説明

電気コネクタ、およびツイストペアケーブルと電気コネクタとの接続方法

【課題】ツイストペアケーブル、特にシールデッドツイストペアケーブルの撚り戻し部におけるインピーダンスの増加またはノイズ性能の低下を抑え、かつツイストペアケーブルと電気コネクタとの接続を容易または確実に行うことができるようにする。
【解決手段】電気コネクタが接続されるシールデッドツイストペアケーブルの端部において、一対の単線102を撚り戻した部分を、シェル部材のベース部4上の切り起こし部5間に配置し、当該撚り戻し部における一対の単線102を互いに平行にかつ互いに接触または近接させて並べる。そして、ベース部4にケーブルカバー部材6を取り付ける。これにより、当該撚り戻し部は、いずれも導電材料により形成されたベース部4、切り起こし部5およびケーブルカバー部材6に覆われる。このような構成により、当該撚り戻し部におけるインピーダンスを下げ、ノイズ性能を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツイストペアケーブルに接続される電気コネクタ、およびツイストペアケーブルと電気コネクタとの接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ツイストペアケーブルには、アンシールデッドツイストペアケーブル(UTP)とシールデッドツイストペアケーブル(STP)がある。アンシールデッドツイストペアケーブルは、一対の単線を撚り合わせることにより形成されたケーブルである。アンシールデッドツイストペアケーブルは、単なる平行線と比較して、外部からのノイズの影響を受け難く、ノイズ輻射も少ないといった良好なノイズ性能を有し、または取り回しが容易で安価であることから広く普及している。しかし、アンシールデッドツイストペアケーブルは、同軸ケーブルと比較するとノイズ性能が良いとはいえない。そこで、一対の単線を撚り合わせたものを導電シールドで被覆することによりノイズ性能をより良くしたシールデッドツイストペアケーブルも広く普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−71404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アンシールデッドツイストペアケーブルの端部に電気コネクタを接続するとき、電気コネクタのハウジング内に所定の位置関係を持って相互に離間して配置される複数の端子に、アンシールデッドツイストペアケーブルの一対の単線の端部を接続する。このため、アンシールデッドツイストペアケーブルの端部において一対の単線を撚り戻す。この結果、一対の単線を撚り合わせることによって実現されていたアンシールデッドツイストペアケーブルの高周波における所定の特性インピーダンスが、一対の単線を撚り戻した部分において増加してしまう。
【0005】
また、シールデッドツイストペアケーブルの場合には、その端部において導電シールドを除去して一対の単線を露出させた上で、これら単線を撚り戻す。この結果、一対の単線を撚り合わせ、かつ導電シールドで被覆することによって実現されていたシールデッドツイストペアケーブルの高周波における所定の特性インピーダンスが、一対の単線を露出させて撚り戻した部分において増加してしまう。
【0006】
このように、単線の撚り戻し、または導電シールドの除去により、ツイストペアケーブルの撚り戻し部分においてインピーダンスが増加すると、電気コネクタおよびツイストペアケーブルを介して接続される回路間または装置間におけるインピーダンス整合をとることが困難になる。
【0007】
また、単線の撚り戻し、または導電シールドの除去により、電気コネクタと接続されるツイストペアケーブルの端部においてツイストペアケーブルが本来有していたノイズ性能が低下してしまう。
【0008】
また、上記特許文献1には、ツイストペアケーブルの撚り戻し部分において、撚り戻された一対の単線をテープやチューブで束ねることで、撚り戻し部分におけるインピーダンスを調整する方法が記載されている。しかしながら、電気コネクタが小型の場合や、複数のツイストペアケーブル(複数組の対線)を1つの電気コネクタに狭い間隔で接続する場合等には、撚り戻された一対の単線をテープやチューブで束ねる作業は容易ではない。この結果、上記特許文献1に記載の技術を採用すると、ツイストペアケーブルに電気コネクタを接続する作業が煩雑になり、作業時間の増大や、テープやチューブの取付不良による歩留まりの悪化を招くおそれがある。
【0009】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、ツイストペアケーブル、特にシールデッドツイストペアケーブルの撚り戻し部におけるインピーダンスの増加またはノイズ性能の低下を抑えることができ、かつ、ツイストペアケーブルと電気コネクタとの接続を容易または確実に行うことができる電気コネクタ、およびツイストペアケーブルと電気コネクタとの接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の電気コネクタは、導体と当該導体を被膜する絶縁体とをそれぞれ有する一対の単線を互いに撚り合わせることにより形成されたツイストペアケーブルの端部に接続する電気コネクタであって、絶縁材料により形成され、前記ツイストペアケーブルの端部において一対の単線を撚り戻し、撚り戻した前記各単線の端部を装着するコネクタ本体と、前記コネクタ本体および前記ツイストペアケーブルの端部における一対の単線を撚り戻した部分である撚り戻し部を保持するシェル部材とを備え、前記シェル部材は、導電材料により形成され、先端側に前記コネクタ本体が配置され、基端側に前記撚り戻し部が配置されるベース部と、導電材料により形成され、前記ベース部の基端側に配置された前記撚り戻し部における前記一対の単線を、当該一対の単線が互いに平行に並びかつ互いに近接または接触するように位置決めした状態で保持するケーブル保持部と、前記ベース部との間に少なくとも前記撚り戻し部および前記ケーブル保持部が位置するように前記ベース部上に設けられたカバー部とを備えている。
【0011】
本発明の第1の電気コネクタでは、ケーブル保持部により、ツイストペアケーブルの撚り戻し部を保持し、撚り戻し部における一対の単線を互いに平行に並びかつ互いに近接または接触するように位置決めする。これにより、撚り戻し部におけるインピーダンスを下げることでき、当該電気コネクタおよびツイストペアケーブルを介して接続される回路間または装置間のインピーダンス整合をとることができる。さらに、ベース部およびケーブル保持部をいずれも導電材料により形成することにより、撚り戻し部を導電材料で覆うことができる。これにより、当該導電材料を接地すれば、撚り戻し部におけるインピーダンスをより下げることができ、当該電気コネクタおよびツイストペアケーブルを介して接続される回路間または装置間のインピーダンス整合をより効果的にとることができる。さらに、これらの構成により、電気コネクタに接続されるツイストペアケーブルの端部においてツイストペアケーブルが本来有するノイズ性能の低下を抑えることができる。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第2の電気コネクタは、上述した本発明の第1の電気コネクタにおいて、前記ケーブル保持部は、前記撚り戻し部における前記一対の単線の周囲の全部または一部をまとめて覆うことを特徴とする。
【0013】
これにより、撚り戻し部におけるインピーダンスをより一層下げることができ、当該電気コネクタおよびツイストペアケーブルを介して接続される回路間または装置間のインピーダンス整合をより一層効果的にとることができる。また、ツイストペアケーブルの端部におけるノイズ性能の低下を効果的に抑えることができる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第3の電気コネクタは、上述した本発明の第1または第2の電気コネクタにおいて、前記ケーブル保持部は、前記ベース部の基端部から前記コネクタ本体に達しまたは接近するまでの間、前記撚り戻し部を連続的に覆うことを特徴とする。
【0015】
これにより、撚り戻し部におけるインピーダンスをより一層下げることができ、当該電気コネクタおよびツイストペアケーブルを介して接続される回路間または装置間のインピーダンス整合をより一層効果的にとることができる。また、ツイストペアケーブルの端部におけるノイズ性能の低下を効果的に抑えることができる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の第4の電気コネクタは、上述した本発明の第1ないし第3のいずれかの電気コネクタにおいて、前記ケーブル保持部は、前記ベース部に、当該ベース部から独立した導電部材を取り付けることにより形成されることを特徴とする。
【0017】
これにより、ケーブル保持部により撚り戻し部を保持する構成を容易に実現することができる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の第5の電気コネクタは、上述した本発明の第4の電気コネクタにおいて、前記ベース部の基端側には、前記撚り戻し部の両側を挟み込むように前記ベース部から突出し、前記撚り戻し部における一対の単線を前記ベース部上において位置決めする少なくとも一対の突部が設けられ、前記導電部材は前記一対の突部間を架橋するように前記ベース部または前記一対の突部に取り付けられることを特徴とする。
【0019】
