電気光学装置の製造方法
【課題】液晶装置を製造する際に、残渣を好適に除去し、ラビングスジの発生を防止する。
【解決手段】液晶装置の製造方法は、複数の基板(10)が配列された大型基板(100)上に導電膜(210)を形成する導電膜形成工程と、大型基板における複数の基板が配列されない周囲部分に形成された導電膜を除去する導電膜除去工程と、周囲部分に残存する残渣(300)を除去する残渣除去工程と、導電膜及び周囲部分を覆うように絶縁膜(220)を形成する絶縁膜形成工程と、周囲部分に形成された絶縁膜を除去する絶縁膜除去工程と、絶縁膜の上層側に配向膜(16)を形成する配向膜形成工程と、配向膜にラビング処理を施すラビング工程とを備える。
【解決手段】液晶装置の製造方法は、複数の基板(10)が配列された大型基板(100)上に導電膜(210)を形成する導電膜形成工程と、大型基板における複数の基板が配列されない周囲部分に形成された導電膜を除去する導電膜除去工程と、周囲部分に残存する残渣(300)を除去する残渣除去工程と、導電膜及び周囲部分を覆うように絶縁膜(220)を形成する絶縁膜形成工程と、周囲部分に形成された絶縁膜を除去する絶縁膜除去工程と、絶縁膜の上層側に配向膜(16)を形成する配向膜形成工程と、配向膜にラビング処理を施すラビング工程とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプロジェクターのライトバルブ等に用いられる液晶装置を製造する方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液晶装置の製造方法として、例えばAl−Si−Cu合金膜等のシリコンを含む合金膜を用いるものがある。上述したAl−Si−Cu合金膜は、例えば配線の微細化に伴い顕著となってきたストレスマイグレーション等を抑制するという有益な効果を有する一方で、加工する際にSiやCu等の残渣が発生してしまうという問題点を有している。このため、例えば特許文献1及び特許文献2では、エッチングによって残渣を除去するという技術が提案されている。また特許文献3では、熱処理後に急速冷却を行うことで、残渣の析出を低減しようとする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−359427号公報
【特許文献2】特開平10−326898号公報
【特許文献3】特開2000−340570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術は、例えば装置内に残渣が残ることにより発生する問題を想定しているが、このような残渣は装置外でも発生し、その装置外の残渣が製造工程において悪影響を及ぼしてしまうことも考えられる。
【0005】
具体的には、例えば装置を構成する基板が、複数の基板が格子状に配列された大型基板として製造される場合、複数の基板の周囲に位置する部分(即ち、大型基板の端の部分)にも上述したような残渣が発生してしまうおそれがある。この周囲部分は、実際には装置としては利用されない部分ではあるが、周囲部分の残渣は、例えば配向膜のラビング処理の際に、スジ状の欠陥(所謂、ラビングスジ)を発生させてしまう。
【0006】
上述した特許文献1から3には、大型基板の周囲部分の残渣やラビングスジに対する記載は何らされていない。従って上述した技術には、装置外に発生する残渣を除去し、ラビングスジの発生を防止することは困難であるという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、残渣を好適に除去し、ラビングスジの発生を防止することが可能な電気光学装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液晶装置の製造方法は上記課題を解決するために、複数の基板が配列された大型基板上に導電膜を形成する導電膜形成工程と、前記大型基板における前記複数の基板が配列されない周囲部分に形成された前記導電膜を除去する導電膜除去工程と、前記周囲部分に残存する残渣を除去する残渣除去工程と、前記導電膜及び前記周囲部分を覆うように絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、前記周囲部分に形成された前記絶縁膜を除去する絶縁膜除去工程と、前記絶縁膜の上層側に配向膜を形成する配向膜形成工程と、前記配向膜にラビング処理を施すラビング工程とを備える。
【0009】
本発明の液晶装置の製造方法では、例えば、画素電極及び該画素電極に電気的に接続された画素スイッチング用TFT等であるスイッチング素子が設けられた素子基板と、画素電極に対向する対向電極が設けられた対向基板との間に、液晶を挟持してなる液晶装置が製造される。素子基板は、例えば複数の基板が配置された大型基板上に、導電層及び層間絶縁膜が積層されることで製造される。
【0010】
本発明の液晶装置の製造方法によれば、先ず複数の基板が配列された大型基板上に導電膜が形成される。導電膜は、例えばAl−Si−Cu合金膜であり、SiO2等で構成された大型基板のほぼ全面に形成される。その後に、複数の基板が配列されない周囲部分(即ち、装置としては使用しない部分)に形成された導電膜が除去される。よって周囲部分では、大型基板の基板面が露出される。尚、周囲部分における導電膜が全て除去される必要はなく、周囲部分には部分的に導電膜が残されていても構わない。
【0011】
続いて本発明では特に、導電膜を除去する際に生じた周囲部分に残存する残渣(例えば、導電膜中のSiやCuが熱処理等の際に析出して出来たもの)が、エッチング等によって除去される。即ち、露出された大型基板表面に対して残渣除去処理が施され、残渣がない或いは影響を無視できるまでに少ない状態とされる。尚、エッチングによって残渣を除去する場合には、周囲部分の導電膜を除去する際に用いたレジストをそのまま用いることも可能である。
