電気コネクタ
【課題】複数のケーブルと配線基板とを接続する電気コネクタにおいて、ケーブルの引き回し等におけるケーブルへの負荷を軽減し、電気コネクタの信頼性を向上させる。
【解決手段】上シェルは、電気コネクタの長手方向の両端部に、折り曲げられた第1係止片12を有し、下シェルは、電気コネクタの長手方向の両端部に、折り曲げられた側壁片34を有し、電気コネクタが組み立てられるとき、上シェルと下シェルとがハウジングを挟み込んだ状態で、下シェルに対して上シェルがスライド移動し、第1係止片12のL片12aと側壁片34の折り曲げ片35とが引っ掛かり合い、上シェルとハウジングと下シェルとが一体的に固定され、上シェルと下シェルとグランドバー5とが電気接続される。
【解決手段】上シェルは、電気コネクタの長手方向の両端部に、折り曲げられた第1係止片12を有し、下シェルは、電気コネクタの長手方向の両端部に、折り曲げられた側壁片34を有し、電気コネクタが組み立てられるとき、上シェルと下シェルとがハウジングを挟み込んだ状態で、下シェルに対して上シェルがスライド移動し、第1係止片12のL片12aと側壁片34の折り曲げ片35とが引っ掛かり合い、上シェルとハウジングと下シェルとが一体的に固定され、上シェルと下シェルとグランドバー5とが電気接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに関し、特に、複数の電気ケーブルと配線基板の配線とを接続する電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータや携帯電子機器等の電子機器には、多くの電子部品が搭載され、半導体集積回路(LSI)やその他の能動・受動部品等を搭載した配線基板、液晶ディスプレイ、RF回路等を接続する電気コネクタが必要となる。そして、これらの電子機器の薄型化・小型化等に伴い、その電気コネクタには、高密度実装化に対応するとともに、剛性・耐久性などの高信頼性が要求される。
【0003】
複数の電気ケーブルを配線基板と接続するための電気コネクタとしては、例えば、特許文献1(特開2005−243471号公報)に記載されたものがある。特許文献1の電気コネクタは、複数のコンタクトと、コンタクトが保持・固定されるとともに相手物が嵌合される嵌合部を有するハウジングと、ハウジングを覆う2つのシェルとを備え、一方のシェルの長辺のほぼ中央位置に略L字形状をした係合部を設け、その係合部を他方のシェルに係合させて、シェルの変形を防止しようとしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−243471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記のような電気コネクタの技術について、本発明者が検討した結果、以下のようなことが明らかとなった。
【0006】
例えば、電子機器内でのケーブルの引き回しの際、ケーブルを手で持って引っ張ったり、曲げたりすることがあり、それによりケーブルに余分な力が加わり、場合によっては、ケーブルの芯線が断線するおそれがある。とくに、一列に並んだケーブルの束が接続された電気コネクタの場合、そのケーブルの束の外側のケーブルに最も大きな負荷がかかる。また、電気コネクタの着脱(抜き差し)の際、ケーブルを手で持って引き抜く場合も考えられ、これにより、ケーブルの芯線が断線するばかりでなく、電気コネクタを覆っているシェルが変形したり、はがれたりするおそれもある。
【0007】
前記特許文献1記載の電気コネクタの場合、コンタクトとケーブルを含むハウジングを2枚のシェルが挟み込む構造となっており、下方のシェルの長辺の中央部にL字状の係合部を有し、その係合部を上方のシェルに引っ掛けて固定し、これにより、シェルの変形を防止している。しかし、この構造では、シェルの変形は防止することができるかもしれないが、ケーブルの引き回しによるケーブルの芯線の断線を防止することはできない。
【0008】
そこで、本発明の1つの目的は、複数のケーブルと配線基板とを接続する電気コネクタにおいて、ケーブルの引き回し等におけるケーブルへの負荷を軽減し、電気コネクタの信頼性を向上させることができる技術を提供することにある。
【0009】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
すなわち、本発明による電気コネクタは、板状の導電性金属材料からなる第1シェルと、複数のケーブルを保持し、前記ケーブルの芯線と電気接続される複数の端子を含むハウジングと、板状の導電性金属材料からなる第2シェルと、を有し、前記第1シェルと前記第2シェルとが前記ハウジングを挟み込んで組み立てられるものである。そして、前記第1シェルは、第1本体部と、前記電気コネクタの長手方向の両端部に、前記第1本体部から折り曲げられた第1係止部とを有し、前記第2シェルは、第2本体部と、前記電気コネクタの長手方向の両端部に、前記第2本体部から折り曲げられた第2係止部とを有し、前記電気コネクタが組み立てられるとき、前記第1シェルと前記第2シェルとが前記ハウジングを挟み込んだ状態で、前記第2シェルに対して前記第1シェルがスライド移動し、前記第1係止部と前記第2係止部とが引っ掛かり合い、前記第1シェルと前記ハウジングと前記第2シェルとが一体的に固定されるものである。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
(1)ケーブルの引き回しによる芯線への負荷が軽減され、芯線の断線が防止される。
(2)電気コネクタ全体の剛性が向上する。
(3)2枚の金属シェルを物理的・電気的に接触させることで、耐ノイズ性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタおよび基板側コネクタの嵌合前の状態を示す斜視図である(上側から見た図)。
【図2】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタおよび基板側コネクタの嵌合前の状態を示す斜視図である(下側から見た図)。
【図3】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタおよび基板側コネクタの嵌合前の状態を示す平面図である(上側から見た図)。
