説明

電機子

【課題】コイルの占積率の向上を図りつつ、コイルをなす導体を構成する材料を工夫することで渦電流損を低減することができる電機子を提供する。総合的にみて回転電機のエネルギ効率を向上させることができる電機子を提供する。
【解決手段】複数のスロット12を有するコア11と、スロット12に巻装されるコイルとを備え、磁界を発生させる界磁3に対向配置されて当該界磁とともに回転電機1を構成する電機子7であって、コイルをなす線状導体は、スロット12の深さ方向に複数本並ぶように整列配置され、少なくともスロット12内の深さ方向で界磁3に最も近接した位置に配置される線状導体を近接導体31とするとともに、近接導体31よりも界磁3から離間した位置に配置される線状導体を離間導体32としたときに、近接導体31が離間導体32を構成する材料よりも抵抗率の大きい材料で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界を発生させる界磁に対向配置されて当該界磁とともに回転電機を構成する電機子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モータ(電動機)やジェネレータ(発電機)等として用いられる回転電機においては、より小さな体格でより大きな出力が可能であるものが求められる。したがって、回転電機のエネルギ効率を高めることは重要な課題の一つである。ここで、回転電機のエネルギ効率を高めるための技術としては、例えば、回転電機の電機子におけるコイルの占積率を向上させるものが従来から知られている。
【0003】
コイルの占積率を向上させるためには、例えばスロット内における通電方向に直交する断面の形状が略矩形状の導体を用いてコイルを構成することが考えられる。細線の導体を束ねてコイルを構成するのでは、細線間に隙間が生じてコイルの占積率が低下してしまうので、断面形状が略矩形状の導体を用いることにより、これを抑制するためである。以下の特許文献1〜3には、断面略矩形状の角線導体を用いて構成されたコイルを有するステータを備えた回転電機が記載されている。これらの回転電機では、占積率を向上させることにより、単位断面積当たりのアンペアターンを高めることで、その出力の向上が図られている。
【0004】
ここで、コイルをなす導体を構成する材料に関しては、特許文献1に記載されたステータのコイルでは銅が用いられている。銅はその物性値として比較的小さな抵抗率を有しているので、導体を構成する材料を銅とすれば、コイルに回転電機を駆動するための駆動電流を流したときに発生するジュール熱を小さく抑えることができる。したがって、エネルギ損失を小さく抑えることができる。このようなことから、一般には、銅を用いて導体が構成される場合が多い。
【0005】
また、特許文献2に記載されたステータのコイルではアルミニウムが用いられている。アルミニウムはその物性値として比較的小さな密度を有しているので、導体を構成する材料をアルミニウムとすれば、コイルの軽量化を図ることができ、回転電機全体の軽量化を図ることができる。また、アルミニウムは腐食しても導電性の化合物を析出しないため、コイル腐食の進行によるコイル相互間での短絡の防止を図ることができる。このようなことから、一般には、アルミニウムを用いて導体が構成される場合も多い。
【0006】
また、特許文献3に記載されたステータのコイルでは銅及びアルミニウムが用いられている。この特許文献3の記載によれば、コイルの軽量化及び腐食による短絡防止を図りつつ耐震性を向上させる目的で、回転電機の使用状態を考慮したときに、振動が大きく耐震性が要求される部分の導体を構成する材料を銅とするとともに、それ以外の部分の導体を構成する材料をアルミニウムとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−104293号公報
【特許文献2】特開2008−167567号公報
【特許文献3】特開2007−020302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、コイルの占積率の向上を図る目的で断面略矩形状の角線導体により構成されたコイルを用いる場合には、1本の角線導体における各辺の長さが長くなる。よって、例えば細線を束ねて構成された導体等を用いる場合と比較して、界磁としてのロータに対向する1本の導体の表面積が大きくなる。そのため、ロータが回転した際、永久磁石等からの磁界の変化によりロータ側の表面に、発生した渦電流が流れやすくなる。その結果、渦電流損が大きくなり、回転電機のエネルギ効率が却って低下する場合があるという問題があった。
【0009】
また、特許文献1及び2に記載されているように、コイルをなす導体を構成する材料を、それぞれの目的に応じて適宜選択することが行われており、更には特許文献3に記載されているように、異なる材料で構成された導体どうしを組み合わせ、これらを連結してコイルを構成することも行われている。しかし、導体を構成する材料を選択する際に、導体を構成する材料の物性がコイル表面に発生する渦電流によるエネルギ損失に影響を与えることは、これまでほとんど考慮されていなかった。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、コイルの占積率の向上を図りつつ、コイルをなす導体を構成する材料を工夫することで渦電流損を低減することができる電機子を提供することを目的とする。また、総合的にみて回転電機のエネルギ効率を向上させることができる電機子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するための、本発明に係る周方向に分散配置された複数のスロットを有するコアと、前記スロットに巻装されるコイルとを備え、磁界を発生させる界磁に対向配置されて当該界磁とともに回転電機を構成する電機子の特徴構成は、前記スロットは、前記界磁における前記コアとの対向面から離間する方向に所定の深さを有し、前記コイルをなす線状導体は、前記スロットの深さ方向に複数本並ぶように整列配置され、少なくとも前記スロット内の深さ方向で前記界磁に最も近接した位置に配置される前記線状導体を近接導体とするとともに、前記近接導体よりも前記界磁から離間した位置に配置される前記線状導体を離間導体としたときに、前記近接導体が前記離間導体を構成する材料よりも抵抗率の大きい材料で構成された点にある。
【0012】
なお、本願では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
また、「周方向」は、回転電機の中心軸回りの周回方向を表すものとする。
【0013】
上記の特徴構成によれば、線状導体をスロット内において整列配置することで、スロット内における空隙部分を減少させ、コイルの占積率を向上させることができる。
ただし、線状導体をスロット内において整列配置させようとすれば、ある程度の周方向幅及び深さ方向幅が必要となるので、それに伴い界磁に対向する線状導体の表面積も比較的大きくなる。そのため、界磁からの磁界の変化により、界磁側の表面に渦電流が流れやすい状況となる。
ところで、この渦電流が発生するのは、スロット内において深さ方向で界磁に最も近接している線状導体の表面である。そのため、当該位置にある線状導体を構成する材料の物性が渦電流の発生に与える影響は非常に大きいと言える。ここで、渦電流損の大きさは抵抗率に反比例するので、本構成のように、近接導体を構成する材料を、離間導体を構成する材料よりも抵抗率の大きい材料とすることで、コイル全体を離間導体を構成する材料のみで構成する場合と比較して、渦電流の発生を抑制して渦電流損を低減することができる。
したがって、コイルの占積率の向上を図りつつ、渦電流損を低減することができる。
