説明

電気デバイス

【課題】発電要素の最外層部や発電要素の側面を保護し得る電気デバイスを提供する。
【解決手段】負極、セパレータ及び正極をこの順に積層させている発電要素2と、延伸方向を有する樹脂多孔質体から構成される第1、第2のシート21、22であって、第1のシート21の延伸方向と第2のシート22の延伸方向とが交差するようにして発電要素2の全体を重ねて被覆する第1、第2のシート21、22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リチウムイオン二次電池などの電気デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
負極、セパレータ及び正極をこの順に積層させている発電要素において、隣接するセパレータ同士の延伸方向が互いに交差するようにしたリチウムイオン二次電池がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−514105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術では、発電要素全体として外力を分散させる構造であるものの、外力に対して構造的に弱い部分である発電要素の最外層部や発電要素の側面に対しての保護は考えられていない。そのため、外力が発電要素の最外層部や発電要素の側面に加わっったとき最外層部や側面に近いセパレータが破れ、正極と負極の直接的接触で短絡する可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、発電要素の最外層部や発電要素の側面を保護し得る電気デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気デバイスは、負極、セパレータ及び正極をこの順に積層させている発電要素を対象としている。そして、延伸方向を有する樹脂多孔質体から構成される第1、第2のシートであって、第1のシートの延伸方向と第2のシートの延伸方向とが交差するようにして前記発電要素の全体を重ねて被覆する第1、第2のシートを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外力に対して構造的に弱い部分である発電要素の最外層部や発電要素の側面を外力から保護することができる。例えば、積層方向を上下方向にして発電要素が置かれているとしたとき、発電要素の積層方向の最外層の2つの面(上下の面)は、延伸方向の異なる2つのシートが重ねて被覆されているので、面で強いものとなっている。一方、発電要素の側面は、積層方向を延伸方向とするシートで被覆されているので、水平方向から側面に向かう外力に対しても強いものとなっている。これによって、力を受ける能力が弱い部分に局所的に張力が作用し、セパレータが破れて正極と負極が直接電気的に接触して短絡することを防止することが可能となり、二次電池などの電気デバイスの信頼性(安全性)を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態の第1、第2の各シートの平面図である。
【図2】発電要素を第1シートで被覆した状態を示す第1実施形態の概略斜視図である。
【図3】発電要素を第1、第2のシートで被覆した状態を示す第1実施形態の概略斜視図である。
【図4】発電要素の分解斜視図である。
【図5】電池全体の概略斜視図である。
【図6】発電要素を第1、第2、第3のシートで被覆した状態を示す第2実施形態の概略斜視図である。
【図7】第2実施形態の第3のシートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張している箇所があり、その箇所においては実際の比率と異なっている。
【0010】
(第1実施形態)
本実施形態のリチウムイオン二次電池1について説明する。図1は第1、第2の各シート21、22の平面図である。図2は発電要素2を第1のシート21で被覆した状態を示す概略斜視図、図3は発電要素2を第1、第2の2枚のシート21、22で被覆した状態を示す概略斜視図である。図4は発電要素2の分解斜視図、図5は電池全体の概略斜視図である。
【0011】