【0012】
ここで仮に、大型基板の周囲部分に残渣が残されたままであったとすると、導電膜の上層に形成される層をパターニングする際等に、残渣の凹凸が大型基板の表面に転写されてしまうおそれがある。しかるに本発明では、残渣が除去されているため、このような予期せぬ不具合が発生することを防止できる。具体的には、導電膜及び周囲部分を覆うように絶縁膜が形成され、周囲部分に形成された絶縁膜が除去される際に、残渣の凹凸が大型基板の表面に転写されてしまうことを防止することができる。
【0013】
絶縁膜の上層側には配向膜が形成され、配向膜には液晶の配向方向を規定するためのラビング処理が施される。この際、上述した残渣による凹凸が大型基板の表面に転写されていると、配向膜にラビングスジができてしまうおそれがある。即ち、凹凸が存在することによって、配向膜に予期しないスジが生じてしまい、装置の表示品質を低下させてしまうおそれがある。
【0014】
しかるに本発明では、上述したように、残渣が予め除去されているため、残渣に起因する凹凸は大型基板表面に存在していない。従って、配向膜にラビングスジができてしまうことを防止することができる。尚、周囲部分の残渣は全て除去されることが望ましいが、部分的に除去された場合であっても、上述した効果は相応に得られる。よって、例えば残渣の位置とラビングスジの発生条件との関係を考慮した上で残渣を除去するようにすれば、極めて効率的にラビングスジの発生を防止することができる。
【0015】
以上説明したように、本発明の液晶装置の製造方法によれば、残渣を好適に除去し、ラビングスジの発生を防止することができるため、品質の高い液晶装置を製造することが可能である。
【0016】
本発明の液晶装置の製造方法によって製造された液晶装置は、例えば投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサー、ビューファインダー型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器に適用することができる。
【0017】
本発明の液晶装置の製造方法の一態様では、前記残渣除去工程において、前記残渣はドライエッチングによって除去される。
【0018】
この態様によれば、大型基板の表面に生じた残渣を比較的容易かつ確実に除去することができる。ドライエッチングは、例えばCF4及びO2を用いて行われる。残渣除去工程では、残渣の成分や量に基づいてドライエッチングに用いられる材料及び各種条件を適宜設定することで、より効率的な残渣の除去を実現できる。
【0019】
本発明の液晶装置の製造方法の他の態様では、前記残渣除去工程において、前記残渣はウェットエッチングによって除去される。
【0020】
この態様によれば、大型基板の表面に生じた残渣を比較的容易かつ確実に除去することができる。ウェットエッチングは、例えばフッ化アンモニウム(NH4F)20%、1水素1フッ化アンモニウム(NH4F・HF)10%、酢酸(CH3COOH)30%の混酸を用いて行われる。残渣除去工程では、残渣の成分や量に基づいてウェットエッチングに用いられる材料及び各種条件を適宜設定することで、より効率的な残渣の除去を実現できる。
【0021】
尚、本態様におけるウェットエッチングと、上述したドライエッチングとを組み合わせて残渣を除去することも可能である。
【0022】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】液晶装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H´線断面図である。
【図3】大型基板の構成を示す平面図である。
【図4】実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図(その1)である。
【図5】実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図(その2)である。
【図6】実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図(その3)である。
【図7】実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図(その4)である。
【図8】実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図(その5)である。
【図9】実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図(その6)である。
【図10】実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図(その7)である。
【図11】比較例に係る液晶装置の製造方法の一部の工程を示す工程断面図(その1)である。
【図12】比較例に係る液晶装置の製造方法の一部の工程を示す工程断面図(その1)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0025】
<液晶装置>
先ず、本実施形態に係る液晶装置の製造方法によって製造される液晶装置の構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、液晶装置の全体構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´線断面図である。尚、以下の実施形態では、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例に挙げて説明する。
【0026】
