説明

電極集合体、放電加工方法及び放電加工装置

【課題】簡単かつ安価な電極構造で放電加工を効率良く実施する。
【解決手段】砥石加工装置は、テーブル10上に支持した砥石Sと電極集合体22との間に高周波電源30により電圧を印加してコロナ放電を発生させることにより砥石Sを加工する。電極集合体22は、複数本のいわゆる被覆電線23が並列かつ一列に配列されると共に先端部分が一体に固定され、前記複数本の導体のうち一本が各被覆電線23の先端側に所定長だけ突出して設けられることにより当該一本の導体の先端部分からなる複数の電極22aが前記被覆電線23の配列方向に一列に設けられたものであり、各被覆電線23が高周波電源30に並列接続されることにより各電極22aと砥石Sとの間にコロナ放電を発生せるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電現象を利用して被加工物を加工する放電加工装置に適した電極集合体、放電加工方法及び放電加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に開示されるような砥石の目立て(ドレッシング)装置が知られている。この装置は、メタルボンド砥石の砥石面に対して近接して配置された電極と前記砥石面との間にコロナ放電を発生させ、これによって砥石面のメタルボンド部分を溶融除去して砥石面の目立てを行うというものである。
【特許文献1】特開2000−246634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
大気圧下においてプラズマ放電加工を行う場合には、先端が細い放電電極を用いてコロナ放電を発生させるのがプラズマを安定的に生成する上で好ましい。
【0004】
しかし、放電電極が細くなると単位時間当たりの加工範囲(面積)は狭くなり加工時間を要する。そこで、単位時間当たりの加工面積を稼ぐために、例えば放電電極として先端部分に円錐形状や四角錐形状の多数の突起を規則的に形成したものを用いることが行われているが、このような電極は製作が難しく、また高価であるため装置のコスト高を招く要因の一つとなっていた。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みて成されたものであり、簡単かつ安価な電極構造で放電加工をより効率良く実施することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被加工物に対向するように近接して配置され、当該被加工物との間にコロナ放電を発生させるための電極集合体であって、複数本の導体が絶縁材により一体に被覆された被覆電線が複数本並列にかつ一列に配列されると共に隣接するものの絶縁材同士が接触するようにこれら被覆電線の先端部分が一体に固定され、各被覆電線の前記複数の導体のうち一本が前記絶縁材から電線先端側に所定長だけ突出して設けられることにより当該一本の導体の先端部分からなる複数の電極が前記被覆電線の配列方向に一列に設けられているものである。
【0007】
この電極集合体によれば、並列に並んだ各電極と被加工物との間にそれぞれコロナ放電が発生するころにより、電極の並び方向における一定の範囲を同時に加工することができる。しかも、この電極集合体は、いわゆる被覆電線を用いてこれらの末端部分を加工することにより構成されているため、簡単にかつ安価に製造することができる。例えば、複数本の導体が絶縁材により一体に被覆された複数本の被覆電線を用意する工程と、前記複数本の導体のうちの一本を各被覆電線の先端側に突出させることにより電極を形成する工程と、前記被覆電線を並列にかつ一列に配列すると共に隣接するものの絶縁材同士が接触するようにこれら被覆電線の先端部分を一体に固定することにより前記各電極が互いに前記被覆電線の直径とほぼ等しい間隔を隔てて並ぶ状態にする工程と、を経ることによって簡単に製造することができる。
【0008】
従って、以下の本発明の放電加工方法に従うことにより、簡単かつ安価な電極構造でもって効率良く被加工物を加工することができる。すなわち、本発明の放電加工方法は、導電性を有しかつ接地された被加工物を加工するための放電加工方法であって、前記被加工物の表面に請求項1に記載の電極集合体の各電極を近接させることと、前記被覆電線を介して各電極と前記被加工物との間にそれぞれ加工電圧を印加してコロナ放電を発生させながら前記電極の並び方向と直交する方向に前記被加工物と電極集合体とを相対的に移動させることと、を含むものである。
