説明

電気光学装置の評価方法及び評価装置

【課題】液晶パネル等の電気光学装置の評価方法の容易化を図る。
【解決手段】電気光学装置の評価方法は、表示領域に配列された複数の画素に駆動電圧を夫々供給することにより画像を表示可能な電気光学装置の評価方法であって、複数の画素に相異なる駆動電圧を印加することにより表示領域の平面内にて所定パターンの階調分布を有するサンプル画像(40、41、42)を表示させる表示駆動工程と、表示されたサンプル画像を撮像する撮像工程と、撮像されたサンプル画像を基に表示領域における複数の画素の各々の光透過率を求める評価工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶パネル等の電気光学装置の光透過率―駆動電圧特性(即ちTV特性)を評価する電気光学装置の評価方法及び該評価方法を用いた評価装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置の評価方法では、例えばライトバルブとして液晶プロジェクタに搭載される液晶パネルが評価される。このような液晶パネルの評価方法では、基板上に配列された画素に所定の駆動電圧を印加し、該画素の光透過率を測定することによってTV特性を求める手法が用いられている。
【0003】
例えば非特許文献1では、基板上に配列された画素に所定の駆動電圧を印加し、個々の画素について光透過率を測定することにより、TV特性を求める方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】木村直博・藤岡清登著「液晶ディスプレイの原理と最近の動向」日本放射線技術学会雑誌 2004年10月 第60巻 第10号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の技術では、基板上に配列された多数の画素に対して、個別の画素毎に光透過率を測定する必要があるため、全画素について評価を完了するまでに、多大な時間を費やしてしまう。即ち、上述した技術では、評価を行う際の作業効率が著しく低下してしまい、実践的でない。
【0006】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、電気光学装置の表示特性を容易に評価することが可能な電気光学装置の評価方法及びそのような評価方法を用いた評価装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の電気光学装置の評価方法は上記課題を解決するために、表示領域に配列された複数の画素に駆動電圧を夫々供給することにより画像を表示可能な電気光学装置の評価方法であって、前記複数の画素に相異なる駆動電圧を印加することにより前記表示領域の平面内にて所定パターンの階調分布を有するサンプル画像を表示させる表示駆動工程と、前記表示されたサンプル画像を撮像する撮像工程と、前記撮像されたサンプル画像を基に前記複数の画素の各々について光透過率を求める評価工程とを備える。
【0008】
本発明に係る第1の電気光学装置の評価方法によって評価される電気光学装置は、例えば一対の基板間に液晶等の電気光学物質が挟持されることによって構成されており、複数の画素がマトリクス状に配置された、例えば画素領域或いは画像表示領域とも呼ばれる、表示領域において、電気光学物質の配向状態の制御が行われることで画像が表示される。具体的には、画素毎に駆動電圧を印加し、各画素の光透過率を制御することによって画像表示を行う。
【0009】
表示駆動工程では、評価対象である電気光学装置にサンプル画像を表示させる。サンプル画像の表示は、表示領域に配列された個々の画素に対し、駆動電圧が印加されることによって行われる。サンプル画像は、表示領域の平面内にて所定パターンの階調分布を有し、言い換えれば、各画素における光透過率が予め設定された既知の平面分布を有する。サンプル画像は、典型的には、所定パターンの階調分布を有する単一種類のフィールド或いはフレーム画像(即ち静止画)であるが、大なり小なり断続的或いは連続的に動く複数枚のフィールド或いはフレーム画像(即ち動画)であってもよい。
【0010】
本発明では特に、複数の画素に相異なる駆動電圧を印加することによりサンプル画像が表示される。つまり、複数の画素には相異なる駆動電圧が印加されるので、本発明におけるサンプル画像は、少なくとも2種類以上の階調が含まれている。ここに「相異なる駆動電圧」とは、m(但しmは2以上の自然数)個の画素に対し、n(但しnはm以下であり且つ2以上の自然数)個の相異なる駆動電圧を意味する。全画素中、二つ以上の画素に対して同一駆動電圧が印加されることも、ここに言う「複数の画素には相異なる駆動電圧が印加される」の一種である。言い換えれば、サンプル画像は、同一階調の画素を複数或いは多数含んでいても構わない。
