電極製造装置、電極製造方法、プログラム及びコンピュータ記憶媒体
【課題】電極を製造するに際し、帯状の基材の表面に活物質層を適切に且つ効率よく形成する。
【解決手段】電極製造装置は、帯状の金属箔Mを巻き出す巻出ロール10と、金属箔Mの両面に活物質合剤を塗工する塗工部11と、金属箔M上の活物質合剤を乾燥させて活物質層を形成する乾燥部12と、金属箔Mを巻き取る巻取ロール13とを有している。乾燥部12は、金属箔Mの長手方向に並べて配置され、赤外線を発光する複数のLED30を有する。乾燥部12は、複数の領域Ta、Tb、Tcに分割されている。一の領域Ta、Tb、TcにおけるLED30のピーク発光波長は、当該一の領域Ta、Tb、Tcでの活物質合剤中の水の膜厚に対して、活物質合剤が沸騰しない範囲の赤外線の波長であって、水の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定される。
【解決手段】電極製造装置は、帯状の金属箔Mを巻き出す巻出ロール10と、金属箔Mの両面に活物質合剤を塗工する塗工部11と、金属箔M上の活物質合剤を乾燥させて活物質層を形成する乾燥部12と、金属箔Mを巻き取る巻取ロール13とを有している。乾燥部12は、金属箔Mの長手方向に並べて配置され、赤外線を発光する複数のLED30を有する。乾燥部12は、複数の領域Ta、Tb、Tcに分割されている。一の領域Ta、Tb、TcにおけるLED30のピーク発光波長は、当該一の領域Ta、Tb、Tcでの活物質合剤中の水の膜厚に対して、活物質合剤が沸騰しない範囲の赤外線の波長であって、水の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の基材の両面に活物質層を形成して電極を製造する電極製造装置、当該電極製造装置を用いた電極製造方法、プログラム及びコンピュータ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能な特性を活かして、リチウムイオンキャパシタ(LIC:Lithium Ion Capacitor)、電気二重層キャパシタ(EDLC:Electric Double Layer Capacitor)及びリチウムイオン電池(LIB:Lithium Ion Battery)などの電気化学素子の需要が急速に拡大している。
【0003】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が比較的大きいことから、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータなどの分野で利用されている。また、電気二重層キャパシタは急速充放電が可能なので、パーソナルコンピュータ等のメモリーバックアップ小型電源として利用されている。さらに電気二重層キャパシタは電気自動車用の大型電源としての応用が期待されている。また、リチウムイオン電池の利点と電気二重層キャパシタの利点とを組み合わせたリチウムイオンキャパシタは、エネルギー密度、出力密度ともに高いことから注目を集めている。
【0004】
このような電気化学素子の電極は、例えば基材としての集電体である金属箔の表面に活物質や溶媒を含む活物質合剤を塗工した後、当該活物質合剤を乾燥し活物質層を形成して製造される。かかる電極の製造には、例えば巻出ロールと巻取ロールとの間に塗工装置と乾燥機を配置した電極製造装置が用いられる。塗工装置は、活物質合剤を塗工するための塗工口が形成された塗工ヘッドを有している。また乾燥機は、所定間隔で配置された複数のヒータを有している。そして、巻出ロールと巻取ロールの間で帯状の金属箔を略鉛直上方に搬送しながら、塗工装置と乾燥機によって、金属箔の表面に活物質合剤の塗工と乾燥がそれぞれ行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−186782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、金属箔の表面に塗工された活物質合剤を乾燥させる際、急激な乾燥を行うと、活物質合剤の内部で溶媒が沸騰し、対流や気泡が発生する場合がある。かかる場合、金属箔上の活物質層の表面に凹凸が形成され、活物質層が適切に形成されない。また、金属箔と活物質層との境目で剥離が生じるおそれもある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された乾燥機には、複数のヒータが所定間隔で配置されているのみであり、上述した急激な乾燥を回避するための対策は考慮されていない。このため、金属箔上の表面に活物質層を適切に形成することはできなかった。
【0008】
一方、上記ヒータを多数配置して、十分な乾燥時間を確保し、徐々に活物質合剤を乾燥させることも考えられる。しかしながら、かかる場合、乾燥機の長さが長くなり、効率よく活物質合剤を乾燥させることができない。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、電極を製造するに際し、帯状の基材の表面に活物質層を適切に且つ効率よく形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明は、帯状の基材の両面に活物質層を形成して電極を製造する電極製造装置であって、基材を巻き出す巻出部と、前記巻出部で巻き出された基材を巻き取る巻取部と、前記巻出部と前記巻取部との間に設けられ、活物質と溶媒を混合した活物質合剤を基材の両面に塗工する塗工部と、前記塗工部と前記巻取部との間に設けられ、前記塗工部で塗工された前記活物質合剤を乾燥させて活物質層を形成する乾燥部と、を有し、前記乾燥部は、基材の長手方向に並べて配置され、赤外線を発光する複数のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を有し、前記乾燥部は、発光強度が最大となるLEDの発光波長が異なる複数の領域に分割され、一の前記領域における前記LEDの発光波長は、当該一の領域での基材上の前記溶媒の膜厚に対して、前記活物質合剤が沸騰しない範囲の赤外線の波長であって、前記溶媒の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定されることを特徴としている。なお、本発明において活物質合剤が沸騰しないとは、当該活物質合剤中の溶媒が沸騰しないことをいう。
【0011】
本発明によれば、乾燥部が複数の領域に分割され、一の領域におけるLEDの発光波長は活物質合剤が沸騰しない範囲の波長に設定されるので、従来のように基材上の活物質層の表面に凹凸が形成されることがなく、円滑な表面を有する活物質層を均一な膜厚で形成することができる。また、基材と活物質層との境目で剥離が生じることも無い。しかも、一の領域におけるLEDの発光波長は溶媒の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定されるので、活物質合剤を効率よく加熱して乾燥させることができる。そして、このようなLEDの発光波長の設定が各領域毎に行われるので、活物質合剤の乾燥時間を従来よりも短縮することができ、乾燥部の長さも短くすることができる。以上のように本発明によれば、基材の表面に活物質層を適切に且つ効率よく形成することができる。
【0012】
前記溶媒は水であってもよい。
【0013】
前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、前記中流領域には、3μmより大きく6μm未満の発光波長のLEDが配置されていてもよい。
【0014】
また前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、前記中流領域には、前記上流領域のLEDと前記下流領域のLEDが混合して配置されていてもよい。
【0015】
前記乾燥部は、前記複数のLEDと基材との間に空気を供給する給気機構を有していてもよい。
【0016】
前記巻出部と前記巻取部は、基材の長手方向が水平方向であって、且つ基材の短手方向が鉛直方向となる向きで基材を搬送するように配置されていてもよい。
【0017】
前記電極は、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオン電池に用いられる電極であってもよい。
【0018】
別な観点による本発明は、巻出部と巻取部との間で帯状の基材を搬送しながら、当該基材の両面に活物質層を形成して電極を製造する電極製造方法であって、塗工部において、活物質と溶媒を混合した活物質合剤を基材の両面に塗工する塗工工程と、その後、乾燥部において、前記塗工工程で塗工された前記活物質合剤を乾燥させて活物質層を形成する乾燥工程と、を有し、前記乾燥部は、基材の長手方向に並べて配置され、赤外線を発光する複数のLEDを有し、前記乾燥部は、発光強度が最大となるLEDの発光波長が異なる複数の領域に分割され、一の前記領域における前記LEDの発光波長は、当該一の領域での基材上の前記溶媒の膜厚に対して、前記活物質合剤が沸騰しない範囲の赤外線の波長であって、前記溶媒の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定されることを特徴としている。
【0019】
前記溶媒は水であってもよい。
【0020】
前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、前記中流領域には、3μmより大きく6μm未満の発光波長のLEDが配置されていてもよい。
【0021】
また前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、前記中流領域には、前記上流領域のLEDと前記下流領域のLEDが混合して配置されていてもよい。
【0022】
前記乾燥部は、前記複数のLEDと基材との間に空気を供給する給気機構を有し、前記乾燥工程において、前記複数のLEDからの赤外線による輻射加熱と、前記給気機構から供給される空気による対流加熱とによって、前記活物質合剤を乾燥させてもよい。
【0023】
前記塗工工程と前記乾燥工程は、基材の長手方向が水平方向であって、且つ基材の短手方向が鉛直方向となる向きで搬送中の基材に対して行われてもよい。
【0024】
前記電極は、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオン電池に用いられる電極であってもよい。
【0025】
また別な観点による本発明によれば、前記電極製造方法を電極製造装置によって実行させるために、当該電極製造装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラムが提供される。
【0026】
さらに別な観点による本発明によれば、前記プログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、電極を製造するに際し、帯状の基材の表面に活物質層を適切に且つ効率よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態にかかる電極製造装置の構成の概略を示す略側面図である。
