説明

電気コネクタ

【課題】生産性を損なうことなく、特に高周波信号の伝送を行う場合の伝送特性を、簡易な構成で容易に向上させることを可能とする。
【解決手段】電子回路の接続経路ごとに、信号線SCa及びグランド線SCbを分離・独立させた一組の単位接続ユニット12を複数組構成し、電子回路の各接続経路ごとに区分された一つの単位接続ユニット12内の信号線SCa及びグランド線SCbを、他の単位接続ユニット12内の信号線SCa及びグランド線SCbから分離・独立させることにより、各単位接続ユニット12内のグランド線SCbどうしをコモン接続しても、グランド線SCbを介在したノイズや外乱の影響を他の接続経路の信号線SCaに対して及ぼすことをなくすように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路に対する複数の接続経路を接続するように構成された電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、種々の電気機器には、一対のコネクタどうしを嵌合させるように構成された電気コネクタが広く用いられている。電気コネクタは、通常、複数の信号線及びグランド線を絶縁ハウジングに多極配列した構成を備えており、電子回路に対する信号の伝送を信号線により行うとともに、その伝送信号をシールドするためのグランド線が、グランドコンタクトなどの適宜のグランド接続部材を介してグランド回路に接続されるように構成されている。
【0003】
このような電気コネクタでは、グランド線をグランド回路に接続するにあたっての作業性を向上させるために、例えば下記の特許文献1のように、グランドバー等の長尺状導電部材を用いて複数のグランド線どうしを一括的に接続するなど、グランド線をコモン接続する構成がしばしば採用されている。そのコモン接続された複数のグランド線は、例えば上述したグランドバーからグランド接続部材を通してグランド回路に接続されている。
【0004】
一方、このような電気コネクタが、複数の接続経路を有する電子回路に接続される場合には、一つの電気コネクタに、信号経路及びグランド経路からなる一組の接続経路が複数組にわたって構成され、それら複数組の接続経路が電子回路に対して同時に接続される構成になされる。しかしながら、このように複数組の接続経路を電子回路に同時接続させる電気コネクタにおいて、上述したように複数のグランド線の全てを一括的に接続したり、任意のグランド線どうしをコモン接続したりする構成を採用すると、互いに異なる接続経路のグランド線どうしがコモン接続されることとなってしまい、一つの接続経路の信号線から発生したノイズや外乱が、コモン接続されたグランド線を介して他の接続経路の信号線に影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
特に、近年のように電気回路の高速化に伴い高周波信号の伝送を行う場合には、信号線とグランド線との配置関係によって微妙なインピーダンス調整が行われる等の背景があることから、伝送信号が高周波になるほどグランド線に乗ったノイズや外乱の影響を受けやすくなり、上述したグランド線のコモン接続(一括接続)が問題となるおそれがある。なお、グランド線のコモン接続を全く行わないようにすれば、ノイズや外乱の問題は解消されるが、グランド接続部材に対して複数のグランド線を個々に接続しなければならなくなり、電気コネクタの生産性が低下するとともに高価なものになってしまう。
【0006】
【特許文献1】特開2007−157594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、簡易な構成で、グランド線を介在したノイズや外乱の影響を、生産性を損なうことなく良好に防止することができるようにした電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明にかかる電気コネクタでは、絶縁ハウジングに多極配列された複数の信号線及びグランド線により、信号経路及びグランド経路からなる一組の接続経路が複数組にわたって構成され、それら複数組の接続経路を電子回路に同時に接続させるものであって、前記各接続経路におけるグランド経路が、前記グランド線と、そのグランド線に接続される適宜のグランド接続部材とにより構成された電気コネクタにおいて、前記各接続経路における単数又は複数の信号線