説明

電極付板材ユニット

【課題】本発明はリード線と端子板の取り付け、端子板と接続部の取り付け、接続部の導電膜への取り付けにおいて密着性が良く、容易に外れない電極付板材ユニットを提供することを主目的とする。
【解決手段】板ガラス1の表面に導電膜10を形成し、当該導電膜10の抵抗の変化を検出するために前記導電膜10に複数の電極モジュールMを介してリード線2を接続した電極付板材ユニットに関する。前記電極モジュールMは、導電性の接着剤が片面に塗布された金属箔テープ31,32を前記導電膜10上に前記接着剤を介して接着された接続部3と、前記金属箔テープ31,32よりも厚く、かつ、前記金属箔テープ31上にろう付けされると共に前記リード線2に接続される端子板4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラス破損を検知して破損情報をセキュリティシステム等へ発報する、いわゆる防犯用板ガラスなどの電極付板材ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明な導電膜を有する板ガラスに電極モジュールを取り付け、導電膜の抵抗値の変化を検出して破損情報をセキュリティシステム等へ発報する防犯用板ガラスは周知である。
【0003】
また、透明な導電膜を有する板ガラスを単板で使用する場合だけでなく、PVBやEVAの中間膜を介挿した合せガラスや、板ガラス周囲のスペーサによって空気層を設けて周囲をシールした複層ガラスにして使用する場合も公知である。
【0004】
透明な導電膜はスパッタリングによって二次加工でフロートガラス上にITO等の導電膜で形成されたり、ガラス製造時にオンラインでチタン、クロム、錫、インジウムやこれらの酸化物で導電膜が形成される。
【0005】
前記導電膜にリード線を接続する電極モジュールの構造としては、下記の特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2000−277243号(要約書)
【発明の開示】
【0006】
従来の防犯ガラスにおいては、抵抗値の変化を確実に検知するために、電極モジュールの位置、材質、形状、処理方法が十分検討されていない。そのため、取り付け強度が小さく施工時にリード線が取れたり、経時変化で抵抗値が変動してしまう場合があった。
【0007】
また、端子板の取付けの作業が難しく、そのため、作業性が良くなかったり、不良が発生しやすかった。
【0008】
本発明はリード線と端子板の取り付け、端子板と接続部の取り付け、接続部の導電膜への取り付けにおいて密着性が良く、容易に外れない電極付板材ユニットを提供することを主目的とする。
【0009】
また、本発明の他の目的は、合せガラスや、複層ガラスの製作時の不良を防止し、施工時の作業性を向上させると共に、窓に納まった状態での強度を確保し、見栄えの良い納まりとなり得る電極付板材ユニットを提供することである。
【0010】
本発明は、透光性を有し基板となる板材の表面に導電膜を形成し、当該導電膜の抵抗の変化を検出するために前記導電膜に複数の電極モジュールを介してリード線を接続した電極付板材ユニットであって、前記電極モジュールは、導電性の接着剤(粘着材)が片面に塗布された金属箔テープを前記導電膜上に前記接着剤を介して接着した接続部と、前記金属箔テープの1枚の金属箔の部分よりも厚く、かつ、前記金属箔テープ上にろう付けされると共に前記リード線に接続される端子板とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、導電膜に金属箔テープが接着剤を介して接着されるから、導電膜の構造を損なうことなく大きな接続面積が得られる上、導電膜と接続部との接続抵抗となる接着剤の抵抗値は導電膜の抵抗値よりも一般に十分に小さいので、導電膜の抵抗値の変化の検出に影響を与えない。また、接着剤で広い面積にわたって強固に接着できるから、経時的に接続の抵抗値が変化するおそれもない。
一方、リード線が結線される端子板を前記金属箔テープを介して導電膜に接続するから、端子板を薄い導電膜に直接接続するのと異なり、導電膜よりも厚い金属箔に端子板をハンダで、「ろう付け」することができ、小さな接合面積でも板と箔とを強固に接続することができる。