【0011】
このように複数の階調からなる階調分布を有するサンプル画像を、次に説明する撮像工程及び評価工程において処理することによって、電気光学装置のTV特性(Transparency vs. Voltage特性、即ち「光透過率―駆動電圧特性」)を容易に求めることができる。
【0012】
撮像工程では、電気光学装置に表示されたサンプル画像を撮像する。撮像は、例えば電気光学装置の表示面(即ち、画像表示が行われる面)に対向するように配置されたCCD(Charged Coupled Device)カメラ等の撮像手段を用いて行われる。例えば撮像手段としてCCDカメラを用いた場合、電気光学装置の表示面から射出された表示光は、CCDカメラに取り込まれることによって電気信号に変換される。この場合、電気信号に変換された情報は、例えばCCDカメラに接続されたPC等に転送される。
【0013】
ここで、本発明における撮像工程では、撮像が電気光学装置の表示領域全体について行われることにより、サンプル画像を一度に取り込むことができる。上述の非特許文献に開示された技術では、画素毎に撮像を行う必要があるため、表示領域全体について撮像を行い、光透過率を評価するためには多大な時間を要してしまう。その点、本発明によれば、表示領域全体について一度で撮像を完了させることができるので、評価に要する時間を極めて短く抑えることができる。
【0014】
評価工程では、撮像されたサンプル画像を解析することにより、画素の各々について光透過率を求める。例えば、CCDカメラ等の撮像手段によって電気信号に変換されたサンプル画像の情報をPC等の解析装置に転送し、サンプル画像の輝度分布等を解析することにより、各画素の光透過率を求めることができる。PC内に予め用意されたプログラム等に基づいて解析されることにより、TV特性を求めることも可能である。
【0015】
尚、各画素に印加された駆動電圧は、表示駆動工程において駆動電圧を印加する際に予め判明している。例えば、サンプル画像中における各画素での階調(即ち光透過率)が求められると、サンプル画像を構成する画素データが有する階調データにより示される本来表示されるべき階調或いは階調値(即ち画素毎の基準階調或いは基準階調値)と画素単位で比較され、画素単位で、より高階調若しくは低階調である又は適切な階調であるなどの評価が可能となる。
【0016】
以上のようにサンプル画像を一括で撮像し解析することで、容易に電気光学装置のTV特性を求めることができる。
【0017】
以上説明したように、本発明によれば短時間で、効率的に電気光学装置のTV特性を得ることができるので、電気光学装置の評価における作業効率を格段に向上させることができる。
【0018】
本発明の電気光学装置の第1の評価方法の一の態様では、前記表示駆動工程において、前記画素のうち、一の画素から所定の距離に配置された複数の他の画素が等しい階調を有するように前記駆動電圧が印加されることにより、前記サンプル画像が、前記一の画素を中心とした同心円形状を有する。
【0019】
撮像工程において、例えばCCDカメラ等の撮像手段を用いた場合、画素の配置によって、画素から撮像手段への表示光の入射角度が異なるため、得られる光透過率に少なからず誤差が生じてしまう場合がある。例えば、電気光学装置の表示面の法線方向から見た場合に、CCDカメラの上方に位置する画素と、下方側に位置する画素とでは、仮に真に同じ光透過率を有しているとしても、撮像手段への入射角度の違いによって、両者の光透過率に誤差が生じてしまう場合が考えられる。このような傾向は、CCDカメラのレンズのサイズに対して、表示領域のサイズが大きい場合に顕在化する。
【0020】
本態様におけるサンプル画像を表示すると、典型的には表示領域又はサンプル画像の中心に、或るいは中央寄りに位置する一の画素を中心に、外側に向かう複数のライン上に配置された複数の画素は、互いに同じ階調分布を有しているため、このようなCCDカメラの表示特性に基づく誤差を軽減或いは解消することができる。例えば、複数の放射線上の複数の画素について夫々光透過率を解析し、それらの平均値を算出することで、誤差の少ない高精度なTV特性を評価することが可能となる。
【0021】
尚、本発明に係る「同心円」は、楕円でも真円でもよい意味であり、例えば表示領域(言い換えれば、サンプル画像の輪郭)が横長であれば、この「同心円」としては、横長の楕円が好適である。
【0022】