及びグランド線と、その単数又は複数の信号線及びグランド線を前記多極配列方向において両側から挟むように配置された少なくとも一対のグランド接続部材とが、前記電子回路の接続経路ごとに独立した一組の単位接続ユニットとして構成され、その単位接続ユニットの複数組が、前記絶縁ハウジングに互いに分離した状態で取り付けられたものであって、前記複数組の単位接続ユニットの内のいずれか一組の単位接続ユニット内に配置された単数又は複数のグランド線と、他の組の単位接続ユニット内に配置された単数又は複数のグランド線とが、電気的に独立した状態で、それぞれ異なる接続経路のグランド経路に接続された構成が採用されている。
【0009】
このような構成を有する電気コネクタによれば、電子回路の接続経路ごとに区分された一つの単位接続ユニット内の信号線及びグランド線が、他の単位接続ユニット内の信号線及びグランド線から分離・独立されているため、各単位接続ユニット内においてグランド線どうしをコモン接続しても、グランド線を介在したノイズや外乱の影響を他の接続経路の信号線に対して及ぼすことがなくなる。
【0010】
また、本発明かかる電気コネクタでは、前記各々の単位接続ユニット内に配置された複数の信号線が、ディファレンシャル伝送を行うように構成されていることが望ましい。
【0011】
このような構成を有する電気コネクタによれば、ディファレンシャル伝送によるノイズ打消し作用と相まって、特に高周波信号の伝送を行う場合の伝送特性が向上される。
【0012】
また、本発明にかかる電気コネクタは、多種多様な構成とすることが可能である。例えば、本発明かかる電気コネクタにおけるグランド接続部材は、前記各単位接続ユニット内に配置された単数又は複数のグランド線をコモン接続する長尺状のグランドバーに一体的に設けられたグランドコンタクトにより構成されることが可能である。また、本発明にかかる電気コネクタにおけるグランド接続部材には、前記各単位接続ユニットを覆うように設けられた導電性シェルの一部が接触するように設けられることが可能である。さらに、本発明にかかる電気コネクタにおける各単位接続ユニット内の信号線及びグランド線が、同軸ケーブルにより構成されていることが可能である。さらにまた、本発明にかかる電気コネクタは、印刷配線基板に実装されるものであって、前記印刷配線基板に半田接続されるホールドダウンが、単位接続ユニットごとに独立して設けられることが可能である。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように本発明にかかる電気コネクタは、電子回路の接続経路ごとに信号線及びグランド線を分離・独立させて単位接続ユニットを複数組構成し、電子回路の接続経路ごとに区分された一つの単位接続ユニット内の信号線及びグランド線を、他の単位接続ユニット内の信号線及びグランド線から分離・独立させることにより、各単位接続ユニット内のグランド線どうしをコモン接続してもグランド線を介在したノイズや外乱の影響を他の接続経路の信号線に対して及ぼすことをなくすように構成したものであるから、特に高周波信号の伝送を行う場合の伝送特性を簡易な構成で容易に向上させることができ、しかも生産性を損なうこともないので、電気コネクタの信頼性を安価かつ大幅に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、複数本の同軸ケーブルを印刷配線基板側に接続する電気コネクタに本発明を適用した場合の実施形態に関する説明を図面に基づいて詳細に行う。
【0015】
[コネクタ組立体の全体構造について]
まず、図1及び図2に表された本発明の一実施形態にかかる電気コネクタの組立体は、当該電気コネクタの組立体が接続される適宜の電子回路(図示省略)に対する複数の接続経路を有するものであって、その電子回路の複数の接続経路に対して同時接続を可能とする構成を備えている。すなわち、本実施形態の電気コネクタ組立体は、信号経路及びグランド経路からなる一組の接続経路を複数組にわたって有するものであり、それら複数組の接続経路の各々に対して接続される複数本の同軸ケーブルSCの端末部分が連結されたプラグコネクタ10と、図示を省略した印刷配線基板上に実装されるリセプタクルコネクタ20とからなる垂直嵌合型のコネクタを構成するものである。
【0016】