図1及び図2において、本実施形態に係る液晶装置の製造方法によって製造される液晶装置では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板や、シリコン基板等である。対向基板20は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が封入されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。
【0027】
TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素電極が設けられた画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により、相互に接着されている。
【0028】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。尚、ギャップ材を、シール材52に混入されるものに加えて若しくは代えて、画像表示領域10a又は画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、配置するようにしてもよい。
【0029】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。尚、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0030】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0031】
TFTアレイ基板10上における対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域には、両基板間を上下導通材で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0032】
図2において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層構造の詳細な構成については図2では図示を省略してあるが、この積層構造の上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料からなる画素電極9aが、画素毎に所定のパターンで島状に形成されている。
【0033】
画素電極9aは、対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面する側の表面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成されている。
【0034】
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上には、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮光膜23によって区切られた領域が、例えばプロジェクター用のランプや直視用のバックライトから出射された光を透過させる開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
【0035】
遮光膜23上には、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向するように形成されている。また遮光膜23上には、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図2には図示しないカラーフィルターが形成されるようにしてもよい。対向基板20の対向面上における、対向電極21上には、配向膜22が形成されている。
【0036】
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、上述したデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0037】
このような電気光学装置は、例えばプロジェクターのライトバルブとして用いられる。また、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダー型、モニタ直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等にも適用可能である。
【0038】
<液晶装置の製造方法>
次に、本実施形態に係る液晶装置の製造方法について、図3から図10を参照して説明する。ここに図3は、大型基板の構成を示す平面図である。また図4から図10は夫々、実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図である。尚、以下では、液晶装置を製造するための全行程のうち、本実施形態に係る液晶装置の製造方法に特徴的な一部の工程を示し、他の工程については説明を適宜省略するものとする。
【0039】
図3において、本実施形態に係る液晶装置の製造方法では、TFTアレイ基板10が複数配列された第1大型基板100と、同様に対向基板20(図2参照)が複数配列された第2大型基板(図示せず)が液晶を介して互いに貼り合わせられる。そして、互いに貼り合わされたTFTアレイ基板10及び対向基板の組が夫々他の組と分断されることにより、液晶装置が複数できあがることになる。尚、第1大型基板100は、本発明の「大型基板」の一例であり、以下では第1大型基板100上に形成される積層構造の製造工程(即ち、第1大型基板100と第2大型基板が貼り合わされる前の工程)について詳細に説明する。
【0040】
図4において、例えばSiO2等で構成された第1大型基板100上には、Al−Si−Cu合金膜等である導電膜210が形成される。導電膜210は、第1大型基板100のほぼ全面に形成される。この際、第1大型基板100の表面には、導電膜210に含まれる成分(例えばSiやCu等)が析出して残渣300が形成される。残渣300は、例えば導電膜210の成膜後に行われる熱処理によって析出する。