上述のサンプル画像が同心円形状を有する態様では、前記表示されたサンプル画像は、前記一の画素を通る複数の分割線により分割されており、相隣り合う前記分割線間に挟まれ、第1の階調分布を有する第1領域と、前記サンプル画像のうち前記一の領域を除く他の領域であって、前記第1の階調分布が所定の基準階調に対して反転された第2の階調分布を有する第2領域とを有し、前記評価工程は、前記第1及び第2領域において夫々求められた第1及び第2光透過率を平均化することにより、前記光透過率を求めてもよい。
【0023】
この態様では、電気光学装置の表示領域に表示されるサンプル画像は第1領域及び第2領域を含んで構成されている。第1領域では、例えばサンプル画像の中心にある一の画素から外側に向かって次第に階調が黒くなるような階調分布を有し、第2領域では逆に、外側から中心に位置している一の画素に向かって階調が黒くなるような階調分布を有するように、電気光学装置にサンプル画像が表示される。
【0024】
撮像工程において、例えばCCDカメラ等の撮像手段を用いた場合、中心に配置された画素に対しては画角が小さいため、画素の階調を良好な精度で捉えることができるが、画角の大きい外側の画素に対しては、撮像手段の特性によって、画素の階調を捉える精度誤差が大きくなってしまうことが考えられる。そこで、本態様では第1領域と第2領域とは、中心に配置された一の画素から見て、互いに逆の階調分布を有するサンプル画像を表示するので、夫々の領域において光透過率を求め、それらを平均化して最終的な光透過率を求めることによって、視野角の違いによって生じる誤差の影響を軽減或いは排除することができる。その結果、より高精度なTV特性を評価することが可能となる。
【0025】
本発明に係る第2の電気光学装置の評価方法は上記課題を解決するために、表示領域に配列された複数の画素に駆動電圧を夫々供給することにより画像を表示可能な電気光学装置の評価方法であって、前記複数の画素に相異なる駆動電圧を印加することにより前記表示領域の平面内にて第1の階調分布を有する第1サンプル画像を表示させる第1表示駆動工程と、前記表示された第1サンプル画像を撮像する第1撮像工程と、前記撮像された第1サンプル画像を基に前記複数の画素の各々について第1光透過率を求める第1評価工程と、前記複数の画素に相異なる駆動電圧を夫々印加することにより、前記平面内にて前記第1の階調分布に比べて低い階調から構成される第2の階調分布を有する第2サンプル画像を表示させる第2表示駆動工程と、前記表示された第2サンプル画像を撮像する第2撮像工程と、前記撮像された第2サンプル画像を基に前記複数の画素の各々について第2光透過率を求める第2評価工程と前記第1及び第2光透過率を平均化することにより、光透過率を求める算出工程とを備える。
【0026】
この態様によれば、第1及び第2サンプル画像の2種類のサンプル画像について、第1及び第2光透過率を求め、それらを平均化することにより、より精度の高いTV特性を評価することができる。ここで、第2サンプル画像は、第1の階調分布に比べて低い階調から構成される。
【0027】
撮像工程において用いられるCCDカメラ等の撮像手段では、精度よく撮像を行うことのできる階調レンジが定められている。そのため、撮像される対象画像の階調が、撮像手段の階調レンジを超えてしまうと、TV特性を正しく求めることが困難になってしまう。本態様では、まず所定の階調レンジを有する第1サンプル画像を電気光学装置に表示して、第1サンプル画像の階調レンジをカバーする階調レンジを有する適切な撮像手段を用いて第1光透過率を求める。
【0028】
次に、第1サンプル画像の階調レンジよりも低い階調レンジを有する第2サンプル画像を電気光学装置に表示して、第2サンプル画像の階調レンジをカバーする階調レンジを有する適切な撮像手段を用いて第2光透過率を求める。そして、第1及び第2光透過率のうち誤差の少ない領域を互いに組み合わせることによって、誤差の少ない光透過率を得ることができる。その結果、TV特性を高精度で求めることができ、電気光学装置をより適切に評価することが可能となる。
【0029】
本発明に係る第1の電気光学装置の評価装置は上記課題を解決するために、表示領域に配列された複数の画素に駆動電圧を夫々供給することにより画像を表示可能な電気光学装置の評価装置であって、前記複数の画素に相異なる駆動電圧を印加することにより前記表示領域の平面内にて所定パターンの階調分布を有するサンプル画像を表示させる表示駆動手段と、前記表示されたサンプル画像を撮像する撮像手段と、前記撮像されたサンプル画像を基に前記表示領域における前記複数の画素の各々の光透過率を求める評価手段とを備える。
【0030】
本発明に係る評価装置によれば、上述した本発明に係る第1の評価方法の場合と同様に、極めて短時間に且つ容易に電気光学装置の表示特性を得ることができる。
【0031】