【0014】
一方、スロット内において界磁側からみて深さ方向で近接導体の背後にある離間導体では、渦電流の発生が問題となることはほとんどない。このような離間導体では、コイルに回転電機を駆動するための駆動電流を流したときに発生するジュール熱がエネルギ損失の主な原因となる。この点、上記の構成では、離間導体を構成する材料は、近接導体を構成する材料よりも抵抗率の小さい材料となるので、コイル全体を近接導体を構成する材料のみで構成する場合と比較して、コイルに駆動電流を流したときに発生するジュール熱を小さく抑えることができる。
【0015】
以上より、スロット内における深さ方向で界磁側となる近接導体においては渦電流損を低減するとともに、反界磁側となる離間導体においてはジュール熱の発生を抑制することができるので、総合的にみて回転電機のエネルギ効率を向上させることができる電機子を提供することができる。
【0016】
ここで、前記近接導体及び前記離間導体は、いずれも前記各スロット内において周方向に1本のみ配置されている構成とすると好適である。
【0017】
この構成では、コイルをなす線状導体の周方向幅をスロットの周方向幅の範囲内で自由に設定することができるので、線状導体の界磁側の表面積が大きくなって渦電流が発生しやすい状況となる。したがって、上記の構成の電機子に本発明を適用することにより、有効に渦電流損を低減することができる。
【0018】
また、前記近接導体及び前記離間導体は、いずれも前記スロットの周方向幅と略等しい周方向幅を有する単一の角線により構成されている構成とすると好適である。
【0019】
この構成では、コイルをなす線状導体の界磁側の表面積がスロットの周方向幅に応じて大きくなるため、より渦電流が発生しやすい状況となる。したがって、上記の構成の電機子に本発明を適用することにより、特に有効に渦電流損を低減することができる。
また、上記の構成では、コアが有するスロットの周方向幅との関係においてコイルの占積率を最大化させて、回転電機のエネルギ効率をより向上させることができる。
【0020】
また、前記近接導体の通電方向に直交する面の断面積が、前記離間導体の通電方向に直交する面の断面積よりも大きく設定されている構成とすると好適である。
【0021】
この構成によれば、抵抗率が比較的大きい材料で構成されることによって大きくなりがちな、近接導体の単位長さ当たりの電気抵抗値を低下させることができる。よって、近接導体において発生するジュール熱が大きくなって、当該近接導体が過度に発熱する等の不都合が生じるのを抑制することができる。
なお、この場合において、単位長さ当たりの電気抵抗値が等しくなるように、近接導体及び離間導体の断面積が設定されている構成とすると、ジュール熱による発熱量をコイル全体に亘って均一化することができるので好適である。
【0022】
また、前記近接導体を構成する材料はアルミニウムであり、前記離間導体を構成する材料は銅である構成とすると好適である。
【0023】
なお、「アルミニウム」は、純品としてのアルミニウムだけでなく、これに微量のアルミニウム化合物や不純物等が含まれたものをも意味するものとする。また、「アルミニウム」には、アルミニウム合金も含まれるものとする。同様に、「銅」は、純品としての銅だけでなく、これに微量の銅化合物や不純物等が含まれたものをも意味するものとする。また、「銅」には、銅合金も含まれるものとする。
【0024】
この構成によれば、銅と、銅よりも抵抗率の高いアルミニウムを用いて、適切に離間導体及び近接導体を構成することができる。よって、スロット内における深さ方向で界磁側に配置されることになるアルミニウム製の線状導体では有効に渦電流損を低減するとともに、反界磁側に配置されることになる銅製の線状導体ではジュール熱の発生を抑制することができる。なお、いずれも安価に入手可能な銅及びアルミニウムを用いて本発明の特徴構成を実現することができるので、コスト面でも非常に有利である。
また、コイルをなす線状導体の一部に、金属の中でも比較的密度の小さいアルミニウムを用いることで、コイル及び電機子全体の軽量化を図ることもできる。
【0025】
また、前記コアは、軸方向に延びる複数の前記スロットを有して円筒状に形成され、前記コイルは、前記スロット内に配置されるコイル辺部と、異なる前記スロット内に配置される前記コイル辺部間を前記コアの軸方向両端部において接続するコイル端部とを備え、複数の前記コイル辺部を軸方向一方側の前記コイル端部と軸方向他方側の前記コイル端部とで交互に接続して前記コアの周方向を巡回する波形に形成され、前記コアの周方向を複数回巡回しつつ、同一の前記スロット内に配置される前記コイル辺部が当該スロット内において径方向に順次ずれて配置されている構成とすると好適である。
【0026】
なお、ここでは、「軸方向」、「径方向」及び「周方向」の各方向は、円筒状のコアを基準として定めるものとし、「軸方向」はコアの中心軸に沿った方向を、「径方向」は当該コアの中心軸に沿った方向(軸方向)に対して直交する方向を、「周方向」はコアの中心軸回りの周回方向を表すものとする。
【0027】
上記の構成は、軸方向に延びる複数のスロットが周方向に分散配置された円筒状のコアを備える、インナーロータ型及びアウターロータ型の回転電機用の電機子に適用する場合に特に有効な構成である。
この構成によれば、各スロット内において径方向に複数本並べて配置されるコイル辺部を、連続する1本の線状導線として構成することができる。よって、当該連続する1本の線状導線を近接導体と離間導体とで構成する場合であっても、近接導体と離間導体との間の連結箇所を1箇所のみとすることができる。したがって、特に製造工程を煩雑化させることなく、総合的にみて回転電機のエネルギ効率を向上させることができる電機子を提供することができる。
【0028】
本発明に係る車両用駆動装置の特徴構成は、これまで説明してきた電機子を備えた回転電機を有し、当該回転電機の回転が減速されて車輪に伝達される動力伝達機構を備えた点にある。
【0029】
これまで説明してきた電機子を備えた回転電機は、コイル全体が単一の材料を用いて構成された電機子を備えた回転電機と比較して、特に中〜高回転領域において高いエネルギ効率を実現する。したがって、そのような領域で使用される場合が多い車両駆動用の回転電機に、これまで説明してきた電機子を有効に適用することができる。
更に、回転電機の回転が減速されて車輪に駆動連結される動力伝達機構を備えた車両用駆動装置では、より一層中〜高回転領域(特に高回転領域)で回転電機が使用される場合が多くなるので、上記の構成を備えた車両用駆動装置に、これまで説明してきた電機子を有する回転電機を特に有効に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係る回転電機の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るステータの軸方向断面図である。
【図3】本実施形態に係るステータの軸方向に直交する面の断面図である。
【図4】本実施形態に係るステータのコイルを示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係る駆動装置の概略を示す模式図である。
【図6】本実施形態に係る回転電機の使用領域を示す図である。
【図7】最大トルク領域におけるエネルギ損失を比較して示したグラフである。
【図8】高頻度走行領域におけるエネルギ損失を比較して示したグラフである。
【図9】高速定常走行領域におけるエネルギ損失を比較して示したグラフである。
【図10】その他の実施形態に係るステータの軸方向に直交する面の断面図である。
【図11】その他の実施形態に係るステータの軸方向に直交する面の断面図である。