ここで、リチウムイオン二次電池1は、実際に充放電反応が進行する略四角扁平状の発電要素2が、図5に示したように電池外装材であるラミネートフィルム14の内部に封止された構造を有する。詳しくは、高分子−金属複合ラミネートフィルムを電池外装材として用いて、その周辺部(周縁部)を熱融着にて接合することにより、発電要素2を収納し密封した構成を有している。ここで高分子−金属複合ラミネートフィルムとしては、金属フィルムを高分子フィルム(樹脂フィルム)でサンドイッチした三層構造のものが一般的である。
【0012】
こうした積層型の電池1は、缶型電池と区分けするために「ラミネート型電池」といわれる。缶型電池は、市販されている単1電池や単3電池のように堅い円筒状の金属製外枠の中に2つの各電極が巻き込んで収納されているものである。一方、ラミネート型電池とは、略四角扁平状の発電要素2の周辺部(周縁部)を熱融着にて接合することにより、発電要素を密封したものをいう。以下では、リチウムイオン二次電池1を、「ラミネート型電池」という。あるいは単に「電池」ともいう。
【0013】
本実施形態では、発電要素2の全体を後述する第1、第2のシート21、22で被覆した後に、ラミネートフィルムを電池外装材として用いて、その周辺部(周縁部)を熱融着にて接合することにより、発電要素2を収納し密封した構成とするものである。このため、発電要素2について図4を参照して先に説明する。
【0014】
図4に示したように、発電要素2は、負極4、セパレータ12、正極8をこの順に積層した構成を有している。ここで、負極4は四角薄板状の負極集電体5の両面に負極活物質層6、6を配置したものである。同様に正極8は四角薄板状の正極集電体9の両面に正極活物質層10、10を配置したものである。セパレータ12は主に多孔質の熱可塑性樹脂から形成されている。セパレータ12が電解液を保持することで、セパレータ12と一体に電解質層が形成されている。
【0015】
これにより、隣接する負極4、セパレータ12及び正極8は、一つの単電池層13(単電池)を構成する。従って、本実施形態のラミネート型電池1は、単電池層13を積層することで、電気的に並列接続された構成を有するともいえる。また、単電池層13の外周には、隣接する負極集電体5と正極集電体9との間を絶縁するためのシール部(絶縁層)を設けてもよい。発電要素2の両最外層に位置する最外層負極集電体5には、いずれも片面のみ(図4で最上段の負極集電体5には下面のみ、最下段の負極集電体5には上面のみ)に負極活物質層6を配置している。なお、図4とは負極及び正極の配置を逆にすることで、発電要素2の両最外層に最外層正極集電体が位置するようにし、該最外層正極集電体の片側のみに正極活物質層を配置するようにしてもよい。
【0016】
負極集電体5及び正極集電体9には、各電極(負極及び正極)と導通する強電タブ15、16を取り付ける。発電要素2は全体として四辺を有する四角扁平状に形成されているので、四辺のうちの一辺のみより2つの強電タブ15、16をまとめて外部に導出させている(図5参照)。
【0017】
さて、ラミネート型電池1は、缶型電池と比較して電池外装材がラミネートフィルムであるため、発電要素2の積層方向(図4で上下方向)の最外層部や発電要素2の積層方向と直交する方向(図4で左右方向)の側面が衝突や振動といった外力に対して構造的に特に弱いという問題がある。ここでは、主にラミネート型電池について説明するが、ラミネート型電池に限られるものでない。例えば、発電要素が樹脂製の外装体で被覆されている電気デバイスについても同様で、こうした電気デバイスについても、発電要素の積層方向の最外層部や発電要素の積層方向と直交する方向の側面が衝突や振動といった外力に対して構造的に弱いという問題がある。
【0018】
このため、負極、セパレータ及び正極を一方向に積層させている発電要素において、隣接するセパレータ同士の延伸方向が互いに交差するようにした従来装置がある。これは、セパレータは製造時に単軸延伸法が多く採用されるので、延伸方向に力を受けても、セパレータが破れることはないが、延伸方向と直交する方向に力を受けたときには、セパレータが破れることがある。セパレータが破れると、正極と負極とが直接電気的に接続され、短絡を招く。そこで、隣接するセパレータ同士を、延伸方向が互いに交差するように配置することによって、発電要素全体としてセパレータの延伸方向に力を受けても、また、延伸方向と直交する方向に力を受けても発電要素内のセパレータが破れないようにしたものである。