これにより、撚り戻し部における一対の単線を一対の突部間に配置することにより、当該一対の単線をベース部上で位置決めした後、ベース部に導電部材を取り付けることで撚り戻し部を保持する構成を容易に作り上げることができる。したがって、電気コネクタをツイストペアケーブルに接続する際の作業性が良くなり、接続作業を容易にすることができ、接続作業の確実性を高めることができる。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の第6の電気コネクタは、上述した本発明の第4または第5の電気コネクタにおいて、前記カバー部には、前記導電部材を前記ベース部との間で押さえる押さえ部が形成されていることを特徴とする。
【0021】
これにより、撚り戻し部の保持を確実に維持することができる。また、カバー部に導電部材を押さえる機能を付することで、撚り戻し部の保持に必要な部材の個数を減らすことができる。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の第7の電気コネクタは、上述した本発明の第1ないし第3のいずれかの電気コネクタにおいて、前記ケーブル保持部は、前記ベース部の一部を切り起こして曲げることにより形成されることを特徴とする。
【0023】
これにより、撚り戻し部の保持に必要な部材を減らすことができる。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明の第8の電気コネクタは、上述した本発明の第1ないし第3のいずれかの電気コネクタにおいて、前記カバー部の全部または一部は導電材料により形成され、前記ケーブル保持部は、前記ベース部に前記カバー部を取り付けることにより、当該カバー部のうち導電材料により形成された部分で前記撚り戻し部の少なくとも上部を覆うことにより形成されることを特徴とする。
【0025】
すなわち、カバー部の全部が導電材料により形成されている場合には、当該カバー部をベース部に取り付けることにより前記撚り戻し部の少なくとも上部を覆う構成とすることが望ましい。また、カバー部の全部が導電材料により形成されていない場合には、カバー部のうち、当該カバー部をベース部に取り付けた際に前記撚り戻し部と対応する部分を導電材料により形成し(例えば当該部分に導電材料からなる部材を一体的に設け)、当該カバー部をベース部に取り付けることにより、当該カバー部の導電材料で形成された部分により前記撚り戻し部の少なくとも上部を覆う構成としてもよい。いずれの構成であっても、カバー部を利用してケーブル保持部を実現することができるので、電気コネクタを構成する部材の個数を減らすことができ、製造コストの削減等を図ることができると共に、電気コネクタをツイストペアケーブルに接続する作業の簡素化を図ることができる。
【0026】
上記課題を解決するために、本発明の第9の電気コネクタは、上述した第1ないし第8の電気コネクタにおいて、前記コネクタ本体には、それぞれ撚り戻した複数対の単線がそれぞれ装着され、前記ベース部の基端側には前記複数対の単線の撚り戻し部がそれぞれ配置され、前記ケーブル保持部は複数設けられ、前記ベース部の基端側に配置された前記複数対の単線の撚り戻し部をそれぞれ保持することを特徴とする。
【0027】
これにより、複数のツイストペアケーブルのそれぞれの撚り戻し部におけるインピーダンスを効率良く下げることができる。また、複数のツイストペアケーブルの端部におけるノイズ性能の低下を効率良く抑えることができる。
【0028】
上記課題を解決するために、本発明の第10の電気コネクタは、上述した本発明の第1ないし第3のいずれかの電気コネクタにおいて、前記ベース部は、当該ベース部の底板を形成する底板部と当該ベース部の横壁を形成する一対の側板部とを備え、前記ケーブル保持部は一対の隔壁部を備え、前記一対の隔壁部は、前記ベース部の底板部上であって一対の側板部間に配置され、前記ベース部の底板部に対して立ち上がり、前記ベース部の基端部から前記コネクタ本体に達しまたは接近する位置まで互いに平行に伸長し、前記撚り戻し部は前記ケーブル保持部の一対の隔壁部間に保持され、前記カバー部は、導電材料により平板状に形成され、前記ケーブル保持部の一対の隔壁部間をその上方から全面的に覆うように前記ベース部上に設けられていることを特徴とする。
【0029】
本発明の第10の電気コネクタにおいて、撚り戻し部は、その全周が、いずれも導電材料により形成された、ケーブル保持部の隔壁部、ベース部の底板部およびカバー部によって全面的に覆われる。これにより、撚り戻し部におけるインピーダンスを確実に下げることができ、当該電気コネクタおよびツイストペアケーブルを介して接続される回路間または装置間のインピーダンス整合をより効果的にとることができる。また、電気コネクタに接続されるツイストペアケーブルの端部においてツイストペアケーブルが本来有するノイズ性能の低下を確実に抑えることができる。
【0030】
上記課題を解決するために、本発明の第11の電気コネクタは、上述した本発明の第10の電気コネクタにおいて、前記ケーブル保持部は、前記ベース部の底板部上に載置される基板部を有し、前記一対の隔壁部は前記基板部上に設けられていることを特徴とする。
【0031】
本発明の第11の電気コネクタによれば、ケーブル保持部の一対の隔壁部を基板部に設けることで、ケーブル保持部を、基板部および一対の隔壁部を備えた単一の部材として形成することができる。これにより、電気コネクタの組立性を良くすることができる。
【0032】
上記課題を解決するために、本発明の第12の電気コネクタは、上述した本発明の第11の電気コネクタにおいて、前記ケーブル保持部は、前記基板部および前記一対の隔壁部を前記ベース部の底板部上において位置決めすると共に前記ベース部に係止する係止部を備えていることを特徴とする。
【0033】
本発明の第12の電気コネクタによれば、ケーブル保持部のベース部に対する位置決めおよび取付を容易にかつ高精度に行うことが可能になり、電気コネクタの組立の容易化および効率化を図ることができる。
【0034】
上記課題を解決するために、本発明の第13の電気コネクタは、上述した本発明の第10ないし第12のいずれかの電気コネクタにおいて、前記カバー部には、導電材料により形成され、前記ケーブル保持部の一対の隔壁部間の内部に入り込み、当該一対の隔壁部間の内部において当該一対の隔壁部間に保持された前記撚り戻し部をその上方から全面的に覆う内蓋部が設けられていることを特徴とする。
【0035】
本発明の第13の電気コネクタにおいて、撚り戻し部は、その全周が、いずれも導電材料により形成された、ケーブル保持部の隔壁部、ベース部の底板部(ケーブル保持部が基板部を有する場合はケーブル保持部の基板部)、およびカバー部の内蓋部により全面的に覆われ、さらにその外周側において、いずれも導電材料により形成された、ベース部の側板部、ベース部の底板部、およびカバー部によって全面的に覆われる。このように、撚り戻し部は導電材料により全面的に二重に包囲されるので、撚り戻し部のシールド性を著しく高めることができ、撚り戻し部におけるインピーダンスの低下、およびノイズ性能低下の抑制をより一層確実に図ることができる。
【0036】
上記課題を解決するために、本発明の第14の電気コネクタは、上述した本発明の第10ないし第13のいずれかの電気コネクタにおいて、前記コネクタ本体には、それぞれ撚り戻した複数対の単線がそれぞれ装着され、前記ケーブル保持部は複数対の前記隔壁部を備え、前記複数対の単線の撚り戻し部は前記複数対の隔壁部間にそれぞれ保持されることを特徴とする。
【0037】
これにより、複数のツイストペアケーブルのそれぞれの撚り戻し部におけるインピーダンスを効率良く確実に下げることができる。また、複数のツイストペアケーブルの端部におけるノイズ性能の低下を効率良く確実に抑えることができる。
【0038】
上記課題を解決するために、本発明の第15の電気コネクタは、上述した本発明の第1ないし第14のいずれかの電気コネクタにおいて、前記ツイストペアケーブルは、互いに撚り合わされた少なくとも前記一対の単線をまとめて覆う導電材料により形成された導電シールドと、前記導電シールドを覆う絶縁材料により形成された絶縁シールドとを有するシールデッドツイストペアケーブルであり、前記ベース部の基端側に設けられ、前記シールデッドツイストペアケーブルの端部において前記各単線の端部が前記コネクタ本体に装着されかつ前記撚り戻し部が前記ケーブル保持部に保持された状態で、前記導電シールドを前記ベース部に電気的に接続する導電シールド接続部を備えていることを特徴とする。
【0039】
これにより、接地された導電シールドを、導電シールド接続部を介してベース部に電気的に接続することで、ベース部およびケーブル保持部を接地することができ、撚り戻し部のインピーダンスを下げる効果を容易に実現することができる。
【0040】
上記課題を解決するために、本発明の接続方法は、導体と当該導体を被膜する絶縁体とをそれぞれ有する一対の単線を互いに撚り合わせることにより形成されたツイストペアケーブルの端部と電気コネクタとを接続する接続方法であって、前記ツイストペアケーブルの端部において前記一対の単線を撚り戻し、撚り戻した前記各単線の端部を、絶縁材料により形成されたコネクタ本体に装着する工程と、導電材料により形成され、先端側に前記コネクタ本体が配置されたベース部の基端側に、前記ツイストペアケーブルの撚り戻した一対の単線を互いに平行に、かつ互いに近接または接触させて並べる工程と、前記ベース部の基端側に並べられた一対の単線を、導電材料により形成されたケーブル保持部で前記ベース部の基端側において保持する工程と、前記ベース部との間に少なくとも前記撚り戻し部および前記ケーブル保持部が位置するように前記ベース部にカバー部を取り付ける工程とを備えている。
【0041】
