説明

電気メッキ装置におけるワークハンガー

【課題】 横幅サイズが大小異なる矩形の基板製品の上部両端側を確実に支持できるようにし、薄い基板製品を液中搬送しながらメッキする場合に該基板製品の両端側が液抵抗などによって折り曲げられるのを防止できるワークハンガーを提供する。
【解決手段】 水平な陰極バーBに沿って移動自在に支持される支持部2と、この支持部の下方に接続的に設けられた横長基板部3と、この横長基板部に水平方向に所定間隔をおいて取付けられ、矩形の基板製品Wの上部を着脱自在に挟持して、基板製品を水平方向に向けられた横長の垂直姿勢に吊り下げ支持する複数の挟持用クランプ4から成り、前記横長基板部3の両端側に取り付けられる前記挟持用クランプ4を、該横長基板部の端部から離間される水平方向にスライド移動され且つスライド移動位置で該横長基板部に固定されるスライド可動クランプ20として構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ処理されるプリント基板などの矩形の基板製品を陰極バーに横移動自在に且つ垂直状態に吊り下げ支持するワークハンガーに係り、基板製品の横長サイズの大小の変化に対しても最適な吊り下げ支持位置で該基板製品を吊り下げ支持できる、特に薄い基板製品を横向きの直列状態で連続的に液中搬送しながらメッキ処理していく垂直搬送メッキによる電気メッキ装置におけるワークハンガーとして好適なワークハンガーに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板などの矩形の基板製品をメッキ処理する電気メッキ装置において用いられる従来のワークハンガーとしては、例えば、本出願人が実用新案登録第3085849号や特開2003−328193号で提供したワークハンガーが知られている。このワークハンガーは、陰極バーに横移動自在に吊り下げ支持される支持機能と該陰極バーに導電的に接続される接触機能とを併せ持つ支持部材と、この支持部材の下部に該支持部材と一体的に構成されるか又は前記支持部材の下部に導電的に接続されるように面接触状態に固着され、前記基板製品の横長辺の方向に沿って延ばされた横長基板と、この横長基板にそれぞれ固定的に取付けられ、前記基板製品の上部を挟持し、該基板製品を懸垂状態に吊り下げ支持する複数の挟持用クランプ(挟持用クリップ)とから構成されている。そして、前記陰極バーから前記ワークハンガーを介して前記基板製品へ通電するようにしている。
【0003】
適宜なコンベア手段によって陰極バーに沿って連続的に移送される多数の前記ワークハンガーにそれぞれ吊り下げ支持された矩形の基板製品は、特許第2943070号などで公知の、いわゆる垂直連続搬送メッキ処理方法によって、横向きの直列状態でメッキ液中を連続的に搬送されながらメッキ処理される。この垂直連続搬送メッキ処理方法においては、製品の横幅方向の端部に電流が集中してメッキ厚が厚くなってしまうのを防止して製品全体のメッキ厚を均一にするために、各ワークハンガーでそれぞれ吊り下げ支持された各基板製品の搬送方向における製品間に僅かな隙間をおいた横向きの直列状態でメッキ液中を連続的に搬送しながらメッキ処理するようにしている。
【0004】
この垂直連続搬送メッキの場合、メッキ厚の均一化を図るために、前述したように連続して搬送される多数の基板製品間に僅かな隙間をおくようにしている。このため、基板製品を垂直状態に吊り下げ支持するワークハンガーの横幅サイズ(上記した従来例では複数の挟持用クランプを取り付けるための横長基板の横長サイズ。)は、ハンガーで垂直状態に吊り下げ支持される矩形の基板製品の横長サイズより小さく構成されている。また、これらのワークハンガーは、通常、基板製品の大小に関係なく汎用的に用いられることから、横幅サイズの小さな基板製品に合わせて構成されている。なぜならば、大きい横幅サイズの基板製品に合わせたワークハンガーを用いて比較的小さな横幅サイズの基板製品を吊り下げ支持した場合、大きいハンガーの横長基板同士が衝突してしまい製品間の横幅間隔を所望な横幅間隙に設定できないからである。