【0009】
なお、このような放電加工方法は砥石の加工に有用である。すなわち、導電性を有する結合材により砥粒を支持した砥石を前記被加工物として当該砥石に対向するように前記電極集合体の各電極を近接させ、各電極と前記砥石との間にコロナ放電を発生させて前記砥石面における結合材の一部を除去することにより当該砥石面の目立てを行うことができる。
【0010】
この方法によれば、上記の通り簡単かつ安価な電極構成でもって効率良く砥石(砥石面)の目立てを行うことができる。
【0011】
一方、本発明に係る放電加工装置は、放電電極を有し、導電性を有する被加工物に対向するように前記放電電極を近接配置した状態で前記被加工物と前記放電電極との間に加工電圧を印加することによりコロナ放電を発生させて前記被加工物を加工する放電加工装置において、前記被加工物を支持すると共に当該被加工物を接地する支持手段と、この支持手段に支持される被加工物に対向するように配置されかつ当該被加工物に対して相対的に移動可能に設けられる前記放電電極と、前記被加工物と前記放電電極との間に前記加工電圧を印加する電源と、を備え、前記放電電極として上記した電極集合体を有しており、前記相対移動方向と直交する方向に電極が並ぶように前記電極集合体が配置されると共に各電極が前記被覆電線を介して前記電源にそれぞれ接続されているものである。
【0012】
この放電加工装置によれば、上述したような放電加工方法に基づき効率良く被加工物を加工することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記の通り、本発明によれば、簡単かつ安価な電極構成でもって大気下においてコロナ放電を安定的に発生させながら効率良く被加工物を加工することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好ましい実施の形態について図面を用いて説明する。
【0015】
図1及び図2は、本発明に係る放電加工装置の一つである砥石加工装置(本発明に係る放電加工方法が実施される放電加工装置)の一例を示しており、図1は正面図で、図2は側面図でそれぞれ砥石加工装置を概略的に示している。
【0016】
同図に示す砥石加工装置(以下、加工装置と略す)は、導電性を有する砥石、具体的には導電性を有するメタルボンドを結合剤として所定の割合でダイヤモンド砥粒を支持したメタルボンド砥石をワークとし、大気圧下で放電現象を利用して砥石面に目立て(ドレッシング)を施すものである。
【0017】
加工装置は、ベース12と、このベース12上に移動可能に支持されるテーブル10(本発明の支持手段に相当する)と、このテーブル10を駆動する駆動機構と、前記テーブル10の上方に配置される加工用のヘッド20等とを備えており、前記テーブル10上に砥石Sを支持した状態で、前記ヘッド20に対して当該テーブル10と共に砥石Sを移動させながら(加工送りしながら)、前記ヘッド20により砥石Sを加工するように構成されている。
【0018】
上記駆動機構は、ベース12上に固定されるレール14,14と、これらレール14,14と平行に延びかつ前記テーブル10に設けられたナット部分10aに螺合挿入されるねじ軸18と、このねじ軸18の一端に連結されるモータ16等とを有しており、当該モータ16によりねじ軸18を回転駆動することにより前記テーブル10をレール14,14に沿って移動させる(加工送り)ように構成されている。
【0019】
前記テーブル10は、その一辺が前記加工送り方向(X方向)と平行な平面視矩形の形状を有しており、その上面には、前記加工送り方向と直交する方向(Y方向)に並ぶ2つの砥石支持部11a,11b(適宜第1支持部、第2支持部という)が設けられている。各支持部11a,11bは、図示を省略しているがチャック機構(図示省略)を各々備えており、個別に砥石を位置決めして固定できるように構成されている。
【0020】
なお、後述するが、これら支持部11a,11bのうち一方側(図2では左側)の第1支持部11aはワークとしての砥石Sを支持するものであり、他方側の第2支持部11bはダミー砥石Sdを支持するものである。