【0019】
しかしながら、従来装置は、発電要素全体として外力を分散させる構造であるものの、外力に対して構造的に弱い部分である発電要素の最外層部や側面に対しての保護は考えられていない。そのため、外力が発電要素の最外層部や発電要素の側面に加わったとき最外層部や側面に近いセパレータが破れ、正極と負極の直接的接触で短絡する可能性がある。
【0020】
そこで本実施形態では、延伸方向を有する樹脂多孔質体から構成される第1、第2のシート21、22を用意し、第1、第2のシート21、22で発電要素2の全体を被覆すると共に、第1のシート21の延伸方向と第2のシート22の延伸方向とが直交(交差)するようにする。以下、この点を図1〜図3を参照して詳述する。
【0021】
ポリプロピレン、ポリエチレンなど樹脂多孔質体から構成される第1、第2のシート21、22は、単軸延伸法によって製造されることが多い。単軸延伸法で製造されるシートには、延伸方向と延伸方向に直交する方向とで、引張強度の差を有している。すなわち、延伸方向(図1で上下方向)の引張強度のほうが、延伸方向に直交する方向(図1で左右方向)の引張強度よりも大きい。言い方を変えると、延伸方向(図1で上下方向)の伸び率のほうが、延伸方向に直交する方向(図1で左右方向)の伸び率よりも大きい。図1には縞模様で延伸方向を示しているが、実際にも縞模様があるわけでない。第1、第2のシート21、22は、ポリプロピレン、ポリエチレンなど単独の素材で構成してもよいし、複合させた素材としてもかまわない。
【0022】
こうした第1、第2のシート21、22を用意し、いずれも延伸方向に直交する方向に2つ折りする。図1に2つ折りする際の折り目21a、22aを破線で示す。図2に示したように2つ折りした第1のシート21の中央に発電要素2を収納する。その際、第1のシート21の延伸方向と、強電タブ15、16の取り出し方向(図2で左右方向)とが平行となるようにかつ2つ折りした折り目21aが強電タブ15、16が取り出される辺と反対側の辺側にくるようにする。ただし、図2は第1のシート21を2つ折りする前の状態を示しているため、折り目21aの近傍部分が膨らんだ状態で表されている。
【0023】
第1のシートの折り目21aを強電タブ15、16が取り出される辺と反対側の辺にくるようにしたのは、強電タブ15、16の取り出しを考慮してのことである。すなわち、折り目21aを強電タブ15、16が取り出される辺と同じ辺側にくるようにしたときには、強電タブ15、16を電池外部に取り出すための開口孔を第1のシート21に加工する作業が追加で必要となるためである。一方、折り目21aを強電タブ15、16が取り出される辺と反対側の辺にくるようにしたときには、折り目21aとは反対側端21b、21cが開口端となるので、強電タブ15、16を電池外部に取り出すための開口孔を加工する作業は不要となる。この作業が許容されるのであれば、折り目21aを強電タブ15、16が取り付けられる辺と同じ辺の側に配置してもかまわない。
【0024】
また、第1のシート21を発電要素2の上下に密着させた状態で第1のシート21の周辺が発電要素2の周囲と同じ位置に収まるように、第1のシート21の大きさを選定する。
【0025】
次に、図3に示したように、発電要素2に密着させた第1のシート21のさらに外側に2つ折りした第2のシート22を被覆する。その際、第2のシート22の延伸方向と、強電タブ15、16の取り出し方向とが直交するようにする。この結果、第1のシート21の延伸方向と第2のシート22の延伸方向とが直交することとなる。
【0026】
図3も第2のシート22を2つ折りする前の状態を示しているため、第2のシートの折り目22aの近傍部分が膨らんだ状態で表されている。なお、図3では、第2のシート22と第1のシート21との位置関係を明確にするため、第2のシート22を透視してみえる状態を示している。
【0027】
