説明

電気冷蔵庫

【課題】小型で家庭に用いられる装置であって、電力需要のピーク時における電力消費を極力抑制した電気冷蔵庫を提供する。
【解決手段】冷凍機の圧縮機1を下部後部に有し、圧縮した冷媒を後背部の凝縮器2で凝縮したのち冷凍機用と製氷用の膨張器であるキャピラリーチューブ3a、3bで膨張させ、冷凍機と製氷機の蒸発器4a、4bで蒸発させて冷却する。冷蔵庫の貯蔵室は引き出し式であり、最下部に位置する冷凍庫13aを引き出すとき一緒にストッパー14jで止まる位置14kまで引き出し、踏み台として使用できる。氷兼貯蔵装置11内は、蒸発器4bの保持と冷蔵庫が揺れた場合に水面6が波立つことを防止するため、管板18を有し、水面6の上部には、通気口を有する蓋19を備えることで、水の動揺を抑制する構造を有する装置で氷を製造、又は保冷剤を凍結し、その氷、又は保冷剤を冷蔵に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夜間電力を主要電源とする冷凍庫を備えた電気冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
昼間電力の低減が求められている現在、業務用冷凍機としては、氷蓄熱による夜間電力を用いた空調用及びショーケース用機器が開発(例えば特許文献1及び特許文献2参照)されているが、小型の装置が開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開 平11−281103
【特許文献2】 特開 平11−183012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のものは、冷凍機を夜間運転することで、冷凍機の成績係数の向上と電力料金の低減を目的としているが、家庭用電気冷蔵庫などの小型のものに望まれるのは、前記の成績係数向上と、電気料金の低減に加え、小型の装置で昼間電力を極力消費しないものである。
【0005】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、小型で家庭に用いられる装置であって、電力需要のピーク時における電力消費を極力抑制した電気冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、夜間に冷凍機を運転することの利点は、昼間と比較して気温が下がるので冷凍機の成績係数が良好になる。更に、給電力に余裕があるうえ電力料金が低い。そこで、これらの利点を用い、小型の装置で家庭にも用いることができる、冷凍庫を有する電気冷蔵庫であって、
夜間に前記冷蔵庫の上部区画に氷を製造して蓄え、昼間に、この氷で庫内を冷却することができる電気冷蔵庫が提供される。
冷蔵庫は、冷蔵品の出し入れのとき、冷気の流出を少なくするため引き出し式とし、上部の引き出しは、冷蔵品の出し入れが容易にできるよう、2つ割れにして、最下部の貯蔵庫を引き出して、踏み台として用いることができる構造を有する電気冷蔵庫が提供される。
最上部の製氷兼貯蔵装置の底部は、波型の金属を用いることで強度が増し、氷、或いは水等の冷熱源の重量を支える。また、熱伝導率と、伝熱面積が増すので、冷熱源による冷気を下部に伝えるのを容易にする電気冷蔵庫が提供される。
前記の製氷兼貯蔵装置底部からの冷気が、下部の引き出しへ順次下降する量を制御して、引き出し内の温度を調節するための、温度変化によって形状を変えるバイメタル、或いは形状記憶合金、又はワックスエレメントを用いて、各引き出し上部の冷気降下用隙間の大きさを調節する電気冷蔵庫が提供される。
時間帯によって、氷の製造と、冷凍庫の運転を制御するスケジュール・タイマーを有する電気冷蔵庫が提供される。
【0007】
前記製氷兼貯蔵装置の底部は、波型の形状に代えて、伝熱面を金属製のフィンにしてもよい。また、製氷兼貯蔵装置には、保冷剤を用いてもよい。
【0008】
上記の機械部分と貯蔵部分を分離し、冷凍機の主要部と製氷兼貯蔵装置を屋外に置き、外気を用いて運転する屋内機と屋外機を分離した電気冷蔵庫が提供される。