【0005】
このように、従来のワークハンガーは、基板製品の大小に関係なく汎用的に用いられる場合、横幅サイズの小さな基板製品に合わせて構成されているのが実情である。したがって、比較的大きな横幅サイズの基板製品をメッキ処理する場合には、この大きな横幅サイズの基板製品の横幅方向の両端側にハンガーの挟持用クランプで支持されない不安定な範囲が広く残ってしまう。比較的厚い基板製品ではそれほど支障はないが、昨今、かなり薄い基板製品をメッキ処理する需要が増加傾向にあり、この薄い基板製品で比較的大きな横幅サイズのものを従来のワークハンガーで該基板製品の横幅方向の両端側に挟持用クランプで支持されない不安定な範囲を広く残して吊り下げ支持して液中搬送しようとしても、挟持用クリップで支持されていない薄い基板製品の横幅方向の両端側が液抵抗などによって所期の姿勢を維持できずに折れ曲げられ、結局、正常なメッキ処理ができないものであった。係る弊害は、基板製品の先頭側で顕著である。
【特許文献1】実用新案登録第3085849号公報
【特許文献2】特開2003−328193号公報
【特許文献3】特許第2943070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、係る弊害を解決できる電気メッキ装置におけるワークハンガーを提供する。すなわち、比較的小さな横幅サイズの基板製品から大きな横幅サイズの基板製品に対しても汎用的に用いられるワークハンガーであり、横幅サイズが大小異なるこれらの基板製品の横幅方向の上部両端側を確実に支持できる、電気メッキ装置におけるワークハンガーを提供する。特に、薄い基板製品を液中搬送しながらメッキ処理する場合において、薄い基盤製品の横幅方向の両端側が液抵抗などによって折れ曲げられるのを防止でき、所期の姿勢を維持しながら正常なメッキ処理ができるワークハンガーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、水平な陰極バーに沿って水平方向に移動自在に吊下げ支持される支持部と、該支持部の下方に接続的に設けられ、前記陰極バーと平行な水平方向へ延ばされた横長基板部と、この横長基板部に水平方向に所定間隔をおいて取付けられ、メッキ処理されるプリント基板などの矩形の基板製品の上部を着脱自在に挟持しえる挟持接点部を前記横長基板部より下方位置に配し、この挟持接点部で挟持された前記基板製品を水平方向へ向けられた横長の垂直姿勢に吊り下げ支持する複数の挟持用クランプとから成り、前記陰極バーから前記支持部、前記横長基板部、前記挟持用クランプを経て、該挟持用クランプの前記挟持接点部から前記基板製品へ通電するように構成されたワークハンガーにおいて、前記挟持用クランプであって、前記横長基板部の一端側又は両端側に取り付けられた挟持用クランプを、前記横長基板部に設けたスライドガイド部に沿って水平方向にスライド移動され且つスライド移動位置で該横長基板部に固定されるスライド杆の外方向の突出基端部に垂設状態に取付けた、前記横長基板部に沿って該横長基板部の端部から離間される水平方向にスライド移動され且つスライド移動位置で該横長基板部に固定されるスライド可動クランプとして構成したことを特徴とする電気メッキ装置におけるワークハンガーを提供する。
【0008】
更に、本発明は、前記スライド可動クランプを、前記横長基板部の表裏両面に設けた前記スライドガイド部に沿って水平方向にそれぞれスライド移動され且つスライド移動位置で該横長基板部に固定される二股状のスライド杆の外方向の突出基端部に垂設状態に取付けたことを特徴とするものである。
【0009】