【図12】その他の実施形態に係るステータの軸方向に直交する面の断面図である。
【図13】その他の実施形態に係るステータの軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る電機子の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態においては、本発明に係る電機子を、回転電機1のステータ7に適用した場合を例として説明する。図1は、本実施形態に係る回転電機1の全体構成を示す斜視図である。この図に示すように、本実施形態における回転電機1は、略円筒状のステータコア11にコイル21が巻装されてなるステータ7と、このステータ7の径方向内側に回転可能に支持されたロータ3と、を備えている。すなわち、本実施形態における回転電機1は、電機子としてのステータ7を備えたインナーロータ型の回転電機とされている。本実施形態に係るステータ7は、ステータコア11が有するスロット12内におけるコイル21の占積率の向上を図りつつ、渦電流損を低減することを可能とするべく、抵抗率の異なる2つの材料を用いて線状導体を構成し、これらを組み合わせてコイル21を構成している点に特徴を有する。以下、この回転電機1の各部の構成について詳細に説明する。
【0032】
1.ロータの構成
図2及び図3に示すように、ロータ3は、略円筒状のロータコア4と永久磁石5とを備えている。また、図示は省略するが、ロータ3は、ロータコア4と一体回転するように固定されたロータ軸を備えており、このロータ軸が図示しないケースに回転可能に支持されている。これにより、ロータ3は、ステータ7の径方向内側に、当該ステータ7に対して回転可能に支持されている。ロータコア4は、複数枚の電磁鋼板を積層して構成されており、ここでは略円環板状の電磁鋼板を複数枚積層することにより略円筒形状に形成されている。
【0033】
ロータコア4には、周方向に均等な間隔で複数箇所に磁石挿入部が形成されており、当該磁石挿入部に永久磁石5が挿入されて固定されている。図示の例では、ロータコア3の内部に形成された空洞部からなる磁石挿入部に、永久磁石5が埋め込まれるようにして配置されている。各永久磁石5は、ロータ3の周方向に沿ってステータ7に対する磁界の向きが交互に反対となるように配置されている。すなわち、ロータ3の径方向外側から見て、ロータ3の周方向に沿ってN極とS極とが交互に表れるように各永久磁石5が配置されている。本実施形態においては、このロータ3が本発明における「界磁」に相当する。
【0034】
2.ステータの構成
ステータ7は、ロータ3に対向配置されてロータ3とともに回転電機1を構成している。図1及び図3に示すように、ステータ7は、周方向に分散配置された複数のスロット12を有するステータコア11と、スロット12に巻装されるコイル21とを備えている。本実施形態においては、ステータコア11は、軸方向に延びる複数のスロット12を有して略円筒状に形成されている。ステータコア11は、複数枚の電磁鋼板を積層して構成されており、ここでは略円環板状の電磁鋼板を複数枚積層することにより略円筒形状に形成されている。また、複数のスロット12は、ステータコア11の周方向に沿って所定間隔で設けられている。本実施形態においては、ステータコア11には、その全周で計48個のスロット12が設けられている。なお、本実施形態においては、ステータコア11が本発明における「コア」に相当する。
【0035】
各スロット12は、互いに同じ断面形状であって、所定の幅を有して形成されている。また、各スロット12は、ロータコア4におけるステータコア11との対向面4aから離間する方向に所定の深さを有して形成されている。本発明においては、このロータコア4におけるステータコア11との対向面4aから離間する方向を、「深さ方向」としている。なお、本実施形態では、ステータコア11が軸方向に延びる複数のスロット12を有して略円筒状に形成されているので、スロット12の深さ方向は径方向と一致している。
【0036】
各スロット12には、コイル21をなす線状導体が、スロット12の深さ方向に複数本並ぶように整列配置されている。ここで、「整列配置」とは、コイル21をなす線状導体が、スロット12の幅方向(周方向)及び深さ方向(径方向)に互いに隣接して予め定められた位置に整然と配列された状態を意味する。このとき、スロット12の深さ方向(径方向)には必ず複数本の線状導体が整列配置されるが、スロット12の幅方向(周方向)には1本又は複数本の線状導体が整列配置され得る。このように、スロット12内に線状導体を整列配置することで、スロット12内における空隙部分を減少させ、コイル21の占積率の向上が図られている。本実施形態においては、コイル21をなす線状導体が、各スロット12内において幅方向(周方向)に1本のみ配置されて構成されている。具体的には、図3に示すように、4本の線状導体が、各スロット12内において深さ方向(径方向)に一列に並んで配置されている。
【0037】
ここで、少なくともスロット12内の深さ方向で界磁としてのロータ3に最も近接した位置に配置される線状導体が近接導体31とされる。本実施形態のような、インナーロータ型の回転電機1が備えるステータ7においては、少なくとも径方向で最内周側の位置に配置される線状導体が近接導体31とされる。また、また、スロット12内の深さ方向で近接導体31よりも界磁としてのロータ3から離間した位置に配置される線状導体が離間導体32とされる。本実施形態のような、インナーロータ型の回転電機1が備えるステータ7においては、近接導体31よりも径方向で外周側の位置に配置される線状導体が離間導体32とされる。本実施形態においては、図3に示すように、各スロット12内において径方向で最内周側に配置される1本の線状導体が近接導体31とされ、径方向で外周側に配置される3本の線状導体が離間導体32とされている。近接導体31と離間導体32とは、互いに異なる材料を用いて構成されている。詳細については後述する。
【0038】
ステータ7は、複数の互いに異なる相のコイル21を備えている。本実施形態においては、ステータ7は三相交流で駆動される回転電機1に用いられるステータとされており、U相、V相、及びW相の三相のコイル21を備えている。各相のコイル21は線状導体を用いて形成されている。本実施形態においては、コイル21をなす線状導体は、単一の角線により構成されている。また、本例では、線状導線を構成する角線の周方向幅は、スロット12の周方向幅と略等しくなるように形成されている。より具体的には、線状導体の周方向幅は、線状導体を用いて形成されるコイル21が物理的にスロット12内に挿入可能であるという前提条件の下で、スロット12内の周方向幅と略等しい値に設定されている。なお、線状導体の表面は樹脂等からなる絶縁被膜により被覆されている。
【0039】
各相のコイル21は、所定形状に形成されている。本実施形態においては、各相のコイル21は、図4に示すように、全体として略円筒状の波型に形成されている。それぞれのコイル21は、スロット12内に配置されるコイル辺部22と、異なるスロット12内に配置される一対のコイル辺部22間をステータコア11の軸方向両端部において接続するコイル端部23と、を備えている。コイル辺部22は、スロット12の形状に対応して軸方向に沿って延びるように直線状に形成されている。コイル端部23は、それぞれ異なるスロット12に配置される一対のコイル辺部22間を接続して周方向に沿って延びるように形成されている。各コイル端部23は、図1に示すように、ステータコア11の軸方向両端部からステータコア11の軸方向に突出して配置されている。そして、図4に示すように、コイル21は、軸方向に延びて複数のスロット22内に順次配置される各コイル辺部22を、軸方向一方側のコイル端部23と軸方向他方側のコイル端部23とで交互に接続して、ステータコア11の周方向を巡回する波形に形成されている。このように、各相のコイル21は、各コイル辺部22がそれぞれ対応するスロット12内に配置された状態で、ステータコア11に波巻で巻装される形状となるように予め形成されている。