すなわち、極めて薄い導電膜に、この導電膜よりも厚い金属箔を接着し、更に、この金属箔よりも厚い端子板を金属箔に溶着して、段階的に厚さを厚くしているから、接続に無理が生じなく、各接続部分の抵抗値が十分に小さくなると共に、経時的な抵抗値の変化を防止することができる。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の一実施例を図面にしたがって説明する。
図1において、板ガラス1の表面(一方の面)1fには、導電膜10が形成されている。導電膜10としては、周知の金属薄膜や金属酸化薄膜等を使用でき(たとえば、特開2000−277243号)、必ずしも板ガラス1の全面に設ける必要はない。
【0013】
前記板ガラス1の端部には、複数の電極モジュールMが設けられている。前記各電極モジュールMは、リード線2を介して導電膜10の抵抗の変化を検出するための周知の抵抗検出器(図示せず:たとえば、特許第3677749号参照)に接続される。
【0014】
各電極モジュールMは、接続部3および端子板4を備えている。
【0015】
導電膜10に取り付けられる接続部3としては、導電性接着剤を片面に塗布した細長い第1および第2の銅箔テープ(第1および第2の金属箔テープ)31,32を使用する。これにより、導電膜10に銅箔が前記導電性接着剤により強固に接着され、導電性接着剤内の導電成分により接続部3の導電性が高まり、導電膜10と接続部3との接続抵抗値は導電膜10の抵抗値よりも十分に小さく、導電膜10の抵抗値の変化の検出に影響を与えない。また、経時的に接続の抵抗値が変化するおそれもない。
なお、前記端子板4の厚さ(たとえば、0.1mm〜0.2mm程度)は、前記第1および第2の銅箔テープ31,32の各々の厚さ(たとえば、50μm〜100μm程度)よりも厚い。
【0016】
図2に示すように、接続部3は、導電膜10に接する細長い帯状の第1の銅箔テープからなる通電部31と、略方形状の第2の銅箔テープからなる台座部32で構成され、台座部32は板ガラス端近傍において導電膜10に先に貼り付けられ、この台座部32の一部に重ねて通電部31を貼り付ける。
前記台座部32の幅W2(たとえば、4mm〜8mm程度)は通電部31の幅W1よりも大きく、かつ、台座部32の長さL2(たとえば、15mm〜25mm程度)は通電部31の長さL1(たとえば、30mm〜1000mm程度)よりも短い。
【0017】
図4の前記端子板4の幅W3(たとえば、4mm〜8mm程度)は、前記台座部32の幅W2(図2)と同等ないし若干大きな幅である。
台座部32が通電部31よりも幅広であるから、細い通電部31に端子板4をハンダ付けする場合に比べ、端子板4のハンダ付けが容易になる上、台座部32は端子板4の一端をハンダ33付けする際のハンダ位置の位置決めの基準となるので、位置決めが容易になる。
なお、前記通電部31にもハンダを乗せることにより接続抵抗の低下と安定が確保される。
【0018】
前記端子板4のハンダ付け(ハンダ33付けの一例)に先立って、図3のように、接続部3の通電部31および台座部32を覆って銀ペースト34はオーバー目にシルク印刷等で塗布される。
銀ペースト34は自然乾燥後、低温で焼き付けられる。銀ペースト34は通電部31の全体と、該通電部31にラップした台座部32の周囲をオーバー目に覆うので銅箔テープ31,32の剥れを防止すると共に、前記通電部31に乗せるハンダ33の付けを容易にする。
【0019】
ここで、銀ペースト34は、細かい銀粒子をバインダ中に分散させてペースト化し、印刷後に焼付けられるが、銀粒子同士の接触によって導電性を発揮する。銀ペースト34は、膜厚が余り厚くできない(たとえば、数μm〜20μm)ので、長い距離では抵抗値も大きくなり抵抗値が安定しない。そこで、本実施例では、導電性接着剤を塗布した銅箔テープを使用することにより、抵抗値を低く安定させ、更に、銀ペースト34を、その上にオーバーラップして重ねることで、銅箔テープの剥れを防止して、密着性を高めている。
