説明

電気伝導特性を有する床材およびその施工方法

【課題】 丈夫で所望の電気特性を有する床を提供する。
【解決手段】 25,000〜1×109オームの2地点間抵抗および最大100Vの人体の発生電位を有する床を提供する方法であって、セメントおよび床用に適する重合体フィルム形成組成物の混合物を含む組成物を床基材へ施工することを含む、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材および特に所望の電気伝導特性を有する床を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床、特にかなりの火災または爆発の危険を有する材料を扱う場所または電子部品が組み立てられる場所における工業的な床は、静電気の発生および/または静電気の帯電を引き起こさないようなものが望ましい。そのような電荷は、典型的には、床上を動く人、材料および装置によって一般的には簡単に発生し、その現象は、「摩擦帯電(tribocharging)」として知られている。人の場合、滑り止めまたは耐薬品性のために特別に用いられるような靴底のある種のものは、高レベルで静電気を発生する種類のものである。そのような場合、速やかに発生した静電気を取り除くのが望ましい。特に、低い「人体発生電位(body voltage generation、以下、「BVG」という)」が望ましい。これは、床上を動く人によって発生する電圧である。測定の一つの方法は、試験方法AATCC/ANSI 134であり、所望の床面上を使用するよう要求された履き物を履き、規定の歩行周期で歩行し、発生した最大人体帯電電位を測定する。これはできる限り低くすべきであるばかりでなく、望ましくは、このような電圧も速やかに床を介して漏洩すべきである。
【0003】
所望の電気伝導特性を有する床は、例えば、ASTM F150 または DIN EN 1081で測定した2地点間抵抗(point to point resistance)が、25,000〜1×109オームであり、 ESD STM 97.2によって測定したBVGが最大100Vの床である。25,000〜1×109オームの2地点間抵抗を有する床は、導電性床とされ、一般的には、火災または爆発の危険性を有する場所に用いられる。暫定ヨーロッパ基準prEN 1504-4には、爆発物を使用する用途には、クラス I (104 〜106オーム)の床が、爆発および危険物を使用する用途には、クラスII (104 〜108オーム)の床が記載されている。1x106〜1x109オームの2地点間抵抗を有する床が、静電気散逸床とされ、そのような床は主に、電子産業に用いられる。
【0004】
これまでの床組成物は、これらの所望の特性を達成するために、電気的に導電性のある材料を利用してきた。この種類の典型的な床組成物は、鉄または鉄屑を混入させたポリマーマトリックスで、他の可能な材料は、マグネタイト(酸化鉄磁性体)および鉄合金材料である。これは、比較的高価な解決策である。他の手法は、導電性を持つ表面層を床基材に例えばコンクリートに塗工することであった。これは、安価でより簡便であるが、耐久性に欠ける欠点を有し、頻繁に再塗工する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、丈夫で所望の電気特性を有する床材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
公知の欠点をほとんどまたは完全に克服する丈夫な床を提供することを可能とすることがここで見出され、丈夫で許容できる程度の導電性を有するものである。従って、本発明は、上述の所望の電気特性を有する床材を提供し、床用途に適するセメント重合体フィルム形成組成物の混合物を含む組成物を床基材へ施工することを含む方法を提供する。
本発明は、さらに25,000〜1×109オームの2地点間抵抗および最大100VのBVGを有する床材を含み、床材は、セメント粒子が分散されたポリマーマトリックスを含む。
【0007】
この方法の主な利点は、床材は、導電性材料の使用を必要としないことにある。これらは、高価なばかりでなく、それ自身問題を有する。例えば、鉄または鉄屑は、錆びる可能性があり、それらを組み込んだ床が見苦しいものとなり、劣化を引き起こすのを助けることとなる。本発明の方法によって提供される床は、高い耐久性と耐衝撃性を有する。低いBVGの点についても、特に良好である。
従って、本発明の方法によって提供される床は、火災または爆発の危険を有する材料を扱う場所、例えば化学工場、薬品工場などまたは電子部品組立工場などの工業上の床材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に用いる重合体組成物は、塗膜形成させる成分として用いるいずれの熱可塑性または熱硬化性重合体組成物であってもよい。これらは、水性または非水性(好ましくは、水性)であってもよく、溶液、分散液またはエマルジョンであってもよい。重合体組成物は、床組成物に用いるのに適するものでなければならない。すなわち、床と接触するいわゆる車両走行に耐える十分な強度のフィルムを形成しなければならない。すべてのフィルム形成組成物が、これらの用途に適することではなく、いくらかの組成物は、例えば、壁用の塗料のようなものであるが、長期の、床車両の走行に完全に耐えることができない。 訓練された作業者は、要求されるべきものや、技術の範囲内での適する材料を容易に理解できる。
