説明

電気めっき装置及び電気めっき方法

【課題】めっき液の溶存酸素濃度を調整できるとともに、フィルター交換に起因するコストを削減できる電気めっき装置及び電気めっき方法を提供する。
【解決手段】電気めっき装置11は、めっき液が貯留されるめっき槽13と、このめっき槽13とは別体の槽であって前記めっき槽13との間で前記めっき液が循環する別槽15と、を備えている。別槽15は、その内部に第1空間17とこの第1空間17よりも下流側に位置する第2空間19とを有している。第1空間17内のめっき液のうち所定高さを超えた分が第1空間17から第2空間19に流れ込み、この第2空間19において空気中を流下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気めっき装置及び電気めっき方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気めっきは、例えばプリント基板に配線パターンを形成する用途などに利用されている。例えば硫酸銅電気めっきにおいては、光沢、皮膜物性、つきまわり性、ビアホールへのフィリング性などの目的とする皮膜性能を得るためにめっき液にはブライトナー、キャリアー、レベラーなどと呼ばれる促進剤や抑制剤などの種々の添加剤が添加されている。
【0003】
これらの添加剤は、基板表面では抑制剤が効果的に働き、スルーホールやビアホールの中では促進剤が効果的に働くことにより、スルーホールへのつきまわりやビアホールの穴埋めを促進することができる。しかし、めっき液中において促進剤が過剰になると、抑制剤による活性核の成長を抑制する効果が低下して緻密な皮膜が得られず皮膜の物性が低下する。また、基板の表面への析出抑制効果が低下して、スルーホールのつきまわりが悪くなる、ビアホールの穴埋め性が悪くなるなどの不具合が生じることがある。一方、めっき液中において促進剤が不足すると、活性核の発生を促進する効果が低下して緻密な皮膜が得られず皮膜の物性が低下する。また、スルーホールやビアホール内への促進効果が不足してスルーホールのつきまわり性が悪くなり、ビアホールの穴埋め性が悪くなるなどの不具合が生じることがある。したがって、めっき液中の各種添加剤は適正なバランスで添加されることが重要である。
【0004】
また、めっき液中の溶存酸素濃度は、電気めっきの皮膜性能に影響を与える要因の一つであることも知られている。その理由について、硫酸銅電気めっきの一般的なブライトナーであるビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド(SPS)を用いた場合を例に挙げて説明する。すなわち、めっき処理中には次のような一連の酸化還元反応が起こっている。カソードの表面ではSPSが還元されて3−メルカプトプロパン−1−スルホン酸(MPS)となる。SPSは、カソードの近傍で2つのMPSが1つのSPSに戻るときに銅イオンを還元することで促進剤として働く。この反応に関わらないMPSは溶存酸素により酸化されてSPSに戻る。しかし、溶存酸素が不足するとMPSがCuと結合してCu−MPSとして蓄積していく。Cu−MPSが蓄積するとブライトナー濃度が過剰となり、目的とする皮膜性能が十分に得られない。酸素濃度が過剰となると酸素により酸化されるMPSの量が多くなり銅イオンを還元するMPSの量が低下するために促進効果が不足するので、目的とする皮膜性能が十分に得られない。
【0005】
このように、めっき液中の溶存酸素濃度を適正な範囲に調整する必要があるが、陽極として可溶性アノードを用いる場合には、金属銅の溶解などにより溶存酸素が消費され、めっき液中の溶存酸素濃度が低くなりやすく、陽極として不溶解性アノードを用いる場合には、アノードから酸素が発生するので、めっき液中の溶存酸素濃度が高くなりやすい。そこで、めっき液中の溶存酸素濃度を所定の範囲に調整する種々の技術が提案されている。
【0006】
例えば特許文献1には、陽極として可溶性アノードを用いた電気めっき装置が開示されている。この装置は、めっき液が貯留されるめっき槽と、このめっき槽とは別体の別槽とを備え、前記めっき槽と別槽との間をめっき液が循環する構造を有している。この装置では、別槽においてエア吹込管を通じてめっき液中に空気を吹き込むことにより、めっき液の溶存酸素濃度を5ppm以上に維持して皮膜の品質劣化を解消できる、とされている。
【0007】
また、特許文献2には、陽極として不溶解性アノードを用いた電気めっき方法が開示されている。この方法では、めっき槽において空気又は不活性ガスによってめっき液を撹拌することにより、めっき液の溶存酸素濃度を30mg/リットル以下に維持して被めっき物中の非貫通孔内部を長期間安定して充填することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−143478号公報
【特許文献2】特開2007−169700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年、プリント基板などにおける配線、スルーホール、ビアホールなどが微細化しているため、めっきに要求される品質も高まっている。例えばめっき液中に異物が浮遊していると、この異物が核となってめっきの皮膜の一部にノジュール(こぶ状の部位)が発生することがあるので、電気めっき装置には、めっき液中の異物をめっき液から分離するフィルターが設けられている。このフィルターはめっき液を濾過してめっき液中の種々の異物をめっき液から分離することができる。
【0010】
しかしながら、フィルターに例えば銅粒子などの金属粒子が多く付着すると、この金属粒子によりめっき液中の溶存酸素が消費されたり、めっき液に含まれる添加剤(例えば硫黄系添加剤など)が変質したりすることがある。したがって、めっきの皮膜の品質低下を抑制するためには、頻繁にフィルターを交換する必要があった。
【0011】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、めっき液の溶存酸素濃度を調整できるとともに、フィルター交換に起因するコストを削減できる電気めっき装置及び電気めっき方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電気めっき装置は、めっき液が貯留されるめっき槽と、このめっき槽とは別体の槽であって前記めっき槽との間で前記めっき液が循環する別槽と、を備えている。前記別槽は、その内部に第1空間とこの第1空間よりも下流側に位置する第2空間とを有し、前記第1空間内の前記めっき液のうち所定高さを超えた分が前記第1空間から前記第2空間に流れ込み、この第2空間において空気中を流下する構造を有している。
【0013】
この構成では、前記別槽は、前記第1空間内の前記めっき液のうち所定高さを超えた分が前記第1空間から前記第2空間に流れ込み、この第2空間において空気中を流下する構造を有している。
【0014】
すなわち、めっき液のうち所定高さを超えた分が第1空間から第2空間に流れ込み、所定高さ以下の分は第1空間内に留まるので、この第1空間に留まるめっき液中の金属粒子を第1空間の下方に沈降させることができる。このように金属粒子を第1空間の下方に沈降させて集めておけば、これらの金属粒子を定期的に回収するなどの回収手段を施してめっき液中の金属粒子を効率的に除去することができるようになる。これにより、電気めっき装置において、フィルターの交換頻度を低減することができるようになるか、場合によってはフィルターを省くことができるようになる。
【0015】
また、第1空間内のめっき液のうち前記所定高さを超えた分を第2空間に流れ込ませてこの第2空間において空気中を流下させる、すなわち流動状態のめっき液を空気にさらすことによりめっき液の溶存酸素濃度を調整することができる。
【0016】
以上のように、この構成によれば、めっき液の溶存酸素濃度を調整できるとともに、フィルター交換に起因するコストを削減できる。
【0017】
具体的には、前記別槽の前記構造としては、例えば、前記第1空間と前記第2空間を仕切るために上下方向に延設された隔壁を有し、前記第1空間の前記めっき液が前記隔壁における前記所定高さに位置する上縁部をオーバーフローして前記第2空間に流れ込む構造が挙げられる。
【0018】
前記上縁部は、前記第2空間側に延設され、かつ、その先端部が前記隔壁の側面とは離隔した突出片を有しているのが好ましい。
【0019】
この構成では、前記上縁部は、前記第2空間側に延設され、かつ、その先端部が前記隔壁の側面とは離隔した突出片を有しているので、第1空間から第2空間に流れ込むめっき液は、前記突出片に沿ってその先端部まで導かれ、その先端部から先は突出片から離れて空気中に放たれる。すなわち、上縁部に前記突出片が設けられていない場合には、第1空間から第2空間に流れ込むめっき液は、隔壁の側面に接しながらこの側面をつたって流下しやすいが、本構成では、めっき液が隔壁の側面をつたって流下するのを抑制できる。これにより、めっき液が流下するときの空気との接触面積を増加させることができるので、めっき液の溶存酸素濃度の調整をより効率的に行うことができる。
【0020】
また、前記突出片は、前記第2空間側に横方向に延びる横部とこの横部の先端から下方向に延びる縦部とを有し、この縦部の先端が前記隔壁の側面と離隔した構造であるのが好ましい。
【0021】
この構成では、第1空間から第2空間に流れ込むめっき液は、前記横部に沿ってその先端部まで導かれることにより隔壁の側面からの距離が大きくなった後、前記縦部に沿って下方向に流下するので、めっき液が隔壁の側面をつたって流下するのをさらに抑制できる。
【0022】
また、前記別槽は、例えば、前記第1空間の前記めっき液が前記隔壁における前記所定高さに位置する貫通口を通じて前記第2空間に流れ込む構造であってもよい。
【0023】
また、本発明の電気めっき装置は、前記めっき槽から前記別槽へ前記めっき液を送る送り側配管をさらに備え、この送り側配管は前記第1空間に前記めっき液を供給する供給口を有し、この供給口は前記所定高さよりも下方に位置しているのが好ましい。
【0024】
この構成では、前記送り側配管の供給口が前記所定高さよりも下方に、すなわち第1空間に貯留されるめっき液の液面よりも下方に位置することになるので、供給口から第1空間にめっき液を供給するときに、第1空間に貯留されためっき液の液中に直接供給することができる。このように第1空間のめっき液中にめっき液を直接供給する場合には、供給口から一旦空気中に吐出されためっき液が第1空間に貯留されためっき液の液面に落下する場合と比較して、第1空間のめっき液に与える衝撃を低減することができる。これにより、第1空間に貯留されためっき液が流動するのを抑制して、第1空間において金属粒子をより効率よく沈降させることができる。