尚、本発明の評価装置においても、上述した本発明に係る第1の評価方法における各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0032】
本発明に係る第2の電気光学装置の評価装置は上記課題を解決するために、表示領域に配列された複数の画素に駆動電圧を夫々供給することにより画像を表示可能な電気光学装置の評価装置であって、前記複数の画素に相異なる駆動電圧を印加することにより前記表示領域の平面内にて第1の階調分布を有する第1サンプル画像を表示させる第1表示駆動手段と、前記表示された第1サンプル画像を撮像する第1撮像手段と、前記撮像された第1サンプル画像を基に前記表示領域における前記複数の画素の各々の第1光透過率を求める第1評価手段と、前記複数の画素に相異なる駆動電圧を夫々印加することにより、前記平面内にて前記第1の階調分布に比べて低い階調から構成される第2の階調分布を有する第2サンプル画像を表示させる第2表示駆動手段と、前記表示された第2サンプル画像を撮像する第2撮像手段と、前記撮像された第2サンプル画像を基に前記表示領域における前記複数の画素の各々の第2光透過率を求める第2評価手段と、前記第1及び第2光透過率を平均化することにより、光透過率を求める算出手段とを備える。
【0033】
本発明に係る評価装置によれば、上述した本発明に係る第2の評価方法の場合と同様に、極めて短時間に且つ容易に電気光学装置の表示特性を得ることができる。
【0034】
尚、本発明の評価装置においても、上述した本発明に係る第2の評価方法における各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態に係る評価装置と液晶パネルの具体的な設置例を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る評価装置の検査対象である液晶パネルの概略構成を示すブロック回路図である。
【図3】第1実施形態において液晶パネルの画像表示領域に表示されるサンプル画像を示す平面図である。
【図4】図3に示すサンプル画像を解析することにより得られるTV特性のグラフ図である。
【図5】第2実施形態において液晶パネルの画像表示領域に表示されるサンプル画像を示す平面図である。
【図6】図5に示すサンプル画像を解析することにより得られるTV特性のグラフ図である。
【図7】第3実施形態において液晶パネルの画像表示領域に表示されるサンプル画像を示す平面図である。
【図8】図7に示すサンプル画像を解析することにより得られるTV特性のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
まず、図1から図4を参照して、第1実施形態に係る評価装置100について説明する。尚、第1実施形態に係る評価装置100は、本発明に係る第1の電気光学装置の評価装置の一例であり、本発明に係る第1の電気光学装置の評価方法の一例を実行することができる。
【0037】
図1は、本実施形態に係る評価装置100と、検査対象である電気光学装置の一例である液晶パネル200の具体的な設置例を示す斜視図である。
【0038】
検査装置100は、液晶パネル200に表示された画像を撮像するためのCCDカメラ110及び、CCDカメラ110によって撮像された画像データを解析するためのPC120、評価対象である液晶パネル200を駆動するための画像信号や種々の制御信号を供給する信号発生器130から構成されている。尚、液晶パネル200の具体的な構造については後述する。
【0039】
液晶パネル200の画像表示領域10aには、サンプル画像40(図4参照)が表示される。画像表示領域10aに表示されたサンプル画像40は、画像表示領域10aに対向するように固定配置されたCCDカメラ110によって撮像される。CCDカメラ110は、サンプル画像40の画像情報を電気信号として、解析用のPC120に転送する。PC120は、CCDカメラ110から受信した電気信号を、予め内蔵されたROM等に格納されたプログラム等に基づいて解析を行い、画像表示領域10aに配列された画素部72(図2参照)の光透過率を算出する。
【0040】
画像表示領域10aに表示されたサンプル画像40は、画像表示領域10aに対向するように固定配置されたCCDカメラ110によって撮像される。即ち、本実施形態におけるCCDカメラ110は画像表示領域10a上を走査することなく、固定配置された状態で画像表示領域10aの全範囲を撮像することができる。そのため、上述の背景技術に示したような画素毎に光透過率の評価を行う場合と異なり、画像表示領域10aの全範囲における画素に対して、まとめて光透過率の評価を行うことができる。その結果、TV特性を求めるために要する時間を大幅に短縮することができ、液晶パネル200の評価に関する作業効率を格段に高めることができる。