【0009】
そのような用途に適する公知の重合体のいずれの種類も、本発明に用いることができる。例えば、エポキシ、ポリエステル、アクリル、ビニルおよびポリウレタンである。
好ましくは、重合体は、熱硬化性重合体、すなわち、架橋フィルムを形成し得るものである。これらの材料は、最も頑丈で丈夫なフィルムをもたらす。好ましくは、重合体組成物は、水系である。これによってコストを減らすことができ、施工および乾燥時の不快な蒸気が最小限となる。
【0010】
本発明に用いる好ましい重合体は、熱硬化性ポリウレタンである。従って、組成物は、反応しポリウレタンを形成する有機ポリイソシアネートや有機物の両方を含む。通常、有機材料は、ポリオールまたはポリエステルである。しかしながら、特に好ましい形態では、ポリイソシアネート反応性有機材料は、ヒマシ油またはロジン酸ヒマシ油である。さらに好ましい形態では、組成物は、さらにパイン油を含む。これは、硬化遅延剤としてはたらく。この形態では、既知の組成物でよく遭遇するへこみおよびクラッキングを発生することのない速硬化組成物を提供する。そのような組成物は、例えば、日本国特許第2,898,044号に記載されている。
【0011】
本発明の特に好ましい形態では、床基材に:
(a) 水硬性セメント;
(b) 充填剤;
(c) 有機ポリイソシアネート;
(d) ロジン酸ヒマシ油またはヒマシ油;および
(e) 水;
を含む無溶剤組成物を床基材に施工し、組成物を硬化させることにより、上述の所望の電気特性を有する床材とその方法を提供する。
【0012】
本発明は、本発明の方法によって製造される、上記定義した良好な電気特性を有する床表面もまた提供する。本明細書で用いられる限りにおいて、用語「有機溶媒を含まない」なる用語は、ポリウレタン製品の処方中に従来用いられる種類の揮発性有機溶剤(典型的には、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸エトキシエチルおよびそのようなエステル;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、4−メチル−4−メトキシペンタン−2−オンおよびそのようなケトン;トルエン、キシレンおよびそのような芳香族炭化水素;または塩素化炭化水素)が組成物を延展可能な状態に処方するために添加する必要がないことを意味する。しかしながら、本発明の組成物は、一般的には、少量の天然に由来するテルピネオール、すなわち、パイン油の炭化水素成分、任意の成分(さらに後述する)の炭化水素成分に関連する炭化水素を含んでもよい。一般的には、これらの炭化水素は、上述の揮発性ポリウレタン溶媒の使用に伴う欠点を全く有さない。
【0013】
本明細書で用いられる限りにおいて、「水硬性セメント」なる用語は、水との混合物で用いられ、その後、存在する水を消費して起こる物理的または化学的変化の結果、硬化または固まる構造材料の類を示す一般的な意味で用いられる。ポルトランド(Portland)セメントと同様、この用語は、:
1.高度のアルミナ含量を有することを特徴とする速硬化セメント
2.高い割合のケイ酸二カルシウムおよびテトラカルシウムアルミノフェライトおよび、低い割合のケイ酸三カルシウムおよびアルミン酸三カルシウム
3.異常に高い割合のケイ酸三カルシウムおよびケイ酸二カルシウムおよび異常に低い割合の
アルミン酸三カルシウムおよびテトラカルシウムアルミノフェライトを特徴とする、耐硫酸塩セメント
4.ポルトランドセメントクリンカーおよび粒状スラグの混合物を特徴とするポルトランド高炉セメント
【0014】
5.ポルトランドセメントと1種または2種以上の以下の:消石灰、粒状スラグ、微粉石灰石、コロイドクレー、珪藻土または他のシリカ、ステアリン酸カルシウムおよびパラフィンの細粒形態との混合物であることを特徴とする、メーソンリーセメント
6.純粋なまたは純粋でない形態の、粘土質材料を含むか含まない、カルシウム酸化物であることを特徴とする、石灰セメント
7.5〜10%の焼き石膏を石灰に添加することを特徴とする、セレナイトセメント(selenitic cement)
8.ポゾラン、トラス珪藻土、軽石、石灰華、サントリン土(santorin earth)または石灰モルタルを有する粒状スラグの混合物であることを特徴とするポゾランセメント
3.硫酸カルシウムの水和によるものであり、焼き石膏を含むことを特徴とする、硫酸カルシウムセメントを含む。
【0015】
