説明

電極材料

【課題】貴金属粒子の溶出を防ぎ、燃料電池の性能低下を抑制することが可能な燃料電池用電極材料、及びこの燃料電池用電極材料により形成された電極を有する燃料電池を提供する。
【解決手段】柱状および/または管状の導電性担体13と、前記導電性担体13上に配接された金属粒子15とを多孔性無機材料17により包接することにより形成された触媒粒子11を有することを特徴とする燃料電池用電極材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、各種センサなどの電極材料とその製造方法、並びに該電極材料及びその製造方法により製造される電極材料により形成される電極及び該電極を備えてなる燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、一方の電極に燃料を供給し、他方の電極に酸化剤を供給することにより発電する。特許文献1では、前記電極の少なくとも一方の片面には触媒層が形成されており、触媒層が触媒粒子と他の無機物(シリカ)粒子との混合物であり、触媒粒子、シリカ粒子及び多孔質膜の少なくとも一つの表面には、電解質として機能するイオン伝導性官能基を含む分子が化学結合した燃料電池が提案されている。
【0003】
こうした燃料電池によれば、電極の少なくとも一方は薄膜電解質と触媒と電子伝導性物質とを有することによって、触媒層中の電解質の溶出、またこれに伴う電圧の低下を減少させることができるというものである。
【特許文献1】特開2004−172098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の燃料電池によれば、触媒層は触媒金属(Pt)粒子と他の無機物(シリカ)粒子とが単純に混合されてなるものであるので、触媒層中の触媒金属(Pt)粒子表面は隣接する粒子と接した部分以外は露出している。そのため、該触媒金属(Pt)粒子が、金属(Pt)イオンとして電解質膜中に溶出することにより活性点を失うため、燃料電池の性能低下を招く可能性がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、金属粒子の溶出を防ぎ、燃料電池やセンサ等の性能低下を抑制することが可能な電極材料、及びこの電極材料により形成された電極、並びにこの電極を有する燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、導電性担体と、前記導電性担体上に配接された金属粒子とを多孔性無機材料により包接することにより形成された触媒粒子を有することを特徴とする電極材料により上記目的が達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電極材料によれば、貴金属粒子を多孔性無機材料で包接する場合、電子伝導の確保が必要となる。その伝導性材料を電極触媒とともにSiO内に内包することで、電極触媒と伝導性材料の接触を維持し、かつPtの溶出を防止することができる。
【0008】
さらに、この電極材料によれば、伝導性材料の形態には、特に制限はないが、粒状以外に、柱状もしくは管状など長軸を持つ形態を持たせることで、触媒から電極までの区間の電子伝導を確保することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る電極材料は、導電性担体と、前記導電性担体上に配接された金属(貴金属)粒子とを多孔性無機材料により包接することにより形成された触媒粒子を有することを特徴とするものである。これは、金属(貴金属)粒子の溶出防止のため多孔性無機材料で包接を行う場合に、単純に多孔性無機材料(SiOなど)による金属粒子(Pt粒子など)の包接を行うと電子伝導性の確保が困難になる。導電性担体に金属粒子(Pt粒子など)を担持(配接)して、金属粒子(Pt粒子など)を中心に包接を行うことで、金属(Ptなど)の移動を抑制しつつ、電子伝導の確保が可能となる。
【0010】
なお、本発明の電極材料は、使用用途によって異なるものであり、使用用途に応じて適宜決定すればよい。すなわち、本発明の電極材料は、燃料電池用だけに制限されず、該燃料電池や各種センサなどの各種の電気化学セル用電極などに幅広く利用可能である。以下では、本発明の電極材料を燃料電池用電極材料として用いる場合を例に挙げて説明するが、本発明の電極材料の使用用途がこれによって何ら制限されるものではない。本発明の電極材料を燃料電池用電極材料として用いる場合、主として、上記触媒粒子のほか、プロトン導電性を有する電解質(バインダないしアイオノマとも称する)を有するものである。以下、これらの構成材料ごとに説明する。
【0011】
(1)触媒粒子
触媒粒子は、導電性担体と、前記導電性担体上に配接された金属粒子とを多孔性無機材料により包接することにより形成されてなるものである。以下、図面を用いて本発明を説明する。
【0012】
図1aは、本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の一実施形態(第1実施形態とする)となる代表的な構成を示す模式図であり、図1bは、本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の一実施形態(第1実施形態とする)となる代表的な他の構成を示す模式図である。図2は、本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の他の一実施形態(第2実施形態とする)となる構成を示す模式図である。
【0013】
図1、2に示すように、本発明に係る燃料電池用電極材料を構成する触媒粒子11は、導電性担体13と、前記導電性担体13上に配接された触媒活性を有するPt等の金属粒子15とを多孔性無機材料17により包接することにより形成されている。このような触媒粒子11を有する燃料電池用電極材料によれば、金属粒子15は多孔性無機材料17により包接されているので、触媒活性を有するPt等の金属粒子15が、電解質膜(図示せず)中に溶出することを防ぎ、該金属粒子15が電解質膜中に溶出することに伴う燃料電池の性能低下を抑制することができる。以下、本発明の触媒粒子の構成部材ごとに説明する。
【0014】
(i)金属粒子15
ここで、カソード触媒層に用いられる金属粒子は、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、アノード触媒層に用いられる金属粒子もまた、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、金、イリジウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、鉛、鉄、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム、リチウム等の金属、及びそれらの合金等などから選択される。これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金が30〜90原子%、合金化する金属が10〜70原子%とするのがよい。カソード触媒をして合金を使用する場合の合金の組成は、合金化する金属の種類などによって異なり適宜選択できるが、白金が30〜90原子%、合金化する他の金属が10〜70原子%とすることが好ましい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または卑金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。この際、カソード触媒層に用いられる金属粒子及びアノード触媒層に用いられる金属粒子は、上記の中から適宜選択できる。以下の説明では、特記しない限り、カソード触媒層及びアノード触媒層用の金属粒子についての説明は、両者について同様の定義であり、一括して、「金属粒子」と称する。しかしながら、カソード触媒層及びアノード触媒層用の金属粒子は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択される。
【0015】
上記金属粒子の形状や大きさは、特に制限されず公知の金属粒子と同様の形状及び大きさが使用できるが、金属粒子は、粒状であることが好ましい。
【0016】
上記金属粒子の平均粒子径は、小さいほど電気化学反応が進行する有効電極面積が増加するため酸素還元活性も高くなり好ましいが、実際には平均粒子径が小さすぎると却って酸素還元活性が低下する現象が見られる。従って、金属粒子の平均粒子径は、1〜30nm、より好ましくは1.5〜20nm、さらにより好ましくは2〜10nm、特に好ましくは2〜5nmの粒状であることが好ましい。図1a、図1bに示す第1実施形態での導電性担体13上への担持の容易さ、あるいは図2に示す第2実施形態での多孔性無機材料(SiO等)17による包接のし易さなどの観点から1nm以上であることが好ましく、触媒利用率の観点から30nm以下であることが好ましい。なお、本発明における「金属粒子の平均粒径」は、X線回折における金属粒子の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる金属粒子の粒子径の平均値により測定することができる。
【0017】
なお、親和処理した導電性担体表面上に金属粒子を担持させた場合の金属粒子の平均粒子径も1〜30nmであればよいが、好ましくは2〜30nm、より好ましくは2.5〜10nm、さらにより好ましくは3〜5nmの粒状であることが好ましい。
【0018】
上記金属粒子15の担持量は、触媒粒子11の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%とするのがよい。前記担持量が80質量%以下であると、金属粒子15の導電性担体13上での優れた分散度を有効に保持することができ、発電性能の向上効果を有効に発現させることができる利点がある(特に第1実施形態)。また、前記金属粒子15の担持量が10質量%以上であると、単位質量あたりの触媒活性に優れ、担持量に応じた所望の発電性能を得ることができる。そのため、所望の電池性能を確保するための担持量設計が比較的容易になし得る点で優れている。なお、金属粒子の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
【0019】
(ii)導電性担体13
前記導電性担体としては、(1)図1a、図1bに示すように、金属粒子15を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであってもよい。または(2)図2に示すように、導電性担体13の少なくとも端部に金属粒子15が担持されており、集電体として十分な電子導電性を有しているものであってもよい。
【0020】
また、上記導電性担体の形状は、特に制限はないが、球状、柱状、管状のいずれの形状を有していてもよい。具体的には、例えば、カーボンブラック、高温(黒鉛化)処理したカーボンブラックなどの球状形状のもの、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンフィブリル構造体などの柱状や管状形状のものなどが挙げられる。さらに柱状ないし管状形状の導電性担体の中には、六角柱状中空SiO等に金属を充填した導電性担体(300nm)の形態も含む。これは、いわば、触媒粒子の形態といえるものである。即ち、角柱状中空SiOの中空内部に導入された金属(粒子の連なり)が柱状および/または管状形状の導電性担体を構成するとともに、金属粒子(触媒)をも構成し、この金属粒子を多孔性無機材料としての角柱状中空SiOにより包接した形態になっているものと言える。このほかにも、柱状形状の導電性担体には、その他の導電性酸化物繊維などの形態が含まれる。なお、上記高温(黒鉛化)処理したカーボンブラックとは、高温処理したカーボンブラックないし黒鉛化処理したカーボンブラックという意味内容である。即ち、カーボンブラックを高温で処理することでカーボンブラックが黒鉛化される。カーボンブラックを黒鉛化するには高温で処理する必要があるともいえる。
【0021】
上記柱状ないし管状形状の導電性担体の場合には、導電性担体の長軸長さ(L1;図1a、図1b、図2参照)と短軸長さ(L2;図1a、図1b、図2参照)の比率(L1/L2)は、2倍以上、好ましくは2〜50倍、より好ましくは5〜20倍であることが望ましい。柱状ないし管状形状の導電性担体の長軸長さと短軸長さの比率が、2倍以上であれば、少ない包接粒子(触媒粒子11)で電気伝導を確保できる点で優れている。
【0022】
上記柱状ないし管状形状の導電性担体の平均長軸長さ(L1)は、特に制限されるものではないが、10nm以上であるのが望ましい。上記柱状ないし管状形状の導電性担体の長軸長さ(L1)が、10nm以上であれば、少ない包接粒子(触媒粒子11)で電気伝導に必要な長さを確保できる。また、柱状ないし管状形状の導電性担体の長軸長さ(L1)の上限値に関しては特に制限されるものではなく、各実施形態に適したカーボンナノチューブ(CNT)等の柱状ないし管状形状の導電性担体の作りやすい長さと電気伝導に必要な長さを考慮して適宜決定すればよい。
【0023】
上記球状の導電性担体の平均粒径は、特に制限されるものではなく、既存の平均粒径を採用することができるが、上記柱状ないし管状形状の導電性担体の平均長軸長さ(L1)と同様の範囲が望ましく、10nm以上であるのが望ましい。
【0024】
導電性担体の材料(材質)としては、上記したように集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよいが、好ましくは、酸性雰囲気下で安定であり、電気抵抗が低く、また長さを制御可能である点から、炭素系材料が望ましい。該炭素系材料としては、具体的には、例えば、カーボンブラック、グラファイト、高温(黒鉛化)処理したカーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバ、カーボンフィブリル構造体、炭素系多孔材料をなどが例示できる。柱状ないし管状形状の導電性担体としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、カーボンナノホーン、カーボンフィブリル構造体が、酸性雰囲気下でより安定であり、電気抵抗がより低く、また長さを容易に制御可能である点で特に好適である。球状の導電性担体の場合としては、カーボンブラック、高温(黒鉛化)処理したカーボンブラックが、電気抵抗が低く耐久性に優れる点で好適である。
【0025】
前記導電性担体のBET比表面積は、金属粒子を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよい。柱状および/または管状の導電性担体の場合、導電性担体のBET比表面積は、好ましくは1〜2000m/g、より好ましくは50〜1500m/gとするのがよい。前記比表面積が、1m/g以上であると柱状および/または管状の導電性担体上への金属粒子および高分子電解質の分散性が向上し、十分な発電性能が得られる点で優れている。一方、2000m/g以下であると金属粒子および高分子電解質の高い有効利用率を有効に保持することができる点で優れている。上記BET比表面積の好適な範囲は、柱状および/または管状の導電性担体13上に金属粒子15を高分散担持させる実施形態である、第1実施形態において特に有効である。
【0026】
一方、図2aに示す第2実施形態では、その製造方法により、柱状および/または管状の導電性担体13の一方の端部ないしその近傍に金属粒子15が配接される構造となる為、金属粒子15を導電性担体13上に高分散担持させるのに十分な比表面積を必ずしも取らなくてもよいため、上記したBET比表面積の好適な範囲は必ずしも必要ではない。なお、上記第2実施形態に更に第1の実施形態を組み合わせる場合には、上記BET比表面積の好適な範囲とするのが望ましいといえる。
【0027】
また、上記導電性担体13は、柱状もしくは管状など長軸を持つ形態を持たせることで、触媒活性を有する触媒金属粒子15から電極集電体(図示せず)までの区間の電子伝導を確保する機能を持たせることができるように、少なくとも導電性担体13の一方の端部は、非導電性の多孔性無機材料で包接されていないことが望ましい(図1a、図1b、図2a参照のこと)。特に図1aでは、その製法上、導電性担体13の全体が包接されるような場合もある。そうした場合には、予め導電性担体の長軸長さを長めに形成しておき、この長い導電性担体を適当に切断すればよい。こうすることにより、得られる導電性担体では、少なくとも切断部側の端部において、非導電性の多孔性無機材料で包接されていない部分(端面)を得ることができるものである。
【0028】
次に、球状の導電性担体の場合、導電性担体のBET比表面積は、好ましくは5〜2000m/g、より好ましくは50〜1500m/gとするのがよい。前記比表面積が、5m/g以上であると球状の導電性担体上への金属粒子および高分子電解質の分散性が向上し、十分な発電性能が得られる点で優れている。一方、2000m/g以下であると金属粒子および高分子電解質の高い有効利用率を有効に保持することができる点で優れている。上記BET比表面積の好適な範囲は、球状の導電性担体13上に金属粒子15を高分散担持させる実施形態である、第1実施形態において有効である。特に好ましくは導電性担体のBET比表面積が50〜2000m/gのアセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ブラックパールである。
【0029】
一方、図2bに示す第2実施形態では、その製造方法により、球状の導電性担体13の表面の一部に金属粒子15が配接される構造となる為、金属粒子15を球状の導電性担体13上に高分散担持させるのに十分な比表面積を有すことが望ましいため、上記したBET比表面積の好適な範囲がある。なお、上記第2実施形態に更に第1の実施形態を組み合わせる場合には、上記BET比表面積の好適な範囲とするのが望ましいといえる。
【0030】
また、球状の導電性担体の1種である高温(黒鉛化)処理したカーボンブラックは、X線回折から算出される〔002〕面の平均格子面間隔d002が0.343〜0.358nmかつBET比表面積が100〜300m/gであることが望ましい。
【0031】
また、上記導電性担体13は、触媒活性を有する触媒金属粒子15から電極集電体(図示せず)までの区間の電子伝導を確保する機能を持たせることができるように、少なくとも球状の導電性担体13の一部は、非導電性の多孔性無機材料で包接されていないことが望ましい(図1c、図1d、図2b参照のこと)。特に図1cでは、その製法上、導電性担体13の全体が包接されるような場合もある。そうした場合には、触媒インク調製時に粉砕をかけ、この導電性担体を適当に切断すればよい。こうすることにより、得られる導電性担体では、少なくとも表面の一部が露出し、非導電性の多孔性無機材料で包接されていない部分(端面)を得ることができるものである。