また、第2のシート22を第1のシート21及び発電要素2の上下に密着させた状態で第2のシート22の周辺が発電要素2の周囲と同じ位置に納まるように、第2のシート22の大きさを選定する。
【0028】
第1、第2のシート21、22は発電要素2の保護シートして機能する。例えば、図2に示したように水平方向の外力Aが強電タブ15、16が取り出される辺と反対側の辺側から発電要素2の側面に作用すると仮定したとき、外力Aに対しては第1のシート21の折り目21a付近が外力Aを受けて内部にへこむ。これによって、外力Aのエネルギーを吸収し、外力Aが発電要素2の側面に直接作用することを防止できる。また、図3に示したように水平方向の外力Bが強電タブ15、16が取り出される辺の隣の辺の側から発電要素2の側面に作用すると仮定したとき、外力Bに対しては第2のシート22が外力Bを受けて内部にへこむ。これによって、外力Bのエネルギーを吸収し、外力Bが発電要素2の側面に直接作用することを防止できる。
【0029】
また、図3に示したように上下方向の外力Cが鉛直上方から電池要素の最外層部に作用すると仮定したとき、外力Cに対しては第1、第2のシート21、22が外力Cを受けて内部にへこむ。これによって、外力cのエネルギーを吸収し、外力Cが発電要素2の最外層部に直接作用することを防止できる。
【0030】
このように第1、第2のシート21、21を発電要素2に重ねてかつ密着させて被覆した後の電池1の製造方法は、従来装置と同じである。すなわち、2枚のシート21、21を発電要素2に重ねてかつ密着させて被覆した発電要素2を、ラミネートフィルムを用いて、4つの辺の周辺部(周縁部)14a〜14dを熱融着にて接合することにより、発電要素2を収納し密封した構成とする(図5参照)。強電タブ15、16は、ラミネートフィルム14の端部に挟まれるようにラミネートフィルム14の外部に導出させる。強電タブ15、16は、必要に応じて正極端子リード(図示せず)及び負極端子リード(図示せず)を介して、各電極の負極集電体5及び正極集電体9に超音波溶接や抵抗溶接により取り付けてもよい。
【0031】
なお、リチウムイオン二次電池の他の形態としては、集電体の一方の面に正極活物質層を、他方の面に負極活物質層を形成している双極型電極を、セパレータを介して積層した双極型二次電池が挙げられる。上記の電池1とこの双極型二次電池とは、双方の電池内の電気的な接続状態(電極構造)が異なることを除いては、基本的には同様である。この双極型二次電池にも本発明の適用がある。
【0032】
このように構成されるラミネート型電池1を金属製の電池ケースの内部に積層して収納し、積層した複数のラミネート型電池1を各強電タブを用いて直列接続することで所定電圧を有する電池パックが構成される。さらに複数の電池パックを電気的に組み合わせることで所定電圧を有する組電池が構成され、この組電池が電気自動車やハイブリッド車などの輸送機関に搭載されることとなる。
【0033】
ここで、第1実施形態の作用効果を説明する。
【0034】
第1実施形態によれば、負極4、セパレータ12及び正極8をこの順に積層させている発電要素2と、延伸方向を有する樹脂多孔質体から構成される第1、第2のシート21、22であって、第1のシート21の延伸方向と第2のシート22の延伸方向とが交差するようにして発電要素2の全体を重ねて被覆する第1、第2のシート21、22とを備えるので、外力に対して構造的に弱い部分である発電要素2の最外層部や発電要素の側面を外力から保護することができる。例えば、積層方向を上下方向にして発電要素2が置かれているとしたとき、発電要素2の積層方向の最外層の2つの面(上下の面)は、延伸方向の異なる2つのシート21、22が重ねて被覆されているので、面で強いものとなっている。一方、積層方向を延伸方向とするシートで被覆されている発電要素2の側面は、水平方向から当該側面に向かう外力に対して強いものとなっている。これによって、力を受ける能力が弱い部分に局所的に張力が作用し、セパレータ12が破れて正極8と負極4が直接電気的に接触して短絡することを防止することが可能となり、ラミネート型電池1の信頼性(安全性)を大幅に向上することができる。
【0035】