【0041】
図5において、導電膜210は、上層にレジスト510を設けてからのエッチングによって、周囲部分(即ち、図3におけるTFTアレイ基板10が存在していない部分)から除去される。
【0042】
図6において、周囲部分の導電膜210が除去された部分には、残渣300が残存することになる。このため、本実施形態に係る液晶装置の製造方法では特に、残渣300を除去するためのエッチングが行われる。尚、ここで用いられるレジスト510は、導電膜210を除去した際に用いたものを、そのまま用いてもよい。
【0043】
残渣300を除去するエッチングは、例えばCF4及びO2を用いたドライエッチングであり、残渣の成分や量に基づいてドライエッチングに用いられる材料及び各種条件を適宜設定することで、より効率的に残渣300を除去することが可能となる。また、フッ化アンモニウム(NH4F)20%、1水素1フッ化アンモニウム(NH4F・HF)10%、酢酸(CH3COOH)30%の混酸を用いたウェットエッチングによっても残渣300を除去することが可能である。更には、ドライエッチングとウェットエッチングの組み合わせ、或いは残渣300を除去できる方法であればエッチングとは異なる手法を用いても構わない。
【0044】
図7において、残渣300が除去されると、導電膜210上のレジスト510が剥離される。尚、導電膜210と重なる部分の残渣300は残されることになるが、この残渣300は、後述するラビング処理での不具合の原因とはならない。従って、導電膜210と重なる部分に残渣300が残されていたとしても、何ら問題とはならない。
【0045】
図8において、導電膜210及び第1大型基板100の周囲部分の上層には、例えばSiO2等からなる絶縁膜220が形成される。即ち、絶縁膜210が、導電膜210の上層から第1大型基板100のほぼ全面を覆うように形成される。
【0046】
図9において、絶縁膜220は、上層にレジスト520を設けてからのエッチングによって周囲部分から除去される。尚、レジスト520の大きさは、典型的には、導電膜210のエッチングを行った際のレジスタ510と同じ大きさとされるが、異なる大きさであっても構わない。
【0047】
図10において、周囲部分の絶縁膜220が除去されると、絶縁膜220上のレジスト520が剥離される。そして、ここでの図示は省略しているが、絶縁膜220の上層側には、配向膜16(図2参照)が形成され、ラビング処理が施される。尚、絶縁膜220及び配向膜16間、或いは導電膜210及び絶縁膜220間には、他の導電膜や絶縁膜が形成されても構わない。
【0048】
ここで、上述した周囲部分の残渣300が除去されずに残されていた場合の不具合について、図11及び図12を参照して詳細に説明する。ここに図11及び図12は夫々、比較例に係る液晶装置の製造方法の一部の工程を示す工程断面図(その1)である。
【0049】
図11に示すように、周囲部分の絶縁膜220をエッチングで除去する際に、周囲部分に残渣300が残されている比較例を考える。即ち、図6で示したような、周囲部分の残渣300を除去するエッチング工程が行われずに、その後の工程が行われる場合について考える。
【0050】
図12において、図11に示すような状態でエッチングを行うと、周囲部分に残された残渣300の影響を受けて、第1大型基板100の周囲部分の表面には予期せぬ凹凸が形成されてしまう。即ち、残渣300の凹凸が転写されたような状態となってしまう。このようにして形成された凹凸は、配向膜16にラビング処理を施す際に、ラビングスジの原因となってしまうおそれがある。
【0051】
これに対し、本実施形態に係る液晶装置の製造方法によれば、図10で示したように、周囲部分に残渣300の凹凸は転写されない。従って、配向膜16のラビング処理時にラビングスジが発生してしまうことを防止できる。
【0052】
尚、本願研究者の研究によれば、残渣300は第1大型基板100を載せる製造装置に存在するフック部分等(即ち、部分的に形状が異なる箇所)において、多く発生することが判明している。よって、このような残渣300の発生率が高い箇所で重点的に残渣300を除去するようにすれば、より効率的に製造工程を進めることができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る液晶装置の製造方法によれば、残渣300を好適に除去し、ラビングスジの発生を防止することができるため、品質の高い液晶装置を製造することが可能である。
【0054】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う液晶装置の製造方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、16…配向膜、20…対向基板、50…液晶層、100…第1大型基板、210…導電膜、220…絶縁膜、300…残渣、510,520…レジスト
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプロジェクターのライトバルブ等に用いられる液晶装置を製造する方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液晶装置の製造方法として、例えばAl−Si−Cu合金膜等のシリコンを含む合金膜を用いるものがある。上述したAl−Si−Cu合金膜は、例えば配線の微細化に伴い顕著となってきたストレスマイグレーション等を抑制するという有益な効果を有する一方で、加工する際にSiやCu等の残渣が発生してしまうという問題点を有している。このため、例えば特許文献1及び特許文献2では、エッチングによって残渣を除去するという技術が提案されている。また特許文献3では、熱処理後に急速冷却を行うことで、残渣の析出を低減しようとする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−359427号公報