【0020】
図4の端子板4は一部を板ガラス1のエッジ1eから突出した状態で台座部32において接続部3とハンダ33付けされている。図1の前記板ガラス1のエッジ1eから突出した突出部41には小穴42を設け、被覆を剥いだリード線2の一端をハンダ付けすることで、リード線2が突出部41に確実に固定され、引っ張っても抜けることがない。
リード線2は端子板4を接続部3にハンダ付けする前に、予め、端子板4にハンダ付けしておいてもよい。
【0021】
図7(a)に示すように、電極モジュールMは板ガラス1のたとえば四隅に4箇所設けるが、板ガラス1の縦横比に拘らず板ガラス1を窓枠に装着した時の上下となる辺に沿って設けると、引き違い窓の場合、サッシのクレセント位置で板ガラス1をこじ破って侵入される場合に、ガラス抵抗値の変化の検出が容易になる。
【0022】
単板の場合、接続部3、端子板4およびリード線2を取り付けた後、リード線2の引き出し長さを除いて、リード線2、端子板4および接続部3を図6のシリコーンシール(封止材の一例)S等で覆って保護する。
【0023】
リード線2の長さは、板ガラス1の幅と高さを合計した長さに50cm程度プラスした寸法とする事により、板ガラス1を現場でサッシに嵌めこむ際に、どちらのサイドでも片側にリード線をまとめてサッシに設けた穴からサッシを通して外部の壁や躯体にリード線2を引き出すことができる。
リード線端付近まで電源線をあらかじめ敷設しておく事により、現場ではガラス破壊検知器(抵抗検知器)と電源線、リード線の結線が容易になる。
【0024】
図7に示す4本のリード線2は上辺同士と下辺同士を結線しガラス破損検知器と電源に結線する事で引き違い窓の場合、サッシのクレセント位置で板ガラス1をこじ破って侵入する場合に、板ガラス1の抵抗値の変化を検出することが容易になる。
【0025】
電極モジュールMを2箇所にして、板ガラス1の対向する一対の辺の全長にわたって電極モジュールMを形成してもよい。しかし、侵入され易い箇所を重点的に検知できるようにするには、電極モジュールMを板ガラス1の四隅に設けるのが好ましく、この場合、高価な銀ペースト34の使用量を軽減しコストの削減を図ることができる。
【0026】
図6(b)の合せガラスの場合は接続部3、端子板4、リード線2を取り付けた後、PVBやEVA等の中間膜11を必要な厚み分、重ねて相手側の板ガラス1Aを乗せ、オートクレープや真空装置で加熱して合せガラスにする。中間膜11の電極モジュールMの部分は必要に応じて中間膜11の一部を切り取り、当該電極モジュールMに対応する部分が厚くならないように調整してもよい。
【0027】
リード線2は合せガラス製作後に一部突出した端子板4の突出部41にハンダ付けしてもよい。リード線2の長さは単板の場合と同様である。
【0028】
リード線2と一部突出した突出部41と合せガラスの端面はシリコーンシールSで覆って保護する。この場合、接続部3の長さ方向に沿った合せガラス端面とその直角方向に50mm〜100mm程度シリコーンシールで合せガラスの端面を覆う事で突出部41とリード線2の保護ができる。
【0029】
図7(a)に示すように、リード線2はシリコーンシールS端付近で粘着テープ100で合せガラス両面に固定し輸送時や施工時にも引掛けて外れてしまう事を防止するのが好ましい。なお、フリーになっているリード線も丸めて束ね、粘着テープで合せガラス片面に貼り付けておくのが好ましい。
【0030】
複層ガラスや図7(c)に示す合せ複層ガラスの場合は乾燥空気を保つため乾燥剤の入ったスペーサーの周囲をシリコーンやポリサルファイドの封着材101でシールする。そのため、端子板とリード線の一部を含めて前記素材で封着する事ができるから、ガラス端面のシリコーンシールは不要になる。
【0031】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、板材として、板ガラスではなく透光性のある樹脂板を用いることもできる。
