池動作温度まですばやく加熱することができる点で好ましい。
【0132】
次に、本発明では、上記のリチウムイオン電池を複数個接続して構成した組電池とすることができる。すなわち、本発明のバイポーラ電池を少なくとも2個以上を用いて直列および/または並列に接続して構成した組電池とすることで、使用目的ごとの電池容量や出力に対する要求に、比較的安価に対応することが可能になる。
【0133】
具体的には、例えば、上記のバイポーラ電池をN個並列に接続し、N個並列にしたバイポーラ電池をさらにM個直列にして金属製ないし樹脂製の組電池ケースに収納し、組電池とする(N、Mは2以上の整数)。この際、バイポーラ電池の直列/並列接続数は、使用目的に応じて決定する。例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車など大容量電源として、高エネルギー密度、高出力密度が求められる車両の駆動用電源に適用し得るように組み合わせればよい。また、組電池用の正極端子および負極端子と、各バイポーラ電池の電極リードとは、リード線等を用いて電気的に接続すればよい。また、バイポーラ電池同士を直列/並列に接続する際には、スペーサやバスバーのような適当な接続部材を用いて電気的に接続すればよい。これにより、種々の車両用ごとの容量・電圧の要望を基本のバイポーラ電池の組み合わせで対応が可能になる。その結果、必要エネルギー、出力の設計選択性を容易にすることが可能になる。そのため種々の車両用ごとに異なるバイポーラ電池を設計、生産する必要がなく、基本となるバイポーラ電池の大量生産が可能となり、量産化によるコスト削減が可能となる。
【0134】
また、本発明の組電池は、上記に説明したものに制限されるべきものではなく、従来公知のものを適宜採用することができる。例えば、本発明の組電池では、本発明のバイポーラ電池と、該バイポーラ電池と正負極電極材料を同一とし該バイポーラ電池の構成単位数を直列することにより電圧を同一にした電池と、を並列に接続したものであってもよい。
【0135】
上記バイポーラ電池と正負極電極材料を同一とし該バイポーラ電池の構成単位数を直列することにより電圧を同一にした電池としては、好ましくはバイポーラ型でないリチウムイオン二次電池(通常リチウムイオン二次電池)が挙げられる。すなわち、組電池を形成する電池は、本発明のバイポーラ電池とバイポーラ型ではないリチウムイオン二次電池等とを混在させても良い。これにより、出力重視のバイポーラ電池と、エネルギー重視の一般リチウムイオン二次電池の組み合わせでお互いの弱点を補う組電池ができ、組電池の重量・サイズを小さくすることができる。それぞれのバイポーラ電池とバイポーラ型でないリチウムイオン二次電池をどの程度の割合で混在させるかは、組電池として要求される安全性能、出力性能に応じて決める。
【0136】
本発明の組電池には、使用用途に応じて、各種計測機器や制御機器類を設けてもよく、例えば、電池電圧を監視するために電圧計測用コネクタなどを設けておいてもよいなど、特に制限されるものではない。
【0137】
また本発明では、上記組電池を少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続した複合組電池とすることで、使用目的ごとの電池容量や出力に対する要求に、新たに組電池を作製することなく、比較的安価に対応することが可能になる。すなわち、こうした複合組電池は、組電池を少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続したものであり、基準の組電池を製造し、それを組み合わせて複合組電池とすることで、組電池の仕様をチューニングできる。これにより、仕様の異なる沢山の組電池種を製造しなくてよいため、複合組電池コストを減少することができる。このように、組電池を複数直並列接続されてなる複合組電池は、一部の電池、組電池が故障しても、その故障部分を交換するだけで修理が可能である。なお、上記組電池には、本発明のバイポーラ電池だけで構成したものの他、本発明のバイポーラ電池と他のバイポーラ型でない電池とで構成したものを含んでいてもよい。
【0138】
本発明では、上記のバイポーラ電池および/または組電池(複合組電池を含む)を駆動用電源として搭載した車両とすることができる。本発明のバイポーラ電池および/または組電池は、上述のように各種特性を有し、特に、コンパクトな電池である。このため、エネルギー密度および出力密度に関して、とりわけ厳しい要求がなされる車両、例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車等の駆動用電源として好適である。例えば、電気自動車ないしハイブリッド電気自動車の車体中央部の座席下に組電池を駆動用電源として搭載するのが、車内空間およびトランクルームを広く取れるため便利である。本発明では、これらに何ら制限されるべきものではなく、後部トランクルームの下部等に搭載してもよいし、あるいは電気自動車や燃料電池自動車のようにエンジンを搭載しないのであれば、車体前方のエンジンを搭載していた部分などに搭載することもできる。なお、本発明では、組電池15だけではなく、使用用途によっては、バイポーラ電池を搭載するようにしてもよいし、これら組電池15とバイポーラ電池を組み合わせて搭載するようにしてもよい。また、本発明のバイポーラ電池および/または組電池を駆動用電源として搭載することのできる車両としては、上記の電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車が好ましいが、これらに制限されるものではない。
【0139】
本発明の電池の製造方法としては、電極インクをインクジェット塗布によって作成した電極を用いること以外は、特に制限されるべきものではなく、従来公知の各種の方法を適宜利用することができる。以下の説明では、積層式でバイポーラ型のリチウムイオン二次電池の製造方法を例にとり説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるべきものではない。
