説明

電気光学装置および電子機器

【課題】 色調バランスを確保しながら電気光学装置の輝度の調整を行う。
【解決手段】 基準電圧生成回路は、Rの画素回路のデータ線に与える基準電圧Rを設定する基準電圧R生成部と、Gの画素回路のデータ線に与える基準電圧Gを設定する基準電圧G生成部と、Bの画素回路のデータ線に与える基準電圧Bを設定する基準電圧B生成部と、を有し、記憶回路に、最小階調時にデータ線に与える第1電圧と、最大階調かつ最大輝度で表示した状態で最適なホワイトバランスとなるように設定されたRGB各々の前記データ線に与える電圧R、G、Bを記憶し、制御回路は、表示輝度の変更に際し、「第1電圧と基準電圧Rの差」と「第1電圧と基準電圧Gの差」と「第1電圧と基準電圧Bの差」との比率が、「第1電圧と電圧Rの差」と「第1電圧と電圧Gの差」と「第1電圧と電圧Bの差」との比率と等しくなるように、基準電圧Rと基準電圧Gと基準電圧Bを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLED(Organic Light Emitting Diode)素子などの電気光学素子を備えた電気光学装置および電子機器に関し、特に、電気光学装置の輝度を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学素子を利用して画像を表示する電気光学装置が各種の電子機器の表示装置として広く普及している。この種の電気光学装置においては、色調バランスを確保しながら輝度の調整ができることが重要な課題となる。
【0003】
この問題を解決するために、例えば特許文献1には、半減期を有するカラー表示装置と、この表示装置の発光時間を計測する発光時間計測手段と、この発光時間計測手段で計測された発光時間の累計が予め定めた一定時間に達したとき、表示装置の輝度を調節する輝度調整手段とを備え、輝度調節手段を、表示装置を構成する光の3原色を発光する各発光素子の発光輝度を予め定めた比率になるように調節可能とした。この構成により、発光時間の累計が予め定めた一定時間に達したとき、表示装置を構成する光の3原色を発光する各発光素子の発光輝度を予め定めた比率になるように調節するため、全体としての輝度は低下するが、寿命は延び、色調も元に戻って充分な自然な色合いを得ることができることになる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−195817号公報(段落0010)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、表示装置の使用時間が一定時間に達した時点で予め定めた比率になるように輝度調整を行うものであり、リアルタイムに輝度を調整できるようには構成されていない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電気光学装置の色調バランスを確保しながら発光輝度の制御ができる電気光学装置および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置では、複数の走査線と、複数のデータ線と、前記複数の走査線と前記複数のデータ線との各々の交差に電気光学素子を有する複数の画素回路と、前記走査線に走査信号を出力することにより、所定の前記走査線を選択する走査線駆動回路と、外部供給される画像データに基づき、前記データ線を介して前記電気光学素子に階調信号を出力するデータ線駆動回路と、前記走査線駆動回路と前記データ線駆動回路に対し駆動信号を出力する駆動信号生成回路と、最大階調時に前記画素回路の前記データ線に与える基準電圧を供給する基準電圧生成回路と、出荷時の各種設定値を記憶する記憶回路と、表示輝度の変更を制御する制御回路と、を少なくとも備えた電気光学装置であって、前記基準電圧生成回路は、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の各色表示用の前記画素回路に対応する前記データ線に各々供給される基準電圧VR、VG及びVBをそれぞれ生成する基準電圧VR生成部、基準電圧VG生成部及び基準電圧VB生成部を有し、前記記憶回路は、前記電気光学装置を最小階調で表示した場合の前記データ線に与えられる電圧である第1電圧と、前記電気光学装置を最大階調かつ最大輝度で表示した場合に最適なホワイトバランスとなるように設定され、R、G及びBの各色表示用の前記画素回路に対応する前記データ線に与えられる電圧である最適電圧VR0、VG0及びVB0を記憶し、前記制御回路は、表示輝度の変更に際し、前記第1電圧と前記基準電圧VR、VG及びVBとの三つの差間の比率が、前記第1