好ましい水硬性セメントはポルトランドセメントである。白ポルトランドセメントを用いてもまたよく、特定の成分から製造した鉄および炭素の低含有量のセメントである。 ここでの組成物の成分(b)として用いられる充填剤の例として、低クレイ含有量の砂および砂利などのケイ酸含有充填剤、好ましくは、洗浄され、直径0.076 mm〜4cmの範囲の粒径を有するものを挙げることができる。これらの材料は、天然の状態であってもよく、または人工的に着色してあってもよく、例えば、染料または顔料を用いてもよい。透明、半透明または不透明、無色または有色のガラスもまた適する。
【0016】
用いることのできる他の充填剤は、上述のケイ酸含有充填剤と比較して低密度の材料であり、例えば、無色または大部分着色したチップ、ターニング、テープまたは粒の形態のプラスチックであり、射出成形品のトリミングまたは他の成形プロセスから生じるプラスチックが便利である。適するプラスチック材料は、熱可塑性または熱硬化性重合体および共重合体であり、例えば、ナイロン重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、尿素/ホルムアルデヒド重合体、フェノール/ホルムアルデヒド重合体、メラミン/ホルムアルデヒド重合体、アセタール重合体および共重合体、アクリル重合体および共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンターポリマー、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどである。発泡プラスチックを用いてもよく、例えば、ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、木屑、木材チップ、軽石、バーミキュライトおよび天然由来または合成由来の繊維材料、例えば、ガラス繊維、綿、ウール、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維およびポリアクリロニトリル繊維などである。
【0017】
そのような低密度の充填剤を用いることによって、本発明の組成物から生じる硬化製品の全体密度は、大きく減少する。細かい粒径(75ミクロン〜1ミクロンの範囲を意味する)を有する充填剤もまた用いてもよく、そのような材料の例としては、発電所のフライアッシュ、膨張クレイ、発泡スラグ、雲母、チョーク、タルク、カオリンなどのクレイ、バライト粉、シリカ、および粉末スレートなどが挙げられ、研磨、ミリング、微粉化または他の適する手段で所望の細分まで粒度を下げて使用される。
【0018】
有機ポリイソシアネート成分(c)は、単純なポリイソシアネートあるいは過剰の単純なポリイソシアネートと水酸基末端ポリエーテル、ポリエステルまたはポリエステルアミドとの反応によって得られる、イソシアネート末端プレポリマーであってもよい。ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4- および 2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;トリレン- 2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート, m-およびp-フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ジフェニル-4,4'-ジイソシアネート、4,4'-ジイソシアナート-3,3'-ジメチルジフェニルなどの芳香族ジイソシアネート; ジフェニルエーテルジイソシアネート;およびジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネートおよび3-イソシアナートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネートをあげることができる。用いることができるトリイソシアネートは、2,4,6-トリイソシアナートトルエンおよびトリイソシアナートジフェニルエーテルなどの芳香族トリイソシアネートを含む。
【0019】
他の適する有機ポリイソシアネートの例は、過剰のジイソシアネートとエチレングリコール、 1,4- 1,3- および 2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよび上記ポリオールとエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドとの低分子量反応生成物などの単純な多価アルコールとの反応生成物が含まれる。ウレテジオン(uretedione)二量体およびジイソシアネートのイソシアヌレート重合体、例えば、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネートおよびそれらの混合物およびポリイソシアネートと水の反応によって得られるビウレットポリイソシアネートを用いてもよい。
【0020】