【0140】
(1)正極材料インクの塗布
まず、適当な集電体を準備する。集電体には、集電体インクをインクジェット方式で印刷する塗布方法により形成したものを用いてもよい。
【0141】
上記した正極材料インクを、集電体の一方の面にインクジェット塗布する。正極材料インクについては、上記した通りである。
【0142】
(2)正極の形成
正極材料インクが塗布された集電体を乾燥して、含まれる溶媒を除去し、正極を形成する。それと同時に、正極材料インクによっては、分子内に架橋性の官能基(炭素−炭素二重結合など)を有する高分子電解質と重合開始剤を用いて架橋反応を進行させて、高分子固体電解質の機械的強度を高めてもよい。乾燥は真空乾燥機などを用いることができる。乾燥の条件は塗布された正極材料インクに応じて決定され、一義的に規定できないが、通常は40〜150℃で5分〜20時間である。さらに、上記の方法により製造された電極にプレス操作を行ってもよい。
【0143】
(3)負極材料インクの塗布
集電体の正極が形成された面と反対側の面に、上記した負極材料インクを、インクジェット塗布する。負極材料インクについては、上記した通りである。
【0144】
(4)負極の形成
負極材料インクが塗布された集電体を乾燥して、含まれる溶媒を除去し、負極を形成する。それと同時に、負極材料インクによっては、分子内に架橋性の官能基(炭素−炭素二重結合など)を有する高分子電解質と重合開始剤を用いて架橋反応を進行させて、高分子固体電解質の機械的強度を高めてもよい。乾燥は真空乾燥機などを用いることができる。乾燥の条件は塗布された負極材料インクに応じて決定され、一義的に規定できないが、通常は40〜150℃で5分〜20時間である。さらに、上記の方法により製造されたバイポーラ電極にプレス操作を行ってもよい。
【0145】
これによりバイポーラ電極を形成することができる。
【0146】
(5)電解質層の形成
(i)高分子固体電解質層を用いる場合には、例えば、高分子固体電解質の原料高分子、リチウム塩等をNMPのような溶媒に溶解させて調製した溶液を硬化させることによって製造される。
【0147】
(ii)高分子ゲル電解質層を用いる場合には、例えば、高分子ゲル電解質の原料として、ホストポリマーと電解液、リチウム塩、重合開始剤等からなるプレゲル溶液を不活性雰囲気下で加熱乾燥と同時に重合(架橋反応を促進)させることによって製造される。
【0148】
(iii)セパレータに高分子ゲル電解質を保持させてなる高分子ゲル電解質層を用いる場合には、例えば、高分子ゲル電解質の原料として、ホストポリマーと電解液、リチウム塩、重合開始剤等からなるプレゲル溶液を準備する。次に、セパレータに準備したプレゲル溶液を含浸させて、不活性雰囲気下で加熱乾燥と同時に重合(架橋反応を促進)させることによって製造される。
【0149】
(iv)セパレータに固体高分子電解質を保持させてなる高分子固体電解質層を用いる場合には、例えば、高分子固体電解質の原料として、ホストポリマーと電解液、リチウム塩、重合開始剤等を粘度調整溶媒に溶解してなる溶液を準備する。次に、セパレータに、準備した上記溶液を含浸させて、不活性雰囲気下で加熱乾燥と同時に重合(架橋反応を促進)させることによって製造される。
【0150】
(v)液体電解質(電解液)を用いる場合には、セパレータのみを準備する。液体電解質(電解液)は、バイポーラ電池では、外装材に電池を封入した後では、電極間の液絡を防止できない。そのため、バイポーラ電極と電解質層との積層後、絶縁シール層形成前に行う。
【0151】
電解質層を形成するには、上記(i)〜(v)により行うことができる。詳しくは、例えば、上記バイポーラ電極の正極層および/または負極層上に、調製された上記溶液またはプレゲル溶液を塗布し、所定の厚さの電解質層またはその一部(電解質層厚さの半分程度の電解質膜)を形成する。その後、電解質層/膜が積層された電極を不活性雰囲気下で硬化または加熱乾燥と同時に重合(架橋反応を促進)させることによって、電解質の機械的強度を高め、電解質層/膜を製膜形成する(完成させる)。
【0152】
あるいは、別途、電極間に積層される電解質層またはその一部(電解質層厚さの半分程度の電解質膜)を準備する。電解質層/膜ないしセパレータに高分子ゲル電解質を保持してなる高分子ゲル電解質層/膜は、上記溶液またはプレゲル溶液をPET製など適当なフィルム上に塗布し、不活性雰囲気下で乾燥硬化または加熱乾燥と同時に架橋反応を促進させることによって製造される。あるいは、上記溶液またはプレゲル溶液を、PP製など適当な不織布セパレータに含浸し、不活性雰囲気下で硬化または加熱乾燥と同時に架橋反応を促進させることによって製造される。
【0153】
乾燥硬化または加熱乾燥は真空乾燥機(真空オーブン)などを用いることができる。加熱乾燥の条件は上記溶液またはプレゲル溶液に応じて決定され、一義的に規定できないが、通常は30〜110℃で0.5〜12時間である。
【0154】
電解質層/膜の厚さは、スペーサなどを用いて制御できる。光重合開始剤を用いる場合には、光透過性のギャップに流し込み、乾燥及び光重合ができるような紫外線照射装置を用いて紫外線を照射して、電解質層内のポリマーを光重合させ架橋反応を進行させて製膜するとよい。ただし、この方法に限定されないことは勿論である。重合開始剤の種類に応じて、放射線重合、電子線重合、熱重合などを使いわける。
【0155】
また、上記で用いるフィルムは、製造過程で80℃程度に加熱されることもありえるため、当該温度程度での十分な耐熱性を有し、さらに溶液またはプレゲル溶液との反応性がなく、製造過程で剥離し除去する必要上、離型性に優れたものを用いるのが望ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)フィルムなどを使用することができるが、これらに制限されるべきものではない。
