説明

電気アーク炉内でステンレス溶湯の発泡スラグを制御するための方法

本発明は、電気アーク炉内でステンレス溶湯の発泡スラグを制御するための方法に関する。本発明によれば、電気アーク炉内のスラグ高さがサーモグラフィで時間およびスラグ高さの関数として連続的に検出され、温度および温度勾配に依存して発泡材料の添加が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気アーク炉内でステンレス溶湯の発泡スラグを制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EAF内での良発泡性スラグの諸利点は十分に知られており、この点について特許文献1を参照するように指示することができる。電気アーク炉の操業時に装入原料、すなわち、主にスクラップや合金は電極のアークで溶解され、同時にスラグを形成する。スラグはその主要機能、すなわち溶湯から望ましくない諸成分を除去する機能の他に、溶湯が泡状態にされるとき保護機能を果たす。スラグはこの状態のとき電極先端と金属表面との間の空間を覆い、その低い熱伝導率により、炉の耐火ライニングを電気アークの放射エネルギーから保護する。
【0003】
発泡スラグは電気炉の壁体に対するアークの集中的放射を著しく低減し、こうして金属溶湯内へのエネルギー導入を改善する。こうして炉の耐火材料の耐久性が本質的に延長される。
【0004】
これらの利点を達成するために発泡スラグは常に炉内に所定の高さで存在していなければならない。
【0005】
特許文献2により公知の金属溶湯製造方法では発泡スラグの高さが音響的に、しかもスラグ発泡体に特徴的な周波数範囲を検出することによって、判定される。その場合、測定音レベルと基準音レベルとの比較から、発泡剤の添加を制御するための拠り所が得られる。
【0006】
同様に電気アーク炉内の発泡スラグの高さ判定を特許文献3が扱っている。その際、固体伝播音の判定が測定技術として利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/087979号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第637634号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/009924号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、改良された発泡スラグ制御方法を明示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明によれば、電気アーク炉内のスラグ高さがサーモグラフィ(熱画像)で時間およびスラグ高さの関数として連続的に検出され、温度および温度勾配に依存して発泡材料の添加が制御されることによって解決される。
【0010】
こうして本発明は、サーモグラフィックシステムに基づいて発泡材料の添加時に電気アーク炉内でステンレス溶湯の発泡スラグを制御するための方法に関する。添加の制御は発泡スラグの高さにわたって測定した発泡スラグの最適形成に基づいている。スラグの高さは熱電対の温度変化を引き起こす。熱電対は電気アーク炉の壁体に組み込まれており、極端に高い熱伝導率を有する。こうして、温度勾配を測定する可能性がやはり得られる。
【0011】
こうして、スラグ高さは熱電対での連続的温度測定に基づいて検出される。スラグ高さの違いに基づく熱電対の迅速な温度変化は赤外信号無線伝送に基づいて制御室内の受信器で受信される。温度推移に相応して発泡材料の添加が制御される。
【0012】
図面を参考に以下で本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】測定システムの一般原理を示す。
【図2】発泡材料添加制御の原理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、符号1は、ここで詳細には説明しない電気アーク炉である。熱電対5が炉壁の1領域に配置され、つまり既存のもしくは所要の発泡スラグ高さの通常領域内にある高さに配置されており、この熱電対から放射される赤外線を赤外カメラ2が受信し、測定値を制御信号3として材料添加機構4へと転送する。この材料添加機構は、それに応じて、発泡材料を電気アーク炉に供給する。そのことが矢印6で示唆してある。
【0015】
図2は時間軸にわたるスラグ高さを示す。
【0016】
発泡スラグは、図2に認めることができるように自然な構成に相応していわば指数関数的に発生する。発泡材料は既に触れたように材料添加機構4を介してスラグと金属との間の帯域に導入され、溶解プロセスを施され、平行して酸化鉄が還元される。
【0017】
スラグ高さは熱電対での温度動向によって測定システムで確認される。熱電対の温度は時間およびスラグ高さの関数であり、そのことが式1と式2に示してある。
【0018】
測定システムが提供するのは:
・時間関数の温度信号:T=f(t)=f’(h) (1)
・時間関数の温度勾配:dT=df’(h) (2)
【0019】
熱電対は電気アーク炉の壁体に組み込まれており、極端に高い熱伝導率を特徴としている。これにより温度勾配は確定することができる(式3参照)。
制御システムが提供するのは:
dT/dt=g(h,t)=df’(h)/dt (3)
【0020】
以上により判定できるのは、
・添加速度dm/dt(kg/min)は、式4、5から、
T>Tmin、dT/dt≧0のときdm/dt=v (4)
T=Topt、dT/dt<0のときdm/dt=0 (5)
そして添加時間t(分)は、式6、7から、
dT/dt≧0である限り、Δt=t (6)
dT/dt<0である限り、Δt=O (7)
【0021】
サーモグラフィは非接触式測定法であるので、すなわち、遠く離れた物体も結像することができる。カメラの赤外信号は制御室内で無線信号として受信され、式4〜式7により制御信号に変換される。
【0022】
正符号の勾配が現れると、これは温度の上昇傾向を意味するが、しかし同時に電極の未被覆状態も意味しており、その限りで材料の添加は一定した速度で行われる。それとは別にここでも、別の実務指向の関数を制御の基礎とすることができる。温度勾配が零もしくは負であると、材料の添加は完全に停止され、または別の実務指向の関数に従って減らしながら継続される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気アーク炉内でステンレス溶湯の発泡スラグを制御するための方法において、前記電気アーク炉内のスラグ高さが、サーモグラフィで時間およびスラグ高さの関数として連続的に検出され、温度および温度勾配に依存して発泡材料の添加が制御されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記温度勾配が正符号の場合は、前記材料の添加が一定速度で行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記温度勾配が負符号または零の場合は、前記材料の添加が完全に停止されるかまたは別の実務指向関数に従って減らしながら継続されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記温度が炉壁に組み込まれた熱電対によって測定されることを特徴とする先行請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記熱電対から放射される赤外線が熱画像カメラで検出されかつ制御信号として発泡材料添加部に転送されることを特徴とする請求項4記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−500898(P2012−500898A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524178(P2011−524178)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【国際出願番号】PCT/DE2009/001137
【国際公開番号】WO2010/022703
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(500031054)エスエムエス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (31)
【氏名又は名称原語表記】SMS Siemag AG
【住所又は居所原語表記】Eduard−Schloemann−Strasse 4, D−40237 Duesseldof, Germany
【Fターム(参考)】