電圧と前記最適電圧VR0、VG0及びVB0との三つの差間の比率と等しくなるように、前記基準電圧VR、VG及びVBを設定し、前記基準電圧VR生成部、前記基準電圧VG生成部及び前記基準電圧VB生成部に各々出力する、ことを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、電気光学装置の出荷時に最大階調かつ最大輝度で表示した状態で最適なホワイトバランスとなるようにRGB各色の画素回路に与える電圧値を設定し、記憶回路にRGB各々の電圧値を記憶させておき、輝度を変更する際、制御回路はこの電圧バランスを保つようにRGB各々の基準電圧値を設定するので、輝度が変更されても最適なホワイトバランスを保つことができる。
【0009】
また、本発明の電気光学装置では、前記基準電圧VR生成部、前記基準電圧VG生成部及び前記基準電圧VB生成部は、前記制御回路が設定した前記基準電圧VR、VG及びVBの電圧値を各々記憶するレジスタと、前記レジスタに記憶された前記電圧値をアナログ信号に変換するD/A変換回路と、を各々有する。
【0010】
この構成によれば、基準電圧R生成部と基準電圧G生成部と基準電圧B生成部の各々のレジスタに現在の基準電圧Rと基準電圧Gと基準電圧Bの電圧値が記憶されるので、制御回路は、記憶回路に記憶したRGB各色の電圧値と、各々のレジスタに記憶した現在の基準電圧値と、から輝度変更後の基準電圧値を算出することが可能となり、輝度が変更されても最適なホワイトバランスを保つことができる。
【0011】
また、本発明の電気光学装置では、前記電気光学装置は、画像補正テーブル(LUT)を有し、前記画像補正テーブル(LUT)により前記画像データを補正する。
【0012】
また、本発明の電気光学装置では、前記基準電圧VR生成部、前記基準電圧VG生成部及び前記基準電圧VB生成部は、各々乗算器を有し、前記制御回路からの指示に基づき、前記基準電圧VR、VG及びVBの電圧値を再計算する。
【0013】
また、本発明の電気光学装置では、前記最適電圧VR0、VG0及びVB0は、前記電気光学装置を最大階調かつ最大輝度で表示した場合にホワイトバランスを保つために許容される範囲で設定される。
【0014】
また、本発明の電気光学装置では、前記電気光学素子は有機発光ダイオード素子である。
【0015】
次に、本発明に係る電子機器は、上述した電気光学装置を備え、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、および携帯情報端末等が該当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
(第1実施形態)
【0017】
<電気光学装置の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置の構成を示すブロック図である。同図に示されるように、電気光学装置1は、電気光学パネル10と駆動信号生成回路200と走査線駆動回路300とデータ線駆動回路400と基準電圧生成回路500と制御回路であるコントローラ600と記憶回路であるEEPROM610とを備える。
【0018】
電気光学パネル10には画素領域100が形成されている。この画素領域100には、X方向(行方向)に延在するm本の走査線120が形成されている(mは自然数)。また、画素領域100には、X方向と直交するY方向(列方向)に延在するn本のデータ線121が形成されている(nは自然数)。そして、走査線120とデータ線121との各交差に対応して画素回路110が配置されている。したがって、これらの画素回路110は、画素領域100内においてX方向およびY方向にわたってマトリクス状に配列されている。また、各画素回路110には、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の電気光学素子の何れかが割り当てられている。
【0019】
走査線駆動回路300は、m本の走査線120の各々を順次に選択し、水平走査期間ごとに順番に走査信号Y1、Y2、…、Ymを各走査線120に対して出力する。なお、後述するように、走査線120は、Vth補償線122とデータ書込み線123とプリチャージ線124と発光制御線125とを含んでいる。
【0020】
一方、データ線駆動回路400は、走査線駆動回路300が選択した走査線120に接続された各画素回路110に対してデータ信号X1、X2、…、Xnを供給する。データ信号Xj(jは1≦j≦nを満たす整数)は電圧振幅により第j列目の画素回路110の輝度(階調)を指定する。
【0021】