【図2】本実施の形態にかかる電極製造装置の構成の概略を示す平面図である。
【図3】電極製造装置で製造される電極の側面図である。
【図4】電極製造装置で製造される電極の平面図である。
【図5】塗工ヘッドの構成の概略を示す斜視図である。
【図6】乾燥部の構成の概略を示す側面図である。
【図7】乾燥部の構成の概略を示す平面図である。
【図8】LEDのピーク発光波長を設定する工程を示したフローチャートである。
【図9】LEDが発光する赤外線の波長と、水の赤外線の吸収率との第1の相関を示すグラフである。
【図10】LEDが発光する赤外線の波長と、LEDの発光強度との第2の相関を示すグラフである。
【図11】活物質合剤中の水の膜厚と、活物質合剤の沸騰が開始する際のLEDの発光強度との第3の相関を示すグラフである。
【図12】他の実施の形態にかかる塗工部の構成の概略を示す平面図である。
【図13】他の実施の形態にかかる電極製造装置の構成の概略を示す略平面図である。
【図14】他の実施の形態にかかる電極製造装置の構成の概略を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる電極製造装置1の構成の概略を示す略側面図である。図2は、電極製造装置1の構成の概略を示す平面図である。なお、本実施の形態の電極製造装置1では、リチウムイオンキャパシタの電極を製造する。
【0030】
電極製造装置1では、図3及び図4に示すように帯状の基材としての金属箔Mの両面に活物質層Fが形成された電極Eが製造される。金属箔Mの両面の活物質層Fは、対向して形成される。また、活物質層Fは、金属箔Mの短手方向(図3中のZ方向)の中央部に形成され、且つ金属箔Mの長手方向(図3及び図4中のY方向)に複数形成される。
【0031】
金属箔Mは、例えば多孔質の集電体である。電極Eとして正極を製造する際には、例えば金属箔Mとしてアルミニウム箔が用いられる。一方、負極を製造する際には、例えば金属箔Mとして銅箔が用いられる。
【0032】
また、活物質層Fを形成するため、後述するように金属箔Mの表面にスラリー状の活物質合剤が塗工される。正極を製造する際の正極活物質合剤は、例えば活物質としての活性炭と、結着剤としてのアクリル系バインダと、分散剤としてのカルボキシメチルセルロースと、導電助材としてのアセチレンブラック等の導電性炭素粉末とを混合し、これに溶媒として水を添加、混練して生成される。一方、負極を製造する際の負極極活物質合剤は、例えばリチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質としての非晶質炭素と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンと、導電助材としてのアセチレンブラック等の導電性炭素材とを混合し、これに溶媒として水を添加、混練して生成される。
【0033】
正極と負極とでは、上述したように材料は異なるが、金属箔M及び活物質層Fの幅や厚み等は大差がない。このため、電極製造装置1は、リチウムイオンキャパシタの正極も負極も製造することができる。以下、これら正極と負極を電極Eと称して説明する。
【0034】
電極製造装置1は、図1及び図2に示すように、金属箔Mを巻き出す巻出部としての巻出ロール10と、金属箔Mの両面に活物質合剤を塗工する塗工部11と、金属箔M上の活物質合剤を乾燥させて活物質層Fを形成する乾燥部12と、金属箔Mを巻き取る巻取部としての巻取ロール13とを有している。巻出ロール10、塗工部11、乾燥部12、巻取ロール13は、金属箔Mの搬送方向(図1及び図2中のY方向)に上流側からこの順で配置されている。なお、巻出ロール10と巻取ロール13との間には駆動機構(図示せず)が設けられており、この駆動機構によって巻出ロール10から巻き出された金属箔Mが搬送され巻取ロール13に巻き取られるようになっている。
【0035】
巻出ロール10は、その軸方向が鉛直方向(図1中のZ方向)となる向きに配置されている。巻出ロール10には未処理の金属箔Mが巻回されており、巻出ロール10は鉛直軸を中心に回転可能に構成されている。そして、金属箔Mは、その長手方向に引っ張られるのにつられて、巻出ロール10から巻き出されるようになっている。
【0036】
巻取ロール13も、その軸方向が鉛直方向となる向きに配置されている。巻取リール13は、鉛直軸を中心に回転可能に構成されている。そして、活物質層Fが形成された金属箔Mは、巻取ロール13に巻き取られるようになっている。
【0037】
これら巻出ロール10と巻取ロール13は同じ高さに配置されている。そして、巻出ロール10と巻取ロール13は、金属箔Mの長手方向が水平方向(図1及び図2中のY方向)であって、且つ金属箔Mの短手方向が鉛直方向(図1中のZ方向)となる向きで金属箔Mを搬送するように配置されている。
【0038】
塗工部11は、金属箔Mの表面に活物質合剤を塗工する塗工ヘッド20を有している。塗工ヘッド20は、巻出ロール10と巻取ロール13の間を搬送中の金属箔Mの両側に対向して配置されている。
【0039】
塗工ヘッド20は、図5に示すように鉛直方向(図5中のZ方向)に延伸する略直方体形状を有している。塗工ヘッド20は、例えば金属箔Mの短手方向よりも長く形成されている。塗工ヘッド20の金属箔Mに対向する面には、活物質合剤を吐出するスリット状の塗工口21が形成されている。塗工口21は、鉛直方向(図5中のZ方向)に延伸して形成されている。また、塗工口21は、金属箔Mの短手方向の中央部に活物質合剤を供給できる位置に形成されている。また塗工ヘッド20には、活物質合剤供給源22に連通する供給管23が接続されている。活物質合剤供給源22の内部には活物質合剤が貯留されており、活物質合剤供給源22から塗工ヘッド20に活物質合剤を供給できるようになっている。
【0040】
乾燥部12は、図1、図2及び図6に示すように金属箔Mの長手方向(図1、図2及び図6中のY方向)に複数、例えば3つの領域Ta、Tb、Tcに分割されている。以下、これら3つの領域Ta、Tb、Tcを、巻出ロール10側から、すなわち金属箔Mの搬送方向に上流側から、「上流領域Ta」、「中流領域Tb」、「下流領域Tc」という場合がある。なお、これら3つの領域Ta、Tb、Tcは、後述するLED30のピーク発光波長が異なる領域毎に分割されている。
【0041】
また乾燥部12は、図7に示すように赤外線を発光する複数のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)30を有している。LED30は、金属箔Mの長手方向(図7中のY方向)に並べて配置されている。これらLED30は、巻出ロール10と巻取ロール13の間を搬送中の金属箔Mの両側に配置されている。また、LED30は、鉛直方向に金属箔Mの短手方向の長さより長く設けられている。すなわち、LED30は、金属箔Mの短手方向全体に赤外線を発光することができる。
【0042】
なお、上述したように乾燥部12は、発光強度が最大となるLED30の発光波長LED30の発光波長(以下、「ピーク発光波長」という場合がある。)が異なる3つの領域Ta、Tb、Tcに分割されている。そこで便宜上、図1、図2及び図6に示すように複数のLED30のうち、上流領域Taに配置されるLED30を「上流LED30a」、中流領域Tbに配置されるLED30を「中流LED30b」、下流領域Tcに配置されるLED30を「下流LED30c」という場合がある。なお、これら上流LED30a、中流LED30b、下流LED30cのピーク発光波長を設定する方法については、後述において詳しく説明する。
【0043】
また乾燥部12は、図7に示すようにLED30を挟んで金属箔Mの表面と対向して配置され、LED30からの赤外線を金属箔M側に反射させる反射板40を有している。反射板40は、LED30を覆うように鉛直方向に延伸し、且つ複数のLED30を覆うように金属箔Mの長手方向(図7中のY方向)に延伸している。そして、LED30から金属箔Mと反対側に放射された赤外線は、反射板40で反射して金属箔Mに放射される。なお、この反射板40は、巻出ロール10と巻取ロール13の間を搬送中の金属箔Mの両側に配置されている。
【0044】
反射板40には、当該反射板40と金属箔Mとの間に形成された乾燥領域Dに空気を供給する給気口41が複数形成されている。各給気口41には、当該給気口41に空気を供給するための供給管42がそれぞれ設けられている。供給管42は、空気供給源43に連通している。空気供給源43の内部には、空気、例えばドライエアなどが貯留されている。そして、給気口41から乾燥領域D内に供給された空気は、金属箔Mの表面に沿って流れた後、乾燥領域Dの端部から排気される。なお、これら給気口41、供給管42及び空気供給源43が本発明の給気機構を構成している。
【0045】
以上の電極製造装置1には、図1に示すように制御部50が設けられている。制御部50は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、電極製造装置1における電極Eを製造するための処理を制御するプログラムが格納されている。なお、前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、その記憶媒体Hから制御部50にインストールされたものであってもよい。
【0046】
次に、上述した上流LED30a、中流LED30b、下流LED30cのピーク発光波長を設定する方法について説明する。
【0047】
先ず、上流LED30aのピーク発光波長を設定する方法について説明する。図8は、上流LED30aのピーク発光波長を設定するフローを示している。上流LED30aのピーク発光波長は、上流領域Taで乾燥される活物質合剤中の溶媒、すなわち水の膜厚に対して、当該活物質合剤が沸騰しない範囲の赤外線の波長であって、水の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定される。なお、活物質合剤が沸騰しないとは、当該活物質合剤中の水が沸騰しないことをいう。
【0048】
具体的には、図9に示すように、LED30が発光する赤外線の波長(図9中の横軸)と、水の赤外線の吸収率(図9中の縦軸)との関係を表した第1の相関を予め導出しておく。第1の相関は、活物質合剤中の水の膜厚毎に導出する(図8の工程A1)。なお、水の膜厚は、活物質合剤自体の膜厚とほぼ同じである。また、図示の例においては、水の膜厚は10μmと2μmの2種類であるが、実際にはその他の膜厚に対する第1の相関も予め導出しておく。
【0049】
また図10に示すように、LED30が発光する赤外線の波長(図10中の横軸)と、LED30の発光強度(図10中の縦軸)との関係を表した第2の相関を予め導出しておく(図8の工程A1)。なお、図示の例においては、赤外線の波長は2.84μm〜4.45μmのLEDについて示されているが、実際にはその波長に対する第2の相関も予め導出しておく。
