説明

電気光学装置およびその製造方法、電子機器

【課題】駆動用半導体チップの実装を歩留まりよく行える電気光学装置、電気光学装置の製造方法、電子機器を提供すること。
【解決手段】有機EL装置100は、一対の基板を有する電気光学パネルとしての有機ELパネル110と、一対の基板のうち少なくとも一方の基板10の端子部10aに実装された駆動用半導体チップとしてのドライバーIC120と、少なくとも一方が透明な2枚の保護フィルム41,44と、を備え、有機ELパネル110は、2枚の保護フィルム41,44に挟まれて封着されており、2枚の保護フィルム41,44のうち端子部10aを覆う保護フィルム41には、ドライバーIC120を露出させる開口部42が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型な電気光学装置およびその製造方法、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記薄型な電気光学装置として、厚みが0.15mmよりも薄いガラス基板を用いた液晶パネルと、フレキシブルプリント基板と、コネクターと、これらを挟み込んで一体に保持する保護シートとを備えた液晶表示装置が開示されている(特許文献1)。
上記液晶表示装置は、駆動回路を備えた外部装置とコネクターとを接続することにより駆動される。
【0003】
また、シリコンウェハを研磨して、厚みを100μm以下としたフレキシブルドライバーICをフレキシブル表示パネルに直接実装するか、または、フレキシブルプリント回路(FPC)を介して実装することが開示されている(特許文献2)。
上記フレキシブル表示パネルとして、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、無機または有機ELディスプレイ、電気泳動ディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイなどが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−337322号公報
【特許文献2】特開2008−165219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ドライバーICを電気的にフレキシブル表示パネルに実装するという観点では、FPCを介して実装すると出力側のインピーダンスが上昇して出力信号の減衰を招き、適正な表示状態が得られないおそれがある。それゆえに、フレキシブル表示パネルに直接実装することが好ましい。
しかしながら、上記フレキシブルドライバーICを特許文献1の液晶表示装置に適用して、液晶パネルの端子部に直接実装する所謂COG(Chip On Glass)実装を行う場合、液晶パネルが反っていると位置精度よく実装ができない。あるいは、液晶パネルが薄いために実装工程におけるハンドリングが難しく、例えば破損してしまうなどの課題がある。
また、COG実装後に、保護シートで挟み込んで一体化した場合、ドライバーICを流れる電流によって生ずる発熱を放熱させることが困難であるという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例の電気光学装置は、一対の基板を有する電気光学パネルと、前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板の端子部に実装された駆動用半導体チップと、少なくとも一方が透明な2枚の保護フィルムと、を備え、前記電気光学パネルは、前記2枚の保護フィルムに挟まれて封着されており、前記2枚の保護フィルムのうち前記端子部を覆う保護フィルムには、前記駆動用半導体チップを露出させる開口部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、電気光学パネルを保護フィルムで封着した後でも、一方の保護フィルムの開口部に露出した端子部に駆動用半導体チップを実装できる構造となっている。それゆえに、2枚の保護フィルムにより封着され取り扱い性が向上した電気光学パネルの端子部に、位置精度よく駆動用半導体チップを実装することが可能となる。
また、駆動用半導体チップと一緒に電気光学パネルが保護フィルムによって封着される場合に比べて、実装された駆動用半導体チップは開口部において露出しているため、電気光学装置を駆動することにより駆動用半導体チップが発熱したとしても、容易に放熱が可能となる。
【0009】
[適用例2]上記適用例の電気光学装置において、前記電気光学パネルは可撓性を有し、前記駆動用半導体チップは可撓性を有する程度に厚みが薄型化されていることを特徴とする。
この構成によれば、電気光学装置が曲げられても、電気光学パネルが曲がり、それに追随して駆動用半導体チップも曲がるので、屈曲によって電気光学パネルや駆動用半導体チップが破損し難い電気光学装置を提供できる。言い換えれば、フレキシブルな電気光学装置を提供できる。
【0010】
[適用例3]上記適用例の電気光学装置において、前記開口部は、前記駆動用半導体チップを囲む大きさで前記保護フィルムに設けられ、前記開口部の内壁と前記駆動用半導体チップの側壁との間に前記駆動用半導体チップの能動面側を封着するモールド材が充填されていることが好ましい。
この構成によれば、電気光学パネルの端子部との間で駆動用半導体チップの接合部分がモールドされ、高い接続信頼性を有する電気光学装置を提供できる。
【0011】
[適用例4]上記適用例の電気光学装置において、前記モールド材は、硬化後に弾性を有する樹脂材料が用いられていることが好ましい。
この構成によれば、電気光学装置が曲げられても、駆動用半導体チップの接合部分に充填されたモールド材が弾力的に変化して隙間が生ずることなく封着される。すなわち、より高い接続信頼性が得られる。
【0012】
[適用例5]上記適用例の電気光学装置において、前記端子部を有する前記一方の基板がガラス基板であって、前記開口部の加工時に生じた縁部のカエリが外側に向くように前記端子部に対して前記開口部が設けられた前記保護フィルムが配置されていることが好ましい。
この構成によれば、2枚の保護フィルムにより電気光学パネルを封着しても、開口部のカエリが直接にガラス基板に触れて押圧しないので、カエリによるガラス基板の損傷や破壊を防ぐことができる。