【0021】
前記ヘッド20は、テーブル10の可動領域内であって当該テーブル10の上方に配置されている。ヘッド20は、テーブル10をその幅方向(Y方向)に横断するように設けられており、コラム21に対して昇降可能に支持されかつねじ送り機構等からなる図外の駆動機構により駆動されるようになっている。
【0022】
前記ヘッド20のうち第1支持部11aに対向する位置には、砥石加工用の放電電極として電極集合体22が下向きに配置されており、第2支持部11bに対向する位置には、前記電極集合体22とは別に予備電極24が下向きに配置されている。
【0023】
電極集合体22は、複数の電極22aを一体的に備えたもので、複数本のいわゆる被覆電線23(複数本の導体を絶縁材により一体に被覆した電線;以下、単に電線23という)から構成されている。詳しくは、複数本の電線23が並列にかつ一列に配列されて絶縁材同士が接触するようにこれら電線23の先端部分が一体に固定され、前記複数本の導体のうち一本が各被覆電線23の先端側に所定長だけ突出して設けられることにより当該一本の導体からなる複数の電極22aが前記被覆電線23の配列方向に一列に設けられたものである。
【0024】
予備電極24も同様に被覆電線25(単に電線25という)から構成されている。すなわち、予備電極24は、電線25の先端部分に導体の露出部分が形成され、当該露出部分において複数本の導体のうち一本を残して他が除去されることにより当該一本の導体により前記予備電極24が構成されている。なお、当実施形態では、前記電線23,25として外径4mm、内径3mm(導体径0.31mm)の3.5sq線を用いて各電極22a、24が構成されている。
【0025】
図2に示すように、電極集合体22の各電極22a及び予備電極24は、前記電線23,25及び図外のコネクタ等を介して互いに並列接続で高周波電源30(本発明の電源に相当する)に接続されている。また、前記テーブル10は、電線31を介して接地(アース)されており、各支持部11a,11bに支持される砥石S,Sdを各々接地するようになっている。この構成により、各支持部11a,11bに支持される砥石S,Sdと前記電極22a,24との間に加工電圧を印加し得るようになっている。
【0026】
なお、予備電極24と高周波電源30との間には、当該予備電極24と高周波電源30とを導通状態と非導通状態とに切替えるスイッチ36が介設されており、このスイッチ36が制御装置34により切替え制御されるようになっている。この制御装置34は、砥石加工装置を統括的に制御する例えばNC装置等からなり、前記電極集合体22の電極22a(何れか一つ)に供給される電流の値を検出する電流計38の検出電流値に基づきスイッチ36を切替え制御する。
【0027】
次に、上記砥石加工装置の砥石Sの加工(目立て)動作について説明する。
【0028】
作業の開示に先立ち、まず、ワークである砥石Sを第1支持部11aに、ダミー砥石Sd(以下、ダミーSdという)を第2支持部11bにそれぞれ位置決め固定する。ここで、砥石Sは、上記の通りメタルボンドを結合剤として所定の割合でダイヤモンド砥粒を支持したメタルボンド砥石であり、一定の厚み寸法を有した平面視矩形のものである。又ダミーSdは、砥石Sと同じ材質のダイヤモンド砥石からなり、幅(Y方向寸法)が砥石Sよりも狭い以外は、その厚み及び長さ寸法(X方向寸法)は何れも砥石Sと同じ寸法に形成されている。
【0029】
これら砥石S及びダミーSdを、図1,2に示すように、砥石Sについてはその被加工面(砥石面)が上向きになる状態で、ダミーSdについはその上面が砥石Sの被加工面と等しくなるように各々支持部11a,11bに固定する。
【0030】
この作業が完了すると図外の開始スイッチの操作に基づき砥石Sの加工を開始する。
【0031】
開始スイッチが操作すると、まずテーブル10が駆動され、送り開始位置、すなわち砥石Sの一端(加工送り方向における一端)がヘッド20(電極集合体22)に対向する位置に砥石Sが配置される共に、ヘッド20が駆動され、電極集合体22(電極22a)と砥石S(砥石面)とのギャップh(図3参照)が所定寸法に調整される。当実施形態では、当該ギャップhがほぼ4.2mmに調整される。なお、このようにテーブル10及びヘッド20が駆動されることにより、ダミーSdも同様にその一端が予備電極24に対向する位置に配置され、また、ダミーSdと予備電極24とのギャップhが上記所定寸法に調整される。