【図4】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタおよび基板側コネクタの中央部分(図3のA−A線)を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの組み立て前の構成を示す分解側面図である。
【図7】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの上シェルの構成を示す斜視図である(右上側から見た図)。
【図8】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの上シェルの構成を示す斜視図である(左上側から見た図)。
【図9】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの端子付きハウジングの構成を示す斜視図である(右上側から見た図)。
【図10】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの端子付きハウジングの構成を示す斜視図である(左上側から見た図)。
【図11】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの下シェルの構成を示す斜視図である(右上側から見た図)。
【図12】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの下シェルの構成を示す斜視図である(左上側から見た図)。
【図13】本発明の一実施の形態によるケーブル側コネクタの組み立てにおいて、端子にケーブルを位置合わせした状態を示す平面図である。
【図14】本発明の一実施の形態によるケーブル側コネクタの組み立てにおいて、上シェルの取り付けの様子を示す図である(組み立て途中の状態)。
【図15】本発明の一実施の形態によるケーブル側コネクタの組み立てにおいて、上シェルの取り付けの様子を示す図である(組み立て後の状態)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
図1及び図2は、本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタ100および基板側コネクタ300の嵌合前の状態を示す斜視図であり、図1は上側から見た図、図2は下側から見た図である。図3は、ケーブル側コネクタ100および基板側コネクタ300の嵌合前の状態を示す平面図であり、図4は、ケーブル側コネクタ100および基板側コネクタ300の中央部分(図3のA−A線)の構成を示す断面図である。
【0015】
まず、図1〜図4により、本発明の一実施形態による電気コネクタの構成の一例を説明する。図1〜図4に示すように、本実施の形態による電気コネクタ1は、複数のケーブル4の末端に取付けられるケーブル側コネクタ100と、配線基板(図示せず)に実装され、ケーブル側コネクタ100と嵌合可能な基板側コネクタ300とからなる。ケーブル側コネクタ100は、基板側コネクタ300に対して基板垂直方向(Z方向)から着脱自在に嵌合可能となっており、基板側コネクタ300側(Z2方向)に突出した嵌合部37に設けられたケーブル側コネクタ100の端子21が基板側コネクタ300の端子350(接触部353,354)に接触することにより、複数のケーブル4のそれぞれと基板配線のそれぞれとが電気的に接続される。
【0016】
基板側コネクタ300は、ハウジング330と、ハウジングを覆うように取り付けられる金属製のシェル310と、ハウジング330の下側から上方向(Z1方向)に挿入、取り付けられる端子350とを有する。基板側コネクタ300のハウジング330は、長手方向(X方向)に延びており、ケーブル側コネクタ100の端子21と同じ間隔(ピッチ)で端子350を保持している。端子350は、基板接続部351と、ハウジング330への挿入部352と、U字状の相手端子との接触部353,354とを有する。
【0017】
基板側コネクタ300がケーブル側コネクタ100と嵌合した場合、それぞれの端子21,350が接触することによって電気的に接続される。一方、ケーブル側コネクタ100の上シェル10の一部14aが、基板側コネクタ300のシェル310の外側面と接触することによって、シールド性能が向上する。また、ケーブル側コネクタ100の下シェル30は、基板側コネクタ300のシェル310の対応部分(符号312)と接触することによって、電気的に接続される。さらに、基板側コネクタ300の長手方向の両端内側にあるロック用凸部311が、ケーブル側コネクタ100の両側面に設けられた孔13bに嵌ることによって両コネクタ間でのロックが実現するとともに、シェル同士(上シェル10,下シェル30,シェル310)が接触することでシールド性が向上する。
【0018】
次に、図5〜図12により、ケーブル側コネクタ100の構成を説明する。図5は、ケーブル側コネクタ100の全体構成を示す斜視図である。図6は、ケーブル側コネクタ100の組み立て前の構成を示す分解側面図である。図5および図6に示すように、ケーブル側コネクタ100は、上シェル10(第1シェル)と、複数の端子21(図2,図4参照)を一体成形により保持したハウジング20と、下シェル30(第2シェル)とからなる。
【0019】
複数の端子21のそれぞれには、複数のケーブル4のそれぞれの芯線4aが電気的に接続される。ケーブル4として、同軸ケーブルや通常の電線が使用可能である。図6では、一例としてケーブル4が同軸ケーブルの場合を示しているが、これに限定されるものではない。図6に示す同軸ケーブル4は、例えば、銅線などの中心導体(芯線4a)、ポリエチレンなどの絶縁体、編組銅線などの外部導体、ビニルなどの絶縁性の外皮などから構成される。また、同軸ケーブル4のそれぞれの編組は、導電性金属のグランドバー5に接続されている。グランドバー5は、さらに上シェル10および下シェル30と電気接続され、グランドをとるようになっている。
【0020】
図7および図8は、ケーブル側コネクタ100の上シェル10の構成を示す斜視図であり、図7は右上側から見た図、図8は左上側から見た図である。