【0013】
[適用例6]上記適用例の電気光学装置において、前記開口部において露出した前記駆動用半導体チップの表面の少なくとも一部を覆うように放熱部材が設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、電気光学装置を駆動することにより駆動用半導体チップが発熱したとしても、放熱部材を経由してより効率的に放熱することができる。
【0014】
[適用例7]上記適用例の電気光学装置において、前記電気光学パネルが有機EL素子を備えた有機ELパネルであることを特徴とする。
この構成によれば、有機ELパネルに位置精度よく駆動用半導体チップが実装され、且つ駆動用半導体チップの発熱を放熱可能な構造を有する電気光学装置を提供できる。
【0015】
[適用例8]本適用例の電気光学装置の製造方法は、少なくとも一方が透明な2枚の保護フィルムに挟まれた電気光学パネルを有する電気光学装置の製造方法であって、前記電気光学パネルは少なくとも一方の基板に端子部が設けられた一対の基板を有し、前記端子部に対応した位置で開口した開口部を有する一方の保護フィルムと他方の保護フィルムとを用いて前記電気光学パネルを挟んで封着する封着工程と、前記開口部内に露出した前記端子部に駆動用半導体チップを実装する実装工程と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
この方法によれば、2枚の保護フィルムで電気光学パネルを封着した後に、一方の保護フィルムの開口部に露出した端子部に駆動用半導体チップを実装する。したがって、電気光学パネルの取り扱いが容易となると共に、位置精度よく駆動用半導体チップを実装することができる。また、実装された駆動用半導体チップは開口部において露出するので、電気光学装置の駆動に伴う駆動用半導体チップの発熱を容易に放熱できる。すなわち、電気光学パネルに対して駆動用半導体チップが位置精度よく実装されると共に放熱性が改善された電気光学装置を歩留まりよく製造することができる。
【0017】
[適用例9]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記開口部は、前記駆動用半導体チップを囲む大きさで前記一方の保護フィルムに設けられ、前記開口部の内壁と実装された前記駆動用半導体チップの側壁との間に前記駆動用半導体チップの能動面側を封着するモールド材を塗布して硬化させるモールド工程を有することが好ましい。
この方法によれば、保護フィルムの開口部において駆動用半導体チップが端子部に対して封着されるので、高い接続信頼性を有する電気光学装置を製造することができる。
【0018】
[適用例10]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記モールド材は、硬化後に弾性を有する樹脂材料が用いられていることが好ましい。
この方法によれば、電気光学装置に曲げなどの応力が加えられてもモールド材が弾性変形するので、駆動用半導体チップの接合部分に隙間が生じ難くより高い接続信頼性を有する電気光学装置を製造することができる。
【0019】
[適用例11]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、実装された前記駆動用半導体チップをドライエッチングして前記駆動用半導体チップの厚みを薄型化する工程を備えたことを特徴とする。
この方法によれば、駆動用半導体チップを電気光学パネルに実装した後に、ドライエッチングして薄型化するので、薄型化した駆動用半導体チップを実装する場合に比べて、駆動用半導体チップの取り扱い性に優れるため、歩留まりよく実装を可能とする。また、駆動用半導体チップが薄型化されることにより、電気光学装置に曲げなどの応力が加えられても駆動用半導体チップも変形可能となるため、駆動用半導体チップの接合部分に隙間が生じがたくより高い接続信頼性が得られる。
【0020】
[適用例12]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、実装された前記駆動用半導体チップの表面の少なくとも一部を覆うように放熱部材を配置する工程を備えたことを特徴とする。
この方法によれば、電気光学装置を駆動することにより駆動用半導体チップが発熱したとしても、放熱部材を経由してより効率的に放熱することが可能な電気光学装置を製造することができる。
【0021】
[適用例13]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記電気光学パネルが有機EL素子を備えた有機ELパネルであることを特徴とする。
この方法によれば、有機ELパネルに位置精度よく駆動用半導体チップが実装され、且つ駆動用半導体チップの発熱を放熱可能な構造を有する電気光学装置を製造できる。
【0022】
[適用例14]本適用例の電子機器は、上記適用例の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、駆動用半導体チップの接続信頼性と放熱性とを兼ね備えた高い信頼性品質を有する電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】有機EL装置の構成を示す概略平面図。
【図2】有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図3】有機ELパネルの構造を示す概略断面図。
【図4】図1のA−A'線で切った有機EL装置の概略断面図。
【図5】有機EL装置の製造方法を示すフローチャート。
【図6】(a)および(b)はラミネート工程を示す概略図。
【図7】(a)〜(c)はIC実装工程を示す概略図。
【図8】(a)〜(d)はドライエッチング工程を示す概略図。
【図9】(a)は電子機器の一例としてのディスプレイの概略構成図、(b)は電子機器の一例としての情報携帯端末の概略構成図。
【図10】変形例の開口部の形状を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0025】
(第1実施形態)
<電気光学装置>