前記の屋外機を、空調用の屋外機と直列に並べ、パーティションを用いて、冬季の暖房効果を高めるのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
夜間製造した氷を、昼間に用いることで、昼間の電力消費を無くすることができる。
冷蔵庫を引き出し式にすることで、冷気の流失を少なくできる。高い位置にある引き出しへの冷蔵品の出し入れは、最下部の貯蔵庫が踏み台になり、容易にできる。
製氷兼貯蔵装置の底部を、金属製の波型板、或いはフィンにすることで、氷、或いは保冷剤の重量を支え、冷気を下部によく伝達できる。
冷気の降下量を調節する装置によって、貯蔵庫内の温度を、上部から順に調節することができる。
スケジュール・タイマーによって、昼間の電気冷蔵庫の運転を最少にし、製氷兼貯蔵装置内の氷が十分残っている場合は、冷凍庫用の冷媒の凝縮に用いることで、冷凍機の成績係数を向上させることができる。
分離型の電気冷蔵庫では、夜間、屋内より気温の低い屋外に置いた屋外機により、成績係数が向上する。また、屋内の温度上昇を防ぎ、冷凍機の運転音がしなくなるため屋内を静粛に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】 本発明の電気冷蔵庫を説明するため、電気冷蔵庫の構造示す断面図。
【図2】 電気冷蔵庫の形状を示す斜視図。
【図3】 (a)製氷兼貯蔵装置の底部を示す断面図、(b)底部を支える支持板を示す平面図、(c)底部の波型板の平面図とドレン部の拡大図。
【図4】 冷気の降下を制御するための装置を説明する断面図と平面図。
【図5】 冷凍機の運転を制御するタイマーのスケジュール表。
【図6】 屋外機の内部を示す透視斜視図。
【図7】 屋外機を、空調用の屋外機と組み合わせて用いる説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照し説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
図1によると、本発明の電気冷蔵庫の構造は、冷凍機の圧縮機1を下部後部に有し、圧縮した冷媒を後背部の凝縮器2で凝縮したのち冷凍機用と製氷用の膨張器であるキャピラリーチューブ3a、3bで膨張させる。そして、冷凍機と製氷機の蒸発器4a、4bで蒸発させて冷却する。
電気冷蔵庫の貯蔵庫は、上段12a中段12b、下段12cで構成され、引き出し式である。ここで、別途、最下部に位置する冷凍庫13aは、周りを断熱材の壁14a、14b、14f、14hで覆われるが、冷凍庫の上部の壁14hは、冷凍庫13aを引き出すとき、一緒にストッパー14jで止まる位置14kまで引き出し、踏み台として使用できる。踏み台の引き出しを容易にするためと冷蔵庫を安定させるため、車輪14b−1、14b−2と脚14b−1を電気冷蔵庫の下部に有する。
冷凍庫13aを踏み台として用いるため、踏み台に用いる壁14hと網状の金属板16との間に蒸発器4aを収納し、踏み台部の壁14hの前面に突起14mを有することで、踏み台部の壁14hを引き出すと、この下の冷凍庫13aが、突起14mによって一緒に引き出される。また、ストッパー14jで、可動部による蒸発器4aの破損を防止する。
ここで、冷凍庫13aのみを引き出すと、突起14mやストッパー14jに、妨げられることなく、全開まで引き出せるので、品物の出し入れが容易にできる。
【0012】
製氷兼貯蔵装置11は、飲料水か保冷剤を用いるが、図面は飲料水を想定している。
製氷兼貯蔵装置11内は、蒸発器4bの保持と冷蔵庫が揺れた場合に水面6が波立つことを防止するため、管板18を有し、水面6の上部には、通気口を有する蓋19を備えることで、水の動揺を抑制している。また、上部の断熱壁14dは、蓋の機能を有し、製氷兼貯蔵装置11内部の整備や、水の投入の際に使用する。