【0156】
電解質層の幅は、バイポーラ電極の集電体サイズよりも若干小さくすることが多い。
【0157】
上記溶液またはプレゲル溶液の組成成分やその配合量などについては、使用目的に応じて適宜決定されるべきものである。
【0158】
なお、正極と負極の形成および以下に説明する電解質層の形成の順序は、特に制限されるものではなく、これらを積層するまでに準備すればよい。
【0159】
(6)バイポーラ電極と電解質層との積層
(i)電解質層(膜)が一面または両面に形成されたバイポーラ電極の場合には、高真空下で十分加熱乾燥してから、電解質層(膜)が形成された電極を適当なサイズに複数個切りだし、切り出された電極を直接貼り合わせて、バイポーラ電池本体(電極積層体)を作製する。
【0160】
(ii)別々にバイポーラ電極と電解質層(膜)を作製した場合には、高真空下で十分加熱乾燥してから、バイポーラ電極と電解質層(膜)をそれぞれを適当なサイズに複数個切りだす。切りだされたバイポーラ電極と電解質層(膜)とを所定数張り合わせて、電極積層体を作製する。
【0161】
上記電極積層体の積層数は、バイポーラ電池に求める電池特性を考慮して決定される。また、正極側の最外層には、集電体上に正極層のみを形成した電極(電流取り出し用の正極)を配置する。負極側の最外層には、集電体上に負極層のみを形成した電極(電流取り出し用の負極)を配置する。バイポーラ電極と電解質層(膜)とを積層、あるいは電解質層(膜)が形成された電極を積層させてバイポーラ電池を得る段階は、電池内部に水分等が混入するのを防止する観点から、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。例えば、アルゴン雰囲気下や窒素雰囲気下でバイポーラ電池を作製するとよい。
【0162】
(7)絶縁シール層の形成
本発明では、電極積層体の電極の周囲を、所定の幅でエポキシ樹脂(前駆体溶液)等に浸漬または樹脂を注入ないし含浸する。いずれの場合にも、事前に電圧検知タブや電極タブや電極リード、あるいはこれらを接続する必要のある集電体部分等を離型性マスキング材等を用いてマスキング処理しておく。その後エポキシ樹脂を硬化させて、絶縁シール像を形成し、その後、マスキング材を剥がせばよい。
【0163】
(8)パッキング(電池の完成)
最後に電池積層体の両最外層の電流取り出し用の電極の集電体上にそれぞれ、正極強電タブ、負極強電タブを設置し、該正極強電タブ、負極強電タブに、さらに正極リード、負極リードを接合(電気的に接続)して取り出す。正極リードおよび負極リードの接合方法としては特に制限されるべきものではないが、接合温度の低い超音波溶接等が好適に利用し得るものであるが、これに限定されるべきものではなく、従来公知の接合方法を適宜利用することができる。
【0164】
電池積層体全体を、外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電池外装材ないし電池ケースで封止し、バイポーラ電池を完成させる。電池外装材(電池ケース)の材質は、内面がポリプロピレンフィルム等の絶縁体で被覆された金属(アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅など)が好適である。
【実施例】
【0165】
以下の実施例および比較例を用いて本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例に限定されるものではない。
【0166】
実施例1
(1)正極材料インクの作成
正極活物質として粒径1μmのスピネルマンガン85g、導電剤として粒径50nmのカーボンブラック10g、バインダとしてPVdF5gを量り取り、NMPを適量加えて分散を行い、粘度が100cPになる様に調整して、正極材料インクを作成した。
【0167】
(2)正極材料インクの分散度測定
上記で作成した正極材料インクの分散度を測定した。なお測定は、インク作成から、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後に行った。いずれにおいても沈殿は確認されず、本インクが十分に均一に分散していることを確認した。
【0168】
(3)正極材料インクの塗布
上記で作成した正極材料インクをインクジェット塗布装置を用いて、正極集電体のAl箔(厚さ20μm;以下の実施例、比較例についても同様とする。)上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより正極の作成を試みた。なお塗布は上記分散度測定と同様、インク作成から、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後に行った。いずれにおいても安定したインクジェット塗布が可能であり、厚さ、密度を精密に制御した厚さ5μmの薄膜正極が得られた。
【0169】
ここで本実施例における正極膜厚さは乾燥またはプレス後の膜厚が1μm〜10μmとなるのが好ましく、本実施例においては乾燥後の膜厚が5μmとなるようにした。同様の理由から、実施例2以降においても乾燥後の膜厚が5μmとなるようにした。上記膜厚の厚さは、以下に示す電極面の平均厚さ測定により得られた電極面の平均厚さをいうものとする。本実施例の負極膜厚及び実施例2以降の正極及び負極膜厚についても同様とする。また、厚さ、密度を精密に制御した薄膜正極が得られているか否かは、以下に示す電極面の平均厚さ測定により得られた各測定値のばらつきから判断した。本実施例では、乾燥後の膜厚の各測定値は5μmで、厚さ、密度にばらつきは認められなかった(図1C参照のこと)。
【0170】