【0025】
また、前記供給口からの前記めっき液の吐出方向が前記別槽の内側面に向いている場合には、例えば前記突出方向が下方に向いている場合と比較して、第1空間に貯留されためっき液の流動、特に下方側に位置するめっき液の流動を抑制することができる。これにより、第1空間において沈降している金属粒子を再び巻き上げるというようなことが生じるのを抑制できるので、第1空間における金属粒子の沈降が妨げられるのを抑制することができる。
【0026】
また、本発明の電気めっき装置は、前記めっき槽から前記別槽へ前記めっき液を送る送り側配管をさらに備え、前記隔壁が第1隔壁であり、前記別槽は、前記第1空間の内部を、前記めっき液中の金属粒子を沈降させるための沈降空間と、この沈降空間よりも上流側に位置し、前記送り側配管の供給口から前記めっき液が供給される供給空間とに分けるために上下方向に延設された第2隔壁を有している構成であってもよい。
【0027】
この構成では、第1空間が第2隔壁により沈降空間と供給空間とに分けられており、供給空間に送り側配管の供給口からめっき液が供給されるので、めっき液の供給時に供給空間に貯留されためっき液が流動しても、その流動が沈降空間に伝わりにくくなっている。したがって、第1空間に第2隔壁が設けられていない場合と比較して、金属粒子をより効率的に沈降させることができる。
【0028】
また、前記第2隔壁が、前記所定高さよりも下方に設けられて前記沈降空間と前記供給空間を連通する複数の連通口を有している場合には、供給空間に供給されためっき液は、第2隔壁の複数の連通口を通じて分散して沈降空間に移動する。このようにめっき液が複数の連通口を通じて分散して沈降空間に流れ込むことにより、沈降空間に貯留されているめっき液が流動するのを抑制できる。
【0029】
また、前記第2隔壁の上縁部が前記所定高さ又は前記所定高さよりも下方に位置している場合には、第2隔壁の上縁部の高さが沈降空間に貯留されるめっき液の液面と同じかそれ以下となる。したがって、沈降空間のめっき液の液面と供給空間のめっき液の液面とがほぼ同じ高さとなるので、供給空間から沈降空間にめっき液が流れ込むときの衝撃を和らげることができる。これにより、沈降空間において沈降している金属粒子を再び巻き上げるというようなことが生じるのを抑制することができるので、沈降空間における金属粒子の沈降が妨げられるのを抑制することができる。
【0030】
また、本発明の電気めっき装置は、前記別槽から前記めっき槽へ前記めっき液を戻す戻り側配管と、前記別槽から排出された前記めっき液を前記第1空間に戻す再供給配管と、をさらに備えている場合には、別槽にあるめっき液の一部を、めっき槽に戻す前に、再供給配管を通じて再び第1空間に供給することができる。これにより、めっき液中の異物をさらに効率よく分離することができる。
【0031】
また、前記第1空間よりも下流側の空間に設けられた機械式撹拌機をさらに備えている場合には、第1空間において金属粒子を沈降させた後、これよりも下流側の空間において前記機械式撹拌機によりめっき液を撹拌することができる。これにより、めっき液の溶存酸素濃度の微調整を行うことができる。
【0032】
また、前記めっき槽は、前記めっき液が貯留される槽本体と、この槽本体と一体的に設けられ、前記槽本体の前記めっき液が前記槽本体の側壁の上縁部をオーバーフローして流れ込むオーバーフロー槽とを有し、このオーバーフロー槽は、内部に上流側空間とこの上流側空間よりも下流側に位置する下流側空間とを有し、前記めっき液が前記上流側空間から前記下流側空間に流れ込み空気中を流下する構造を有していてもよい。
【0033】
この構成では、別槽だけでなく、めっき槽におけるオーバーフロー槽においてもめっき液の溶存酸素濃度の調整を行うことができる。このオーバーフロー槽では、めっき液が前記上流側空間から前記下流側空間に流れ込み空気中を流下する間に溶存酸素濃度が調整される。
【0034】
また、前記槽本体の前記上縁部が、前記オーバーフロー槽側に延設され、かつ、その先端部が前記槽本体の側面とは離隔した突出片を有している場合には、槽本体からオーバーフロー槽に流れ込むめっき液は、前記突出片に沿ってその先端部まで導かれ、その先端部から先は突出片から離れて空気中に放たれる。したがって、本構成では、めっき液が槽本体の側面をつたって流下するのを抑制できる。これにより、めっき液が流下するときの空気との接触面積を増加させることができるので、めっき液の溶存酸素濃度の調整をより効率的に行うことができる。
【0035】
前記第2空間において前記めっき液が空気中を流下する落差は10cm以上であるのが好ましい。このように前記落差が10cm以上であることにより、別槽におけるめっき液の溶存酸素濃度の調整をさらに効率的に行うことができる。
【0036】
本発明の電気めっき方法は、めっき液が貯留されるめっき槽と、このめっき槽とは別体の槽であって前記めっき槽との間で前記めっき液が循環する別槽と、を備えた電気めっき装置を用いる。前記別槽はその内部に第1空間とこの第1空間よりも下流側に位置する第2空間とを有している。この方法では、前記第1空間において前記めっき液を所定高さまで貯留して前記めっき液中の金属粒子を前記第1空間の下方に沈降させる。さらにこの方法では、前記第1空間内の前記めっき液のうち前記所定高さを超えた分を前記第2空間に流れ込ませ、この第2空間において空気中を流下させることにより前記めっき液の溶存酸素濃度を調整する。これにより、めっき液の溶存酸素濃度を調整できるとともに、めっき液中の金属粒子を効果的に除去できる。
【0037】
本発明の電気めっき装置及び電気めっき方法は、前記めっき液が銅めっきに用いられるものであり、ブライトナーとして硫黄含有有機化合物を含む場合に特に好適である。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、めっき液の溶存酸素濃度を調整できるとともに、フィルター交換に起因するコストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気めっき装置を示す構成図である。
【図2】(a)〜(f)は、前記電気めっき装置の別槽における上縁部の構造の変形例をそれぞれ示している。
【図3】(a)〜(e)は、送り側配管の形状及び配置状態の変形例をそれぞれ示している。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電気めっき装置の別槽を示す構成図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る電気めっき装置の別槽を示す構成図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る電気めっき装置を示す構成図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係る電気めっき装置を示す構成図である。
【図8】(a),(b)は本発明の第6実施形態に係る電気めっき装置のめっき槽を示す構成図である。
【図9】本発明の第7実施形態に係る電気めっき装置のめっき槽を示す構成図である。
【図10】本発明の第8実施形態に係る電気めっき装置を示す構成図である。
【図11】(a)は、本発明の第9実施形態に係る電気めっき装置の別槽の第1隔壁を示す図であり、(b)は(a)のXIB−XIB線断面図である。
【図12】実施例1において用いた電気めっき装置を示す構成図である。
【図13】実施例2において用いた電気めっき装置を示す構成図であり、(b)における別槽は(a)のXIIIB−XIIIB線断面図である。
【図14】実施例3において用いた電気めっき装置を示す構成図である。
【図15】実施例1,3におけるビアホールの窪み量の測定方法を説明するための断面図である。
【図16】実施例1〜3における伸び率及び抗張力の測定に用いた試験片の形状を示す平面図である。
【図17】実施例2におけるスルーホールのスローイングパワーの評価方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下の各実施形態では、被めっき物に銅めっきを施す場合を例に挙げて説明する。
【0041】
<第1実施形態>
図1に示すように、本発明の第1実施形態の電気めっき装置11は、めっき槽13と、このめっき槽13とは別体の別槽15と、めっき液をめっき槽13から別槽15に送る送り側配管29と、めっき液を別槽15からめっき槽13に戻す戻り側配管41とを備えている。
【0042】
めっき槽13は、上部が開口した略直方体形状の槽本体47と、この槽本体47と一体的に設けられたオーバーフロー槽49とを有している。槽本体47の内部には、アノード55が配設されている。また、槽本体47は被めっき物であるカソード57を設置可能に構成されている。
【0043】
アノード55は、カソード57の両サイドにそれぞれ配設されている。アノード55としては、可溶性アノード又は不溶解性アノードが用いられる。可溶性アノードとしては、例えば銅板を用いることができる。また、可溶性アノードとしては、例えば球状の銅(銅ボール)をチタン等で形成された網状の収容容器に収容したものを用いることもできる。これらの銅板や銅ボールは、例えばリンを含有する含リン銅により形成されたものが挙げられる。不溶解性アノードとしては、例えばTi−Ptに酸化インジウムをコーティングしたものを用いることができる。
【0044】
各アノード55はめっき液を流通可能でアノードスライムを通過させないアノードバック59の内部に配置されている。アノードバック59は、例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどの材料により形成されている。
【0045】
カソード57と各アノード55との間には、カソード57の高さ方向に沿ってノズル61がそれぞれ配設されている。各ノズル61は、戻り側配管41を通じて別槽15から送られてくるめっき液をカソード57側に向けて噴出する複数の噴出口(図示せず)が設けられている。このようなノズル61からの噴流によりカソード57の周辺のめっき液を撹拌することができる。また、カソード57に対しては、上記のような噴流による撹拌の他、図略のスキージ、パドルなどの機械式撹拌機による機械的な撹拌を行ってもよく、噴流による撹拌と機械的撹拌を併用してもよい。
【0046】
アノード55とカソード57との間には、図略の電源装置から電圧が印加される。これにより、被めっき物であるカソード57に電気めっきを施すことができる。
【0047】