更に、本発明は、前記スライド杆の内方向の二股先端部に形成されたねじ穴に螺合される締付けボルトを前記横長基板部に形成された水平な長穴を介して貫通し、前記長穴に沿って所望位置にスライド移動された前記締付けボルトを締付けて前記スライド杆を横長基板部に固定するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のワークハンガーによれば、横幅サイズが大小異なる基板製品の横幅方向の上部両端側を確実に支持できるため、特に、薄い基板製品を液中搬送しながらメッキ処理する場合、薄い基盤製品の横幅方向の両端側が液抵抗などによって折れ曲げられるのを防止でき、所期の姿勢を維持しながら正常なメッキ処理ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して説明する。先ず、図1から図5に示したワークハンガーについて説明する。このワークハンガー1は、水平に配置された断面矩形の陰極バーBに沿って摺動接触されながら水平方向に移動自在に吊下げ支持される断面略鉤状の吊下部2aをもつ支持部2と、該支持部2の下部に垂直支持部2bを介して接続的に設けられ、前記陰極バーBと平行な水平方向へ延ばされた横長の長方形状の横長基板部3と、この横長基板部3に水平方向に所定間隔をおいて取付けられ、メッキ処理されるプリント基板などの矩形の基板製品Wの上部を着脱自在に挟持しえる挟持接点部10を前記横長基板部3より下方位置に配し、この挟持接点部10で挟持された前記基板製品Wを水平方向へ向けられた横長の垂直姿勢に吊り下げ支持する複数(図示した実施例では4個)の挟持用クランプ4とから構成されている。前記ワークハンガー1は、前記陰極バーBから前記支持部2、前記横長基板部3、前記挟持用クランプ4を経て、該挟持用クランプ4の前記挟持接点部10から前記基板製品Wへ通電できるように、これらの構成部をステンレス鋼や黄銅などの導電性材料で形成している。このワークハンガー1に垂直姿勢に吊り下げ支持された矩形の基板製品Wは、横長のメッキ処理タンク(図示せず)内のメッキ処理液A中に配置された陽極(図示せず)の間を横向きの垂直姿勢で連続的に比較的ゆっくりした速度で搬送され、この搬送過程で、前記陰極バーBから前記支持部2、前記横長基板部3、前記挟持用クランプ4を経て、該挟持用クランプ4の前記挟持接点部10から通電されながらメッキ処理される。なお、メッキ処理タンク(図示せず)内のメッキ処理液A中に、液中搬送される基板製品Wの基板両面に向けて近い位置からメッキ液を噴流させる噴出ノズル(図示せず)を設置した場合、基板製品Wはこの噴出ノズル間の狭い通路を通過されながらメッキ処理される。前記ワークハンガー1を前記陰極バーBに沿って摺動接触させながら水平方向に搬送させるコンベア手段(図示せず)としては、例えば、本出願人が所有する特許2943070号などで公知である、前記ワークハンガー1に設けた係合爪(図示せず)を水平方向に循環移動する歯付きエンドレスベルト(図示せず)で係合して該ワークハンガーを前記陰極バーBに沿って水平方向へ搬送させる技術を用いることができる。
【0012】
複数(図示した実施例では4個)の前記挟持用クランプ4のうち、前記横長基板部3の両端側に取り付けられた2個の挟持用クランプ4を、前記横長基板部3に設けたスライドガイド部21に沿って水平方向にスライド移動され且つスライド移動位置で該横長基板部3に固定される断面矩形状のスライド杆22の外方向の突出基端部22Aに垂設状態に取付けた、前記横長基板部3に沿って該横長基板部3の端部から離間される水平方向にスライド移動され且つスライド移動位置で該横長基板部3に固定されるスライド可動クランプ20として構成している。このスライド可動クランプ20は、前記横長基板部3の端部に接した縮小位置(図1の実線位置)と前記横長基板部3の端部から離間される水平方向にスライド移動された伸長位置(図1の一点鎖線位置)とをスライド移動するようにしてある。前記スライドガイド部21やスライド杆22は前記横長基板部3と同様な導電性材料で形成される。なお、図示した4個の前記挟持用クランプ4のうち、前記横長基板部3の内側に取り付けられた2個の挟持用クランプ4は、背景技術で述べた従来の挟持用クランプと同様に前記横長基板部3に固定的に取り付けられている。以下、前記横長基板部3に固定的に取り付けられた内側2個の挟持用クランプ4を固定クランプ30と言う。
【0013】