【0032】
その後、高周波電源30により電極集合体22の各電極22aと砥石Sとの間に加工電圧が印加されると共にテーブル10が一定の送り速度で駆動される。これにより砥石Sの加工が開始されると共に電流計38により電極22aに供給される電流の値の検出が開始される。なお、この時点ではスイッチ36はオフ、すなわち予備電極24と高周波電源30とは非導通状態とされており、従って、予備電極24とダミーSdとの間に電圧は印加されていない。
【0033】
上記のように電極集合体22の各電極22aと砥石S(砥石面)との間に加工電圧が印加されると、各電極22aと砥石Sとの間にコロナ放電が発生し、これによりプラズマが生成されて砥石面のうち主にメタルボンド部分が除去される。つまり、砥石Sの目立てが行われる。この際、各電極22aにコロナ放電が発生すると、各電極22aを中心とする一定範囲に目立てが施され(図3中の破線参照)、これにより電極22aの並び方向に亘って一定の範囲内に連続的に目立てが施されることとなる。
【0034】
そして、このように各電極22aと砥石Sとの間に電圧が印加される一方で、テーブル10の駆動により砥石Sが電極集合体22に対して加工送りされることによって、砥石Sの一端側から順に一定幅でその砥石面に対して目立てが施されることとなる。
【0035】
なお、砥石Sの加工が開始されると、電流計38の検出値が制御装置34において監視され、当該検出値が予め定められた閾値に達すると、前記スイッチ36がオフからオンに切換えられて予備電極24と高周波電源30とが導通状態に切換えられ、これにより各電極22aに供給される電流の上昇が抑制される。すなわち、前記閾値は、電極集合体22(電極22a)と砥石Sとの間にアーク放電が発生するレベル(コロナ放電がアーク放電に遷移するレベル)の電流値より若干低い値に設定されており、検出値がこの閾値に達すると予備電極24と高周波電源30とが導通状態に切換えられることにより予備電極24とダミー砥石Sdとの間に電圧が印加されてコロナ放電が生成される。そして、このように予備電極24に電流が流れることによって高周波電源30にその内部抵抗30a(出力インピーダンス)による電圧降下が生じ、その結果、各電極22aと砥石Sとの間に印加される加工電圧が瞬時に低下して各電極22aに流れる電流の値の上昇が抑制される。つまり、各電極22aに供給される電流値の上昇が抑制されることにより、各電極22aと砥石Sとの間に生成されるコロナ放電が意図せずアーク放電に遷移することが防止されることとなる。
【0036】
こうして、ヘッド20に対して砥石Sがその末端まで加工送りされると、高周波電源30が停止されると共にテーブル10の駆動が停止され、これにより一連の砥石Sの加工が終了する。
【0037】
以上のように、この砥石加工装置では、複数の電極22aが一列に並ぶことにより一定の加工(目立て)幅を有する電極集合体22を用い、電極22aの並び方向(Y方向)と直交する方向(X方向)に砥石Sと電極集合体22とを相対的に移動させながら当該砥石Sに目立てを行うので、砥石Sに対して効率良く目立てを行うことができる。
【0038】
しかも、電極集合体22は、複数本の被覆電線23の末端を加工することにより前記電極22aを設けた非常に簡素な構成であるため、簡単にかつ安価に製造することができる。例えば、複数本の導体が絶縁材により一体に被覆された複数本の被覆電線23を用意する工程と、前記複数本の導体のうちの一本を各被覆電線23の先端側に突出させることにより電極22aを形成する工程と、前記被覆電線23を並列にかつ一列に配列すると共に隣接するものの絶縁材同士が接触するようにこれら被覆電線23の先端部分を一体に固定することにより前記各電極22aが互いに前記被覆電線23の直径とほぼ等しい間隔を隔てて並ぶ状態にする工程と、を経るだけで簡単に電極集合体22を製造することができる。
【0039】
従って、簡単かつ安価な電極構成でもってコロナ放電を安定的に発生させながら効率良く砥石Sを加工(目立て)することができる。
【0040】