オーバーフロー槽49は、槽本体47の側部に一体的に取り付けられている。このオーバーフロー槽49には、槽本体47内のめっき液が槽本体47の側壁51の上縁部53を越えて流入するようになっている。このオーバーフロー槽49には、この槽内の液レベルを検知する図略の液面センサが設けられていてもよい。この液面センサの検知結果に基づいてポンプ63の駆動又は停止の制御を行うことにより、オーバーフロー槽49の液レベルを調節することができる。
【0048】
別槽15は、上部が開口した略直方体形状の別槽本体20と、この別槽本体20の内部空間を2つに分ける第1隔壁21とを有している。第1隔壁21は、略矩形状をなし、別槽本体20の底面から上方に立設されている。この第1隔壁21により別槽15の内部は第1空間17とこの第1空間17よりも下流側に位置する第2空間19とに分けられている。図1及び図2(a)に示すように、第1隔壁21は、別槽15の底面から上方に向かって延びる隔壁本体25とこの隔壁本体25の上端から第2空間19側に延設された突出片27とを有している。
【0049】
第1隔壁21の上縁部23は、別槽本体20の上縁部よりも低い所定高さに設定されている。すなわち、別槽15は、第1空間17内のめっき液のうち前記所定高さを超えた分が上縁部23をオーバーフローして第1空間17から第2空間19に流れ込む構造を有している。別槽15は、第1隔壁21の上縁部23よりも上方の空間においてのみ第1空間17と第2空間19が連通し、上縁部23よりも下方では第1空間17と第2空間19との間でめっき液が移動しないように第1空間17と第2空間19が仕切られた構造である。
【0050】
第2空間19に流れ込むめっき液は、この第2空間19において空気中を流下する。このようにめっき液を第2空間19において空気中を流下させるために、第2空間19におけるめっき液の液面は、第1隔壁21の上縁部23の前記所定高さよりも低い位置になるように調節される。
【0051】
第2空間19におけるめっき液の液面は、例えば戻り側配管41に設けられたポンプ64の駆動又は停止を制御することにより調節できる。また、第2空間19にはこの空間内の液面レベルを検知する図略の液面センサを設けてもよい。この液面センサの検知結果に基づいてポンプ64の駆動又は停止の制御を行うことにより、第2空間19の液面レベルを調節することができる。
【0052】
突出片27は、隔壁本体25の上端から第2空間19側に延設され、その先端が隔壁本体25における第2空間19側の側面とは離隔している。このような突出片27が設けられていることにより、第1空間17から第2空間19に流れ込むめっき液は、突出片27に沿ってその先端部まで導かれ、その先端部から先は突出片27から離れて空気中に放たれる。突出片27の先端部は隔壁本体25の側面とは離隔しているので、めっき液が隔壁本体25の側面をつたって流下するのを抑制できる。
【0053】
本実施形態では、第1隔壁21は、図2(a)に示すような突出片27を有している場合を例に挙げて説明しているが、図2(b)〜(d)に示す変形例のような突出片27を有している形態であってもよく、図2(e),(f)に示す変形例のように突出片を有していない形態であってもよい。
【0054】
図2(b)の変形例では、突出片27は、隔壁本体25の上端から第2空間19側でかつ斜め上方に向かって延設されている。この変形例の場合も図2(a)の形態と同様に、突出片27の先端部が隔壁本体25の側面とは離隔しているので、めっき液が隔壁本体25の側面をつたって流下するのを抑制できるものの、図2(a)の形態と比べて突出片27における第2空間19側の面(下面)をつたってめっき液が流下しやすい傾向にある。
【0055】
図2(c)の変形例では、突出片27は、隔壁本体25の上端から第2空間19側でかつ斜め下方に向かって延設されている。この変形例の場合も図2(a)の形態と同様に、突出片27の先端部が隔壁本体25の側面とは離隔しているので、めっき液が隔壁本体25の側面をつたって流下するのを抑制できる。しかも、突出片27が斜め下方に傾斜しているので、突出片27の下面(内面)にめっき液が流れ込むのをほぼ防ぐことができる。この点で図2(c)の変形例は図2(a)の形態よりも好ましい。
【0056】
図2(d)の変形例では、突出片27は、第2空間19側に横方向に延びる横部27aとこの横部27aの先端から下方向に延びる縦部27bとを有している。この縦部27bの先端は隔壁本体25の側面とは離隔している。この変形例の場合も図2(a)の形態と同様に、突出片27の先端部が隔壁本体25の側面とは離隔しているので、めっき液が隔壁本体25の側面をつたって流下するのを抑制できる。しかも、この形態では、第1空間17から第2空間19に流れ込むめっき液は、横部27aに沿ってその先端部まで導かれることにより隔壁本体25の側面からの距離が大きくなった後、縦部27bに沿って下方向に流下する。したがって、突出片27の内面にめっき液が流れ込むのをほぼ防ぐことができる。この点で図2(d)の変形例は図2(a)の形態よりも好ましい。
【0057】
図2(e),(f)の変形例では、第1隔壁21は突出片を有していない。図2(e)の変形例では、第1隔壁21は鉛直方向に沿って配置されている。図2(f)の変形例では、第1隔壁21は鉛直方向に対して傾斜して配置されている。この変形例の第1隔壁21は、上方から下方に向かうにつれて下流側に位置するように傾斜している。
【0058】
送り側配管29は、その上流側の端部がオーバーフロー槽49の底部及び槽本体47の側壁51の下部に接続されており、オーバーフロー槽49及び槽本体47と連通している。送り側配管29の下流側の端部には、めっき液を別槽15に供給する供給口29aが設けられている。
【0059】
図1及び図3(a)に示すように、供給口29aは、第1空間17内のめっき液の液面よりも高いところに位置しており、めっき液に接していない。したがって、供給口29aから吐出されるめっき液は、供給口29aから下方に流下して第1空間17内に貯留されているめっき液に接すると、このめっき液にある程度の衝撃を与えることになる。これにより、第1空間17内のめっき液が多少流動することになる。
【0060】
図3(b)〜(e)に示す変形例のように、送り側配管29の供給口29aが前記所定高さよりも下方に位置している、すなわち供給口29aが第1空間17内のめっき液の液面よりも下方に位置してめっき液に浸漬された形態であってもよい。これらの変形例では、供給口29aから吐出されるめっき液は、第1空間17に貯留されためっき液の液中に直接供給される。これにより、供給口29aから一旦空気中に吐出されためっき液が第1空間17に貯留されためっき液の液面に落下する図3(a)の形態と比較して、第1空間17のめっき液に与える衝撃を低減することができる。
【0061】
図3(c)の変形例では、供給口29aからのめっき液の吐出方向が別槽本体20の内側面20a側に向くように、送り側配管29の下流側端部が折り曲げられている。この変形例では、めっき液の吐出方向が下方に向いている図3(b)の形態と比較して、第1空間17に貯留されためっき液の流動、特に下方側に位置するめっき液の流動を抑制することができる。
【0062】
図3(d)の変形例では、送り側配管29は、その下流側の端部が複数(この変形例では6つ)に分岐し、めっき液が吐出される複数の供給口29aを有している。これにより、各供給口29aから吐出されるめっき液の吐出速度は、図3(b)の変形例の場合と比較して小さくなるので、第1空間17に貯留されためっき液の流動、特に下方側に位置するめっき液の流動を抑制することができる。
【0063】
図3(e)の変形例では、送り側配管29は、その下流側の端部の内径を他の部位よりも大きくした構造を有している。これにより、供給口29aから吐出されるめっき液の吐出速度は、図3(b)の変形例の場合と比較して小さくなるので、第1空間17に貯留されためっき液の流動、特に下方側に位置するめっき液の流動を抑制することができる。
【0064】
図1に示すように、戻り側配管41は、その上流側の端部が別槽本体20の側部に接続されており、第2空間19に連通している。戻り側配管41の下流側の端部は、複数(本実施形態では3つ)に分岐している。これらの複数の配管端部のうちの2つの端部41a,41bは、前記した一対のノズル61にそれぞれ接続されて各ノズル61にそれぞれ連通している。複数の配管端部の残りの端部41cは、槽本体47の底部に接続されて槽本体47の内部と連通している。この端部41cは、オーバーフロー槽49とは反対側の槽本体47の側面よりに配置されている。
【0065】
分岐箇所よりも上流側の戻り側配管41には、フィルター65が取り付けられている。このフィルター65よりも上流側の戻り側配管41にはポンプ64が設けられている。このポンプ64と前記したポンプ63が駆動することにより、めっき液がめっき槽13と別槽15の間を循環する。フィルター65は、めっき液を濾過してめっき液中の種々の異物をめっき液から分離することができる。
【0066】
めっき槽13と別槽15との浴量比(めっき槽13の容積:別槽15の容積)は、好ましくは0.1:1〜30:1、より好ましくは0.3:1〜10:1であるのがよい。別槽15の容積に対してめっき槽13の容積が0.1倍未満になると別槽15のサイズが大きくなり過ぎて実用的ではない。一方、別槽15の容積に対してめっき槽13の容積が30倍を超えると別槽15における溶存酸素の調整能力が不足することがある。
【0067】
循環量(ターン)は、循環速度(リットル/分)×60(分/時間)÷全浴量(リットル)で算出され、全浴量(電気めっき装置を循環するめっき液の総量)に対して好ましくは5〜100ターン、より好ましくは10〜80ターンであるのがよい。循環量が10ターン未満になると別槽15における溶存酸素の調整能力が不足することがある。一方、循環量が100ターンを超えると大きな循環ポンプ又は多くの循環ポンプが必要になり実用的ではない。
【0068】
めっき液としては例えば硫酸銅めっき液などが用いられる。この硫酸銅めっき液は、銅源となる硫酸銅に所定量の硫酸を加えたものである。この硫酸銅めっき液には、必要に応じて種々の添加剤が添加される。この添加剤としては、例えばブライトナー、レベラー、キャリアーと呼ばれる促進剤又は抑制剤などの有機添加剤が挙げられる。この有機添加剤としては、例えば窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物、酸素含有有機化合物などが挙げられる。具体的には、硫黄含有有機化合物としては、例えば下記式(1)〜(4)から選ばれる硫黄系化合物が挙げられる。
【0069】
【化1】