電極面の平均厚さ測定に当たっては、まず、測定される領域を3×3の9つの領域に分割する。そして、各領域内の任意の3点の厚さを測定し、その平均をその領域の厚さとする。全ての領域について厚さを測定し、それらの平均を算出する。この作業を10回以上行ない、その平均を電極面の平均厚さとする。
【0171】
(4)負極材料インクの作成
負極活物質として粒径1μmのハードカーボン90g、バインダとしてPVdF10gを量り取り、NMPを適量加えて分散を行い、粘度が100cPになる様に調整して、負極材料インクを作成した。
【0172】
(5)負極材料インクの分散度測定
上記で作成した負極材料インクの分散度を測定した。なお測定は、インク作成から、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後に行った。いずれにおいても沈殿は確認されず、本インクが十分に均一に分散していることを確認した。
【0173】
(6)負極材料インクの塗布
上記で作成した負極材料インクをインクジェット塗布装置を用いて、負極集電体のCu箔(厚さ10μm;以下の実施例、比較例についても同様とする。)上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより負極の作成を試みた。なお塗布は上記分散度測定と同様、インク作成から、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後に行った。いずれにおいても安定したインクジェット塗布が可能であり、厚さ、密度を精密に制御した厚さ5μmの薄膜負極が得られた。本実施例における負極膜厚さは乾燥またはプレス後の膜厚が1μm〜10μmとなるのが好ましく、本実施例においては乾燥後の膜厚が5μmとなるようにした。同様の理由から、実施例2以降においても乾燥後の膜厚が5μmとなるようにした。また、乾燥後の膜厚の各測定値は5μmで、厚さ、密度にばらつきは認められなかった(図1C参照のこと)。
【0174】
(7)電池作成
上記で作成した正極・負極、セパレータ、電解液、アルミラミネート材を用いて封止、成型し電池とした。
【0175】
(8)電池抵抗測定
上記で作成した電池の電池抵抗を測定した。
【0176】
実施例2
(1)正極材料インクの作成
正極活物質として粒径100nmのスピネルマンガン85g、導電剤として粒径50nmのカーボンブラック10g、バインダとしてPVdF5gを量り取り、NMPを適量加えて分散を行い、粘度が100cPになる様に調整して、正極材料インクを作成した。
【0177】
(2)正極材料インクの分散度測定
上記で作成した正極材料インクの分散度を測定した。なお測定は、インク作成から、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後に行った。いずれにおいても沈殿は確認されず、本インクが十分に均一に分散していることを確認した。
【0178】
(3)正極材料インクの塗布
上記で作成した正極材料インクをインクジェット塗布装置を用いて、Al箔上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより正極の作成を試みた。なお塗布は上記分散度測定と同様、インク作成から、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後に行った。いずれにおいても安定したインクジェット塗布が可能であり、厚さ、密度を精密に制御した厚さ5μmの薄膜正極が得られた。本実施例でも、乾燥後の膜厚の各測定値は5μmで、厚さ、密度にばらつきは認められなかった(図2C参照のこと)。
【0179】
(4)負極材料インクの作成
負極活物質として粒径1μmのハードカーボン90g、バインダとしてPVdF10gを量り取り、NMPを適量加えて分散を行い、粘度が100cPになる様に調整して、負極材料インクを作成した。
【0180】
(5)負極材料インクの分散度測定
上記で作成した負極材料インクの分散度を測定した。なお測定は、インク作成から、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後に行った。いずれにおいても沈殿は確認されず、本インクが十分に均一に分散していることを確認した。
【0181】
(6)負極材料インクの塗布
上記で作成した負極材料インクをインクジェット塗布装置を用いて、Cu箔上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより負極の作成を試みた。なお塗布は上記分散度測定と同様、インク作成から、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後に行った。いずれにおいても安定したインクジェット塗布が可能であり、厚さ、密度を精密に制御した厚さ5μmの薄膜負極が得られた。本実施例でも、乾燥後の膜厚の各測定値は5μmで、厚さ、密度にばらつきは認められなかった(図2C参照のこと)。
【0182】
(7)電池作成
上記で作成した正極・負極、セパレータ、電解液、アルミラミネート材を用いて封止、成型し電池とした。
【0183】
(8)電池抵抗測定
上記で作成した電池の電池抵抗を測定した。
【0184】
実施例3
(1)正極材料インクの作成
正極活物質として粒径100nmのスピネルマンガン85g、導電剤として粒径10nmのカーボンブラック10g、バインダとしてPVdF5gを量り取り、NMPを適量加えて分散を行い、粘度が100cPになる様に調整して、正極材料インクを作成した。
【0185】
(2)正極材料インクの分散度測定
上記で作成した正極材料インクの分散度を測定した。なお測定は、インク作成から、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後に行った。いずれにおいても沈殿は確認されず、本インクが十分に均一に分散していることを確認した。