このような電気コネクタ組立体を構成しているプラグコネクタ10及びリセプタクルコネクタ20は、前記同軸ケーブルSCの配列方向に沿って細長状に延在する形状を有しており、図示を省略した印刷配線基板上に実装されたリセプタクルコネクタ20の直上位置にプラグコネクタ10が略平行に配置された状態で、上記印刷配線基板と略直交する図示下方側に向かって前記プラグコネクタ10が下降されていき、前記リセプタクルコネクタ20の嵌合部分にプラグコネクタ10の嵌合部分が差し込まれることによって、当該両コネクタ10,20どうしが図示のように嵌合される構成になされている。以下、プラグコネクタ10を差し込む嵌合方向を下方向とし、それとは反対の抜き出す抜去方向を上方向とする。
【0017】
[プラグコネクタについて]
ここで、前記プラグコネクタ10は、図3〜図5にも示されているように、上述した同軸ケーブルSCの配列方向に沿って細長状に延在する絶縁部材からなるプラグハウジング(絶縁ハウジング)11を有している。そのプラグハウジング11の長尺状に延在する上面部分には、前記同軸ケーブルSCがそれぞれ連結された複数体(2体)のプラグ側単位接続ユニット12,12が取り付けられている。それらの各プラグ側単位接続ユニット12は、接続先の電子回路に対する複数の接続経路の各々に対応してそれぞれ設けられており、当該各プラグ側単位接続ユニット12どうしが、互いに電気的に独立して分離された状態で配置されている。
【0018】
このときの前記各プラグ側単位接続ユニット12には、複数体(2体)の同軸ケーブルSCがそれぞれ連結されていて、それら複数体(2体)の同軸ケーブルSCは、逆位相の信号を一対の信号線で伝送し、ノイズを打ち消し合う、いわゆるディファレンシャル(差動)伝送を行うように構成されている。以下、このプラグコネクタ10、及びそのプラグコネクタ10が嵌合されるリセプタクルコネクタ20において、同軸ケーブルSCが連結された側を後端側(図2の右側)とし、それとは反対側を前端側(図2の左側)とする。
【0019】
前記プラグハウジング(絶縁ハウジング)11には、薄板状の金属部材を適宜の形状をなすように折り曲げ成形した導電性シェル13が、例えば圧入により装着されている。その導電性シェル13は、前記プラグ側単位接続ユニット12,12ごとに独立して分離された状態で設けられていて、前記プラグハウジング11の上面部分から前端面部分にかけての部位を覆うように装着されている。この導電性シェル13は、後述するようにプラグ側単位接続ユニット12,12ごとに独立したグランド経路を構成するようにプラグコネクタ10に装着されており、当該導電性シェル13の一部が、リセプタクルコネクタ20側のホールドダウン23bに対して電気的に接触される構成になされている。また、プラグコネクタ10を部分的に覆うことで外部ノイズも遮断しており、それによって、いわゆるEMI対策としている。
【0020】
[プラグ側単位接続ユニットについて]
また、上述したプラグ側単位接続ユニット12は、特に図6に示されているように、当該プラグ側単位接続ユニット12の後端部分に対して、信号伝送媒体としての同軸ケーブルSCの端末部分が、プラグ側単位接続ユニット12ごとにそれぞれ2本ずつ連結されている。そのプラグ側単位接続ユニット12に連結された各同軸ケーブルSCの端末部分は、特に図4及び図7に示されているように、被覆材が皮剥きされることによって、ケーブル中心導体(信号線)SCa及びケーブル外部導体(グランド線)SCbが同軸状をなすように露出されている。そして、その同軸ケーブルSCの中心軸線に沿うようにして配置されたケーブル中心導体SCaが、前記プラグ側単位接続ユニット12の内部に装着された信号伝送用の導電コンタクト(導電端子)14に半田接続されている。このように、信号線としてのケーブル中心導体SCaと、そのケーブル中心導体SCaに半田接続された導電コンタクト14とによって、前記プラグ側単位接続ユニット12,12ごとに独立した各組の接続経路の信号経路が構成されるようになっている。
【0021】
上述した信号伝送用の導電コンタクト(導電端子)14は、後述するグランド用のものとともに前記プラグハウジング(絶縁ハウジング)11に対して、例えば圧入又はインサート成形により取り付けられている。これら信号伝送用及びグランド用の各導電コンタクト14は、全て同一の形状をなすように形成されていて、長手方向の両端位置にグランド用のものが一対配置されているとともに、その内側には信号伝送用のものが一対配置されている。