【0032】
(iii)多孔性無機材料17
多孔性無機材料は、上記導電性担体13と、該導電性担体13上に配接された金属粒子15とを包接することにより触媒粒子11を形成してなるものである。
【0033】
上記多孔性無機材料の材料としては、触媒活性を有する金属粒子と導電性担体の接触を維持し、かつ金属粒子の溶出を防止することができ、燃料電池の電極に用いた際に安定であり、該多孔性無機材料自体が溶出されることがないものであればよい。具体的には、導電性担体13や金属粒子15の包接が可能な多孔性無機材料としてSiO、ZrO、TiOなどが挙げられる。これらSiO、ZrO、TiOを用いることで、比較的安価な材料で、かつ多孔化が達成されるためである。好ましくはSiO、ZrOおよびTiOのうち1つ以上の成分を含んでなるものが望ましい。ここで、SiO、ZrOおよびTiOのうち1つ以上の成分を含んでなるとしたのは、例えば、TiO−SiO(チタニア−シリカ複合酸化物)のように2種以上が複合化されてなる場合、TiOとSiOとが単に混合されてなる場合、TiOとSiOとが別々に用いられている場合(例えば、第1と2実施形態を組み合わせてなるような場合に、第1実施形態の多孔性無機材料17にTiOを用い、第2実施形態の多孔性無機材料17にSiOを用いるような場合など)なども含まれるためである。ここで、TiOとSiOとが別々に用いられている場合とは、例えば、第1と2実施形態を組み合わせてなるような場合に、第1実施形態の多孔性無機材料17にTiOを用い、第2実施形態の多孔性無機材料17にSiOを用いるような場合などが挙げられる。ただし、これらに制限されるものではなく、多孔性無機材料17にTiOを用いた触媒粒子11と、多孔性無機材料17にTiOを用いた触媒粒子11を適当に混合したような場合などが挙げられるなど、特に制限されるものではない。
【0034】
このように多孔性無機材料が2種以上含まれている場合には、それらの配合比率に関しても特に制限されるものではない。
【0035】
なお、上記した好適な多孔性無機材料は、SiO、ZrO、TiOのうち1つ以上の成分を含んでいるものであればよく、これら以外の他の成分を適量配合していてもよいことは言うまでもない。この場合にも、多孔性材料に加工でき、金属粒子と導電性担体の接触を維持し、かつPtなどの金属粒子の溶出を防止することができるものであることが求められるため、こうした所望の特性を有効に発揮することができるものであれば如何なる成分を配合していてもよいといえる。特に該無機物材料に電子伝導性を付与することができるような成分であれば、特に有効である。
【0036】
上記多孔性無機材料の細孔径は、好ましくは1〜5nm、より好ましくは2〜3nmの範囲であるのが望ましい。多孔性無機材料の細孔径が上記範囲であれば、ガスの拡散とPtなどの金属粒子の溶出防止を両立することができるためである。これは、ガス流路として一定サイズの細孔径が必要であるが、Pt等の金属粒子の溶出を防止するにはあまり大きい細孔径は望ましくないためである。
【0037】
ただしこれは金属粒子の溶出防止機能を担っている多孔性無機材料内部の細孔径の条件であり、金属粒子からみてこれより外側に位置する金属粒子の溶出防止機能を担っていない多孔性無機材料の外層部の細孔径はより大きな値でも良く、具体的には、前記多孔性無機材料内部の細孔径を含めた平均細孔径としては1〜100nmの範囲であれば概ね、図1a、図1b、図1c、図1dに示すように、外部からのガス(HやO)を拡散により、金属粒子表面までは拡散(透過)させることができ、当該金属触媒表面での触媒作用により生じたH(プロトン)を触媒粒子近傍の電解質を通じてイオン伝導させることができ、該金属粒子の溶出を防止することができる。
【0038】
また、後述する第一調製法において、(1’)導電性担体の表面を親和処理する工程を行う場合には、導電性担体と多孔性無機材(SiO等)の接触が良好となり(主に図18参照のこと)したがって、こうした製造方法により得られた触媒粒子では、多孔性無機材(SiO等)の厚さが薄くても、十分なガスの拡散とPtなどの金属粒子の溶出防止を両立することができ、なおかつ良好な発電性能を得ることが出来る(後述する実施例を参照のこと)。
【0039】
なお、本発明でいう「導電性担体上に配接された金属粒子」とは、後述する図10及び図18に示すように、金属粒子が全て導電性担体に直接接するように配接されていなくてもよく、導電性担体上の多孔性無機材(SiO等)に包接(固定化)されて配接(担持)されているものであってもよいし、一部に含まれていてもよい。ただし前記金属粒子が電気的に導電性担体と接続されていることは必要であると考えられる。
【0040】
また、上記多孔性無機材料は、金属粒子と導電性担体の接触を維持し、かつPtなどの金属粒子の溶出を防止することができるように、これら金属粒子と導電性担体を包接するものであればよい。したがって、図1a、図1cに示すように、金属粒子を含めた導電性担体のほぼ全体を包接してもよいし、図1b、図1dや図2に示すように、金属粒子15近傍だけを包接するものであってもよい。特に、図1b、図1dや図2の実施形態では、金属粒子15近傍以外の導電性担体上は、多孔性無機材料で包接されていない。そのため、近接する導電性担体同士が接触して導電性ネットワークを構築させることができ、金属粒子から集電体までの区間の電子伝導を確保しやすいという利点を有するものである。
【0041】
ここで多孔性無機材料17の含有量は、触媒粒子11の全量に対して、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜70質量%とするのがよい。多孔性無機材料17の含有量が上記範囲の場合には、導電性担体13に配接ないし接触する金属粒子15を好適に包接することができ、金属粒子の溶出を防止できる利点がある。なお、多孔性無機材料17の含有量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
【0042】
また、前記金属粒子と該金属粒子を包接する前記多孔性無機材料の組み合わせとしては、特に制限されるものではなく、例えば、PtとSiO、PdとSiOまたはチタニア−シリカ複合酸化物、RhとSiOまたはZrO、AuとSiOなどの組み合わせが挙げられる。
【0043】
(2)電解質
本発明の燃料電池用電極材料には、上記触媒粒子11の他に、電解質が含まれる。前記電解質としては、特に限定されず、燃料電池用電解質膜に用いたものと同様の高分子電解質が使用できる。こうした燃料電池用電解質膜に用いられる電解質と、燃料電池用電極材料に用いられる電解質とは、同じであっても異なっていてもよいが、燃料電池用電極材料を用いて形成される触媒層(燃料電池用電極)と燃料電池用電解質膜との密着性を向上させる観点から、同じものを用いるのが好ましい。すなわち、燃料電池用電極材料に用いられる電解質としては、特に限定されず公知のものを用いることができるが、少なくとも高いプロトン伝導性を有する部材であればよい。この際使用できる電解質は、ポリマー骨格の全部又は一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質と、ポリマー骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質とに大別される。
【0044】
前記フッ素系電解質として、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。
【0045】
前記炭化水素系電解質として、具体的には、ポリスルホンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸等が好適な一例として挙げられる。
【0046】
高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
【0047】
上記電解質と触媒粒子との質量比は、本発明の作用効果を有効に発現できるものであれば、特に制限されるものではなく、燃料電池用電極材料を用いて形成される燃料電池用電極(触媒層)内の良好なイオン伝導性を付与し、かつ燃料電池用電極(触媒層)内のガス拡散及び水(蒸気)の排出をスムーズに行えるように適宜決定すればよい。
【0048】
(3)その他の成分
燃料電池用電極材料には、さらに、撥水性高分子や、その他の各種添加剤が被覆ないし含まれていてもよい。撥水性高分子が含まれていることにより、燃料電池用電極材料を用いて形成される燃料電池用電極(触媒層)の撥水性を高めることができ、発電時に生成した水などを速やかに排出することができる。
【0049】
上記撥水性高分子の混合量は、本発明の作用効果に影響を与えない範囲で適宜決定することができる。
【0050】
上記撥水性高分子としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、または、PTFE、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレンもしくはこれらのモノマーの共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体など)などのフッ素系の高分子材料などを用いることができる。
【0051】
また、本発明の燃料電池用電極材料には、上記した触媒粒子11及び電解質のほか、必要に応じて、さらに導電性担体に金属粒子が担持されてなる既存の電極触媒や補強材などが含まれていてもよい。
【0052】
このうち、既存の電極触媒は、導電性担体に触媒金属粒子が担持されてなるものである。なお、当該電極触媒に関しても、多孔性無機材料により包接するのが望ましい。SiOなどの多孔性無機材料で包接することによりPt等の金属粒子の溶出を防止することができるためである。ただし、この場合には導電性担体同士(更には多孔性無機材料で包接されていない導電性担体表面との間)の接触により導電性を確保するのが難しくなる。そのため、当該導電性担体上の触媒金属粒子の近傍のみを多孔性無機材料で包接するのが望ましい。
【0053】
ここで、カソード触媒層に用いられる電極触媒は、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、アノード触媒層に用いられる電極触媒もまた、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、及びそれらの合金等などから選択される。これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金が30〜90原子%、合金化する金属が10〜70原子%とするのがよい。カソード触媒をして合金を使用する場合の合金の組成は、合金化する金属の種類などによって異なり適宜選択できる。この際、カソード触媒層に用いることのできる電極触媒及びアノード触媒層に用いることのできる電極触媒は、上記の中から適宜選択できる。以下の説明では、特記しない限り、カソード触媒層及びアノード触媒層用の電極触媒についての説明は、両者について同様の定義であり、一括して、「電極触媒」と称する。しかしながら、カソード触媒層及びアノード触媒層用の電極触媒は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択される。
【0054】
電極触媒の形状や大きさは、特に制限されず公知の電極触媒と同様の形状及び大きさが使用できるが、電極触媒は、粒状であることが好ましい。この際、電極触媒の平均粒子径は、小さいほど電気化学反応が進行する有効電極面積が増加するため酸素還元活性も高くなり好ましいが、実際には平均粒子径が小さすぎると却って酸素還元活性が低下する現象が見られる。従って、電極触媒の平均粒子径は、1〜30nm、より好ましくは1.5〜20nm、さらにより好ましくは2〜10nm、特に好ましくは2〜5nmの粒状であることが好ましい。担持の容易さという観点から1nm以上であることが好ましく、触媒利用率の観点から30nm以下であることが好ましい。なお、本発明における「電極触媒の平均粒径」は、X線回折における触媒粒子の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒粒子の粒子径の平均値により測定することができる。
【0055】
前記導電性担体としては、金属粒子を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであるのが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、本発明において「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
【0056】
前記導電性担体のBET比表面積は、金属粒子を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよい。柱状および/または管状の導電性担体の場合、導電性担体のBET比表面積は、好ましくは1m/g〜2000m/g程度とするのがよい。前記比表面積が、1m/g程度以上あれば前記導電性担体への金属粒子および高分子電解質の分散性が向上し、十分な発電性能が得られる。一方、2000m/g程度以下であれば、金属粒子および高分子電解質の高い有効利用率を有効に保持することができる。
【0057】
また、球状の導電性担体の場合、導電性担体のBET比表面積は、好ましくは5〜2000m/g、より好ましくは50〜1500m/gとするのがよい。特に好ましくは導電性担体のBET比表面積が50〜2000m/gのアセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ブラックパールである。
【0058】
また、前記導電性担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径が5〜1000nm、好ましくは50〜700nm程度とするのがよい。
【0059】
前記導電性担体に金属粒子が担持された電極触媒において、金属粒子の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%とするのがよい。前記担持量が、80質量%以下であると、金属粒子の導電性担体上での優れた分散度を有効に保持することができ、担持量の増加に見合った発電性能の向上効果を有効に発現させることができる利点がある。また、前記担持量が、10質量%以上であると、単位質量あたりの触媒活性に優れ、担持量に応じた所望の発電性能を得ることができる。そのため、所望の電池性能を確保するための担持量設計が比較的容易になし得る点で優れている。なお、触媒粒子の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
【0060】
また、上記電極触媒において、導電性担体と、該導電性担体上に担持された金属粒子とを多孔性無機材料により包接する場合には、上記触媒粒子11と同様の多孔性無機材料を用いて包接すればよい。その際の多孔性無機材料の使用量などに関しては、上記したように、Pt等の金属粒子の溶出を防止し、導電性担体同士(更には多孔性無機材料で包接されていない導電性担体表面との間)の接触により導電性を確保することができるように、適量を用いて導電性担体上の触媒金属粒子の近傍のみを多孔性無機材料で包接するのが望ましい。
【0061】
また、導電性担体への金属粒子の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。または、電極触媒は、市販品を用いてもよい。また、多孔性無機材料の包接の方法は、後述する触媒粒子の製造方法(第一調製法等)と同様にして行うことができる。
【0062】
本発明の燃料電池用電極材料への上記電極触媒の混合量は、本発明の作用効果に影響を与えない範囲で適宜決定することができる。
【0063】
また、本発明に係る燃料電池用電極材料は、カソード側電極に用いる場合、カソード側電極では高電位になる。その過程で金属粒子、例えば、Pt粒子には酸化被膜が形成され安定化するが、その間、電位が約0.6V以上から0.85V近辺ではPtがイオン化されやすく、Ptイオンとして溶出する問題があった。かかる観点から、本発明に係る燃料電池用電極材料をカソード側電極として用いるのが有利である。これにより高電位となるカソード側電極での金属(Pt)粒子の溶出を効果的に防止することができるためである。ただし、本発明に係る燃料電池用電極材料は、アノード側電極に用いてもよいし、カソード側電極及びアノード側電極の双方に用いてもよいなど、特に制限されるものではない。
【0064】
次に、本発明の電極材料、特に触媒粒子の製造方法につき、説明する。
【0065】
本発明の電極材料、特に触媒粒子の製造方法の代表的な一実施形態(第一調製法)としては、
(1)導電性担体を生成する工程と、
(2)導電性担体上に金属粒子を担持(配接)する工程と、
(3)金属粒子が担持(配接)された導電性担体を多孔性無機材料により包接する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0066】
かかる製造方法によれば、金属粒子周辺をSiOのような多孔性無機材料で包接する工程を行うことで、本発明の基本的な目的は達成される。即ち、金属粒子周辺を多孔性無機材料で包接することにより該金属粒子の溶出を防止するとともに、該金属粒子を担持する担体に導電性担体を用いることで電子伝導性を保つことができる。これにより、燃料電池用電極の形成において、当該触媒粒子及び電解質を含む触媒スラリーを塗布すればよくなる。
【0067】
以下、各工程ごとに説明する。なお、これらの工程順序は、所望の触媒粒子を製造可能であるならば、特に制限されるものではなく、必要に応じて、複数の工程をまとめて(ワンステップで)行ってもよいし、工程順序を入れ替えて行ってもよい。なお、以下では、導電性担体として、柱状および/または管状の導電性担体を例に挙げて説明するが、球状の導電性担体についても同様にして製造することができる。
【0068】
(1)柱状および/または管状の導電性担体を生成する工程
当該導電性担体を生成する工程は、特に制限はなく、従来公知の方法を用いて製造することができる。
【0069】
以下では、柱状および/または管状の導電性担体がカーボンナノチューブ(CNTとも略記する)の場合に、通常のNi触媒を用いてHC中で成長させる方法を例にとり説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。例えば、カーボンナノファイバあるいはこれら以外の柱状および/または管状の導電性担体に関しても、既存の製造方法を用いて生成することができる。さらにカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、これら以外の柱状および/または管状の導電性担体ほか、既に市販されているものの中から適宜選択したものを用いてもよい。後者の場合には、当該柱状および/または管状の導電性担体生成工程は、省略することができ、当該工程は、市販のカーボンナノチューブなどの導電性担体を準備する工程と置き換えることができる。同様に球状の導電性担体でも、当該工程は、市販のカーボンブラックなどの導電性担体を準備する工程と置き換えることができる。
