説明

電気化学キャパシタ

【課題】 負極がソフトカーボンとグラファイトとの混合材料を含有し、さらに、そのソフトカーボンの含有量が特定範囲であることによって、優れたエネルギ密度および出力密度を発現することができる電気化学キャパシタを提供すること。
【解決手段】 分極性カーボン材料を含有する正極2と、ソフトカーボンとグラファイトとの混合材料を含有し、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な負極3と、リチウムイオンを含む有機溶媒からなる電解液6とを備えるハイブリッドキャパシタにおいて、負極3のソフトカーボンの含有量を、ソフトカーボンとグラファイトとの総量に対して50重量%以下にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学キャパシタ、詳しくは、電気二重層による蓄電と、酸化還元反応による蓄電とを併有するハイブリッドキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車両や燃料電池車両に搭載される蓄電デバイスとして、高出力かつ長寿命である、電気二重層キャパシタが知られている。
電気二重層キャパシタでは、正極および負極の両方が分極性カーボン材料からなり、正極−負極間に電圧が印加されることによって、正極上にアニオンが、負極上にカチオンがそれぞれ引き寄せられて電荷層(電気二重層)が形成される。電気二重層キャパシタは、この電気二重層の形成によってエネルギを蓄えることができる。
【0003】
一方、近年では、分極性カーボン材料を含有する正極と、電解液中のアニオンを可逆的に吸蔵・放出可能な材料からなる負極とを備えるキャパシタが提案されている。この種のキャパシタは、電気二重層による蓄電と、負極での酸化還元反応による蓄電とを併有することができるので、ハイブリッドキャパシタと称され、従来の電気二重層キャパシタと比較して、約4倍のエネルギ密度を得ることができる。
【0004】
ハイブリッドキャパシタとして、例えば、セラミックスフィルタ製のセパレータと、KOH賦活ソフトカーボン、導電性カーボンブラックおよびPTFEディスパーションを、85:5:10の重量比で配合した混合物からなる正極と、人造黒鉛(グラファイト)、ソフトカーボンおよびPVdFを、22.5:67.5:10の重量比で配合した混合物からなる負極と、LiPFを含むエチレンカーボネート+ジエチレンカーボネート溶媒からなる電解液とを備えるハイブリッドキャパシタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−103697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、キャパシタを扱う各種分野では、エネルギ密度および出力密度のさらなる向上が要求されている。
そこで、エネルギ密度および出力密度の両方がバランスよく向上するように、ハイブリッドキャパシタを設計する必要がある。
本発明の目的は、負極がソフトカーボンとグラファイトとの混合材料を含有し、さらに、そのソフトカーボンの含有量が特定範囲であることによって、優れたエネルギ密度および出力密度を発現することができる電気化学キャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の電気化学キャパシタは、分極性カーボン材料を含有する正極と、ソフトカーボンとグラファイトとの混合材料を含有し、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な負極と、リチウムイオンを含む有機溶媒からなる電解液とを備え、前記負極のソフトカーボンの含有量が、ソフトカーボンとグラファイトとの総量に対して50重量%以下であることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の電気化学キャパシタでは、前記負極のソフトカーボンの含有量が、ソフトカーボンとグラファイトとの総量に対して10〜50重量%であることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気化学キャパシタによれば、負極のソフトカーボンの含有量が、ソフトカーボンとグラファイトとの総量に対して50重量%以下であるため、優れたエネルギ密度および出力密度を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の電気化学キャパシタの一実施形態を示すハイブリッドキャパシタの概略構成図である。
【図2】10秒出力密度の測定方法を説明するためのグラフである。
【図3】各実施例および各比較例のエネルギ密度を示すグラフである。
【図4】各実施例および各比較例の10秒出力密度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の電気化学キャパシタの一実施形態を示すハイブリッドキャパシタの概略構成図である。