【0041】
ここで評価対象である液晶パネル200の構造について、図2を参照して具体的に説明する。図2は、液晶パネル200の概略構成を示すブロック回路図である。
【0042】
図2において、液晶パネル200は、画像表示領域10aの周辺に、データ線駆動回路101と、走査線駆動回路104とを備えて構成されている。データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104は、評価装置100の信号発生器130から所定の画像信号及び制御信号等の電気信号を取得し、画像表示領域10aに画像信号に対応する画像を表示する。
【0043】
画像表示領域10aには、液晶(LCD)等を含んでなる複数の画素部72がマトリクス状に配列されており、当該画素部72に画像信号に対応する駆動電圧が印加されることによって画像を表示する。具体的には、図2に示すように、走査線3aと、データ線6aとが、夫々X方向及びY方向に延在しており、走査線3a及びデータ線6aの交差に対応するようにマトリクス状に配列された画素スイッチング用TFT30及び駆動電圧の保持特性を向上させるための蓄積容量70が配置されることによって、画素部72が形成されている。本実施形態では特に、画像表示領域10aには、m本の走査線3aが、X(行)方向に延在して形成され、n本のデータ線6aがY(列)方向に沿って延在して形成されている。また、m本の走査線3aの夫々には、走査信号G(但し、各走査線に対応する走査信号をG1からGmと表す)が供給されることにより、対応する画素部72を書き込み可能な状態にすることができる。
【0044】
走査線駆動回路101は、評価装置100の信号発生器130から、垂直スタートパルスDY、走査側転送クロックCLYを取得し、表示パネル1の走査線3aに対して走査信号G1、G2、G3、…、Gmを出力する。垂直スタートパルスDYは、フレーム毎に走査側(Y側)に対する走査の開始タイミングで出力されるパルス信号である。走査側転送クロックCLYは、走査側(Y側)の水平走査を規定する信号である。また、走査線駆動回路101には、走査線駆動回路101を駆動するための電源電圧である走査線駆動回路用低位側電圧(即ち接地電位)VSSYおよび走査線駆動回路用高位側電圧VDDYが印加される。
【0045】
データ線駆動回路101は、評価装置100の信号発生器130から、水平スタートパルスDXと、データ転送クロックCLXと、画像信号VIDEOとを取得し、表示パネル1のデータ線6aに対してデータ信号S1、S2、S3、…、Snを出力する。水平スタートパルスDXは、水平期間毎にデータ線駆動回路101へデータ転送を開始するタイミングを決めるパルス信号であって、走査側転送クロックCLYのレベル遷移(即ち、立ち上がり及び立ち下がり)に同期して出力される。データ転送クロックCLXは、データ線駆動回路101へデータを転送するタイミングを規定する信号である。また、データ線駆動回路104には、データ線駆動回路104を駆動するための電源電圧であるデータ線駆動回路用低位側電圧(即ち接地電位)VSSXおよびデータ線駆動回路用高位側電圧VDDXが印加される。
【0046】
続いて液晶パネル200の画像表示領域10aに表示されるサンプル画像40について、詳しく説明する。図3は、本実施形態において液晶パネル200の画像表示領域10aに表示されるサンプル画像40を示す平面図である。
【0047】
サンプル画像40は、評価装置100のうち信号発生器130から、液晶パネル200のデータ線駆動回路101及び走査線駆動回路104に、所定の画像信号及び制御信号等の電気信号が供給されることにより表示される。本実施形態において評価対象とされる液晶パネル200はノーマリーブラックモードであり、各画素の単位で印加された駆動電圧の大きさが大きくなるにつれて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。
【0048】
本実施形態では、信号発生器130から供給された各種の信号に基づいて、液晶パネル200の画像表示領域10aには、図3(a)に示すサンプル画像40が表示される。即ち、信号発生器130は、画像表示領域10aの中心からその周辺の領域に向かって、次第に表示色が黒くなるように、画像表示領域10aに配列された画素部72に駆動電圧を印加する。
【0049】
尚、図3(a)に示すように連続的に階調が変化するグラデーション調の階調を有するサンプル画像40を用いる代わりに、図3(b)に示すように、同心円状を有し、互いに異なる階調を有する複数の同階調領域からなるサンプル画像40を用いてもよい。