【0070】
柱状および/または管状のCNT生成工程では、まず、Ni−MgO触媒をクエン酸法、dry−up法などを用いて合成する。
【0071】
次に、エチレン分解反応により、CNTを合成し、酸処理を行うことで、Ni−MgOを除去する。この段階でのCNTの合成及びNi−MgOの除去に関しては、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)により確認することができる。
【0072】
(2)導電性担体上に金属粒子を担持する工程
導電性担体上に金属粒子を担持する本工程(2)に関しても、特に制限されるものではなく、従来公知の球状の導電性担体であるカーボン担体(カーボンブラック担体など)に金属触媒粒子を担持させる各種製法を適宜利用することができる。すなわち、金属粒子を導電性担体に担持させる方法としては、特に制限はなく、予め調製した金属粒子を導電性担体に担持してもよく、例えば、導電性担体に金属粒子を付着させ、その後焼成して該金属粒子を担持(固定化)してもよい。例えば、金属粒子を含有する溶液に導電性担体を分散し、該溶液を混合・撹拌し、70〜100℃、3〜12時間反応させて該金属粒子を該導電性担体に担持させる方法がある。なお、該溶液には、必要に応じて金属粒子の金属成分の還元剤や沈殿剤を添加してもよい。また、実施例2で示すように、貴金属化合物の粒子を担持して、多孔質無機担体で包接した後に、貴金属化合物を貴金属に還元する方法でもよい。
【0073】
上記する金属粒子を含有する溶液としては、例えば、金属コロイド溶液がある。この溶液を使用して金属粒子を導電性担体に担持させるには、金属コロイド溶液に導電性担体を分散させ、その後に焼成する。これにより金属粒子を担持させることができる。なお、このようなコロイド溶液に代えて、金属水溶液等を使用してもよい。
【0074】
本発明の方法では金属粒子の金属種としては、特に限定はなく、既に説明した通りである。燃料電池用電極とした場合に触媒活性に優れる点で、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム及びイリジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の貴金属を使用することが好ましく、これらの中でも、白金、パラジウムおよび/またはイリジウムを使用することが好ましい。貴金属の供給源としては特に制限されず、広くこれらを含有する化合物を使用することができる。このような化合物としては、上記貴金属の硝酸パラジウム、硝酸ロジウムなどの硝酸塩、塩化パラジウム、塩化白金、塩化ロジウムなどのハロゲン化物、ジニトロジアンミンパラジウム、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩、テトラアンミンパラジウム(II)塩化物などのアンミン錯体、硫酸パラジウム、硫酸ロジウムなどの硫酸塩、酢酸パラジウム、酢酸ロジウムなどの酢酸塩、その他の化合物などが例示でき、たとえば、これらを溶解する溶媒の種類やpHなどによって適宜選択することができる。これらの中でも、工業的に使用するには硝酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物などが好ましい。これらの貴金属イオン濃度は、金属換算で0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜30質量%である。なお、上記(貴)金属コロイド溶液を調製するには、還元剤を添加すればよい。
【0075】
また、上記(貴)金属の還元剤としては、水素、ヒドラジン、ホウ素化水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、ホルムアルデヒド、メタノール、エタノール、エチレン、一酸化炭素等が挙げられる。ヒドラジン等の水溶液として調製し得るものは、濃度0.1〜30質量%の水溶液として直接溶液に添加してもよい。水素などの常温でガス状の物質は、バブリングで供給することもできる。
【0076】
また、上記金属粒子として、上記貴金属と合金化して用いることのできる遷移金属としては、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも一種の遷移金属である。これらは、上記遷移金属の供給源としては、これらの硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩、アミン、炭酸塩、重炭酸塩、ハロゲン塩、亜硝酸塩、蓚酸などの無機塩類、ギ酸塩などのカルボン酸塩および水酸化物、アルコキサイド、酸化物などが例示でき、これらを溶解する溶媒の種類やpHなどによって適宜選択することができる。貴金属と遷移金属との貴金属合金を使用することで、触媒活性を更に向上させることができる。特に遷移金属を使用すると、質量活性(貴金属の単位重量当りの活性)を向上させることができ有利である。また、貴金属と遷移金属との混合比は、所望の貴金属合金比となるように調整すればよい。
【0077】
上記金属の沈殿剤としては、アンモニア、アンモニア水、尿素、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。アンモニア水、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等は、濃度0.1〜30質量%の水溶液として直接溶液に添加してもよい。
【0078】
本発明において使用することが可能な導電性担体は、既に説明した通りであるので、ここでの説明は省略するが、上記(貴)金属粒子を均一に分散するには、導電性担体の粒径(単軸長さ)は、30〜100nmであることが好ましい。なお、該導電性担体は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム溶液などのアルカリ溶液で、該導電性担体表面の付着物を洗浄したものであることがより好ましい。
【0079】
上記溶液を使用して(貴)金属粒子を担持するには、上記溶液に還元剤を添加し、これに導電性担体を分散させ、混合および撹拌して、70〜100℃、より好ましくは80〜95℃に保温する。70℃を下回ると、還元反応が促進されず所望の(貴)金属量を担持することには不利である。一方、100℃を上回ると水溶液が沸騰して操作が困難となる。反応時間は、3時間〜24時間、より好ましくは6〜12時間反応させて該(貴)金属または該(貴)金属合金を該導電性担体に担持させる。また、(貴)金属として白金以外のイリジウムなどを含ませる場合には、例えば、イリジウムイオンを含む溶液に、イリジウムイオンの還元剤を添加し、これに白金イオンを含む溶液を混合し、白金イオンの還元剤を添加してもよい。遷移金属も同様である。
【0080】
貴金属合金粒子を担持させるには、貴金属粒子を担持させた導電性担体に、更に遷移金属を担持させればよい。具体的には、遷移金属含有溶液に沈殿剤を添加し、これに先に貴金属を担持させた導電性担体を分散させ、混合および撹拌して、30〜100℃、より好ましくは30〜50℃に保温する。30℃を下回ると沈殿反応の促進に不利である。一方、100℃を上回ると水溶液が沸騰して操作が困難となる。反応時間は、1〜12時間、より好ましくは3〜6時間反応させて更に遷移金属を該導電性担体に担持させる。
【0081】
また、貴金属合金粒子を担持させるには、まず、遷移金属粒子を担持させた導電性担体に、更に貴金属を担持させてもよい。具体的には、遷移金属含有溶液と導電性担体を混合し、次いで還元剤を添加して、遷移金属粒子を導電性担体に担持し、濾過・乾燥・焼成を経て遷移金属粒子を担持した導電性担体を得る。貴金属溶液に遷移金属粒子を担持させた導電性担体を添加し、更に還元剤を加え、混合および撹拌して保温する。
【0082】
上記したような(貴)金属(合金)粒子を担持させた導電性担体を遠心分離、濾過、洗浄等の方法によって溶液から分離し、洗浄し、乾燥する。乾燥方法は、例えば自然乾燥、蒸発乾固法、ロータリーエバポレーター、噴霧乾燥機、ドラムドライヤーによる乾燥などを用いることができる。乾燥時間は、使用する方法に応じて適宜選択すればよい。場合によっては、乾燥工程を行わずに、焼成工程において乾燥させてもよい。乾燥の後に微粉化して触媒粒子の前駆体を得て、さらに該前駆体を不活性ガス及び酸化性ガスの存在下で焼成する。該触媒粒子の前駆体は、金属塩の焼成やある種の有機酸塩の焼成による方法に比べて、低温度での焼成によって貴金属からなる触媒粒子を形成することができるため、該導電性担体が炭素系材料(カーボン材料)である場合には、カーボンの酸化が進行しないように、アルゴンや窒素、ヘリウム等の不活性(非酸化性)雰囲気下において加熱・焼成する。具体的には、不活性ガス雰囲気下で200〜1100℃、より好ましくは200〜800℃で焼成した後、さらに200〜600℃、より好ましくは200〜400℃に保持する工程を行うことが好ましい。
【0083】
また、上記した方法とは別に、例えば、導電性担体に(貴)金属(合金)粒子を担持させ、該導電性担体を貴金属含有溶液に還元剤を添加した溶液および/または遷移金属含有溶液に沈殿剤を添加した溶液に順次含浸させ、貴金属合金粒子上に更に貴金属や遷移金属を更に担持させる。その後、上記と同様に、遠心分離、濾過、洗浄等の方法によって溶液から分離し、洗浄し、乾燥し、微粉化して触媒粒子の前駆体を得る。この触媒粒子の前駆体を、導電性担体が炭素系材料(カーボン材料)である場合には、カーボンの酸化が進行しないように、アルゴンや窒素等の不活性(非酸化性)雰囲気下において焼成する。焼成は、不活性ガス雰囲気下で200〜1100℃、より好ましくは200〜800℃で焼成した後、さらに200〜600℃、より好ましくは200〜400℃に保持する工程を行うことが好ましい。
【0084】
また、本発明の工程では、逆ミセル溶液を用いて導電性担体上に金属粒子を配接することもできる。逆ミセル溶液を使用すると微細な(貴)金属粒子を導電性担体上に効率的に担持させることができ、燃料電池用電極の貴金属の利用率を向上させることができる。
【0085】
例えば、ミセル内部に貴金属イオン水溶液を含有する逆ミセル溶液(A)に、該貴金属イオンの還元剤を添加し、更に、金属粒子を貴金属合金粒子とする場合には、次いで該溶液にミセル内部に遷移金属イオン水溶液を含有する逆ミセル溶液(B)を混合し、該遷移金属イオンの沈殿剤を添加し、該溶液に導電性担体を分散して該貴金属合金を導電性担体に担持させ、次いで該貴金属合金粒子を構成する貴金属以外の成分を溶出しうる溶液を作用させることによって、貴金属合金粒子とすることができる。また、貴金属として白金以外のイリジウムなどを含ませる場合には、例えば、イリジウムイオンを含む逆ミセル溶液(A)に、イリジウムイオンの還元剤を添加し、これに白金イオンを含む逆ミセル溶液(A)を混合し、白金イオンの還元剤を添加してもよい。同様に、複数の遷移金属イオンを使用する場合には、異なる遷移金属イオンを含む逆ミセル溶液(B)や(B)などとその還元剤と使用すればよい。なお、本発明で使用する「逆ミセル溶液」とは、有機溶媒に界面活性剤分子等の両親媒性物質を混合して形成される該両親媒性物質が集合して形成されるミセルを含有し、かつ該ミセル内に貴金属イオン水溶液および/または遷移金属イオン水溶液を含有する溶液である。有機溶媒相内で疎水性基を外側すなわち有機溶媒相側に向け、親水性基を内側に向けて配向し、疎水性基と親水性基の配向が水性溶媒相の場合と逆であるため、逆ミセル溶液とする。
【0086】
本工程では、貴金属イオン含有溶液が逆ミセル溶液として添加されるが、ミセルのサイズは、使用する溶媒や界面活性剤の種類、添加量によって調整することができ、例えばミセルの直径が20〜100nmの逆ミセル溶液に導電性担体を添加すると、該導電性担体表面にミセルが均等に付着し、該導電性担体を焼成すると、隣接する金属粒子間に10〜50nmの間隔で導電性担体表面に均一に担持させた触媒粒子を得ることができる。
【0087】
逆ミセルの形成に利用可能な有機溶媒としては様々な物質が使用可能であるが、一例を挙げると、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、ヘプタノール、オクタノール、ドデシルアルコール、セチルアルコール、イソオクタン、n−ヘプタン、n−ヘキサン、n−デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等がある。また、逆ミセル溶液中の水滴の大きさを調節する目的で、アルコール等を添加してもよい。該有機溶媒は、1種を単独で使用するほか、2種以上を併用することもできる。更に、逆ミセル溶液(A)にも逆ミセル溶液(B)の調製にも使用することができ、更に貴金属イオンの還元剤や遷移金属イオンの沈殿剤を逆ミセル溶液として供給する場合には、これらの溶液の調製にも使用することができる。この際、いずれかの逆ミセル溶液に使用する有機溶媒と他の逆ミセル溶液に使用する有機溶媒とは、同種のものであっても異種のものであってもよい。
【0088】
逆ミセル溶液を形成する界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ラウリン酸マグネシウム、カプリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ナトリウムフェニルステアレ−ト、アルミニウムジカプリレ−ト、テトライソアミルアンモニウムチオシアネ−ト、n−オクタデシル−トリn−ブチルアンモニウム蟻酸塩、n−アミルトリ−n−ブチルアンモニウムヨウ化物、ナトリウムビス(2−エチルヘキシル)琥珀酸塩、ナトリウムジノニルナフタレンスルホネ−ト、カルシウムセチルサルフェート、ドデシルアミンオレイン酸塩、ドデシルアミンプロピオン酸塩、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンムニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムクロライド、(2−オクチルオキシ−1−オクチルオキシメチル)ポリオキシエチレンエチルエーテル等を挙げることができる。該界面活性剤も、いずれの逆ミセル溶液の調製にも使用することができ、2種以上を併用することもできる。なお、有機溶媒に対する界面活性剤の添加量は、有機溶媒100質量部に対して、10〜300質量である。10質量部を下回ると逆ミセルの形成が困難となり、一方300質量部を超えるとロッド状ミセルが形成され、貴金属平均粒子径を特定の大きさに制御し凝集させないと云う観点で不利である。
【0089】
本発明の方法では貴金属イオンの種類に限定はなく、上記貴金属を使用できる。これらの貴金属イオン濃度は、金属換算で0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜20質量%である。また、貴金属イオンの還元剤も上記と同様の種類のものを使用することができる。同様に、遷移金属イオン、遷移金属の沈殿剤も上記したものを使用することができる。
【0090】
逆ミセル溶液(A)、逆ミセル溶液(B)、還元剤、沈殿剤の添加順序は、逆ミセル(A)に還元剤を添加すると貴金属イオンが貴金属粒子となり、逆ミセル溶液(B)に沈殿剤を添加すると遷移金属イオンが遷移金属粒子となることから、(i)逆ミセル溶液(A)に還元剤を添加し、これに逆ミセル溶液(B)を添加し、次いで沈殿剤を添加する方法のほか、(ii)逆ミセル溶液(A)と逆ミセル溶液(B)との混合溶液に、還元剤を先に添加し、後から沈殿剤を添加する方法、(iii)逆ミセル溶液(A)と逆ミセル溶液(B)との混合溶液に、先に沈殿剤を添加し、後から還元剤を添加する方法、(iv)逆ミセル溶液(B)に、沈殿剤を添加し、次いで逆ミセル溶液(A)を添加し、更に還元剤を添加する方法などがある。この際、導電性担体は、上記(i)〜(iv)の工程を経て得られた溶液に添加すると、遷移金属を併用する場合にはミセル内で両金属粒子が複合化しこの複合粒子が導電性担体表面に付着するが、本発明ではこのような態様に限定されず、それ以前のいずれの工程に添加してもよい。好ましくは、逆ミセル溶液(A)に導電性担体を添加し、混合して均一の溶液とし、これに順次上記溶液等を添加する。逆ミセル溶液(A)に該導電性担体を添加すると、貴金属イオン水溶液を内部に有するミセルが該導電性担体表面に均一に付着し、この状態で還元剤が添加されるため分散性が維持されたまま貴金属粒子を導電性担体表面に担持させることができる。また、逆ミセル溶液(A)に該導電性担体を添加した後、メタノールやエタノールなどのアルコール類を添加してミセルを破壊し、貴金属粒子が導電性担体表面に担持されるのを促進することもできる。
【0091】
逆ミセル溶液(A)および/または逆ミセル溶液(B)に導電性担体を添加合した後には、該溶液を混合・撹拌し、70〜100℃、3〜12時間反応させて貴金属または貴金属合金を導電性担体に担持させることが好ましい。この条件によれば、導電性担体表面への貴金属粒子の担持が確実に行える。
【0092】
以下では、上記(1)の工程で得られたCNT(導電性担体)に、金属粒子としてPtを図1に示すように(高分散に)担持する具体例を挙げて説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。
【0093】
まず、本工程では、上記(1)の工程で得られたCNTを、塩化白金酸(金属粒子含有溶液)、水、エタノールを所定比率で配合した混合溶液中で分散させ、その後脱気処理する。
【0094】
次に、沈殿剤(還元剤)としてアンモニア水をゆっくり滴下し、1時間撹拌する。
【0095】
上記アンモニア水を用いて洗浄と瀘過を行う。その後Heガス中で350℃、3時間焼成することで、CNT上にPt粒子を高分散に担持(配接)することができる。これにより、Pt粒子が担持されたCNT(CNT担持Ptともいう)を得ることができる。この段階で、透過電子顕微鏡(TEM)により観察することで、所望のCNT担持Ptが形成されているか確認するのが望ましい。
【0096】
(3)前記金属粒子が配接された前記導電性担体を多孔性無機材料により包接する工程
前記金属粒子が配接された前記導電性担体を多孔性無機材料により包接する本工程(3)に関しても、特に制限されるものではなく、従来公知の金属粒子を多孔性無機材料により包接する各種製法を適宜利用することができる。
【0097】