【0186】
(3)正極材料インクの塗布
上記で作成した正極材料インクをインクジェット塗布装置を用いて、Al箔上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより正極の作成を試みた。なお塗布は上記分散度測定と同様、インク作成から、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後に行った。いずれにおいても安定したインクジェット塗布が可能であり、厚さ、密度を精密に制御した厚さ5μmの薄膜正極が得られた。本実施例でも、乾燥後の膜厚の各測定値は5μmで、厚さ、密度にばらつきは認められなかった(図3C参照のこと)。
【0187】
(4)負極材料インクの作成
負極活物質として粒径1μmのハードカーボン90g、バインダとしてPVdF10gを量り取り、NMPを適量加えて分散を行い、粘度が100cPになる様に調整して、負極材料インクを作成した。
【0188】
(5)負極材料インクの分散度測定
上記で作成した負極材料インクの分散度を測定した。なお測定は、インク作成から、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後に行った。いずれにおいても沈殿は確認されず、本インクが十分に均一に分散していることを確認した。
【0189】
(6)負極材料インクの塗布
上記で作成した負極材料インクをインクジェット塗布装置を用いて、Cu箔上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより負極の作成を試みた。なお塗布は上記分散度測定と同様、インク作成から、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後に行った。いずれにおいても安定したインクジェット塗布が可能であり、厚さ、密度を精密に制御した厚さ5μmの薄膜負極が得られた。本実施例でも、乾燥後の膜厚の各測定値は5μmで、厚さ、密度にばらつきは認められなかった(図3C参照のこと)。
【0190】
(7)電池作成
上記で作成した正極・負極、セパレータ、電解液、アルミラミネート材を用いて封止、成型し電池とした。
【0191】
(8)電池抵抗測定
上記で作成した電池の電池抵抗を測定した。
【0192】
比較例1(本比較例は、従来技術のコーターによる塗布ではなく、インクジェット塗布を用いた例であるため参考例というべきであるが、便宜上、比較例1とした。以下の比較例2も同様である。)
(1)正極材料インクの作成
正極活物質として粒径5μmのスピネルマンガン85g、導電剤として粒径50nmのカーボンブラック10g、バインダとしてPVdF5gを量り取り、NMPを適量加えて分散を行い、粘度が100cPになる様に調整して、正極材料インクを作成した。
【0193】
(2)正極材料インクの分散度測定
上記で作成した正極材料インクの分散度を測定した。なお測定は、インク作成から、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後に行った。1時間後のインクから既に沈殿が確認された。
【0194】
(3)正極材料インクの塗布
上記で作成した正極材料インクをインクジェット塗布装置を用いて、Al箔上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより正極の作成を試みた。なお塗布は、インク作成から1時間後のインクを再分散させて行ったが、塗布の厚さ、密度にばらつきが生じ、精度の良い薄膜正極が得られなかった。本比較例では、乾燥後の膜厚の各測定値は5μm±数μmとなり、塗布の厚さ、密度にばらつきが認められた(図4D参照のこと)。
【0195】
なお、乾燥後の膜厚を10μmないし15μmとなるようにしても結果は同じであり、また従来技術におけるコーターによる塗布方法でも、結果は同じであり、乾燥後の膜厚を50μm程度にしないと精度の良いものは得られなかった(図4C参照)。
【0196】
(4)負極材料インクの作成
負極活物質として粒径5μmのハードカーボン90g、バインダとしてPVdF10gを量り取り、NMPを適量加えて分散を行い、粘度が100cPになる様に調整して、負極材料インクを作成した。
【0197】
(5)負極材料インクの分散度測定
上記で作成した負極材料インクの分散度を測定した。なお測定は、インク作成から、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後に行った。1時間後のインクから既に沈殿が確認された。
【0198】
(6)負極材料インクの塗布
上記で作成した負極材料インクをインクジェット塗布装置を用いて、Cu箔上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより負極の作成を試みた。なお塗布は、インク作成から1時間後のインクを再分散させて行ったが、塗布の厚さ、密度にばらつきが生じ、精度の良い薄膜負極が得られなかった。本比較例では、乾燥後の膜厚の各測定値は5μm±数μmとなり、塗布の厚さ、密度にばらつきが認められた(図4D参照のこと)。
【0199】
なお、乾燥後の膜厚を10μmないし15μmとなるようにしても結果は同じであり、また従来技術におけるコーターによる塗布方法でも、結果は同じであり、乾燥後の膜厚を50μm程度にしないと精度の良いものは得られなかった(図4C参照)。
【0200】
(7)電池作成
上記で作成した正極・負極、セパレータ、電解液、アルミラミネート材を用いて封止、成型し電池とした。
【0201】
(8)電池抵抗測定
上記で作成した電池の電池抵抗を測定した。
【0202】
表1に、実施例1〜3及び比較例1の電池抵抗及び各電池の製造要件の概要を示す。
【0203】
【表1】

【0204】