【特許文献2】特開平10−326898号公報
【特許文献3】特開2000−340570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術は、例えば装置内に残渣が残ることにより発生する問題を想定しているが、このような残渣は装置外でも発生し、その装置外の残渣が製造工程において悪影響を及ぼしてしまうことも考えられる。
【0005】
具体的には、例えば装置を構成する基板が、複数の基板が格子状に配列された大型基板として製造される場合、複数の基板の周囲に位置する部分(即ち、大型基板の端の部分)にも上述したような残渣が発生してしまうおそれがある。この周囲部分は、実際には装置としては利用されない部分ではあるが、周囲部分の残渣は、例えば配向膜のラビング処理の際に、スジ状の欠陥(所謂、ラビングスジ)を発生させてしまう。
【0006】
上述した特許文献1から3には、大型基板の周囲部分の残渣やラビングスジに対する記載は何らされていない。従って上述した技術には、装置外に発生する残渣を除去し、ラビングスジの発生を防止することは困難であるという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、残渣を好適に除去し、ラビングスジの発生を防止することが可能な電気光学装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液晶装置の製造方法は上記課題を解決するために、複数の基板が配列された大型基板上に導電膜を形成する導電膜形成工程と、前記大型基板における前記複数の基板が配列されない周囲部分に形成された前記導電膜を除去する導電膜除去工程と、前記周囲部分に残存する残渣を除去する残渣除去工程と、前記導電膜及び前記周囲部分を覆うように絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、前記周囲部分に形成された前記絶縁膜を除去する絶縁膜除去工程と、前記絶縁膜の上層側に配向膜を形成する配向膜形成工程と、前記配向膜にラビング処理を施すラビング工程とを備える。
【0009】
本発明の液晶装置の製造方法では、例えば、画素電極及び該画素電極に電気的に接続された画素スイッチング用TFT等であるスイッチング素子が設けられた素子基板と、画素電極に対向する対向電極が設けられた対向基板との間に、液晶を挟持してなる液晶装置が製造される。素子基板は、例えば複数の基板が配置された大型基板上に、導電層及び層間絶縁膜が積層されることで製造される。
【0010】
本発明の液晶装置の製造方法によれば、先ず複数の基板が配列された大型基板上に導電膜が形成される。導電膜は、例えばAl−Si−Cu合金膜であり、SiO2等で構成された大型基板のほぼ全面に形成される。その後に、複数の基板が配列されない周囲部分(即ち、装置としては使用しない部分)に形成された導電膜が除去される。よって周囲部分では、大型基板の基板面が露出される。尚、周囲部分における導電膜が全て除去される必要はなく、周囲部分には部分的に導電膜が残されていても構わない。
【0011】
続いて本発明では特に、導電膜を除去する際に生じた周囲部分に残存する残渣(例えば、導電膜中のSiやCuが熱処理等の際に析出して出来たもの)が、エッチング等によって除去される。即ち、露出された大型基板表面に対して残渣除去処理が施され、残渣がない或いは影響を無視できるまでに少ない状態とされる。尚、エッチングによって残渣を除去する場合には、周囲部分の導電膜を除去する際に用いたレジストをそのまま用いることも可能である。
【0012】
ここで仮に、大型基板の周囲部分に残渣が残されたままであったとすると、導電膜の上層に形成される層をパターニングする際等に、残渣の凹凸が大型基板の表面に転写されてしまうおそれがある。しかるに本発明では、残渣が除去されているため、このような予期せぬ不具合が発生することを防止できる。具体的には、導電膜及び周囲部分を覆うように絶縁膜が形成され、周囲部分に形成された絶縁膜が除去される際に、残渣の凹凸が大型基板の表面に転写されてしまうことを防止することができる。
【0013】
絶縁膜の上層側には配向膜が形成され、配向膜には液晶の配向方向を規定するためのラビング処理が施される。この際、上述した残渣による凹凸が大型基板の表面に転写されていると、配向膜にラビングスジができてしまうおそれがある。即ち、凹凸が存在することによって、配向膜に予期しないスジが生じてしまい、装置の表示品質を低下させてしまうおそれがある。
【0014】
しかるに本発明では、上述したように、残渣が予め除去されているため、残渣に起因する凹凸は大型基板表面に存在していない。従って、配向膜にラビングスジができてしまうことを防止することができる。尚、周囲部分の残渣は全て除去されることが望ましいが、部分的に除去された場合であっても、上述した効果は相応に得られる。よって、例えば残渣の位置とラビングスジの発生条件との関係を考慮した上で残渣を除去するようにすれば、極めて効率的にラビングスジの発生を防止することができる。
【0015】
以上説明したように、本発明の液晶装置の製造方法によれば、残渣を好適に除去し、ラビングスジの発生を防止することができるため、品質の高い液晶装置を製造することが可能である。
【0016】
本発明の液晶装置の製造方法によって製造された液晶装置は、例えば投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサー、ビューファインダー型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器に適用することができる。