【0050】
さらに図11に示すように、活物質合剤中の水の膜厚(図11中の横軸)と、活物質合剤の沸騰が開始する際のLED30の発光強度(図11中の縦軸)との関係を表した第3の相関を予め導出しておく(図8の工程A1)。なお、図11において、第3の相関よりも上側、すなわちLED30の発光強度が第3の相関の発光強度よりも高い場合、活物質合剤は沸騰する。一方、図11において、第3の相関よりも下方、すなわちLED30の発光強度が第3の相関の発光強度よりも低い場合、活物質合剤の沸騰は沸騰しない。
【0051】
そして、上流領域Taで乾燥される活物質合剤中の水の膜厚を推定する(図8の工程A2)。本実施の形態においては、当該水の膜厚は例えば10μmと推定される。
【0052】
その後、工程A2で推定された水の膜厚に基づき、第1の相関を用いて、水の赤外線の最大吸収率に対応する赤外線の波長(以下、「ピーク波長」という場合がある。)を導出する(図8の工程A3)。本実施の形態においては、水の膜厚10μmに対するピーク波長は3μmである。
【0053】
その後、工程A3で導出されたピーク波長に基づき、第2の相関を用いて、上流LED30aの最大発光強度を導出する(図8の工程A4)。本実施の形態においては、ピーク波長3μmに対する上流LED30aの最大発光強度は1.0である。
【0054】
その後、工程A2で推定された水の膜厚と、工程A4で導出された上流LED30aの最大発光強度とに基づき、第3の相関を用いて、活物質合剤が沸騰するか否かを判定する(図8の工程A5)。
【0055】
そして、工程A5において活物質合剤が沸騰しないと判定された場合、上流LED30aのピーク発光波長は工程A4で導出したピーク波長に設定される(図8の工程A6)。すなわち、上流LED30aには、工程A4で導出したピーク波長がピーク発光波長となるLEDが用いられる。一方、工程A5において活物質合剤が沸騰すると判定された場合、上述した工程A3に戻り、工程A3〜A5を行う。そして、工程A5において活物質合剤が沸騰しないと判定されるまで、これら工程A3〜A5を繰り返し行う。
【0056】
本実施の形態においては、工程A5において、水の膜厚10μmに対して第3の相関における発光強度は0.6である。これに対して工程A4で導出された上流LED30aの最大発光強度は1.0である。したがって、活物質合剤は沸騰する。
【0057】
このように本実施の形態では、工程A5で活物質合剤が沸騰すると判定されたため、工程A3に戻る。工程A3において、第1の相関を用いて、最大吸収率の次の吸収率に対応するピーク波長を導出する。本実施の形態においては、ピーク波長は6μmである。その後、工程A4において、第2の相関を用いて、ピーク波長6μmに対する上流LED30aの最大発光強度0.5を導出する。その後、工程A5において、第3の相関を用いて、活物質合剤が沸騰するか否かを判定する。本実施の形態では、上流LED30aの最大発光強度が0.5であり、活物質合剤は沸騰しない。
【0058】
このように工程A5において活物質合剤が沸騰しないと判定されると、上流LED30aのピーク発光波長は工程A4で導出したピーク波長に設定される(図8の工程A6)。本実施の形態では、上流LED30aのピーク発光波長は6μmに設定される。すなわち、上流LED30aには、ピーク発光波長が6μmとなるLEDが用いられる。
【0059】
中流LED30bと下流LED30cのピーク発光波長についても、同様に上述した工程A1〜A6を行って設定される。そして、本実施の形態では、下流LED30cのピーク発光波長は3μmに設定される。また、中流LED30bのピーク発光波長は、3μmより大きく6μm未満のピーク発光波長である、例えば4.5μmに設定される。
【0060】
本実施の形態にかかる電極製造装置1は以上のように構成されている。次に、その電極製造装置1で行われる電極Eを製造するための処理について説明する。
【0061】
金属箔Mは巻出ロール10から巻き出され、塗工部11に搬送される。塗工部11では、搬送中の金属箔Mの表面に対して、塗工ヘッド20からスラリー状の活物質合剤Sが塗工される。この際、金属箔Mの両側に配置された塗工ヘッド20、20から活物質合剤Sを供給することで、金属箔Mの両面に活物質合剤Sが均一な膜厚で同時に塗工される。また、塗工ヘッド20から供給される活物質合剤Sは金属箔Mの短手方向の中央部に塗工される。さらに、塗工ヘッド20から活物質合剤Sを断続的に供給することで、金属箔Mの長手方向に複数の領域に活物質合剤Sが塗工される。
【0062】
その後、活物質合剤Sが塗工された金属箔Mは、乾燥部12に搬送される。乾燥部12では、金属箔Mの両側に配置された複数のLED30及び複数の反射板40からの赤外線による輻射加熱によって、金属箔Mの両面の活物質合剤Sが乾燥される。このとき、上述したように上流LED30aのピーク発光波長は6μmであり、中流LED30bのピーク発光波長は4.5μmであり、下流LED30cのピーク発光波長は3μmである。そして、活物質合剤Sが沸騰することなく、活物質合剤Sが赤外線を最大限に吸収して、活物質合剤Sが上記LED30で順次乾燥される。
【0063】
また、乾燥部12では、金属箔Mの両側において給気口41から乾燥領域D内に供給される空気による対流加熱によって、金属箔Mの両面の活物質合剤Sが乾燥される。さらに、乾燥領域D内で発生する給気口41から乾燥領域Dの端部への気流によって、活物質合剤Sから蒸発した水が乾燥領域Dの端部に円滑に流れ、当該蒸発した水が金属箔Mに再付着することなく除去される。こうして金属箔Mの両面の活物質合剤Sが乾燥され、当該金属箔Mの両面に所定の膜厚の活物質層Fが形成される。
【0064】
その後、活物質層Fが形成された金属箔Mは、巻取ロール13に搬送され、当該巻取ロール13に巻き取られる。こうして電極製造装置1における一連の処理が終了し、電極Eが製造される。
【0065】
以上の実施の形態によれば、乾燥部12が3つの領域Ta、Tb、Tcに分割され、一の領域Ta、Tb、TcにおけるLED30のピーク発光波長は活物質合剤Sが沸騰しない範囲の波長に設定されるので、従来のように金属箔上の活物質層の表面に凹凸が形成されることがなく、円滑な表面を有する活物質層Fを均一な膜厚で形成することができる。また、金属箔Mと活物質層Fとの境目で剥離が生じることも無い。しかも、一の領域Ta、Tb、TcにおけるLED30のピーク発光波長は水の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定されるので、活物質合剤Sを効率よく加熱して乾燥させることができる。そして、このようなLED30のピーク発光波長の設定が各領域Ta、Tb、Tc毎に行われるので、活物質合剤Sの乾燥時間を従来よりも短縮することができ、乾燥部12の長さも短くすることができる。以上のように本実施の形態によれば、金属箔Mの表面に活物質層Fを適切に且つ効率よく形成することができる。
【0066】
また、乾燥部12において、複数のLED30及び反射板40からの赤外線による輻射加熱と、給気口41から乾燥領域D内に供給される空気による対流加熱とによって、金属箔M上の活物質合剤Sが乾燥される。このように赤外線による輻射加熱と空気による対流加熱という2種類の乾燥方法を用いているので、当該活物質合剤Sをより適切に乾燥させることができる。さらに、赤外線による輻射加熱を用いた場合、LED30及び反射板40と金属箔Mとの間の距離に依存することなく赤外線の輻射熱が伝熱される。したがって、金属箔Mの反りや傾きに影響されることなく、活物質合剤Sを適切に加熱することができる。
【0067】
また、乾燥部12では、乾燥領域D内に給気口41から乾燥領域Dの端部への気流を発生させることができる。この気流によって、金属箔M上の活物質合剤Sを乾燥させる際に蒸発した水が乾燥領域Dの端部から排出されるので、当該蒸発した水が金属箔Mの表面に再付着することがない。したがって、金属箔M上の活物質合剤Sをより適切に乾燥させることができる。
【0068】
また、反射板40がLED30を挟んで金属箔Mの表面と対向して配置されているので、LED30から金属箔Mと反対側に放射された赤外線は、反射板40で反射して金属箔Mに放射される。したがって、赤外線の全てを利用することができ、金属箔M上の活物質合剤Sを効率よく乾燥させることができる。
【0069】
また、塗工部11において、金属箔Mの長手方向が水平方向となる向きに金属箔Mが搬送されるので、金属箔Mの表面に塗工された活物質合剤Sが当該金属箔Mの搬送方向の上流側又は下流側に流れることがない。さらに、金属箔Mの短手方向が鉛直方向となる向きに金属箔Mが搬送されるので、金属箔Mの両面に均一に活物質合剤Sを塗工することができる。このように塗工部11において活物質合剤Sを適切に塗工できるので、金属箔M上に活物質層Fをより適切に形成することができる。
【0070】
また、巻出ロール10と巻取ロール13との間において、長手方向が水平方向となる向きに金属箔Mが搬送されるので、金属箔Mの高さを一定に低くすることができ、電極製造装置1のメンテナンスが容易になる。したがって、金属箔Mの表面に活物質層Fを効率よく形成することができる。
【0071】
以上の実施の形態では、中流領域Tbにおいて中流LED30bのピーク発光波長を4.5μmに設定していたが、中流領域Tbにおいて、6μmのピーク発光波長を有する上流LED30aと3μmのピーク発光波長を有する下流LED30cを混合して配置してもよい。かかる場合、中流領域Tbにおける上流LED30aと下流LED30cは、活物質合剤Sが沸騰しない範囲で任意に配置できる。具体的には、活物質合剤Sが沸騰しないための調整は、例えば上流LED30aと下流LED30cの本数の比率を変更して調整してもよいし、あるいは例えば上流LED30aと下流LED30cを配置する間隔を変更して調整してもよい。いずれの場合でも、活物質合剤Sが沸騰しないので、当該活物質合剤Sを適切に乾燥させることができる。したがって、金属箔Mの表面に活物質層Fを適切に形成することができる。
【0072】
また、以上の実施の形態では、乾燥部12は3つの領域Ta、Tb、Tcに分割されていたが、乾燥部12を分割する領域の数は本実施の形態に限定されず、任意に設定することができる。例えば乾燥部12を2つの領域に分割してもよいし、4つ以上の領域に分割してもよい。いずれの場合でも、上述した工程A1〜A6を行って各領域のLED30のピーク発光波長を設定すれば、活物質合剤Sを沸騰させることなく、当該活物質合剤Sを適切に乾燥させることができる。
【0073】
また、以上の実施の形態では、活物質合剤Sの溶媒が水の場合について説明したが、活物質合剤の溶媒が他の材料、例えば有機溶剤である場合にも本発明を適用することができる。かかる場合、溶媒の種類に応じて、工程A1において図9で示した第1の相関と図11で示した第3の相関を予め導出する。そして、工程A2〜A6を行うことで、乾燥部12のLED30のピーク発光波長を適切に設定することができ、活物質合剤Sを適切に乾燥させることができる。