これにより、ツイストペアケーブルの撚り戻し部におけるインピーダンスを下げることができ、また、ツイストペアケーブルの端部におけるノイズ性能の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、ツイストペアケーブル、特にシールデッドツイストペアケーブルの撚り戻し部におけるインピーダンスの増加またはノイズ性能の低下を抑えることができる。また、ツイストペアケーブルと電気コネクタとの接続を容易または確実に行うことができ、接続作業時間を短縮し、または歩留まりを良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態による電気コネクタを示す斜視図である。
【図2】図1中の矢示II−II方向から見た本発明の第1の実施形態による電気コネクタを示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による電気コネクタにおいてベース部にコネクタ本体が配置された状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による電気コネクタにおいてベース部にコネクタ本体およびシールデッドツイストペアケーブルの撚り戻し部が配置された状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による電気コネクタにおいてベース部にケーブルカバー部材が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による電気コネクタにおけるケーブルカバー部材を示す斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施形態による電気コネクタにおいてベース部にケーブルカバー部材が取り付けられるときの状態を示す、図2と同じ方向から見た断面図である。
【図8】シールデッドツイストペアケーブルの端部を示す斜視図である。
【図9】シールデッドツイストペアケーブルの端部において絶縁シールドを除去し、導電シールドを折り返し、各導電被膜を除去し、2対の単線をそれぞれ撚り戻し、各単線の導体端部を露出させた状態を示す斜視図である。
【図10】シールデッドツイストペアケーブルの接続途中の段階における、本発明の第2の実施形態による電気コネクタを示す斜視図である。
【図11】シールデッドツイストペアケーブルの接続途中の段階における、本発明の第3の実施形態による電気コネクタを示す斜視図である。
【図12】シールデッドツイストペアケーブルの接続途中の段階における、本発明の第4の実施形態による電気コネクタを示す斜視図である。
【図13】本発明の第5の実施形態による電気コネクタの要部を抜き出して示す斜視図である。
【図14】シールデッドツイストペアケーブルの接続途中の段階における、本発明の第6の実施形態による電気コネクタを示す斜視図である。
【図15】本発明の第7の実施形態による電気コネクタを示す斜視図である。
【図16】本発明の第7の実施形態による電気コネクタの分解した状態を示す斜視図である。
【図17】本発明の第7の実施形態による電気コネクタにおけるベース部、コネクタ本体およびケーブル保持部等を示す斜視図である。
【図18】本発明の第7の実施形態による電気コネクタにおけるケーブル保持部を示す斜視図である。
【図19】本発明の第7の実施形態による電気コネクタにおけるシェルカバー部の下面側を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照にしながら説明する。
【0045】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態による電気コネクタについて説明する。図1および図2は本発明の第1の実施形態による電気コネクタを示している。一方、図8および図9は図1中の電気コネクタに接続されるシールデッドツイストペアケーブルを示している。
【0046】
図1中の本発明の第1の実施形態による電気コネクタ1は、シールデッドツイストペアケーブル101の端部に接続する電気コネクタである。図8に示すように、本実施形態において例にあげるシールデッドツイストペアケーブル101は、一対の単線102を互いに撚り合わせることにより形成された撚り対線を2組有する。さらに、シールデッドツイストペアケーブル101には、撚り対線ごとにドレイン線103が設けられ、各撚り対線は、ドレイン線103と共に導電被膜107で覆われている。また、ドレイン線103と共に導電被膜107でそれぞれ覆われた2組の撚り対線は、2組まとめて導電シールド104で覆われ、さらに、この導電シールド104は絶縁シールド105で覆われている。各単線102は、例えば銅等から形成された線状の導体102Aと、導体102Aを被膜するポリ塩化ビニル等から形成された絶縁体102Bとをそれぞれ有している。また、導電シールド104は例えば銅合金、アルミニウム等の導電材料により形成され、絶縁シールド105は例えばポリエステル、ポリプロピレン等の絶縁材料により形成されている。
【0047】
シールデッドツイストペアケーブル101に電気コネクタ1を接続するときには、図9に示すように、電気コネクタ1を接続する側のシールデッドツイストペアケーブル101の端部において、絶縁シールド105を除去し、導電シールド104を外側へ折り返し、各導電被膜107を除去する。そして、2対の単線102をそれぞれ撚り戻し、各単線102の端部において絶縁体102Bを取り除いて導体102Aの端部を露出させる。以下、シールデッドツイストペアケーブル101に電気コネクタ1を接続するときに、シールデッドツイストペアケーブル101の端部において各対の単線102を撚り戻した部分を「撚り戻し部106」という。各撚り戻し部106は、導電シールド104が折り返されて各導電被膜107が除去され、各単線102が露出し始める部位から、撚り戻された各単線102の端部までの間を指す。
【0048】
さて、図1において、電気コネクタ1は、コネクタ本体2、シェル部材3およびケーブル締め付け固定部10から大略構成されている。
【0049】
コネクタ本体2は、絶縁材料により形成され、シールデッドツイストペアケーブル101の撚り戻された2組の対線における各単線102の端部を装着する複数の装着口2A(図3参照)が形成されている。また、コネクタ本体2の内部には、各装着口2Aに各単線102の端部を装着するときに、当該各単線102の導体102Aの端部に電気的に接続される接続端子12(図2参照)を収容する端子収容部(図示せず)が設けられている。
【0050】
シェル部材3は、コネクタ本体2およびシールデッドツイストペアケーブル101の端部を保持するものである。すなわち、シェル部材3は、図1に示すように、ベース部4およびシェルカバー部8を備え、図2に示すように、ベース部4とシェルカバー部8との間に、コネクタ本体2、およびコネクタ本体2に各単線102の端部が装着されたシールデッドツイストペアケーブル101の端部を保持する。さらに、シェル部材3は、図2に示すように、ベース部4とシェルカバー部8との間に、シールデッドツイストペアケーブル101における各撚り戻し部106を保持するケーブル保持部7を備えている。
【0051】
図3は、シェル部材3のベース部4にコネクタ本体2が配置された状態を示し、図4はさらにベース部4にシールデッドツイストペアケーブル101における各撚り戻し部106が配置された状態を示し、図5はさらにベース部4に各ケーブルカバー部材6が取り付けられた状態を示している。
【0052】
図3において、シェル部材3のベース部4は例えば銅合金等の導電材料により形成されている。ベース部4は、方形の金属板の両端部を曲げることにより、その横断面が、上向きに開口するコ字状に形成され、底板部4Aと、底板部4Aの幅方向両側に位置する側板部4B、4Cとを備えている。ベース部4の先端側に位置する底板部4A上であって、側板部4Bと4Cとの間にはコネクタ本体2が配置されている。
【0053】
一方、ベース部4の基端側に位置する底板部4A上には、図4に示すように、コネクタ本体2に各単線102の端部が装着されたシールデッドツイストペアケーブル101の各撚り戻し部106が配置される。具体的に説明すると、ベース部4の基端側に位置する底板部4A上には、シールデッドツイストペアケーブル101が有する2組の対線にそれぞれ対応する2つの撚り戻し部106が、ベース部4の幅方向において互いに離間して配置される。
【0054】
さらに、各撚り戻し部106における一対の単線102は、当該一対の単線102が互いに平行に並びかつ互いに近接または接触するように位置決めした状態で複数の切り起こし部5によって保持される。すなわち、ベース部4の底板部4Aにおいて相互に幅方向に離間した2つの領域、つまり2組の対線にそれぞれ対応する2つの撚り戻し部106を配置する2つの領域には、それぞれ例えば6つの切り起こし部5が形成されている。
【0055】
具体的に説明すると、ベース部4の底板部4Aにおいて、図4中左側に装着された対線に対応する撚り戻し部106が配置される領域には、底板部4Aの基端側から先端側にかけて3つの切り起こし部5が所定の間隔を持って2列配列されている。これら2つの列はそれぞれ直線状であり、互いに平行である。これら2つの列間の距離(つまりベース部4の幅方向において対向する2つの切り起こし部5間の距離)は、例えば各単線102の直径寸法のほぼ2倍である。そして、各切り起こし部5は底板部4Aから上側に向けて突出しており、その高さ寸法は、例えば各単線102の直径寸法にほぼ等しい。
【0056】