表1中の電池抵抗は、比較例1における電池抵抗を100%として表した。なお、従来技術におけるコーターによる塗布方法で作製した電池の抵抗も、本比較例1の電池抵抗と同等であることを確認している。また、表1中のインク分散度は、正極材料インク及び負極材料インク双方の分散度測定結果を順に表したものである。
【0205】
実施例1では活物質粒径を小さくした効果が現れ、電池抵抗を比較例1に対し10%減少させることができた。実施例2では、さらに正極活物質粒径のみ小さくしたが、導電剤粒径とのサイズ比が適切でないために、電池抵抗は5%の減少にとどまった。実施例3では、正極活物質粒径のみならず、導電剤粒径も小さくし、それぞれの粒径比を最適化したことで、電池抵抗を15%減少させることができた。
【0206】
実施例4
(1)正極活物質インクおよび導電剤インクの作成
バインダとしてPVdF5gをNMPを用いて溶解させ、2つの容器に適量ずつ分けた。1つは、正極活物質として粒径1μmのスピネルマンガン85gを加えて分散を行い、正極活物質インクを作成した。もう1つは、導電剤として粒径50nmのカーボンブラック10gを加えて分散を行い、導電剤インクの作成を行った。それぞれのインクの分散度をインク作成から24時間後に確認したところ、いずれにおいても沈澱はなく、両インクとも、十分に均一に分散していることを確認した。
【0207】
(2)正極材料インクの作成および塗布
上記で作成した正極活物質インクおよび導電剤インクを混ぜ合わせ、NMPを適量加えて粘度が100cPになる様に調整して正極材料インクを作成した。また、本インクが十分に均一に分散していることを確認した。本インクをインクジェット塗布装置を用いて、Al箔上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより正極の作成を試みたところ、安定したインクジェット塗布が可能であり、厚さ、密度を精密に制御した厚さ5μmの薄膜正極が得られた。本実施例でも、乾燥後の膜厚の各測定値は5μmで、厚さ、密度にばらつきは認められなかった(図1C参照のこと)。
【0208】
(3)負極材料インクの作成
負極活物質として粒径1μmのハードカーボン90g、バインダとしてPVdF10gを量り取り、NMPを適量加えて分散を行い、粘度が100cPになる様に調整して、負極材料インクを作成した。本インクの分散度をインク作成から24時間後に確認したところ、沈殿はなく、十分に均一に分散していることを確認した。
【0209】
(4)負極材料インクの塗布
上記で作成した負極材料インクをインクジェット塗布装置を用いて、Cu箔上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより負極の作成を試みた。安定したインクジェット塗布が可能であり、厚さ、密度を精密に制御した厚さ5μmの薄膜負極が得られた。本実施例でも、乾燥後の膜厚の各測定値は5μmで、厚さ、密度にばらつきは認められなかった(図1C参照のこと)。
【0210】
(5)電池作成
上記で作成した正極・負極、セパレータ、電解液、アルミラミネート材を用いて封止、成型し電池とした。
【0211】
(6)電池抵抗測定
上記で作成した電池の電池抵抗を測定した。
【0212】
実施例5
(1)正極活物質インクおよび導電剤インクの作成
バインダとしてPVdF5gをNMPを用いて溶解させ、2つの容器に適量ずつ分けた。1つは、正極活物質として粒径100nmのスピネルマンガン85gを加えて分散を行い、正極活物質インクを作成した。もう1つは、導電剤として粒径50nmのカーボンブラック10gを加えて分散を行い、導電剤インクの作成を行った。それぞれのインクの分散度をインク作成から24時間後に確認したところ、いずれにおいても沈澱はなく、両インクとも、十分に均一に分散していることを確認した。
【0213】
(2)正極材料インクの作成および塗布
上記で作成した正極活物質インクおよび導電剤インクを混ぜ合わせ、NMPを適量加えて粘度が100cPになる様に調整して正極材料インクを作成した。また、本インクが十分に均一に分散していることを確認した。本インクをインクジェット塗布装置を用いて、Al箔上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより正極の作成を試みたところ、安定したインクジェット塗布が可能であり、厚さ、密度を精密に制御した厚さ5μmの薄膜正極が得られた。本実施例でも、乾燥後の膜厚の各測定値は5μmで、厚さ、密度にばらつきは認められなかった(図2C参照のこと)。
【0214】
(3)負極材料インクの作成
負極活物質として粒径1μmのハードカーボン90g、バインダとしてPVdF10gを量り取り、NMPを適量加えて分散を行い、粘度が100cPになる様に調整して、負極材料インクを作成した。本インクの分散度をインク作成から24時間後に確認したところ、沈殿はなく、十分に均一に分散していることを確認した。
【0215】
(4)負極材料インクの塗布
上記で作成した負極材料インクをインクジェット塗布装置を用いて、Cu箔上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより負極の作成を試みた。安定したインクジェット塗布が可能であり、厚さ、密度を精密に制御した厚さ5μmの薄膜負極が得られた。本実施例でも、乾燥後の膜厚の各測定値は5μmで、厚さ、密度にばらつきは認められなかった(図2C参照のこと)。
【0216】
(5)電池作成
上記で作成した正極・負極、セパレータ、電解液、アルミラミネート材を用いて封止、成型し電池とした。
【0217】
(6)電池抵抗測定
上記で作成した電池の電池抵抗を測定した。
【0218】
実施例6
(1)正極活物質インクおよび導電剤インクの作成