本実施形態は、電気光学装置として有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置を例に、図1〜図4を参照して説明する。
図1は有機EL装置の構成を示す概略平面図、図2は有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図、図3は有機ELパネルの構造を示す概略断面図、図4は図1のA−A'線で切った概略断面図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の電気光学装置としての有機EL装置100は、平面視で四角形の有機ELパネル110と、2枚の保護フィルム41,44とを有し、2枚の保護フィルム41,44により有機ELパネル110が挟まれて封着された構造となっている(詳しくは図4参照)。
電気光学パネルとしての有機ELパネル110は、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光色がそれぞれ独立して得られる略矩形状の複数の画素6を有している。同一発光色の画素6が短辺方向に直線的に配列すると共に、短辺方向と交差する長辺方向に異なる発光色の画素6が配列する所謂ストライプ方式の画素配列で構成された発光領域110aを有する。なお、異なる発光色が得られる複数の画素6の配列は、これに限定されるものではない。
【0027】
有機ELパネル110の端子部10aには、駆動用半導体チップとしてのドライバーIC120が複数(2個)平面実装されている。実装されたドライバーIC120は平面視で細長い長方形であり、例えば短辺が1.5mm〜2mm、長辺が15mm〜20mmの長さを有している。2枚の保護フィルム41,44のうち一方の保護フィルム41には、端子部10aに対応する位置において、ドライバーIC120を囲むように同じく平面視で長方形に開口した開口部42が設けられている。すなわち、開口部42においてドライバーIC120が実装され露出している。
【0028】
また、露出したドライバーIC120の表面に重なると共に保護フィルム41の一方の辺部にまで延在するように放熱部材123が設けられている。放熱部材123は、例えば、金属箔などの熱伝導体そのものや熱伝導体が積層された樹脂フィルム等を用いることができる。特に可撓性を有すると共に熱伝導性に優れた材料としては、松下電器産業製のPGSグラファイトシートが好適である。いずれの場合も熱伝導体と少なくともドライバーIC120とを接着層または粘着層を介して貼り合わせる構成とする。
【0029】
端子部10aにはドライバーIC120の他にも、保護フィルム41の内側面に設けられた配線部43が2枚の保護フィルム41,44により有機ELパネル110を封着することにより、電気的に接続している。配線部43は、保護フィルム41の内側面に成膜された例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜をパターニングすることにより形成されている。
【0030】
図2に示すように、有機ELパネル110は、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor、以下、TFTと呼ぶ)を用いたアクティブマトリックス型の有機ELパネルである。有機ELパネル110は、互いに絶縁された状態で交差する走査線16およびデータ線17と、データ線17に沿って延在する電源線18とを備えている。
【0031】
これら走査線16とデータ線17とに囲まれた領域に画素6が配置されている。画素6は、走査線16の延在方向とデータ線17の延在方向とに沿ってマトリックス状に配置されている。
【0032】
各画素6には、陽極24、有機機能層25、陰極26によって構成された有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)20が設けられている。また、有機EL素子20を駆動制御する回路部としてのスイッチング用TFT11と、駆動用TFT12と、保持容量13とが設けられている。有機機能層25は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層が順に積層されたものであり、陽極24から注入された正孔と陰極26から注入された電子とが発光層において再結合し、励起して発光する。
有機機能層25の構成は、これに限定されず、より効率的に発光を促すための中間層や電子注入層を含んでいてもよく、公知の構成を採用することができる。
【0033】
データ線17は、シフトレジスター、レベルシフター、ビデオライン、およびアナログスイッチを備えたデータ線駆動回路14に接続されている。また、走査線16は、シフトレジスターおよびレベルシフターを備えた走査線駆動回路15に接続されている。
【0034】
走査線駆動回路15から走査線16を経由してスイッチング用TFT11に走査信号が送出されオン状態になると、データ線駆動回路14からデータ線17を介して供給される画像信号が保持容量13に保持され、保持容量13の状態に応じて駆動用TFT12のオン・オフ状態が決まる。そして、陽極24が駆動用TFT12を介して電源線18に電気的に接続したとき(すなわちオン状態となったとき)、電源線18から陽極24に駆動電流が流れ、さらに有機機能層25を通じて陰極26に電流が流れる。有機機能層25の発光層は、陽極24と陰極26との間に流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0035】
前述した有機ELパネル110を駆動するドライバーIC120は、上記データ線駆動回路14および上記走査線駆動回路15のうち少なくとも一方と電源線18へ電力を供給できる構成を有するものである。例えば、走査線駆動回路15は、有機ELパネル110の発光領域110aの短辺に沿った周辺領域に回路部の一部として形成することも可能である。その場合には、ドライバーIC120は、上記データ線駆動回路14の構成を含むものとすればよい。
【0036】
図3に示すように、有機ELパネル110は、複数の有機EL素子20が設けられた一方の基板としての素子基板10と、複数の有機EL素子20を封止するように素子基板10に対向配置された他方の基板としての封止基板30とを有する。