図7および図8に示すように、上シェル10は、ケーブル側コネクタ100の長手方向(X方向)に延びる本体部11と、この本体部11の長手方向の両側端部から下側(Z2方向)に向けて折り曲げられた第1係止片12(第1係止部),第2係止片13(第3係止部)、さらに、前側(Y1側)において下側に向けて折り曲げられた前壁片14を有する。すなわち、第1係止片12,第2係止片13及び前壁片14はそれぞれ、コネクタ100の組立て状態にあってはハウジング20側に折り曲げられたものであり、ケーブル側コネクタ100の基板側コネクタ300に対する嵌合方向(Z方向)に沿って設けられている。第1係止片12,第2係止片13はそれぞれ前後方向(Y方向、短手方向)において異なる位置、および長手方向(X方向、長手方向)において異なる位置に形成されている。具体的には、第1係止片12は、前後方向(Y方向)にあっては第2係止片13に対してケーブル4の導出側(Y2側)の位置に設けられており、長手方向(X方向)にあっては第2係止片に対して内側(端子21側)の位置に設けられている。そして、後述する下シェルおよびハウジングの被係止部に対して嵌り込む(引っ掛かる)ようになっている。
【0021】
また、上シェル10の本体部11のケーブル側には所定間隔をもって複数の孔19が形成されており、ケーブル4を保持しその外部導体と接続されるグランドバー5とハンダ付け接続できるようになっている。これらの孔19は、コネクタの前後方向(Y方向)において、第1係止片12とほぼ同じ位置に設けられている。また、上シェル10の本体部11の両端付近に、ハウジング方向(Z2方向)に突出して折り曲げられた舌片16を有し、ハウジング20の溝22b(図9および図13参照)に嵌るようになっている。なお、上シェル10は、平板状(板状)の導電性金属(ステンレス等)板を、金型で打ち抜き、その後折り曲げ加工することによって成形される。
【0022】
図9および図10は、ケーブル側コネクタ100の端子付きハウジング20の構成を示す斜視図であり、図9は右上側から見た図、図10は左上側から見た図である。
図9および図10に示すように、ハウジング20には長手方向(X方向)に所定の間隔をもって複数の端子21が保持される本体部22と、本体部22を挟み込むように長手方向の両側端域において上シェル10と下シェル20が取り付けられる領域23がある。ハウジング20の本体部22の前方向(Y1方向)の側面には、前方向に向けて突出した凸部29a,29bが設けられ、組み立て時に上シェル10の孔14b,14cに嵌るようになっている。ハウジング20の両側の領域23には、前後方向(Y方向、短手方向)に延びるスリット24と、下シェル30の側壁片34(第2係止部、図6および図11等参照)が取り付けられる取り付け部26と、上シェルの第2係止片13が取り付けられる取り付け部25が形成されている。取り付け部26,25にはそれぞれ外側(X1,X2方向)に向けて突出して形成された抑え部26a,25aが設けられている。また、ハウジング20の長手方向の両端付近に溝22bを有し、上シェル10の舌片16が嵌るようになっている。なお、ハウジング20は、例えば、絶縁性の樹脂などからなり、導電性金属の端子21と一体的に成形される。
【0023】
図11および図12は、ケーブル側コネクタ100の下シェル30の構成を示す斜視図であり、図11は右上側から見た図、図12は左上側から見た図である。
図11および図12に示すように、下シェル30は、長手方向(X方向)に延びる本体部31と、この本体部31の長手方向の両側端部から上側(Z1方向)に向けて折り曲げられた側壁片34(第2係止部)と、本体部31の前側(Y1方向)において側面視U字形状に折り曲げられた挿入部32,33を有する。また、側壁片34は、組み立て時に上シェル10のL片12aと係合し引っ掛かるため側壁片34に対して外側(X1,X2方向)に向けて折り曲げられた折り曲げ片35と、上シェル10の第1係止片12と係合して電気接続を確保するため外側(X1,X2方向)に向けて突出した突部36とを有する。なお、下シェル30は、上シェル10と同様に、平板状(板状)の導電性金属(ステンレス等)板を、金型で打ち抜き、その後折り曲げ加工することによって成形される。
【0024】
次に、本実施の形態によるケーブル側コネクタ100の組み立て方法を説明する。図13は、ケーブル側コネクタ100の組み立てにおいて、端子21にケーブル4を位置合わせした状態を示す平面図である。図14および図15は、ケーブル側コネクタ100の組み立てにおいて、上シェル10の取り付けの様子を示す図であり、図14は組み立て途中の状態、図15は組み立て後の状態を示す。
【0025】
前述のような構成において、ケーブル側コネクタ100は、以下のように組み付けられる。
(1) 端子21を一体成形したハウジング20に対して、下シェル30を下側から上方向(Z1方向)に移動されることにより、下シェル30の挿入部32,33がハウジング本体部22の対応する溝22aに挿入され保持されるとともに、下シェル30の側壁片34がハウジング20の取り付け部26に取り付けられる。これにより、下シェル30の折り曲げ片35がハウジング20の抑え部26aの下側に位置されるとともに、突起36が第1係止片12のスライド軌道上にわずかに突出した状態となる。
(2) 次ぎに、端子21の端子接続部21aに対してケーブルの芯線4aがハンダ接続される。ケーブル4は、グランドバー5によって整列保持される(図13参照)。なお、グランドバー5は導電性の材料から構成されており、本実施形態では、ケーブル4は同軸ケーブルであるため、グランドバー5は、同軸ケーブルの外部導体(図示せず)部分を露出させた状態においてケーブル4を保持している。
(3) 次ぎに、上シェル10を取り付ける。上シェル10の取り付けは、まず、上シェル10をハウジング20の上側(Z1側)に位置させ、ハウジング20側(Z2側)に向けて移動させ、上シェル10の第1係止片12を、ハウジング20のスリット24の内部に位置させる(図14の状態)。このときハウジング20に対する上シェル10のX方向、Z方向の位置決めがなされる。その後、この、上シェル10と下シェル30とがハウジング20を挟み込んだ状態で、下シェル30に対して上シェル10をスリット24に沿ってY2方向(短手方向、後方向。ケーブル4の導出方向)にスライド移動させることにより、上シェル10の第1係止片12のL字状のL片12aが、下シェル30の側壁片34の折り曲げ片35に引っ掛かり、上シェル10とハウジング20と下シェル30とが一体的に固定され、図15の状態になる。この状態で、上シェル10の孔19にハンダを流し込むことによって、グランドバー5と上シェル10とが電気的及び物理的に接続される。
【0026】