上記(2)で得られた金属粒子が配接された前記導電性担体(以下、導電性担体担持金属粒子)を多孔性無機材料により包接する場合、該導電性担体が炭素系材料(CNTなど)の場合には、該表面が疎水性であるため、Si−OH基のような親水性の官能基を有する多孔性無機材料の原料を弾く。そのため、疎水性表面を有する該導電性担体では、予め親水化処理を行うのが好ましい。かかる親水化処理としては、特に制限されるものではなく、たとえば、硝酸処理などが挙げられる。
【0098】
次に、親水化した導電性担体担持金属粒子を、所定温度の分散媒に分散させる。
【0099】
上記分散媒としては、脱水エタノールなどが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではなく、水、親水性溶媒、疎水性溶媒あるいはそれらの混合物のいずれを用いることもできる。また、該温度は特に制限されるものではない。
【0100】
次に、包接前駆体をゆっくり滴下し、所定時間撹拌することで、包接前駆体を親水化した導電性担体担持金属粒子の該金属粒子に選択的に吸着させることができる。これにより、後工程で、金属粒子と多孔性無機材料との相溶性、密着性を高めることができ、該金属粒子上にSiOのような多孔性無機材料を確実に包接(被覆)させることができるものである。
【0101】
上記包接前駆体としては、例えば、3−アミノプロピルエトキシシラン(APTS)などが挙げられる。
【0102】
撹拌時間は、上記包接前駆体を金属粒子に選択的に吸着させることができればよく、特に制限されるものではない。
【0103】
その後、多孔性無機材料の前駆体、水、pH調整液を加え、所定時間撹拌することで、多孔性無機材料の前駆体の加水分解縮合反応を行い、親水化した導電性担体担持金属粒子を多孔性無機材料により包接することができる。
【0104】
多孔性無機材料の前駆体としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(以下、単にTEOSとも略記する。)、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラアセチルオキシシラン、テトラフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(以下、単にAPTSとも略記する。)、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランメチルトリアセチルオキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ペンチル・メチルジメトキシシラン、n−ペンチル・メチルジエトキシシラン、シクロヘキシル・メチルジメトキシシラン、シクロヘキシル・メチルジエトキシシラン、フェニル・メチルジメトキシシラン、フェニル・メチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン、ジメチルジアセチルオキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン等のシラン化合物などを挙げることができるが、これらに制限されるものではない。これらは単独で使用しても、混合物として使用してもよい。
【0105】
さらに、プロトン伝導性を向上させる目的で、シラン化合物として、プロトン解離性の官能基を含有するシラン化合物を含めてもよい。
【0106】
プロトン解離性の官能基としては、スルホン酸誘導体基、ホスホン酸誘導体基、スルホンアミド誘導体基もしくはスルホンイミド誘導体基が挙げられる。こうしたプロトン解離性の官能基を含有するシラン化合物としては、例えば、2−(4−クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、ジエチルホスフェートエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0107】
上記pH調整液としては、特に制限されるものではなく、例えば、HNOなどを挙げることができるが、これらに制限されるものではない。これらは単独で使用しても、混合物として使用してもよい。
【0108】
本発明では、上記多孔性無機材料の前駆体、水、pH調整液を加えた溶液のpHを1〜6、好ましくは2〜4の範囲に調製して行うのが、加水分解縮合反応を好適に行う上で望ましい。
【0109】
ここでの撹拌時間も、所望の加水分解縮合反応を行うことで、導電性担体担持金属粒子を多孔性無機材料により包接することができればよく、特に制限されるものではない。
【0110】
その後、洗浄、分離、乾燥後、焼成を行い、導電性担体担持金属粒子を多孔性無機材料により包接(固定化)する。洗浄方法は、例えば、アルコール洗浄などを用いることができる。分離方法は、例えば、遠心分離などを用いることができる。乾燥方法は、例えば、真空乾燥、自然乾燥、蒸発乾固法、ロータリーエバポレーター、噴霧乾燥機、ドラムドライヤーによる乾燥などを用いることができる。乾燥時間は、使用する方法に応じて適宜選択すればよい。場合によっては、乾燥工程を行わずに、焼成工程において乾燥させてもよい。乾燥の後に、必要に応じて微粉化し、得られた触媒粒子を焼成する。この際にも、導電性担体が炭素系材料(カーボン材料)である場合には、カーボンの酸化が進行しないように、アルゴンや窒素、ヘリウム等の不活性(非酸化性)雰囲気下において加熱・焼成する。具体的には、不活性ガス雰囲気下で200〜1100℃、より好ましくは200〜800℃で焼成する。
【0111】
以下では、上記(2)の工程で得られたCNT担持Ptを、多孔性無機材料としてSiOにより包接(被覆)する例を用いて説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。
【0112】
まず、上記(2)の工程で得られたCNT担持Ptを1N−HNOaqで80℃、3hの処理を行う。これにより、CNTは親水性になる。
【0113】
次に、親水化したCNT担持Ptを脱水エタノール中(55℃)に分散させる。
【0114】
次に、3−アミノプロピルエトキシシラン(APTS)をゆっくり滴下し、30分間撹拌する。これにより、APTSをCNTに選択的に吸着させる(図1b、図12参照のこと)。
【0115】
その後、テトラオルトシリケート(TEOS)、水、1N−HNOaqを加え、1時間撹拌する。
【0116】
その後、アルコール洗浄、遠心分離を行い、真空乾燥後、Arガス中で350℃、3時間焼成することで、図1bに示すような所望の触媒粒子を得ることができる。最終的に得られた触媒粒子を透過電子顕微鏡(TEM)により観察することで、所望の触媒粒子が形成されているか確認するのが望ましい。
【0117】
次に、上記第一調製法を用いた量産に適した具体例につき、以下に簡単に説明する。
【0118】
(1)上記Ni−MgO触媒またはCo−MgO触媒を用いた柱状および/または管状の導電性担体の大量生産工程
以下でも、柱状および/または管状の導電性担体として、カーボンナノチューブ(CNTとも略記する)を例にとり説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。即ち、上記にて言及した通り、他の柱状および/または管状の導電性担体および球状の導電性担体についても同様にして製造することができる。
【0119】
本工程では、まず、Ni−MgO触媒またはCo−MgO触媒をクエン酸法で調製する。
【0120】
次に、700℃で30分間、エチレン(C)分解反応を行いCNTを合成する。
【0121】
後処理として、酸処理で金属(Ni−MgOまたはCo−MgO)を除去した後、200℃で乾燥することで、直径が30nmのCNTsを大量に得ることができる。この段階で、CNTの合成及びNi−MgOまたはCo−MgOの除去に関し、透過電子顕微鏡(TEM)により確認する。かかる透過電子顕微鏡(TEM)による図面を図3a、図3bに示す。なお、図3bは、図3aの一部を拡大したTEM図面である。
【0122】
(2)大量生産された前記導電性担体(CNT)上に金属粒子を配接する工程
以下では、上記(1)の工程で大量に得られたCNTに、金属粒子としてPtを図1a、図1bに示すように高分散に担持する例を用いて説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。
【0123】
まず、本工程では、上記(1)の工程で得られたCNTを、塩化白金酸、水、エタノールを所定比率で配合した混合溶液中で分散させ、その後脱気処理する。
【0124】
アンモニア水をゆっくり滴下し、所定時間撹拌する。
【0125】
アンモニア水を用いて洗浄と瀘過を行う。その後Heガス中で350℃、3時間焼成することで、CNT上に10nm前後のPt微粒子を高分散に担持(固定化)することができる。これにより、Pt粒子が担持されたCNT(CNT担持Ptともいう)を得ることができる。この段階で、透過電子顕微鏡(TEM)により観察することで、所望のCNT担持Ptが形成されているか確認するのが望ましい。かかる透過電子顕微鏡(TEM)による図面を図4a、図4bに示す。
【0126】
(3)前記金属粒子が配接された大量の導電性担体(CNT)を多孔性無機材料により包接する工程
以下では、上記(2)の工程で得られた大量のCNT担持Ptを、多孔性無機材料としてSiOにより包接(被覆)する例を用いて説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。
【0127】
まず、上記(2)の工程で得られた大量のCNT担持Ptを1N−HNOaqで80℃、3hの処理を行う。これにより、CNTは親水性になる。
【0128】
次に、親水化したCNT担持Ptを脱水エタノール中(55℃)に分散させる。
【0129】
次に、3−アミノプロピルエトキシシラン(APTS)をゆっくり滴下し、30分間撹拌する。これにより、APTSをCNTに選択的に吸着させる。
【0130】
その後TEOS、水、1N−HNOaqを加え、1時間撹拌する。
【0131】
その後、アルコール洗浄、遠心分離を行い、真空乾燥後、Arガス中で350℃、3時間焼成することで、図1bに示すような、CNT担持PtのPt粒子と該Pt粒子を担持するCNTをSiOにより包接した所望の触媒粒子を得ることができる。最終的に得られた触媒粒子を透過電子顕微鏡(TEM)により観察することで、所望の触媒粒子が形成されているか確認するのが望ましい。
【0132】
次に、前記第一調製法においては、(1)導電性担体を生成する工程と、(2)前記導電性担体上に金属粒子を配接する工程との間に、さらに(1’)前記導電性担体の表面を親和処理する工程を行うことが望ましいものである。
【0133】
ここで、上記(1)、(2)及び(3)の各工程は、上記で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。従って、以下では、(1’)の工程につき説明する。
【0134】
(1’)前記導電性担体の表面を親和処理する工程
本工程では、上記(1)の工程で得られた前記導電性担体の表面を親和処理するものである。これは、第一調製法において、多孔性無機材料(SiO)の包接には導電性担体(CNT)の表面処理(親和処理)が望ましく、かつ本工程を含む第一調製法による電極材料が金属粒子(Ptなど)の溶出防止能と最も良好な発電性能を両立できるベストモードとなる点で優れている。即ち、導電性担体(CNT)の表面処理(親和処理)により、多孔性無機材料(SiO)と導電性担体(CNT)の接触が極めて良好になり(図10に示すようにSiO前駆体とCNTが化学結合して良好な接触が構築されると考えられる)、溶出を防止しつつ、多孔性無機材料(SiO)層を薄くでき、発電性能が向上する。
【0135】
ここで、導電性担体(CNT)の親和処理としては、導電性担体の表面上に水酸基など、TEOSやAPTSなどと縮重合しうる官能基を導入することができるものであれば特に制限されるものではなく、従来公知の表面処理(表面改質)技術を適宜利用することができる。即ち、導電性担体(CNT)の表面を、後工程で当該導電性担体(CNT)を包接するのに用いる多孔性無機材料(SiO)ないしその前駆体(例えば、TEOS+APTS)に対して親和性を高めることができるものであればよい。例えば、図9に示すように、導電性担体のCNT(便宜的にその一部を平面で表記した)の表面に水酸基(−OH)を導入することでその親和性を高めるような処理が挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。ここで、図9は、親和処理により導電性担体のCNT(便宜的にその一部を平面で表記した)の表面に水酸基(−OH)が導入された様子を表す模式図である。
【0136】
上記親和処理の具体的としては、例えば、導電性担体(CNT)を酸化性強酸で処理する方法が挙げられる。
【0137】
ここで、上記酸化性強酸としては、特に制限されものではなく、例えば、混酸、硝酸などが挙げられる。なかでも処理後の水酸基密度の理由から、混酸が好ましい。また室温で混酸中、超音波をかけながら処理するのが親和性を高めるのに有効である。なお、上記(3)の工程の最初の硝酸を用いた導電性担体(CNT)の親水化処理も、ここでいう親和処理の1種とも言える。
【0138】
なお、本発明の親和処理は、上記に規定したとおりであるので、導電性担体(CNT)中からCoなどの触媒を除去するための酸処理とは異なるものである。
【0139】
以下、上記(1’)の工程を有する第一調製法につき、具体例を挙げて簡単に説明する。図10は、上記(1’)の工程を有する第一調製法の具体例を模式的に表した工程概略図である。
【0140】
(1)Co−MgO触媒を用いた柱状および/または管状の導電性担体生成工程
以下、柱状および/または管状の導電性担体として、カーボンナノチューブ(CNTとも略記する)を例にとり説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。即ち、上記にて言及した通り、他の柱状および/または管状の導電性担体および球状の導電性担体についても同様にして製造することができる。
【0141】
本工程では、まず、Co−MgO触媒をクエン酸法で調製する。
【0142】
次に、700℃で30分間、エチレン(C)分解反応を行いCNTを合成する。
【0143】
後処理として、酸処理で金属(Co−MgO)を除去した後、200℃で乾燥することで、直径が30nmのCNTsを得ることができる。この段階で、CNTの合成及びCo−MgOの除去に関し、透過電子顕微鏡(TEM)により確認する(前述した図3a、図3b参照)。
【0144】
(1’)生成された前記導電性担体(CNT)の表面を親和処理する工程
以下、親和処理として、導電性担体(CNT)の表面を熱混酸(酸化性強酸)で処理する方法を例にとり説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。
【0145】
本工程では、上記(1)の工程で得られたCNTsを、室温混酸中に浸漬し、超音波をかけながら処理する。これにより、図9、10で表すように導電性担体(CNT)の表面に水酸基(OH)を導入することができる。
【0146】
(2)親和処理された前記導電性担体(CNT)上に金属粒子を配接する工程
以下では、上記(1’)の工程で得られた親和処理されたCNTsに、金属粒子としてPtを図1、図10に示すように高分散に担持する例を用いて説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。
【0147】
まず、本工程では、上記(1’)の工程で得られた親和処理されたCNTsを、塩化白金酸、水、エタノールを所定比率で配合した混合溶液中で分散させ、その後脱気処理する。
【0148】
アンモニア水をゆっくり滴下し、所定時間撹拌する。
【0149】
アンモニア水を用いて洗浄と瀘過を行う。その後Heガス中で350℃、3時間焼成することで、CNT上に10nm前後のPt微粒子を高分散に担持(固定化)することができる。これにより、Pt粒子が担持されたCNT(CNT担持Ptともいう)を得ることができる。この段階で、透過電子顕微鏡(TEM)により観察することで、所望のCNT担持Ptが形成されているか確認するのが望ましい(前述の図4a、図4b参照)。
【0150】
(3)前記金属粒子が配接された導電性担体を多孔性無機材料により包接する工程
以下では、上記(2)の工程で得られたCNT担持Ptを、多孔性無機材料としてSiOにより包接(被覆)する例を用いて説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。
【0151】
まず、上記(2)の工程で得られたCNT担持Ptを脱水エタノール中(55℃)に分散させる。
【0152】
次に、3−アミノプロピルエトキシシラン(APTS)をゆっくり滴下し、30分間撹拌する。これにより、APTSをCNTに選択的に吸着させる。
【0153】
その後TEOS、水、1N−HNOaqを加え、1時間撹拌する。
【0154】
その後、アルコール洗浄、遠心分離を行い、真空乾燥後、Arガス中で350℃、3時間焼成することで、図19に示すような、CNT担持PtのPt粒子と該Pt粒子を担持するCNTをSiOにより包接した所望の触媒粒子を得ることができる。また、Arガス中で500℃、3時間焼成することで、図18に示すような、CNT担持PtのPt粒子と該Pt粒子を担持するCNTとをSiOにより包接した所望の触媒粒子を得ることができる。最終的に得られた触媒粒子を透過電子顕微鏡(TEM)により観察することで、所望の触媒粒子が形成されているか確認するのが望ましい。図18及び図19に示す触媒粒子の透過電子顕微鏡(TEM)による図面からわかるように、焼成温度が350℃では、CNT全体をSiOにより包接した触媒粒子が得られるが、焼成温度を500℃に高めると、CNT全体ではなく、CNTに担持したPt粒子周囲をSiOにより包接した触媒粒子が得られるようになる。後述する実施例では、CNT全体をSiOにより包接した触媒粒子の方が、金属粒子(Pt)の溶出を防止しつつ、より良好な発電性能を得ることができた。これは、図18の触媒粒子では、Pt粒子の周囲を包接するSiOが球状包接体(いわゆるだま状)になるため、Pt粒子周囲のSiO球状包接体の厚さが、CNT全体を包接するSiOよりも厚くなっているためと考えられる。したがって、CNTに担持したPt粒子周囲をSiOにより包接した触媒粒子でも、包接させるSiO量をコントロールすることで、より良好な発電性能を得ることが可能となり、更にSiOも低減することができる点で優れている。
【0155】
さらに、上記(1’)の工程を有する第一調製法では、上記(2)〜(3)の工程につき、図11及び図12の調製イメージ図に示す調製法によっても作製することができる。詳しくは、後述する実施例1及び実施例2で説明した通りである。
【0156】