駆動信号生成回路200は、図示しない外部機器から、クロック信号CLKと垂直同期信号VSYNCと水平同期信号HSYNCと映像データ信号DATAを受け取り、電気光学装置1の動作を制御する。これらの信号を受け、駆動信号生成回路200は、データ線駆動回路400に対し、映像データ信号DATAから赤色(R)の映像データのみを取り出した赤色信号RDATAと、映像データ信号DATAから緑色(G)の映像データのみを取り出した緑色信号GDATAと、映像データ信号DATAから青色(B)の映像データのみを取り出した青色信号BDATAと、データ線駆動回路用(以下、X)クロック信号XCKと、Xスタートパルス信号XSPを出力する。さらに、駆動信号生成回路200は、走査線駆動回路300に対し、発光制御信号GELと、データ書込み信号GWRTと、Vth補償信号GINITと、走査線駆動回路用(以下、Y)クロック信号YCKと、Yスタートパルス信号YSPを出力する。なお、走査線駆動回路300やデータ線駆動回路400や駆動信号生成回路200は、例えばCOG(Chip On Glass)技術によって電気光学パネル10に実装されていてもよいし、この電気光学パネル10の外部(例えば電気光学パネル10に実装された配線基板上)に実装されていてもよい。
【0022】
基準電圧生成回路500は、赤色(R)表示用の画素回路110の基準電圧VRを生成する基準電圧VR生成部である基準電圧R生成部510と、緑色(G)表示用の画素回路110の基準電圧VGを生成する基準電圧VG生成部である基準電圧G生成部520と、青色(B)表示用の画素回路110の基準電圧VBを生成する基準電圧VB生成部である基準電圧B生成部530と、から構成されている。
【0023】
次に、図2を参照して基準電圧生成回路500のさらに詳細な構成を説明する。図2に示すように、基準電圧R生成部510は、赤色(R)表示用の画素回路110の基準電圧値Rdを記憶するレジスタ511と、基準電圧値Rdから基準電圧VRを生成するD/A変換回路512を有する。また、基準電圧G生成部520は、緑色(G)表示用の画素回路110の基準電圧値Gdを記憶するレジスタ521と、基準電圧値Gdから基準電圧VGを生成するD/A変換回路522を有する。さらに、基準電圧B生成部530は、青色(B)表示用の画素回路110の基準電圧値Bdを記憶するレジスタ531と、基準電圧値Bdから基準電圧VBを生成するD/A変換回路532を有する。
【0024】
基準電圧VRは、電圧供給線514を介しデータ線駆動回路400に供給され、赤色(R)表示用の画素回路110の基準電圧として使われる。また、基準電圧VGは、電圧供給線524を介しデータ線駆動回路400に供給され、緑色(G)表示用の画素回路110の基準電圧として使われる。さらに、基準電圧VBは、電圧供給線534を介しデータ線駆動回路400に供給され、青色(B)表示用の画素回路110の基準電圧として使われる。
【0025】
EEPROM610には、電気光学装置1を製造後、最大階調かつ最大輝度で電気光学パネル10を表示させ、最適なホワイトバランスを得られるように調整された赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各画素回路110のデータ線121に印加される電圧値(電圧R0、電圧G0、電圧B0)と、最小階調で電気光学パネル10を表示させた場合のデータ線121に印加される電圧値(第1電圧M0)を、出荷時に記憶させておく。
【0026】
コントローラ600は、図示しない外部機器のインターフェースから、輝度を調整する輝度調整信号CTRLを受け取り、EEPROM610に記憶してある電圧R0、電圧G0、電圧B0、第1電圧M0の各電圧値と、レジスタ511、521、531の各々に記憶してある現在の基準電圧値Rd、基準電圧値Gd、基準電圧値Bdに基づき、輝度調整後の基準電圧値Rd、基準電圧値Gd、基準電圧値Bdを算出し、レジスタ511、521、531の値を更新する。
【0027】
<画素回路の構成>
次に、図3および図4を参照して画素回路110の構成と動作を説明する。図3は、画素回路110の構成を示す回路図であり、図4は、画素回路110の動作を説明するタイミングチャートである。図3においては、第i行目(iは1からmの整数)に属する第j列目(jは1からnの整数)のひとつの画素回路110のみが図示されており、その他の画素回路110の構成も同様である。本実施形態における画素回路110は、データ信号Xjの電圧振幅に応じてOLED素子117の輝度(階調)を制御する閾値補償可能な電圧駆動型(いわゆる電圧プログラミング方式)の回路である。走査線120は、Vth補償線122とデータ書込み線123とプリチャージ線124と発光制御線125とから構成され、第i行目には各々、Vth補償信号GINITiと、データ書込み信号GWRTiと、プリチャージ信号PRCGiと、発光制御信号GELiが入力される。