このような切り起こし部5が並んだ2つの列の間に、撚り戻し部106における一対の単線102を並べて装着することにより、当該撚り戻し部106における一対の単線102が切り起こし部5により位置決めされて保持される。すなわち、各列において直線状に配列された3つの切り起こし部5で、当該撚り戻し部106における一対の単線102の両側を挟み込むことにより、これら一対の単線102が互いに平行となるように位置決めされる。また、互いに対向する切り起こし部5間の距離が各単線102の直径寸法のほぼ2倍であることにより、当該撚り戻し部106における一対の単線102が互いに近接または接触した状態で位置決めされる。ベース部4の底板部4Aにおいて、図4中右側に装着された対線に対応する撚り戻し部106が配置される領域においても同様である。
【0057】
さらに、ベース部4には、図5に示すように、例えば2つのケーブルカバー部材6が取り付けられ、これらケーブルカバー部材6により、ベース部4の底板部4A上に配置された各撚り戻し部106が覆われる。ここで、図6はケーブルカバー部材6を拡大して示し、図7はケーブルカバー部材6がベース部4に取り付けられるときの状態を示している。
【0058】
図6に示すように、ケーブルカバー部材6は、ベース部4から独立した部材であり、例えばベース部4と同一の導電材料から形成されている。また、ケーブルカバー部材6は、長尺の平板状に形成された天井板部6Aと、天井板部6Aの幅方向両側を曲げることにより形成された例えば4つの曲げ部6Bと、各曲げ部6Bに形成された突起6Cと、ベース部4に取り付けたときに天井板部6Aの先端側からベース部4の先端側に向けて張り出す張り出し部6Dとを備えている。
【0059】
ケーブルカバー部材6は、図7に示すように、ベース部4の底板部4A上に配置された撚り戻し部106をその上から被せるようにベース部4に取り付けられる。これにより、ケーブルカバー部材6の天井板部6Aは、撚り戻し部106の両側に配置された切り起こし部5間を架橋し、撚り戻し部106の上側を覆う。これと同時に、ケーブルカバー部材6の各曲げ部6Bが切り起こし部5間に嵌り込み、切り起こし部5と共に撚り戻し部106の右側および左側を覆う。これにより、撚り戻し部106における一対の単線102は、ケーブルカバー部材6の天井板部6A、曲げ部6B、切り起こし部5、およびベース部4の底板部4Aにおいて撚り戻し部106が配置された部分により全周に亘って覆われる。しかも、ケーブルカバー部材6の天井板部6Aは、ベース部4の基端部からコネクタ本体2に達する手前の位置まで伸びており、かつ、互いに交互に配置された曲げ部6Bおよび切り起こし部5も全体としてベース部4の基端部からコネクタ本体2に達する位置まで伸びている。さらに、ケーブルカバー部材6の張り出し部6Dはコネクタ本体2に達する位置まで伸びている。これにより、撚り戻し部106は、ベース部4の基端部からコネクタ本体2に達するまでの間連続的に覆われる。この結果、各撚り戻し部16は、その全周に亘り、かつその長さ方向のほぼ全域に亘り、導電材料により覆われることになる。
【0060】
また、ケーブルカバー部材6の突起6Cは、ケーブルカバー部材6をベース部4に取り付けたときに、切り起こし部5に引っかかり、これにより、ケーブルカバー部材6はベース部4に固定される。
【0061】
なお、各撚り戻し部106を覆う、ケーブルカバー部材6、切り起こし部5、およびベース部4の底板部4Aにおいて撚り戻し部106が配置された部分は、ケーブル保持部7(図2参照)を構成している。また、ケーブルカバー部材6が導電部材の具体例であり、切り起こし部5が突部の具体例である。
【0062】
図1に戻り、シェルカバー部8は、ベース部4との間に、コネクタ本体2、各撚り戻し部106を含むシールデッドツイストペアケーブル101の端部、およびケーブル保持部7が位置するようにベース部4上に設けられ、コネクタ本体2、各撚り戻し部106を含むシールデッドツイストペアケーブル101の端部、およびケーブルカバー部材6等を収容する部材である。シェルカバー部8は、例えばシェルカバー部8とベース部4の側板部4B、4Cとの間に形成された図示しない係止構造により、ベース部4に取り付けられる。
【0063】
シェルカバー部8は、例えばベース部4と同じ導電材料により形成され、ベース部4の上側を覆うカバー板部8Aを備えている。さらに、カバー板部8Aにおいて、各ケーブルカバー部材6の位置と対応する位置には、ベース部4側に向けて突出する押さえ部8Bが設けられている。シェルカバー部8をベース部4に取り付けたとき、各押さえ部8Bはケーブルカバー部材6の天井板部6Aの上面に接触し、ケーブルカバー部材6をベース部4に向けて押さえる。なお、シェルカバー部8を絶縁材料により形成してもよい。
【0064】
また、図1に示すように、電気コネクタ1の基端側には、ベース部4とシェルカバー部8との間に、図9に示すようにいわゆる末端処理が施されたシールデッドツイストペアケーブル101の端部を挿通させるための挿通穴9が設けられている。さらに、電気コネクタ1の基端側には、末端処理が施されたシールデッドツイストペアケーブル101において導電シールド104が折り返された部分やその周辺を締め付け固定するケーブル締め付け固定部10が設けられている。ケーブル締め付け固定部10は、ベース部4と同じ導電材料により形成され、ベース部4と一体的に形成されている。ケーブル締め付け固定部10は、シールデッドツイストペアケーブル101において導電シールド104が折り返された部分を締め付けることで導電シールド104と接触して電気的に接続される。これにより、シールデッドツイストペアケーブル101の導電シールド104が接地されている場合には、ケーブル締め付け固定部10を介してベース部4が接地される。さらに、ベース部4の切り起こし部5、および切り起こし部5と接触しているケーブルカバー部材6も接地される。この結果、各撚り戻し部106は、接地された導電材料により覆われることになる。なお、ケーブル締め付け固定部10が導電シールド接続部の具体例である。
【0065】
このような構成を有する電気コネクタ1をシールデッドツイストペアケーブル101の端部に接続する方法は次のとおりである。
【0066】
まず、図9に示すように、シールデッドツイストペアケーブル101の端部において、絶縁シールド105を除去し、導電シールド104を外側へ折り返し、各導電被膜107を除去する。そして、2対の単線102をそれぞれ撚り戻し、各単線102の端部において絶縁体102Bを取り除いて導体102Aの端部を露出させる。続いて、露出させた各単線102の導体102Aの端部に接続端子12を圧着し、接続端子12が圧着された各単線102の導体102Aの端部をコネクタ本体2の装着口2Aに装着する。
【0067】
次に、ベース部4の基端側における底板部4A上に各撚り戻し部106における一対の単線102を、切り起こし部5が並んだ2つの列の間に配置し、当該一対の単線102が互いに平行になり、かつ互いに接触または近接するように並べる。
【0068】
次に、ベース部4の基端側における底板部4A上に並べられた各撚り戻し部106を上から被せるようにケーブルカバー部材6をベース部4に取り付ける。
【0069】
次に、ベース部4にシェルカバー部8を取り付け、ベース部4とシェルカバー部8との間にコネクタ本体2、各撚り戻し部106を含むシールデッドツイストペアケーブル101の端部および各ケーブルカバー部材6を収容すると共に、各ケーブルカバー部材6をシェルカバー部8の押さえ部8Bで押さえる。
【0070】
次に、シールデッドツイストペアケーブル101をケーブル締め付け固定部10に締め付け固定する。このとき、折り返した導電シールド104をケーブル締め付け固定部10に接触させ、導電シールド104とケーブル締め付け固定部10とを電気的に接続させる。以上より、電気コネクタ1のシールデッドツイストペアケーブル101の端部への接続が完了する。
【0071】
以上説明した通り、本発明の第1の実施形態による電気コネクタ1によれば、シールデッドツイストペアケーブル101に電気コネクタ1を接続する際に、シールデッドツイストペアケーブル101の各撚り戻し部106における一対の単線102を互いに平行にかつ互いに近接または接触させた状態で位置決めすることができ、さらに、各撚り戻し部106を、その全周に亘り、かつその長さ方向のほぼ全域に亘り、導電材料で覆うことができる。これにより、シールデッドツイストペアケーブル101に電気コネクタ1を接続するために、シールデッドツイストペアケーブル101の端部において各単線102を撚り戻しても、撚り戻し部106におけるインピーダンスの増加を抑制することができる。したがって、電気コネクタ1およびシールデッドツイストペアケーブル101を介して接続される回路間または装置間におけるインピーダンス整合をとることができる。よって、インピーダンス不整合による信号の反射やノイズの発生を抑制することができる。また、電気コネクタ1内において各撚り戻し部106を導電材料で覆うことで、シールデッドツイストペアケーブル101が本来有するノイズ性能が低下するのを抑えることができる。
【0072】
また、本発明の第1の実施形態による電気コネクタ1によれば、ベース部4の底板部4Aに撚り戻し部106を配置し、カーブルカバー部材6を被せることにより、インピーダンスの増加およびノイズ性能の低下を抑えることができる。したがって、上述した特許文献1に記載されたツイストペアケーブルの撚り戻し部分をテープやチューブで束ねる場合と比較して、上記効果を簡単な作業により実現することができる。よって、本発明の第1の実施形態によれば、シールデッドツイストペアケーブル101に電気コネクタ1を接続する作業時間を短縮することができ、かつ、シールデッドツイストペアケーブル101と電気コネクタ1との接続不良の発生を減らし、歩留まりを良くすることができる。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態による電気コネクタについて説明する。図10は、シールデッドツイストペアケーブルの接続途中の段階における、本発明の第2の実施形態による電気コネクタを示している。なお、図10において、上述した第1の実施形態による電気コネクタ1と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0074】