【0022】
各導電コンタクト14は、前記ケーブル中心導体SCaとの接続部分から後方側(図4の右方側)に向かって延びた後に略直角下方に折れ曲げられており、前記プラグハウジング11の下面側に設けられた嵌合凸部11aの外表面に沿って横断面略U字状をなして延在するように形成されている。そして、その導電コンタクト14の横断面略U字状をなす部分の途中位置には、前述したリセプタクルコネクタ20側に接触する接点部14aが設けられている(図2参照)。それらの導電コンタクト14の接点部14aは、前述したようにプラグコネクタ10がリセプタクルコネクタ20に嵌合された際に、後述するリセプタクルコネクタ20側の接点部と接触して電気的な接続が行われ、それによって信号回路及びグランド回路が構成されるようになっている。
【0023】
また、前述したようにケーブル中心導体SCaの外周側を取り囲むように配置されたケーブル外部導体SCbは、上部グランドバー15aと下部グランドバー15bとの間において上下に挟持されるように配置されており、それらの上部グランドバー15aと下部グランドバー15bとの間にケーブル外部導体SCbが半田付けやカシメや圧接等により接続されている。当該両グランドバー15a,15bは、同軸ケーブルSCの多極配列方向である長手方向に沿って細長状に延在する板状部材から形成されていて、前記プラグハウジング(絶縁ハウジング)11の上面部分に凹設された複数の装着ガイド部によって位置決めされている。そして、このような両グランドバー15a,15bを介して、前記各単位接続ユニット12内に配置されたグランド線であるケーブル外部導体SCbどうしが電気的にコモン接続されて導通状態になされている。
【0024】
また、上述した上部グランドバー15aの長手方向両端部分には、前方(図4の左方)に向かって階段状に突出する一対のグランドコンタクト15c,15cが一体的に設けられている。それらの各グランドコンタクト15cは、本発明でいうグランド接続部材を構成するものであって、前記上部グランドバー15aから上述したケーブル中心導体(信号線)SCaとほぼ同一の高さとなる位置まで段差形状をなして下降するように形成されている。そして、そのように段差状に下降した前記各グランドコンタクト15cの先端部分は、上述した導電コンタクト(導電端子)14のうちのグランド用のものに対して上方側から接触した状態で半田接続されている。このように、グランド線としてのケーブル外部導体SCbと、そのケーブル外部導体SCbに上部グランドバー15aを介して接続されたグランド接続部材としてのグランドコンタクト15cとにより、前述したプラグ側単位接続ユニット12,12ごとに独立した各組の接続経路のグランド経路が構成されるようになっている。
【0025】
このように本実施形態においては、一つの電気コネクタに複数組のプラグ側単位接続ユニット12が設けられているとともに、それら複数組のプラグ側単位接続ユニット12の内のいずれか一組のプラグ側単位接続ユニット12内に配置された単数又は複数のケーブル外部導体(グランド線)SCbと、他の組のプラグ側単位接続ユニット12内に配置された単数又は複数のケーブル外部導体(グランド線)SCbとが、電気的に独立した状態で、それぞれ異なる接続経路のグランド経路に接続されている。
【0026】
そのグランド用の導電コンタクト(導電端子)14は、前述した信号伝送用の導電コンタクト14と同一形状の部品から形成されており、当該導電コンタクト14の横断面略U字状をなす延在部分の途中位置に設けられた接点部は、プラグコネクタ10がリセプタクルコネクタ20に嵌合された際に、後述するリセプタクルコネクタ20側の接点部と接触して電気的な接続が行われるようになっている。
【0027】
さらに、前記上部グランドバー15aには、前述した導電性シェル13の一部が接触されており、その導電性シェル13を介して前記プラグ側単位接続ユニット12,12ごとに独立した各組の接続経路のグランド経路が構成されるようになっている。すなわち、前記導電性シェル13は、上述したプラグ側単位接続ユニット12ごとに取り付けられており、他のプラグ側単位接続ユニット12の導電性シェル13から独立して分離された状態になされている。
【0028】