素子基板10上には、上述した回路部10dと、回路部10dを覆う平坦化層21とが設けられている。有機EL素子20は、平坦化層21上において隔壁22により区画された領域に配置された反射層23上に設けられている。また、複数の有機EL素子20に亘る共通電極として配置された陰極26と平坦化層21とを覆うように、電極保護層27と、有機緩衝層28と、ガスバリア層29とが設けられている。
本実施形態における有機EL素子20は、有機機能層25において白色発光が得られるものである。
封止基板30は、画素6の配置に対応して設けられた3色の着色層32R,32G,32Bにより構成されるカラーフィルター32を有している。また、各着色層32R,32G,32Bを区画する遮光層31を有している。
素子基板10と封止基板30とは、封止樹脂層34を介して対向配置され、シール材33により封止されると共に接合されている。
このような有機ELパネル110は、有機機能層25から発した白色光が反射層23によって反射され、カラーフィルター32を透過して封止基板30側から射出されるトップエミッション型である。
【0037】
素子基板10は、例えば透明な無アルカリガラスからなる基板を用いている。なお、有機ELパネル110がトップエミッション型であることから、素子基板10の材料として、光透過性を有しない例えばシリコンなどの材料を用いることもできる。
【0038】
回路部10dに設けられた駆動用TFT12のドレインに、平坦化層21に設けられたコンタクトホールを介して陽極24が接続されている。
陽極24は、例えば、ITOやIZO(Indium Zinc Oxide;登録商標)等の透明導電膜からなる。
陽極24に平面的に重なるように設けられた反射層23は、光反射性を有する金属材料等からなり、例えばアルミ合金等からなる。
【0039】
なお、有機ELパネル110がトップエミッション型であることから、陽極24の材料は必ずしも光透過性を有しなくてもよい。また、陽極24の材料として光透過性を有せず、光反射性を有する例えばアルミ合金等を用いる場合には、反射層23を省略できる。
【0040】
実質的に画素6(あるいは有機EL素子20)を区画する隔壁22は、例えば遮光性を有するアクリル樹脂等からなる。
【0041】
有機機能層25は、陽極24と隔壁22とを覆うように形成されている。本実施形態では、有機機能層25は、順に積層された正孔注入層と正孔輸送層と発光層と電子輸送層とで構成されている(図3では1層で図示)。正孔注入層は、例えばトリアリールアミン(ATP)多量体で形成され、正孔輸送層は、例えばトリフェニルアミン誘導体(TPD)で形成されている。
【0042】
発光層の発光色は白色である。白色発光材料としては、スチリルアミン系発光材料、アントラセン系ドーパント(青色)、あるいはスチリルアミン系発光材料、ルブレン系ドーパント(黄色)が用いられる。電子輸送層は、例えばアルミニウムキノリノール錯体(Alq3)で形成されている。有機機能層25の各層は、例えば真空蒸着法を用いて順次形成されている。
【0043】
陰極26は、光透過性を有しており、例えばマグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)で形成されている。陰極26の下層に、フッ化リチウム(LiF)等からなる電子注入バッファー層が設けられていてもよい。
【0044】
電極保護層27は、光透過性、密着性、耐水性、ガスバリア性等を考慮して、例えば、珪素酸化物や珪素酸窒化物等の珪素化合物で構成される。また、電極保護層27の厚さは100nm以上が好ましく、隔壁22を被覆することで発生する応力によるクラック発生を防ぐため、厚さの上限は400nm以下とすることが好ましい。電極保護層27は、PVD(物理気相成長法)、CVD(化学気相成長法)、またはイオンプレーティング法等を用いて形成される。
【0045】
電極保護層27上には、有機緩衝層28とガスバリア層29とが積層されている。有機緩衝層28は、熱硬化性のエポキシ樹脂等からなり、例えば、スクリーン印刷法、スリットコート法、インクジェット法等を用いて形成される。有機緩衝層28により、隔壁22の形状が反映された電極保護層27の凹凸部分が緩和される。また、有機緩衝層28は、素子基板10の反りや体積膨張により発生する応力を緩和し、電極保護層27の剥離やガスバリア層29のクラックを防止する機能を有する。有機緩衝層28の厚さは、3μm〜5μm程度が好ましい。
【0046】
ガスバリア層29は、電極保護層27と同様の材料で構成され、外部から有機EL素子20への水分や酸素の浸入を防止する封止部材として機能する。ガスバリア層29は、電極保護層27と同様の方法で形成されている。
【0047】
封止基板30は、素子基板10と同様に例えば透明な無アルカリガラスからなる基板が用いられている。
【0048】
シール材33は、素子基板10と封止基板30との間の非発光領域に配置され、封止基板30の外周に沿って枠状に設けられている。シール材33は、水分透過率が低い材料からなる。シール材33の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂に硬化剤として酸無水物を添加し、促進剤としてシランカップリング剤を添加した高接着性の接着剤を用いることができる。
【0049】
封止樹脂層34は、素子基板10と封止基板30とシール材33とで囲まれた領域に隙間なく充填されるように設けられている。封止樹脂層34は、例えば、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系等の光透光性の高い樹脂からなる。耐熱性や耐水性を考慮すると、エポキシ系樹脂を用いることが好ましい。
【0050】
着色層32R,32G,32Bを区画する遮光層31は、遮光性を有する例えばCr(クロム)等からなる。なお、カラーフィルター32と遮光層31とを覆うように、オーバーコート層が設けられていてもよい。
【0051】
有機ELパネル110は、白色発光が得られる有機EL素子20とこれに対応して配置されたカラーフィルター32とを備えることにより、赤色光を射出する画素6Rと、緑色光を射出する画素6Gと、青色光を射出する画素6Bとを有する(対応する色を区別しない場合には単に画素6とも呼ぶ)。したがって、フルカラー表示またはフルカラー発光が可能な有機ELパネル110が実現されている。