【0028】
図3に示されるように、画素回路110は、5個のTFT111〜115(例えば薄膜トランジスタ)と、コンデンサ116と、OLED素子117とを有する。TFT111の導電型は、pチャネル型であり、TFT112ないし115の導電型は、nチャネル型である。
【0029】
このうちTFT111のソース端子は、画素駆動用の電源の高位側電位(以下「電源電位」という。)VELが供給される電源線に接続され、そのドレイン端子は、ノード118を介してTFT115のドレイン端子と接続され、ノード118には、さらに、TFT112のドレイン端子と、TFT114のドレイン端子が接続されている。また、ゲート端子は、TFT112のソース端子と、コンデンサ116の一端に接続されている。コンデンサ116の他端は、TFT113のドレイン端子に接続される。
【0030】
TFT114のソース端子は、データ線121に接続され、ゲート端子は、プリチャージ線124に接続され、プリチャージ信号PRCGiがHレベルの時に、ノード118の電位をデータ線121の電位にプリチャージする。図4に示すように、プリチャージ信号PRCGiは、選択行(例えば第1行目)においてYクロック信号YCKの立上りの時点(例えば時点t1)で立上り、Yクロック信号YCKの立下りの時点(例えば時点t2)で立下る。
【0031】
TFT112のゲート端子は、Vth補償線122に接続され、Vth補償信号GINITiがHレベルの時に、TFT111のゲート端子とドレイン端子を導通状態にし、さらにコンデンサ116にチャージされる電位をノード118の電位にする。図4に示すように、Vth補償信号GINITiは、選択行(例えば第1行目)においてYクロック信号YCKの立上りの時点(例えば時点t1)で立上り、Yクロック信号YCKの立下りの時点(例えば時点t2)で立下る。
【0032】
TFT113のソース端子は、データ線121に接続され、ゲート端子は、データ書込み線123に接続され、データ書込み信号GWRTiがHレベルの時に、データ線121の電位がコンデンサ116にチャージされる。コンデンサ116にデータ線121の電位がチャージされると、pチャネル型TFT111のゲート端子にデータ線121の電位が印加され、電源電位VELとTFT111の閾値電圧の和からデータ線121の電位を引いた電位がノード118に印加される。図4に示すように、データ書込み信号GWRTiは、選択行(例えば第1行目)においてYクロック信号YCKの立下りの時点(例えば時点t2)で立上り、Yクロック信号YCKの立上りの時点(例えば時点t3)で立下る。
【0033】
TFT115のゲート端子は、発光制御線125に接続され、ソース端子は、OLED素子117の陽極に接続される。OLED素子117の陰極は電源の低位側電位(以下「接地電位」という。)VCTが供給される接地線に接続される。発光制御信号GELiがHレベルの時に、ノード118の電位がOLED素子117の陽極に印加され、OLED素子117が発光する。図4に示すように、発光制御信号GELiは、1垂直走査期間1F(例えば時点t1からt4)の1水平走査期間1H(例えば時点t1からt3)においてLレベルとなり、それ以外の期間(例えば時点t3からt4)はHレベルとなる。発光制御信号GELiがHレベルの期間は、コンデンサ116にチャージされた電位によりOLED素子117の発光が持続される。
【0034】
なお、画素回路110として図3のような閾値補償が可能な電圧プログラム方式について説明したが、図5に示すような2個のTFT111、113とコンデンサ116とOLED素子117で構成される画素回路110にも適用できる。
【0035】
<基準電圧生成回路の動作>
次に、図6ないし図8を参照してコントローラ600と基準電圧生成回路500の動作について説明する。
【0036】
図6は、最大階調かつ最大輝度時のRGB各色の基準電圧の設定の一例を示すグラフである。図6のグラフにおいて、横軸は、映像データ信号DATAの階調値(00h〜FFh)であり、縦軸は、データ線121に印加される電圧値である。
【0037】
TFT111の導電型はpチャネル型なので、OLED素子117を発光させる電圧を生成するノード118の電位Voledは、TFT111のソース端子に印加される電源電位VELとTFT111の閾値電圧Vthの和からゲート端子に印加されるデータ線121の電位Vdataを差し引いた電位となる。すなわち、以下の(1)式となる。
Voled=(VEL+Vth)−Vdata ・・・(1)