【0074】
以上の実施の形態の電極製造装置1では、巻出部として巻出ロール10が設けられていたが、巻出部の構成は本実施の形態に限定されず、金属箔Mを巻き出す構成であれば種々の構成を取り得る。同様に、巻取部として巻取ロール13が設けられていたが、巻取部の構成は本実施の形態に限定されず、金属箔Mを巻き取る構成であれば種々の構成を取り得る。
【0075】
また、以上の実施の形態の塗工部11には塗工ヘッド20が設けられていたが、塗工部11の構成は本実施の形態に限定されず、金属箔Mの表面に活物質合剤Sを塗工できる構成であれば種々の構成を取り得る。
【0076】
例えば以上の実施の形態では、塗工ヘッド20、20は金属箔Mの両側に対向して設けられていたが、いずれか一方の塗工ヘッド20が他方の塗工ヘッド20より下流側に配置されていてもよい。また、塗工ヘッド20の数は本実施の形態に限定されず、金属箔Mの両側にそれぞれ複数の塗工ヘッド20が配置されていてもよい。
【0077】
また例えば塗工部11において、インクジェット方式で金属箔Mの表面に活物質合剤Sを塗工してもよい。
【0078】
また例えば図12に示すように、塗工部11は、金属箔Mの表面に当接して当該金属箔Mにスラリー状の活物質合剤Sを塗工するローラ100と、ローラ100の表面に活物質合剤Sを供給するノズル101と、を有していてもよい。これらローラ100及びノズル101は、巻出ロール10と巻取ロール13の間を搬送中の金属箔Mの両側に対向して配置されている。
【0079】
ローラ100は、その軸方向が鉛直方向に延伸し、当該鉛直軸を中心に回転可能に構成されている。またローラ100は、金属箔Mに形成される活物質層Fの鉛直方向の長さと同じ長さで延伸し、金属箔Mの短手方向の中央部に活物質合剤Sを供給できる位置に配置されている。
【0080】
ノズル101も、ローラ100と同様に鉛直方向に延伸している。また、ノズル101のローラ100側の面には、鉛直方向に延伸し、ローラ100に活物質合剤Sを吐出する吐出口(図示せず)が設けられている。吐出口は、ローラ100の表面全体に活物質合剤Sを供給できる長さと位置に形成されている。なお、ノズル101には、図5に示した塗工ヘッド20と同様に、活物質合剤供給源(図示せず)に連通する供給管(図示せず)が接続されている。
【0081】
かかる場合、塗工部11では、ノズル101からローラ100の表面に活物質合剤Sを供給しながら、当該活物質合剤Sが付着したローラ100を金属箔Mの表面に当接させる。そうすると、ローラ100の表面に付着した活物質合剤Sが金属箔Mの表面に転写され、当該金属箔Mの表面に活物質合剤Sが塗工される。
【0082】
本実施の形態によれば、ローラ100から金属箔Mの表面に活物質合剤Sが塗工される際、当該ローラ100自体の表面と金属箔Mの表面との距離を調整することで、活物質合剤Sの膜厚を調整することができる。したがって、金属箔Mの表面に活物質合剤Sをより均一な膜厚で塗工することができる。
【0083】
以上の実施の形態の電極製造装置1では、金属箔Mは、その長手方向が水平方向であって、且つその短手方向が鉛直方向となる向きで搬送されていたが、図13及び図14に示すように金属箔Mは、その長手方向が水平方向(図13及び図14中のY方向)であって、且つその短手方向が水平方向(図13中のX方向)となる向きで搬送されていてもよい。かかる場合、巻出ロール10と巻取ロール13は同じ高さに配置されている。また、巻出ロール10と巻取ロール13は、その軸方向が水平方向(図13中のX方向)となる向きにそれぞれ配置されている。本実施の形態の電極製造装置1を用いた場合でも、上述した実施の形態の効果を享受することができる。
【0084】
以上の実施の形態では、活物質層Fは金属箔Mの長手方向に複数形成されているが、一の活物質層Fを備えた電極Eを形成する際にも、本発明の電極製造装置1は有用である。
【0085】
また以上の実施の形態では、電極製造装置1において金属箔Mの両面に活物質層Fを形成したが、電極Eを形成するためにはその他の処理、例えば金属箔Mのプレスや切断等も行われる。電極製造装置1は、巻出ロール10と巻取ロール13との間において、これらその他の処理も連続して行うようにしてもよい。
【0086】
また以上の実施の形態では、リチウムイオンキャパシタの電極Eを製造する場合について説明したが、電気二重層キャパシタに用いられる電極やリチウムイオン電池に用いられる電極を製造する場合にも、本発明の電極製造装置1を用いることができる。かかる場合、製造される電極の種類に応じて、金属箔Mの材質や活物質合剤Sの材料等を変更すればよい。
【0087】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0088】
1 電極製造装置
10 巻出ロール
11 塗工部
12 乾燥部
13 巻取ロール
30 LED
30a 上流LED
30b 中流LED
30c 下流LED
40 反射板
41 給気口
42 供給管
43 空気供給源
50 制御部
D 乾燥領域
E 電極
F 活物質層
M 金属箔
S 活物質合剤
Ta 上流領域
Tb 中流領域
Tc 下流領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の基材の両面に活物質層を形成して電極を製造する電極製造装置、当該電極製造装置を用いた電極製造方法、プログラム及びコンピュータ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能な特性を活かして、リチウムイオンキャパシタ(LIC:Lithium Ion Capacitor)、電気二重層キャパシタ(EDLC:Electric Double Layer Capacitor)及びリチウムイオン電池(LIB:Lithium Ion Battery)などの電気化学素子の需要が急速に拡大している。
【0003】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が比較的大きいことから、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータなどの分野で利用されている。また、電気二重層キャパシタは急速充放電が可能なので、パーソナルコンピュータ等のメモリーバックアップ小型電源として利用されている。さらに電気二重層キャパシタは電気自動車用の大型電源としての応用が期待されている。また、リチウムイオン電池の利点と電気二重層キャパシタの利点とを組み合わせたリチウムイオンキャパシタは、エネルギー密度、出力密度ともに高いことから注目を集めている。
【0004】
このような電気化学素子の電極は、例えば基材としての集電体である金属箔の表面に活物質や溶媒を含む活物質合剤を塗工した後、当該活物質合剤を乾燥し活物質層を形成して製造される。かかる電極の製造には、例えば巻出ロールと巻取ロールとの間に塗工装置と乾燥機を配置した電極製造装置が用いられる。塗工装置は、活物質合剤を塗工するための塗工口が形成された塗工ヘッドを有している。また乾燥機は、所定間隔で配置された複数のヒータを有している。そして、巻出ロールと巻取ロールの間で帯状の金属箔を略鉛直上方に搬送しながら、塗工装置と乾燥機によって、金属箔の表面に活物質合剤の塗工と乾燥がそれぞれ行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−186782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、金属箔の表面に塗工された活物質合剤を乾燥させる際、急激な乾燥を行うと、活物質合剤の内部で溶媒が沸騰し、対流や気泡が発生する場合がある。かかる場合、金属箔上の活物質層の表面に凹凸が形成され、活物質層が適切に形成されない。また、金属箔と活物質層との境目で剥離が生じるおそれもある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された乾燥機には、複数のヒータが所定間隔で配置されているのみであり、上述した急激な乾燥を回避するための対策は考慮されていない。このため、金属箔上の表面に活物質層を適切に形成することはできなかった。
【0008】
一方、上記ヒータを多数配置して、十分な乾燥時間を確保し、徐々に活物質合剤を乾燥させることも考えられる。しかしながら、かかる場合、乾燥機の長さが長くなり、効率よく活物質合剤を乾燥させることができない。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、電極を製造するに際し、帯状の基材の表面に活物質層を適切に且つ効率よく形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明は、帯状の基材の両面に活物質層を形成して電極を製造する電極製造装置であって、基材を巻き出す巻出部と、前記巻出部で巻き出された基材を巻き取る巻取部と、前記巻出部と前記巻取部との間に設けられ、活物質と溶媒を混合した活物質合剤を基材の両面に塗工する塗工部と、前記塗工部と前記巻取部との間に設けられ、前記塗工部で塗工された前記活物質合剤を乾燥させて活物質層を形成する乾燥部と、を有し、前記乾燥部は、基材の長手方向に並べて配置され、赤外線を発光する複数のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を有し、前記乾燥部は、発光強度が最大となるLEDの発光波長が異なる複数の領域に分割され、一の前記領域における前記LEDの発光波長は、当該一の領域での基材上の前記溶媒の膜厚に対して、前記活物質合剤が沸騰しない範囲の赤外線の波長であって、前記溶媒の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定されることを特徴としている。なお、本発明において活物質合剤が沸騰しないとは、当該活物質合剤中の溶媒が沸騰しないことをいう。
【0011】
本発明によれば、乾燥部が複数の領域に分割され、一の領域におけるLEDの発光波長は活物質合剤が沸騰しない範囲の波長に設定されるので、従来のように基材上の活物質層の表面に凹凸が形成されることがなく、円滑な表面を有する活物質層を均一な膜厚で形成することができる。また、基材と活物質層との境目で剥離が生じることも無い。しかも、一の領域におけるLEDの発光波長は溶媒の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定されるので、活物質合剤を効率よく加熱して乾燥させることができる。そして、このようなLEDの発光波長の設定が各領域毎に行われるので、活物質合剤の乾燥時間を従来よりも短縮することができ、乾燥部の長さも短くすることができる。以上のように本発明によれば、基材の表面に活物質層を適切に且つ効率よく形成することができる。
【0012】
前記溶媒は水であってもよい。
【0013】