ポリイソシアネートの混合物を用いてもよく、酸条件下でアニリンおよびオルト−トルイジンのような芳香族アミンとホルムアルデヒドを反応することによって得られる混合ポリアミンをホスゲン化することによって得られる混合物を含む。後者のポリイソシアネート混合物の例は、粗MDIとして知られており、塩酸の存在下、ホルムアルデヒドをアニリンと反応することによって得られる混合ポリアミンをホスゲン化することによって得られ、それらの異性体および2以上のイソシアネート基を含むメチレン架橋ポリフェニルポリイソシアネートの混合物中にジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネートを含むものである。プレポリマーの製造の際に使用するのに適する水酸基末端ポリエステルおよびポリエステルアミドの例は(所望に応じてポリエステルおよびポリエステルアミドの混合物を用いてもよい) 、カルボン酸、グリコールおよび必要であれば、少ない割合のジアミンまたはアミノアルコールから既知の方法によって得られるものである。
【0021】
適するジカルボン酸は、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸およびこれらの混合物を含む。二価アルコールの例は、エチレングリコール、1:2-プロピレングリコール、1:3-ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコールおよび2:2-ジメチルトリメチレングリコールを含む。
【0022】
適するジアミンまたはアミノ−アルコールは、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、モノ−エタノールアミンおよびフェニレンジアミンを含む。少量の割合のグリセロールまたはトリメチロールプロパンなどの多価アルコールを用いてもまたよく、その場合、分枝ポリエステルおよびポリエステルアミドが得られる。プレポリマーを形成する上記定義した有機ポリイソシアネートの過剰量と反応することができる水酸基末端ポリエーテルの例として、例えば、エチレンオキサド、エピクロロヒドリン、1:2-プロピレンオキサイド、1:2-ブチレンオキサイドおよび2:3-ブチレンオキサイドなどの1:2-アルキレンオキサイド;オキシシクロブタンおよび置換オキシシクロブタン;およびテトラヒドロフランなどの環状オキサイドの重合体および共重合体を挙げることができる。塩基性触媒および水、グリコールまたは第1級モノアミンの存在下、アルキレンオキサイドを重合することによって得られるポリエーテルを挙げることができる。そのようなポリエーテルの混合物を用いてもよい。本発明の組成物に用いることができる他のプレポリマーは、過剰の有機ポリイソシアネート、例えば、上記定義した1種または2種以上の有機ポリイソシアネート、任意に上記定義したポリエステル、ポリエステルアミドおよびポリエーテルなどのイソシアネート反応性基を含む有機化合物とイソシアネート反応性基を含むコールタールピッチとを反応させることによって得られるものである。
【0023】
本発明に用いることができるロジン酸ヒマシ油は、周期律表のIIa族の金属のロジン酸塩のいずれかの樹脂とともにヒマシ油を加熱することによって得ることができる。; またはロジンと以下の化合物の縮合生成物である。:
(i)少なくとも1種の多価アルコール; または
(ii) 少なくとも1種の多価アルコールおよび少なくとも1種の任意に置換されたフェノール/ホルムアルデヒドレゾール樹脂;または
(iii) 少なくとも1種の多価アルコールおよび少なくとも1種の不飽和のジカルボン酸またはそれらの無水物である。
【0024】
ヒマシ油と反応することができるロジン酸塩の例は、ロジン酸カルシウムおよびロジン酸バリウムである。
ロジンと、単独に、または任意に置換されたフェノール/ホルムアルデヒドレゾール樹脂またはα、β−不飽和ジカルボン酸またはそれらの無水物と共に縮合することができる多価アルコールの例は、グリセロール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンおよびソルビトールである。
【0025】
レゾール樹脂とは1モルのフェノールと少なくとも1モルのホルムアルデヒドとのアルカリ触媒反応生成物を意味する。最も通常用いられ、レゾール樹脂の生成に用いられる好ましいフェノールは、フェノールそれ自体であるが、他のフェノールおよびアルキル置換フェノール、例えば、一般的に用いられるp-ブチルフェノール、p-オクチルフェノールおよびp-アルキル置換フェノールである。
α、β−不飽和ジカルボン酸およびそれらの無水物の例は、上記定義した多価アルコールとともにロジンと縮合することができるものであるが、マレイン酸、フマル酸および無水マレイン酸である。
【0026】
ヒマシ油および樹脂を99: 1〜1: 99重量部の割合で用いてもよく、好ましい範囲は、95: 5〜20: 80重量部である。典型的には、ヒマシ油と上記定義した樹脂の反応は、高い温度、例えば、235〜240°Cで、0.5〜2時間で行われる。
有機溶媒を含まない本発明のセメント組成物に必要な成分である、水硬性セメント;充填剤;水; ポリイソシアネート;およびロジン酸ヒマシ油またはヒマシ油に加えて、本発明の組成物は、さらに他の成分を含む。
【0027】