【0038】
例えば、電源電位VEL=11.5V、TFT111の閾値電圧Vth=−1.5Vとした場合、最小階調(00h)の時にデータ線121に与える電圧である第1電圧M0=10Vとなる。また、最大階調(FFh)かつ最大輝度で電気光学パネル10を表示させた場合に、最適なホワイトバランスを得られるように調整された赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各画素回路110のデータ線121に印加される電圧値(電圧R0、電圧G0、電圧B0)が例えば各々、電圧R0=2V、電圧G0=5V、電圧B0=4Vとなったとする。
【0039】
EEPROM610には、これらの値、第1電圧M0=10V、電圧R0=2V、電圧G0=5V、電圧B0=4V、が出荷時に記憶される。この場合、「第1電圧M0と電圧R0の差」と「第1電圧M0と電圧G0の差」と「第1電圧M0と電圧B0の差」の比率は、以下の(2)式となる。
(M0−R0):(M0−G0):(M0−B0)=8:5:6 ・・・(2)
【0040】
次に、図7を参照して輝度を変更した場合のRGB各色の基準電圧の設定の方法を説明する。図7は、輝度を低くした時のRGB各色の基準電圧の設定を示すグラフである。
【0041】
図7では、最大輝度に対し、輝度を半分にした場合の最大階調(FFh)時の基準電圧値Rd、基準電圧値Gd、基準電圧値Bdの設定値を示している。「第1電圧M0と基準電圧値Rdの差」と「第1電圧M0と基準電圧値Gdの差」と「第1電圧M0と基準電圧値Bdの差」の比率は、(2)式の比率と等しくなるように設定する。すなわち、以下の(3)式となるように設定する。
(M0−Rd):(M0−Gd):(M0−Bd)=8:5:6 ・・・(3)
【0042】
この時、電圧R0=2V、電圧G0=5V、電圧B0=4Vの中で最小の電圧である電圧R0を基準にし、赤色(R)用の画素回路110のデータ線121の電位Vdataが最大輝度時は、Vdata=M0−R0=8Vなので、輝度を半分にする場合、Vdata=M0−Rd=4Vなので、基準電圧値Rd=6Vとなる。この値と(3)式から、基準電圧値Gd=7.5V、基準電圧値Bd=7Vを算出することができる。
【0043】
次に、図8を参照してコントローラ600と基準電圧生成回路500の動作を説明する。図8は、コントローラ600と基準電圧生成回路500の動作を説明するフローチャートである。
【0044】
先ず、ステップS100では、コントローラ600は、EEPROM610から第1電圧M0と電圧R0と電圧G0と電圧B0の電圧値を取得する。
【0045】
次に、ステップS110では、M0−R0、M0−G0、M0−B0のうち最大値をMmaxとして記憶する。
【0046】
次に、ステップS120では、コントローラ600は、外部機器から輝度調整信号CTRLによる輝度変更の指示があるか否かを判定し、指示があった場合は、ステップS130に移行し、指示が無い場合は、輝度調整信号CTRLの監視を続ける。
【0047】
次に、ステップS130では、コントローラ600は、レジスタ511から基準電圧値Rdを、レジスタ521から基準電圧値Gdを、レジスタ531から基準電圧値Bdを取得する。
【0048】
次に、ステップS140では、M0−Rd、M0−Gd、M0−Bdのうち最大値をMnowとして記憶する。
【0049】
次に、ステップS150では、輝度調整信号CTRLの指示が1輝度Upであるか否か(1輝度Down)を判定し、1輝度Upである場合は、ステップS160に移行し、そうでない場合(1輝度Down)は、ステップS170に移行する。
【0050】
次に、ステップS160では、以下の(4)ないし(6)式により、基準電圧値Rd、基準電圧値Gd、基準電圧値Bdを算出し、ステップS180に移行する。ただし、現在の輝度が最大輝度の場合は、スキップする。
Rd=M0−(Mnow+1)×(M0−R0)/Mmax ・・・(4)
Gd=M0−(Mnow+1)×(M0−G0)/Mmax ・・・(5)
Bd=M0−(Mnow+1)×(M0−B0)/Mmax ・・・(6)
【0051】
一方、ステップS170では、以下の(7)ないし(9)式により、基準電圧値Rd、基準電圧値Gd、基準電圧値Bdを算出し、ステップS180に移行する。ただし、現在の輝度が最小輝度の場合は、スキップする。
Rd=M0−(Mnow−1)×(M0−R0)/Mmax ・・・(7)
Gd=M0−(Mnow−1)×(M0−G0)/Mmax ・・・(8)
Bd=M0−(Mnow−1)×(M0−B0)/Mmax ・・・(9)
【0052】