その導電性シェル13は、上述した同軸ケーブル(信号伝送媒体)SCの端末部分との接続部分を上方側から覆うようにして前記プラグハウジング(絶縁ハウジング)11に取り付けられている。この導電性シェル13の外周縁部には、下方に向かって突出する複数のシェル固定片13aが設けられており、それらのシェル固定片13aが、前記プラグハウジング(絶縁ハウジング)11に対して上方側から差し込まれるように圧入されることによって、当該導電性シェル13全体の固定が行われている。
【0029】
また、その導電性シェル13の上面部分には、舌片状をなすように切欠き形成されたグランド接続バネ片13bが斜め下方に延出するように設けられている。そのグランド接続バネ片13bの延出側の先端部分は、上述した上部グランドバー15aに例えば、上方側から圧接、又は半田付けされており、それによって前記プラグ側単位接続ユニット12,12ごとに独立した各組の接続経路のグランド経路の一部が構成されている。
【0030】
さらに、上記導電性シェル13の後端縁部(図4の右端部)には、下方に向かって突状をなす媒体押圧片13cが長尺溝状をなすように設けられており、その媒体押圧片13cの下方凸部が、上述した同軸ケーブルSCの最外表面に圧接することによって、当該同軸ケーブルSCの保持が導電性シェル13によって確実に行われる構成になされている。
【0031】
[リセプタクルコネクタについて]
一方、上述したような構成を有するプラグコネクタ10が嵌合される相手コネクタとしてのリセプタクルコネクタ20も、前述したプラグコネクタ10と同様に、接続先の電子回路に対する複数の接続経路ごとに独立したユニット構成を備えている。
【0032】
すなわち、リセプタクルコネクタ20は、特に図8及び図9に示されているように、前述したプラグハウジング(絶縁ハウジング)11に対応した細長状のリセプタクルハウジング21を備えている。そして、そのリセプタクルハウジング21の後方側部分には、長手方向に沿って溝状をなす嵌合凹部21aが細長状に形成されており、その嵌合凹部21aの内部に、前述したプラグコネクタ10側の嵌合突部11aが嵌り込むようにして、両コネクタ10,20の嵌合が行われるようになっている。
【0033】
また、前記リセプタクルハウジング(絶縁ハウジング)21の前方側部分には、前述したプラグ側単位接続ユニット12,12に対応した2つのリセプタクル側単位接続ユニット22,22が長手方向に分離・独立された状態で配置されている。そして、それらの各リセプタクル側単位接続ユニット22ごとに、長手方向に沿って複数体(4体)の導電コンタクト(導電端子)23〜23が、例えば圧入又はインサート成形により取り付けられている。
【0034】
これらの各リセプタクル側単位接続ユニット22に設けられた各導電コンタクト(導電端子)23は、前述した各プラグ側単位接続ユニット12に設けられた導電コンタクト14に対応して配列されており、長手方向の両端位置にグランド用のものが一対配置されているとともに、その内側には信号伝送用のものが一対配置されている。これらのグランド用及び信号伝送用の各導電コンタクト22は、全て同一の形状をなすように形成されている。
【0035】
また、これらのグランド用及び信号伝送用の各導電コンタクト(導電端子)23は、前記リセプタクルハウジング21の底面部において、当該リセプタクルハウジング21から前方(図9の左方)に向かって略水平に所定量だけ延出する半田接続部23aが設けられている。その半田接続部22aは、図示を省略した印刷配線基板上の導電路に半田付けされて実装が行われるようになっている。
【0036】
その導電コンタクト(導電端子)23は、前記半田接続部23aから前記リセプタクルハウジング21の内方側(後方側)に延出しており、略直角上方に折れ曲げられることにより横断面略逆U字状をなすように延びた後に、前記リセプタクルハウジング21の内表面に沿って横断面略U字状に延びる形状になされている。そして、その横断面略U字状をなす延在部分の先端側部分には、前述したプラグコネクタ10の導電コンタクト14側に接触する接点部23dが設けられていて、前述したようにプラグコネクタ10がリセプタクルコネクタ20に嵌合された際に、当該導電コンタクト23の接点部23dが、プラグコネクタ10側の接点部14aと接触して電気的な接続が行われ、それによって前述した接続経路ごとの信号経路及びグランド経路が構成されるようになっている。
【0037】