なお、この実施形態では、上述のように外径4mm、内径(導体総径)3mmの3.5sq線を用いて電極22aを構成しているが、これは図5に示す試験結果に基づくものである。この試験は、図4に示すように、2つの電極22aを有する電極集合体22について、電極22aと砥石Sとの間隔hを4.2mmに設定し、高周波電源40により一定の加工電圧(4kV、5kHz)を一定時間(20s)印加したきの目立ての状態を、電線23の種類を変えて評価したものである。なお、砥石Sの幅(図4の左右方向の寸法)は7mmである。電極22aと砥石Sとの間隔h(4.2mm)は、コロナ放電が最も良好に発生し得ると考えられる値であって試験的に求めた値である。
【0041】
図5に示すように、電線23として8sq電線(電線径6.0mm、導体径0.45mm)を使用した場合には、中央部分に未加工部分が発生しており、これは電極間ピッチが広いためと考えられる。電極22aと砥石Sとの間隔hを広げるとやや改善されるが、この場合にはコロナ放電の発生が不安定となった。
【0042】
電線23として5.5sq電線(電線径5.0mm、導体径0.31mm)、3.5sq電線(電線径4.0mm、導体径0.31mm)を使用した場合には、砥石Sの幅方向全体に亘って加工を施すことできた。しかし、5.5sq電線の場合には、中央部分に加工ムラが生じてしまい均一加工が困難であった。電極22aと砥石Sとの間隔hを変えるとやや改善されるが傾向は同じてあった。
【0043】
電線23として2sq電線(電線径3.5mm、導体径0.26mm)を使用した場合には、砥石Sの端部に未加工部分が残ったがそれ以外の加工状態は概ね良好であった。従って、電極22aの数を増やすことで砥石Sの全体を良好に加工できると考察できる。
【0044】
この結果から、電線23として公称断面積(sq)が3.5sq以下のものを適用して電極集合体22を構成すれば、電極22aの並び方向における一定幅を連続的にかつ均一に加工することができることが考察できる。但し、2sq以下の電線23になると加工幅が狭くなる分、電極22a(電線23)の数を増やす必要が生じる。従って、少ない電極22aで広い加工幅を確保する観点からは3.5sqの電線23により電極集合体22を構成するのが好適と考えられる。
【0045】
ところで、上述した砥石加工装置は、本発明に係る砥石加工装置(本発明に係る砥石加工方法を実施可能な砥石加工装置)の一例であって、その具体的な構成等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、板状の砥石Sを加工するための砥石加工装置について説明したが、例えば砥石Sとして砥石車を加工(目立て)する場合には、砥石Sの支持手段としてモータ駆動の主軸を設け、この主軸に砥石Sを固定すると共に砥石軸方向に電極22aが並んだ電極集合体22を砥石面に対向するように配置し、主軸と砥石S等とを一体に回転駆動しながら電極集合体22により放電加工を行うように構成してもよい。例えば内面研削盤や円筒研削盤に対して本発明に係る砥石加工装置を組込む場合には、この構成を採用することができる。
【0047】
また、実施形態では、電極集合体22(電極22a)側に過電流が流れた際にアーク放電が発生するのを防止するために、予備電極24を高周波電源30に接続して当該予備電極24からダミー砥石Sdに電流を放電させて加工電圧を降下(低下)させるようにしているが、例えば、電極集合体22(電極22a)と予備電極24とを近接配置することにより予備電極24からの放電を被加工物である砥石Sに対して行うようにしてもよい。この構成によれば、電極集合体22と共通の砥石Sに対して予備電極24から放電を行うため、電極集合体22(電極22a)側と予備電極24側との通電条件をより等しくすることができ、従って、予備電極24からの放電時に電極集合体22(電極22a)側の放電状態が不安定になる等の不都合を良好に回避することが可能となる。
【0048】
また、電極集合体22(電極22a)に過電流が生じた際に加工電圧を低下させるための具体的な構成は、上記のように予備電極24を設ける以外に、例えば電極22aから砥石S及びテーブル10を通じてアース(接地)に至る電極22a側の通電経路と同等の抵抗値を有し、かつ高周波電源30に対して電極22aと並列に接続されるアース回路のようなものを設けてもよい。この構成によっても理論的には上記実施形態と同様の効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る放電加工装置の一つである砥石加工装置を示す正面略図である。