【0017】
本発明の液晶装置の製造方法の一態様では、前記残渣除去工程において、前記残渣はドライエッチングによって除去される。
【0018】
この態様によれば、大型基板の表面に生じた残渣を比較的容易かつ確実に除去することができる。ドライエッチングは、例えばCF4及びO2を用いて行われる。残渣除去工程では、残渣の成分や量に基づいてドライエッチングに用いられる材料及び各種条件を適宜設定することで、より効率的な残渣の除去を実現できる。
【0019】
本発明の液晶装置の製造方法の他の態様では、前記残渣除去工程において、前記残渣はウェットエッチングによって除去される。
【0020】
この態様によれば、大型基板の表面に生じた残渣を比較的容易かつ確実に除去することができる。ウェットエッチングは、例えばフッ化アンモニウム(NH4F)20%、1水素1フッ化アンモニウム(NH4F・HF)10%、酢酸(CH3COOH)30%の混酸を用いて行われる。残渣除去工程では、残渣の成分や量に基づいてウェットエッチングに用いられる材料及び各種条件を適宜設定することで、より効率的な残渣の除去を実現できる。
【0021】
尚、本態様におけるウェットエッチングと、上述したドライエッチングとを組み合わせて残渣を除去することも可能である。
【0022】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】液晶装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H´線断面図である。
【図3】大型基板の構成を示す平面図である。
【図4】実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図(その1)である。
【図5】実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図(その2)である。
【図6】実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図(その3)である。
【図7】実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図(その4)である。
【図8】実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図(その5)である。
【図9】実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図(その6)である。
【図10】実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図(その7)である。
【図11】比較例に係る液晶装置の製造方法の一部の工程を示す工程断面図(その1)である。
【図12】比較例に係る液晶装置の製造方法の一部の工程を示す工程断面図(その1)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0025】
<液晶装置>
先ず、本実施形態に係る液晶装置の製造方法によって製造される液晶装置の構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、液晶装置の全体構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´線断面図である。尚、以下の実施形態では、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例に挙げて説明する。
【0026】
図1及び図2において、本実施形態に係る液晶装置の製造方法によって製造される液晶装置では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板や、シリコン基板等である。対向基板20は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が封入されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。
【0027】
TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素電極が設けられた画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により、相互に接着されている。
【0028】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。尚、ギャップ材を、シール材52に混入されるものに加えて若しくは代えて、画像表示領域10a又は画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、配置するようにしてもよい。
【0029】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。尚、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0030】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0031】
TFTアレイ基板10上における対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域には、両基板間を上下導通材で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0032】
図2において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層構造の詳細な構成については図2では図示を省略してあるが、この積層構造の上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料からなる画素電極9aが、画素毎に所定のパターンで島状に形成されている。