さらにまた、前記各リセプタクル側単位接続ユニット22には、リセプタクルハウジング21の長手方向外方側に向かって舌片状に延出するホールドダウン23bが設けられている。それらの各ホールドダウン23bは、リセプタクル側単位接続ユニット22ごとに独立して設けられた薄板状の金属部材から形成されている。この各ホールドダウン23bの立壁部には、外方側に向かって突出する嵌合ロック凸部23cがそれぞれ設けられていて、前述したプラグコネクタ10がリセプタクルコネクタ20に嵌合された際に、プラグコネクタ10側の導電性シェル13に設けられた嵌合ロック凹部13d(図5参照)に対して前記嵌合ロック凸部23cが係合接触する構成になされていると共に、プラグコネクタ10側の導電性シェル13と電気的に接続する構成になされている。また、このホールドダウン23bが、上述した印刷配線基板上の導電路に半田付けされることによって、グランド回路が構成されるとともに、リセプタクルコネクタ20全体が強固に保持されるようになっている。
【0038】
このような構成を有する本実施形態にかかるプラグコネクタ10においては、電子回路の接続経路ごとに区分された一つのプラグ側単位接続ユニット12内の信号線(ケーブル中心導体SCa)及びグランド線(ケーブル外部導体SCb)が、他のプラグ側単位接続ユニット12内の信号線及びグランド線から分離・独立されているため、各プラグ側単位接続ユニット12内におけるグランド線どうしをコモン接続しても、グランド線を介在したノイズや外乱の影響を他の接続経路の信号線に対して及ぼすことがなくなる。
【0039】
また、本実施形態にかかるプラグコネクタ10においては、各々のプラグ側単位接続ユニット12内に配置された複数の信号線(ケーブル中心導体SCa)が、ディファレンシャル伝送を行う構成としていることから、そのディファレンシャル伝送のノイズ打ち消し作用と相まって、特に高周波信号の伝送を行う場合の伝送特性が向上される。
【0040】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0041】
例えば上述した実施形態では、プラグ側単位接続ユニット12内において、両側のグランドコンタクト(グランド接続部材)15c,15cの間に、2本のケーブル中心導体(信号線)SCa,SCaを配置し、ノイズを打ち消し合う、いわゆるディファレンシャル伝送を行うことで特に有効に作用するが、1本又は3本以上の信号線を配置することも可能である。
【0042】
また、上述した実施形態に用いられている同軸ケーブルは、一本の中心導体を一体の外部導体で覆った、いわゆる単芯の同軸ケーブルを構成するものであるが、二本の中心導体を一体の外部導体で覆った、いわゆる二芯の同軸ケーブルに対しても本発明は同様に適用することが可能である。
【0043】
さらに、上述した実施形態では、プラグ側単位接続ユニット12内に配置されたグランド線(ケーブル外部導体SCb)どうしを電気的にコモン接続しているが、リセプタクル側単位接続ユニット22内に配置されたグランド線どうしを電気的にコモン接続するようにしても良い。
【0044】
さらにまた、上述した各実施形態は、垂直嵌合型の電気コネクタに本実施形態を適用したものであるが、水平嵌合型の電気コネクタに対しても同様に適用することができる。
【0045】
また本発明は、上述した各実施形態のような同軸ケーブル用コネクタに限定されることはなく、絶縁ケーブル用コネクタや、同軸ケーブルと絶縁ケーブルとが複数混合したタイプの電気コネクタや、フレキシブル配線基板等が連結される電気コネクタ、プリント基板同士を接続する基板対基板コネクタ等についても同様に適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように本実施形態は、各種電気機器に使用される多種多様な電気コネクタに対して広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態におけるプラグコネクタをリセプタクルコネクタに嵌合したコネクタ組立体の全体を後方側から表した外観斜視説明図である。
【図2】図1中のII−II線に沿った横断面説明図である。
【図3】図1及び図2に示されたコネクタ組立体を構成しているプラグコネクタの単独を後方側から表した外観斜視説明図である。
【図4】図3中のIV−IV線に沿った横断面説明図である。
【図5】図4に示されたプラグコネクタを底面側から表した外観斜視説明図である。