図11の調製イメージ図に示す調製法(後述する実施例1参照のこと)について
(2)親和処理された前記導電性担体(CNT)上に金属粒子を配接する工程
上記(1’)の工程で得られた親和処理したCNT(親和性CNTとする。図11中、CNTと表記した)を超音波処理・攪拌により溶剤(アセトン等)中に分散させる。その溶液に所定量(CNT100重量部に対して100〜100000質量部の範囲)の塩化白金酸水溶液(濃度0.01〜1.0Mの範囲)を添加し、NHで水酸化物とさせた後、所定温度(50〜80℃の範囲)で乾燥してCNTに白金を担持させる(図11中、Pt前駆体/CNTと表記した)。その試料を還元剤溶液(例えば、NaBH水溶液)中に入れて所定温度(室温〜40℃の範囲)で還元した後、再びドライアップを行う。これにより、図11に示すように、CNT上に10nm前後のPt微粒子を高分散に担持(固定化)したCNT(CNT担持Ptともいう。図11中、Pt/CNTと表記した)を得ることができる。この段階で、透過電子顕微鏡(TEM)により観察することで、所望のCNT担持Ptが形成されているか確認することができる(前述の図4a、図4b参照)。
【0157】
(3)前記金属粒子が配接された導電性担体を多孔性無機材料により包接する工程
次に、温浴中で所定温度(40〜60℃の範囲)に保った分散媒(例えば、水/エタノール混合溶液)に上記(2)の工程で得られた試料(CNT担持Pt)を分散させ、多孔性無機材料の前駆体(例えば、ケイ酸エチル(TEOS))を添加して、充分に撹拌しながら所定時間(0.5〜2時間程度)の加水分解・重合反応を行う。これにより、Pt/CNT表面を多孔性無機材料で包接(例えば、シリカ被覆)した触媒前駆体(図11中、SiO/Pt/CNTと表記した)を得ることができる。未反応の多孔性無機材料の前駆体(例えば、TEOS等)を除去するため、試料をろ過して適当な洗浄剤(例えば、アセトン等)で充分に洗浄し、所定温度(40〜80℃の範囲)の恒温槽中で一晩乾燥する。その触媒前駆体を不活性ガス(例えば、アルゴンガス)雰囲気下で所定温度(300〜600℃)で、所定時間(1〜2時間程度)の焼成を行った後、強酸性溶液(王水)に浸して、被覆されなかった白金を除去する。王水処理後に再度、還元ガス(例えば、水素/アルゴンガス)流通下で所定温度(300〜600℃)で、所定時間(1〜2時間程度)の水素還元を行い、本発明の触媒粒子を得ることができる。これにより、CNT担持PtのPt粒子と該Pt粒子を担持するCNTをSiOにより包接した所望の触媒粒子(図11中、coat−Iと表記した)を得ることができる。得られた触媒粒子を透過電子顕微鏡(TEM)により観察することで、所望の触媒粒子が形成されていることを確認することができる(図18参照)
図12の調製イメージ図に示す調製法(後述する実施例1参照のこと)について
(2)親和処理された前記導電性担体(CNT)上に金属粒子を配接する工程及び前記金属粒子が配接された導電性担体を多孔性無機材料により包接する工程
所定温度(室温〜40℃の範囲)で所定濃度(0.01〜1.0Mの範囲)の塩化白金酸水溶液に親和処理済みのCNTを添加し、超音波処理と攪拌を繰り返してよく分散させる。この水溶液に、沈殿剤(還元剤)(例えば、アンモニア水)を添加することで白金の水酸化物をCNT上に生成させた(図12中、Pt水酸化物/CNTと表記した)。そのまま所定時間(0.5〜2時間程度)攪拌した後、未反応の塩化白金酸を取り除くために試料を吸引ろ過して取り出した後、沈殿剤(還元剤)(例えば、アンモニア水溶液)中に再度分散させる。その容器を所定温度(40〜60℃)の温浴中に移して所定時間(0.5〜1時間程度)攪拌した後、その溶液に多孔性無機材料の前駆体(ここでは、アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)等のように、親和処理によりCNTに導入された水酸基との間で反応し得るものを用いる。図10参照のこと)を添加する(図10及び図12のAPTSで被覆されたイメージ図参照のこと)。さらに、所定時間(0.5〜1時間程度)経過後に多孔性無機材料の前駆体(例えば、TEOS等)を加え、所定時間(0.5〜2時間程度)の加水分解・重合反応を行った。これにより、Pt水酸化物/CNT表面を多孔性無機材料で包接(例えば、シリカ被覆)した触媒前駆体(図12中、SiO/Pt水酸化物/CNTと表記した)を得ることができる。その後、遠心分離によって試料を取り出し、所定温度(40〜80℃)の恒温槽中で一晩乾燥させる。その触媒前駆体を不活性ガス(例えば、アルゴンガス)雰囲気下で所定温度(300〜600℃)で、所定時間(1〜3時間程度)の焼成を行った後、図11で説明したと同様の王水処理を行い、再度、還元ガス(例えば、水素/アルゴンガスなど)流通下で所定温度(300〜600℃)で、所定時間(1〜3時間程度)の水素還元を行い、本発明の触媒粒子を得ることができる。これにより、Pt粒子と該Pt粒子を担持するCNTをSiOにより包接した所望の触媒粒子(図12中、coat−IIと表記した)を得ることができる。得られた触媒粒子を透過電子顕微鏡(TEM)により観察することで、所望の触媒粒子が形成されていることを確認することができる(図19参照)。
【0158】
次に、前記第一調製法においては、
(3)前記金属粒子が配接された前記導電性担体を多孔性無機材料により包接する工程の後に、さらに、
(4)前記金属粒子を包接した導電性無機材料を互いに接触させる接触工程と、
(5)互いに接触した導電性無機材料を更に多孔性無機材料により包接する工程と、
を行ってもよい。この場合にも、上記(1’)の工程を行うことがより望ましい。
【0159】
かかる製造方法(第一調製法)によれば、金属粒子だけでなく導電性担体をSiOなどの多孔性無機材料で包接する工程を行うことで、導電性担体(CNT)の接触を維持することができる。また、SiOなどの多孔性無機材料による包接が金属粒子のみならず導電性担体全体を被覆している態様である(図1a参照)。したがって、グリッド周辺(この電極材料から端子までの区間)はSiOなどの多孔性無機材料で包接せずに、通電(接触向上)しながら包接するのが望ましい(図1a参照)。
【0160】
上記(1)〜(3)の各工程(上記(1’)の工程を行う場合を含む)は、上記で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。従って、以下では、(4)及び(5)の工程につき説明する。
【0161】
(4)前記金属粒子を多孔性無機材料により包接した導電性担体を互いに接触させる接触工程
本工程では、上記(3)の工程で得られた複数の触媒粒子のうち、多孔性無機材料で包接されていない導電性担体の部分同士を互いに接触させるものである。これにより触媒粒子間の導電性ネットワーク(3次元ネットワーク)を形成することができるものであり、導電性をより一層向上させることができる。即ち、グリッド周辺(この電極材料から端子までの区間)はSiOなどの多孔性無機材料で包接せずに、通電(接触向上)しながら包接することができる。
【0162】
(5)互いに接触した複数の導電性担体同士を更に多孔性無機材料により包接する工程
本工程では、互いに接触した複数の導電性担体同士を、更に多孔性無機材料により包接するものである。即ち、上記(4)の工程で互いに接触された部分を多孔性無機材料により包接し、固定化することで、確実に触媒粒子間の導電性ネットワーク(3次元ネットワーク)を形成することができるためである。かかる多孔性無機材料による包接の方法は、上記(3)の工程で説明したと同様にして行うことができるため、以下では、具体例を挙げて簡単に説明する。
【0163】
まず、上記(4)の工程で得られた触媒粒子同士が互いに接触した触媒粒子集合体をTEOS、水、1N−HNOaqを加え、1時間撹拌する。
【0164】
その後、アルコール洗浄、遠心分離を行い、真空乾燥後、Arガス中で350℃、3時間焼成する。このように、Pt粒子だけでなくCNT同士をSiOで包接する工程を行うことで、CNT間の接触を維持することができる。また、SiO包接がPt粒子のみならずCNT全体を被覆(包接)してなる触媒粒子の集合体を得ることができる。
【0165】
次に、本発明の燃料電池用電極材料、特に触媒粒子の製造方法の代表的な他の実施形態(第二調製法)としては、
(1)金属(粒子)と触媒成分とを含むナノ粒子の合成工程と、
(2)前記ナノ粒子を包接する多孔性無機材料の球状物を合成する工程と、
(3)前記球状物に包接されたナノ粒子中の触媒成分を使って柱状および/または管状の導電性担体を生成する工程と、
を含むことを特徴とするものである(図2a参照のこと)。
【0166】
かかる製造方法によれば、金属粒子と導電性担体との接触をSiOなどの多孔性無機材料の包接により確実に行うことができ、金属粒子の溶出を防止することができる。また、導電性担体(CNT)の接触を維持することができる。また、多孔性無機材料の球状物からその外部にまで成長して延びている導電性担体部分は、多孔性無機材料により包接されていないため、触媒活性を有する金属粒子から電極集電体までの区間の電子伝導をより確実に確保することができる点で優れている(図2参照)。また、金属粒子から電極集電体までの区間に必要な導電性担体の長さの制御が容易である点でも優れた製法と言えるものである。
【0167】
(1)金属(粒子)と触媒成分とを含むナノ粒子の合成工程
金属(粒子)と触媒成分とを含むナノ粒子の合成工程としては、特に制限されるものではなく、従来公知のナノ粒子の各種合成方法を適宜利用することができるものである。
【0168】
本工程では、例えば、(i)ミセル内部に(貴)金属イオン水溶液を含有する逆ミセル溶液と、ミセル内部に触媒金属イオン水溶液を含有する逆ミセル溶液とを混合し、これに該(貴)金属イオンと該触媒金属イオンの微粒子形成剤(還元剤を含む)を添加して、金属(粒子)を含むナノ粒子と触媒を含むナノ粒子を合成してもよい。あるいは(ii)ミセル内部に(貴)金属イオン水溶液を含有する逆ミセル溶液に該(貴)金属粒子の微粒子形成剤(還元剤を含む)を添加したものと、これとは別にミセル内部に触媒金属イオン水溶液を含有する逆ミセル溶液に、該触媒金属の微粒子形成剤(還元剤を含む)を添加したものを混合して、(貴)金属(粒子)を含むナノ粒子と触媒成分を含むナノ粒子を合成してもよい。なお、本発明で使用する「逆ミセル溶液」とは、有機溶媒に界面活性剤分子等の両親媒性物質を混合して形成される該両親媒性物質が集合して形成されるミセルを含有し、かつ該ミセル内に貴金属イオン水溶液および/または遷移金属イオン水溶液を含有する溶液である。有機溶媒相内で疎水性基を外側すなわち有機溶媒相側に向け、親水性基を内側に向けて配向し、疎水性基と親水性基の配向が水性溶媒相の場合と逆であるため、逆ミセル溶液とする。
【0169】
本発明では、上記(貴)金属イオン含有溶液及び触媒金属イオン含有溶液が逆ミセル溶液として用いられるが、ミセルのサイズは、使用する溶媒や界面活性剤の種類、添加量によって調整することができる。例えば、ミセルの直径が20〜100nmの逆ミセル溶液を用いれば、所望の平均粒子径を有する(貴)金属を含むナノ粒子と触媒金属を含むナノ粒子を合成することができる。
【0170】
逆ミセルの形成に利用可能な有機溶媒としては様々な物質が使用可能であるが、一例を挙げると、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、ヘプタノール、オクタノール、ドデシルアルコール、セチルアルコール、イソオクタン、n−ヘプタン、n−ヘキサン、n−デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等がある。また、逆ミセル溶液中の水滴の大きさを調節する目的で、アルコール等を添加してもよい。該有機溶媒は、1種を単独で使用するほか、2種以上を併用することもできる。更に、逆ミセル溶液(A)にも逆ミセル溶液(B)の調製にも使用することができ、更に貴金属イオンの還元剤や遷移金属イオンの沈殿剤を逆ミセル溶液として供給する場合には、これらの溶液の調製にも使用することができる。この際、いずれかの逆ミセル溶液に使用する有機溶媒と他の逆ミセル溶液に使用する有機溶媒とは、同種のものであっても異種のものであってもよい。
【0171】
逆ミセル溶液を形成する界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ラウリン酸マグネシウム、カプリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ナトリウムフェニルステアレ−ト、アルミニウムジカプリレ−ト、テトライソアミルアンモニウムチオシアネ−ト、n−オクタデシル−トリn−ブチルアンモニウム蟻酸塩、n−アミルトリ−n−ブチルアンモニウムヨウ化物、ナトリウムビス(2−エチルヘキシル)琥珀酸塩、ナトリウムジノニルナフタレンスルホネ−ト、カルシウムセチルサルフェート、ドデシルアミンオレイン酸塩、ドデシルアミンプロピオン酸塩、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンムニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムクロライド、(2−オクチルオキシ−1−オクチルオキシメチル)ポリオキシエチレンエチルエーテル等を挙げることができる。該界面活性剤も、いずれの逆ミセル溶液の調製にも使用することができ、2種以上を併用することもできる。なお、有機溶媒に対する界面活性剤の添加量は、有機溶媒100質量部に対して、10〜300質量である。10質量部を下回ると逆ミセルの形成が困難となり、一方300質量部を超えるとロッド状ミセルが形成され、貴金属平均粒子径を特定の大きさに制御し凝集させないと云う観点で不利である。
【0172】
本発明の方法では貴金属イオンの種類に限定はなく、上記貴金属を使用できる。これらの貴金属イオン濃度は、金属換算で0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜20質量%である。また、貴金属イオンの還元剤も上記と同様の種類のものを使用することができる。同様に、遷移金属イオン、遷移金属の沈殿剤も上記したものを使用することができる。
【0173】
逆ミセル溶液(A)、逆ミセル溶液(B)、還元剤、沈殿剤の添加順序は、逆ミセル(A)に還元剤を添加すると(貴)金属イオンが(貴)金属粒子となり、逆ミセル溶液(B)に沈殿剤を添加すると触媒金属イオンが触媒(金属)粒子となることから、(i)逆ミセル溶液(A)に還元剤を添加し、これに逆ミセル溶液(B)を添加し、次いで沈殿剤を添加する方法のほか、(ii)逆ミセル溶液(A)と逆ミセル溶液(B)との混合溶液に、還元剤を先に添加し、後から沈殿剤を添加する方法、(iii)逆ミセル溶液(A)と逆ミセル溶液(B)との混合溶液に、先に沈殿剤を添加し、後から還元剤を添加する方法、(iv)逆ミセル溶液(B)に、沈殿剤を添加し、次いで逆ミセル溶液(A)を添加し、更に還元剤を添加する方法などがある。この際、導電性担体は、上記(i)〜(iv)の工程を経て得られた溶液には、ミセル内で(貴)金属と触媒金属の両金属粒子が複合化し、その結果、(貴)金属と触媒金属とが複合化したナノ粒子を合成することができる。
【0174】
逆ミセル溶液(A)および/または逆ミセル溶液(B)を混合・撹拌し、70〜100℃、3〜12時間反応させて、ナノ粒子を合成させることが好ましい。この条件によれば、ナノ粒子を合成が確実に行える。
【0175】
上記微粒子形成剤としては、所望の微粒子形成機能を有効に発現し得るものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、CTACなどが挙げられる。上記微粒子形成剤の使用量は、特に制限されるものではなく、所望の微粒子形成機能を有効に発現し得る量を適宜決定すればよい。
【0176】
上記金属(粒子)の還元剤としては、所望の金属還元作用を有効に発現し得るものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ヘキサノールなどが挙げられる。上記還元剤の使用量は、特に制限されるものではなく、所望の金属還元作用を有効に発現し得る量を適宜決定すればよい。
【0177】
上記触媒成分の還元剤としては、所望の触媒金属成分の還元作用を有効に発現し得るものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ヒドラジン、トリエチルアミンなどが挙げられる。上記触媒還元剤の使用量は、特に制限されるものではなく、所望の触媒還元作用を有効に発現し得る量を適宜決定すればよい。
【0178】
以下では、金属粒子としてPtを、触媒金属化合物としてニッケル(Ni)化合物を用いた例を説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。
【0179】
本工程では、図5aに示すように、例えば、(i)HPtClaq/Ni(NOaq系MEとして、HPtClaq及びNi(NOaqの混合物に、さらに下記(a)〜(c)に例示するような微粒子形成剤を添加することで、所望のPt粒子を含むNi化合物のナノ粒子を合成することができる。
【0180】
ここで、上記微粒子形成剤(還元剤を含む)としては、例えば、(a)CTAC+ヘキサノール(Ptの還元剤)、ヒドラジン(Niの還元剤))(極小)(NP−1)、(b)CTAC+ヘキサノール(Ptの還元剤)、ヒドラジン(Niの還元剤))(上記NP−1の10倍モル量)(NP−4)、(c)CTAC+ヘキサノール(Ptの還元剤)、トリエチルアミン(Niの還元剤))(NP−3)等が挙げられる。
【0181】
あるいは、(ii)HPtClaq系MEと、Ni(NOaq系MEとを別々に調製し、両MEを合せることで、Pt粒子を含むNi化合物のナノ粒子を合成することができる。
【0182】
ここで、上記HPtClaq系MEとしては、例えば、HPtClaqに、下記(d)〜(e)に例示するような微粒子形成剤を添加して調製することができる。
【0183】
上記微粒子形成剤としては、例えば、(d)アンモニア(NP−2)、(e)CTAC+ヘキサノール(NP−5)等が挙げられる。
【0184】
上記Ni(NOaq系MEとしては、例えば、Ni(NOaqに、下記(f)〜(g)に例示するような微粒子形成剤を添加して調製することができる。
【0185】
上記微粒子形成剤としては、例えば、(f)ヒドラジン(NP−2)、(g)トリエチルアミン(NP−5)等が挙げられる。
【0186】
なお、HPtClaq系MEと、Ni(NOaq系MEとを別々に調製し、両MEを合せる際には、両MEのNP−2同士、あるいはNP−5同士を合せて、Pt粒子を含むNi化合物のナノ粒子を合成すればよい。
【0187】
(2)前記ナノ粒子を包接する多孔性無機材料の球状物を合成する工程