図10において、本発明の第2の実施形態による電気コネクタ21においては、ベース部4の底板部4Aに設けられた切り起こし部22が、ベース部4の基端部からコネクタ本体2の手前の位置まで連続的に伸びている。また、各切り起こし部22は横断面く字状に形成されている。
【0075】
撚り戻し部106を配置する前には、図10中右側の互いに対向する一対の切り起こし部22のように、切り起こし部22の双方の上端部が互いに離間しており、これら切り起こし部22間に撚り戻し部106を装着することができるようになっている。そして、撚り戻し部106を装着し、撚り戻し部106における一対の単線102が互いに平行となりかつ近接または接触するように並べた後は、図10中左側の互いに対向する一対の切り起こし部22のように、切り起こし部22の双方の上端部が互いに接触するように、これら切り起こし部22を押し曲げる。この結果、撚り戻し部106は、その全周に亘り、かつその長さ方向のほぼ全域に亘り、各切り起こし部22、およびベース部4の底板部4Aにおいて当該撚り戻し部106が配置されている部分により覆われる。各切り起こし部22は、ベース部4と同じ導電材料で形成されているので、各撚り戻し部106は、全周かつ長さ方向ほぼ全域に亘って導電材料により覆われることになる。
【0076】
このような構成を有する本発明の第2の実施形態による電気コネクタ21によっても、上述した本発明の第1の実施形態による電気コネクタ1とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本発明の第2の実施形態による電気コネクタ21によれば、各切り起こし部22により、各撚り戻し部16の上側、右側および左側を覆う構成であるため、第1の実施形態の場合のように、ケーブルカバー部材が不要であり、さらにケーブルカバー部材を押さえるための押さえ部をシェルカバー部8に設ける必要がない。この結果、電気コネクタ21を構成する部材の個数を減らすことができると共に、シェルカバー部8の形状を簡単化することができ、製造コストの削減等を図ることができる。また、互いに対向する切り起こし部22間に撚り戻し部106を装着して、これら切り起こし部22を曲げて閉じれば、撚り戻し部106を覆うことができるので、シールデッドツイストペアケーブル101と電気コネクタ21との接続作業のより一層の簡単化を図ることができる。
【0077】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態による電気コネクタについて説明する。図11は、シールデッドツイストペアケーブルの接続途中の段階における、本発明の第3の実施形態による電気コネクタを示している。なお、図11において、上述した第1の実施形態による電気コネクタ1と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0078】
本発明の第2の実施形態による電気コネクタ21の各切り起こし部22が、撚り戻し部106をその幅方向両側から挟み込むような構成であったのに対し、図11に示す本発明の第3の実施形態による電気コネクタ31は、各切り起こし部32Bが、撚り戻し部106を幅方向一側から他側に向けて抱え込むような構成である。
【0079】
すなわち、電気コネクタ31では、各撚り戻し部106を覆う切り起こし部が、ベース部4の底板部4Aから比較的小さく突出する例えば2つの切り起こし部32Aと、ベース部4の底板部4Aから比較的大きく突出し、横断面がく字状であり、撚り戻し部106を抱え込む1つの切り起こし部32Bにより構成されている。撚り戻し部106における一対の単線102は、各切り起こし部32Aと切り起こし部32Bとの間に、互いに平行となり、かつ互いに近接または接触するように並べられる。そして、当該撚り戻し部106は切り起こし部32Bにより、その周囲の大部分がその長さ方向ほぼ全域に亘って覆われる。
【0080】
このような構成を有する本発明の第3の実施形態による電気コネクタ31によっても、上述した本発明の第1または第2の実施形態による電気コネクタ1または21とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本発明の第3の実施形態による電気コネクタ31によれば、本発明の第2の実施形態による電気コネクタ21と同様に、第1の実施形態の場合のようなケーブルカバー部材や、ケーブルカバー部材を押さえるための押さえ部が不要となるので、製造コストの削減等を図ることができる。
【0081】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態による電気コネクタについて説明する。図12は、シールデッドツイストペアケーブルの接続途中の段階における、本発明の第4の実施形態による電気コネクタを示している。なお、図12において、上述した第1の実施形態による電気コネクタ1と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
図12に示す本発明の第4の実施形態による電気コネクタ41は、導電材料により形成され、天井板部42A、天井板部42の幅方向両側に設けられた側板部42B、42Cを有する横断面コ字状のケーブルカバー部材42を備えている。ケーブルカバー部材42の天井板部42Aおよび側板部42B、42Cはいずれもベース部4の基端部からコネクタ本体2の手前まで連続的に伸びている。さらに、天井板部42Aの先端側には張り出し部42Dが設けられている。また、ケーブルカバー部材42の側板部42B、42Cの下端部には複数の凸部42Eが形成され、ベース部4の底板部4Aには凸部42Eを嵌め込むための穴部43が形成されている。
【0083】
撚り戻し部106における一対の単線102を互いに平行にかつ互いに近接または接触するように並べ、その上からケーブルカバー部材42を被せ、ケーブルカバー部材42の各凸部42Eをベース部4の各穴部43に嵌め込む。これにより、撚り戻し部106は、その全周に亘ってかつその長さ方向のほぼ全域に亘って導電材料により覆われることとなる。
【0084】
このような構成を有する本発明の第4の実施形態による電気コネクタ41によっても、上述した本発明の第1、第2または第3の実施形態による電気コネクタ1、21または31とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本発明の第4の実施形態による電気コネクタ41によれば、他の実施形態と比較して、各撚り戻し部106の全周および長さ方向のほぼ全域をより確実に導電材料で覆うことができるので、インピーダンスを効果的に下げることができると共に、ノイズ性能の低下を効果的に抑えることができる。
【0085】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態による電気コネクタについて説明する。図13は、シールデッドツイストペアケーブルの接続途中の段階における、本発明の第5の実施形態による電気コネクタを示している。なお、図13において、上述した第1の実施形態による電気コネクタ1と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
図13に示す、本発明の第5の実施形態による電気コネクタ51は、シェルカバー部52に各撚り戻し部106を覆う構造が形成されている。すなわち、シェルカバー部52のカバー板部52Aの基端側がベース部4の底板部4Aに接近するように屈曲しており、カバー板部52Aの基端側内面が、ベース部4上に配置された各撚り戻し部106の上部に近接または接触し、撚り戻し部106の上部を覆う。さらに、ベース部4の底板部4Aから上向きに切り起こされた複数の切り起こし部53と、シェルカバー部52のカバー板部52Aから下向きに切り起こされた複数の切り起こし部54とが互いに噛み合うことで、撚り戻し部106の一方の側面を覆う。これにより、シェルカバー部52をベース部4と同様の導電材料により形成することで、各撚り戻し部106を導電材料で覆うことができる。
【0087】
このような構成を有する本発明の第5の実施形態による電気コネクタ51によっても、上述した第1、第2、第3または第4の実施形態による電気コネクタ1、21、31または41とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本発明の第4の実施形態による電気コネクタ51によれば、各撚り戻し部106を覆う構造を、シェルカバー部52に形成することで、第1または第4の実施形態の場合におけるケーブルカバー部材が不要となるので、電気コネクタ51を構成する部材の個数を減らすことができ、製造コストの削減等を図ることができる。
【0088】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態による電気コネクタについて説明する。図14は、シールデッドツイストペアケーブルの接続途中の段階における、本発明の第6の実施形態による電気コネクタを示している。なお、図14において、上述した第1の実施形態による電気コネクタ1と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0089】