【0052】
本実施形態では、素子基板10および封止基板30の材料として、厚みがおよそ0.3mm〜0.7mmの無アルカリガラスを用い、上記の構成をそれぞれの基板上に形成して接合する。そして、接合後にそれぞれの基板をエッチングや機械的研磨または化学的研磨等により薄くする加工を施している。
【0053】
例えば、素子基板10および封止基板30の厚みは、それぞれ10μm〜100μm程度であり、10μm〜50μmであることが好ましい。接合後の総厚が200μm以下であることが好ましい。これにより、有機ELパネル110に可撓性を持たせている。
【0054】
このように薄型で可撓性を有する有機ELパネル110にドライバーIC120を実装する場合、有機ELパネル110が外部からの衝撃に弱くなり破損し易いので、取り扱いに注意が必要となる。また、反りがあると位置精度よくドライバーIC120を実装することが困難になる。つまり製造における安定した歩留まりの確保が重要な課題となる。
【0055】
そこで、本実施形態では、図4に示すように、有機EL装置100は、有機ELパネル110を2枚の保護フィルム41,44により挟んで封着(ラミネート)した構造を採用している。
【0056】
また、保護フィルム41の端子部10aを覆う位置に開口部42を設けることにより、有機ELパネル110を封着した後にドライバーIC120を実装可能としている。
ドライバーIC120は、能動面120aのバンプ121,122が、異方性導電膜(ACF)125を介して端子部10a上に設けられた接続端子4,5に圧接され電気的に接合されている。バンプ121,122は、能動面120aのランド(電極)上にAu(金)などで形成された接合用電極である。
【0057】
前述したように、ドライバーIC120は平面視で長細い長方形であり、もともと厚みが300μm〜400μmのシリコンウェハを用いて製造されたものである。本実施形態では、ドライバーIC120を実装した後に、厚みを薄くする加工を施し、その厚みをおよそ5μm〜50μmとしている。これにより、有機EL装置100自体に曲げなどの応力が加わった場合にも、ドライバーIC120自体が曲げ応力に追従して変形し、接続上の信頼性品質を確保している。厚みを薄くする加工方法については後述するが、生産性と信頼性品質との調和を考慮すると、厚みを10μm〜30μmとすることが好ましい。
【0058】
また、実装されたドライバーIC120の側面と開口部42の内壁との隙間を埋めるようにモールド材46が充填されている。これにより、能動面120aを封着して接続信頼性を確保している。モールド材46は、硬化後も弾性を有する樹脂材料が用いられており、有機EL装置100の変形にも追従できる。このようなモールド材46としては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(旧GE東芝シリコーン)社製のシリコーン防湿材(TSE3996)が挙げられる。
【0059】
さらに、前述したように有機ELパネル110の駆動時には、ドライバーIC120に相当の電流が流れることになり発熱するため、実装後のドライバーIC120の能動面120aと反対側の表面120bには、放熱部材123が貼り付けられている。
【0060】
有機ELパネル110を封着する2枚の保護フィルム41,44は、外部からの水分やガスなどの浸入を防止する観点からガス透過性が低い透明な樹脂フィルムを用いることが好適である。
樹脂フィルムとしては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などのポリエステル、PES(ポリエーテルスルホン)、PC(ポリカーボネート)、PE(ポリエチレン)などの樹脂からなるフィルムが挙げられる。その厚みは、およそ50μm程度である。
樹脂フィルムの有機ELパネル110を封着する側には接着剤が塗布されている。接着剤は、例えば熱硬化型のエポキシ樹脂を用いることができる。また、粘着性を有する粘着剤としてもよい。粘着剤を用いればリペア性を実現できる。
【0061】
接着剤が相対するように有機ELパネル110を挟んで2つの保護フィルム41,44により封着(ラミネート)する。また、有機EL素子20の防湿性、言い換えれば封止性を確保するために、ラミネート時に有機ELパネル110の周辺に発生するおそれがある空間を封止樹脂45により埋めた構造となっている。すなわち、封止樹脂45と一緒に有機ELパネル110を挟んでラミネートしており、はみ出した封止樹脂45の一部が保護フィルム41,44の端面に盛り上がった状態となっている。
前述したように、保護フィルム41の内側(封着面側)の表面には一方の辺部に至る配線部43が設けられており、有機ELパネル110が封着されたときに端子部10aに設けられた接続端子4と接触して電気的に接続されている。そして、配線部43の一部が露出するように封着されているため、露出した配線部43が外部駆動回路との接続部となっている。
【0062】
また、本実施形態では、保護フィルム41に開口部42を設ける方法としてプレス加工(型抜き加工)を用いている。一度に複数の開口部42を設けることができる点で効率的であるが、開口部42のエッジにカエリ42aが発生する。このような保護フィルム41を用いて有機ELパネル110を封着する際に、カエリ42aが素子基板10の端子部10aに直接触れると、接触した部分に応力が集中してキズやヒビが入ってしまうおそれがある。また、そのキズやヒビからガラス基板である素子基板10が破損するおそれがある。それゆえにカエリ42aが端子部10aに対して外側を向くように保護フィルム41を配置している。
【0063】
なお、有機ELパネル110がトップエミッション型であることから、2枚の保護フィルム41,44のうち発光が取り出される封止基板30側を覆う保護フィルム41は透明性を有することが必要である。その一方で、発光が取り出されない素子基板10側を覆う保護フィルム44は、透明性を有する必要はない。例えばラミネートが可能な金属薄膜などの熱伝導体を備えた不透明な樹脂フィルムでもよい。熱伝導体により有機EL素子20の発光に伴う発熱を放熱することが可能となる。