【0070】
また、窒素含有有機化合物としては、公知のものを用いることができ、例えば第3級アミン化合物、第4級アンモニウム化合物などが挙げられる。酸素含有有機化合物としては、公知のものを用いることができ、例えばポリエチレングリコールなどのポリエーテル系化合物などが挙げられる。
【0071】
硫酸銅めっき液の各成分は、連続して電気銅めっきを行うことにより減少した分を必要に応じて補給液などを添加することにより補給してもよい。これにより、連続的に電気銅めっきを施すことができる。また、可溶性アノードを用いる場合には、この可溶性アノードから銅イオンを補給することができる。また、不溶解性アノードを用いる場合には、めっき槽13以外に別途、銅イオンを供給可能な槽を設け、この槽からめっき槽に銅イオンを補給してもよい。
【0072】
次に、本実施形態の電気めっき装置11の動作について説明する。まず、建浴時に、めっき槽13の槽本体47及びオーバーフロー槽49、並びに別槽15の第1空間17及び第2空間19に所定量のめっき液を貯留する。
【0073】
ついで、ポンプ63及びポンプ64を駆動してめっき液をめっき槽13と別槽15との間で循環させる。オーバーフロー槽49及び第2空間19の液面レベルは、ポンプ63及びポンプ64の駆動又は停止を制御することにより調節される。この状態で被めっき物であるカソード57を槽本体47のめっき浴に浸漬し、アノード55とカソード57との間に通電することにより被めっき物が電気銅めっきされる。被めっき物はめっきが終了すると別のものに入れ替えられて順次電気銅めっきが施される。
【0074】
次に、めっき液の流れについて説明する。ポンプ64が駆動すると、戻り側配管41を通じて槽本体47内にめっき液が供給される。この槽本体47にめっき液が供給されると、供給された液量と同じ分量のめっき液が槽本体47の側壁51の上縁部53を越えてオーバーフロー槽49に流入する。
【0075】
また、ポンプ63が駆動すると、オーバーフロー槽49及び槽本体47内のめっき液が送り側配管29を通じて別槽15の第1空間17に供給される。めっき液中には、例えばカソード57からの脱落や可溶性アノードで発生するスライムに起因して生じる銅粒子などの異物が浮遊している。別槽15の第1空間17では、めっき液よりも密度が大きい銅粒子が沈降して第1空間17の底に沈殿する。
【0076】
一方で、送り側配管29を通じて第1空間17にめっき液が供給されると、供給された液量と同じ分量のめっき液が第1隔壁21の上縁部23を越えて第2空間19に流入する。第2空間19に流入するめっき液は、第2空間19において空気中を流下した後、第2空間19に貯留されているめっき液の液面に到達する。このようにめっき液が流下する間に空気にさらされることにより、めっき液の溶存酸素濃度が調整される。具体的には、アノード55として可溶性アノードを用いる場合には、めっき時にめっき液に空気中の酸素を取り込むことにより、めっき液の溶存酸素濃度の低下を抑制することができる。一方、アノードとして不溶解性アノードを用いる場合には、めっき時にめっき液から空気中に適度に酸素を放出することにより、めっき液の溶存酸素濃度の上昇を抑制することができる。
【0077】
溶存酸素濃度は、めっき液が空気中を流下する時間、空気中を流下する間に空気と接触する表面積などを変えることにより調整できる。めっき液が空気中を流下する時間、及び空気中を流下する間に空気と接触するめっき液の表面積は、例えば第1隔壁21の上縁部23と第2空間19内のめっき液の液面との距離を変えたり、めっき液がオーバーフローする上縁部23の幅を変えたりすることにより調節できる。
【0078】
めっき槽13の槽本体47におけるめっき液の溶存酸素濃度は、好ましくは4〜20mg/リットルであるのがよい。溶存酸素濃度が4mg/リットル未満になるか20mg/リットルを超えると、めっきの品質が低下するおそれがある。具体的には、例えばめっき皮膜の伸び率、抗張力などの皮膜物性が低下したり、プリント基板におけるスルーホールのスローイングパワー(TP)が低下したり、ビアホールの穴埋め性が低下(窪み量が大きくなる)したりすることがある。
【0079】
本実施形態では、上記したように第1空間17のめっき液がオーバーフローして第2空間19に流れ込むように構成されているので、このようなオーバーフローによるめっき液の流下によって空気がめっき液に巻き込まれる。これにより、めっき液中の溶存酸素濃度を飽和溶存酸素濃度に近づけることができる。空気は酸素(約20%)と窒素(約80%)が主な成分である。また、目安として、例えば25℃の水の飽和溶存酸素濃度は約8.1mg/リットルである。めっき液中の溶存酸素濃度が上記した好ましい範囲(4〜20mg/リットル)よりも小さい場合には、オーバーフローによりめっき液が流下することによって空気中の酸素がめっき液中に溶け込み、めっき液中の溶存酸素濃度が飽和溶存酸素濃度に近づく。これにより、めっき液中の溶存酸素濃度を上記した好ましい範囲に容易に調整することができる。一方、めっき液中の溶存酸素濃度が上記した好ましい範囲よりも大きい場合には、オーバーフローによりめっき液が流下することによってめっき液中に溶け込んでいた酸素の一部が空気中の窒素による影響で空気中に適度に放出され、めっき液中の溶存酸素濃度が飽和溶存酸素濃度に近づく。これにより、めっき液中の溶存酸素濃度を上記した好ましい範囲に容易に調整することができる。
【0080】
第1隔壁21の上縁部23と第2空間19内のめっき液の液面との距離(落差)は、特に限定されないが、溶存酸素濃度を効率よく調整できる点で好ましくは10cm以上であるのがよく、より好ましくは15cm以上であるのがよい。また、別槽15のサイズが大きくなりすぎないように落差は100cm以下であるのがよい。
【0081】
なお、本実施形態では、別槽15内に隔壁を一つ設けて1回だけめっき液をオーバーフローさせる構成を例示したが、後述するように別槽本体内に複数の隔壁を設けて別槽15におけるオーバーフローの回数を複数回としてもよい。溶存酸素濃度の調整効率を高めることができる点で、別槽15におけるオーバーフロー回数は好ましくは2回以上であるのがよい。また、別槽15のサイズが大きくなりすぎないようにオーバーフロー回数は5回以下であるのがよい。
【0082】
以上説明したように第1実施形態によれば、前記別槽15において、めっき液のうち前記所定高さを超えた分が第1空間17から第2空間19に流れ込み、所定高さ以下の分は第1空間17内に留まるので、この第1空間17に留まるめっき液中の金属粒子を第1空間17の下方に沈降させることができる。このように金属粒子を第1空間17の下方に沈降させて集めておけば、これらの金属粒子を定期的に回収するなどの回収手段を施してめっき液中の金属粒子を効率的に除去することができるようになる。これにより、電気めっき装置11において、フィルター65の交換頻度を低減することができるようになるか、場合によってはフィルター65を省くことができるようになる。また、第1空間17内のめっき液のうち前記所定高さを超えた分を第2空間19に流れ込ませてこの第2空間19において空気中を流下させる、すなわち流動状態のめっき液を空気にさらすことによりめっき液の溶存酸素濃度を調整することができる。したがって、第1実施形態によれば、めっき液の溶存酸素濃度を調整できるとともに、フィルター交換に起因するコストを削減できる。
【0083】
具体的には、アノードとして可溶性アノードを用いる場合には、めっき時にめっき液に空気中の酸素を取り込むことにより、めっき液の溶存酸素濃度の低下を抑制することができる。一方、アノードとして不溶解性アノードを用いる場合には、めっき時にめっき液から空気中に適度に酸素を放出することにより、めっき液の溶存酸素濃度の上昇を抑制することができる。
【0084】
また、第1実施形態では、上縁部23は、第2空間19側に延設され、かつ、その先端部が第1隔壁21の側面とは離隔した突出片27を有しているので、第1空間17から第2空間19に流れ込むめっき液は、突出片27に沿ってその先端部まで導かれ、その先端部から先は突出片27から離れて空気中に放たれる。したがって、第1実施形態では、めっき液が第1隔壁21の側面をつたって流下するのを抑制できる。これにより、めっき液が流下するときの空気との接触面積を増加させることができるので、めっき液の溶存酸素濃度の調整をより効率的に行うことができる。
【0085】
<第2実施形態>
図4は本発明の第2実施形態に係る電気めっき装置11の別槽15を示す構成図である。この第2実施形態では、別槽15の第1空間17の構造が第1実施形態とは異なっている。なお、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0086】
図4に示すように、別槽15は、別槽本体20及び第1隔壁21に加え、さらに第2隔壁35を有している。この第2隔壁35は、略矩形状をなし、別槽本体20の底面から上方に立設されて第1空間17の内部を2つの空間に分けている。一方の空間は、送り側配管29の供給口29aからめっき液が供給される供給空間33であり、他方の空間は、供給空間33よりも下流側に位置し、めっき液中の金属粒子32を沈降させるための沈降空間31である。
【0087】
第2隔壁35は、沈降空間31と供給空間33を連通する複数の連通口を有している。これらの連通口は、前記所定高さ、すなわち第1隔壁21の上縁部23の高さよりも下方に設けられている。第1空間17内においてめっき液は前記複数の連通口を通じて供給空間33から沈降空間31に移動することができる。第2隔壁35としては、例えば、ほぼ全面にわたって所定間隔で複数の貫通口が配列された金属板、樹脂板などを用いることができる。連通口は少なくとも金属粒子が通過可能な大きさに調整されている。
【0088】
したがって、第2実施形態では、第1空間17が第2隔壁35により沈降空間31と供給空間33とに分けられており、供給空間33に送り側配管29の供給口29aからめっき液が供給されるので、めっき液の供給時に供給空間33に貯留されためっき液が流動しても、その流動が沈降空間31に伝わりにくくなっている。したがって、第1空間17に第2隔壁35が設けられていない場合と比較して、金属粒子32をより効率的に沈降させることができる。
【0089】
また、第2実施形態では、第2隔壁35が、前記所定高さよりも下方に設けられて沈降空間31と供給空間33を連通する複数の連通口を有しているので、供給空間33に供給されためっき液は、第2隔壁35の複数の連通口を通じて分散して沈降空間31に移動する。このようにめっき液が複数の連通口を通じて分散して沈降空間31に流れ込むことにより、沈降空間31に貯留されているめっき液が流動するのを抑制できる。
【0090】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1実施形態と同様である。
【0091】
<第3実施形態>
図5は本発明の第3実施形態に係る電気めっき装置11の別槽15を示す構成図である。この第3実施形態では、別槽15の第1空間17の構造が第1実施形態及び第2実施形態とは異なっている。なお、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0092】
図5に示すように、別槽15は、別槽本体20及び第1隔壁21に加え、さらに第2隔壁35を有している。この第2隔壁35は、略矩形状をなし、上記第2実施形態と同様に、別槽本体20の底面から上方に立設されて第1空間17の内部を供給空間33と沈降空間31に分けている。第2実施形態と異なるところは、第3実施形態の第2隔壁35は、複数の連通口が設けられていない点である。
【0093】
この第3実施形態では、第2隔壁35の上縁部35aは前記所定高さよりも下方に位置しているので、第2隔壁35の上縁部35aの高さが沈降空間31に貯留されるめっき液の液面よりも下方に位置することになる。これにより、第1空間17内においてめっき液は第2隔壁35の上縁部35aを越えて供給空間33から沈降空間31に移動することができる。
【0094】
したがって、第3実施形態では、第2隔壁35を有しているので、供給口29aからめっき液が供給空間33に供給されるときのめっき液の流動が沈降空間31に伝わりにくい。しかも、めっき液は、第2隔壁35の上縁部35aを越えて供給空間33から沈降空間31に流れ込むので、沈降空間の下方に沈降している金属粒子32を再び巻き上げるというようなことが生じるのを抑制することができる。
【0095】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1実施形態と同様である。
【0096】
<第4実施形態>
図6は本発明の第4実施形態に係る電気めっき装置11を示す構成図である。この第4実施形態では、再供給配管43が設けられている点が第1実施形態とは異なっている。なお、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0097】
図6に示すように、この第4実施形態では、電気めっき装置11は別槽15から排出されためっき液を第1空間17に戻す再供給配管43をさらに備えている。この再供給配管43の一端43aは、別槽本体20の側部における下部に接続されて第2空間19に連通している。他端43bは、第1空間17の上部に配置されている。再供給配管43にはポンプ66とフィルター68が設けられている。
【0098】
したがって、第4実施形態では、別槽15の第2空間19にあるめっき液の一部を、めっき槽13に戻す前に、再供給配管43を通じて再び第1空間17に供給することができる。めっき液中の異物をさらに効率よく除去することができる。
【0099】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1実施形態と同様である。
【0100】
<第5実施形態>