そして、図示した実施形態では、前記スライド可動クランプ20を、前記横長基板部3の表裏両面にそれぞれ設けた前記スライドガイド部21に沿って水平方向にそれぞれスライド移動され且つスライド移動位置で該横長基板部3に固定される二股状のスライド杆22の外方向の突出基端部22Aに垂設状態に取り付け、前記スライド杆22の二股部22a,22aの内方向の二股先端部に形成されたねじ穴23に螺合される締付けボルト24を前記横長基板部3に形成された水平な長穴25を介して貫通し、前記長穴25に沿って所望位置にスライド移動された前記締付けボルト24を締付けてスライド杆22の二股部22a,22aを前記横長基板部3に固定するように構成している。
【0014】
前記スライド可動クランプ20をスライド移動させる場合は、前記締付けボルト24を緩め、緩めた前記締付けボルト24を前記長穴25に沿ってスライド移動しながら前記スライド杆22を前記スライドガイド部21に沿って水平方向に目的の取り付け位置までスライド移動させ、スライド移動された所望位置で前記締付けボルト24を締付けてスライド杆22の二股部22a,22aを横長基板部3に固定する。
【0015】
図1に示した実施形態では、複数の前記挟持用クランプ4のうち、前記横長基板部3の両端側に取り付けられた2個の挟持用クランプ4を、スライド可動クランプ20として構成した。これは、より大きな横幅サイズの基板製品にも対応可能であり、ワークハンガー全体の左右の重量バランスを保つ観点からも望ましいものである。しかし、本発明は、複数の前記挟持用クランプ4のうち、前記横長基板部3の一端側(例えば後端側)に取り付けられた挟持用クランプ4のみを、前記したスライド可動クランプ20として構成することを除外するものではない。また、図1に示した実施形態では、複数(4個)の挟持用クランプ4のうち、前記横長基板部3の内側に取り付けられた2個の挟持用クランプ4は、いわゆる固定クランプ30として構成したが、この固定クランプ30を省略して、2個の前記スライド可動クランプ20のみを前記横長基板部3の両端側に取り付けた構成とすることも可能である。
【0016】
前記挟持用クランプ4(前記スライド可動クランプ20、前記固定クランプ30)の構成自体は実用新案登録第3085849号や特開2003−328193号で公開された公知のものを用いている。この挟持用クランプ4は、図1の左右両側に設けた前記スライド可動クランプ20においては、上部を前記スライド杆22の突出基端部22Aに導電的に接続されるように面接触状態に固定ボルト(図示せず)によって固着され、図1の内側に設けた2個の前記固定クランプ30においては、上部を前記横長基板部3の背面側に導電的に接続されるように面接触状態に固定ボルト(図示せず)によって固着され、下部に固定側接点5aを設けた固定側挟持杆5と、この固定側挟持杆5の中間部に固着されたブラケット7に軸ピン8を介してその中間部を枢着された可動側挟持杆6を備え、この可動側挟持杆6の下部に前記固定側接点5aと対向する可動側接点6aを設けている。更に、前記固定側挟持杆5の上部側と前記可動側挟持杆6の上部側の間にコイルバネから成る弾性部材9を介装し、この弾性部材(コイルバネ)9の弾力によって前記軸ピン8を支点として前記可動側接点6aを前記固定側接点5aに対して閉じる方向に付勢してあり、前記固定側接点5aに対して閉じられた前記可動側接点6aとの間で前記基板製品Wの上部を垂直状態に挟持できるように、前記固定側接点5aと前記前記可動側接点6aを前記挟持接点部10として構成してある。前記挟持接点部10は、前記弾性部材9(コイルバネ)の弾力に抵抗して前記可動側挟持杆6の上部側を前記固定側挟持杆5の上部側に向けて押圧することにより、前記固定側接点5aから前記前記可動側接点6aが離れ、開放される。なお、前記挟持用クランプ4に対する前記基板製品Wの装脱着に際して、各挟持用クランプ4の可動側挟持杆6の上部側を前記弾性部材9(コイルバネ)の弾力に抵抗して同時に押圧して行うが、この押圧は図示しない機械的な強制力を用いて行われる。前記基板製品Wと共にメッキ液A中に入れられる前記固定側挟持杆5と前記可動側挟持杆6の各下部側は、露出される前記固定側接点5aと可動側接点6aを除き絶縁キャップ11でそれぞれ着脱自在に被覆される。この絶縁キャップ11は弾力性を有する非導電性物質であるゴム材(好ましくはシリコンゴム)で形成されている。