次に、ステップS180では、算出された基準電圧値Rd、基準電圧値Gd、基準電圧値Bdを各々、レジスタ511、レジスタ521、レジスタ531に記憶(更新)し、各々のD/A変換回路512、522、532は、基準電圧値Rd、基準電圧値Gd、基準電圧値Bdを、基準電圧VR、基準電圧VG、基準電圧VBに変換し、データ線駆動回路400に供給し、ステップS120に移行する。
【0053】
以上に述べた前記実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0054】
本実施形態では、電気光学装置1の出荷時に最大階調かつ最大輝度で表示した状態で最適なホワイトバランスとなるようにRGB各色の画素回路110のデータ線121に与える電圧値を設定し、EEPROM610にRGB各々の電圧値を記憶させておき、輝度を変更する際、コントローラ600は、この電圧バランスを保つようにRGB各々の基準電圧値を設定するので、輝度が変更されても最適なホワイトバランスを保つことができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることができる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0056】
(変形例1)本発明に係る電気光学装置1の第1変形例について説明する。前記第1実施形態では、コントローラ600が基準電圧値を算出するように説明したが、基準電圧R生成部510、基準電圧G生成部520、基準電圧B生成部530の各々に乗算器を設け、コントローラ600は、輝度調整信号CTRLの輝度変更の指示情報をこれらの乗算器に送り、レジスタ511、521、531の各々の基準電圧値Rd、基準電圧値Gd、基準電圧値Bdを再計算するようにしてもよい。
【0057】
<電子機器>
次に、上述した実施形態及び変形例に係る電気光学装置1を適用した電子機器について説明する。図9に、電気光学装置1を適用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す。パーソナルコンピュータ2000は、表示ユニットとしての電気光学装置1と本体部2010を備える。本体部2010には、電源スイッチ2001及びキーボード2002が設けられている。この電気光学装置1はOLED素子117を用いるので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0058】
図10に、電気光学装置1を適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002、並びに表示ユニットとしての電気光学装置1を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置1に表示される画面がスクロールされる。
【0059】
図11に、電気光学装置1を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002、並びに表示ユニットとしての電気光学装置1を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が電気光学装置1に表示される。
【0060】
なお、電気光学装置1が適用される電子機器としては、図9〜図11に示すものの他、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した電気光学装置1が適用可能である。また、直接画像や文字などを表示する電子機器の表示部に限られず、被感光体に光を照射することにより間接的に画像もしくは文字を形成するために用いられる印刷機器の光源として適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気光学装置1の概略構成を示すブロック図。
【図2】基準電圧生成回路500の構成を示すブロック図。
【図3】画素回路110の回路図。
【図4】画素回路110の動作を説明するタイミングチャート。
【図5】画素回路110の別の回路図。
【図6】最大階調かつ最大輝度時のRGB各色の基準電圧の設定を示すグラフ。
【図7】輝度を低くした時のRGB各色の基準電圧の設定を示すグラフ。
【図8】コントローラ600と基準電圧生成回路500の動作を説明するフローチャート。
【図9】同電気光学装置1を用いたパーソナルコンピュータを示す斜視図。
【図10】同電気光学装置1を用いた携帯電話を示す斜視図。
【図11】同電気光学装置1を用いた携帯情報端末を示す斜視図。
【符号の説明】
【0062】