すなわち、第1係止片12のL字状のL片12aが下シェル30の折り曲げ片35の下側に入り込み固定されることでL片12aと折り曲げ片35と抑え部26aとが密着した状態となり、ハウジング20及び下シェル30とが上シェル10(本体部11)に向けて押し付けられことで上シェル10とハウジング20と下シェル30とが一体的に固定される。また、下シェル30の突部36が第1係止片12の内面と接触することで上シェル10と下シェル30との電気的接続が確保される。なお、折り曲げ片35の上側には、ハウジング20の一部である抑え部26aが設けられているため、上シェル10および下シェル30にかかる上方向(Z1方向)の力は、最終的にはハウジング20で受けることができるようになっている。なお、下シェル30の突部36は、下シェル30の代わりに上シェル10側に設けてもよい。
【0027】
一方、上シェル10の第2係止片13(第3係止部)は、ハウジング20の取り付け部25に取り付けられる。具体的には、第2係止片13のL字状のL片13aが、取り付け部25の凸状の抑え部25a(第4係止部)の下に嵌め込まれる。L片13aの上側には、抑え部25aが設けられているため、ここでも上方向(Z1方向)の力は、最終的はハウジング20で受けることができるようになっている。なお、第2係止片13には、基板側コネクタ300のロック用凸部311と嵌り合うための孔13bが形成されている。
【0028】
また、組み立ての際のスライド移動により、上シェル10の舌片16の先端が、ハウジング20の溝22bに嵌り込む。これによって、コネクタ組み立て後、上シェル10が前方向(Y1方向)に移動しないようになる。
また、ハウジング20の前側(Y1方向)の側面には凸部29a,29bが形成されており、これらが上シェル10の対応する孔14b,14cに嵌り、上シェル10とハウジング20との取り付けを強固にしている。
【0029】
以上説明したような本発明の一実施形態による電気コネクタによれば、上シェル10の第1係止片12のL片12aと、下シェル30の側壁片34の折り曲げ片35とが引っ掛かり合うことにより、それらの固定が強固となり、ケーブルの引き回しによる芯線への負荷が軽減され、電気コネクタ全体の剛性が向上する。とくに、一列に並んだケーブルの外側のケーブルには、ケーブル引き回しの際、曲げられたりして大きな負荷がかかるが、電気コネクタの長手方向両端に設けられた第1係止片12と側壁片34により、その負荷が電気コネクタの両端に偏ることなく、コネクタ全体に広がるので、電気ケーブルの信頼性が向上する。
【0030】
さらに、上シェル10の第2係止片13のL片13aと、ハウジング20の抑え部25aと引っ掛かり合うことにより、それらの固定が強固になる。その結果として、ケーブル側コネクタ全体の剛性が向上する。
また、パッケージ全体を覆う上シェルと下シェルの2枚の金属シェルを物理的・電気的に接触させることで、ケーブル側コネクタ全体の耐ノイズ性が向上する。
【0031】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1:電気コネクタ
4:ケーブル
5:グランドバー
10:上シェル(第1シェル)
11:本体部(第1本体部)
12:第1係止片(第1係止部)
12a:L片
13:第2係止片(第3係止部)
13a:L片
13b:孔
14:前壁片
14a:上シェルの一部
14b,14c:孔
16:舌片
19:孔
20:ハウジング
21:端子
21a:端子接続部
22:ハウジング本体部
22a,22b:溝
23:領域
24:スリット
25:取り付け部
25a:抑え部(第4係止部)
26:取り付け部
26a:抑え部
29a,29b:凸部
30:下シェル(第2シェル)
31:本体部(第2本体部)
32,33:挿入部
34:側壁片(第2係止部)
35:折り曲げ片
36:突部
37:嵌合部
100:ケーブル側コネクタ
300:基板側コネクタ
310:シェル
311:ロック用凸部
330:ハウジング
350:端子
351:基板接続部
352:挿入部
353,354:接触部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに関し、特に、複数の電気ケーブルと配線基板の配線とを接続する電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータや携帯電子機器等の電子機器には、多くの電子部品が搭載され、半導体集積回路(LSI)やその他の能動・受動部品等を搭載した配線基板、液晶ディスプレイ、RF回路等を接続する電気コネクタが必要となる。そして、これらの電子機器の薄型化・小型化等に伴い、その電気コネクタには、高密度実装化に対応するとともに、剛性・耐久性などの高信頼性が要求される。
【0003】
複数の電気ケーブルを配線基板と接続するための電気コネクタとしては、例えば、特許文献1(特開2005−243471号公報)に記載されたものがある。特許文献1の電気コネクタは、複数のコンタクトと、コンタクトが保持・固定されるとともに相手物が嵌合される嵌合部を有するハウジングと、ハウジングを覆う2つのシェルとを備え、一方のシェルの長辺のほぼ中央位置に略L字形状をした係合部を設け、その係合部を他方のシェルに係合させて、シェルの変形を防止しようとしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−243471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記のような電気コネクタの技術について、本発明者が検討した結果、以下のようなことが明らかとなった。
【0006】
例えば、電子機器内でのケーブルの引き回しの際、ケーブルを手で持って引っ張ったり、曲げたりすることがあり、それによりケーブルに余分な力が加わり、場合によっては、ケーブルの芯線が断線するおそれがある。とくに、一列に並んだケーブルの束が接続された電気コネクタの場合、そのケーブルの束の外側のケーブルに最も大きな負荷がかかる。また、電気コネクタの着脱(抜き差し)の際、ケーブルを手で持って引き抜く場合も考えられ、これにより、ケーブルの芯線が断線するばかりでなく、電気コネクタを覆っているシェルが変形したり、はがれたりするおそれもある。
【0007】
前記特許文献1記載の電気コネクタの場合、コンタクトとケーブルを含むハウジングを2枚のシェルが挟み込む構造となっており、下方のシェルの長辺の中央部にL字状の係合部を有し、その係合部を上方のシェルに引っ掛けて固定し、これにより、シェルの変形を防止している。しかし、この構造では、シェルの変形は防止することができるかもしれないが、ケーブルの引き回しによるケーブルの芯線の断線を防止することはできない。