【0017】
図1において、符号12は導電線であり、図1の内側に設けた2個の前記固定クランプ30においては、この導電線12を介して前記挟持用クランプ4の各可動側挟持杆6の上部側と前記横長基板部3とをそれぞれ導電的に接続し、図1の左右両側に設けた前記スライド可動クランプ20おいては、この導電線12を介して前記挟持用クランプ4の各可動側挟持杆6の上部側と前記スライド杆22とをそれぞれ導電的に接続している。前記したように前記挟持用クランプ4の各固定側挟持杆5の上部側は前記スライド杆22の突出基端部22A(固定クランプ30では前記横長基板部3)に面接触状態に固着されて導電的に接続されているが、前記挟持用クランプ4の各可動側挟持杆6の上部側と前記スライド杆22(固定クランプ30では前記横長基板部3)とを前記導電線12を介してそれぞれ導電的に接続したことによって、前記挟持用クランプ4の両方の挟持杆(固定側挟持杆5と可動側挟持杆6)の前記挟持接点部10から前記基板製品Wへ効率良く通電され、全体として前記挟持用クランプ4から前記基板製品Wへの導電効率を上げることができ、陰極バーBから前記基板製品Wへの導電効率を高めることができる。
【0018】
図1及び図5において、符号40は、前記横長基板部3の横長方向すなわち水平方向における中間部から支持部材42を介して垂設された下方に凹み部を向けた凹状固定溝部41をもつ固定溝状ガイドであり、この固定溝状ガイド40は、前記挟持用クランプ4で吊り下げ支持される前記基板製品Wの横幅方向すなわち水平方向における略中間位置の上辺部を前記凹状固定溝部41内にスライド可能な程度に緩く入れて上方側からガイドできるようにしている。メッキ液A中に入れられる前記固定溝状ガイド40はプラスチックなどの非導電性材料で形成される。
【0019】
次に、本発明の他の実施形態について、図6及び図7の図面に基づいた説明する。この実施形態のワークハンガー50も、先の実施形態のワークハンガー1と同様に、水平な陰極バーBに沿って水平方向に移動自在に吊下げ支持される支持部2と、該支持部の下方に接続的に設けられ、前記陰極バーBと平行な水平方向へ延ばされた横長基板部3と、この横長基板部3に水平方向に所定間隔をおいて取付けられ、メッキ処理されるプリント基板などの矩形の基板製品Wの上部を着脱自在に挟持しえる挟持接点部10を前記横長基板部3より下方位置に配し、この挟持接点部で挟持された前記基板製品Wを水平方向へ向けられた横長の垂直姿勢に吊り下げ支持する複数の挟持用クランプ4とから成り、前記陰極バーBから前記支持部2、前記横長基板部3、前記挟持用クランプ4を経て、該挟持用クランプ4の前記挟持接点部10から前記基板製品Wへ通電するように構成されている。
【0020】
図6及び図7に示したワークハンガー50は、前記横長基板部3に取付けられた複数の前記挟持用クランプ4を全て先の実施形態で説明した固定クランプ30としている。そして、この実施形態では先の実施形態の前記スライド可動クランプ20に代えて、スライド可動溝状ガイド60を設けたことを特徴としている。その他の構成については、先の実施形態と実質的に同じ構成である。したがって、この実施形態において、先の実施形態と同じ符号で示した構成の詳細な説明は省略する。
【0021】
このワークハンガー50の特徴とする前記スライド可動溝状ガイド60は、前記横長基板部3に沿って水平方向にスライド移動され且つスライド移動位置で該横長基板部3に固定されるスライド支持部材62の突出後端部に垂設状態に取付けられ、前記横長基板部3に沿って該横長基板部3の後端部から後方向に離間される水平方向にスライド移動自在に支持された、下方に凹み部を向けた凹状スライド溝部61を備えている。そして、このスライド可動溝状ガイド60で前記横長基板部3の最後部に取付けられた前記挟持用クランプ4の吊り下げ支持位置より後方に突出された基板製品Wの上辺部を前記凹状スライド溝部61内にスライド可能な程度に緩く入れて上方側からガイドするようにしている。