【0040】
また、本実施形態においては、コイル21は、同じスロット12内に配置される2本のコイル辺部22を一組として形成されている。2本一組のコイル辺部22は、連続する1本の線状導体を、ステータコア11の周方向に二巡回させて形成されている。また、同相のコイル21を構成する2本一組のコイル辺部22の二組が、互いに隣接するスロット12内に配置されるように周方向に並列して配置されている。二組のコイル辺部22は、コイル端部23の所定位置で連続するように接続されている。したがって、図4に示されるコイル21は、連続する1本の線状導体を、ステータコア11の周方向に四巡回させて形成されている。その際、ステータコア11の周方向を複数回巡回しつつ、同一のスロット12内に配置されるコイル辺部22が当該スロット12内において径方向内側に順次ずれて配置されるように形成されている。本例では、一巡目と二巡目とでは、互いに隣接するスロット12のそれぞれにおいてコイル辺部22が径方向外側に配置され、三巡目と四巡目とでは、互いに隣接するスロット12のそれぞれにおいてコイル辺部22が径方向内側に配置される。
【0041】
本実施形態においては、図4に示される形状と略同様の形状を有するコイル21が、同じスロット12内に径方向に隣接して二組配置される。したがって、隣接する2つのスロット12のそれぞれについて、同じ相の4本のコイル辺部22が径方向に一列に整列してスロット12内に配置される。このとき、本実施形態においては、上記のとおり各スロット12内において径方向で最内周側に配置される1本の線状導体が近接導体31とされており、それ以外の線状導体が離間導体32とされている。したがって、図4に示される形状と略同様の形状を有し、同じスロット12内に径方向に隣接して二組配置されるコイル21のうち、径方向外側に配置される一組のコイル21をなす線状導体はすべて離間導体32となる。一方、径方向内側に配置される他の一組のコイル21をなす線状導体のうち、径方向外側に配置されることになる二巡目までの線状導体は離間導体32となり、径方向内側に配置されることになる三巡目以降の線状導体は近接導体31となる。
【0042】
上記のとおり、近接導体31と離間導体32とは互いに異なる材料を用いて構成されている。したがって、近接導体31と離間導体32とは、それぞれ対応する材料で構成される連続する1本の線状導体を用いて予め所定形状に形成された後、コイル端部23の所定位置で連続するように連結されて、図4に示す形状のコイル21を形成する。近接導体31と離間導体32とは、溶接や蝋付け、他の部材を介した連結等、種々の方法により連結される。このようにして、近接導体31と離間導体32とを連結する連結部が各相のコイル21毎に一箇所ずつ設けられ(不図示)、近接導体31と離間導体32とは、あたかも連続する1本の線状導体を用いて構成されているかのように構成されている。
【0043】
図1及び図2に示すように、各相コイル21のステータコア11の軸方向両端部におけるコイル端部23のうち、軸方向一方側(図1における上側、図2における右側)のコイル端部23は、径方向内側へ屈曲形成された屈曲コイル端部24とされている。屈曲コイル端部24は、図2に示すように、コイル辺部22に対して略直角に径方向内側へ屈曲している。屈曲コイル端部24は、コイル辺部22から径方向に延びる径方向導体部25と、一対の径方向導体部25間を周方向に接続する周方向導体部26と、を備えている。
【0044】
本実施形態においては、径方向導体部25を構成する線状導体は、コイル辺部22からステータコア11の軸方向に延出した後、径方向内側に屈曲されるように形成されている。上記のとおり、コイル辺部22を構成する4本の線状導体は、スロット12内において径方向に一列に整列して配置されているので、径方向導体部25では、4本の線状導体は、一列に並んだ状態を保ちながら、軸方向に略平行な状態から径方向内側に屈曲され、径方向に略平行な状態になるように整列配置されている。なお、図1から明らかなように、径方向導体部25は、径方向導体部25どうしが周方向に重複することなく配置されている。また、径方向導体部25は、少なくともステータコア11の内周面に対して径方向内側まで延出している。なお、本実施形態では、屈曲コイル端部24を構成する線状導体のうち、コイル辺部22と周方向位置が同じ部分を径方向導体部25としている。
【0045】
周方向導体部26を構成する線状導体は、一方のスロット12に対応する径方向導体部25から他方のスロット12に対応する径方向導体部25へ向かって周方向に屈曲しながら延出されたあと径方向外側に屈曲されて他方のスロット12に対応する径方向導体部25につながるように形成されている。上記のとおり、径方向導体部25は少なくともステータコア11の内周面に対して径方向内側まで延出しているので、周方向導体部26はステータコア11の内周面に対して径方向内側に配置される。
この際、周方向導体部26では、スロット12内における径方向外側に配置されている2本の線状導体が径方向に並んで配置され、隣接する同じ相の2つのスロット12のそれぞれにおける径方向外側に配置されている2本の線状導体を併せて計4本の線状導体が径方向に並んで配置されている。また、スロット12内における径方向内側に配置されている2本の線状導体が径方向に並んで配置され、隣接する同じ相の2つのスロット12のそれぞれにおける径方向内側に配置されている2本の線状導体を併せて計4本の線状導体が径方向に並んで配置されている。
径方向に並んで配置されるこれら二組の4本の線状導体は、スロット12内において径方向外側に配置されるコイル辺部22から連続するものが軸方向一方側に配置され、スロット12内において径方向内側に配置されるコイル辺部22から連続するものが軸方向他方側に配置されている。
【0046】
3.線状導線の材質
次に、本発明の要部である、コイル21なす線状導体を構成する材料について詳細に説明する。本発明においては、少なくともスロット12内の深さ方向で界磁としてのロータ3に最も近接した位置に配置される近接導体31と、当該近接導体31よりも界磁としてのロータ3から離間した位置に配置される離間導体32とが、互いに異なる抵抗率を有する材料により構成される。ここで、近接導体31を構成する材料と離間導体32を構成する材料との間で抵抗率を比較すると、近接導体31を構成する材料の抵抗率は、離間導体32を構成する材料の抵抗率よりも大きくされる。つまり、近接導体31は、離間導体32を構成する材料よりも抵抗率の大きい材料で構成される。
なお、本明細書において「抵抗率」は、電気の通しにくさを表す電気抵抗率を意味するものとして用いており、複数の材料間でその大きさを比較する場合には、予め定められた所定の温度における電気抵抗率どうしを比較するものとする。
【0047】
ここで、回転電機1のエネルギ効率を低下させ得る複数の要因のうち、コイル21が関連するものとして、コイル21をなす線状導体における渦電流の発生による渦電流損と、回転電機1を駆動するための駆動電流によるジュール熱の発生とが挙げられる。
渦電流は、金属板等の近傍の磁界を急激に変化させたり、金属板等を強い磁界内で動かしたりした際に、金属内において周囲の磁界の変化を打ち消すように生じる渦状の電流のことである。回転電機1においては、ロータ3が回転したとき、ロータ3に対向する線状導体の表面に到達する永久磁石5からの磁界が急激に変化するので、コイル21をなす線状導体のロータ3側の表面に渦電流が発生する。その結果、当該渦電流によるエネルギ損失として渦電流損が発生する。