図14に示す、本発明の第6の実施形態による電気コネクタ61は、シェル部材62のベース部63内に、中間板部64を設けることにより、上下方向に2段構造となっており、左右方向に複数の対線を装着することができるだけでなく、上下方向に複数の対線を装着することができ、多数の対線を装着し得る構造となっている。すなわち、電気コネクタ61は、ベース部63と同様に、中間板部64を導電材料により形成し、中間板部64に複数の切り起こし部65を形成し、各切り起こし部65により各撚り戻し部106を挟み込むようにして中間板部64上において保持する。さらに、中間板部64に配置する対線の個数に対応する個数のケーブルカバー部6を中間板部64に取り付け、中間板部64に配置された各撚り戻し部106を、その全周に亘り、かつその長さ方向全域に亘り覆う構成を備えている。
【0090】
このような構成を有する本発明の第6の実施形態によっても、上述した第1、第22、第3、第4または第5の実施形態による電気コネクタ1、21、31、41または51とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本発明の第6の実施形態による電気コネクタ61によれば、当該電気コネクタ61に接続される多数の対線について、インピーダンスの増加およびノイズ性能の低下を抑えることができる。また、本発明の第6の実施形態による電気コネクタ61によれば、多数の対線と電気コネクタ61との接続作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0091】
(第7の実施形態)
図15および図16は本発明の第7の実施形態による電気コネクタを示している。図17は当該電気コネクタにおけるベース部、コネクタ本体およびケーブル保持部等を示し、図18は当該電気コネクタにおけるケーブル保持部を示し、図19は当該電気コネクタにおけるシェルカバー部の下面側を示している。なお、図15ないし図19において、上述した本発明の第1の実施形態による電気コネクタ1と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。また、図15ないし図19において、シールデッドツイストペアケーブルの図示を省略している。
【0092】
図15において、本発明の第7の実施形態による電気コネクタ71は、上述した本発明の第1の実施形態による電気コネクタ1と同様に、2組の撚り線対を有するシールデッドツイストペアケーブル101の端部(図8、図9参照)に接続する電気コネクタである。電気コネクタ71は、コネクタ本体2、シェル部材72およびケーブル締め付け固定部10から大略構成されている。
【0093】
シェル部材72は、第1の実施形態による電気コネクタ1におけるシェル部材3と同様に、コネクタ本体2およびシールデッドツイストペアケーブル101の端部を保持する部材である。シェル部材72は、図16に示すように、ベース部73、ケーブル保持部75およびシェルカバー部87を備えている。
【0094】
ベース部73は、例えば銅合金等の導電材料により形成されている。また、ベース部73は、図16に示すように、方形の金属板の両端部を曲げることにより、その横断面が、上向きに開口するコ字状に形成され、当該ベース部73の底板を形成する底板部73Aと、当該ベース部73の横壁を形成する一対の側板部73B、73Cとを備えている。また、ベース部73の先端側に位置する底板部73A上であって、側板部73Bと側板部73Cとの間にはコネクタ本体2が配置されている。一方、ベース部73の基端側に位置する底板部73A上には、ケーブル保持部75が配置される。
【0095】
また、ベース部73の側板部73B、73Cには、コネクタ本体2を係止してコネクタ本体2をベース部73に固定するための係止突部73D(一方のみ図示)がそれぞれ形成されている。各係止突部73Dは、コネクタ本体2の側面に形成された係止凹部2Bと係合する。また、ベース部73の側板部73B、73Cには、ケーブル保持部75を係止してケーブル保持部75をベース部73に固定するための係止孔73Eがそれぞれ形成されている。係止孔73Eは側板部73Bに2つ形成され、側板部73Cに2つ形成されている。各係止孔73Eは、ケーブル保持部75の係止突部86と係合する。また、ベース部73の側板部73B、73Cには、シェルカバー部87を係止してシェルカバー部87をベース部73に固定するための係止孔73Fがそれぞれ形成されている。各係止孔73Fは、シェルカバー部87の係止突部90と係合する。なお、ケーブル保持部75をベース部73に係止するための係止機構は係止孔73Eに限らず、凹部でもよいし、側板部73B、73Cに突部を形成し、ケーブル保持部75に孔または凹部を形成してもよい。シェルカバー部87をベース部73に係止するための係止機構、およびコネクタ本体2をベース部73に係止するための係止機構についても同様である。
【0096】
ケーブル保持部75は、ベース部73の基端側において、シールデッドツイストペアケーブル101の各撚り戻し部106(図9参照)を保持する部材である。ケーブル保持部75は、図17に示すように、ベース部73の基端側において、ベース部73の底板部73A上であって側板部73B、73C間に配置されている。本実施形態におけるケーブル保持部75は、シールデッドツイストペアケーブル101が有する2組の対線にそれぞれ対応する2つの撚り戻し部106を、ベース部4の幅方向において互いに離間させた状態でそれぞれ保持する。ケーブル保持部75は、ベース部73と同一の導電材料により形成されている。
【0097】
ケーブル保持部75は、図18に示すように、基板部76、一対の横側壁部77、78、2つに分断された基端側壁部79、80、2対の隔壁部81、82、83、84を備えている。これら基板部76、横側壁部77、78、基端側壁部79、80、隔壁部81、82、83、84は、例えば所定の形状に形成された1枚の板材を曲げることにより形成されている。基板部76はベース部73の底板部73A上に載置される。横側壁部77、78は、基板部76がベース部73の底板部73A上に載置されたときに、ベース部73の側板部73B、73Cとそれぞれ重なり合う。基端側壁部79、80は、基板部76がベース部73の底板部73A上に載置されたときに、シェル部材72の基端側の壁となり、基端側壁部79と基端側壁部80との間が、シールデッドツイストペアケーブル101の端部を挿通させるための挿通穴85となる。
【0098】
一対の隔壁部81、82は、図17に示すように、ベース部73の底板部73Aに対して立ち上がり、ベース部73の基端部からコネクタ本体2に達しまたは接近する位置まで互いに平行に伸長している。また、各隔壁部81、82は、その上端部が、ベース部73上に取り付けられるシェルカバー部87のカバー板部88の下面と接触または接近する位置まで上方に伸長している。
【0099】
シールデッドツイストペアケーブル101の一方の撚り戻し部106における一対の単線102は、当該一対の単線102が互いに平行に並びかつ互いに近接または接触するように位置決めした状態で、隔壁部81と隔壁部82との間に保持される。隔壁部81と隔壁部82との間の距離(隔壁部81、82が互いに平行に伸長している部分における両者間の距離)は、シールデッドツイストペアケーブル101の単線102の直径のほぼ2倍であり、シールデッドツイストペアケーブル101の一方の撚り戻し部106における一対の単線102が、上述したように位置決めした状態で隔壁部81と隔壁部82との間にぴったり嵌るように設定されている。これにより、当該一対の単線102を位置決めした状態で隔壁部81と隔壁部82との間に確実に保持することができ、両単線102の位置がずれるのを防止することができる。
【0100】
また、隔壁部81、82のそれぞれにおいて、ベース部73の先端側に向いた端部には、互いに幅方向に離れるように曲がり、隔壁部81と隔壁部82との間の距離が拡がるように傾斜した傾斜部81A、82Aが形成されている。傾斜部81A、82Aにより、コネクタ本体2の装着口2Aに装着された一対の単線102を、装着口2Aから隔壁部81、82間に導くに当たり、当該各単線102を緩やかに湾曲させることができ、当該各単線102に大きな曲げ力が加えられるのを防止することができる。一方、隔壁部82において、ベース部73の基端側に向いた端部には、隔壁部81から幅方向に離れるように曲がり、ベース部73の基端側の幅方向中央部に接近するように傾斜した傾斜部82Bが形成されている。傾斜部82Bにより、隔壁部81、82間に保持された一対の単線102を挿通穴85に導くに当たり、当該各単線102を緩やかに湾曲させることができ、当該各単線102に大きな曲げ力が加えられるのを防止することができる。
【0101】
一対の隔壁部83、84も、隔壁部81、82と同様に形成されている。シールデッドツイストペアケーブル101の他方の撚り戻し部106における一対の単線102は、当該一対の単線102が互いに平行に並びかつ互いに近接または接触するように位置決めした状態で、隔壁部83と隔壁部84との間に保持される。また、隔壁部83、84にも、隔壁部81、82の傾斜部81A、82A、82Bと同様に、傾斜部83A、84A、84Bが形成されている。
【0102】
また、ケーブル保持部75の横側壁部77、78には、当該ケーブル保持部75をベース部73の底板部73A上において位置決めすると共に、当該ケーブル保持部75をベース部73に係止して固定するための係止突部86が形成されている。係止突部86は、ベース部73の側板部73B、73Cに形成された係止孔73Eに対応するように、横側壁部77に2つ形成され、横側壁部78に2つ形成されている。係止突部86は係止孔73Eとそれぞれ係合する。このように係止突部86および係止孔73Eを形成することにより、ケーブル保持部75のベース部73に対する位置決めおよび固定を容易にかつ正確に行うことが可能になり、これにより、電気コネクタ71の組立の容易化および効率化を図ることができる。
【0103】