【0022】
前記スライド支持部材62は、前記横長基板部3にスライド移動自在に外嵌され、スライド移動位置で締付けボルト64によって前記横長基板部3に固定されるスライド支持部63と、このスライド支持部63から後方向に延ばされ、その後端側を前記横長基板部3の後端部より突出させたスライド杆65から成り、このスライド支持部材62の前スライド杆65の突出後端部に支持部材66を介して前記スライド可動溝状ガイド60を垂設状態に取付けている。メッキ液A中に入れられる前記スライド可動溝状ガイド60はプラスチックなどの非導電性材料で形成される。
【0023】
背景技術で述べたように、ワークハンガーで薄い基板製品の横幅方向の両端側に挟持用クランプで支持されない不安定な範囲を広く残して吊り下げ支持して液中搬送しながらメッキ処理しようとする場合、薄い基板製品の横幅方向の両端側が液抵抗などによって所期の姿勢を維持できずに折れ曲げられ、正常なメッキ処理ができないという弊害があるが、係る弊害は、特に液中を搬送される基板製品の先頭側で顕著であり、基板製品の後端側では比較的小さいものである。このような実状に鑑み、この実施形態のワークハンガーでは、基板製品の先頭側の上部を固定クランプ30で支持し、基板製品の後端側の上部は前記スライド可動溝状ガイド60で所期の姿勢を維持できるようにガイドして、該基板製品の横幅サイズの変更に対応できるようにした。これにより、前記横長基板部の後端部から後方向に突出され、前記挟持用クランプ4で支持されない前記基板製品Wの突出した後部側は、このスライド可動溝状ガイド60で所期の姿勢を維持できる。
【0024】
図6の実施形態においても、図1の実施形態と同様な固定溝状ガイド40を設けている。そして、この固定溝状ガイド40の前記凹状固定溝部41と前記スライド可動溝状ガイド60の前記凹状スライド溝部61は同じ水平位置に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の正面図である。
【図2】図1のA−A矢視線に沿う一部縦断拡大側面図である。
【図3】図1のB−B矢視線に沿うスライド可動クランプの一部縦断拡大側面図である。
【図4】図1のC−C矢視線に沿う一部横断概略平面図である。
【図5】固定溝状ガイドの拡大側面図である。
【図6】本発明の他の実施例を示す正面図である。
【図7】図6のD−D矢視線に沿う挟持用クランプを略した縦断拡大側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ワークハンガー
B 陰極バー
2 支持部
3 横長基板部
4 挟持用クランプ
5 固定側挟持杆
5a 固定側接点
6 可動側挟持杆
6a 可動側接点
7 ブラケット
8 軸ピン
9 弾性部材(コイルバネ)
10 挟持接点部
11 絶縁キャップ
12 導電線
W 基板製品
A メッキ処理液
20 スライド可動クランプ
21 スライドガイド部
22 スライド杆
22A 突出基端部
22a,22a 二股部
23 ねじ穴
24 締付けボルト
25 長穴
30 固定クランプ
40 固定溝状ガイド
41 凹状固定溝部
50 ワークハンガー
60 スライド可動溝状ガイド
61 凹状スライド溝部
62 スライド支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な陰極バーに沿って水平方向に移動自在に吊下げ支持される支持部と、該支持部の下方に接続的に設けられ、前記陰極バーと平行な水平方向へ延ばされた横長基板部と、この横長基板部に水平方向に所定間隔をおいて取付けられ、メッキ処理されるプリント基板などの矩形の基板製品の上部を着脱自在に挟持しえる挟持接点部を前記横長基板部より下方位置に配し、この挟持接点部で挟持された前記基板製品を水平方向へ向けられた横長の垂直姿勢に吊り下げ支持する複数の挟持用クランプとから成り、前記陰極バーから前記支持部、前記横長基板部、前記挟持用クランプを経て、該挟持用クランプの前記挟持接点部から前記基板製品へ通電するように構成されたワークハンガーにおいて、