【0050】
画像表示領域10aに表示されたサンプル画像40は、CCDカメラ110によって撮像されることによって電気信号に変換され、PC120に転送される。PC120は、転送された電気信号に基づいて、画像表示領域10a上に配列された各画素部72の光透過率を算出する。そして、信号発生器130から液晶パネル200に供給された駆動電圧と、算出した光透過率から、画素部72のTV特性を求めることができる。
【0051】
ここで、図4を参照して、図3に示すサンプル画像40から求められるTV特性について説明する。図4は、図3に示すサンプル画像を解析することにより得られるTV特性のグラフ図である。
【0052】
図4に示すグラフ図では、画素部72に印加される駆動電圧の大きさを横軸に示し、画素部72の光透過率を縦軸に示している。上述したように、本実施形態において評価される液晶パネル200はノーマリーブラックであるため、駆動電圧が小さい場合には階調が低いために光透過率が低い。一方、駆動電圧を増加するに従い、次第に画素部72の光透過率が上昇し、階調が白色に近づいている。
【0053】
図4に示すTV特性は、黒色から白色の階調を含む図3に示すサンプル画像を撮像することによって得ることができる。
<第2実施形態>
続いて、図5及び図6を参照して、第2実施形態に係る評価装置100について説明する。図5は、第2実施形態において液晶パネル200の画像表示領域10aに表示されるサンプル画像41を示す平面図である。図6は、第2実施形態において図5に示すサンプル画像41を解析することにより得られるTV特性のグラフ図である。尚、第2実施形態に係る評価装置100は、液晶パネル200に表示されるサンプル画像が異なる点を除き、上述の第1実施形態と同様である。
【0054】
図5(a)に示すように、本実施形態において画像表示領域10aに表示されるサンプル画像41は、右上側及び左下側の領域(即ち、図5(a)においてaで示した領域)において、画像表示領域10aの中心からその周辺の領域に向かって階調が次第に白くなるように、液晶パネル200に駆動電圧を供給することによって表示されている。一方、画像表示領域10aに表示されるサンプル画像41は、右下側及び左上側の領域(即ち、図5(a)においてbで示した領域)では、画像表示領域10aの中心からその周辺の領域に向かって、階調が次第に黒くなるように、液晶パネル200に駆動電圧が供給されることによって表示されている。
【0055】
尚、図5(a)に示すように連続的に階調が変化するグラデーション調の階調を有するサンプル画像41を用いる代わりに、図5(b)に示すように、互いに異なる階調を有する複数の同階調領域からなるサンプル画像41を用いてもよい。
【0056】
CCDカメラ110は、液晶パネル200の法線方向から見たときに画像表示領域10aの中心に位置するように配置されている(図1参照)。画像表示領域10aの中心付近(即ち、CCDカメラ110の直下)に配置された画素部72から射出される表示光は、CCDカメラ110に対して画角がない状態で入射する。一方、その周辺領域(即ち、CCDカメラ110の直下以外の領域)に配置された画素部72から射出される表示光は、CCDカメラ110に対して斜めに入射する。即ち画角が大きくなる。このように、画像表示領域10a上において画素部72が配置されている位置によって、CCDカメラ110への入射光の侵入角度、即ちCCDカメラ110の画角が異なる。実際のCCDカメラ110は、このような画角に違いがあると、PC120に転送するための電気信号に誤差が生じてしまう。
【0057】
図5において、領域aでは、階調が黒く表示された領域に配置された画素部72からの表示光はCCDカメラ110に対して視野角が少ないが、階調が白く表示された領域に配置された画素部72からの表示光はCCDカメラ110に対して画角が大きい。そのため、領域aに配列された画素部72から求めたTV特性(図6(a)参照)は、光透過率の小さい範囲では視野角による誤差は少ないものの、光透過率の大きい範囲では視野角による誤差は大きくなってしまう。
【0058】
一方、逆に、領域bでは、階調が白く表示された領域に配置された画素部72からの表示光はCCDカメラ110に対して視野角が少ないが、階調が黒く表示された領域に配置された画素部72からの表示光はCCDカメラ110に対して画角が大きい。そのため、領域bに配列された画素部72から求めたTV特性(図6(b)参照)は、光透過率の大きい範囲では画角の大小による誤差は少ないものの、光透過率の小さい範囲では画角の大小による誤差は大きくなってしまう。
【0059】