図7は本発明の第5実施形態に係る電気めっき装置11を示す構成図である。この第5実施形態では、第2空間19内にアンダーフロー用仕切り板45が配設されている点が第1実施形態とは異なっている。なお、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0101】
図7に示すように、この第5実施形態では、第1空間17よりも下流側にある第2空間19に仕切り板45をさらに備えている。この仕切り板45は、第2空間19内において、仕切り板45の下端辺と別槽本体20の底面との間に隙間を設けるとともに、この隙間よりも上方においては第2空間19を上流側の領域と下流側の領域の2つの領域に仕切るように配置された板状体である。したがって、第1空間17から第2空間19に流れ込んだめっき液は、第2空間19内において前記上流側領域から前記下流側領域に移動するときには必ず前記隙間を通過するので、第2空間19内のめっき液がより均一に撹拌される。
【0102】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1実施形態と同様である。
【0103】
<第6実施形態>
図8(a),(b)は本発明の第6実施形態に係る電気めっき装置11のめっき槽13の一部を示す構成図であり、図8(a)はめっき槽13の一部を側方から見た図であり、図8(b)はこれを上方から見た図である。この第6実施形態では、めっき槽13のオーバーフロー槽49の構造が第1実施形態とは異なっている。なお、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0104】
図8(a),(b)に示すように、この第6実施形態では、めっき槽13のオーバーフロー槽49は、内部に上流側空間71とこの上流側空間71よりも下流側に位置する下流側空間73とを有している。オーバーフロー槽49は第1槽75と第2槽77の2つの槽により構成されている。第1槽75と槽本体47の側壁51とに囲まれる空間が上流側空間71であり、第2槽77と槽本体47の側壁51とに囲まれる空間が下流側空間73である。
【0105】
槽本体47の側壁51の上縁部53、第1槽75の上縁部、及び第2槽77の上縁部は、第2槽77が最も高く、第1槽75が最も低い。図8(b)に示すように、第1槽75の上縁部は、めっき液をオーバーフローさせて第1槽75から第2槽77に流れ込ませるために、他の部位よりも低くなっているオーバーフロー部81が設けられている。第2槽77の底面には送り側配管29が接続される貫通口79が設けられている。
【0106】
これにより、めっき液は、槽本体47の側壁51の上縁部53をオーバーフローして第1槽75の上流側空間71に流れ込み、さらに第1槽75の上縁部をオーバーフローして第2槽77の下流側空間73に流れ込み、貫通口79を通じて送り側配管29に流れ込む。このように第6実施形態では、めっき液が2回にわたって空気中を流下する構造であるので、別槽15だけでなく、めっき槽13のオーバーフロー槽49においてもめっき液の溶存酸素濃度の調整を行うことができる。
【0107】
特に、この第6実施形態では、第1槽75の上縁部から第2槽77の液面までの落差を10cm以上に大きくすることにより、めっき液が上流側空間71から下流側空間73に流れ込み空気中を流下する間に溶存酸素濃度が効率よく調整される。
【0108】
また、槽本体47の側壁51の上縁部53は、図2に示したものと同様の突出片を有しているのが好ましい。第1槽75の上縁部も同様に図2に示したものと同様の突出片を有しているのが好ましい。このように上縁部が突出片を有している場合には、槽本体47から第1槽75に流れ込むめっき液、及び第1槽75から第2槽77に流れ込むめっき液は、突出片に沿ってその先端部まで導かれ、その先端部から先は突出片から離れて空気中に放たれる。したがって、めっき液が槽本体の側面又は第1槽75の側面をつたって流下するのを抑制できる。これにより、めっき液が流下するときの空気との接触面積を増加させることができるので、めっき液の溶存酸素濃度の調整をより効率的に行うことができる。
【0109】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1実施形態と同様である。
【0110】
<第7実施形態>
図9(a),(b)は本発明の第7実施形態に係る電気めっき装置11のめっき槽13の一部を示す構成図であり、図9(a)はめっき槽13の一部を側方から見た図であり、図9(b)はこれを上方から見た図である。この第7実施形態では、めっき槽13のオーバーフロー槽49の構造が第1実施形態とは異なっており、第1槽75の構造が第6実施形態と異なっている。なお、ここでは第1実施形態及び第6実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0111】
図9(a),(b)に示すように、この第7実施形態では、第1槽75はその底面に貫通口85を有し、これらの貫通口85に吐出管83がそれぞれ接続されている。これらの吐出管83を通じて上流側空間71内のめっき液が空気中を流下して下流側空間73に流れ込む。第1槽75の底部は第2槽77の底部よりも上方に配置されている。吐出管83は省略することができる。
【0112】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1実施形態と同様である。
【0113】
<第8実施形態>
図10は本発明の第8実施形態に係る電気めっき装置11を示す構成図である。この第8実施形態では、別槽15におけるオーバーフロー回数を2回としている点が第1実施形態とは異なっている。なお、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0114】
図10に示すように、この第8実施形態では、別槽15は、第3隔壁91をさらに備えている。この第3隔壁91は、略矩形状をなし、別槽本体20の底面から上方に立設されている。この第3隔壁91により別槽15の内部は第2空間19とこの第2空間19よりも下流側に位置する第3空間93とに分けられている。これにより、めっき液の溶存酸素濃度をさらに効率よく調整することができる。
【0115】
また、この第8実施形態では、金属粒子を沈降させる第1空間17よりも下流側の第2空間19及び第3空間93にアンダーフロー用仕切り板45をさらに備えている。図7の第5実施形態と同様に、これらの仕切り板45は、第2空間19及び第3空間93内において、仕切り板45の下端辺と別槽本体20の底面との間にそれぞれ隙間を設けるとともに、これらの隙間よりも上方においては、第2空間19を上流側の領域と下流側の領域の2つの領域に仕切り、第3空間93を上流側の領域と下流側の領域の2つの領域に仕切るように配置された板状体である。したがって、第1空間17から第2空間19に流れ込んだめっき液は、第2空間19内において前記上流側領域から前記下流側領域に移動するときには必ず前記隙間を通過し、第2空間19から第3空間93に流れ込んだめっき液は、第3空間93内において前記上流側領域から前記下流側領域に移動するときには必ず前記隙間を通過するので、第2空間19及び第3空間93においてめっき液がより均一に撹拌される。
【0116】
第3隔壁91の上縁部24は、第1隔壁21の上縁部23と同様の構造を有している。すなわち、第3隔壁91の上縁部24は、第1隔壁21の上縁部23のような突出片27を有しているので、第2空間19から第3空間93に流れ込むめっき液は、突出片27に沿ってその先端部まで導かれ、その先端部から先は突出片27から離れて空気中に放たれる。したがって、めっき液が第3隔壁91の側面をつたって流下するのを抑制できる。これにより、めっき液が流下するときの空気との接触面積を増加させることができるので、めっき液の溶存酸素濃度の調整をより効率的に行うことができる。
【0117】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1実施形態と同様である。
【0118】
<第9実施形態>
図11(a),(b)は第9実施形態に係る電気めっき装置の別槽の第1隔壁21を示す図である。この第9実施形態では、前記実施形態のようにめっき液が第1隔壁21の上縁部23をオーバーフローするのではなく、第1隔壁21の前記所定高さに設けられた貫通口95を通じてめっき液が第1空間17から第2空間19に流れ込む構造である。
【0119】
この第9実施形態では、めっき液は、第1空間17から第2空間19に流れ込むときに、第1隔壁21の側面をつたって流下してもよいが、好ましくは第1隔壁21の側面をつたわないで流下するのがよい。例えば、図11(b)に示すように、第1隔壁21は、第2空間19側に位置する側面における貫通口95の下縁部から横方向に突出する突出片95aを有しているのが好ましい。この場合には、第1空間17から第2空間19に流れ込むめっき液は、突出片95aに沿ってその先端部まで導かれ、その先端部から先は突出片95aから離れて空気中に放たれる。したがって、めっき液が第1隔壁21の側面をつたって流下するのを抑制できる。これにより、めっき液が流下するときの空気との接触面積を増加させることができるので、めっき液の溶存酸素濃度の調整をより効率的に行うことができる。
【0120】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが前記第1実施形態と同様である。
【0121】
<他の実施形態>
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記各実施形態では、被めっき物に銅めっきを施す場合を例に挙げて説明したが、本発明は、電気銅めっきの他、例えば電気ニッケルめっき、電気金めっきなどの他の電気めっきにも適用できる。
【0122】
また、前記実施形態では、別槽15が隔壁により2つ又は3つの空間に分けられている場合を例に挙げて説明したが、別槽15は4つ以上の空間に分けられていてもよい。
【0123】
また、第4実施形態のような再供給配管を他の実施形態の電気めっき装置に設けてもよい。
【0124】
前記各実施形態の電気めっき装置及びこれを用いた電気めっき方法は、被めっき物として例えばプリント基板、ウエハなどに配線パターンなどを形成する用途に好適であるが、これらの用途に限定されるものではない。
【0125】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0126】
電気めっき装置を用いて下記の条件で被めっき物(試料No.1〜8)に電気銅めっきを行った。試料No.2〜4では、図12に示す電気めっき装置11を用いた。この電気めっき装置11では、めっき槽13は図1に示す構造と同じであり、別槽15は、別槽本体20内が第1隔壁21と第3隔壁91により第1空間17、第2空間19及び第3空間93の3つの空間に分けられた構造である。めっき液は、第1隔壁21の上縁部をオーバーフローして第1空間17から第2空間19に流れ込み、第3隔壁91の上縁部をオーバーフローして第2空間19から第3空間93に流れ込む。第2空間19にはアンダーフロー用仕切り板45が配設されている。
【0127】
また、試料No.1,5〜8では、図12に示す電気めっき装置11の別槽15から隔壁21,91を取り外したものを用いた。
【0128】
第1隔壁21及び第3隔壁91の上縁部の構造は、後述する表2に示すように、試料No.4では構造A(図2(d)に示す構造)とし、試料No.2,3では構造B(図2(e)に示す構造)とした。
【0129】
第1隔壁21及び第3隔壁91の上縁部からめっき液の液面までの落差は、後述する表2に示すように、5cm、10cm、20cmの3つの条件とした。
【0130】
被めっき物(カソード)としては、ステンレス鋼板、及びビアホール付き基板(ブラインドビアホールを有するプリント基板)を用いた。この基板におけるビアホールの開口径は100μmとし、ビアホールの深さは75μmとした。
【0131】
その他の電気銅めっきの条件等は以下の通りである。
めっき槽13の浴量(槽本体47とオーバーフロー槽49の浴量の合計):4300リットル
別槽15の浴量(第1空間17と第2空間19における浴量の合計):800リットル
浴量:5100リットル
めっき液:硫酸銅めっき液(硫酸銅五水塩(硫酸銅五水和物)200g/L、硫酸50g/L、及び塩化物イオン50mg/Lを含むもの)
めっき液に添加した添加剤:上村工業社製「スルカップEVF−T」
めっき液の循環速度:860リットル/分
アノード:可溶性アノード(チタンケースに含リン銅ボールを収容し、これをポリプロピレン製のアノードバックに収容したもの)
【0132】
上記条件で被めっき物に電気銅めっきを施し、そのときの溶存酸素濃度、皮膜物性、ビアホールの窪み量について評価した。皮膜物性(伸び率及び抗張力)の評価には、被めっき物の上記ステンレス鋼板に50μmの銅めっきを施したものを用いた。ビアホールの窪み量の評価には、被めっき物の上記ビアホール付き基板に20μmの銅めっきを施したものを用いた。
【0133】
この実施例1では、ステンレス鋼板に対して、次の工程1〜8の手順で前処理、電気銅めっき処理、及び後処理を施した。
工程1:酸洗クリーナー(上村工業社製MSC−3−A)
工程2:湯洗
工程3:水洗
工程4:酸洗
工程5:水洗
工程6:電気銅めっき
工程7:水洗
工程8:乾燥
【0134】
また、ビアホール付き基板に対しては、周知のデスミア処理及び化学銅めっき(0.3μm)処理を行った後に、上記と同様の工程1〜8の手順で前処理、電気銅めっき処理、及び後処理を施した。
【0135】
また、実施例1における電気銅めっきの条件は表1の通りである。電気銅めっきの処理温度(めっき液の温度)は25℃とした。なお、表1中の陰極電流密度の単位は、A/dmである。
【0136】
【表1】