また、各部材は必要に応じて材質や寸法を変更してもよい。更に、端子板を板ガラスのエッジから突出させる必要もないし、台座を板ガラスの端面に設けてもよい。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、防犯用板ガラスユニットだけでなく、いわゆるコールドドラフトを防止する発熱機能を有する板ガラスユニットについても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施例にかかる電極付板材ユニットの電極モジュールの部分を拡大して示す概略斜視図である。
【図2】第1および第2銅箔テープの接着状態を示す平面図および側面図である。
【図3】第2銅箔テープを導電性ペーストで覆った状態を示す平面図および側面図である。
【図4】電極モジュールの平面図および側面図である。
【図5】同電極モジュールにリード線を結線した状態を示す平面図および側面図である。
【図6】合せガラスにおける電極モジュールを示す平面図および断面図である。
【図7】(a)は電極付板材ユニットにおける板ガラスの一部を省略して示す電極モジュールの平面レイアウト図、(b)は合せガラスを示す側面図、(c)は合せ複層ガラスを示す側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1:板材(ガラス板)
1e:エッジ
10:導電膜
2:リード線
3:接続部
31:通電部
32:台座部
33:導電性ペースト
4:端子板
41:突出部
L1:通電部の長さ
L2:台座部の長さ
M:電極モジュール
S:シリコーンシール
W1:通電部の幅
W2:台座部の幅
W3:端子板の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有し基板となる板材の表面に導電膜を形成し、当該導電膜の抵抗の変化を検出するために前記導電膜に複数の電極モジュールを介してリード線を接続した電極付板材ユニットであって、前記電極モジュールは、
導電性の接着剤が片面に塗布された金属箔テープを前記導電膜上に前記接着剤を介して接着した接続部と、
前記金属箔テープの1枚の金属箔の部分よりも厚く、かつ、前記金属箔テープ上にろう付けされると共に前記リード線に接続される端子板とを備えた電極付板材ユニット。
【請求項2】
請求項1において、前記接続部は、細い帯状の第1の金属箔テープを含む通電部と、当該第1の金属箔テープよりも幅が広く、かつ、短い第2の金属箔テープを含む台座部とを備え、前記第1および第2の金属箔テープの端部同士が互いに重ね合わせた状態で接続されている電極付板材ユニット。
【請求項3】
請求項2において、前記第1および第2の金属箔テープの概ね全面が前記導電膜上に接着されており、当該第2の金属箔テープの端部と前記第1の金属箔テープの端部とが重ねられている電極付板材ユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記金属箔テープの上面の少なくとも一部を覆うと共に金属箔テープの幅方向の両側において前記金属箔テープから前記導電膜上にはみ出して塗布された導電性ペーストを更に備えた電極付板材ユニット。
【請求項5】
請求項1において、前記端子板は前記板材のエッジから当該板材の外方に向って突出していることで板材の端面から突出した突出部を有し、当該突出部にリード線の端部が接続されている電極付板材ユニット。
【請求項6】
請求項5において、前記突出部の近傍の前記リード線が前記板材の端面に沿って配設され、前記端面に沿った前記リード線および突出部が樹脂の封止材で封止されている電極付板材ユニット。
【請求項7】
請求項1において、前記電極モジュールが板材の四隅に設けられ、かつ、前記各電極モジュールが前記板材の上下となる辺に沿って長く形成されている電極付板材ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−186377(P2007−186377A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5509(P2006−5509)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)
【Fターム(参考)】