【0064】
<電気光学装置の製造方法>
次に、電気光学装置としての有機EL装置の製造方法について、図5〜図8を参照して説明する。図5は有機EL装置の製造方法を示すフローチャート、図6(a)および(b)はラミネート工程を示す概略図、図7は(a)〜(c)はIC実装工程を示す概略図、図8(a)〜(d)はドライエッチング工程を示す概略図である。
【0065】
図5に示すように、本実施形態の有機EL装置100の製造方法は、ラミネート工程(ステップS1)と、IC実装工程(ステップS2)と、モールド工程(ステップS3)と、ドライエッチング工程(ステップS4)と、放熱部材装着工程(ステップS5)とを備えている。有機ELパネル110を製造する工程は、公知の方法を適用することができるので、説明を省略する。
【0066】
ステップS1のラミネート工程では、図6(a)に示すように各部材を重ね合わせて準備体とし、ラミネート装置にセットする。詳しくは、保護フィルム44上に、有機ELパネル110と、保護フィルム41とを、この順番で重ね合わせる。なお、図6(a)では省略しているが、各部材の重ね合わせは平面的な位置合わせもなされている。この工程は、通常環境下で行ってもよいが、封着性を考慮して減圧環境下で行う。なお、図6(a)では、ラミネート装置の加圧ローラー51,52のみを図示している。ラミネート装置は、内部環境を所望の気圧環境に設定可能なチャンバーを有している。
【0067】
準備体がセットされたラミネート装置のチャンバー内を減圧する。これにより、準備体内部の空気(気泡)が除去(脱泡)される。
加圧ローラー51,52は、熱伝導性のエラストマーから構成されたローラー面を有し、80℃〜120℃の温度に熱せられる。
図6(a)の矢印で示す方向に、準備体における有機ELパネル110の端子部10aの反対側の一辺側から、一対の加圧ローラー51,52の間に準備体が挿入されて、ラミネート(封着)が行われる。加圧ローラー51,52に挟持された部分では、熱と圧力とによって有機ELパネル110と保護フィルム41,44とが相互に接着される。また、保護フィルム41,44同士も接着される。これによって有機ELパネル110と保護フィルム41,44とが一体化される。
準備体の一辺側から他端側に向かってラミネートが行われるため、各部材に気泡(空気)が残っていたとしても、気泡は他端側に押し出されることになる。
また、前述したようにラミネート後に空間が発生し易い有機ELパネル110の4辺に沿った部分および端子部10aには、封止樹脂45が予め塗布されている。したがって、上記空間を埋めた後の余分な封止樹脂45も保護フィルム41,44の端部へと押し出される。そして、図6(b)に示すように、ラミネートされた有機EL装置100が加圧ローラー51,52間から押し出されてラミネートが完了する。
【0068】
ラミネートされた有機EL装置100における残留応力を取り除くためにアニーリング処理を行うことが望ましい。アニーリング処理は、引き続き減圧環境で行っても良いし、通常環境下で行っても良い。特に、本実施形態では、図6(b)に示すように接着面41a,44aに接着剤が塗布された保護フィルム41,44を用いたが、保護フィルム41,44として架橋成分を含んだ熱溶着タイプの樹脂フィルムを用いる場合には、約100℃でアニーリング処理し、架橋を完全なものとすることが好ましい。
ラミネートに用いられるラミネート装置は、一対の加圧ローラー51,52を備えたロールラミネート方式に限定されるものではない。例えば、1枚の板状加熱板(ホットプレート)上に準備体をセットし、変形するゴムシートを気圧差により当該準備体に押し当てて、加熱および加圧するダイアフラム方式による真空ラミネート装置を用いても良い。そして、ステップS2へ進む。
【0069】
ステップS2のIC実装工程では、図7(a)に示すように、まず、ドライバーIC120の能動面120aに所定の大きさに裁断されたACF125を貼り付ける。ACF125は、一般的に離型フィルムに支持された状態で捲回されたテープ状となっている。したがって、離型フィルムと共に裁断して貼り付けし、ACF125に対する異物等の付着を避けるため実装直前で離型フィルムを剥がして使用する。
【0070】
次に図7(b)に示すように、能動面120aと保護フィルム41に設けられた開口部42に露出する端子部10aとを対向配置させ、ドライバーIC120を平面的に位置合わせする。位置合わせの方法としては、端子部10aに設けられた接続端子4,5とこれに対応するバンプ121,122とをそれぞれ画像認識して位置を合わせる方法が挙げられる。例えば素子基板10側を覆う保護フィルム44が透明であれば、能動面120aを臨むように撮像装置を配置して位置合わせすることができる。
【0071】
そして、能動面120aと反対側の表面120bを離型テープ62を介して熱圧着ツール61に当接させ、ドライバーIC120を端子部10aに押し付けて加熱することにより実装する。熱圧着条件としては、例えば熱圧着ツール61の温度がおよそ180℃、ドライバーIC120に加わる圧力がおよそ300N、圧着時間がおよそ10秒である。そして、ステップS3へ進む。
【0072】
ステップS3のモールド工程では、実装されたドライバーIC120の側面120cと開口部42の内壁との間の隙間にモールド材46を充填する。充填方法としてはモールド材46をディスペンサー71から吐出する方法などが挙げられる。モールド材46として前述したシリコーン防湿材(TSE3996)を用いれば、充填後に常温常湿下に放置することにより、空気中の水分と反応してゴム状の弾性体に硬化する。そして、ステップS4へ進む。
【0073】
なお、本実施形態のIC実装工程では、熱硬化性のACF125を用いてドライバーIC120を平面実装したが、異方性導電粒子を含まない熱硬化型の接着剤(NCP;Non Conductive Paste)を端子部10aに塗布してからドライバーIC120を熱圧着する方法を採用してもよい。これによれば、モールド工程を省くことも可能である。
【0074】