バインダとしてPVdF5gをNMPを用いて溶解させ、2つの容器に適量ずつ分けた。1つは、正極活物質として粒径100nmのスピネルマンガン85gを加えて分散を行い、正極活物質インクを作成した。もう1つは、導電剤として粒径10nmのカーボンブラック10gを加えて分散を行い、導電剤インクの作成を行った。それぞれのインクの分散度をインク作成から24時間後に確認したところ、いずれにおいても沈澱はなく、両インクとも、十分に均一に分散していることを確認した。
【0219】
(2)正極材料インクの作成および塗布
上記で作成した正極活物質インクおよび導電剤インクを混ぜ合わせ、NMPを適量加えて粘度が100cPになる様に調整して正極材料インクを作成した。また、本インクが十分に均一に分散していることを確認した。本インクをインクジェット塗布装置を用いて、Al箔上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより正極の作成を試みたところ、安定したインクジェット塗布が可能であり、厚さ、密度を精密に制御した5μmの薄膜正極が得られた。本実施例でも、乾燥後の膜厚の各測定値は5μmで、厚さ、密度にばらつきは認められなかった(図3C参照のこと)。
【0220】
(3)負極材料インクの作成
負極活物質として粒径1μmのハードカーボン90g、バインダとしてPVdF10gを量り取り、NMPを適量加えて分散を行い、粘度が100cPになる様に調整して、負極材料インクを作成した。本インクの分散度をインク作成から24時間後に確認したところ、沈殿はなく、十分に均一に分散していることを確認した。
【0221】
(4)負極材料インクの塗布
上記で作成した負極材料インクをインクジェット塗布装置を用いて、Cu箔上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより負極の作成を試みた。安定したインクジェット塗布が可能であり、厚さ、密度を精密に制御した5μmの薄膜負極が得られた。本実施例でも、乾燥後の膜厚の各測定値は5μmで、厚さ、密度にばらつきは認められなかった(図3C参照のこと)。
【0222】
(5)電池作成
上記で作成した正極・負極、セパレータ、電解液、アルミラミネート材を用いて封止、成型し電池とした。
【0223】
(6)電池抵抗測定
上記で作成した電池の電池抵抗を測定した。
【0224】
比較例2
(1)正極活物質インクおよび導電剤インクの作成
バインダとしてPVdF5gをNMPを用いて溶解させ、2つの容器に適量ずつ分けた。1つは、正極活物質として粒径5μmのスピネルマンガン85gを加えて分散を行い、正極活物質インクを作成した。もう1つは、導電剤として粒径50nmのカーボンブラック10gを加えて分散を行い、導電剤インクの作成を行った。それぞれのインクの分散度をインク作成から24時間後に確認したところ、導電剤インクにおいては沈澱せずに十分に均一に分散していることを確認したが、正極活物質インクは沈澱が確認された。
【0225】
(2)正極材料インクの作成および塗布
上記で作成した正極活物質インクおよび導電剤インクを混ぜ合わせ、NMPを適量加えて粘度が100cPになるように調整・再分散させて正極材料インクを作成した。本インクをインクジェット塗布装置を用いて、Al箔上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより正極の作成を試みたが、塗布の厚さ、密度にばらつきが生じ、精度の良い薄膜正極が得られなかった。本比較例では、乾燥後の膜厚の各測定値は5μm±数μmとなり、塗布の厚さ、密度にばらつきが認められた(図4D参照のこと)。
【0226】
なお、乾燥後の膜厚を10μmないし15μmとなるようにしても結果は同じであり、また従来技術におけるコーターによる塗布方法でも、結果は同じであり、乾燥後の膜厚を50μm程度にしないと精度の良いものは得られなかった(図4C参照)。
【0227】
(3)負極材料インクの作成
負極活物質として粒径5μmのハードカーボン90g、バインダとしてPVdF10gを量り取り、NMPを適量加えて分散を行い、粘度が100cPになる様に調整して、負極材料インクを作成した。本インクの分散度をインク作成から24時間後に確認したところ、沈殿が確認された。
【0228】
(4)負極材料インクの塗布
上記で作成した負極材料インクを再分散させた後、インクジェット塗布装置を用いて、Cu箔上に規定の目付まで塗布を繰り返すことにより負極の作成を試みたが、塗布の厚さ、密度にばらつきが生じ、精度の良い薄膜負極が得られなかった。本比較例では、乾燥後の膜厚の各測定値は5μm±数μmとなり、塗布の厚さ、密度にばらつきが認められた(図4D参照のこと)。
【0229】
なお、乾燥後の膜厚を10μmないし15μmとなるようにしても結果は同じであり、また従来技術におけるコーターによる塗布方法でも、結果は同じであり、乾燥後の膜厚を50μm程度にしないと精度の良いものは得られなかった(図4C参照)。
【0230】
(5)電池作成
上記で作成した正極・負極、セパレータ、電解液、アルミラミネート材を用いて封止、成型し電池とした。
【0231】
(6)電池抵抗測定
上記で作成した電池の電池抵抗を測定した。
【0232】
【表2】

【0233】
表2に、実施例4〜6及び比較例2の電池抵抗を示す。なお、比較例2における電池抵抗を100%として表した。なお、従来技術におけるコーターによる塗布方法で作製した電池の抵抗も、本比較例2の電池抵抗と同等であることを確認している。
【0234】
実施例1〜3および比較例1と同様の材料を用いているため、得られた電池抵抗は先程の表1に示す結果と同様のものとなった。
【0235】
以上の結果から、長期間均一な分散状態を保持する電極インクを用いることで、安定したインクジェット塗布が可能となり、厚さ、密度を精密に制御した薄膜電極を得ることが可能となる。また、得られた電池の抵抗も、従来技術の電池抵抗よりも小さくすることが可能となった。
【0236】