前記挟持用クランプであって、前記横長基板部の一端側又は両端側に取り付けられた挟持用クランプを、前記横長基板部に設けたスライドガイド部に沿って水平方向にスライド移動され且つスライド移動位置で該横長基板部に固定されるスライド杆の外方向の突出基端部に垂設状態に取付けた、前記横長基板部に沿って該横長基板部の端部から離間される水平方向にスライド移動され且つスライド移動位置で該横長基板部に固定されるスライド可動クランプとして構成したことを特徴とする電気メッキ装置におけるワークハンガー。
【請求項2】
前記スライド可動クランプを、前記横長基板部の表裏両面に設けた前記スライドガイド部に沿って水平方向にそれぞれスライド移動され且つスライド移動位置で該横長基板部に固定される二股状のスライド杆の外方向の突出基端部に垂設状態に取付けたことを特徴とする請求項1に記載の電気メッキ装置におけるワークハンガー。
【請求項3】
前記スライド杆の内方向の二股先端部に形成されたねじ穴に螺合される締付けボルトを前記横長基板部に形成された水平な長穴を介して貫通し、前記長穴に沿って所望位置にスライド移動された前記締付けボルトを締付けて前記スライド杆を横長基板部に固定するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の電気メッキ装置におけるワークハンガー。
【請求項4】
水平な陰極バーに沿って水平方向に移動自在に吊下げ支持される支持部と、該支持部の下方に接続的に設けられ、前記陰極バーと平行な水平方向へ延ばされた横長基板部と、この横長基板部に水平方向に所定間隔をおいて取付けられ、メッキ処理されるプリント基板などの矩形の基板製品の上部を着脱自在に挟持しえる挟持接点部を前記横長基板部より下方位置に配し、この挟持接点部で挟持された前記基板製品を水平方向へ向けられた横長の垂直姿勢に吊り下げ支持する複数の挟持用クランプとから成り、前記陰極バーから前記支持部、前記横長基板部、前記挟持用クランプを経て、該挟持用クランプの前記挟持接点部から前記基板製品へ通電するように構成されたワークハンガーにおいて、
前記横長基板部に沿って水平方向にスライド移動され且つスライド移動位置で該横長基板部に固定されるスライド支持部材の突出後端部に垂設状態に取付けられ、前記横長基板部に沿って該横長基板部の後端部から後方向に離間される水平方向にスライド移動自在に支持された、下方に凹み部を向けた凹状スライド溝部をもつスライド可動溝状ガイドを設け、このスライド可動溝状ガイドの前記凹状スライド溝部で前記横長基板部の最後部に取付けられた前記挟持用クランプの吊り下げ支持位置より後方に突出された基板製品の上辺部を上方側からガイドするようにしたことを特徴とする電気メッキ装置におけるワークハンガー。
【請求項5】
前記横長基板部の水平方向における中間部に前記挟持用クランプで吊り下げ支持される前記基板製品の水平方向における略中間位置の上辺部を上方側からガイドする下方に凹み部を向けた凹状固定溝部をもつ固定溝状ガイドを垂設したことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の電気メッキ装置におけるワークハンガー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−117979(P2006−117979A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305177(P2004−305177)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(592141466)丸仲工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】