そこで、本実施形態では、図6(a)及び(b)に示す夫々のTV特性をPC120にて平均化することにより、画角の影響による誤差を軽減或いは打ち消すことができる。このように、一部の領域で諧調を反転させたサンプル画像41を表示させることによって、液晶パネル200のTV特性をより精度よく求めることができ、より信頼性の高いデータに基づいて液晶パネル200を評価することができる。
<第3実施形態>
続いて、図7及び図8を参照して、第3実施形態に係る評価装置100について説明する。尚、第3実施形態に係る評価装置100は、本発明に係る第2の電気光学装置の評価装置の一例であり、本発明に係る第2の電気光学装置の評価方法の一例を実行することができる。
【0060】
図7は、第3実施形態において液晶パネル200の画像表示領域10aに表示されるサンプル画像42を示す平面図である。図8は、第3実施形態において図7に示すサンプル画像42を解析することにより得られるTV特性のグラフ図である。
【0061】
一般的にCCDカメラは精度よく撮像を行うことのできる階調レンジが定められている。本実施形態における撮像対象(即ち、画像表示領域10aに表示されるサンプル画像42)の階調は、0から225の階調レンジを有している。この場合、撮像を行うCCDカメラ110の階調レンジは、0から225よりも広いことが要求されるが、必ずしも、このような十分広い階調レンジを有するCCDカメラを使用できない状況が考えられる。そこで、本実施形態では、0から150の階調レンジを有する第1CCDカメラ111と、150から225の階調レンジを有する第2CCDカメラ112とを順に用いて評価を行う。
【0062】
まず、低い階調レンジ(0から150)を有する第1CCDカメラ111を用いてTV特性の評価を行う。第1CCDカメラ111の設置方法は、上述の第1実施形態の場合と同様である。この場合、液晶パネル200の画像表示領域10aには、図7(a)に示す0から150の階調を含むサンプル画像42aを表示する。
【0063】
尚、図7(a)に示すように連続的に階調が変化するグラデーション調の階調を有するサンプル画像42aを用いる代わりに、図7(a´)に示すように、互いに異なる階調を有する複数の同階調領域からなるサンプル画像42aを用いてもよい。
【0064】
評価装置100は上述の各種形態と同様に、サンプル画像42aに基づいて図8(a)に示すTV特性を求めることができる。尚、図8(a)に示すTV特性のうち、第1CCDカメラ111を用いて評価できる領域は実線部のみであり、点線部は次に説明する第2CCDカメラ112を用いて求めることができる。
【0065】
次に、第1CCDカメラ111を取り外し、代わりに高い階調レンジ(150から225)を有する第2CCDカメラ112を同様に設置してTV特性の評価を行う(図1参照)。この場合、液晶パネル200の画像表示領域10aには、図7(b)に示す150から225の階調を含むサンプル画像42bを表示される。
【0066】
尚、図7(b)に示すように連続的に階調が変化するグラデーション調の階調を有するサンプル画像42bを用いる代わりに、図7(b´)に示すように、互いに異なる階調を有する複数の同階調領域からなるサンプル画像42bを用いてもよい。
【0067】
評価装置100は上述の各種形態と同様に、サンプル画像42bに基づいて図8(b)に示すTV特性を求めることができる。尚、図8(b)に示すTV特性のうち、第2CCDカメラ112を用いて評価できる領域は実線部のみであり、点線部は先に説明した第1CCDカメラ111を用いて求めることができる。
【0068】
図8(a)及び図8(b)に示す夫々のTV特性は、PC120において合成され、最終的に図8(c)に示す0から225の階調レンジについてTV特性を得ることができる。このようにして、十分広い階調レンジを有さないCCDカメラを用いた場合であっても、高精度なTV特性を求めることができ、適切に液晶パネル200を評価することが可能となる。
【0069】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置の評価方法及び評価装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
3a 走査線 、 6a データ線、 9a 画素電極、 10a 画像表示領域、 30 TFT、 40、41、42 サンプル画像、 70 蓄積容量、 100 評価装置、 101 データ線駆動回路、 104 走査線駆動回路、 110 CCDカメラ、 120 PC、 130 信号発生器、 200 液晶パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域に配列された複数の画素に駆動電圧を夫々供給することにより画像を表示可能な電気光学装置の評価方法であって、