第1実施形態によれば、第1のシート21の延伸方向と第2のシート22の延伸方向とが交差する角度は90度であるので、2つのシート21、22だけで効率よく外力を吸収することができる。
【0036】
第1実施形態によれば、負極4、セパレータ12及び正極8を一方向に積層させることにより全体として四辺を有する四角扁平状に形成し、負極4に接続する強電タブ15と、正極8に接続する強電タブ16とを前記四辺のうちの一辺からまとめて取り出すと共に、延伸方向と直交する方向に2つ折りした第1のシート21の間に、かつ2つ折りした側が強電タブ15、16を取り出した辺と反対側の辺側にくるようにして発電要素2を収納し、第1のシート21の延伸方向と第2のシート22の延伸方向とが直交するように第1のシート21の外側に第2のシート22を被覆するので、さらに第1のシート21に強電タブ15、16を貫通するための孔を開口する作業が不要となり、作業性が向上する。
【0037】
第1実施形態では、第1のシート21の延伸方向と第2のシート22の延伸方向とが交差する角度は90度である場合で説明したが、厳密に90度である必要はなく、90度に近い角度であればかまわない。
【0038】
第1実施形態では、単軸延伸法によって製造される樹脂多孔体シートの場合で説明したが、これに限られるものでない。
単軸延伸法はX方向のみの1方向に延伸することによって樹脂多孔体シートを製造するものであるが、X、Y方向の2方法に延伸することによって樹脂多孔体シートを製造する方法が存在する(特開2004−31097号公報参照)。Y方向とはX方向と直交する方向のことである。
【0039】
この場合、異なる2方向の延伸の強さには強弱があることが多い。つまり、相対的に強い延伸がかかった第1の延伸方向(例えばX方向)と相対的に弱い延伸がかかった第2の延伸方向(例えばY方向)との2軸の延伸方向を樹脂多孔質体シートが有していることになる。こうした2軸の延伸方向を有する樹脂多孔質体シートから構成される第1、第2のシートである場合にあっては、相対的に強い延伸がかかっている方向を基準に考えればよい。つまり、第1のシートの第1の延伸方向と第2のシートの第1の延伸方向とが交差するようにして発電要素の全体を重ねて被覆すればよい。なお、2軸のなす角度は90度に限らず、0度〜90度(ただし、0度は除く)の範囲にあればよい。
【0040】
次に、第1実施形態では、第1のシート21が1枚、第2のシート22が1枚の合計で2枚の場合で説明したが、合計で2枚である必要はない。例えば、第1、第2の2枚のシート21、22で発電要素2を被覆した状態(図3参照)から、さらにその外側に3枚目として第3のシート23で被覆するようにしてもかまわない。
【0041】
これについて説明すると、図6は発電要素2を第1、第2、第3の3枚のシート21、22、23で被覆した状態を示す第2実施形態の概略斜視図である。図6も第3のシート23を2つ折りする前の状態を示しているため、第3のシートの折り目23aの近傍部分が膨らんだ状態で表されている。なお、図6では、第3のシート23と第2のシート22との位置関係を明確にするため、第3のシート23を透視してみえる状態を示している。
【0042】
第3のシート23は、第1、第2のシート21、22と相違して、図7に示したように、長手方向(図7で上下方向)に直交する方向を延伸方向している。こうした第3のシート23を用意し、中央で2つ折りする。図7に2つ折りする際の折り目23aを破線で示す。そして、第1、第2の2枚のシート21、22で発電要素2を被覆した状態(図3参照)から、さらにこの第3のシート23で図6に示したように被覆する。
【0043】
このように構成すれば、水平方向の外力Bが発電要素2の側面に作用するときにも、当該側面では延伸方向の異なる2枚のシート22、23が重ねて被覆されているので、面で強いものとなっている。これによって、2枚のシート22、23が当該外力Bのエネルギーを吸収し、当該外力Bが発電要素2の側面に直接作用することを防止できる。
【0044】
第2実施形態では、シートの数を全体で3枚とすることで、発電要素2の上下面だけでなく、発電要素2の側面についても延伸方向の異なる2枚のシートで重ねて被覆することができた。従って、シートの数を全体で3枚以上とするときには、発電要素2の上下面だけでなく、発電要素2の側面についても延伸方向の異なる2枚のシートで重ねて被覆する他の態様が考え得る。