ジュール熱は、導体に電流を流したときに当該導体自体が有する電気抵抗によって失われる電気エネルギである。コイル21は線状導線により構成されるので、回転電機1を駆動するための駆動電流を流したとき、コイル21を構成する線状導体にジュール熱が発生する。以下では、この駆動電流により発生するジュール熱によるエネルギ損失を「銅損」と称して説明する。
【0048】
コイル21をなす線状導体に生じる渦電流損の大きさは、線状導体1本当たりの周方向幅と周波数と最大磁束密度との積の二乗に比例するとともに、線状導体を構成する材料の抵抗率に反比例する。すなわち、線状導体1本当たりの周方向幅をt[m]、周波数をf[Hz]、最大磁束密度をB[T]、線状導体を構成する材料の抵抗率をρ[Ω・m]とすると、渦電流損の大きさP[W]は、
P=k・(t・f・B)/ρ ・・・(式1)
で表される。ここで、kは比例定数である。このように、渦電流損Pは線状導体を構成する材料の抵抗率ρに反比例する。
【0049】
一方、銅損の大きさは、コイル21に流れる駆動電流の二乗と線状導体の電気抵抗値との積として算出される。ここで、電気抵抗値は、線状導体の長さに比例するとともにその断面積に反比例する。なお、このときの比例定数が、線状導体を構成する材料の抵抗率である。すなわち、コイル21に流れる駆動電流をI[A]、線状導体の電気抵抗値をR[Ω]、線状導体の長さをL[m]、線状導体の断面積をA[m]とすると、銅損の大きさQ[W]は、
Q=I・R=ρ・I・L/A ・・・(式2)
で表される。このように、銅損は線状導体を構成する材料の抵抗率ρに比例する。
【0050】
(式1)及び(式2)から明らかなように、線状導体を構成する材料を変更して抵抗率の大きさを変化させると、渦電流損及び銅損の大きさは互いに異なる方向に変化する。つまり、線状導体を構成する材料の抵抗率ρが大きいほど、渦電流損Pは小さくなるが銅損Qは大きくなる。一方、線状導体を構成する材料の抵抗率ρが小さいほど、銅損Qは小さくなるが渦電流損Pは大きくなる。
【0051】
ところで、渦電流損が発生するのは、主にスロット12内においてロータ3に最も近接して配置されることになる、径方向で最内周側に配置された線状導体の表面である。その背後に配置される、径方向で外周側に配置された線状導体では、渦電流の発生が問題となることはほとんどない。一方、銅損は、スロット12内における径方向での配置とは無関係に発生する。
本発明者らは、これらの点に着眼して、スロット12内においてロータ3に最も近接する、径方向の最内周側に配置される1本の近接導体31を、ロータ3からみて、当該近接導体31の背後であって径方向の外周側に配置される3本の離間導体32を構成する材料よりも抵抗率の大きい材料で構成した。言い換えれば、径方向の外周側に配置される3本の離間導体32を、径方向の最内周側に配置される1本の近接導体31を構成する材料よりも抵抗率の小さい材料で構成した。
【0052】
このような構成を採用したことにより、渦電流損の発生が問題となる近接導体31を、抵抗率が相対的に大きい材料で構成することで、(式1)にしたがって渦電流損Pを低減することができる。また、渦電流損の発生が問題とはならない離間導体32を、抵抗率が相対的に小さい材料で構成することで、(式2)にしたがって銅損Qを低減することができる。
【0053】
なお、本実施形態においては、コイル21の占積率の向上を図るべく、スロット12の周方向幅に略等しい周方向幅を有する単一の角線を用いて線状導体が構成されている。このような場合には、上記の(式1)において、線状導体1本当たりの周方向幅tが大きくなっており、線状導体を構成する材料の抵抗率ρの大きさが渦電流損Pの大きさに与える影響が比較的大きくなっている。つまり、このような場合には、線状導体を構成する材料を抵抗率ρが大きい材料に変更すると、渦電流損Pはより大きく減少する。よって、抵抗率ρを考慮して線状導体を構成する材料を選択することで、渦電流損Pを効果的に低減することが可能となっている。このような効果は、(式1)及び(式2)において周波数fが比較的大きく、駆動電流Iが比較的小さい場合に特に顕著に現れる。よって、そのような場合には、近接導体31を抵抗率が相対的に大きい材料で構成することで(式2)にしたがって銅損Qが多少大きくなったとしても、それ以上に渦電流損Pを低減することができる。
したがって、回転電機1の使用領域を適切に設定することにより、渦電流損の低減幅と銅損の増大幅との関係で、総合的に見てエネルギ損失を低減させて回転電機1のエネルギ効率を向上させることができる。
【0054】
近接導体31及び離間導体32のそれぞれを構成する材料の組み合わせは、近接導体31を構成する材料の抵抗率が離間導体32を構成する材料の抵抗率よりも大きくなるような組み合わせであれば、任意に決定することができる。ただし、コイル21全体の銅損を低減する観点からは、採用し得る全ての材料の中でも、できるだけ抵抗率が低い材料で離間導体32を構成することが好ましい。本実施形態においては、このような観点から、またコスト面をも考慮して、離間導体32を構成する材料を銅としている。ここで、離間導体32は、純品としての銅のみで構成されていても良いし、酸化銅等の銅化合物やその他の不純物等を含んでいても良い。また、銅ニッケル合金等の銅合金としても良い。
【0055】
この場合、近接導体31は、銅よりも抵抗率の大きい材料で構成される。本実施形態においては、コスト面をも考慮して、近接導体31を構成する材料を、銅の抵抗率の約1.6倍の抵抗率を有するアルミニウムとしている。ここで、近接導体31は、純品としてのアルミニウムのみで構成されていても良いし、酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物やその他の不純物等を含んでいても良い。また、ジルコニウムアルミ合金等のアルミニウム合金としても良い。
なお、アルミニウムは、銅よりも抵抗率の大きい材料の中でも特に密度が低い材料であるので、コイル21やステータ7、及び回転電機1全体の軽量化を図ることができるという利点もある。
【0056】
4.適用例
次に、本実施形態に係るステータ7を備えた回転電機1の適用例について説明する。ここでは、電動車両用の駆動装置40が備える回転電機に、本実施形態に係る回転電機1を適用した。図5に示すように、駆動装置40は、回転電機1と減速装置41とディファレンシャル装置42とを備えている。本実施形態においては、減速装置41は、複数のピニオンギヤを回転自在に支持するキャリアcaと、ピニオンギヤにそれぞれ噛合するサンギヤsと、リングギヤrと、を有するシングルピニオン型の遊星歯車装置とされている。回転電機1のロータ3のロータ軸はサンギヤsに駆動連結されている。リングギヤrはケースに固定されている。キャリアcaはディファレンシャル装置42を介して車輪43に駆動連結されている。このように、駆動装置40を備えた電動車両においては、回転電機1の回転が、ギヤ比(サンギヤsとリングギヤrとの歯数比)に基づいて減速装置41で減速された後、ディファレンシャル装置42で分配されて二つの車輪43に伝達される動力伝達機構を備えた構成となっている。そして、このような駆動装置40を備えた電動車両により、本実施形態に係る回転電機1のエネルギ効率の評価を行った。
【0057】