製氷兼貯蔵装置11は、50Lの容積を想定しているので、約50kgの重量を支えることと伝熱効率の観点から、製氷兼貯蔵装置底部17aと、その支持板17bは、金属を用い、底部の形状を波型として、強度と、熱伝導率と、伝熱面積を増大させている。また、製氷兼貯蔵装置11内部の支持棒5も、氷の重量を支えることと、装置の補強を兼ねている。
後背部の凝縮器2は、高温になるため貯蔵庫側の断熱壁14cと、背部の凝縮器保護板15とで形成される隙間に設置され、この隙間の煙突効果による上昇気流で冷却される。
凝縮器の配管には、電磁弁A、B、C、Dが装着されており、スケジュール・タイマーで、開閉して、冷蔵庫の運転を制御する。
【0013】
製氷兼貯蔵装置11と冷凍機の容量は次の想定による: 200Lの冷蔵庫に20℃の飲料水を180L入れて5℃まで冷却し、昼間に延べ60分間貯蔵庫が開けられ、5秒間に5℃の空気が35℃の空気と、20L入れ替わるものとする。また、空気の定圧比熱を1kJ/kg・Kとする。
その結果、製氷兼貯蔵装置内に必要な水量は約36Lであるが、配管などの容積と、余裕率など勘案して50Lの容積としている。重量も水と機器とで50kgと大きめに想定する。
冷凍機は、22:00から08:00までの10時間で製氷すればよいので、成績係数を2.5程度に低く見ても、10時間の電力消費量は、毎時150〜200W程度と想定される。
【0014】
図2の斜視図によると、上段貯蔵庫12aは、右12a−Rと左12a−Lの、2つの引き出しに分割されている。それぞれの貯蔵庫は、中央側に凹み12dを有し、上部の製氷兼貯蔵装置11からの冷気の降下通路となっている。また、上段貯蔵庫12aは、高い位置にあるため、貯蔵品の出し入れの際、例えば、片方の右の貯蔵庫12a−Rだけを引き出し、最下段の冷凍庫13aを踏み台用の断熱壁14hと一緒に引き出し、踏み台として用いて、貯蔵品の出し入れを容易にできる。なお、中段や下段の貯蔵庫12b、12cは、低い位置にあるため、2つ割れの構造にしていない。
【0015】
図3によると、製氷兼貯蔵装置下部の金属製波板17aの凸部17a−3の下部に支持板17b、17c、その支持板の支持板17dを有する構造で、氷或いは水の重量を支えている。{図(a)、(b)参照}
製氷兼貯蔵装置の底部を上方から見ると、凹面17a−1、17a−2の、前面側の凹面17a−1は、各凹面17a−2を結ぶ谷となっている。そこで、この面にドレン孔17a−4bを有し、ねじ込み式の栓17a−4aで塞いでいる。整備するとき、水の排出に用い、下部貯蔵庫12aから排出する。{図(c)及びA−A’断面図参照}
【0016】
図4の製氷兼貯蔵装置11からの冷気降下量を制御する装置の説明図は、(a)では、バイメタル、或いは形状記憶合金などの感温素子の温度変化による形状変化で、それぞれの素子に装着したプレート22を上下に作動させて、貯蔵庫上部の隔壁21との隙間の大きさで庫内の温度を制御する。右の図は、隙間を開けたところで、左は閉じたところを示す。
(b)は、感温素子にワックスエレメント24を用いた例で、温度変化によって、膨張収縮するワックスエレメント24を上部隔壁21に装着して、支点25を枢軸にプレート23を作動させる。右が隙間を開けたところで、左が閉じたところを示す。
(c)は上記を上面より見た平面図である。
【0017】
図5の0時から24時までの運転スケジュールによると、0時の時点では、電磁弁Cのみが開弁可能な状態で、製氷兼貯蔵装置11内の製氷が完了していなければ、圧縮機1からの冷媒が、製氷兼貯蔵装置11の蒸発器4bを流れ、製氷兼貯蔵装置11を冷却している。一方、冷凍庫13aは休止状態にある。これは08:00まで継続する。08:00からは、電磁弁Aのみが開弁可能になり、冷凍庫の温度が上昇していれば、圧縮機1からの冷媒は冷凍庫13aを冷却するため蒸発器4aを13:00まで流れるが、13:00から16:00までの電力需要ピーク時間帯は、停止する。このとき製氷もされていない。
16:00を過ぎて、製氷兼貯蔵装置11内の温度が0℃以下ならば、停止していた冷凍庫を急冷するため凝縮器2を出た冷媒を、製氷兼貯蔵装置11内の蒸発器4bを通過させて、凝縮温度を下げて、成績係数を向上させ、冷凍庫13a内の温度を効率よく下げる。18:00以降は、通常の冷凍庫の運転になり22:00まで継続する。一方、16:00を過ぎて、製氷兼貯蔵装置11内の温度が0℃を超えていれば、22:00まで通常の冷凍庫の運転をする。