【0008】
そこで、本発明の1つの目的は、複数のケーブルと配線基板とを接続する電気コネクタにおいて、ケーブルの引き回し等におけるケーブルへの負荷を軽減し、電気コネクタの信頼性を向上させることができる技術を提供することにある。
【0009】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
すなわち、本発明による電気コネクタは、板状の導電性金属材料からなる第1シェルと、複数のケーブルを保持し、前記ケーブルの芯線と電気接続される複数の端子を含むハウジングと、板状の導電性金属材料からなる第2シェルと、を有し、前記第1シェルと前記第2シェルとが前記ハウジングを挟み込んで組み立てられるものである。そして、前記第1シェルは、第1本体部と、前記電気コネクタの長手方向の両端部に、前記第1本体部から折り曲げられた第1係止部とを有し、前記第2シェルは、第2本体部と、前記電気コネクタの長手方向の両端部に、前記第2本体部から折り曲げられた第2係止部とを有し、前記電気コネクタが組み立てられるとき、前記第1シェルと前記第2シェルとが前記ハウジングを挟み込んだ状態で、前記第2シェルに対して前記第1シェルがスライド移動し、前記第1係止部と前記第2係止部とが引っ掛かり合い、前記第1シェルと前記ハウジングと前記第2シェルとが一体的に固定されるものである。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
(1)ケーブルの引き回しによる芯線への負荷が軽減され、芯線の断線が防止される。
(2)電気コネクタ全体の剛性が向上する。
(3)2枚の金属シェルを物理的・電気的に接触させることで、耐ノイズ性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタおよび基板側コネクタの嵌合前の状態を示す斜視図である(上側から見た図)。
【図2】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタおよび基板側コネクタの嵌合前の状態を示す斜視図である(下側から見た図)。
【図3】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタおよび基板側コネクタの嵌合前の状態を示す平面図である(上側から見た図)。
【図4】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタおよび基板側コネクタの中央部分(図3のA−A線)を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの組み立て前の構成を示す分解側面図である。
【図7】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの上シェルの構成を示す斜視図である(右上側から見た図)。
【図8】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの上シェルの構成を示す斜視図である(左上側から見た図)。
【図9】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの端子付きハウジングの構成を示す斜視図である(右上側から見た図)。
【図10】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの端子付きハウジングの構成を示す斜視図である(左上側から見た図)。
【図11】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの下シェルの構成を示す斜視図である(右上側から見た図)。
【図12】本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタの下シェルの構成を示す斜視図である(左上側から見た図)。
【図13】本発明の一実施の形態によるケーブル側コネクタの組み立てにおいて、端子にケーブルを位置合わせした状態を示す平面図である。
【図14】本発明の一実施の形態によるケーブル側コネクタの組み立てにおいて、上シェルの取り付けの様子を示す図である(組み立て途中の状態)。
【図15】本発明の一実施の形態によるケーブル側コネクタの組み立てにおいて、上シェルの取り付けの様子を示す図である(組み立て後の状態)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
図1及び図2は、本発明の一実施の形態による電気コネクタにおいて、ケーブル側コネクタ100および基板側コネクタ300の嵌合前の状態を示す斜視図であり、図1は上側から見た図、図2は下側から見た図である。図3は、ケーブル側コネクタ100および基板側コネクタ300の嵌合前の状態を示す平面図であり、図4は、ケーブル側コネクタ100および基板側コネクタ300の中央部分(図3のA−A線)の構成を示す断面図である。
【0015】
まず、図1〜図4により、本発明の一実施形態による電気コネクタの構成の一例を説明する。図1〜図4に示すように、本実施の形態による電気コネクタ1は、複数のケーブル4の末端に取付けられるケーブル側コネクタ100と、配線基板(図示せず)に実装され、ケーブル側コネクタ100と嵌合可能な基板側コネクタ300とからなる。ケーブル側コネクタ100は、基板側コネクタ300に対して基板垂直方向(Z方向)から着脱自在に嵌合可能となっており、基板側コネクタ300側(Z2方向)に突出した嵌合部37に設けられたケーブル側コネクタ100の端子21が基板側コネクタ300の端子350(接触部353,354)に接触することにより、複数のケーブル4のそれぞれと基板配線のそれぞれとが電気的に接続される。
【0016】
基板側コネクタ300は、ハウジング330と、ハウジングを覆うように取り付けられる金属製のシェル310と、ハウジング330の下側から上方向(Z1方向)に挿入、取り付けられる端子350とを有する。基板側コネクタ300のハウジング330は、長手方向(X方向)に延びており、ケーブル側コネクタ100の端子21と同じ間隔(ピッチ)で端子350を保持している。端子350は、基板接続部351と、ハウジング330への挿入部352と、U字状の相手端子との接触部353,354とを有する。
【0017】