なお、実施例1〜6においてバインダとしてPVdFを含有したものを本願に用いる電極インクとしたが必ずしもバインダを含有する必要はなく、例えば電極インク塗布後に別のノズルから塗布するようにしてもよい。この場合、電極インクの粘度は例えば5cP程度となり、良好なノズル吐出性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0237】
【図1】図1は、実施例1に用いた電極インク及びこれを用いて得られた電極の様子を模式的に表すものである。
【0238】
図1Aは、本発明の電極インクとして、電極活物質及び導電剤粒径が1μm以下で尚且つ「電極活物質粒径/導電剤粒径」の比が「10/1」以上の要件を満足する電極活物質及び導電剤を用いて作成した直後のインク内の様子を表した模式図である。
【0239】
図1Bは、図1Aの電極インクを作成後、長期間(1日程度)放置した後のインク内の様子を表した模式図である。
【0240】
図1Cは、集電体上に、図1Bの電極インクをインクジェット塗布によって作成した電極の様子を模式的に表した概略断面図である。
【図2】図2は、後述する実施例2に用いた電極インク及びこれを用いて得られた電極の様子を模式的に表すものである。
【0241】
図2Aは、本発明の電極インクとして、粒径が好適な100nmの電極活物質及び導電剤を用いて作成した直後のインク内の様子を表した模式図である。
【0242】
図2Bは、図2Aの電極インクを作成後、長期間(1日程度)放置した後のインク内の様子を表した模式図である。
【0243】
図2Cは、集電体上に、図2Bの電極インクをインクジェット塗布によって作成した電極の様子を模式的に表した概略断面図である。
【図3】図3は、実施例3に用いた電極インク及びこれを用いて得られた電極の様子を模式的に表すものである。
【0244】
図3Aは、本発明の電極インクとして、粒径が好適な100nmで、「電極活物質粒径/導電剤粒径」比が「10/1」以上の要件を満足する電極活物質及び導電剤を用いて作成した直後のインク内の様子を表した模式図である。
【0245】
図3Bは、図3Aの電極インクを作成後、長期間(1日程度)放置した後のインク内の様子を表した模式図である。
【0246】
図3Cは、集電体上に、図3Bの電極インクをインクジェット塗布によって作成した電極の様子を模式的に表した概略断面図である。
【図4】図4は、後述する比較例1に用いた電極インク及びこれを用いて得られた電極の様子を模式的に表すものである。
【0247】
図4Aは、従来のコーター塗布に用いられる高粘度の電極スラリーをインクジェット塗布に適した粘度になるように溶媒を適量加えて電極インクとしたものである。即ち、コーター塗布に適した粒径が1μmを超える電極活物質、粒径1μm以下の導電剤を用いて作成した直後のインク内の様子を表した模式図である。
【0248】
図4Bは、図4Aの電極インクを作成後、長期間(1日程度)放置した後のインク内の様子を表した模式図である。
【0249】
図4Cは、集電体上に、図4Bの電極インクを従来のコーター塗布によって作成した電極の様子を模式的に表した概略断面図である。
【0250】
図4Dは、集電体上に、図4Bの電極インクをインクジェット塗布によって作成した電極の様子を模式的に表した概略断面図である。
【図5】本発明のバイポーラ電池を構成するバイポーラ電極の基本構造を模式的に表わした断面概略図である。
【図6】本発明のバイポーラ電池を構成する単電池層(単セル)の基本構造を模式的に表わした断面概略図である。
【図7】本発明のバイポーラ電池の基本構造を模式的に表わした断面概略図である。
【図8】本発明のバイポーラ電池の基本構成を模式的に表わしてなる概略図である。
【符号の説明】
【0251】
1 電極活物質(粒子)、
2 導電剤(粒子)、
3 バインダ、
4 粘度調整用の溶媒、
5 電極インク、
6、11 集電体、
7 電極、
12 正極、
13 負極、
14 電解質層、
15 バイポーラ電極、
15a 集電体の必要な片面のみに正極層を配置した電極、
15b 集電体の必要な片面のみに負極層を配置した電極、
16 単電池層(単セル)、
17 電極積層体、
18 正極リード、
19 負極リード、
20 電池外装材、
21 バイポーラリチウムイオン二次電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質および導電剤粒径が1μm以下であることを特徴とするインクジェット塗布用電極インク。
【請求項2】
「電極活物質粒径/導電剤粒径」の比が、「10/1」以上であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット塗布用電極インク。
【請求項3】
粘度が100cP以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット塗布用電極インク。
【請求項4】
負極活物質粒径が1μm以下で、粘度が100cP以下であることを特徴とするインクジェット塗布用電極インク。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のインクジェット塗布用電極インクをインクジェット塗布によって作成したことを特徴とする電極およびその製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電極を用いたことを特徴とする電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−172995(P2006−172995A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366174(P2004−366174)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】