1…電気光学装置、10…電気光学パネル、100…画素領域、110…画素回路、111…pチャネル型TFT、112〜115…nチャネル型TFT、116…容量素子、117…OLED素子、120…走査線、121…データ線、122…Vth補償線、123…データ書込み線、124…プリチャージ線、125…発光制御線、200…駆動信号生成回路、300…走査線駆動回路、400…データ線駆動回路、500…基準電圧生成回路、510…基準電圧R生成部、520…基準電圧G生成部、530…基準電圧B生成部、600…コントローラ、610…EEPROM、2000…パーソナルコンピュータ、2001…電源スイッチ、2002…キーボード、2010…本体部、3000…携帯電話機、3001…操作ボタン、3002…スクロールボタン、4000…情報携帯端末、4001…操作ボタン、4002…電源スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記複数の走査線と前記複数のデータ線との各々の交差に電気光学素子を有する複数の画素回路と、前記走査線に走査信号を出力することにより、所定の前記走査線を選択する走査線駆動回路と、外部供給される画像データに基づき、前記データ線を介して前記電気光学素子に階調信号を出力するデータ線駆動回路と、前記走査線駆動回路と前記データ線駆動回路に対し駆動信号を出力する駆動信号生成回路と、最大階調時に前記画素回路の前記データ線に与える基準電圧を供給する基準電圧生成回路と、出荷時の各種設定値を記憶する記憶回路と、表示輝度の変更を制御する制御回路と、を少なくとも備えた電気光学装置であって、
前記基準電圧生成回路は、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の各色表示用の前記画素回路に対応する前記データ線に各々供給される基準電圧VR、VG及びVBをそれぞれ生成する基準電圧VR生成部、基準電圧VG生成部及び基準電圧VB生成部を有し、
前記記憶回路は、前記電気光学装置を最小階調で表示した場合の前記データ線に与えられる電圧である第1電圧と、前記電気光学装置を最大階調かつ最大輝度で表示した場合に最適なホワイトバランスとなるように設定され、R、G及びBの各色表示用の前記画素回路に対応する前記データ線に与えられる電圧である最適電圧VR0、VG0及びVB0を記憶し、
前記制御回路は、表示輝度の変更に際し、前記第1電圧と前記基準電圧VR、VG及びVBとの三つの差間の比率が、前記第1電圧と前記最適電圧VR0、VG0及びVB0との三つの差間の比率と等しくなるように、前記基準電圧VR、VG及びVBを設定し、前記基準電圧VR生成部、前記基準電圧VG生成部及び前記基準電圧VB生成部に各々出力する、
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置において、前記基準電圧VR生成部、前記基準電圧VG生成部及び前記基準電圧VB生成部は、前記制御回路が設定した前記基準電圧VR、VG及びVBの電圧値を各々記憶するレジスタと、前記レジスタに記憶された前記電圧値をアナログ信号に変換するD/A変換回路と、を各々有する、
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気光学装置において、前記電気光学装置は、画像補正テーブル(LUT)を有し、前記画像補正テーブル(LUT)により前記画像データを補正する、
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電気光学装置において、前記基準電圧VR生成部、前記基準電圧VG生成部及び前記基準電圧VB生成部は、各々乗算器を有し、前記制御回路からの指示に基づき、前記基準電圧VR、VG及びVBの電圧値を再計算する、
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電気光学装置において、前記最適電圧VR0、VG0及びVB0は、前記電気光学装置を最大階調かつ最大輝度で表示した場合にホワイトバランスを保つために許容される範囲で設定される、
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項6】
請求項1または5に記載の電気光学装置において、前記電気光学素子は有機発光ダイオード素子である、
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−11101(P2007−11101A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193442(P2005−193442)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】