ステップS4のドライエッチング工程では、図8(a)に示すように、まず、実装されたドライバーIC120を露出させた状態で有機EL装置100の表面をレジスト81で覆う。レジスト81としては、例えば硬化後に温水で可溶なアクリル系光硬化型の接着剤を用いる。露出したドライバーIC120の部分すなわち開口部42をマスキングしてから上記接着剤中に有機EL装置100を浸漬し引き上げるディッピング法や上記接着剤を有機EL装置100に直接吹き付けるスプレイ法などを用いてレジスト81を成膜する方法が挙げられる。
【0075】
次に、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)装置に有機EL装置100をセットして、図8(b)に示すようにドライバーIC120をドライエッチングする。エッチング条件としては、圧力がおよそ30Paに減圧されたチャンバー内に反応性ガスとしてCF4(四フッ化炭素)ガスを50sccm、O2(酸素)ガスを5sccm導入し、電極間距離が60mmの場合、およそ200Wの出力とする。このときのエッチングレートはおよそ0.8μm/分である。エッチング時間を調整することにより、図8(c)に示すようにドライバーIC120を所望の厚みに薄型化することができる。
【0076】
そして、例えば、90℃程度に加温された純水(すなわち、お湯)に有機EL装置100を5分〜10分間浸漬して、図8(d)に示すようにレジスト81を剥離して取り除く。レジスト81の剥離にあたってはお湯を攪拌したり、あるいは70kHz以下の超音波をあてることが望ましい。必要により純水リンス等を施してもよい。そして、ステップS5へ進む。
【0077】
ステップS5の放熱部材装着工程では、図1あるいは図4に示すように、接着性を有する放熱部材123を露出したドライバーIC120の表面と重なるように貼り付ける。図1では、構成を分かり易くするために、放熱部材123の幅をドライバーIC120の長手方向の長さよりも短くしたが、放熱を考慮すると放熱部材123の面積はできるだけ大きい方がよい。放熱部材123を貼り付ける段階では、ドライバーIC120は、保護フィルム41の厚みと同等かそれよりも薄くなっているので、開口部42の全面を覆う大きさとしてもよい。
【0078】
上記有機EL装置100の製造方法によれば、薄型の有機ELパネル110を保護フィルム41,44で封着してからドライバーIC120を実装するので、IC実装工程あるいはそれ以降の工程における取り扱いが容易となる。また、曲げなどの応力が掛からない状態での反りも抑えることができるので、ドライバーIC120を高い位置精度で歩留まりよく実装することができる。
また、ドライバーIC120を実装後に薄型化するので、薄型化したドライバーIC120を実装する場合に比べて、ドライバーIC120の取り扱いが容易となり、破損等の不良発生を防ぐことができる。
【0079】
すなわち、可撓性を有するだけでなく、高い信頼性品質を有する有機EL装置100を歩留まりよく製造することができる。
【0080】
(第2実施形態)
<電子機器>
次に、本実施形態の電子機器について図9を参照して説明する。図9(a)は電子機器の一例としてのディスプレイの概略構成図であり、図9(b)は電子機器の一例としての情報携帯端末の概略構成図である。
【0081】
図9(a)に示すように、電子機器の一例としてのディスプレイ1000は、電気光学装置としての有機EL装置100を表示部である電子ペーパー1002A,1002Bとして用いたブック型のディスプレイである。このディスプレイ1000には、本の綴じ代に相当する部分に、有機EL装置100の配線部43に接続可能なコネクター(図示しない)を備えたヒンジ部1001が設けられている。
【0082】
ヒンジ部1001には、コネクターが回転軸を中心に回転可能に取り付けられており、接続された電子ペーパー1002A,1002Bを通常の紙のように捲ることができる構成となっている。複数の電子ペーパー1002A,1002Bがヒンジ部1001に対して着脱可能に接続されていてもよい。これにより、ルーズリーフのように必要な枚数だけ電子ペーパー1002A,1002Bを持ち運べるディスプレイ1000を提供できる。
【0083】
図9(b)に示すように、電子機器の一例としての携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)2000は、複数の操作ボタン2002や表示部2003を有する本体2001を備えている。本体2001は手のひらに収まる大きさであって、表示部2003には、上記第1実施形態の電気光学装置としての有機EL装置100が搭載されている。複数の操作ボタン2002を操作することにより、例えば住所録やスケジュール帳といった各種の情報を表示部に表示することができる。薄型で自発光型の表示装置である有機EL装置100が搭載されているので、本体2001をより薄型な構成とすることができる。すなわち、小型で薄型な携帯情報端末2000を提供することができる。
また、有機ELパネル110が保護フィルム41,44により封着されているので、例えば、携帯情報端末2000を誤って落としたとしても外部からの衝撃で有機ELパネル110が破損し難い。たとえ破損しても有機ELパネル110の破片が飛び散らない安全な携帯情報端末2000が実現される。
【0084】
なお、有機EL装置100を搭載可能な電子機器は、上述したブック型のディスプレイ1000や携帯情報端末2000に限らず、種々の電子機器に搭載することができる。例えば、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、DVDビューワー、カーナビゲーション装置などの車載用ディスプレイ、電子手帳、POS端末、デジタルサイネージと呼ばれる電子広告媒体等が挙げられる。
【0085】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0086】
(変形例1)上記第1実施形態の有機EL装置100において、保護フィルム41に設ける開口部42の形状は、平面視で長方形に限定されない。図10は変形例の開口部の形状を示す平面図である。例えば、図10に示すように、変形例の開口部42'は、陸上競技などのトラックのように短手方向の辺部が円弧を描く形状となっている。これによれば、長方形とした場合に比べて、保護フィルム41をプレス加工(型抜き加工)して開口部42'を形成すると、保護フィルム41が裂け易い角部がないので、歩留まりよく加工することができる。