基板側コネクタ300がケーブル側コネクタ100と嵌合した場合、それぞれの端子21,350が接触することによって電気的に接続される。一方、ケーブル側コネクタ100の上シェル10の一部14aが、基板側コネクタ300のシェル310の外側面と接触することによって、シールド性能が向上する。また、ケーブル側コネクタ100の下シェル30は、基板側コネクタ300のシェル310の対応部分(符号312)と接触することによって、電気的に接続される。さらに、基板側コネクタ300の長手方向の両端内側にあるロック用凸部311が、ケーブル側コネクタ100の両側面に設けられた孔13bに嵌ることによって両コネクタ間でのロックが実現するとともに、シェル同士(上シェル10,下シェル30,シェル310)が接触することでシールド性が向上する。
【0018】
次に、図5〜図12により、ケーブル側コネクタ100の構成を説明する。図5は、ケーブル側コネクタ100の全体構成を示す斜視図である。図6は、ケーブル側コネクタ100の組み立て前の構成を示す分解側面図である。図5および図6に示すように、ケーブル側コネクタ100は、上シェル10(第1シェル)と、複数の端子21(図2,図4参照)を一体成形により保持したハウジング20と、下シェル30(第2シェル)とからなる。
【0019】
複数の端子21のそれぞれには、複数のケーブル4のそれぞれの芯線4aが電気的に接続される。ケーブル4として、同軸ケーブルや通常の電線が使用可能である。図6では、一例としてケーブル4が同軸ケーブルの場合を示しているが、これに限定されるものではない。図6に示す同軸ケーブル4は、例えば、銅線などの中心導体(芯線4a)、ポリエチレンなどの絶縁体、編組銅線などの外部導体、ビニルなどの絶縁性の外皮などから構成される。また、同軸ケーブル4のそれぞれの編組は、導電性金属のグランドバー5に接続されている。グランドバー5は、さらに上シェル10および下シェル30と電気接続され、グランドをとるようになっている。
【0020】
図7および図8は、ケーブル側コネクタ100の上シェル10の構成を示す斜視図であり、図7は右上側から見た図、図8は左上側から見た図である。
図7および図8に示すように、上シェル10は、ケーブル側コネクタ100の長手方向(X方向)に延びる本体部11と、この本体部11の長手方向の両側端部から下側(Z2方向)に向けて折り曲げられた第1係止片12(第1係止部),第2係止片13(第3係止部)、さらに、前側(Y1側)において下側に向けて折り曲げられた前壁片14を有する。すなわち、第1係止片12,第2係止片13及び前壁片14はそれぞれ、コネクタ100の組立て状態にあってはハウジング20側に折り曲げられたものであり、ケーブル側コネクタ100の基板側コネクタ300に対する嵌合方向(Z方向)に沿って設けられている。第1係止片12,第2係止片13はそれぞれ前後方向(Y方向、短手方向)において異なる位置、および長手方向(X方向、長手方向)において異なる位置に形成されている。具体的には、第1係止片12は、前後方向(Y方向)にあっては第2係止片13に対してケーブル4の導出側(Y2側)の位置に設けられており、長手方向(X方向)にあっては第2係止片に対して内側(端子21側)の位置に設けられている。そして、後述する下シェルおよびハウジングの被係止部に対して嵌り込む(引っ掛かる)ようになっている。
【0021】
また、上シェル10の本体部11のケーブル側には所定間隔をもって複数の孔19が形成されており、ケーブル4を保持しその外部導体と接続されるグランドバー5とハンダ付け接続できるようになっている。これらの孔19は、コネクタの前後方向(Y方向)において、第1係止片12とほぼ同じ位置に設けられている。また、上シェル10の本体部11の両端付近に、ハウジング方向(Z2方向)に突出して折り曲げられた舌片16を有し、ハウジング20の溝22b(図9および図13参照)に嵌るようになっている。なお、上シェル10は、平板状(板状)の導電性金属(ステンレス等)板を、金型で打ち抜き、その後折り曲げ加工することによって成形される。
【0022】
図9および図10は、ケーブル側コネクタ100の端子付きハウジング20の構成を示す斜視図であり、図9は右上側から見た図、図10は左上側から見た図である。
図9および図10に示すように、ハウジング20には長手方向(X方向)に所定の間隔をもって複数の端子21が保持される本体部22と、本体部22を挟み込むように長手方向の両側端域において上シェル10と下シェル20が取り付けられる領域23がある。ハウジング20の本体部22の前方向(Y1方向)の側面には、前方向に向けて突出した凸部29a,29bが設けられ、組み立て時に上シェル10の孔14b,14cに嵌るようになっている。ハウジング20の両側の領域23には、前後方向(Y方向、短手方向)に延びるスリット24と、下シェル30の側壁片34(第2係止部、図6および図11等参照)が取り付けられる取り付け部26と、上シェルの第2係止片13が取り付けられる取り付け部25が形成されている。取り付け部26,25にはそれぞれ外側(X1,X2方向)に向けて突出して形成された抑え部26a,25aが設けられている。また、ハウジング20の長手方向の両端付近に溝22bを有し、上シェル10の舌片16が嵌るようになっている。なお、ハウジング20は、例えば、絶縁性の樹脂などからなり、導電性金属の端子21と一体的に成形される。
【0023】
図11および図12は、ケーブル側コネクタ100の下シェル30の構成を示す斜視図であり、図11は右上側から見た図、図12は左上側から見た図である。
図11および図12に示すように、下シェル30は、長手方向(X方向)に延びる本体部31と、この本体部31の長手方向の両側端部から上側(Z1方向)に向けて折り曲げられた側壁片34(第2係止部)と、本体部31の前側(Y1方向)において側面視U字形状に折り曲げられた挿入部32,33を有する。また、側壁片34は、組み立て時に上シェル10のL片12aと係合し引っ掛かるため側壁片34に対して外側(X1,X2方向)に向けて折り曲げられた折り曲げ片35と、上シェル10の第1係止片12と係合して電気接続を確保するため外側(X1,X2方向)に向けて突出した突部36とを有する。なお、下シェル30は、上シェル10と同様に、平板状(板状)の導電性金属(ステンレス等)板を、金型で打ち抜き、その後折り曲げ加工することによって成形される。
【0024】