図6は、回転電機1の使用領域を示す図である。この図においては、横軸を回転電機1の回転数、縦軸を回転電機1の出力トルクとしている。そして、回転電機1を三つの異なる領域で使用することを想定して、各領域におけるエネルギ損失を測定してエネルギ効率の評価を行った。本例では、回転電機1を使用する三つの領域として、最大トルク領域A、高頻度使用領域B、及び高速定常走行領域Cを設定した。ここで、最大トルク領域Aは、回転電機1の回転数が比較的小さく、かつ出力トルクが最大値付近の領域(低回転高トルク領域)である。この最大トルク領域Aは、例えば電動車両の発進時等に使用されることを想定して設定された領域である。高頻度使用領域Bは、回転電機1の回転数及び出力トルクがともに中程度の領域(中回転中トルク領域)である。この高頻度使用領域Bは、例えば市街地等を電動車両が走行する際に使用されることを想定して設定された領域である。高速定常走行領域Cは、回転電機1の回転数が最大値付近であり、かつ出力トルクが比較的小さい領域(高回転低トルク領域)である。この高速定常走行領域Cは、例えば高速道路等を電動車両が走行する際に使用されることを想定して設定された領域である。
【0058】
そして、各領域A、B、C毎にそれぞれ一つずつ代表点を設定し、各代表点a、b、c毎にエネルギ損失を測定した。ここでは、エネルギ損失として、ロータ鉄損、ステータ鉄損、コイル21の渦電流損、及びコイル21の銅損を測定した。ロータ鉄損は、ロータ3が回転したときにロータコア4に生じる渦電流による損失である。ステータ鉄損は、ロータ3が回転したときにステータコア11に生じる渦電流による損失である。コイル21の渦電流損及び銅損については、既に詳細に説明したので、ここでは説明を省略する。なお、以下の説明において単に「渦電流損」及び「銅損」の用語を用いるときには、それぞれ「コイル21の渦電流損」及び「コイル21の銅損」を表すものとする。
【0059】
また、本実施形態に係る回転電機1のエネルギ損失を評価するため、比較例として、コイル21をなす線状導体の全体を銅で構成した回転電機、及びコイル21をなす線状導体の全体をアルミニウムで構成した回転電機をそれぞれ備えた電動車両においても、各回転電機について、各領域におけるエネルギ損失を測定してエネルギ効率の評価を行った。図7〜9は、各領域におけるエネルギ損失を比較して示したグラフである。なお、これらの図において、横軸に示された「Cu線」はコイル21をなす線状導体の全体を銅で構成した回転電機を、「Al線」はコイル21をなす線状導体の全体をアルミニウムで構成した回転電機を、「Cu+Al線」は本実施形態に係る回転電機1を表している。以下の説明では、これら「Cu線」、「Al線」、及び「Cu+Al線」の用語を用いて説明する。
また、Al線及びCu+Al線の棒グラフに併記された数値は、Cu線を基準とした場合の差分を表しており、その符号がプラス(+)の場合には損失が増大していることを表し、マイナス(−)の場合には損失が減少していることを表している。
【0060】
図7には、最大トルク領域Aにおけるエネルギ損失を比較して示している。ロータ鉄損及びステータ鉄損に関しては、ロータコア及びステータコアはいずれも電磁鋼板が積層されて構成されており、Cu線、Al線、及びCu+Al線の間で共通のため、ほとんど変化が見られない。なお、この点については、高頻度使用領域B及び高速定常走行領域Cに関しても同様である。最大トルク領域Aでは、Cu線に対して、Al線及びCu+Al線の双方で、銅損の増大及び渦電流損の低減が確認された。これらを総合した場合には、Al線ではエネルギ損失が+33.6%と大幅に増大し、Cu+Al線では+7.8%と多少増大していることが確認された。
【0061】
上記のとおり、最大トルク領域Aは、低回転高トルク領域である。この領域では、上記の(式1)及び(式2)において、大きなトルクを出力するために駆動電流Iが大きくなるとともに、回転数は低く抑えられるため周波数fは小さくなる。したがって、この領域では、相対的に渦電流損Pよりも銅損Qの方が全体のエネルギ損失に与える影響が大きくなり、コイル21をなす線状導体の一部を銅よりも抵抗率ρの大きいアルミニウムで構成したことによる銅損の増大が、渦電流損の低減効果に勝っている。
【0062】
図8には、高頻度使用領域Bにおけるエネルギ損失を比較して示している。高頻度使用領域Bでも、Cu線に対して、Al線及びCu+Al線の双方で、銅損の増大及び渦電流損の低減が確認された。ただし、これらを総合した場合には、Al線ではエネルギ損失が+7%と多少増大しているのに対して、Cu+Al線ではエネルギ損失が−1.9%と低減していることが確認された。
【0063】
上記のとおり、高頻度使用領域Bは、中回転中トルク領域である。この領域では、上記の(式1)及び(式2)において、中程度のトルクを出力するために駆動電流Iが中程度とされるともに、回転数が中程度とされるため周波数fも中程度とされる。この領域では、駆動電流Iと周波数fの大きさとの関係によって銅損Q及び渦電流損Pが全体のエネルギ損失に与える影響度が変化するが、少なくとも本例の代表点bにおける評価結果によれば、Cu線及びAl線と比較して、Cu+Al線ではエネルギ損失が低減してエネルギ効率が向上していることが確認された。この代表点bでは、銅損の増大効果に対して渦電流損の低減効果が勝ったことにより、全体のエネルギ損失が低減している。このように、銅損Qよりも渦電流損Pの方が全体のエネルギ損失に与える影響が大きくなる領域で本実施形態に係る回転電機1を使用することで、銅損の増大効果よりも渦電流損の低減効果を大きくして、回転電機1全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0064】
図9には、高速定常走行領域Cにおけるエネルギ損失を比較して示している。高速定常走行領域Cでも、Cu線に対して、Al線及びCu+Al線の双方で、銅損の増大及び渦電流損の低減が確認された。これらを総合した場合には、Al線及びCu+Al線の双方で、エネルギ損失が低減していることが確認された。エネルギ損失の低減量は、Al線で−3.6%、Cu+Al線で−4.4%であった。
【0065】
上記のとおり、高速定常走行領域Cは、高回転低トルク領域である。この領域では、上記の(式1)及び(式2)において、回転数を高く維持するために周波数fが大きくなるとともに、出力トルクが小さく抑えられるために駆動電流Iは小さくなる。したがって、この領域では、相対的に銅損Qよりも渦電流損Pの方が全体のエネルギ損失に与える影響が大きくなり、コイル21をなす線状導体の一部を銅よりも抵抗率ρの大きいアルミニウムで構成したことによる渦電流損の低減効果がより強く現れた結果となっている。これにより、エネルギ損失が低減して回転電機1全体のエネルギ効率が向上している。
【0066】
このように、エネルギ損失の評価を通じて、コイル21をなす線状導体の全体を銅やアルミニウムで構成した回転電機と比較して、本実施形態に係る回転電機1は、高速定常走行領域C(高回転低トルク領域)及び高頻度使用領域B(中回転中トルク領域)において高いエネルギ効率を実現することが確認された。車両駆動用の回転電機においては、最大トルク領域A(低回転高トルク領域)で使用される時間に比べて、高頻度使用領域B(中回転中トルク領域)や高速定常走行領域C(高回転低トルク領域)で使用される時間が圧倒的に長い。そのため、車両駆動用の回転電機に、本実施形態に係る回転電機1を有効に適用できることが分かった。なお、本実施形態に係る回転電機1を用いることで高いエネルギ効率を実現することが期待される領域を、図6において左下がりの斜線を付して示している。
【0067】
また、本実施形態に係る回転電機1は、その中でも特に高速定常走行領域C(高回転低トルク領域)において、非常に高いエネルギ効率を実現している。回転電機1から出力される回転が減速されて車輪に伝達される動力伝達機構を備えた構成の駆動装置40では、回転電機1の回転速度は高回転となりやすい。したがって、そのような構成の駆動装置40に対して、本実施形態に係る回転電機1を特に有効に適用できることが分かった。