【0033】
画素電極9aは、対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面する側の表面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成されている。
【0034】
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上には、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮光膜23によって区切られた領域が、例えばプロジェクター用のランプや直視用のバックライトから出射された光を透過させる開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
【0035】
遮光膜23上には、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向するように形成されている。また遮光膜23上には、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図2には図示しないカラーフィルターが形成されるようにしてもよい。対向基板20の対向面上における、対向電極21上には、配向膜22が形成されている。
【0036】
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、上述したデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0037】
このような電気光学装置は、例えばプロジェクターのライトバルブとして用いられる。また、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダー型、モニタ直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等にも適用可能である。
【0038】
<液晶装置の製造方法>
次に、本実施形態に係る液晶装置の製造方法について、図3から図10を参照して説明する。ここに図3は、大型基板の構成を示す平面図である。また図4から図10は夫々、実施形態に係る液晶装置の製造方法の各工程を、順を追って示す工程断面図である。尚、以下では、液晶装置を製造するための全行程のうち、本実施形態に係る液晶装置の製造方法に特徴的な一部の工程を示し、他の工程については説明を適宜省略するものとする。
【0039】
図3において、本実施形態に係る液晶装置の製造方法では、TFTアレイ基板10が複数配列された第1大型基板100と、同様に対向基板20(図2参照)が複数配列された第2大型基板(図示せず)が液晶を介して互いに貼り合わせられる。そして、互いに貼り合わされたTFTアレイ基板10及び対向基板の組が夫々他の組と分断されることにより、液晶装置が複数できあがることになる。尚、第1大型基板100は、本発明の「大型基板」の一例であり、以下では第1大型基板100上に形成される積層構造の製造工程(即ち、第1大型基板100と第2大型基板が貼り合わされる前の工程)について詳細に説明する。
【0040】
図4において、例えばSiO2等で構成された第1大型基板100上には、Al−Si−Cu合金膜等である導電膜210が形成される。導電膜210は、第1大型基板100のほぼ全面に形成される。この際、第1大型基板100の表面には、導電膜210に含まれる成分(例えばSiやCu等)が析出して残渣300が形成される。残渣300は、例えば導電膜210の成膜後に行われる熱処理によって析出する。
【0041】
図5において、導電膜210は、上層にレジスト510を設けてからのエッチングによって、周囲部分(即ち、図3におけるTFTアレイ基板10が存在していない部分)から除去される。
【0042】
図6において、周囲部分の導電膜210が除去された部分には、残渣300が残存することになる。このため、本実施形態に係る液晶装置の製造方法では特に、残渣300を除去するためのエッチングが行われる。尚、ここで用いられるレジスト510は、導電膜210を除去した際に用いたものを、そのまま用いてもよい。
【0043】
残渣300を除去するエッチングは、例えばCF4及びO2を用いたドライエッチングであり、残渣の成分や量に基づいてドライエッチングに用いられる材料及び各種条件を適宜設定することで、より効率的に残渣300を除去することが可能となる。また、フッ化アンモニウム(NH4F)20%、1水素1フッ化アンモニウム(NH4F・HF)10%、酢酸(CH3COOH)30%の混酸を用いたウェットエッチングによっても残渣300を除去することが可能である。更には、ドライエッチングとウェットエッチングの組み合わせ、或いは残渣300を除去できる方法であればエッチングとは異なる手法を用いても構わない。
【0044】
図7において、残渣300が除去されると、導電膜210上のレジスト510が剥離される。尚、導電膜210と重なる部分の残渣300は残されることになるが、この残渣300は、後述するラビング処理での不具合の原因とはならない。従って、導電膜210と重なる部分に残渣300が残されていたとしても、何ら問題とはならない。
【0045】
図8において、導電膜210及び第1大型基板100の周囲部分の上層には、例えばSiO2等からなる絶縁膜220が形成される。即ち、絶縁膜210が、導電膜210の上層から第1大型基板100のほぼ全面を覆うように形成される。
【0046】