22:00からは、冷凍庫を再び停止し、製氷兼貯蔵装置11での製氷作業のみを開始する。
【0018】
図6の屋外機では、上記の電気冷蔵庫の機械部分に、循環ポンプ10が新たに加わる。屋外に冷凍機の主要部や製氷兼貯蔵装置11を設置することで、屋内側の冷蔵庫の重量と発熱量が減少する。
循環ポンプ10では、循環液を、製氷兼貯蔵装置11の氷の中のコイル(図面が煩雑になるため省略する)で冷却して、管10a、10b、10cを、屋内の冷蔵庫に配管して冷蔵庫を冷却する。この循環液は、不凍液を用いる。
屋内の冷凍庫には、凝縮器2からの冷媒を管4a−1,4a−2で循環する。また電磁弁A、B、C、Dは上記のスケジュール・タイマーで、上記と同様に作動する。
屋外機を、空調用の屋外機と直列設置して用いる方法を図7に示す。冷房時は、両方の屋外機が温風を出しているためパーティション30、31で仕切っているが、暖房時は、冷蔵庫用屋外機の排気を空調用屋外機に、パーティション30を、上部を覆うように取付け、パーティション31で側面を覆うことで、空調用屋外機の暖房能力を向上させる。
【符号の説明】
【0019】
1 圧縮機
2 凝縮器
3a,3b キャピラリーチューブ
4a、4b 蒸発器
10 循環ポンプ
11 製氷兼貯蔵装置
12a 2つ割れ、上段貯蔵庫
12b 中段貯蔵庫
12c 下段貯蔵庫
13a 冷凍庫
14h 踏み台に用いる断熱壁
14j ストッパー
14m 突起
17a 金属製波型板
22 バイメタル/形状記憶合金装着のプレート
23 ワックスエレメントで作動するプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
夜間に冷凍機を運転することの利点は、昼間と比較して気温が下がるので冷凍機の成績係数が良好になる。更に、給電力に余裕があるうえ電力料金が低い。そこで、これらの利点を用いる、小型の装置で家庭にも用いることができ、冷凍庫を有する電気冷蔵庫であって、
夜間に前記電気冷蔵庫の上部区画に氷を製造、又は保冷剤を凍結して蓄え、昼間に、この氷、又は保冷剤で庫内を冷却することができることを特徴とする電気冷蔵庫。
【請求項2】
貯蔵庫は、引き出し式とし、上部の貯蔵庫の引き出しは、2つ割れにしてある。そして、最下部の貯蔵庫が踏み台として用いることができる構造を特徴とする電気冷蔵庫。
【請求項3】
最上部の製氷兼貯蔵装置の底部は、波型の金属、或いはフィンで補強した金属板を用いることを特徴とする請求項1及び2に記載の電気冷蔵庫。
【請求項4】
温度変化によって形状を変えるバイメタル或いは形状記憶合金、又はワックスエレメントを用いて引き出し上部の冷気降下用隙間の大きさを調節することを特徴とする請求項1から3に記載の電気冷蔵庫。
【請求項5】
時間帯によって、氷の製造と、冷凍庫の運転を制御するスケジュール・タイマーを有することを特徴とする請求項1から4に記載の電気冷蔵庫。
【請求項6】
上記の機械部分と貯蔵部分を分離し、冷凍機の主要部と製氷兼貯蔵装置を屋外に置き、外気を用いて運転する、屋外機と屋内機を分離した構造であって、パーティションを用いて、空調用の屋外機の暖房効果を高めることもできる、屋外機と屋内機を分離したことを特徴とする請求項2、及び4から5に記載の電気冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−242078(P2012−242078A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124642(P2011−124642)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(310020518)Amity Energy Solution 株式会社 (11)
【Fターム(参考)】