【0068】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態においては、離間導体32を構成する材料を銅とするとともに、近接導体31を構成する材料をアルミニウムとした場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、近接導体31及び離間導体32のそれぞれを構成する材料の組み合わせは、近接導体31を構成する材料の抵抗率が離間導体32を構成する材料の抵抗率よりも大きくなるような組み合わせであれば、任意に決定することができる。
一例として、近接導体31及び離間導体32を、銅、アルミニウム、タングステン、及び亜鉛の中から選択される二種類の材料の組み合わせで構成する場合には、これらの材料の抵抗率の大きさは、小さい方から順に銅、アルミニウム、タングステン、亜鉛であるので、近接導体31及び離間導体32の組み合わせを(近接導体31、離間導体32)と表現した場合に、(アルミニウム、銅)、(タングステン、銅)、(亜鉛、銅)、(タングステン、アルミニウム)、(亜鉛、アルミニウム)、及び(亜鉛、タングステン)の、いずれかの組み合わせを採用することができる。
【0069】
(2)上記の実施形態においては、コイル21をなす線状導体が、各スロット12内において幅方向(周方向)に1本のみ配置されて構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、コイル21をなす線状導体が、各スロット12内において幅方向(周方向)に複数本配置された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。図10には、一例として、各スロット12内において線状導体が幅方向(周方向)に2本配置される場合の様子を示している。この場合、スロット12内の最内周側において幅方向(周方向)に並んで配置される2本の線状導体の双方を近接導体31として、これらの線状導体が離間導体32を構成する材料よりも抵抗率の大きい材料で構成される。
【0070】
(3)上記の実施形態においては、各スロット12内において、4本の線状導体がスロット12の深さ方向(径方向)に一列に並んで配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、スロット12の深さ方向(径方向)並んで配置される線状導体の本数は自由に設定することができる。例えば図11に示すように、各スロット12内において、6本の線状導体がスロット12の深さ方向(径方向)に一列に並んで配置されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0071】
(4)上記の実施形態においては、各スロット12内において径方向で最内周側に配置される1本の線状導体のみが近接導体31とされ、径方向で外周側に配置される残余の線状導体が離間導体32とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、少なくともスロット12内の深さ方向(径方向)で界磁としてのロータ3に最も近接した位置に配置される線状導体が近接導体31とされていれば、最内周側に配置される1本の線状導体以外の線状導体も近接導体31とすることができる。例えば図11に示すように、各スロット12内において、径方向で内周側に配置される2本の線状導体が近接導体31とされ、径方向で外周側に配置される残余の線状導体が離間導体32とされる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0072】
(5)上記の実施形態においては、コイル21を構成する線状導体の通電方向に直交する面の断面積に関しては特に考慮がなされておらず、図1や図3に示すように、基本的にはコイル21の全体に亘ってその断面積が等しく設定されているとして説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、近接導体31の通電方向に直交する面の断面積が、離間導体32の通電方向に直交する面の断面積よりも大きく設定されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような構成は、例えば図12に示すように、近接導体31を構成する角線の周方向幅をスロット12の周方向幅と略等しく設定したまま、その径方向幅を近接導体31を構成する角線の径方向幅よりも広く設定することで実現できる。
この構成では、抵抗率ρが比較的大きい材料で構成されることによって大きくなりがちな、近接導体31の単位長さ当たりの電気抵抗値Rを低下させることができる。よって、近接導体31において発生するジュール熱が大きくなって、当該近接導体31が過度に発熱する等の不都合が生じるのを抑制することができる。
なお、この場合において、単位長さ当たりの電気抵抗値Rが等しくなるように、近接導体31及び離間導体32の断面積が設定されている構成とすると、ジュール熱による発熱量をコイル21の全体に亘って均一化することができるので更に好ましい。
【0073】
(6)上記の実施形態においては、線状導線を構成する角線の周方向幅が、スロット12の周方向幅と略等しくなるように形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、線状導線を構成する角線の周方向幅は、スロット12の周方向幅の範囲内で自由に設定することができる。
【0074】
(7)上記の実施形態においては、各相コイル21のステータコア11の軸方向両端部におけるコイル端部23のうち、軸方向一方側のコイル端部23が径方向内側へ屈曲形成された屈曲コイル端部24とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば軸方向両端側のコイル端部23の双方が径方向内側へ屈曲形成された屈曲コイル端部24とされた構成とすることや、或いは、軸方向両端側のコイル端部23の双方が径方向内側へ屈曲形成されていない構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0075】
(8)上記の実施形態においては、各相のコイル21は、各コイル辺部22がそれぞれ対応するスロット12内に配置された状態で、ステータコア11に波巻で巻装される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、ステータコア11への各相のコイル21の巻き方は自由に設定することができ、例えば各相のコイル21が、各コイル辺部22がそれぞれ対応するスロット12内に配置された状態で、ステータコア11に重ね巻で巻装される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。なお、上記のとおりステータコア11への各相のコイル21の巻き方は任意であり、波巻及び重ね巻のいずれの場合においても、それぞれ分布巻及び集中巻の双方を採用することができる。
【0076】
(9)上記の実施形態においては、ステータ2が三相交流で駆動される回転電機1に用いられるステータとされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、ステータ2が単相交流で駆動される回転電機1に用いられる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。或いは、二相或いは四相以上の交流電源で駆動される回転電機1に用いられる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0077】