【0087】
(変形例2)上記第1実施形態の有機EL装置100における有機ELパネル110の構成は、これに限定されない。例えば、封止基板30側のカラーフィルター32を省いて、単色発光(白色)が得られる構成としてもよい。これによれば、有機EL装置100を表示装置でなく、照明装置として用いることもできる。
【0088】
(変形例3)上記第1実施形態の有機EL装置100におけるドライバーIC120は、薄型化することに限定されない。有機EL装置100に曲げ応力などが加わらない状態で設置し、薄型の表示装置あるいは照明装置として用いる場合には、わざわざドライバーIC120を実装後に薄型化しなくてもよい。言い換えれば、薄型化する工程を省くことができる。
【0089】
(変形例4)本発明が適用される電気光学装置は、有機EL装置100に限定されない。例えば、駆動用半導体チップとしてのドライバーIC120が実装される電気光学パネルを液晶パネルとした液晶装置や、プラズマ装置、電気泳動装置、エレクトロクロミック装置などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
10…一方の基板としての素子基板、10a…端子部、20…有機EL素子、41,44…保護フィルム、42…開口部、46…モールド材、100…電気光学装置としての有機EL装置、110…電気光学パネルとしての有機ELパネル、120…駆動用半導体チップとしてのドライバーIC、120a…能動面、123…放熱部材、1000…電子機器としてのブック型のディスプレイ、2000…電子機器としての携帯情報端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板を有する電気光学パネルと、
前記一対の基板のうち少なくとも一方の基板の端子部に実装された駆動用半導体チップと、
少なくとも一方が透明な2枚の保護フィルムと、を備え、
前記電気光学パネルは、前記2枚の保護フィルムに挟まれて封着されており、
前記2枚の保護フィルムのうち前記端子部を覆う保護フィルムには、前記駆動用半導体チップを露出させる開口部が設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記電気光学パネルは可撓性を有し、
前記駆動用半導体チップは可撓性を有する程度に厚みが薄型化されていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記駆動用半導体チップを囲む大きさで前記保護フィルムに設けられ、
前記開口部の内壁と前記駆動用半導体チップの側壁との間に前記駆動用半導体チップの能動面側を封着するモールド材が充填されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記モールド材は、硬化後に弾性を有する樹脂材料が用いられていることを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記端子部を有する前記一方の基板がガラス基板であって、
前記開口部の加工時に生じた縁部のカエリが外側に向くように前記端子部に対して前記開口部が設けられた前記保護フィルムが配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記開口部において露出した前記駆動用半導体チップの表面の少なくとも一部を覆うように放熱部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記電気光学パネルが有機EL素子を備えた有機ELパネルであることを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
少なくとも一方が透明な2枚の保護フィルムに挟まれた電気光学パネルを有する電気光学装置の製造方法であって、
前記電気光学パネルは少なくとも一方の基板に端子部が設けられた一対の基板を有し、
前記端子部に対応した位置で開口した開口部を有する一方の保護フィルムと他方の保護フィルムとを用いて前記電気光学パネルを挟んで封着する封着工程と、
前記開口部内に露出した前記端子部に駆動用半導体チップを実装する実装工程と、
を備えたことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項9】
前記開口部は、前記駆動用半導体チップを囲む大きさで前記一方の保護フィルムに設けられ、
前記開口部の内壁と実装された前記駆動用半導体チップの側壁との間に前記駆動用半導体チップの能動面側を封着するモールド材を塗布して硬化させるモールド工程を有することを特徴とする請求項8に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項10】
前記モールド材は、硬化後に弾性を有する樹脂材料が用いられていることを特徴とする請求項9に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項11】
実装された前記駆動用半導体チップをドライエッチングして前記駆動用半導体チップの厚みを薄型化する工程を備えたことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項12】
実装された前記駆動用半導体チップの表面の少なくとも一部を覆うように放熱部材を配置する工程を備えたことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項13】
前記電気光学パネルが有機EL素子を備えた有機ELパネルであることを特徴とする請求項11に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−40269(P2011−40269A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186308(P2009−186308)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】