【0137】
結果を表2に示す。また、表3には各試料の試験手順を記載した。さらに、表4には、試料No.1のめっき処理が終了した後、別槽として図12に示す隔壁21,91を取り付けて30分、60分、90分の間、電解したときの溶存酸素濃度を示す。また、各ノズル61から被めっき物(カソード57)へのめっき液の流量がほぼ一定となるように、戻り側配管41を通じて槽本体47に供給されるめっき液の一部は配管端部41cを通じて供給した。溶存酸素濃度は、図12の配管端部41cの近傍の配管に取り付けた図略のバルブから採取しためっき液の溶存酸素を測定した。
【0138】
ビアホールの窪み量は、図15(a)に示すビアホール付き基板101に、図15(b)に示すように銅めっき103を施した後、ビアホール101c内に形成された銅めっき103の表面のうち最も低い部分と、ビアホール101cの周縁部に形成された銅めっき103の表面との高さ(厚み方向の寸法)の差Δhを測定することにより得た(図15(b))。なお、図15(a)のビアホール付き基板101は、樹脂層101aと、この樹脂層101aの表面に形成された銅層101bとを備え、これにビアホール101cが形成されたものである。
【0139】
また、伸び率及び抗張力は、図16に示す試験片を用いて次のようにして測定した。すなわち、まず、ステンレス鋼板に50μ±5μmの銅めっきを施し、ついで、シワやキズが付かないようにステンレス鋼板から銅めっき層(銅箔)を丁寧に剥がした。この銅箔を120℃で2時間熱処理した後、図16に示す形状にダンベルにより打ち抜いて試験片を作製した。この試験片の中央部の膜厚を蛍光X線膜厚計により測定し、この測定値を試験片の膜厚d(mm)とした。ついで、引っ張り試験機のチャック間の距離を40mmとし、試験片のアールのついた部分がチャックから露出するように、試験片をチャックにより挟んで固定し、引張速度4mm/分にて試験を行った。次に、試験により得られたチャートから最大引張応力F(kgf)を読み取り、この値F(kgf)を試験片の断面積で割ることにより、表2,6,9に示す抗張力(kgf/mm)を得た。試験片の断面積は、試験片の中央部の幅10mmと膜厚dmmとの積とした。伸び率E(%)は、試験片を引っ張り始めてから試験片が破断するまでに伸びた寸法ΔL(mm)を計測し、このΔL(mm)を引っ張る前の試験片の中央部の直線部分の寸法(20mm)で割ることにより算出した。
【0140】
【表2】