【0045】
実施形態では、ラミネート型電池について説明したが、本発明はラミネート型電池に限定されるものない。負極、セパレータ及び正極を含みこれらを積層させている発電要素を有する電気デバイスであれば、例えば樹脂のような外力に対して構造的に弱い材質の外装体で発電要素が被覆されているものに対しては本発明の適用がある。
【符号の説明】
【0046】
1 ラミネート型電池(電気デバイス)
4 負極
5 負極集電体
6 負極活物質層
8 正極
9 負極集電体
10 正極活物質層
12 セパレータ
14 ラミネートフィルム
15、16 強電タブ
21 第1のシート
21a 折り目
22 第2のシート
22a 折り目
23 第3のシート
23a 折り目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極、セパレータ及び正極をこの順に積層させている発電要素と、
単軸の延伸方向を有する樹脂多孔質体から構成される第1、第2のシートであって、第1のシートの延伸方向と第2のシートの延伸方向とが交差するようにして前記発電要素の全体を重ねて被覆する第1、第2のシートと
を備えることを特徴とする電気デバイス。
【請求項2】
前記第1のシートの延伸方向と第2のシートの延伸方向とが交差する角度は90度であることを特徴とする請求項1に記載の電気デバイス。
【請求項3】
前記負極、セパレータ及び正極を一方向に積層させることにより前記発電要素を全体として四辺を有する四角扁平状に形成し、
前記負極に接続する強電タブと、前記正極に接続する強電タブとを前記四辺のうちの一辺からまとめて取り出すと共に、
前記延伸方向と直交する方向に2つ折りした前記第1のシートの間に、かつ2つ折りした側が前記強電タブを取り出した辺と反対側の辺側にくるようにして前記発電要素を収納し、
前記第1のシートの延伸方向と前記第2のシートの延伸方向とが直交するように前記第1のシートの外側に前記第2のシートを被覆することを特徴とする請求項1に記載の電気デバイス。
【請求項4】
負極、セパレータ及び正極をこの順に積層させている発電要素と、
相対的に強い延伸がかかった第1の延伸方向と相対的に弱い延伸がかかった第2の延伸方向との2軸の延伸方向を有する樹脂多孔質体から構成される第1、第2のシートであって、第1のシートの前記第1の延伸方向と第2のシートの前記第1の延伸方向とが交差するようにして前記発電要素の全体を重ねて被覆する第1、第2のシートと
を備えることを特徴とする電気デバイス。
【請求項5】
前記第1のシートの前記第1の延伸方向と第2のシートの前記第1の延伸方向とが交差する角度は90度であることを特徴とする請求項4に記載の電気デバイス。
【請求項6】
前記負極、セパレータ及び正極を一方向に積層させることにより前記発電要素を全体として四辺を有する四角扁平状に形成し、
前記負極に接続する強電タブと、前記正極に接続する強電タブとを前記四辺のうちの一辺からまとめて取り出すと共に、
前記第1の延伸方向と直交する方向に2つ折りした前記第1のシートの間に、かつ2つ折りした側が前記強電タブを取り出した辺と反対側の辺側にくるようにして前記発電要素を収納し、
前記第1のシートの第1の延伸方向と前記第2のシートの第1の延伸方向とが直交するように前記第1のシートの外側に前記第2のシートを被覆することを特徴とする請求項1に記載の電気デバイス。
【請求項7】
前記シートの総数は少なくとも3枚であることを特徴とする請求項3または6に記載の電気デバイス。
【請求項8】
前記第1、第2のシートで被覆された電池要素の全体を外装体として被覆するラミネートフィルムを備えることを特徴とする請求項1または4に記載の電気デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−80617(P2013−80617A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219969(P2011−219969)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】