【図6】図4に示されたプラグコネクタから導電性シェルを取り外した状態を後方側から表した外観斜視説明図である。
【図7】図6に示されたプラグコネクタに設けられた1つのプラグ側単位接続ユニット内におけるケーブル接続部分の構成を拡大して表した後方側からの外観斜視説明図である。
【図8】図1及び図2に示されたコネクタ組立体を構成しているリセプタクルコネクタの単独を後方側から表した外観斜視説明図である。
【図9】図8中のIX−IX線に沿った横断面説明図である。
【符号の説明】
【0048】
10 プラグコネクタ
11 プラグハウジング(絶縁ハウジング)
11a 嵌合凸部
12 プラグ側単位接続ユニット
13 導電性シェル
13a シェル固定片
13b グランド接続バネ片
13c 媒体押圧片
13d 嵌合ロック凹部
14 導電コンタクト(導電端子)
14a 接点部
15a 上部グランドバー
15b 下部グランドバー
15c グランドコンタクト(グランド接続部材)
20 リセプタクルコネクタ
21 リセプタクルハウジング(絶縁ハウジング)
21a 嵌合凹部
22 リセプタクル側単位接続ユニット
23 導電コンタクト(導電端子)
23a 半田接続部
23b ホールドダウン
23c 嵌合ロック凸部
23d 接点部
SC 同軸ケーブル(信号伝送媒体)
SCa ケーブル中心導体(信号線)
SCb ケーブル外部導体(グランド線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ハウジングに多極配列された複数の信号線及びグランド線により、信号経路及びグランド経路からなる一組の接続経路が複数組にわたって構成され、それら複数組の接続経路を電子回路に同時に接続させるものであって、
前記各接続経路におけるグランド経路が、前記グランド線と、そのグランド線に接続される適宜のグランド接続部材とにより構成された電気コネクタにおいて、
前記各接続経路における単数又は複数の信号線及びグランド線と、その単数又は複数の信号線及びグランド線を前記多極配列方向において両側から挟むように配置された少なくとも一対のグランド接続部材とが、前記電子回路の接続経路ごとに独立した一組の単位接続ユニットとして構成され、
その単位接続ユニットの複数組が、前記絶縁ハウジングに互いに分離した状態で取り付けられたものであって、
前記複数組の単位接続ユニットの内のいずれか一組の単位接続ユニット内に配置された単数又は複数のグランド線と、他の組の単位接続ユニット内に配置された単数又は複数のグランド線とが、電気的に独立した状態で、それぞれ異なる接続経路のグランド経路に接続されていることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記各々の単位接続ユニット内に配置された複数の信号線が、ディファレンシャル伝送を行うように構成されていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記グランド接続部材は、前記各単位接続ユニット内に配置された単数又は複数のグランド線を接続する長尺状のグランドバーに一体的に設けられたグランドコンタクトにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記グランド接続部材には、前記各単位接続ユニットを覆うように設けられた導電性シェルの一部が接触するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記各単位接続ユニット内の信号線及びグランド線が、同軸ケーブルにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。
【請求項6】
印刷配線基板に実装されるものであって、前記印刷配線基板に半田接続されるホールドダウンが、単位接続ユニットごとに独立して設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−113813(P2010−113813A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282829(P2008−282829)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(394009278)株式会社アイペックス (148)
【Fターム(参考)】