シェルカバー部87は、図15に示すように、ベース部73に配置されたコネクタ本体2およびシールデッドツイストペアケーブル101の端部をこれらの上方から全面的に覆う部材である。シェルカバー部87は、ベース部73との間に、コネクタ本体2、ケーブル保持部75、および各撚り戻し部106を含むシールデッドツイストペアケーブル101の端部が位置するようにベース部73上に設けられている。
【0104】
シェルカバー部87は、例えばベース部73と同じ導電材料により形成された平板状のカバー板部88を備えている。シェルカバー部87をベース部73上に取り付けたとき、ベース部73はその上方から全面的にカバー板部88により覆われる。このとき、ベース部73の底板部73A上に設けられたケーブル保持部75の隔壁部81、82間および隔壁部83、84間もこれらの上方からカバー板部88により全面的に覆われる。
【0105】
また、図19に示すように、カバー板部88の幅方向両側には下方に突出する支持部89がそれぞれ設けられている。各支持部89は、カバー板部88を形成する板材を折り曲げることにより形成されている。また、各支持部89には係止突部90が形成されている。また、カバー板部88の先端側には1対の張り出し部91が形成されている。図15および図16に示すように、各張り出し部91を、ベース部73に固定されたコネクタ本体2に形成された溝部(図示せず)に挿入し、かつ各係止突部90をベース部73の側板部73B、73Cに形成された係止孔73Fと係合することにより、シェルカバー部87をベース部73に固定することができる。また、カバー板部88の基端側には張り出し部92が形成されている。電気コネクタ71を分解するときには、工具または指先等を張り出し部92に引っ掛けることにより、シェルカバー部87をベース部73から取り外すことができる。
【0106】
また、シェルカバー部87は、図19に示すように、一対の内蓋部93、94を備えている。各内蓋部93、94は、例えばカバー板部88と同じ導電材料により形成され、カバー板部88の下面に配置されている。例えば、各内蓋部93、94は、カバー板部88を形成する板材を曲げた後、内蓋部93、94の先端部に形成された連結部95をカバー板部88の下面に面接触させることにより形成されている。内蓋部93は、ベース部73の底板部73A上に配置されたケーブル保持部75の隔壁部81、82と対応する位置に配置され、内蓋部94は、ベース部73の底板部73A上に配置されたケーブル保持部75の隔壁部83、84と対応する位置に配置されている。
【0107】
内蓋部93は、カバー板部88の下面から下方に突出し、カバー板部88の下面から離れた位置でカバー板部88の下面と平行に拡がるカバー面93Aを有している。図15に示すように、シェルカバー部87をベース部73上に取り付けたときには、内蓋部93が隔壁部81、82間の内部に入り込み、カバー面93Aが隔壁部81、82間の内部において隔壁部81、82間に保持された撚り戻し部106をその上方から全面的に覆う。
【0108】
ここで、内蓋部93は、ベース部73の基端部からコネクタ本体2に達しまたは接近する位置まで伸長している。また、内蓋部93の基端部の端面93Cは、シェル部材72の基端側の壁を形成する基端側壁部79、80の基端側外面とほぼ同一平面内にある。また、内蓋部93の幅寸法は、隔壁部81と隔壁部82との間の距離とほぼ等しい。これにより、隔壁部81、82間に保持された撚り戻し部106は、隔壁部81、82、基板部76、内蓋部93により、長さ方向においても周方向においてそのほぼ全部分が全面的に覆われる。
【0109】
また、内蓋部93は、先端部と基端部との2箇所のみがカバー板部88の下面に支持された両持ち梁の構造を有している。これにより、内蓋部93により、隔壁部81、82間に保持された撚り戻し部106にその上方から適度な弾性力をもって適度な押圧力を与えることができ、撚り戻し部106を上述したように位置決めされた状態のまま押さえ付けることができる。
【0110】
また、内蓋部93において、ベース部73の先端側に向いた端部には、カバー板部88の先端側に向かうにつれてカバー板部88の下面に漸次接近するように傾斜した傾斜部93Bが形成されている。傾斜部93Bにより、コネクタ本体2の装着口2Aから隔壁部81、82間に導かれている各単線102に、その上方から過剰な押圧力が加わるのを防止することができる。
【0111】
また、内蓋部94は、内蓋部93と同様に形成されている。図15に示すように、シェルカバー部87をベース部73上に取り付けたときには、内蓋部94が隔壁部83、84間の内部に入り込み、カバー面94Aが隔壁部83、84間の内部において、隔壁部83、84間に保持された撚り戻し部106をその上方から全面的に覆う。これにより、隔壁部83、84間に保持された撚り戻し部106は、隔壁部83、84、基板部76、内蓋部94により、長さ方向においても周方向においてそのほぼ全部分が全面的に覆われる。また、内蓋部94は、内蓋部93と同様に両持ち梁の構造を有しており、これにより、内蓋部94により、隔壁部83、84間に保持された撚り戻し部106にその上方から適度な弾性力をもって適度な押圧力を与えることができ、撚り戻し部106を上述したように位置決めされた状態のまま押さえ付けることができる。また、内蓋部94は、内蓋部93の傾斜部93Bと同様に、傾斜部94Bを有しており、これにより、コネクタ本体2の装着口2Aから隔壁部83、84間に導かれている各単線102に、その上方から過剰な押圧力が加わるのを防止することができる。
【0112】
このような構成を有する電気コネクタ71をシールデッドツイストペアケーブル101の端部に接続する方法は次のとおりである。すなわち、まず、図9に示すように、シールデッドツイストペアケーブル101の端部において、絶縁シールド105を除去し、導電シールド104を外側へ折り返し、各導電被膜107を除去する。そして、2対の単線102をそれぞれ撚り戻し、各単線102の端部において絶縁体102Bを取り除いて導体102Aの端部を露出させる。続いて、露出させた各単線102の導体102Aの端部に接続端子12(図2参照)を圧着し、接続端子12が圧着された各単線102の導体102Aの端部を、まだベース部73に取り付けられていないコネクタ本体2の装着口2Aに装着する。
【0113】
次に、ケーブル保持部75をベース部73の基端側に取り付ける。これにより、ケーブル保持部75とベース部73とが電気的に接続される。続いて、コネクタ本体2をベース部73の先端側に取り付け、コネクタ本体2に装着されたシールデッドツイストペアケーブル101の2つの撚り戻し部106を、隔壁部81、82間、および隔壁部83、84間にそれぞれ配置し、各撚り戻し部106の一対の単線102が互いに平行になり、かつ互いに接触または近接するように位置決めし、整線する。
【0114】
次に、ベース部73上にシェルカバー部87を取り付ける。これにより、内蓋部93が隔壁部81、82間に入り込み、隔壁部81、82間に配置された一方の撚り戻し部106がその上方から全面的に覆われると共に押さえ付けられる。また、内蓋部94が隔壁部83、84間に入り込み、隔壁部83、84間に配置された他方の撚り戻し部106がその上方から全面的に覆われると共に押さえ付けられる。さらに、ベース部73に取り付けられたコネクタ本体2、ケーブル保持部75、およびシールデッドツイストペアケーブル101の端部がこれらの上方からカバー板部88により全面的に覆われる。また、シェルカバー部87とベース部73とが電気的に接続される。
【0115】
次に、シールデッドツイストペアケーブル101をケーブル締め付け固定部10に締め付け固定する。このとき、折り返した導電シールド104をケーブル締め付け固定部10に接触させ、導電シールド104とケーブル締め付け固定部10とを電気的に接続させる。これにより、導電シールド104とベース部73とが電気的に接続される。以上より、電気コネクタ71のシールデッドツイストペアケーブル101の端部への接続が完了する。
【0116】
以上説明したとおり、本発明の第7の実施形態による電気コネクタ71によれば、いずれも導電材料により形成された、ケーブル保持部75の隔壁部81、82、8384、ケーブル保持部75の基板部76、およびシェルカバー部87の内蓋部93、94により、シールデッドツイストペアケーブル101の各撚り戻し部106の長さ方向および周方向における全体を全面的に覆うことができる。さらに、この外周側から、各撚り戻し部106の全体を、いずれも導電材料により形成された、ベース部73の側板部73B、73C、ベース部73の底板部73A、およびシェルカバー部87のカバー板部88によって全面的に覆うことができる。このように、各撚り戻し部106全体を導電材料により全面的に二重に覆うことができるので、各撚り戻し部106のシールド性を著しく高めることができる。したがって、各撚り戻し部106におけるインピーダンスを確実に低下させることができ、電気コネクタ71およびシールデッドツイストペアケーブル101を介して接続される回路間または装置間におけるインピーダンス整合を確実にとることができる。また、シールデッドツイストペアケーブル101が本来有するノイズ性能が低下するのを確実に抑えることができる。
【0117】
また、本発明の第7の実施形態による電気コネクタ71によれば、ケーブル保持部75を基板部76および隔壁部81、82、83、84を備えた単一の部材として形成することができ、これにより、電気コネクタ71の組立性を良くすることができる。
【0118】
なお、上述した第1ないし第5、および第7の実施形態では、2組の対線を有するシールデッドツイストペアケーブル101に接続する電気コネクタ1、21、31、41、51、71を例にあげたが、本発明はこれに限らず、1組または3組以上の対線を有するシールデッドツイストペアケーブルに接続する電気コネクタにも適用することができる。
【0119】