前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、前記中流領域には、3μmより大きく6μm未満の発光波長のLEDが配置されていてもよい。
【0014】
また前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、前記中流領域には、前記上流領域のLEDと前記下流領域のLEDが混合して配置されていてもよい。
【0015】
前記乾燥部は、前記複数のLEDと基材との間に空気を供給する給気機構を有していてもよい。
【0016】
前記巻出部と前記巻取部は、基材の長手方向が水平方向であって、且つ基材の短手方向が鉛直方向となる向きで基材を搬送するように配置されていてもよい。
【0017】
前記電極は、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオン電池に用いられる電極であってもよい。
【0018】
別な観点による本発明は、巻出部と巻取部との間で帯状の基材を搬送しながら、当該基材の両面に活物質層を形成して電極を製造する電極製造方法であって、塗工部において、活物質と溶媒を混合した活物質合剤を基材の両面に塗工する塗工工程と、その後、乾燥部において、前記塗工工程で塗工された前記活物質合剤を乾燥させて活物質層を形成する乾燥工程と、を有し、前記乾燥部は、基材の長手方向に並べて配置され、赤外線を発光する複数のLEDを有し、前記乾燥部は、発光強度が最大となるLEDの発光波長が異なる複数の領域に分割され、一の前記領域における前記LEDの発光波長は、当該一の領域での基材上の前記溶媒の膜厚に対して、前記活物質合剤が沸騰しない範囲の赤外線の波長であって、前記溶媒の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定されることを特徴としている。
【0019】
前記溶媒は水であってもよい。
【0020】
前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、前記中流領域には、3μmより大きく6μm未満の発光波長のLEDが配置されていてもよい。
【0021】
また前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、前記中流領域には、前記上流領域のLEDと前記下流領域のLEDが混合して配置されていてもよい。
【0022】
前記乾燥部は、前記複数のLEDと基材との間に空気を供給する給気機構を有し、前記乾燥工程において、前記複数のLEDからの赤外線による輻射加熱と、前記給気機構から供給される空気による対流加熱とによって、前記活物質合剤を乾燥させてもよい。
【0023】
前記塗工工程と前記乾燥工程は、基材の長手方向が水平方向であって、且つ基材の短手方向が鉛直方向となる向きで搬送中の基材に対して行われてもよい。
【0024】
前記電極は、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオン電池に用いられる電極であってもよい。
【0025】
また別な観点による本発明によれば、前記電極製造方法を電極製造装置によって実行させるために、当該電極製造装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラムが提供される。
【0026】
さらに別な観点による本発明によれば、前記プログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、電極を製造するに際し、帯状の基材の表面に活物質層を適切に且つ効率よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態にかかる電極製造装置の構成の概略を示す略側面図である。
【図2】本実施の形態にかかる電極製造装置の構成の概略を示す平面図である。
【図3】電極製造装置で製造される電極の側面図である。
【図4】電極製造装置で製造される電極の平面図である。
【図5】塗工ヘッドの構成の概略を示す斜視図である。
【図6】乾燥部の構成の概略を示す側面図である。
【図7】乾燥部の構成の概略を示す平面図である。
【図8】LEDのピーク発光波長を設定する工程を示したフローチャートである。
【図9】LEDが発光する赤外線の波長と、水の赤外線の吸収率との第1の相関を示すグラフである。
【図10】LEDが発光する赤外線の波長と、LEDの発光強度との第2の相関を示すグラフである。
【図11】活物質合剤中の水の膜厚と、活物質合剤の沸騰が開始する際のLEDの発光強度との第3の相関を示すグラフである。
【図12】他の実施の形態にかかる塗工部の構成の概略を示す平面図である。
【図13】他の実施の形態にかかる電極製造装置の構成の概略を示す略平面図である。
【図14】他の実施の形態にかかる電極製造装置の構成の概略を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる電極製造装置1の構成の概略を示す略側面図である。図2は、電極製造装置1の構成の概略を示す平面図である。なお、本実施の形態の電極製造装置1では、リチウムイオンキャパシタの電極を製造する。
【0030】
電極製造装置1では、図3及び図4に示すように帯状の基材としての金属箔Mの両面に活物質層Fが形成された電極Eが製造される。金属箔Mの両面の活物質層Fは、対向して形成される。また、活物質層Fは、金属箔Mの短手方向(図3中のZ方向)の中央部に形成され、且つ金属箔Mの長手方向(図3及び図4中のY方向)に複数形成される。
【0031】
金属箔Mは、例えば多孔質の集電体である。電極Eとして正極を製造する際には、例えば金属箔Mとしてアルミニウム箔が用いられる。一方、負極を製造する際には、例えば金属箔Mとして銅箔が用いられる。
【0032】
また、活物質層Fを形成するため、後述するように金属箔Mの表面にスラリー状の活物質合剤が塗工される。正極を製造する際の正極活物質合剤は、例えば活物質としての活性炭と、結着剤としてのアクリル系バインダと、分散剤としてのカルボキシメチルセルロースと、導電助材としてのアセチレンブラック等の導電性炭素粉末とを混合し、これに溶媒として水を添加、混練して生成される。一方、負極を製造する際の負極極活物質合剤は、例えばリチウムイオンを吸蔵・放出可能な活物質としての非晶質炭素と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンと、導電助材としてのアセチレンブラック等の導電性炭素材とを混合し、これに溶媒として水を添加、混練して生成される。
【0033】
正極と負極とでは、上述したように材料は異なるが、金属箔M及び活物質層Fの幅や厚み等は大差がない。このため、電極製造装置1は、リチウムイオンキャパシタの正極も負極も製造することができる。以下、これら正極と負極を電極Eと称して説明する。
【0034】
電極製造装置1は、図1及び図2に示すように、金属箔Mを巻き出す巻出部としての巻出ロール10と、金属箔Mの両面に活物質合剤を塗工する塗工部11と、金属箔M上の活物質合剤を乾燥させて活物質層Fを形成する乾燥部12と、金属箔Mを巻き取る巻取部としての巻取ロール13とを有している。巻出ロール10、塗工部11、乾燥部12、巻取ロール13は、金属箔Mの搬送方向(図1及び図2中のY方向)に上流側からこの順で配置されている。なお、巻出ロール10と巻取ロール13との間には駆動機構(図示せず)が設けられており、この駆動機構によって巻出ロール10から巻き出された金属箔Mが搬送され巻取ロール13に巻き取られるようになっている。
【0035】
巻出ロール10は、その軸方向が鉛直方向(図1中のZ方向)となる向きに配置されている。巻出ロール10には未処理の金属箔Mが巻回されており、巻出ロール10は鉛直軸を中心に回転可能に構成されている。そして、金属箔Mは、その長手方向に引っ張られるのにつられて、巻出ロール10から巻き出されるようになっている。
【0036】
巻取ロール13も、その軸方向が鉛直方向となる向きに配置されている。巻取リール13は、鉛直軸を中心に回転可能に構成されている。そして、活物質層Fが形成された金属箔Mは、巻取ロール13に巻き取られるようになっている。
【0037】
これら巻出ロール10と巻取ロール13は同じ高さに配置されている。そして、巻出ロール10と巻取ロール13は、金属箔Mの長手方向が水平方向(図1及び図2中のY方向)であって、且つ金属箔Mの短手方向が鉛直方向(図1中のZ方向)となる向きで金属箔Mを搬送するように配置されている。
【0038】
塗工部11は、金属箔Mの表面に活物質合剤を塗工する塗工ヘッド20を有している。塗工ヘッド20は、巻出ロール10と巻取ロール13の間を搬送中の金属箔Mの両側に対向して配置されている。
【0039】
塗工ヘッド20は、図5に示すように鉛直方向(図5中のZ方向)に延伸する略直方体形状を有している。塗工ヘッド20は、例えば金属箔Mの短手方向よりも長く形成されている。塗工ヘッド20の金属箔Mに対向する面には、活物質合剤を吐出するスリット状の塗工口21が形成されている。塗工口21は、鉛直方向(図5中のZ方向)に延伸して形成されている。また、塗工口21は、金属箔Mの短手方向の中央部に活物質合剤を供給できる位置に形成されている。また塗工ヘッド20には、活物質合剤供給源22に連通する供給管23が接続されている。活物質合剤供給源22の内部には活物質合剤が貯留されており、活物質合剤供給源22から塗工ヘッド20に活物質合剤を供給できるようになっている。
【0040】
乾燥部12は、図1、図2及び図6に示すように金属箔Mの長手方向(図1、図2及び図6中のY方向)に複数、例えば3つの領域Ta、Tb、Tcに分割されている。以下、これら3つの領域Ta、Tb、Tcを、巻出ロール10側から、すなわち金属箔Mの搬送方向に上流側から、「上流領域Ta」、「中流領域Tb」、「下流領域Tc」という場合がある。なお、これら3つの領域Ta、Tb、Tcは、後述するLED30のピーク発光波長が異なる領域毎に分割されている。
【0041】
また乾燥部12は、図7に示すように赤外線を発光する複数のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)30を有している。LED30は、金属箔Mの長手方向(図7中のY方向)に並べて配置されている。これらLED30は、巻出ロール10と巻取ロール13の間を搬送中の金属箔Mの両側に配置されている。また、LED30は、鉛直方向に金属箔Mの短手方向の長さより長く設けられている。すなわち、LED30は、金属箔Mの短手方向全体に赤外線を発光することができる。
【0042】
なお、上述したように乾燥部12は、発光強度が最大となるLED30の発光波長LED30の発光波長(以下、「ピーク発光波長」という場合がある。)が異なる3つの領域Ta、Tb、Tcに分割されている。そこで便宜上、図1、図2及び図6に示すように複数のLED30のうち、上流領域Taに配置されるLED30を「上流LED30a」、中流領域Tbに配置されるLED30を「中流LED30b」、下流領域Tcに配置されるLED30を「下流LED30c」という場合がある。なお、これら上流LED30a、中流LED30b、下流LED30cのピーク発光波長を設定する方法については、後述において詳しく説明する。