【0141】
【表3】

【0142】
【表4】

【0143】
表2の試料No.1の結果から、隔壁21,91が設けられていない別槽を用いた場合には、めっき液の溶存酸素濃度が低く、ビアホール窪み量が増大する傾向にあることがわかる。
【0144】
試料No.2〜4の結果から、別槽15に隔壁21,91を設けてめっき液をオーバーフローさせることにより溶存酸素濃度が高くなることがわかる。また、試料No.3,4のようにオーバーフロー時のめっき液の落差を10cm以上にすることで溶存酸素濃度が顕著に高まることがわかる。これらの試料No.3,4では、長時間電解しても溶存酸素濃度が減少していない。
【0145】
試料No.4のめっき処理の後、引き続いて行った試料No.5〜8の結果から、別槽15から隔壁21,91を取り外すと、電解時間が長くなるにつれて溶存酸素濃度が低下し、ビアホール窪み量が増大する傾向にあることがわかる。
【0146】
また、表4に示すように、試料No.1のめっき処理の後、別槽に隔壁21,91を取り付けて電解すると、時間の経過とともに溶存酸素濃度が高まることがわかる。
【実施例2】
【0147】
図13(a),(b)に示す電気めっき装置を用いて下記の条件で被めっき物(試料No.9〜14)に電気銅めっきを行った。試料No.12〜14では、別槽15として図12の装置と同じ隔壁21,91を有する別槽を用いた。また、めっき槽13は、図13(a),(b)に示すように、槽本体47と、オーバーフロー槽49とを備え、槽本体47からオーバーフローしためっき液がオーバーフロー槽49に流れ込む構造である。槽本体47内には、カソード57である板状の被めっき物が略水平に配置され、このカソード57の上下に複数のアノード55がそれぞれ配列されている。また、カソード57の上下には、ノズル61がそれぞれ配設されている。各ノズル61は、戻り側配管41を通じて別槽15から送られてくるめっき液をカソード57側に向けて噴出する複数の噴出口(図示せず)が設けられている。
【0148】
また、試料No.9〜11では、別槽15から隔壁21,91を取り外したものを用いた。
【0149】
第1隔壁21及び第3隔壁91の上縁部からめっき液の液面までの落差は、後述する表6に示すように、5cm、10cm、20cmの3つの条件とした。
【0150】
被めっき物(カソード)としては、ステンレス鋼板、及びスルーホール付き基板を用いた。この基板におけるスルーホールの内径は0.3mmで、基板の板厚は1.6mmとした。
【0151】
その他の電気銅めっきの条件等は以下の通りである。
めっき槽13の浴量(槽本体47とオーバーフロー槽49の浴量の合計):1000リットル
別槽15の浴量(第1空間17と第2空間19における浴量の合計):1400リットル
浴量:2400リットル
めっき液:硫酸銅めっき液(硫酸銅五水塩(硫酸銅五水和物)100g/L、硫酸200g/L、及び塩化物イオン50mg/Lを含むもの)
めっき液に添加した添加剤:上村工業社製「スルカップETN」
めっき液の循環速度:3000リットル/分
アノード:不溶解性アノード(Ti−Ptに酸化イリジウムをコーティングしたもの)
【0152】
この実施例2では、ステンレス鋼板に対して、実施例1と同様の工程1〜8の手順で前処理、電気銅めっき処理、及び後処理を施した。
【0153】
また、スルーホール付き基板に対しては、実施例1と同様に、周知のデスミア処理及び化学銅めっき(0.3μm)処理を行った後に、実施例1と同様の工程1〜8の手順で前処理、電気銅めっき処理、及び後処理を施した。
【0154】
また、実施例2における電気銅めっきの条件は表5の通りである。電気銅めっきの処理温度(めっき液の温度)は25℃とした。なお、表5中の陰極電流密度の単位は、A/dmである。
【0155】
【表5】

【0156】
上記条件で被めっき物に電気銅めっきを施し、そのときの溶存酸素濃度、皮膜物性、スルーホールのスローイングパワー(TH−TP)について評価した。結果を表6に示す。また、表7には各試料の試験手順を記載した。溶存酸素濃度は、図13におけるフィルター65よりも下流側の戻り側配管41に取り付けた図略のバルブから採取しためっき液の溶存酸素を測定した。
【0157】
スローイングパワーは、スルーホールの深さ方向の中央における銅めっきの厚みに対するスルーホールの近くの基板表面での銅めっきの厚みの比と定義される。すなわち、スローイングパワー(TH−TP)は、図17に示すように、スルーホール105aが形成された基板105に上記条件にて銅めっき107を施した後、スルーホールの深さ方向の中央における銅めっきの厚みe,fと、スルーホールの近くの基板表面での銅面めっきの厚みa〜dとをそれぞれ測定し、各値を次の式(5)に代入することにより得られる。
【数1】

【0158】
【表6】

【0159】
【表7】

【0160】
表6の試料No.9の結果から、めっき開始時点では溶存酸素濃度が7.4mg/リットルであるので皮膜物性は良好であった。しかし、試料No.10,11の結果から、電解時間が長くなるとそれにつれて溶存酸素濃度が増加し、3時間後の試料No.10では皮膜物性が悪くなり、TH−TPがかなり低下しており、6時間後の試料No.11では皮膜物性がさらに悪くなり、TH−TPは65.6%まで低下していることがわかる。
【0161】
一方、試料No.12〜14では、別槽15に隔壁21,91を設けてめっき液をオーバーフローさせることにより溶存酸素濃度の上昇を抑制することができている。特に、試料No.13,14のようにオーバーフロー時のめっき液の落差を10cm以上にすることで溶存酸素濃度の上昇抑制効果が顕著に高められていることがわかる。これらの試料No.13,14では、溶存酸素濃度を20mg/リットル以下に低下させることができており、皮膜物性も良好であり、TH−TPも75%以上となる。
【実施例3】
【0162】
図14に示す電気めっき装置を用いて下記の条件で被めっき物(試料No.15〜18)に電気銅めっきを行った。試料No.17,18では、別槽15として図12の装置と同じ隔壁21,91を有する別槽を用いた。また、めっき槽13は、図14に示すように、槽本体47と、オーバーフロー槽49とを備え、槽本体47からオーバーフローしためっき液がオーバーフロー槽49に流れ込む構造である。
【0163】
槽本体47内は、隔膜99により2つの空間に分けられている。この隔膜99としては、ユアサメンブレンシステム社製「Y−9205T」を用いた。一方の空間にはカソード57である被めっき物が配置され、他方の空間にはアノード55が配置されている。カソード57の近傍にはノズル61が配設されている。ノズル61は、戻り側配管41を通じて別槽15から送られてくるめっき液をカソード57側に向けて噴出する噴出口(図示せず)が設けられている。
【0164】
また、試料No.15,16では、別槽15から隔壁21,91を取り外したものを用いた。
【0165】
第1隔壁21及び第3隔壁91の上縁部からめっき液の液面までの落差は、後述する表6に示すように、10cm、20cmの2つの条件とした。
【0166】
被めっき物(カソード)としては、ステンレス鋼板、及びブラインドビアホールを有するウエハを用いた。この基板におけるビアホールの開口径は15μmで、ビアホールの深さは25μmとした。
【0167】
その他の電気銅めっきの条件等は以下の通りである。
めっき槽13の浴量(槽本体47とオーバーフロー槽49の浴量の合計):50リットル
別槽15の浴量(第1空間17と第2空間19における浴量の合計):150リットル
浴量:200リットル
めっき液:硫酸銅めっき液(硫酸銅五水塩(硫酸銅五水和物)200g/L、硫酸50g/L、及び塩化物イオン50mg/Lを含むもの)
めっき液に添加した添加剤:上村工業社製「スルカップESA−21」
めっき液の循環速度:100リットル/分
アノード:可溶性アノード(チタンケースに含リン銅ボールを収容したもの)
【0168】
この実施例3では、ステンレス鋼板に対して、実施例1と同様の工程1〜8の手順で前処理、電気銅めっき処理、及び後処理を施した。
【0169】
また、ウエハに対しては、周知の方法でバリア層、シード層を施した後、実施例1と同様の工程1〜8の手順で前処理、電気銅めっき処理、及び後処理を施した。
【0170】
また、実施例3における電気銅めっきの条件は表8の通りである。電気銅めっきの処理温度(めっき液の温度)は25℃とした。なお、表8中の陰極電流密度の単位は、A/dmである。
【0171】
【表8】

【0172】
上記条件で被めっき物に電気銅めっきを施し、そのときの溶存酸素濃度、皮膜物性、ビアホールの窪み量について評価した。結果を表9に示す。また、表10には各試料の試験手順を記載した。溶存酸素濃度は、図14におけるフィルター65よりも下流側のも取り側配管41に取り付けた図略のバルブから採取しためっき液の溶存酸素を測定した。
【0173】
また、試料No.15では、別槽15の第1空間17において空気撹拌装置94を用いて空気をめっき液中に供給することにより空気撹拌を行いながらめっきを施した。
【0174】
【表9】