本工程では、前記ナノ粒子に、多孔性無機材料の前駆体、該前駆体の加水分解の為の塩基触媒、水を加えて、加水分解縮合重合することで、前記ナノ粒子を包接する多孔性無機材料の球状物を合成することができる。
【0188】
ここで、上記多孔性無機材料の前駆体としては、既に説明したようなシラン化合物などを挙げることができる(詳しくは、既に例示した通りであるので省略する)。上記多孔性無機材料の前駆体の添加量は、特に制限されるものではなく、所望の多孔性無機材料を形成し得る量を用いればよい。
【0189】
該前駆体の加水分解の為の塩基触媒としては、ナノ粒子の合成手順などによっても異なるため、それぞれに適した塩基触媒を用いるのが望ましく、具体的には、アンモニア、トリエチルアミンなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。上記塩基触媒の使用量は、特に制限されるものではなく、所望の触媒作用を有効に発現し得る量を用いればよい。
【0190】
以下では、多孔性無機材料としてSiOを用いた例を説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。
【0191】
本工程では、図5aに示すように、上記(1)の工程で得られた前記ナノ粒子含有溶液に、多孔性無機材料の前駆体としてTEOSおよびTEOSの加水分解のための塩基触媒(上記NP−1、3、4)アンモニア、(上記NP−2、5)トリエチルアミンを添加して、加水分解縮合反応を行うことで、球状シリカ被覆Pt−Ni粒子を合成する。得られた球状シリカ被覆Pt−Ni粒子(NP−1〜NP−5)の空気雰囲気下で焼成した後の透過電子顕微鏡(TEM)による図面を図5b〜図5fに示す。
【0192】
(3)前記球状物に包接されたナノ粒子中の触媒成分を使って柱状および/または管状の導電性担体を生成する工程
前記球状物に包接されたナノ粒子中の触媒成分を使って柱状および/または管状の導電性担体を生成する工程としては、特に制限されるものではなく、上記した第一調製法の(1)に示すのと同様の方法により、柱状および/または管状の導電性担体を生成することができるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0193】
以下では、導電性担体としてCNTを生成した例を用いて説明するが、本発明がこれらに何ら制限されるものでない。
【0194】
上記(2)で得られた球状シリカ被覆Pt−Ni粒子中のNi(触媒)を使って、700℃で30分間、エチレン(C)分解反応を行いCNTを合成する。これにより、図2aに示すように、球状シリカ被覆Pt−Ni粒子(球状シリカは符号17、球状シリカ17で被覆されたPt−Ni粒子は符号15を参照のこと)中のPt−Ni粒子15上にCNTが形成されていき、球状シリカ17の外部にまでCNT13が生成されてなる触媒粒子11が形成される。
【0195】
得られた触媒粒子の様子は、透過電子顕微鏡(TEM)により確認することができる。得られた触媒粒子のNP−2サンプルの透過電子顕微鏡(TEM)による図面を図6a、図6bに示す。図中の矢印の先が、球状シリカ被覆Pt−Ni粒(NP−2)を示し、該球状シリカ被覆Pt−Ni粒の中の黒点がPt−Ni粒に相当するものであり、この黒点のNi触媒を起点にして、カーボンが生成し、成長していることがわかる。特に図6bの2箇所の矢印内の黒点(Ni触媒粒子)部分からカーボンナノチューブが生成している様子が鮮明に見て取ることができる。
【0196】
次に、本発明の燃料電池用電極材料、特に触媒粒子の製造方法の代表的な他の実施形態(第三調製法)としては、
(1)柱状の多孔性無機材料の合成工程と、
(2)柱状の多孔性無機材料内に金属粒子を導入する工程と、
を含むことを特徴とするものである。かかる製造方法によれば、柱状の中空多孔性無機材料(例えば、SiO)の中空内部に充填されたPt等の金属(粒子の連なり)が柱状および/または管状の導電性担体を構成するとともに、金属粒子(触媒)を構成し、この金属粒子を多孔性無機材料としての柱状中空多孔性無機材料(例えば、SiO)により包接した形態とすることができるものであるほか、製造工程を少なくできる点でも優れている。以下、各工程ごとに説明する。
【0197】
(1)柱状の多孔性無機材料の合成工程
当該柱状の多孔性無機材料の合成工程は、特に制限はなく、従来公知の方法を用いて製造することができる。
【0198】
以下では、柱状の導電性担体として六角柱状中空SiOチューブの合成を例にとり説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。
【0199】
本工程では、硝酸コバルト(Co(NO)、ヒドラジン(NH−NH)、TEOS、トリエタノールアミン(TEA)、アンモニア(NH)をそれぞれ適量加えて、反応させ、空気雰囲気下で所定温度で焼成することで、六角柱状中空SiOチューブを合成することができる。得られた六角柱状中空SiOチューブの透過電子顕微鏡(TEM)による図面を図7a、図7bに示す。上記製造条件を適宜制御することで、六角柱状中空SiOチューブの中空チューブの内径やチューブ長さなどを任意に調整することができる。
【0200】
(2)柱状の多孔性無機材料内に金属粒子を導入する工程
当該柱状の多孔性無機材料内に金属粒子を導入する工程は、特に制限はなく、従来公知の方法を用いて製造することができる。
【0201】
以下では、金属粒子としてPtを用いて、Pt後含浸法により、所望の触媒粒子を形成する方法を例にとり説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。
【0202】
まず、上記(1)の工程で合成された六角柱状中空SiOチューブ含有溶液をアルコール(例えば、エタノール)処理することにより、界面活性剤を除去する(アルコール洗浄処理)。
【0203】
次に、六角柱状中空SiOチューブを脱気乾燥する。
【0204】
脱気乾燥後の六角柱状中空SiOチューブをHPtCl溶液中に含浸し、真空脱気して六角柱状中空SiOチューブの中空内部にHPtClを導入させる。
【0205】
次に、不活性ガス(例えば、アルゴンガス)下、500℃で5時間、焼成することで、六角柱状中空SiOチューブの中空内部にPt粒子を担持させる。これにより、六角柱状中空SiOチューブの中空内部に導入されたPt(金属)粒子の連なりが柱状の導電性担体を構成するとともに、金属粒子(触媒)をも構成し、この金属粒子を多孔性無機材料としての角柱状中空SiOにより包接した形態になっている。また、Pt(金属)粒子は、六角柱状中空SiOチューブの中空内部全体に充填されていてもよいし、中空内壁に担持され、内壁膜を形成していてもよい。いずれの場合であっても、燃料電池として運転中は、Pt触媒への燃料ガスの供給、排出は、多孔性無機材料である六角柱状中空SiOの細孔を通じて可能である。ただし、Pt(金属)粒子の溶出防止の観点からは、前者の構成が望ましいといえる。得られた六角柱状中空SiOチューブの中空内部にPtが担持(包接)されてなる触媒粒子の透過電子顕微鏡(TEM)による図面を図7c、図7dに示す。
【0206】
上記(2)の工程では、上記Pt後含浸法に限られるものではなく、例えば、Pt後含浸法の他の手法として、上記アルコール洗浄処理を省略し、界面活性剤を残したまま、金属粒子原料の1種であるHPtClなどを含浸し、真空脱気し、焼成してPtを担持させ、所望の触媒粒子を形成してもよい。
【0207】
また、上記Pt後含浸法以外にも、Ptイオン前導入法を用いることができる。該Ptイオン前導入法としては、上記(1)の六角柱状中空SiOチューブ作成時に、上記した六角柱状中空SiOチューブ形成原料であるCo(NO、ヒドラジン(NH−NH)、TEOS、TEA及びNHに加えて、金属粒子原料の1種であるHPtClなどを添加しておき、六角柱状中空SiOチューブの形成と共に、Ptがヒドラジン(NH−NH)で還元され、析出される。この方法では、Ptが六角柱状中空SiOチューブの中空内部のほか、チューブ外表面にも析出される。そのため、こうしたチューブ外表面のPt粒子を除去し、燃料電池用の電極触媒として有効に機能するものだけにするのがより望ましい。チューブ外表面のPt粒子は、例えば、王水処理により除去可能である。
【0208】
更に、Pt粒子前導入法を用いることもできる。Pt粒子前導入法としては、上記(1)の六角柱状中空SiOチューブ作成時に、上記した六角柱状中空SiOチューブ形成原料であるCo(NO、ヒドラジン(NH−NH)、TEOS、TEA及びNHに加えて、金属粒子原料の1種であるHPtClなどを添加しておき、Pt、Co粒子を先に形成し、これらの粒子を起点に細長いSiO粒子を形成することができる。この方法では、SiO被覆されたPt、Co粒子を生成することができる(六角柱生成せず)。この場合には、上記した本発明の第二調製法と同様にして、当該SiO被覆されたPt、Co粒子のCo粒子を起点にしてカーボンナノチューブを生成させればよい。
【0209】
また、上記Pt粒子前導入法として、上記(1)の六角柱状中空SiOチューブ作成時に、上記した六角柱状中空SiOチューブ形成原料であるCo(NO、ヒドラジン(NH−NH)、TEOS、TEA及びNHに加えて、金属粒子原料の1種であるHPtClなどと、CTACを添加しておき、Pt、Co粒子を先に形成し、これらの粒子を包接するようにして六角柱状中空SiOチューブを形成させることもできる。
【0210】
なお、上記Pt粒子前導入法では、空気雰囲気下で焼成する際に、六角柱が崩壊することもある。そのため、上記と同様に、必要があれば、柱状および/または管状の導電性担体として、上記した本発明の第二調製法と同様にして、当該SiO被覆されたPt、Co粒子のCo粒子を起点にしてカーボンナノチューブを生成させてもよい。これらにより、得られた触媒粒子全体では、所望の特性を奏するものを確保することができる。特に燃料電池用の電極触媒であるPt粒子が多孔性無機材料であるSiOにより包接されているため、Pt粒子の溶出を防止することができる。また、生成したカーボンナノチューブないし、Pt粒子が充填された六角柱状中空SiOチューブなど長軸を持つ形態を持たせることで、触媒から電極までの区間の電子伝導を確保することができる。
【0211】
次に、本発明の燃料電池は、本発明の燃料電池用電極材料により形成される燃料電池用電極を電解質膜の表面及び/又は裏面に備えることを特徴とするものであえる。
【0212】
以下、図面を用いて本発明で用いられる燃料電池について説明する。図8は、本発明の燃料電池の基本構成(単セル構成)を模式的に表した断面概略図である。本発明はこれに限定されない。
【0213】
図8において燃料電池(単セル)20は、電解質膜21の両側(表面及び裏面)に、アノード側触媒層22aとカソード側触媒層22bとがそれぞれ対向して配置されている。本発明では、これらアノード側触媒層22aとカソード側触媒層22bの少なくとも一方に、本発明の燃料電池用電極材料により形成される燃料電池用電極が用いられていることを特徴とするものである。好ましくはカソード側触媒層22bに、より好ましくはアノード側触媒層22aとカソード側触媒層22bの両方に、本発明の燃料電池用電極材料により形成される燃料電池用電極が用いられているのが望ましい。
【0214】
さらにアノード側触媒層22aとカソード側触媒層22bの両側(外側)に、アノード側ガス拡散層(以下、ガス拡散層をGDLともいう)23aおよびカソード側GDL23bとがそれぞれ対向して配置され、電極−膜接合体(以下、MEAともいう)24を構成している。この各GDL23a、23bの両側(外側)にアノード及びカソードパレータ25a、25bが配置されている。該セパレータ25a、25bの内部にはガス流路(溝)26a、26bが設けられている。このガス流路(溝)26a、26bを通じて、水素含有ガス(例えば、Hガスなど)及び酸素含有ガス(例えば、Airなど)がアノード側及びカソード側のGDL23a、23bを通して触媒層22a、22bにそれぞれ供給される。さらに、ガスが外部へ漏洩することを防止するために、電解質膜21の外周領域とセパレータ25a、25bとの間にガスケット27がそれぞれ配置されている。
【0215】
以下、本発明の燃料電池につき、構成要件ごとに説明する。
【0216】
(A)電解質膜21
本発明の燃料電池に用いることのできる電解質膜21は、高いプロトン伝導性を有していればよい。高いプロトン伝導性を有する膜としては、−SOH基などのイオン交換基を有するモノマーの重合体または共重合体;またはイオン交換基を有するモノマーと他のモノマーとの重合体などの公知の材料からなる膜を用いることができる。かかる電解質膜11の材質としては、具体的には、ポリマー骨格の全部又は一部がフッ素化されたフッ素系樹脂であってイオン交換基を備えた電解質、または、ポリマー骨格にフッ素を含まない芳香族系炭化水素樹脂であってイオン交換基を備えた電解質、などが挙げられる。
【0217】
前記イオン交換基としては、特に制限されないが、−SOH、−COOH、−PO(OH)、−POH(OH)、−SONHSO−、−Ph(OH)(Phはフェニル基を表す)等の陽イオン交換基、−NH、−NHR、−NRR’、−NRR’R’’、−NH等(R、R’、R’’は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を表す)等の陰イオン交換基などが挙げられる。
【0218】
前記フッ素系樹脂であってイオン交換基を備えた電解質としては、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。
【0219】
前記芳香族系炭化水素樹脂であってイオン交換基を備えた電解質としては、具体的には、ポリサルホンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸系ポリマー、架橋ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルサルホンスルホン酸系ポリマー等が好適な一例として挙げられる。
【0220】
電解質膜21の材質は、高いイオン交換能を有し、化学的耐久性・力学的耐久性、などに優れることから、前記フッ素系ポリマーであってイオン交換基を備えた電解質を用いるのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)などがより好ましく利用できる。
【0221】
電解質膜21の膜厚は、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定することができるが、5〜300μmが好ましく、より好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜150μmである。電解質膜の膜厚が5μm以上であると製膜時の強度や燃料電池作動時の耐久性の点から好ましく、300μm以下であると燃料電池作動時の出力特性の点から好ましい。
【0222】
なお、本発明では、燃料電池のアノード及びカソードの両電極間に介在される電解質成分を含有してなる構成部材を、電解質膜と称したが、決してその名称に拘泥されるものではなく、燃料電池に用いられる使用目的からみて、例えば、電解質層や電解質などと称される場合であっても、本発明でいう電解質膜に含まれる場合があることはいうまでもない。他の構成要件についても同様であり、その名称に拘泥されるものではなく、使用目的に照らしてその同一性を判断すればよい。
【0223】
(B)触媒層22
本発明の燃料電池に用いることのできるアノード側触媒層22aとカソード側触媒層22bは、少なくとも一方に、本発明の燃料電池用電極材料により形成される燃料電池用電極が用いられていることを特徴とするものである。好ましくはカソード側触媒層22bに、より好ましくはアノード側触媒層22aとカソード側触媒層22bの両方に、本発明の燃料電池用電極材料により形成される燃料電池用電極が用いられているのが望ましい。
【0224】
これら燃料電池用電極の形成に用いられる本発明の燃料電池用電極材料に関しては、既に説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0225】
本発明の燃料電池用電極材料を用いて形成される燃料電池用電極(触媒層)の厚さは、特に限定されないが、0.1〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜20μmである。触媒層の厚さが0.1μm以上であると所望する発電量が得られる点で好ましく、100μm以下であると高出力を維持できる点で好ましい。
【0226】
また、アノード側触媒層22aとカソード側触媒層22bのうち、いずれか一方にのみ本発明の燃料電池用電極材料を用いて形成された燃料電池用電極を用い、もう一方には、従来公知の触媒層を用いることもできる。こうした場合の従来公知の触媒層としては、主として、導電性担体に金属粒子が担持されてなる電極触媒と、プロトン導電性を有する電解質(バインダないしアイオノマとも称する)とで構成されている。これらの構成部材に関しては、既に説明したとおりであるので、ここでの説明は省略する。また、これら従来公知の触媒層の厚さに関しても、特に限定されるものではなく、本発明の燃料電池用電極材料を用いて形成される燃料電池用電極(触媒層)の厚さと同様の範囲とすることができる。
【0227】
(C)ガス拡散層(GDL)23
ガス拡散層(単にGDLともいう)23a、23bは、MEA24の構成部材に含めてもよいし、MEA24以外の燃料電池セル20の構成部材としてもよい。GDL23a、23bとしては、特に限定されないが、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料を基材とする多孔質基材などが挙げられる。また、GDL23a、23bでも触媒層22a、22bと同様に撥水性を高めてフラッディング現象を防ぐために、公知の手段を用いて、前記GDL23a、23bの撥水処理を行ったり、前記GDL23a、23b上に炭素粒子集合体からなる層を形成してもよい。
【0228】
本発明のMEAの構成を有する固体高分子型燃料電池において、触媒層22、GDL23および電解質膜21の厚さは、燃料ガスの拡散性などを向上させるには薄い方が望ましいが、薄すぎると十分な電極出力が得られない。従って、所望の特性を有するMEA24、更には固体高分子型燃料電池が得られるように適宜決定すればよい。
【0229】
(D)セパレータ25
アノード及びカソードセパレータ25a、25bとしては、カーボンペーパー、カーボンクロス、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、特に制限されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。また、前記セパレータ25a、25bは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するために所望の形状に加工されたガス流路(溝)26a、26bが形成されているのが望ましく、従来公知の技術を適宜利用することができる。セパレータ25a、25bの厚さや大きさ、ガス流路溝26a、26bの形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