次に、本実施の形態によるケーブル側コネクタ100の組み立て方法を説明する。図13は、ケーブル側コネクタ100の組み立てにおいて、端子21にケーブル4を位置合わせした状態を示す平面図である。図14および図15は、ケーブル側コネクタ100の組み立てにおいて、上シェル10の取り付けの様子を示す図であり、図14は組み立て途中の状態、図15は組み立て後の状態を示す。
【0025】
前述のような構成において、ケーブル側コネクタ100は、以下のように組み付けられる。
(1) 端子21を一体成形したハウジング20に対して、下シェル30を下側から上方向(Z1方向)に移動されることにより、下シェル30の挿入部32,33がハウジング本体部22の対応する溝22aに挿入され保持されるとともに、下シェル30の側壁片34がハウジング20の取り付け部26に取り付けられる。これにより、下シェル30の折り曲げ片35がハウジング20の抑え部26aの下側に位置されるとともに、突起36が第1係止片12のスライド軌道上にわずかに突出した状態となる。
(2) 次ぎに、端子21の端子接続部21aに対してケーブルの芯線4aがハンダ接続される。ケーブル4は、グランドバー5によって整列保持される(図13参照)。なお、グランドバー5は導電性の材料から構成されており、本実施形態では、ケーブル4は同軸ケーブルであるため、グランドバー5は、同軸ケーブルの外部導体(図示せず)部分を露出させた状態においてケーブル4を保持している。
(3) 次ぎに、上シェル10を取り付ける。上シェル10の取り付けは、まず、上シェル10をハウジング20の上側(Z1側)に位置させ、ハウジング20側(Z2側)に向けて移動させ、上シェル10の第1係止片12を、ハウジング20のスリット24の内部に位置させる(図14の状態)。このときハウジング20に対する上シェル10のX方向、Z方向の位置決めがなされる。その後、この、上シェル10と下シェル30とがハウジング20を挟み込んだ状態で、下シェル30に対して上シェル10をスリット24に沿ってY2方向(短手方向、後方向。ケーブル4の導出方向)にスライド移動させることにより、上シェル10の第1係止片12のL字状のL片12aが、下シェル30の側壁片34の折り曲げ片35に引っ掛かり、上シェル10とハウジング20と下シェル30とが一体的に固定され、図15の状態になる。この状態で、上シェル10の孔19にハンダを流し込むことによって、グランドバー5と上シェル10とが電気的及び物理的に接続される。
【0026】
すなわち、第1係止片12のL字状のL片12aが下シェル30の折り曲げ片35の下側に入り込み固定されることでL片12aと折り曲げ片35と抑え部26aとが密着した状態となり、ハウジング20及び下シェル30とが上シェル10(本体部11)に向けて押し付けられことで上シェル10とハウジング20と下シェル30とが一体的に固定される。また、下シェル30の突部36が第1係止片12の内面と接触することで上シェル10と下シェル30との電気的接続が確保される。なお、折り曲げ片35の上側には、ハウジング20の一部である抑え部26aが設けられているため、上シェル10および下シェル30にかかる上方向(Z1方向)の力は、最終的にはハウジング20で受けることができるようになっている。なお、下シェル30の突部36は、下シェル30の代わりに上シェル10側に設けてもよい。
【0027】
一方、上シェル10の第2係止片13(第3係止部)は、ハウジング20の取り付け部25に取り付けられる。具体的には、第2係止片13のL字状のL片13aが、取り付け部25の凸状の抑え部25a(第4係止部)の下に嵌め込まれる。L片13aの上側には、抑え部25aが設けられているため、ここでも上方向(Z1方向)の力は、最終的はハウジング20で受けることができるようになっている。なお、第2係止片13には、基板側コネクタ300のロック用凸部311と嵌り合うための孔13bが形成されている。
【0028】
また、組み立ての際のスライド移動により、上シェル10の舌片16の先端が、ハウジング20の溝22bに嵌り込む。これによって、コネクタ組み立て後、上シェル10が前方向(Y1方向)に移動しないようになる。
また、ハウジング20の前側(Y1方向)の側面には凸部29a,29bが形成されており、これらが上シェル10の対応する孔14b,14cに嵌り、上シェル10とハウジング20との取り付けを強固にしている。
【0029】
以上説明したような本発明の一実施形態による電気コネクタによれば、上シェル10の第1係止片12のL片12aと、下シェル30の側壁片34の折り曲げ片35とが引っ掛かり合うことにより、それらの固定が強固となり、ケーブルの引き回しによる芯線への負荷が軽減され、電気コネクタ全体の剛性が向上する。とくに、一列に並んだケーブルの外側のケーブルには、ケーブル引き回しの際、曲げられたりして大きな負荷がかかるが、電気コネクタの長手方向両端に設けられた第1係止片12と側壁片34により、その負荷が電気コネクタの両端に偏ることなく、コネクタ全体に広がるので、電気ケーブルの信頼性が向上する。
【0030】
さらに、上シェル10の第2係止片13のL片13aと、ハウジング20の抑え部25aと引っ掛かり合うことにより、それらの固定が強固になる。その結果として、ケーブル側コネクタ全体の剛性が向上する。
また、パッケージ全体を覆う上シェルと下シェルの2枚の金属シェルを物理的・電気的に接触させることで、ケーブル側コネクタ全体の耐ノイズ性が向上する。
【0031】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1:電気コネクタ
4:ケーブル
5:グランドバー
10:上シェル(第1シェル)
11:本体部(第1本体部)
12:第1係止片(第1係止部)
12a:L片
13:第2係止片(第3係止部)
13a:L片
13b:孔
14:前壁片
14a:上シェルの一部
14b,14c:孔
16:舌片
19:孔
20:ハウジング
21:端子
21a:端子接続部
22:ハウジング本体部
22a,22b:溝
23:領域
24:スリット
25:取り付け部
25a:抑え部(第4係止部)
26:取り付け部
26a:抑え部
29a,29b:凸部
30:下シェル(第2シェル)
31:本体部(第2本体部)
32,33:挿入部
34:側壁片(第2係止部)
35:折り曲げ片
36:突部
37:嵌合部
100:ケーブル側コネクタ
300:基板側コネクタ
310:シェル
311:ロック用凸部
330:ハウジング
350:端子
351:基板接続部
352:挿入部