図9において、絶縁膜220は、上層にレジスト520を設けてからのエッチングによって周囲部分から除去される。尚、レジスト520の大きさは、典型的には、導電膜210のエッチングを行った際のレジスタ510と同じ大きさとされるが、異なる大きさであっても構わない。
【0047】
図10において、周囲部分の絶縁膜220が除去されると、絶縁膜220上のレジスト520が剥離される。そして、ここでの図示は省略しているが、絶縁膜220の上層側には、配向膜16(図2参照)が形成され、ラビング処理が施される。尚、絶縁膜220及び配向膜16間、或いは導電膜210及び絶縁膜220間には、他の導電膜や絶縁膜が形成されても構わない。
【0048】
ここで、上述した周囲部分の残渣300が除去されずに残されていた場合の不具合について、図11及び図12を参照して詳細に説明する。ここに図11及び図12は夫々、比較例に係る液晶装置の製造方法の一部の工程を示す工程断面図(その1)である。
【0049】
図11に示すように、周囲部分の絶縁膜220をエッチングで除去する際に、周囲部分に残渣300が残されている比較例を考える。即ち、図6で示したような、周囲部分の残渣300を除去するエッチング工程が行われずに、その後の工程が行われる場合について考える。
【0050】
図12において、図11に示すような状態でエッチングを行うと、周囲部分に残された残渣300の影響を受けて、第1大型基板100の周囲部分の表面には予期せぬ凹凸が形成されてしまう。即ち、残渣300の凹凸が転写されたような状態となってしまう。このようにして形成された凹凸は、配向膜16にラビング処理を施す際に、ラビングスジの原因となってしまうおそれがある。
【0051】
これに対し、本実施形態に係る液晶装置の製造方法によれば、図10で示したように、周囲部分に残渣300の凹凸は転写されない。従って、配向膜16のラビング処理時にラビングスジが発生してしまうことを防止できる。
【0052】
尚、本願研究者の研究によれば、残渣300は第1大型基板100を載せる製造装置に存在するフック部分等(即ち、部分的に形状が異なる箇所)において、多く発生することが判明している。よって、このような残渣300の発生率が高い箇所で重点的に残渣300を除去するようにすれば、より効率的に製造工程を進めることができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る液晶装置の製造方法によれば、残渣300を好適に除去し、ラビングスジの発生を防止することができるため、品質の高い液晶装置を製造することが可能である。
【0054】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う液晶装置の製造方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、16…配向膜、20…対向基板、50…液晶層、100…第1大型基板、210…導電膜、220…絶縁膜、300…残渣、510,520…レジスト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板が配列された大型基板上に導電膜を形成する導電膜形成工程と、
前記大型基板における前記複数の基板が配列されない周囲部分に形成された前記導電膜を除去する導電膜除去工程と、
前記周囲部分に残存する残渣を除去する残渣除去工程と、
前記導電膜及び前記周囲部分を覆うように絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記周囲部分に形成された前記絶縁膜を除去する絶縁膜除去工程と、
前記絶縁膜の上層側に配向膜を形成する配向膜形成工程と、
前記配向膜にラビング処理を施すラビング工程と
を備えることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項2】
前記残渣除去工程において、前記残渣はドライエッチングによって除去されることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項3】
前記残渣除去工程において、前記残渣はウェットエッチングによって除去されることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項1】
複数の基板が配列された大型基板上に導電膜を形成する導電膜形成工程と、
前記大型基板における前記複数の基板が配列されない周囲部分に形成された前記導電膜を除去する導電膜除去工程と、
前記周囲部分に残存する残渣を除去する残渣除去工程と、
前記導電膜及び前記周囲部分を覆うように絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記周囲部分に形成された前記絶縁膜を除去する絶縁膜除去工程と、
前記絶縁膜の上層側に配向膜を形成する配向膜形成工程と、
前記配向膜にラビング処理を施すラビング工程と
を備えることを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項2】
前記残渣除去工程において、前記残渣はドライエッチングによって除去されることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項3】
前記残渣除去工程において、前記残渣はウェットエッチングによって除去されることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−158529(P2011−158529A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17921(P2010−17921)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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