前記複数の画素に相異なる駆動電圧を印加することにより前記表示領域の平面内にて所定パターンの階調分布を有するサンプル画像を表示させる表示駆動工程と、
前記表示されたサンプル画像を撮像する撮像工程と、
前記撮像されたサンプル画像を基に前記複数の画素の各々について光透過率を求める評価工程と
を備えることを特徴とする電気光学装置の評価方法。
【請求項2】
前記表示駆動工程において、
前記画素のうち、一の画素から所定の距離に配置された複数の他の画素が等しい階調を有するように前記駆動電圧が印加されることにより、前記サンプル画像が、前記一の画素を中心とした同心円形状を有することを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の評価方法。
【請求項3】
前記表示されたサンプル画像は、前記一の画素を通る複数の分割線により分割されており、
相隣り合う前記分割線間に挟まれ、第1の階調分布を有する第1領域と、
前記サンプル画像のうち前記一の領域を除く他の領域であって、前記第1の階調分布が所定の基準階調に対して反転された第2の階調分布を有する第2領域と
を有し、
前記評価工程は、前記第1及び第2領域において夫々求められた第1及び第2光透過率を平均化することにより、前記光透過率を求めることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置の評価方法。
【請求項4】
表示領域に配列された複数の画素に駆動電圧を夫々供給することにより画像を表示可能な電気光学装置の評価方法であって、
前記複数の画素に相異なる駆動電圧を印加することにより前記表示領域の平面内にて第1の階調分布を有する第1サンプル画像を表示させる第1表示駆動工程と、
前記表示された第1サンプル画像を撮像する第1撮像工程と、
前記撮像された第1サンプル画像を基に前記画素の各々について第1光透過率を求める第1評価工程と、
前記複数の画素に相異なる駆動電圧を夫々印加することにより、前記平面内にて前記第1の階調分布に比べて低い階調から構成される第2の階調分布を有する第2サンプル画像を表示させる第2表示駆動工程と、
前記表示された第2サンプル画像を撮像する第2撮像工程と、
前記撮像された第2サンプル画像を基に前記複数の画素の各々について第2光透過率を求める第2評価工程と
前記第1及び第2光透過率を平均化することにより、光透過率を求める算出工程と
を備えることを特徴とする電気光学装置の評価方法。
【請求項5】
表示領域に配列された複数の画素に駆動電圧を夫々供給することにより画像を表示可能な電気光学装置の評価装置であって、
前記複数の画素に相異なる駆動電圧を印加することにより前記表示領域の平面内にて所定パターンの階調分布を有するサンプル画像を表示させる表示駆動手段と、
前記表示されたサンプル画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像されたサンプル画像を基に前記表示領域における前記複数の画素の各々の光透過率を求める評価手段と
を備えることを特徴とする電気光学装置の評価装置。
【請求項6】
表示領域に配列された複数の画素に駆動電圧を夫々供給することにより画像を表示可能な電気光学装置の評価装置であって、
複数の前記画素に相異なる駆動電圧を印加することにより前記表示領域の平面内にて第1の階調分布を有する第1サンプル画像を表示させる第1表示駆動手段と、
前記表示された第1サンプル画像を撮像する第1撮像手段と、
前記撮像された第1サンプル画像を基に前記表示領域における前記複数の画素の各々の第1光透過率を求める第1評価手段と、
複数の前記画素に相異なる駆動電圧を印加することにより、前記平面内にて前記第1の階調分布に比べて低い階調から構成される第2の階調分布を有する第2サンプル画像を表示させる第2表示駆動手段と、
前記表示された第2サンプル画像を撮像する第2撮像手段と、
前記撮像された第2サンプル画像を基に前記表示領域における前記複数の画素の各々の第2光透過率を求める第2評価手段と、
前記第1及び第2光透過率を平均化することにより、光透過率を求める算出手段と
を備えることを特徴とする電気光学装置の評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−252144(P2010−252144A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100614(P2009−100614)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】