(10)上記の実施形態においては、本発明に係る電機子を回転電機1のステータ7に適用し、当該回転電機1を、電機子としてのステータ7を界磁としてのロータ3の径方向外側に配置して備えたインナーロータ型の回転電機とした場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、上記の構成において本発明に係る電機子を回転電機の回転子に適用し、当該回転電機を、電機子としての回転子を備えたアウターロータ型の回転電機とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
また、本発明に係る電機子を回転電機1のステータ7に適用し、当該回転電機1を、電機子としてのステータ7を界磁としてのロータ3の径方向内側に配置して備えたアウターロータ型の回転電機とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。さらにこの場合において、本発明に係る電機子を回転電機の回転子に適用し、当該回転電機を、電機子としての回転子を備えたインナーロータ型の回転電機とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0078】
(11)上記の実施形態においては、本実施形態に係るステータ7を備えた回転電機1を、電動車両用の駆動装置40に適用した場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば回転電機1以外にも車両の駆動力源としてエンジンを備えたハイブリッド車両用の駆動装置に適用することも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0079】
(12)上記の実施形態においては、駆動装置40が、遊星歯車装置により構成される減速装置41を備えて構成され、回転電機1の回転が減速装置41で減速されて車輪43に伝達される構成となっている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば減速装置として有段又は無段の変速装置を備える構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。或いは、互いに噛み合う歯車どうしの歯数比に応じて減速比が決定される構成の減速装置を備える構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、これらの減速装置41を備えず、回転電機1の回転が減速されずに車輪43に伝達される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0080】
(13)上記の実施形態においては、本実施形態に係るステータ7を備えた回転電機1を、電動車両を駆動するための車両駆動用の回転電機に適用した場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、車両駆動用以外のあらゆる目的で使用される回転電機に、本発明を適用することができる。
【0081】
(14)上記の実施形態においては、ステータコア11が軸方向に延びる複数のスロット12を有して略円筒状に形成された、インナーロータ型の回転電機1に本発明を適用した場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば図13に示すように、ステータコア11が、径方向に放射状に延びるとともに周方向に分散配置された複数のスロット12を有して略円板状に形成され、ロータコア3も径方向に放射状に延びるとともに周方向に分散配置された複数の永久磁石を有して略円盤状に形成され、ステータコア11とロータコア3とを軸方向に所定の隙間を設けて並べた、フラット型(アキシャルギャップ型)の回転電機1に本発明を適用することも可能である。
この場合、各スロット12の深さ方向(ロータ3におけるステータコア12との対向面4aから離間する方向)は、回転電機の回転軸の軸方向と一致する。したがって、このようなフラット型の回転電機1では、例えば軸方向で最もロータ3に近接して配置される1本の線状導体を近接導体31としてアルミニウムで構成し、軸方向で近接導体31よりもロータ3から離間して配置される残余の線状導体を離間導体32として銅で構成することで、回転電機1全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、磁界を発生させる界磁に対向配置されて当該界磁とともに回転電機を構成する電機子に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 回転電機
3 ロータ(界磁)
7 ステータ(電機子)
11 ステータコア(コア)
12 スロット
21 コイル
22 コイル辺部
23 コイル端部
31 近接導体
32 離間導体
40 駆動装置
41 減速装置
43 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に分散配置された複数のスロットを有するコアと、前記スロットに巻装されるコイルとを備え、磁界を発生させる界磁に対向配置されて当該界磁とともに回転電機を構成する電機子であって、
前記スロットは、前記界磁における前記コアとの対向面から離間する方向に所定の深さを有し、
前記コイルをなす線状導体は、前記スロットの深さ方向に複数本並ぶように整列配置され、
少なくとも前記スロット内の深さ方向で前記界磁に最も近接した位置に配置される前記線状導体を近接導体とするとともに、前記近接導体よりも前記界磁から離間した位置に配置される前記線状導体を離間導体としたときに、
前記近接導体が前記離間導体を構成する材料よりも抵抗率の大きい材料で構成された電機子。
【請求項2】
前記近接導体及び前記離間導体は、いずれも前記各スロット内において周方向に1本のみ配置されている請求項1に記載の電機子。
【請求項3】
前記近接導体及び前記離間導体は、いずれも前記スロットの周方向幅と略等しい周方向幅を有する単一の角線により構成されている請求項2に記載の電機子。
【請求項4】
前記近接導体の通電方向に直交する面の断面積が、前記離間導体の通電方向に直交する面の断面積よりも大きく設定されている請求項3に記載の電機子。
【請求項5】
前記近接導体を構成する材料はアルミニウムであり、前記離間導体を構成する材料は銅である請求項1から4のいずれか一項に記載の電機子。
【請求項6】
前記コアは、軸方向に延びる複数の前記スロットを有して円筒状に形成され、
前記コイルは、
前記スロット内に配置されるコイル辺部と、異なる前記スロット内に配置される前記コイル辺部間を前記コアの軸方向両端部において接続するコイル端部とを備え、
複数の前記コイル辺部を軸方向一方側の前記コイル端部と軸方向他方側の前記コイル端部とで交互に接続して前記コアの周方向を巡回する波形に形成され、
前記コアの周方向を複数回巡回しつつ、同一の前記スロット内に配置される前記コイル辺部が当該スロット内において径方向に順次ずれて配置されている1から5のいずれか一項に記載の電機子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載された電機子を備えた回転電機を有し、当該回転電機の回転が減速されて車輪に伝達される動力伝達機構を備えた車両用駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−183741(P2010−183741A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25168(P2009−25168)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】