【0043】
また乾燥部12は、図7に示すようにLED30を挟んで金属箔Mの表面と対向して配置され、LED30からの赤外線を金属箔M側に反射させる反射板40を有している。反射板40は、LED30を覆うように鉛直方向に延伸し、且つ複数のLED30を覆うように金属箔Mの長手方向(図7中のY方向)に延伸している。そして、LED30から金属箔Mと反対側に放射された赤外線は、反射板40で反射して金属箔Mに放射される。なお、この反射板40は、巻出ロール10と巻取ロール13の間を搬送中の金属箔Mの両側に配置されている。
【0044】
反射板40には、当該反射板40と金属箔Mとの間に形成された乾燥領域Dに空気を供給する給気口41が複数形成されている。各給気口41には、当該給気口41に空気を供給するための供給管42がそれぞれ設けられている。供給管42は、空気供給源43に連通している。空気供給源43の内部には、空気、例えばドライエアなどが貯留されている。そして、給気口41から乾燥領域D内に供給された空気は、金属箔Mの表面に沿って流れた後、乾燥領域Dの端部から排気される。なお、これら給気口41、供給管42及び空気供給源43が本発明の給気機構を構成している。
【0045】
以上の電極製造装置1には、図1に示すように制御部50が設けられている。制御部50は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、電極製造装置1における電極Eを製造するための処理を制御するプログラムが格納されている。なお、前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、その記憶媒体Hから制御部50にインストールされたものであってもよい。
【0046】
次に、上述した上流LED30a、中流LED30b、下流LED30cのピーク発光波長を設定する方法について説明する。
【0047】
先ず、上流LED30aのピーク発光波長を設定する方法について説明する。図8は、上流LED30aのピーク発光波長を設定するフローを示している。上流LED30aのピーク発光波長は、上流領域Taで乾燥される活物質合剤中の溶媒、すなわち水の膜厚に対して、当該活物質合剤が沸騰しない範囲の赤外線の波長であって、水の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定される。なお、活物質合剤が沸騰しないとは、当該活物質合剤中の水が沸騰しないことをいう。
【0048】
具体的には、図9に示すように、LED30が発光する赤外線の波長(図9中の横軸)と、水の赤外線の吸収率(図9中の縦軸)との関係を表した第1の相関を予め導出しておく。第1の相関は、活物質合剤中の水の膜厚毎に導出する(図8の工程A1)。なお、水の膜厚は、活物質合剤自体の膜厚とほぼ同じである。また、図示の例においては、水の膜厚は10μmと2μmの2種類であるが、実際にはその他の膜厚に対する第1の相関も予め導出しておく。
【0049】
また図10に示すように、LED30が発光する赤外線の波長(図10中の横軸)と、LED30の発光強度(図10中の縦軸)との関係を表した第2の相関を予め導出しておく(図8の工程A1)。なお、図示の例においては、赤外線の波長は2.84μm〜4.45μmのLEDについて示されているが、実際にはその波長に対する第2の相関も予め導出しておく。
【0050】
さらに図11に示すように、活物質合剤中の水の膜厚(図11中の横軸)と、活物質合剤の沸騰が開始する際のLED30の発光強度(図11中の縦軸)との関係を表した第3の相関を予め導出しておく(図8の工程A1)。なお、図11において、第3の相関よりも上側、すなわちLED30の発光強度が第3の相関の発光強度よりも高い場合、活物質合剤は沸騰する。一方、図11において、第3の相関よりも下方、すなわちLED30の発光強度が第3の相関の発光強度よりも低い場合、活物質合剤の沸騰は沸騰しない。
【0051】
そして、上流領域Taで乾燥される活物質合剤中の水の膜厚を推定する(図8の工程A2)。本実施の形態においては、当該水の膜厚は例えば10μmと推定される。
【0052】
その後、工程A2で推定された水の膜厚に基づき、第1の相関を用いて、水の赤外線の最大吸収率に対応する赤外線の波長(以下、「ピーク波長」という場合がある。)を導出する(図8の工程A3)。本実施の形態においては、水の膜厚10μmに対するピーク波長は3μmである。
【0053】
その後、工程A3で導出されたピーク波長に基づき、第2の相関を用いて、上流LED30aの最大発光強度を導出する(図8の工程A4)。本実施の形態においては、ピーク波長3μmに対する上流LED30aの最大発光強度は1.0である。
【0054】
その後、工程A2で推定された水の膜厚と、工程A4で導出された上流LED30aの最大発光強度とに基づき、第3の相関を用いて、活物質合剤が沸騰するか否かを判定する(図8の工程A5)。
【0055】
そして、工程A5において活物質合剤が沸騰しないと判定された場合、上流LED30aのピーク発光波長は工程A4で導出したピーク波長に設定される(図8の工程A6)。すなわち、上流LED30aには、工程A4で導出したピーク波長がピーク発光波長となるLEDが用いられる。一方、工程A5において活物質合剤が沸騰すると判定された場合、上述した工程A3に戻り、工程A3〜A5を行う。そして、工程A5において活物質合剤が沸騰しないと判定されるまで、これら工程A3〜A5を繰り返し行う。
【0056】
本実施の形態においては、工程A5において、水の膜厚10μmに対して第3の相関における発光強度は0.6である。これに対して工程A4で導出された上流LED30aの最大発光強度は1.0である。したがって、活物質合剤は沸騰する。
【0057】
このように本実施の形態では、工程A5で活物質合剤が沸騰すると判定されたため、工程A3に戻る。工程A3において、第1の相関を用いて、最大吸収率の次の吸収率に対応するピーク波長を導出する。本実施の形態においては、ピーク波長は6μmである。その後、工程A4において、第2の相関を用いて、ピーク波長6μmに対する上流LED30aの最大発光強度0.5を導出する。その後、工程A5において、第3の相関を用いて、活物質合剤が沸騰するか否かを判定する。本実施の形態では、上流LED30aの最大発光強度が0.5であり、活物質合剤は沸騰しない。
【0058】
このように工程A5において活物質合剤が沸騰しないと判定されると、上流LED30aのピーク発光波長は工程A4で導出したピーク波長に設定される(図8の工程A6)。本実施の形態では、上流LED30aのピーク発光波長は6μmに設定される。すなわち、上流LED30aには、ピーク発光波長が6μmとなるLEDが用いられる。
【0059】
中流LED30bと下流LED30cのピーク発光波長についても、同様に上述した工程A1〜A6を行って設定される。そして、本実施の形態では、下流LED30cのピーク発光波長は3μmに設定される。また、中流LED30bのピーク発光波長は、3μmより大きく6μm未満のピーク発光波長である、例えば4.5μmに設定される。
【0060】
本実施の形態にかかる電極製造装置1は以上のように構成されている。次に、その電極製造装置1で行われる電極Eを製造するための処理について説明する。
【0061】
金属箔Mは巻出ロール10から巻き出され、塗工部11に搬送される。塗工部11では、搬送中の金属箔Mの表面に対して、塗工ヘッド20からスラリー状の活物質合剤Sが塗工される。この際、金属箔Mの両側に配置された塗工ヘッド20、20から活物質合剤Sを供給することで、金属箔Mの両面に活物質合剤Sが均一な膜厚で同時に塗工される。また、塗工ヘッド20から供給される活物質合剤Sは金属箔Mの短手方向の中央部に塗工される。さらに、塗工ヘッド20から活物質合剤Sを断続的に供給することで、金属箔Mの長手方向に複数の領域に活物質合剤Sが塗工される。
【0062】
その後、活物質合剤Sが塗工された金属箔Mは、乾燥部12に搬送される。乾燥部12では、金属箔Mの両側に配置された複数のLED30及び複数の反射板40からの赤外線による輻射加熱によって、金属箔Mの両面の活物質合剤Sが乾燥される。このとき、上述したように上流LED30aのピーク発光波長は6μmであり、中流LED30bのピーク発光波長は4.5μmであり、下流LED30cのピーク発光波長は3μmである。そして、活物質合剤Sが沸騰することなく、活物質合剤Sが赤外線を最大限に吸収して、活物質合剤Sが上記LED30で順次乾燥される。
【0063】
また、乾燥部12では、金属箔Mの両側において給気口41から乾燥領域D内に供給される空気による対流加熱によって、金属箔Mの両面の活物質合剤Sが乾燥される。さらに、乾燥領域D内で発生する給気口41から乾燥領域Dの端部への気流によって、活物質合剤Sから蒸発した水が乾燥領域Dの端部に円滑に流れ、当該蒸発した水が金属箔Mに再付着することなく除去される。こうして金属箔Mの両面の活物質合剤Sが乾燥され、当該金属箔Mの両面に所定の膜厚の活物質層Fが形成される。
【0064】
その後、活物質層Fが形成された金属箔Mは、巻取ロール13に搬送され、当該巻取ロール13に巻き取られる。こうして電極製造装置1における一連の処理が終了し、電極Eが製造される。
【0065】
以上の実施の形態によれば、乾燥部12が3つの領域Ta、Tb、Tcに分割され、一の領域Ta、Tb、TcにおけるLED30のピーク発光波長は活物質合剤Sが沸騰しない範囲の波長に設定されるので、従来のように金属箔上の活物質層の表面に凹凸が形成されることがなく、円滑な表面を有する活物質層Fを均一な膜厚で形成することができる。また、金属箔Mと活物質層Fとの境目で剥離が生じることも無い。しかも、一の領域Ta、Tb、TcにおけるLED30のピーク発光波長は水の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定されるので、活物質合剤Sを効率よく加熱して乾燥させることができる。そして、このようなLED30のピーク発光波長の設定が各領域Ta、Tb、Tc毎に行われるので、活物質合剤Sの乾燥時間を従来よりも短縮することができ、乾燥部12の長さも短くすることができる。以上のように本実施の形態によれば、金属箔Mの表面に活物質層Fを適切に且つ効率よく形成することができる。
【0066】
また、乾燥部12において、複数のLED30及び反射板40からの赤外線による輻射加熱と、給気口41から乾燥領域D内に供給される空気による対流加熱とによって、金属箔M上の活物質合剤Sが乾燥される。このように赤外線による輻射加熱と空気による対流加熱という2種類の乾燥方法を用いているので、当該活物質合剤Sをより適切に乾燥させることができる。さらに、赤外線による輻射加熱を用いた場合、LED30及び反射板40と金属箔Mとの間の距離に依存することなく赤外線の輻射熱が伝熱される。したがって、金属箔Mの反りや傾きに影響されることなく、活物質合剤Sを適切に加熱することができる。