使用することができるそのような成分の一つは、パイン油である。これは、希釈剤であり、組成物の可使時間を延長する効果を有する。用いる際、ロジン酸ヒマシ油および/またはヒマシ油のパイン油に対する一般的に用いられる重量比は、一般的には、25: 1〜1: 5の範囲である。好ましくは、そのような比は、10: 1〜1: 1の間である。パイン油は硬化遅延剤として有効量で存在する。硬化遅延に有効量は、当業者であれば容易に決定することができる。さらに具体的には、パイン油添加の効果は、添加パイン油を含まない類似の組成物の可使時間とパイン油を含む組成物の可使時間とを比較することによって決めることができる。パイン油の硬化遅延に有効量は、パイン油のない可使時間に対して少なくとも25%、組成物の可使時間を延長するのに十分な量とすべきである。好ましくは、硬化遅延に有効量は、組成物の可使時間を少なくとも50%までおよび特に少なくとも100%まで延長するのに十分な量である。
【0028】
組成物の可使時間の所望の延長を達成するために、有機ポリイソシアネートのパイン油に対する重量比は、好ましくは、約20:1より大きいものでなく、例えば、20:1〜2:1である。
さらに使用することができる成分は、少なくとも1種の可塑剤である。技術分野で知られているいずれの材料を用いることができ、典型的な例は、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル化合物、アジピン酸エステル、リン酸エステルおよびセバシン酸エステルである。これらは、典型的には、1:1〜1:0.01のヒマシ油:可塑剤の割合で用いられる。
【0029】
さらに用いることができる任意の成分は、1種または2種以上のロジン酸ヒマシ油またはヒマシ油以外のイソシアネート反応性有機化合物であり、例えば、上述の水酸基末端ポリエーテル、ポリエステル、またはポリエステルアミドのいずれかであり、そしてまた2〜6 個の炭素原子および2〜4個の水酸基を含む単純な多価アルコールおよびそれらとエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドとの低分子量の反応生成物が、イソシアネート末端プレポリマーの製造に適するものである。
【0030】
さらに、用いることのできる他のイソシアネート反応性有機化合物は、モノエタノールアミンなどのアミノアルコール、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、 m-およびp-フェニレンジアミンおよび2,4- および 2,6-ジアミノトルエンなどのポリアミン、イソシアネート反応性基も含むエポキシ樹脂、例えば、ジフェニロールプロパン(diphenylolpropane)およびエピクロロヒドリン間の反応によって得られる水酸基含有生成物、乾性油および非乾性油改質アルキド樹脂、ジイソシアネートと乾性油のアルコール分解生成物との反応生成物であるウレタン油、例えば、アマニ油からのモノ-またはジグリセリド、無水フタル酸の一部がジイソシアネートによって置換されて製造されるアルキド樹脂であるウレタンアルキドなどを含む。上記定義した他のイソシアネート反応性有機化合物は、一部ロジン酸ヒマシ油またはヒマシ油に置き換えてもよいが、イソシアネート反応性成分の主な重量割合は、ロジン酸ヒマシ油および/またはヒマシ油を含むべきである。
【0031】
連鎖停止成分もまた用いることができる。パイン油が存在する場合、この機能を果たし、連鎖停止成分の主要重量割合含むことができる。しかしながら、他の連鎖停止成分としては、一価アルコール、モノカルボン酸を含むことができ、少なくとも1種のエポキシ基を含む成分をさらに用いることができる。組成物に用いることができる一価アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、イソオクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、セタノール、アリルアルコールおよびプロパギルアルコールなどの不飽和アルコール、例えば、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドと一価アルコールとの相互作用によって得られるポリエーテルアルコールなどが挙げられる。
【0032】
組成物に用いることができるモノカルボン酸は、例えば、上述の1または2以上の炭素原子を含む一価アルコールのいずれを酸化することによって得られる酸、以下に記載の油脂のいずれから誘導される混合脂肪酸およびエレオステアリン酸、リノレン酸、リノール酸、オレイン酸およびステアリン酸もまた含む。1分子当たり少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物の例として、例えば、菜種油、タバコ実、大豆、ベニバナ、ヒマワリ実、ブドウ実、ニガー種子、ケシの実、麻の実、ククイノキ、ゴムの実、アマニ油、荏の油、スチリンギア(stillingia)、チア(chia)、コロホール(corophor)、アブラギリ、オイチシカ、日本桐(Japanese wood)、ポヨク(poyok)、ソフトランバン(soft lumbang)、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、トールオイルおよび魚油から誘導されたエポキシ化油を挙げることができる。