【0230】
(E)ガスケット27
上記ガスケット27は、気体、特に酸素や水素ガスに対して不透過であればよいが、一般的には、ガス不透過材料からなるOリングなどの単一の不透過部により構成されていればよい。さらに、必要に応じて、電解質膜21や酸素極及び燃料極触媒層22a、22bのエッジとの接着を目的とする接着部を設けてなる、接着剤付きのガスシールテープ等のような複合的な構成としてもよい。Oリングやガスシールテープの不透過部を構成する材料は、設置後に所定の圧力がかかった状態で、酸素や水素ガスに対して不透過性を示すものであれば特に制限されない。
【0231】
こうした不透過部を構成する材料のうち、Oリングを構成する材料としては、例えば、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0232】
一方、ガスシールテープ等の不透過部を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などが挙げられる。また、ガスシールテープ等の接着部を構成する材料としては、電解質膜21や酸素極及び燃料極触媒層22a、22bと、ガスケット27を密接に接着できるものであれば特に制限されないが、ポリオレフィン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー等のホットメルト系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル、ポリオレフィン等のオレフィン系接着剤などが使用できる。
【0233】
上記ガスケット27の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、電解質膜21上に、あるいは触媒層22のエッジを被覆しながら電解質膜21上に、上記接着剤を、5〜30μmの厚みになるように塗布した後、上記したようなガス不透過材料を10〜200μmの厚みになるように塗布し、これを25〜150℃で、10秒〜10分間加熱することによって硬化させる方法が使用できる。または、予め、ガス不透過材料をシート状に成形した後に、この不透過膜に接着剤を塗布して、ガスケット27を形成した後、これを電解質膜21上に、あるいはガスケット27の一部を被覆しながら電解質膜21上に、貼り合わせてもよい。この際、不透過部の厚みは、特に制限されないが、15〜40μmが好ましい。また、接着部の厚みは、特に制限されないが、10〜25μmが好ましい。
【0234】
上記ガスケット27については、市販のものを購入して用いてもよい。ここでいう市販のものには、購入者側の仕様(寸法、形状、材料、特性など)に応じてメーカーが製造したような発注品ないし特注品等も含まれるものとする。
【0235】
本発明のMEA24の構成を有する燃料電池において、触媒層22、GDL23、および電解質膜21の厚さは、燃料ガスの拡散性などを向上させるには薄い方が望ましいが、薄すぎると十分な電極出力が得られない。従って、所望の特性を有するMEA(燃料電池)が得られるように適宜決定すればよい。
【0236】
また、本発明の燃料電池は、上記の電極触媒層22を内側、GDL23を外側とし、電解質膜21を用い、該電解質膜21を両側から触媒層22で挟んで、適当にホットプレスすることによりMEA24を作製することができる。
【0237】
かかるホットプレス条件としては、適当な温度、圧力を設定するのが望ましい。具体的には、130〜200℃、好ましくは140〜160℃に加温し、1MPa〜5MPa、好ましくは2MPa〜4MPaで1〜10分間、好ましくは3〜7分間、ホットプレスするのが望ましい。ホットプレス温度が130℃以上であれば(膜の軟化が見られ、接合が容易である。またホットプレス温度が200℃以下であれば、膜の分解が防げる。また、ホットプレス圧が1MPa以上であれば、接合が容易である。またホットプレス圧が5MPa以下であれば、膜の穴あきなどの不具合が防止できる。更にホットプレス時間が1分間以上であれば、接合が容易である。またホットプレス時間が10分間以下であれば、膜の穴あきなどの不具合が防止できる。また、ホットプレスの際の雰囲気は、MEAに影響を及ぼさない雰囲気で行うのが望ましく、窒素中などの雰囲気で行うのが望ましい。
【0238】
また、本発明の燃料電池の製造方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の製造技術を用いて組み立てることができる。
【実施例】
【0239】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。なお、既に本発明の電極材料、特に触媒粒子の製造方法の代表的な実施形態である第一調製法及び第二調製法の説明において、具体的に実施例を挙げて本発明を説明している。そのため、ここでは(1’)導電性担体の表面を親和処理する工程を含む第一調整法による電極材料が金属粒子(Pt)の溶出防止能と最も良好な発電性能を両立できるベストモードとなっていることから、かかる第一調整法につき、その製造方法及び得られた電極材料を用いた電極の性能評価結果を説明する。
【0240】
実施例1
(1)Co−MgO触媒を用いた柱状および/または管状の導電性担体を生成する工程
まず、Co−MgO触媒をクエン酸法で調製した。次に、700℃で30分間、エチレン(C)分解反応を行いCNTを合成した。後処理として、塩酸による酸処理で金属(Co−MgO)を除去した後、200℃で乾燥することで、直径が30nmのCNTsを得た。この段階で、CNTの合成及びCo−MgOの除去に関し、透過電子顕微鏡(TEM)により確認した(前述した図3a、図3b参照)。
【0241】
(1’)生成された前記導電性担体(CNT)の表面を親和処理する工程
上記(1)の工程で得られたCNTsを、55℃に加熱された熱混酸中に浸漬し、2時間処理した(煮た)。これにより、導電性担体(CNT)の表面に水酸基あるいはカルボキシル基を導入した。
【0242】
(2)親和処理された前記導電性担体(CNT)上に金属粒子を配接する工程
以下の(2)〜(3)の工程での調製の簡単なイメージを図11に示した。
【0243】
上記(1’)の工程で得られた親和処理したCNT(親和性CNTとする。図11中、CNTと表記した)を超音波処理・攪拌によりアセトン中に分散させた。その溶液に所定量(CNT100質量部に対して6000質量部)の塩化白金酸水溶液(濃度0.1M)を添加し、80℃で乾燥してCNTに塩化白金酸を担持させた(図11中、Pt前駆体/CNTと表記した)。その試料をNaBH水溶液中に入れて室温で還元した後、再びドライアップを行った。これにより、図11に示すように、CNT上に10nm前後のPt微粒子を高分散に担持(固定化)したCNT(CNT担持Ptともいう。図11中、Pt/CNTと表記した)を得た。この段階で、透過電子顕微鏡(TEM)により観察することで、所望のCNT担持Ptが形成されているか確認した(前述の図4a、図4b参照)。
【0244】
(3)前記金属粒子が配接された導電性担体(CNT)を多孔性無機材料により包接する工程
次に、温浴中で60℃に保った水/エタノール混合溶液(水:エタノール=1:1(混合体積比))に上記(2)の工程で得られた試料(CNT担持Pt)を分散させ、CNT100重量部に対して300重量部のケイ酸エチル(TEOS)を添加して、1時間の加水分解・重合反応を行った。これにより、Pt/CNT表面をシリカ被覆した触媒前駆体(図11中、SiO/Pt/CNTと表記した)を得た。未反応のTEOSを除去するため、試料をろ過してアセトンで充分に洗浄し、60℃の恒温槽中で一晩乾燥した。その触媒前駆体をアルゴン雰囲気下で500℃、2時間の焼成を行った後、王水に浸して、被覆されなかった白金を除去した。王水処理後に再度、水素/アルゴン流通下で500℃、2時間の水素還元を行い触媒とした。これにより、CNT担持PtのPt粒子と該Pt粒子を担持するCNTをSiOにより包接した所望の触媒粒子(図11中、coat−Iと表記した)を得た。得られた触媒粒子を透過電子顕微鏡(TEM)により観察することで、所望の触媒粒子が形成されていることを確認した(図18参照)。また、得られた触媒粒子につき、組成を蛍光X線および熱重量分析を用いて、Pt粒子の平均粒径を透過型電子顕微鏡を用いてそれぞれ測定した。得られた結果を下記表1に示す。また、SiOの包接(被覆)層の厚さを透過型電子顕微鏡を用いて測定した結果、概ね10〜20nm程度であった。
【0245】
実施例2
(1)Co−MgO触媒を用いた柱状および/または管状の導電性担体を生成する工程及び(1’)生成された前記導電性担体(CNT)の表面を親和処理する工程
実施例1の(1)及び(1’)の工程と同様にして、親和処理されたCNT(図12中、単にCNTと表記した)を得た。
【0246】
(2)親和処理された前記導電性担体(CNT)上に金属粒子を配接する工程及び前記金属粒子が配接された導電性担体を多孔性無機材料により包接する工程
以下の(2)〜(3)の工程での調製の簡単なイメージを図12に示した。
【0247】
親和性CNTを室温での超音波処理・攪拌により水中に分散させた。その溶液に所定量(CNT100質量部に対して6000質量部)の塩化白金酸水溶液(濃度0.1M)を添加し、1時間程度よく撹拌した.この溶液にアンモニア水を添加することで白金の水酸化物をCNT上に生成させた(図12中、Pt水酸化物/CNTと表記した)。そのまま2時間攪拌した後、未反応の塩化白金酸を取り除くために試料を吸引ろ過して取り出した後、アンモニア水溶液中に再度分散させた。その容器を60℃の温浴中に移して30分間攪拌した後、その溶液にCNT100質量部に対して100重量部のアミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)を添加した(図12のAPTSで被覆されたイメージ図参照のこと)。さらに、30分後にCNT100質量部に対して450重量部のTEOSを加え、激しく撹拌しながら1時間の加水分解・重合反応を行った。これにより、Pt水酸化物/CNT表面をシリカ被覆した触媒前駆体(図12中、SiO/Pt水酸化物/CNTと表記した)を得た。その後、遠心分離によって試料を取り出し、60℃の恒温槽中で一晩乾燥させた。その触媒前駆体をアルゴン雰囲気下で350℃、3時時間の焼成を行った後、実施例1と同様の王水処理を行い、再度、水素/アルゴン流通下で350℃、3時間の水素還元を行って触媒とした。これにより、Pt粒子と該Pt粒子を担持するCNTをSiOにより包接した所望の触媒粒子(図12中、coat−IIと表記した)を得た。得られた触媒粒子を透過電子顕微鏡(TEM)により観察することで、所望の触媒粒子が形成されているか確認した(図19参照)。また、得られた触媒粒子につき、組成を蛍光X線分析および熱重量分析を用いて、Pt粒子の平均粒径を透過型電子顕微鏡を用いてそれぞれ測定した。得られた結果を下記表1に示す。また、SiOの包接(被覆)層の厚さを透過型電子顕微鏡を用いて測定した結果、概ね2〜5nm程度であった。
【0248】
比較例1
下記表1に示す組成及びPt粒子の平均粒径を有する、市販の触媒粒子(TKK株式会社製;商品名TEC10E10A;粒状のカーボンブラック担体(平均粒径100nm)にPt粒子を担持させたもの)を用いた。
【0249】
実施例3
以下では、導電性担体としてケッチェンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル製ケッチェンブラックEC,BET表面積=800m/g)を用い、ケッチェンブラックに金属粒子としてPtを担持した具体例を挙げて説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。
【0250】
まず、本工程では、ケッチェンブラックを、塩化白金酸(金属粒子含有溶液)、水、エタノールを所定比率で配合した混合溶液中で分散させ、その後脱気処理した。
【0251】
次に、沈殿剤(還元剤)としてアンモニア水をゆっくり滴下し、1時間撹拌した。
【0252】
上記アンモニア水を用いて洗浄と瀘過を行った。その後Heガス中で350℃、3時間焼成することで、ケッチェンブラック上にPt粒子を高分散に担持(配接)することができた。これにより、Pt粒子が担持されたケッチェンブラック(ケッチェンブラック担持Ptともいう)を得ることができた。この段階で、透過電子顕微鏡(TEM)により観察することで、所望のケッチェンブラック担持Ptが形成されているか確認するのが望ましい。
【0253】
次いで、上記工程で得られたケッチェンブラック担持Ptを、多孔性無機材料としてSiOにより包接(被覆)した例を用いて説明するが、本発明がこれらに制限されるものでない。
【0254】
まず、上記工程で得られたケッチェンブラック担持Ptを1N−HNOaqで80℃、3時間の処理を行った。これにより、カーボンブラックは親水性になる。
【0255】
次に、親水化したケッチェンブラック担持Ptを脱水エタノール中(55℃)に分散させた。
【0256】
次に、3−アミノプロピルエトキシシラン(APTS)をゆっくり滴下し、30分間撹拌した。これにより、APTSをカーボンブラックに選択的に吸着させた。
【0257】
その後、テトラオルトシリケート(TEOS)、水、1N−HNOaqを加え、1時間撹拌した。
【0258】
その後、アルコール洗浄、遠心分離を行い、真空乾燥後、Arガス中で350℃、3時間焼成することで、所望の触媒粒子を得た。最終的に得られた触媒粒子を透過電子顕微鏡(TEM)により観察することで、所望の触媒粒子が形成されているか確認するのが望ましい。
【0259】
実施例1と同様にして、Pt溶出耐性の試験を行った。
【0260】
実施例4
カーボンブラックとして、ケッチェンブラック(ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製ケッチェンブラックEC600JD,BET表面積=1270m/g)を用いた以外、実施例3に準じた。
【0261】
実施例5
カーボンブラックとして、ブラックパール(Cabot社製ブラックパール2000,BET表面積=2000m/g)を用いた以外、実施例3に準じた。
【0262】
実施例6
カーボンブラックとして、バルカン(Cabot社製VulcanXC−72,BET表面積=280m/g)を用いた以外、実施例3に準じた。
【0263】
実施例7
カーボンブラックとして、アセチレンブラック(デンカ製アセチレンブラック,BET表面積=80m/g)を用いた以外、実施例3に準じた。
【0264】
実施例8
カーボンブラックとして、アセチレンブラック(デンカ製アセチレンブラック,BET表面積=250m/g)を用いた以外、実施例3に準じた。
【0265】
実施例9
カーボンブラックとして、アセチレンブラック(デンカ製アセチレンブラック,BET表面積=850m/g)を用いた以外、実施例3に準じた。
【0266】
実施例10
カーボンブラックに変えて、黒鉛化処理したケッチェンブラック(BET表面積=150m/g)を用いた以外、実施例3に準じた。
【0267】
黒鉛化処理したケッチェンブラックのX線回折から算出される〔002〕面の平均格子面間隔は、d002は、d002=3.45〜3.55であった。
【0268】
実施例11
球状の導電性担体であるカーボンブラックに変えて、管状ないし柱状の導電性担体であるカーボンナノホーン(BET表面積=300m/g)を用いた以外、実施例3に準じた。カーボンナノホーンのX線回折から算出される〔002〕面の平均格子面間隔は、d002は、d002=3.40〜3.53であった。
【0269】
【表1】

【0270】
<膜電極接合体(MEA)の作製>
アノード及びカソードの電極は、触媒ペーストをカーボンペーパーに塗布し、乾燥することで得た。その触媒付きカーボンペーパーでナフィオン膜を挟み込み,ホットプレスによって接合させて、膜電極接合体(MEA)を作製した。その手順は次の通りである。
【0271】
1) 所定量(0.04g)の触媒(カソード触媒には、実施例1〜11及び比較例1で得られた触媒粒子をそれぞれ用いた。またアノード触媒には、いずれも比較例1で得られた触媒粒子を用いた。)を秤量した。
【0272】
2) 酢酸ブチル:5wt%Nafion溶液:イオン交換水=5:10:1(質量比)の混合溶液3.2mlに秤量した触媒を混錬し、触媒ペーストを調製した。
【0273】
3) カーボンペーパーに、0.008g/cmとなるように触媒ペーストを塗布して60℃で一晩乾燥させて触媒付きカーボンペーパーを作製した。
【0274】
4) その触媒付きカーボンペーパーでナフィオン膜(ナフィオン117)を挟み込み、130℃、10MPaで3分間ホットプレスすることで接合し、所望の膜電極接合体(MEA)を作製した。
【0275】
<固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)単セルの作製>
PEFC単セルには、エレクトロケム社製 PEFCシングルセルを用いた。PEFCシングルセルの構造およびガス流路図を図13および図14にそれぞれ示す。図13に示すように、先に調製したMEAをこのPEFCシングルセルに装着して発電試験を行った。電極面積は5cmでガス流路のフローパターンは、図14に示すような、サーペンタインフローである。
【0276】
<発電実験方法>
(PEFCセルを用いたI−V曲線の測定)
実施例1〜2で調製したシリカ包接(被覆)Pt触媒(coat−I、coat−II)及び比較の為に比較例1の触媒をそれぞれカソード触媒に用いた場合の発電特性と、耐久性を調べるため、上記作製法で得られたPEFC単セルでI−V曲線を測定した。その測定に用いた装置図を図15に示す。また、I−V測定時の条件は次の通りである。
【0277】
[I−V測定時の条件]
・アノードガス:水素 0.2MPa(ゲージ) 25ml/min
・カソードガス:空気 0.2MPa(ゲージ) 28ml/min
・セル温度:80℃
・バブリング温度:アノード80℃/カソード室温
[サイクル試験条件]
・アノードガス:水素 0.2MPa(ゲージ) 25ml/min
・カソードガス:窒素 0.2MPa(ゲージ) 28ml/min
・電位走査範囲:0.05V〜1.2V(vs RHE)
・電位走査速度:CV測定時 50mV/s
サイクル時 500mV/s
実施例1〜2の電池の発電実験により得られた発電性能の結果を上記表1にまとめた。
【0278】