【0067】
また、乾燥部12では、乾燥領域D内に給気口41から乾燥領域Dの端部への気流を発生させることができる。この気流によって、金属箔M上の活物質合剤Sを乾燥させる際に蒸発した水が乾燥領域Dの端部から排出されるので、当該蒸発した水が金属箔Mの表面に再付着することがない。したがって、金属箔M上の活物質合剤Sをより適切に乾燥させることができる。
【0068】
また、反射板40がLED30を挟んで金属箔Mの表面と対向して配置されているので、LED30から金属箔Mと反対側に放射された赤外線は、反射板40で反射して金属箔Mに放射される。したがって、赤外線の全てを利用することができ、金属箔M上の活物質合剤Sを効率よく乾燥させることができる。
【0069】
また、塗工部11において、金属箔Mの長手方向が水平方向となる向きに金属箔Mが搬送されるので、金属箔Mの表面に塗工された活物質合剤Sが当該金属箔Mの搬送方向の上流側又は下流側に流れることがない。さらに、金属箔Mの短手方向が鉛直方向となる向きに金属箔Mが搬送されるので、金属箔Mの両面に均一に活物質合剤Sを塗工することができる。このように塗工部11において活物質合剤Sを適切に塗工できるので、金属箔M上に活物質層Fをより適切に形成することができる。
【0070】
また、巻出ロール10と巻取ロール13との間において、長手方向が水平方向となる向きに金属箔Mが搬送されるので、金属箔Mの高さを一定に低くすることができ、電極製造装置1のメンテナンスが容易になる。したがって、金属箔Mの表面に活物質層Fを効率よく形成することができる。
【0071】
以上の実施の形態では、中流領域Tbにおいて中流LED30bのピーク発光波長を4.5μmに設定していたが、中流領域Tbにおいて、6μmのピーク発光波長を有する上流LED30aと3μmのピーク発光波長を有する下流LED30cを混合して配置してもよい。かかる場合、中流領域Tbにおける上流LED30aと下流LED30cは、活物質合剤Sが沸騰しない範囲で任意に配置できる。具体的には、活物質合剤Sが沸騰しないための調整は、例えば上流LED30aと下流LED30cの本数の比率を変更して調整してもよいし、あるいは例えば上流LED30aと下流LED30cを配置する間隔を変更して調整してもよい。いずれの場合でも、活物質合剤Sが沸騰しないので、当該活物質合剤Sを適切に乾燥させることができる。したがって、金属箔Mの表面に活物質層Fを適切に形成することができる。
【0072】
また、以上の実施の形態では、乾燥部12は3つの領域Ta、Tb、Tcに分割されていたが、乾燥部12を分割する領域の数は本実施の形態に限定されず、任意に設定することができる。例えば乾燥部12を2つの領域に分割してもよいし、4つ以上の領域に分割してもよい。いずれの場合でも、上述した工程A1〜A6を行って各領域のLED30のピーク発光波長を設定すれば、活物質合剤Sを沸騰させることなく、当該活物質合剤Sを適切に乾燥させることができる。
【0073】
また、以上の実施の形態では、活物質合剤Sの溶媒が水の場合について説明したが、活物質合剤の溶媒が他の材料、例えば有機溶剤である場合にも本発明を適用することができる。かかる場合、溶媒の種類に応じて、工程A1において図9で示した第1の相関と図11で示した第3の相関を予め導出する。そして、工程A2〜A6を行うことで、乾燥部12のLED30のピーク発光波長を適切に設定することができ、活物質合剤Sを適切に乾燥させることができる。
【0074】
以上の実施の形態の電極製造装置1では、巻出部として巻出ロール10が設けられていたが、巻出部の構成は本実施の形態に限定されず、金属箔Mを巻き出す構成であれば種々の構成を取り得る。同様に、巻取部として巻取ロール13が設けられていたが、巻取部の構成は本実施の形態に限定されず、金属箔Mを巻き取る構成であれば種々の構成を取り得る。
【0075】
また、以上の実施の形態の塗工部11には塗工ヘッド20が設けられていたが、塗工部11の構成は本実施の形態に限定されず、金属箔Mの表面に活物質合剤Sを塗工できる構成であれば種々の構成を取り得る。
【0076】
例えば以上の実施の形態では、塗工ヘッド20、20は金属箔Mの両側に対向して設けられていたが、いずれか一方の塗工ヘッド20が他方の塗工ヘッド20より下流側に配置されていてもよい。また、塗工ヘッド20の数は本実施の形態に限定されず、金属箔Mの両側にそれぞれ複数の塗工ヘッド20が配置されていてもよい。
【0077】
また例えば塗工部11において、インクジェット方式で金属箔Mの表面に活物質合剤Sを塗工してもよい。
【0078】
また例えば図12に示すように、塗工部11は、金属箔Mの表面に当接して当該金属箔Mにスラリー状の活物質合剤Sを塗工するローラ100と、ローラ100の表面に活物質合剤Sを供給するノズル101と、を有していてもよい。これらローラ100及びノズル101は、巻出ロール10と巻取ロール13の間を搬送中の金属箔Mの両側に対向して配置されている。
【0079】
ローラ100は、その軸方向が鉛直方向に延伸し、当該鉛直軸を中心に回転可能に構成されている。またローラ100は、金属箔Mに形成される活物質層Fの鉛直方向の長さと同じ長さで延伸し、金属箔Mの短手方向の中央部に活物質合剤Sを供給できる位置に配置されている。
【0080】
ノズル101も、ローラ100と同様に鉛直方向に延伸している。また、ノズル101のローラ100側の面には、鉛直方向に延伸し、ローラ100に活物質合剤Sを吐出する吐出口(図示せず)が設けられている。吐出口は、ローラ100の表面全体に活物質合剤Sを供給できる長さと位置に形成されている。なお、ノズル101には、図5に示した塗工ヘッド20と同様に、活物質合剤供給源(図示せず)に連通する供給管(図示せず)が接続されている。
【0081】
かかる場合、塗工部11では、ノズル101からローラ100の表面に活物質合剤Sを供給しながら、当該活物質合剤Sが付着したローラ100を金属箔Mの表面に当接させる。そうすると、ローラ100の表面に付着した活物質合剤Sが金属箔Mの表面に転写され、当該金属箔Mの表面に活物質合剤Sが塗工される。
【0082】
本実施の形態によれば、ローラ100から金属箔Mの表面に活物質合剤Sが塗工される際、当該ローラ100自体の表面と金属箔Mの表面との距離を調整することで、活物質合剤Sの膜厚を調整することができる。したがって、金属箔Mの表面に活物質合剤Sをより均一な膜厚で塗工することができる。
【0083】
以上の実施の形態の電極製造装置1では、金属箔Mは、その長手方向が水平方向であって、且つその短手方向が鉛直方向となる向きで搬送されていたが、図13及び図14に示すように金属箔Mは、その長手方向が水平方向(図13及び図14中のY方向)であって、且つその短手方向が水平方向(図13中のX方向)となる向きで搬送されていてもよい。かかる場合、巻出ロール10と巻取ロール13は同じ高さに配置されている。また、巻出ロール10と巻取ロール13は、その軸方向が水平方向(図13中のX方向)となる向きにそれぞれ配置されている。本実施の形態の電極製造装置1を用いた場合でも、上述した実施の形態の効果を享受することができる。
【0084】
以上の実施の形態では、活物質層Fは金属箔Mの長手方向に複数形成されているが、一の活物質層Fを備えた電極Eを形成する際にも、本発明の電極製造装置1は有用である。
【0085】
また以上の実施の形態では、電極製造装置1において金属箔Mの両面に活物質層Fを形成したが、電極Eを形成するためにはその他の処理、例えば金属箔Mのプレスや切断等も行われる。電極製造装置1は、巻出ロール10と巻取ロール13との間において、これらその他の処理も連続して行うようにしてもよい。
【0086】
また以上の実施の形態では、リチウムイオンキャパシタの電極Eを製造する場合について説明したが、電気二重層キャパシタに用いられる電極やリチウムイオン電池に用いられる電極を製造する場合にも、本発明の電極製造装置1を用いることができる。かかる場合、製造される電極の種類に応じて、金属箔Mの材質や活物質合剤Sの材料等を変更すればよい。
【0087】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0088】
1 電極製造装置
10 巻出ロール
11 塗工部
12 乾燥部
13 巻取ロール
30 LED
30a 上流LED
30b 中流LED
30c 下流LED
40 反射板
41 給気口
42 供給管
43 空気供給源
50 制御部
D 乾燥領域
E 電極
F 活物質層
M 金属箔
S 活物質合剤
Ta 上流領域
Tb 中流領域
Tc 下流領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の基材の両面に活物質層を形成して電極を製造する電極製造装置であって、
基材を巻き出す巻出部と、
前記巻出部で巻き出された基材を巻き取る巻取部と、
前記巻出部と前記巻取部との間に設けられ、活物質と溶媒を混合した活物質合剤を基材の両面に塗工する塗工部と、
前記塗工部と前記巻取部との間に設けられ、前記塗工部で塗工された前記活物質合剤を乾燥させて活物質層を形成する乾燥部と、を有し、
前記乾燥部は、基材の長手方向に並べて配置され、赤外線を発光する複数のLEDを有し、
前記乾燥部は、発光強度が最大となるLEDの発光波長が異なる複数の領域に分割され、
一の前記領域における前記LEDの発光波長は、当該一の領域での基材上の前記溶媒の膜厚に対して、前記活物質合剤が沸騰しない範囲の赤外線の波長であって、前記溶媒の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定されることを特徴とする、電極製造装置。
【請求項2】
前記溶媒は水であることを特徴とする、請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項3】
前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、
前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、
前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、
前記中流領域には、3μmより大きく6μm未満の発光波長のLEDが配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の電極製造装置。
【請求項4】
前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、
前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、
前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、