【0033】
鹸化によって上述の油脂から得られる混合脂肪酸をはじめに一価アルコール、ジオールまたは機能性の高められたポリオールとでエステル化し、それによって得られた混合エステルをエポキシ化することによって得られる生成物を用いることができる。本発明の組成物に用いることができるエポキシ基を含む化合物のさらなる例としては、ジフェニロールプロパン(diphenylolpropane)およびエピクロロヒドリンから誘導されるビスエポキシ化合物を挙げることができ、同様に少なくとも1種のエポキシシクロヘキサンまたはエポキシシクロペンタン基を含む。さらに用いることのできるエポキシ化合物は、商業的に入手可能な製品「カルデュラ(Cardura )E」、合成樹脂「ヴェルサチック(Versatic) 911」のグリシジルエステルである(「カルデュラ」および「ヴェルサチック」は登録商標)。本発明の組成物もまたフタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリトリル、リン酸トリ−(2−クロロエチル)および「セレクロール(Cereclor)」(登録商標)の名で売られている塩素化炭化水素などの可塑剤を有効量含んでもよい。
【0034】
所望に応じて、本発明の組成物は、ビチューメン(原油の蒸留の残留物を意味し、本質的には本来脂肪族であり、実質的にはイソシアネート反応性基を含まないものである)もまた含んでもよい。 コールタールピッチもまた組成物に添加してもよい。
【0035】
一般的には、ポリイソシアネートおよび水が本発明の組成物とともに存在するにもかかわらず、セメントが十分な量存在しており、二酸化炭素を吸収するのに十分な塩基性であり、イソシアネートが水と反応する際遊離するため、発泡しない。発泡する傾向を有する組成物の場合、周期律表のIからIV族から選択される金属の塩基性化合物などの消泡剤を有効量、組成物に導入することによってこの傾向は最小限とすることができる。このような塩基性化合物は、金属の酸化物、水酸化物、塩基性塩、複合塩、または複塩を含んでもよく、その例として、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カドミウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ナトリウム、水酸化鉛および塩基性酢酸鉛を挙げることができる。用いることのできる他の消泡剤は、ポリ(シロキサン)、ポリ(アルキルシロキサン)およびポリ(ジアルキルシロキサン)などのシロキサンを含む。
【0036】
組成物は、適するのであれば、イソシアネート基および水酸基間の反応速度を増進するものとして知られている促進剤化合物を有効量含んでもよい。適する促進剤化合物は、例えば、有機金属化合物、金属塩および第3アミンを含み、その具体例としては、ジブチルスズジラウレート、チタン酸テトラブチル、オクタン酸亜鉛(zinc octoate)、ナフテン酸亜鉛、オクタン酸スズ、塩化第二スズ、塩化第二鉄、オクタン酸鉛、オレイン酸カリウム、コバルト2−エチルヘキソエート(ethylhexoate)、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N-エチルモルホリン、l,4-ジアザビシクロ-2,2,2-オクタン、4-ジメチルアミノピリジン、オキシプロピレートトリエタノールアミン、β-ジエチルアミノエタノールおよびN,N,N',N',-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンを含む。
【0037】
本発明に用いられる組成物中の任意であるが、好ましい成分は、炭素繊維である。繊維は、好ましくは、長さ0.1〜30mm、厚み5〜100μmのチョップド繊維である。炭素繊維が存在する場合、組成物は、そのような繊維を0.01〜5重量%で含むべきである。
さらに、本発明の組成物は、テラゾ様装飾効果を有する成分を形成することもでき、(1)上述の組成物に粗い粒子の形態の充填剤(シリカまたは他のもの)を導入し、組成物を延展後、その表面に研磨またはさもなければ充填剤の粒子を露出させるように処理するか、 または (2) プラスチックまたは他の材料の粗い粒子を基板に始めに結合し、結合粒子間を上記組成物で充填し、材料粒子を露出させるように表面を研磨することによって行う。
【0038】