【0175】
【表10】

【0176】
別槽15の第1空間17において空気撹拌を行いながら電解した表9の試料No.15では、めっき槽13の溶存酸素濃度は表9の通り3.8mg/リットルであるが、このときの別槽15の溶存酸素濃度は7.2mg/リットルであった。このように空気撹拌を行うことにより別槽の溶存酸素濃度は好適な範囲に維持できるが、空気撹拌を行うことにより第1空間17において銅粒子の沈降を妨げるため、フィルター65には多くの銅粒子の付着が確認された。このフィルター65に付着した銅粒子によって溶存酸素が消費されるので、めっき槽における溶存酸素濃度は低下し、ビアホール窪み量が大きい傾向にある。
【0177】
試料No.16の結果から、フィルター65を交換した直後には銅粒子がほとんど付着していないので、めっき槽の溶存酸素濃度も良好な値となり、ビアホール窪み量も小さくなっている。
【0178】
試料No.17,18では、フィルター65に銅粒子がほとんど付着していない状態(新品当初の白い状態)であることから、第1空間17において銅粒子が効果的に沈降していることがわかる。このように別槽に隔壁を設けてめっき液をオーバーフローさせることにより溶存酸素濃度が高くなるとともに、銅粒子をめっき液から効率よく分離できる。これにより、めっき槽における溶存酸素濃度が好適な範囲に維持され、ビアホール窪み量も小さくなっている。
【0179】
[参考例]
サイクリックボルタンメトリックストリッピング(CVS)測定法を用いて、めっき液中の溶存酸素濃度、ブライトナーの濃度及びAr値の関係について調べた。CVS測定の方法は次の通りである。
【0180】
1)Ar値の測定方法
めっき液中にWorking electrodeとして回転白金電極、Counter electrodeとして銅棒、Reference electrodeとして銀/塩化銀ダブルジャンクション電極をそれぞれ浸漬して回転白金電極に与える電位を変化させながらめっき工程、剥離工程、及び洗浄工程を繰り返し、電位−電流曲線(Voltammogram)を作成し、この電位−電流曲線から剥離工程の面積(Ar値)を求める。
【0181】
後述する表11,12に示す結果は、上記のCVS測定法を応用して得られたものであり、上記測定方法において掃引を連続して繰り返し行うことによって得られたAr値の経時変化である。
【0182】
2)Ar値測定に用いた測定機器、測定条件
測定機器:ECI社製「QL−5」
測定条件:回転白金電極の回転数 2500rpm、電位掃引速度 100mV/秒、温度 25℃
【0183】
3)測定液
測定液は次のようにして調製した。後述するVMS30mLを容器に入れ、この容器に測定対象めっき液30mLを加えた混合液を測定液として用いた。
【0184】
4)VMS及び測定対象めっき液
測定対象のめっき液は、試料No.19〜23については表11に示す通りであり、試料No.24〜28については表12に示す通りである。すなわち、試料No.19の測定対象めっき液は、実施例1の試料No.1のめっき処理中に、図12の配管端部41cの近傍の配管に取り付けた図略のバルブから採取しためっき液であり、試料No.20の測定対象めっき液は、実施例1の試料No.3のめっき処理中に、同じ場所から採取しためっき液である。また、試料No.24の測定対象めっき液は、実施例2の試料No.11のめっき処理中に、図13におけるフィルター65よりも下流側の戻り側配管41に取り付けた図略のバルブから採取しためっき液であり、試料No.25の測定対象めっき液は、実施例2の試料No.13のめっき処理中に、同じ場所から採取しためっき液である。
【0185】
また、試料No.21〜23及び試料No.26〜28の測定対象めっき液は、調製後の測定液の溶存酸素濃度及びブライトナー濃度が表11,12の各試料の値となるようにビーカー内にて調製した。
【0186】
試料No.19〜23の測定対象めっき液の添加剤としては、上村工業社製「スルカップEVF−T」を用い、試料No.24〜28の測定対象めっき液の添加剤としては、上村工業社製「スルカップETN」をそれぞれ用いた。
【0187】
VMS(添加剤無添加のめっき液)としては、表11の試料No.19〜23については、硫酸銅めっき液(硫酸銅五水塩(硫酸銅五水和物)200g/L、硫酸50g/L、及び塩化物イオン50mg/Lを含むもの)を用い、表12の試料No.24〜28については、硫酸銅めっき液(硫酸銅五水塩(硫酸銅五水和物)100g/L、硫酸200g/L、及び塩化物イオン50mg/Lを含むもの)を用いた。
【0188】
5)測定結果
測定結果を表11及び表12に示す。
【0189】
【表11】

【0190】
【表12】

【0191】
測定されるAr値はブライトナーの濃度の大小が反映される。表11から、試料No.20,21のように適正な溶存酸素濃度及びブライトナー濃度の場合、Ar値は1.14〜1.16程度である。試料No.19のようにブライトナー濃度が適正であっても溶存酸素濃度が不足している場合、初期のAr値はブライトナー濃度が過剰の場合(試料No.22)とほぼ同じ1.2程度である。この試料No.19のAr値は、時間の経過とともに試料No.20とほぼ同じ1.15程度に低下した。
【0192】
また、表12から、試料No.25,26のように適正な溶存酸素濃度及びブライトナー濃度の場合、Ar値は1.97程度である。試料No.24のようにブライトナー濃度が適正であっても溶存酸素濃度が過剰である場合、初期のAr値はブライトナー濃度が不足している場合(試料No.28)とほぼ同じ1.91程度である。この試料No.24のAr値は、時間の経過とともに試料No.25とほぼ同じ1.96程度に増加した。
【0193】
なお、上記の試料No.19及びNo.24のように、時間の経過とともにAr値が試料No.20及び試料No.25のAr値にそれぞれ近づくのは次のことに起因している。すなわち、掃引を連続して繰り返し行うと、測定液に空気が溶け込むので、表11,12に示すように溶存酸素濃度が変動して適正な濃度に近づく。測定液に空気が溶け込むのは、回転白金電極により撹拌していること、及びVMSの溶存酸素濃度が空気の飽和濃度に近いことがその理由である。
【符号の説明】
【0194】
11 電気めっき装置
13 めっき槽
15 別槽
17 第1空間
19 第2空間
21 第1隔壁
23,24 上縁部
25 隔壁本体
27 突出片
27a 横部
27b 縦部
29 送り側配管
29a 供給口
31 沈降空間
33 供給空間
35 第2隔壁
37 連通口
39 上縁部
41 戻り側配管
43 再供給配管
45 アンダーフロー用仕切り板
47 槽本体
49 オーバーフロー槽
51 槽本体の側壁
53 槽本体の側壁の上縁部
55 アノード
57 カソード
59 アノードバック
61 ノズル
63,64,66 ポンプ
65,68 フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液が貯留されるめっき槽と、このめっき槽とは別体の槽であって前記めっき槽との間で前記めっき液が循環する別槽と、を備えた電気めっき装置であって、
前記別槽は、その内部に第1空間とこの第1空間よりも下流側に位置する第2空間とを有し、前記第1空間内の前記めっき液のうち所定高さを超えた分が前記第1空間から前記第2空間に流れ込み、この第2空間において空気中を流下する構造を有している電気めっき装置。
【請求項2】
前記別槽は、前記第1空間と前記第2空間を仕切るために上下方向に延設された隔壁を有し、前記第1空間の前記めっき液が前記隔壁における前記所定高さに位置する上縁部をオーバーフローして前記第2空間に流れ込む構造を有している、請求項1に記載の電気めっき装置。
【請求項3】
前記別槽は、前記第1空間の前記めっき液が前記隔壁における前記所定高さに位置する貫通口を通じて前記第2空間に流れ込む構造を有している、請求項1に記載の電気めっき装置。
【請求項4】
前記上縁部は、前記第2空間側に延設され、かつ、その先端が前記隔壁の側面とは離隔した突出片を有している、請求項2に記載の電気めっき装置。
【請求項5】
前記突出片は、前記第2空間側に横方向に延びる横部とこの横部の先端から下方向に延びる縦部とを有し、この縦部の先端が前記隔壁の側面と離隔している、請求項4に記載の電気めっき装置。
【請求項6】
前記めっき槽から前記別槽へ前記めっき液を送る送り側配管をさらに備え、
この送り側配管は前記第1空間に前記めっき液を供給する供給口を有し、
この供給口は前記所定高さよりも下方に位置している、請求項1〜5のいずれかに記載の電気めっき装置。
【請求項7】
前記供給口からの前記めっき液の吐出方向が前記別槽の内側面に向いている、請求項6に記載の電気めっき装置。
【請求項8】
前記めっき槽から前記別槽へ前記めっき液を送る送り側配管をさらに備え、
前記隔壁が第1隔壁であり、
前記別槽は、前記第1空間の内部を、前記めっき液中の金属粒子を沈降させるための沈降空間と、この沈降空間よりも上流側に位置し、前記送り側配管の供給口から前記めっき液が供給される供給空間とに分けるために上下方向に延設された第2隔壁を有している、請求項1〜5のいずれかに記載の電気めっき装置。
【請求項9】
前記第2隔壁は、前記所定高さよりも下方に設けられて前記沈降空間と前記供給空間を連通する複数の連通口を有している、請求項8に記載の電気めっき装置。
【請求項10】
前記第2隔壁の上縁部は前記所定高さ又は前記所定高さよりも下方に位置している、請求項8に記載の電気めっき装置。
【請求項11】
前記別槽から前記めっき槽へ前記めっき液を戻す戻り側配管と、前記別槽から排出された前記めっき液を前記第1空間に戻す再供給配管と、をさらに備えている、請求項1〜10のいずれかに記載の電気めっき装置。
【請求項12】
前記第1空間よりも下流側の空間に設けられた機械式撹拌機をさらに備えている、請求項1〜11のいずれかに記載の電気めっき装置。
【請求項13】
前記めっき槽は、前記めっき液が貯留される槽本体と、この槽本体と一体的に設けられ、前記槽本体の前記めっき液が前記槽本体の側壁の上縁部をオーバーフローして流れ込むオーバーフロー槽とを有し、
このオーバーフロー槽は、内部に上流側空間とこの上流側空間よりも下流側に位置する下流側空間とを有し、前記めっき液が前記上流側空間から前記下流側空間に流れ込み空気中を流下する構造を有している、請求項1〜12のいずれかに記載の電気めっき装置。
【請求項14】
前記槽本体の前記上縁部は、前記オーバーフロー槽側に延設され、かつ、その先端部が前記槽本体の側面とは離隔した突出片を有している、請求項13に記載の電気めっき装置。
【請求項15】
前記第2空間において前記めっき液が空気中を流下する落差は10cm以上である、請求項1〜14のいずれかに記載の電気めっき装置。
【請求項16】
前記めっき液は、銅めっきに用いられるものであり、ブライトナーとして硫黄含有有機化合物を含む、請求項1〜15のいずれかに記載の電気めっき装置。
【請求項17】
めっき液が貯留されるめっき槽と、このめっき槽とは別体の槽であって前記めっき槽との間で前記めっき液が循環する別槽と、を備えた電気めっき装置を用いた電気めっき方法であって、
前記別槽はその内部に第1空間とこの第1空間よりも下流側に位置する第2空間とを有し、
前記第1空間において前記めっき液を所定高さまで貯留して前記めっき液中の金属粒子を前記第1空間の下方に沈降させ、
前記第1空間内の前記めっき液のうち前記所定高さを超えた分を前記第2空間に流れ込ませ、この第2空間において空気中を流下させることにより前記めっき液の溶存酸素濃度を調整する電気めっき方法。
【請求項18】
前記めっき液は、銅めっきに用いられるものであり、ブライトナーとして硫黄含有有機化合物を含む、請求項17に記載の電気めっき方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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