【図2】放電加を制御するための電気系統の図を含む砥石加工装置の側面略図である。
【図3】電極の構成を示すヘッドの要部拡大略図である。
【図4】放電加工試験の試験条件を示す模式図である。
【図5】放電加工試験の結果を示す表である。
【符号の説明】
【0050】
10 テーブル
20 ヘッド
22 電極集合体
22a 電極
23,25 被覆電線
24 予備電極
30 高周波電源
34 制御装置
36 電流計
38 開閉器
S 砥石
Sd ダミー砥石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に対向するように近接して配置され、当該被加工物との間にコロナ放電を発生させるための電極集合体であって、
複数本の導体が絶縁材により一体に被覆された被覆電線が複数本並列にかつ一列に配列されると共に隣接するものの絶縁材同士が接触するようにこれら被覆電線の先端部分が一体に固定され、各被覆電線の前記複数の導体のうち一本が前記絶縁材から電線先端側に所定長だけ突出して設けられることにより当該一本の導体の先端部分からなる複数の電極が前記被覆電線の配列方向に一列に設けられていることを特徴とする電極集合体。
【請求項2】
被加工物に対向するように近接して配置され、当該被加工物との間にコロナ放電を発生させるための電極集合体の製造方法であって、
複数本の導体が絶縁材により一体に被覆された複数本の被覆電線を用意する工程と、前記複数本の導体のうちの一本を各被覆電線の先端側に突出させることにより電極を形成する工程と、前記被覆電線を並列にかつ一列に配列すると共に隣接するものの絶縁材同士が接触するようにこれら被覆電線の先端部分を一体に固定することにより前記各電極が互いに前記被覆電線の直径とほぼ等しい間隔を隔てて並ぶ状態にする工程と、を含むことを特徴とする電極集合体の製造方法。
【請求項3】
導電性を有しかつ接地された被加工物を加工するための放電加工方法であって、
前記被加工物の表面に請求項1に記載の電極集合体の各電極を近接させることと、前記被覆電線を介して各電極と前記被加工物との間にそれぞれ加工電圧を印加してコロナ放電を発生させながら前記電極の並び方向と直交する方向に前記被加工物と電極集合体とを相対的に移動させることと、を含むことを特徴とする放電加工方法。
【請求項4】
請求項3に記載の放電加工方法であって、
導電性を有する結合材により砥粒を支持した砥石を前記被加工物として当該砥石に対向するように前記電極集合体の各電極を近接させ、各電極と前記砥石との間にコロナ放電を発生させて前記砥石面における結合材の一部を除去することにより当該砥石面の目立てを行うことを特徴とする放電加工方法。
【請求項5】
放電電極を有し、導電性を有する被加工物に対向するように前記放電電極を近接配置した状態で前記被加工物と前記放電電極との間に加工電圧を印加することによりコロナ放電を発生させて前記被加工物を加工する放電加工装置において、
前記被加工物を支持すると共に当該被加工物を接地する支持手段と、
この支持手段に支持される被加工物に対向するように配置されかつ当該被加工物に対して相対的に移動可能に設けられる前記放電電極と、
前記被加工物と前記放電電極との間に前記加工電圧を印加する電源と、を備え、
前記放電電極として請求項1に記載の電極集合体を有しており、前記相対移動方向と直交する方向に前記電極が並ぶように前記電極集合体が配置されると共に各電極が前記被覆電線を介して前記電源にそれぞれ接続されていることを特徴とする放電加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−76036(P2010−76036A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246516(P2008−246516)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【Fターム(参考)】