また、得られたI−V測定結果のうち、実施例1で調製したシリカ包接(被覆)Pt触媒(coat−Iをカソード触媒に用いた場合の発電特性を図20に、実施例2で調製したシリカ包接(被覆)Pt触媒(coat−Iをカソード触媒に用いた場合の発電特性を図21に示す。
【0279】
図20、21より、発電サイクル数が増加しても500〜5000サイクルでのI−V特性に大きな変化は認められず、安定した発電性能及び耐久性を有することが確認できた。なかでも、焼成温度350℃で調製したシリカ包接(被覆)Pt触媒を用いた実施例2の方が、高電流密度化できることがわかった。
【0280】
<Pt溶出耐性評価試験>
(三電極セルによるCV測定)
実施例1〜11で調製したシリカ包接(被覆)Pt触媒(coat−I、coat−II)の電極活性を明らかにするために、三電極セルでCV(サイクリックボルタモグラフ)測定を行った。測定装置には北斗電工社製ポテンシオスタットHZ5000Aを用いた。装置全体の概略図を図16に示す。
【0281】
三電極セルによるCV測定用電極の作製方法は、次の通りである。メタノール中に分散させた未焼成シリカ被覆Pt触媒(実施例1〜11の(3)の工程で焼成する前の触媒前駆体)及び比較の為に比較例1の触媒粒子を、研磨・洗浄したグラッシーカーボン上に滴下し333Kで乾燥させた。その後、5wt%ナフィオン溶液とメタノールの混合溶液を滴下し、乾燥させたものを作用電極とした。電解質溶液として0.5M−HSO溶液、対極にPtメッシュ、参照極としてAg/AgCl電極を用いた。電解(質)溶液中の溶存酸素を除去するために、Nでバブリングを40min行い、その後電位の走査を50回繰り返すことで電極触媒を安定化させ、本測定を行った。測定は333K、走査速度は50mVs−1、走査範囲は0.05V〜1.2VvsRHEで行った。
【0282】
詳しくは、0.05V〜1.2Vの範囲で50mVs−1でサイクリックボルタンメトリーを行い、水素吸着波から触媒の電気化学的表面積であるECAを算出した。次に図17に示すように、0.6V保持を5秒、1.0V保持を5秒を1サイクルとする、矩形波の電位サイクルをかけていった。400サイクルごとにサイクリックボルタンメトリーを行い、ECAを算出した。この矩形波サイクルを計2000サイクル行い、ECAの変化、電解液への触媒種の溶出量をみた。なお、「ECA」とは、サイクリックボルタンメトリー法により電位の幅0.4〜0.05Vの間で測定される、触媒である白金の電気化学的表面積、即ち単位白金質量あたりの水素の吸着した白金の比表面積(m/g)を算出した値である。
【0283】
[試験条件]
・電解液:0.5M HSO水溶液
・印加波形:矩形波(図17参照)
・周期:10s/サイクル(図17参照)
・電位:0.6−1.0Vvs.RHE
・測定温度:30℃
Ptは電位が約0.6V以上から0.85V近辺ではPtがイオン化されやすく、Ptイオンとして溶出しやすいことから、この0.6Vから0.85Vを含むようにして試験条件、特に電位を決定した。
【0284】
上記実験結果から、実施例1〜11及び比較例1の2000(=2k)サイクル経過後のECA低下率を上記表1にまとめた。実施例1〜11では、上記表1に記載のとおり、ECA低下率は1%未満(<1%)であった。
【0285】
また、上記実験結果からECA変化の様子を図22に示す。また上記実験結果のうち実施例1の未焼成シリカ被覆Pt触媒を用いて作製した作用電極のCV変化の様子を図23に示す。同様に実施例2の未焼成シリカ被覆Pt触媒を用いて作製した作用電極のCV変化の様子を図24に示す。同様に比較例1の触媒粒子を用いて作製した作用電極のCV変化の様子を図25に示す。
【0286】
図22から、実施例1の未焼成シリカ被覆Pt触媒を用いて作製した作用電極のECA変化は殆ど見られず、高いECAを維持したことが確認できた。反面、比較例1の触媒粒子を用いて作製した作用電極では、電位サイクルによるECA変化が顕著で、初期は実施例1よりも高いECAを有するものの、サイクル数の増加に伴って急激にECAが低下し、500サイクルを過ぎるとあたりで実施例1を下回り、その後も大きく低下していくことが確認できた。図22に示したように2000サイクル後のECA低下率は、実施例1では1%未満であるのに対し、比較例1では実に61%も低下してしまうことがわかった。
【0287】
図23〜25からは、実施例1、2の触媒粒子では、電位サイクル印加によるCV形状の変化、即ち、水素吸脱着波の縮小は殆ど見られなかった。このことからも、金属粒子(Pt)の溶出が殆ど起こっていないことが確認できた。一方、図25から、比較例1の触媒粒子では、図中に矢印で示しているように、サイクル数増加と共に電位サイクル印加によるCV形状の変化、即ち、水素吸脱着波の縮小がみられた。ECAが低下しており、これらから、Ptの溶出が起こっていることが示唆された。
【0288】
また、図23、24から、実施例1、2の触媒粒子ではCNT表面全体がSiOで包接(被覆)されているにもかかわらず、高いECA値を示すことも確認できた。
【0289】
以上のことから、CNT表面を包接(被覆)するSiOの機能として、(1)プロトン導電パス機能(電解質の浸込、またはSiO表面の酸点に起因)、(2)酸素供給機能(多孔質構造に起因)、(3)生成水排出機能(多孔質構造・親水性に起因)、(4)可溶性金属種(Pt種)の溶出抑制機能(Pt粒子包接・被覆構造)を有すること示唆された。これは、包接(被覆)するSiOの多孔度(細孔径、細孔分布)や表面性状(酸点数、表面官能基種)、包接(被覆)するSiOの厚さなど様々な因子が機能発現に寄与していると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0290】
【図1a】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の一実施形態(第1実施形態とする)となる代表的な構成を示す模式図である。
【図1b】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の一実施形態(第1実施形態とする)となる代表的な他の構成を示す模式図である。
【図1c】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の一実施形態(第1実施形態とする)となる代表的な構成を示す模式図である。
【図1d】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の一実施形態(第1実施形態とする)となる代表的な他の構成を示す模式図である。
【図2a】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の他の一実施形態となる構成を示す模式図である。
【図2b】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の他の一実施形態となる構成を示す模式図である。
【図3a】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の製造方法の一実施形態(第一調製法)により得られた、柱状および/または管状の導電性担体のCNTの透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図3b】図3aの一部を拡大したTEM図面である。
【図4a】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の製造方法の一実施形態(第一調製法)により得られた、Pt粒子が担持されたCNT(CNT担持Ptともいう)の透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図4b】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の製造方法の一実施形態(第一調製法)により得られた、Pt粒子が担持されたCNT(CNT担持Ptともいう)の透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図5a】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の製造方法の他の実施形態(第二調製法)の具体的に表した工程概略図である。
【図5b】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の製造方法の他の実施形態(第二調製法)により得られた球状シリカ被覆Pt−Ni粒子(NP−1)の空気雰囲気下で焼成した後の透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図5c】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の製造方法の他の実施形態(第二調製法)により得られた球状シリカ被覆Pt−Ni粒子(NP−2)の空気雰囲気下で焼成した後の透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図5d】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の製造方法の他の実施形態(第二調製法)により得られた球状シリカ被覆Pt−Ni粒子(NP−3)の空気雰囲気下で焼成した後の透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図5e】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の製造方法の他の実施形態(第二調製法)により得られた球状シリカ被覆Pt−Ni粒子(NP−4)の空気雰囲気下で焼成した後の透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図5f】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の製造方法の他の実施形態(第二調製法)により得られた球状シリカ被覆Pt−Ni粒子(NP−5)の空気雰囲気下で焼成した後の透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図6a】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の製造方法の他の実施形態(第二調製法)により得られた、球状シリカの外部にまでCNTが生成されてなる触媒粒子(NP−2)の透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図6b】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の製造方法の他の実施形態(第二調製法)により得られた、球状シリカの外部にまでCNTが生成されてなる触媒粒子(NP−2)の透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図7a】六角柱状中空SiOチューブの透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図7b】六角柱状中空SiOチューブの透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図7c】六角柱状中空SiOチューブの中空内部にPtが担持(包接)されてなる触媒粒子の透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図7d】六角柱状中空SiOチューブの中空内部にPtが担持(包接)されてなる触媒粒子の透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図8】本発明の燃料電池の基本構成(単セル構成)を模式的に表した断面概略図である。
【図9】親和処理により導電性担体のCNT(便宜的にその一部を平面で表記した)の表面に水酸基(−OH)が導入された様子を表す模式図である。
【図10】(1’)導電性担体(CNT)の表面を親和処理(熱混酸(酸化性強酸)により表面処理)する工程を有する第一調製法の具体例を模式的に表した工程概略図である。
【図11】本発明の実施例1の触媒粒子の調製の簡単なイメージの工程表および工程図を表した図面である。
【図12】本発明の実施例2の触媒粒子の調製の簡単なイメージの工程表および工程図を表した図面である。
【図13】実施例で用いたPEFCシングルセルの構造を模式的に表した展開図面である。
【図14】実施例で用いたPEFCシングルセルのガス流路を表した平面図である。
【図15】PEFCセルを用いたI−V曲線の測定に用いた装置図である。
【図16】三電極セルによるCV測定に用いた装置図(北斗電工社製ポテンシオスタットHZ5000A)の装置全体の概略図である。
【図17】実施例で用いた電気化学セルによる電位サイクル試験で印加した電位波形サイクル(ポテンシャルプロファイル)を表す概略図である。
【図18】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の製造方法の一実施形態(第一調製法)において、CNTの親和処理を行い、500℃で焼成温度して得られた、CNT担持PtのPt粒子と該Pt粒子を担持するCNTをSiOにより包接した触媒粒子の透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図19】本発明の燃料電池用電極材料の触媒粒子の製造方法の一実施形態(第一調製法)において、CNTの親和処理を行い、350℃で焼成温度して得られた、CNT担持PtのPt粒子と該Pt粒子を担持するCNTをSiOにより包接した触媒粒子の透過電子顕微鏡(TEM)による図面を示す。
【図20】実施例1で調製したシリカ包接(被覆)Pt触媒(coat−Iをカソード触媒に用いた場合のI−V特性を表した図面である。
【図21】実施例2で調製したシリカ包接(被覆)Pt触媒(coat−Iをカソード触媒に用いた場合のI−V特性を表した図面である。
【図22】実施例1及び比較例1の触媒粒子を用いて作成した試料電極のECA変化の様子を表したグラフである。
【図23】実施例1の触媒粒子を用いて作成した試料電極のCV(サイクリックボルタモグラフ)変化の様子を表したグラフである。
【図24】実施例2の触媒粒子を用いて作成した試料電極のCV変化の様子を表したグラフである。
【図25】比較例1の触媒粒子を用いて作成した試料電極のCV変化の様子を表したグラフである。
【符号の説明】
【0291】
11 触媒粒子、
13 球状または柱状および/または管状の導電性担体、
15 金属粒子、
17 多孔性無機材料、
20 燃料電池セル、
21 電解質膜、
22 燃料電池電極触媒層、
22a アノード触媒層、
22b カソード触媒層、
23 ガス拡散層、
23a アノードガス拡散層、
23b カソードガス拡散層、
24 MEA、
25a アノードセパレータ、
25b カソードセパレータ、
26a アノード側ガス流路(溝)、
26b カソード側ガス流路(溝)、
27 ガスケット、
29 集電板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性担体と、前記導電性担体上に配接された金属粒子および/または前記導電性担体に接触された金属粒子とを多孔性無機材料により包接することにより形成された触媒粒子を有することを特徴とする電極材料。
【請求項2】
前記金属粒子が、Pt、Rh、Pd、AuおよびIrのうち1つ以上の成分を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の電極材料。
【請求項3】
前記多孔性無機材料が、シリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)およびチタニア(TiO)のうち1つ以上の成分を含んでなることを特徴とする請求項1または2に記載の電極材料。
【請求項4】
前記金属粒子と該金属粒子を包接する前記多孔性無機材料の組み合わせが、PtとSiO、PdとSiOまたはチタニア−シリカ複合酸化物、RhとSiOまたはZrO、AuとSiOのいずれかの組み合わせであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電極材料。
【請求項5】
前記多孔性無機材料の平均細孔径が、1〜100nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電極材料。
【請求項6】
前記導電性担体が、カーボンブラック、高温(黒鉛化)処理したカーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンフィブリル構造体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電極材料。
【請求項7】
前記導電性担体が、BET比表面積が、50〜2000m/gのアセチレンブラック、バルカン、ケッチェンブラック、ブラックパールであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電極材料。
【請求項8】
前記高温(黒鉛化)処理したカーボンブラックが、X線回折から算出される〔002〕面の平均格子面間隔d002が0.343〜0.358nmかつBET比表面積が100〜300m/gであることを特徴とする請求項6または7に記載の電極材料。
【請求項9】
導電性担体を生成する工程と、
前記導電性担体上に金属粒子を配接する工程と、
前記金属粒子が配接された前記導電性担体を多孔性無機材料により包接する工程と、
を含むことを特徴とする電極材料の製造方法。
【請求項10】
前記導電性担体を生成する工程と、前記導電性担体上に金属粒子を配接する工程との間に、さらに前記導電性担体の表面を親和処理する工程を行うことを特徴とする請求項9に記載の電極材料の製造方法。
【請求項11】
前記金属粒子が配接された前記導電性担体を多孔性無機材料により包接する工程の後に、さらに、前記金属粒子を包接した導電性無機材料を互いに接触させる接触工程と、互いに接触した導電性無機材料を更に多孔性無機材料により包接する工程と、を行うことを特徴とする請求項9または10に記載の電極材料の製造方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図5f】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−4541(P2008−4541A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138371(P2007−138371)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】