そのようなテラゾ効果用途に用いる粒子は、熱可塑性または熱硬化性重合体または共重合体の大部分着色されたプラスチック断片の形態であってもよく、例えば、ナイロン重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、尿素/ホルムアルデヒド重合体、フェノール/ホルムアルデヒド重合体、メラミン/ホルムアルデヒド重合体、アセタール重合体および共重合体、アクリル重合体および共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレンターポリマー、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどである。このような大部分着色されたプラスチックは、チップまたはターニングの形態で用いてもよく、射出成形品のトリミングまたは他の成形プロセスから生じるプラスチック廃棄物が、便利である。用いることのできる他のプラスチックは、ガラスおよび、石の断片および石の凝集体から選択されるシリカを基本とする材料を含む。ガラス断片は、無色でも有色でもよい。石は、断片であれ凝集体であれ、天然色で用いてもよく、または例えば、表面に染料または顔料を施し人工的に着色されたものを用いてもよい。これらの人工的に着色された材料を用いることによって得られる組成物は、軽微な研磨を施すことにより、表面の着色は、基本的には損なわれないままである。無色のプラスチック断片は、粒子としてもまた用いてもよい。粗い粒子は、約250ミクロン以上の粒径を有する材料であることを意味する。
【0039】
本発明の組成物を含む異なる成分の割合は、選択する具体的な成分(および添加剤)に応じて、広い範囲にわたって異なっていてもよい。一般的には、水硬性セメント100重量部につき5〜500重量部の水、10〜10000重量部の充填剤、5〜5000重量部のロジン酸ヒマシ油またはヒマシ油、5〜5000重量部のポリイソシアネートおよび存在するのであれば、1〜100重量部のパイン油である。好ましくは、最も多い組み合わせおよび使用は、セメント100重量部につき、10〜100重量部の水、25〜5000重量部の充填剤、 2〜25重量部のパイン油 (存在するのであれば)、10〜250重量部の ロジン酸ヒマシ油および/またはヒマシ油、および 10〜500重量部のイソシアネートである。本発明の組成物は、典型的には、セメントミキサー、強制パドリングミキサーおよびそのようなものなどの当業者に公知の手段を用いて、満足のいく混合物が得られるまで、すべての成分を始めに混合することで用いる。混合組成物は、典型的にセメント組成物の用途に用いるあらゆる手段、例えば、トロウェリング(trowelling)、注ぎ込み、スプレーおよび適する方法によって表面を形成するのに用いてもよい。
【0040】
本発明はさらに、以下の限定することのない例を用いて述べるが、「部」とあるのはすべて重量部である。
例1〜2
以下の組成物は、トロウェリングによってコンクリート基材に床を提供するのに用いられる。以下に記載の成分は、記載の成分を混合し、用いる直前に混合することによって製造される。
【0041】
【表1】

【0042】
例3
3種の商業的に入手可能な組成物と例1の組成物の電気特性の比較
商業的に入手可能な組成物は、MBT (スイス)からのMASTERTOP (商標) 1235、MASTERTOP 1225およびMASTERTOP 1221である。すべて3つともフローリング産業で広く用いられる2成分の水性材料である。セメントを含むものはなく、すべて炭素繊維を含む。
結果を以下の表に示す。
【0043】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
25,000〜1×109オームの2地点間抵抗および最大100Vの人体の発生電位を有する床を提供する方法であって、セメントおよび床用に適する重合体フィルム形成組成物の混合物を含む組成物を床基材へ施工することを含む、前記方法。
【請求項2】
組成物が水溶性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重合体フィルム形成組成物がポリウレタンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
床基材に:
(a) 水硬性セメント;
(b) 充填剤;
(c) 有機ポリイソシアネート;
(d) ロジン酸ヒマシ油またはヒマシ油;および
(e) 水;
を含む基本的に無溶剤組成物を床基材に施工し、組成物を硬化させることによって床が提供される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
25,000〜1×109オームの2地点間抵抗および最大100Vの人体の発生電位(BVG)を有する床材であって、該床材が、分散したセメント粒子であるポリマーマトリックスを含む、前記床材。

【公開番号】特開2010−31643(P2010−31643A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255829(P2009−255829)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【分割の表示】特願2003−172497(P2003−172497)の分割
【原出願日】平成15年6月17日(2003.6.17)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】