353,354:接触部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の導電性金属材料からなる第1シェルと、
複数のケーブルを保持し、前記ケーブルの芯線と電気接続される複数の端子を含むハウジングと、
板状の導電性金属材料からなる第2シェルと、を有し、
前記第1シェルと前記第2シェルとが前記ハウジングを挟み込んで組み立てられる電気コネクタであって、
前記第1シェルは、第1本体部と、前記電気コネクタの長手方向の両端部に、前記第1本体部から折り曲げられた第1係止部とを有し、
前記第2シェルは、第2本体部と、前記電気コネクタの長手方向の両端部に、前記第2本体部から折り曲げられた第2係止部とを有し、
前記電気コネクタが組み立てられるとき、前記第1シェルと前記第2シェルとが前記ハウジングを挟み込んだ状態で、前記第2シェルに対して前記第1シェルがスライド移動し、前記第1係止部と前記第2係止部とが引っ掛かり合い、前記第1シェルと前記ハウジングと前記第2シェルとが一体的に固定されることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングには、前記第1係止部がスライド移動可能なスリットが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記第1係止部はL字形状であり、前記第2係止部には前記第1係止部が嵌り合う折り曲げ片が設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記第1係止部または前記第2係止部は突起部を有し、前記突起部により前記第1シェルと前記第2シェルとが電気接続されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記第1シェルは、前記電気コネクタの長手方向の両端部に、第3係止部を有し、
前記ハウジングは、前記電気コネクタの長手方向の両端部に、第4係止部を有し、
前記電気コネクタが組み立てられるとき、前記ハウジングに対して前記第1シェルがスライド移動し、前記第3係止部と前記第4係止部とが引っ掛かり合い、前記第1シェルと前記ハウジングとが固定されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記第1シェルは、前記ハウジング方向に突出した舌片を有し、
前記ハウジングは、前記舌片に対応する位置に溝を有し、
前記第1シェルがスライド移動して前記電気コネクタが組み立てられた後、前記第1シェルが逆方向へスライド移動すること制止するように構成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記第1シェルは、前記電気コネクタの短手方向の側面に孔を有し、
前記ハウジングは、前記電気コネクタの短手方向の側面に突起部を有し、
前記電気コネクタが組み立てられるとき、前記突起部が前記孔に嵌合し、前記第1シェルと前記ハウジングとが固定されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項1】
板状の導電性金属材料からなる第1シェルと、
複数のケーブルを保持し、前記ケーブルの芯線と電気接続される複数の端子を含むハウジングと、
板状の導電性金属材料からなる第2シェルと、を有し、
前記第1シェルと前記第2シェルとが前記ハウジングを挟み込んで組み立てられる電気コネクタであって、
前記第1シェルは、第1本体部と、前記電気コネクタの長手方向の両端部に、前記第1本体部から折り曲げられた第1係止部とを有し、
前記第2シェルは、第2本体部と、前記電気コネクタの長手方向の両端部に、前記第2本体部から折り曲げられた第2係止部とを有し、
前記電気コネクタが組み立てられるとき、前記第1シェルと前記第2シェルとが前記ハウジングを挟み込んだ状態で、前記第2シェルに対して前記第1シェルがスライド移動し、前記第1係止部と前記第2係止部とが引っ掛かり合い、前記第1シェルと前記ハウジングと前記第2シェルとが一体的に固定されることを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングには、前記第1係止部がスライド移動可能なスリットが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記第1係止部はL字形状であり、前記第2係止部には前記第1係止部が嵌り合う折り曲げ片が設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記第1係止部または前記第2係止部は突起部を有し、前記突起部により前記第1シェルと前記第2シェルとが電気接続されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記第1シェルは、前記電気コネクタの長手方向の両端部に、第3係止部を有し、
前記ハウジングは、前記電気コネクタの長手方向の両端部に、第4係止部を有し、
前記電気コネクタが組み立てられるとき、前記ハウジングに対して前記第1シェルがスライド移動し、前記第3係止部と前記第4係止部とが引っ掛かり合い、前記第1シェルと前記ハウジングとが固定されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記第1シェルは、前記ハウジング方向に突出した舌片を有し、
前記ハウジングは、前記舌片に対応する位置に溝を有し、
前記第1シェルがスライド移動して前記電気コネクタが組み立てられた後、前記第1シェルが逆方向へスライド移動すること制止するように構成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記第1シェルは、前記電気コネクタの短手方向の側面に孔を有し、
前記ハウジングは、前記電気コネクタの短手方向の側面に突起部を有し、
前記電気コネクタが組み立てられるとき、前記突起部が前記孔に嵌合し、前記第1シェルと前記ハウジングとが固定されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−248390(P2012−248390A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118987(P2011−118987)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]