また、上述した各実施形態では、シールデッドツイストペアケーブル101に接続する電気コネクタ1、21、31、41、51、61、71を例にあげたが、本発明はこれに限らず、アンシールデッドツイストペアケーブルに接続する電気コネクタにも適用することができる。
【0120】
また、上述した第1ないし第6の実施形態では、切り起こし部、ケーブルカバー部材等の導電部材により撚り戻し部106をその長さ方向ほぼ全域に亘って連続的に覆う場合を例にあげた。撚り戻し部106をその長さ方向ほぼ全域に亘って連続的に覆うことにより、インピーダンスの増加およびノイズ性能の低下を抑える効果が高まるので望ましいのであるが、例えば撚り戻し部106をその長さ方向の一部を覆い、または長さ方向ほぼ全域に亘って断続的に覆う構成でも、ある程度の効果を得ることができ、電気コネクタの用途等によってはこのような構成も採用し得る。
【0121】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気コネクタおよびツイストペアケーブルと電気コネクタとの接続方法もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
1、21、31、41、51、61、71 電気コネクタ
2 コネクタ本体
3、62、72 シェル部材
4、63、73 ベース部
4A、73A 底板部
4B、4C、73B、73C 側板部
5、22、32A,32B、53、54、65 切り起こし部(突部)
6、42 ケーブルカバー部材(導電部材)
7、75 ケーブル保持部
8、52、87 シェルカバー部(カバー部)
8B 押さえ部
10 ケーブル締め付け固定部(導電シールド接続部)
76 基板部
81、82、83、84 隔壁部
86 係止突部(係止部)
93、94 内蓋部
101シールデッドツイストペアケーブル
102 単線
102A 導体
102B 絶縁体
104 導電シールド
105 絶縁シールド
106 撚り戻し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と当該導体を被膜する絶縁体とをそれぞれ有する一対の単線を互いに撚り合わせることにより形成されたツイストペアケーブルの端部に接続する電気コネクタであって、
絶縁材料により形成され、前記ツイストペアケーブルの端部において前記一対の単線を撚り戻し、撚り戻した前記各単線の端部を装着するコネクタ本体と、
前記コネクタ本体および前記ツイストペアケーブルの端部における前記一対の単線を撚り戻した部分である撚り戻し部を保持するシェル部材とを備え、
前記シェル部材は、
導電材料により形成され、先端側に前記コネクタ本体が配置され、基端側に前記撚り戻し部が配置されるベース部と、
導電材料により形成され、前記ベース部の基端側に配置された前記撚り戻し部における前記一対の単線を、当該一対の単線が互いに平行に並びかつ互いに近接または接触するように位置決めした状態で保持するケーブル保持部と、
前記ベース部との間に少なくとも前記撚り戻し部および前記ケーブル保持部が位置するように前記ベース部上に設けられたカバー部とを備えた電気コネクタ。
【請求項2】
前記ケーブル保持部は、前記撚り戻し部における前記一対の単線の周囲の全部または一部をまとめて覆うことを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記ケーブル保持部は、前記ベース部の基端部から前記コネクタ本体に達しまたは接近するまでの間、前記撚り戻し部を連続的に覆うことを特徴とする請求項1または2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記ケーブル保持部は、前記ベース部に、当該ベース部から独立した導電部材を取り付けることにより形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記ベース部の基端側には、前記撚り戻し部の両側を挟み込むように前記ベース部から突出し、前記撚り戻し部における一対の単線を前記ベース部上において位置決めする少なくとも一対の突部が設けられ、前記導電部材は前記一対の突部間を架橋するように前記ベース部または前記一対の突部に取り付けられることを特徴とする請求項4に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記カバー部には、前記導電部材を前記ベース部との間で押さえる押さえ部が形成されていることを特徴とする請求項4または5に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記ケーブル保持部は、前記ベース部の一部を切り起こして曲げることにより形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項8】
前記カバー部の全部または一部は導電材料により形成され、前記ケーブル保持部は、前記ベース部に前記カバー部を取り付けることにより、当該カバー部のうち導電材料により形成された部分で前記撚り戻し部の少なくとも上部を覆うことにより形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項9】
前記コネクタ本体には、それぞれ撚り戻した複数対の単線がそれぞれ装着され、
前記ベース部の基端側には前記複数対の単線の撚り戻し部がそれぞれ配置され、
前記ケーブル保持部は複数設けられ、前記ベース部の基端側に配置された前記複数対の単線の撚り戻し部をそれぞれ保持することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項10】
前記ベース部は、当該ベース部の底板を形成する底板部と当該ベース部の横壁を形成する一対の側板部とを備え、
前記ケーブル保持部は一対の隔壁部を備え、前記一対の隔壁部は、前記ベース部の底板部上であって一対の側板部間に配置され、前記ベース部の底板部に対して立ち上がり、前記ベース部の基端部から前記コネクタ本体に達しまたは接近する位置まで互いに平行に伸長し、
前記撚り戻し部は前記ケーブル保持部の一対の隔壁部間に保持され、
前記カバー部は、導電材料により平板状に形成され、前記ケーブル保持部の一対の隔壁部間をその上方から全面的に覆うように前記ベース部上に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項11】
前記ケーブル保持部は、前記ベース部の底板部上に載置される基板部を有し、前記一対の隔壁部は前記基板部上に設けられていることを特徴とする請求項10に記載の電気コネクタ。
【請求項12】
前記ケーブル保持部は、前記基板部および前記一対の隔壁部を前記ベース部の底板部上において位置決めすると共に前記ベース部に係止する係止部を備えていることを特徴とする請求項11に記載の電気コネクタ。
【請求項13】
前記カバー部には、導電材料により形成され、前記ケーブル保持部の一対の隔壁部間の内部に入り込み、当該一対の隔壁部間の内部において当該一対の隔壁部間に保持された前記撚り戻し部をその上方から全面的に覆う内蓋部が設けられていることを特徴とする請求項10ないし12のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項14】
前記コネクタ本体には、それぞれ撚り戻した複数対の単線がそれぞれ装着され、
前記ケーブル保持部は複数対の前記隔壁部を備え、
前記複数対の単線の撚り戻し部は前記複数対の隔壁部間にそれぞれ保持されることを特徴とする請求項10ないし13のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項15】
前記ツイストペアケーブルは、互いに撚り合わされた少なくとも前記一対の単線をまとめて覆う導電材料により形成された導電シールドと、前記導電シールドを覆う絶縁材料により形成された絶縁シールドとを有するシールデッドツイストペアケーブルであり、
前記ベース部の基端側に設けられ、前記シールデッドツイストペアケーブルの端部において前記各単線の端部が前記コネクタ本体に装着されかつ前記撚り戻し部が前記ケーブル保持部に保持された状態で、前記導電シールドを前記ベース部に電気的に接続する導電シールド接続部を備えていることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の電気コネクタ。
【請求項16】
導体と当該導体を被膜する絶縁体とをそれぞれ有する一対の単線を互いに撚り合わせることにより形成されたツイストペアケーブルの端部と電気コネクタとを接続する接続方法であって、
前記ツイストペアケーブルの端部において前記一対の単線を撚り戻し、撚り戻した前記各単線の端部を、絶縁材料により形成されたコネクタ本体に装着する工程と、
導電材料により形成され、先端側に前記コネクタ本体が配置されたベース部の基端側に、前記ツイストペアケーブルの撚り戻した一対の単線を互いに平行に、かつ互いに近接または接触させて並べる工程と、
前記ベース部の基端側に並べられた一対の単線を、導電材料により形成されたケーブル保持部で前記ベース部の基端側において保持する工程と、
前記ベース部との間に少なくとも前記撚り戻し部および前記ケーブル保持部が位置するように前記ベース部にカバー部を取り付ける工程とを備えた接続方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−18898(P2012−18898A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220633(P2010−220633)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【Fターム(参考)】