前記中流領域には、前記上流領域のLEDと前記下流領域のLEDが混合して配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の電極製造装置。
【請求項5】
前記乾燥部は、前記複数のLEDと基材との間に空気を供給する給気機構を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の電極製造装置。
【請求項6】
前記巻出部と前記巻取部は、基材の長手方向が水平方向であって、且つ基材の短手方向が鉛直方向となる向きで基材を搬送するように配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の電極製造装置。
【請求項7】
前記電極は、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオン電池に用いられる電極であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の電極製造装置。
【請求項8】
巻出部と巻取部との間で帯状の基材を搬送しながら、当該基材の両面に活物質層を形成して電極を製造する電極製造方法であって、
塗工部において、活物質と溶媒を混合した活物質合剤を基材の両面に塗工する塗工工程と、
その後、乾燥部において、前記塗工工程で塗工された前記活物質合剤を乾燥させて活物質層を形成する乾燥工程と、を有し、
前記乾燥部は、基材の長手方向に並べて配置され、赤外線を発光する複数のLEDを有し、
前記乾燥部は、発光強度が最大となるLEDの発光波長が異なる複数の領域に分割され、
一の前記領域における前記LEDの発光波長は、当該一の領域での基材上の前記溶媒の膜厚に対して、前記活物質合剤が沸騰しない範囲の赤外線の波長であって、前記溶媒の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定されることを特徴とする、電極製造方法。
【請求項9】
前記溶媒は水であることを特徴とする、請求項8に記載の電極製造方法。
【請求項10】
前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、
前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、
前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、
前記中流領域には、3μmより大きく6μm未満の発光波長のLEDが配置されていることを特徴とする、請求項9に記載の電極製造方法。
【請求項11】
前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、
前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、
前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、
前記中流領域には、前記上流領域のLEDと前記下流領域のLEDが混合して配置されていることを特徴とする、請求項9に記載の電極製造方法。
【請求項12】
前記乾燥部は、前記複数のLEDと基材との間に空気を供給する給気機構を有し、
前記乾燥工程において、前記複数のLEDからの赤外線による輻射加熱と、前記給気機構から供給される空気による対流加熱とによって、前記活物質合剤を乾燥させることを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載の電極製造方法。
【請求項13】
前記塗工工程と前記乾燥工程は、基材の長手方向が水平方向であって、且つ基材の短手方向が鉛直方向となる向きで搬送中の基材に対して行われることを特徴とする、請求項8〜12のいずれかに記載の電極製造方法。
【請求項14】
前記電極は、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオン電池に用いられる電極であることを特徴とする、請求項8〜13のいずれかに記載の電極製造方法。
【請求項15】
請求項8〜14のいずれかに記載の電極製造方法を電極製造装置によって実行させるために、当該電極製造装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体。
【請求項1】
帯状の基材の両面に活物質層を形成して電極を製造する電極製造装置であって、
基材を巻き出す巻出部と、
前記巻出部で巻き出された基材を巻き取る巻取部と、
前記巻出部と前記巻取部との間に設けられ、活物質と溶媒を混合した活物質合剤を基材の両面に塗工する塗工部と、
前記塗工部と前記巻取部との間に設けられ、前記塗工部で塗工された前記活物質合剤を乾燥させて活物質層を形成する乾燥部と、を有し、
前記乾燥部は、基材の長手方向に並べて配置され、赤外線を発光する複数のLEDを有し、
前記乾燥部は、発光強度が最大となるLEDの発光波長が異なる複数の領域に分割され、
一の前記領域における前記LEDの発光波長は、当該一の領域での基材上の前記溶媒の膜厚に対して、前記活物質合剤が沸騰しない範囲の赤外線の波長であって、前記溶媒の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定されることを特徴とする、電極製造装置。
【請求項2】
前記溶媒は水であることを特徴とする、請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項3】
前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、
前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、
前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、
前記中流領域には、3μmより大きく6μm未満の発光波長のLEDが配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の電極製造装置。
【請求項4】
前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、
前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、
前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、
前記中流領域には、前記上流領域のLEDと前記下流領域のLEDが混合して配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の電極製造装置。
【請求項5】
前記乾燥部は、前記複数のLEDと基材との間に空気を供給する給気機構を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の電極製造装置。
【請求項6】
前記巻出部と前記巻取部は、基材の長手方向が水平方向であって、且つ基材の短手方向が鉛直方向となる向きで基材を搬送するように配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の電極製造装置。
【請求項7】
前記電極は、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオン電池に用いられる電極であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の電極製造装置。
【請求項8】
巻出部と巻取部との間で帯状の基材を搬送しながら、当該基材の両面に活物質層を形成して電極を製造する電極製造方法であって、
塗工部において、活物質と溶媒を混合した活物質合剤を基材の両面に塗工する塗工工程と、
その後、乾燥部において、前記塗工工程で塗工された前記活物質合剤を乾燥させて活物質層を形成する乾燥工程と、を有し、
前記乾燥部は、基材の長手方向に並べて配置され、赤外線を発光する複数のLEDを有し、
前記乾燥部は、発光強度が最大となるLEDの発光波長が異なる複数の領域に分割され、
一の前記領域における前記LEDの発光波長は、当該一の領域での基材上の前記溶媒の膜厚に対して、前記活物質合剤が沸騰しない範囲の赤外線の波長であって、前記溶媒の赤外線の吸収率が最大になる波長に設定されることを特徴とする、電極製造方法。
【請求項9】
前記溶媒は水であることを特徴とする、請求項8に記載の電極製造方法。
【請求項10】
前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、
前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、
前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、
前記中流領域には、3μmより大きく6μm未満の発光波長のLEDが配置されていることを特徴とする、請求項9に記載の電極製造方法。
【請求項11】
前記乾燥部は、前記巻出部側から上流領域、中流領域及び下流領域の3つの領域に分割され、
前記上流領域に配置されるLEDの発光波長は6μmであり、
前記下流領域に配置されるLEDの発光波長は3μmであり、
前記中流領域には、前記上流領域のLEDと前記下流領域のLEDが混合して配置されていることを特徴とする、請求項9に記載の電極製造方法。
【請求項12】
前記乾燥部は、前記複数のLEDと基材との間に空気を供給する給気機構を有し、
前記乾燥工程において、前記複数のLEDからの赤外線による輻射加熱と、前記給気機構から供給される空気による対流加熱とによって、前記活物質合剤を乾燥させることを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載の電極製造方法。
【請求項13】
前記塗工工程と前記乾燥工程は、基材の長手方向が水平方向であって、且つ基材の短手方向が鉛直方向となる向きで搬送中の基材に対して行われることを特徴とする、請求項8〜12のいずれかに記載の電極製造方法。
【請求項14】
前記電極は、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオン電池に用いられる電極であることを特徴とする、請求項8〜13のいずれかに記載の電極製造方法。
【請求項15】
請求項8〜14のいずれかに記載の電極製造方法を電極製造装置によって実行させるために、当該電極製造装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−146850(P2012−146850A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4733(P2011−4733)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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