ハイブリッドキャパシタ1は、正極2と、正極2に間隔を隔てて対向する負極3と、正極2と負極3との間に介在される2枚のセパレータ4と、各セパレータ4間に介在される捕捉部材7と、正極2、負極3、セパレータ4および捕捉部材7を収容するセル槽5と、セル槽5に貯留され、正極2、負極3、セパレータ4および捕捉部材7を浸漬する電解液6とを備えている。なお、ハイブリッドキャパシタ1は、ラボスケールで採用される電池セルであって、工業的には、このハイブリッドキャパシタ1を、公知の技術によって適宜スケールアップしたものが採用される。
【0012】
正極2は、分極性カーボンからなる正極材料を含有し、例えば、正極材料と、導電剤と、ポリマーバインダとを配合して得られる混合物からなる電極シートを、所定の形状(例えば、円形状)に成形した後、乾燥させることにより形成される。
正極材料は、例えば、カーボン材を賦活処理することにより得られる。
カーボン材としては、例えば、ハードカーボン、ソフトカーボンなどが挙げられる。これらは、単独使用または併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、ソフトカーボンが挙げられる。なお、後述する負極の項において、ハードカーボンおよびソフトカーボンを詳細に説明する。
【0013】
賦活処理としては、例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)などを賦活剤として用いるアルカリ賦活処理、例えば、塩化亜鉛(ZnCl)、リン酸(HPO)などを賦活剤として用いる薬品賦活処理、例えば、二酸化炭素(CO)、空気などを賦活剤として用いるガス賦活処理、例えば、水蒸気(HO)を賦活剤として用いる水蒸気賦活処理などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、アルカリ賦活処理が挙げられ、さらに好ましくは、水酸化カリウム(KOH)を賦活剤として用いるアルカリ賦活処理(KOH賦活処理)が挙げられる。
【0014】
賦活処理は、例えば、KOH賦活処理を実行する場合、窒素雰囲気下において、カーボン材を、例えば、500〜800℃で予備焼成し、次いで、700〜1000℃でKOHとともに焼成する。用いられるKOHの量は、例えば、カーボン材1重量部に対して、0.5〜5重量部である。
上記賦活処理によって得られる正極材料を正極2に用いたハイブリッドキャパシタでは、例えば、正極2の電位が4V vs.Li/Li+以上となる充放電サイクルにおいて、正極2に比較的大きな不可逆容量を発現させることができる。そのため、放電過程において、より低い電位にまで正極の放電が可能となる。その結果、正極2の電気容量を拡大することができる。
【0015】
正極材料は、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が80〜99重量%の割合となるように配合される。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
また、導電剤は、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が0〜20重量%の割合となるように配合される。つまり、導電剤は、配合しても配合しなくてもよい。
【0016】
ポリマーバインダとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、フルオロオレフィンビニルエーテル共重合体架橋ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、PVdFが挙げられる。
【0017】
また、ポリマーバインダは、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が1〜10重量%の割合となるように配合される。
そして、正極2を形成するには、正極材料、導電剤およびポリマーバインダを配合した混合物を、溶媒中で攪拌してスラリーを得る。次いで、スラリーを集電体の表面に塗布し、例えば、ロールプレスを用いて加圧延伸して電極シートを得る。次いで、電極シートを所定の形状(例えば、円形状)に打ち抜いた後、乾燥させる。これにより、正極2が得られる。
【0018】
このような方法により得られる正極2の厚さおよび直径は、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、ラボスケールでは、厚さが30〜150μmであり、直径が10mm程度である。
負極3は、ソフトカーボンおよびグラファイトを含む負極材料を含有し、例えば、負極材料と、ポリマーバインダとを配合して得られる混合物からなる電極シートを、所定の形状(例えば、円形状)に成形した後、乾燥させることにより形成される。
【0019】
ソフトカーボンは、例えば、不活性雰囲気中での熱処理によって、炭素原子で構成される六角網面が、ハードカーボンの六角網面よりも相対的に規則的な積層構造(黒鉛構造)を形成しやすいカーボンの総称である。具体的には、不活性雰囲気中、2000〜3000℃で熱処理されたときに、(002)面の平均面間隔d002が3.40Å以下、好ましくは、3.35〜3.40Åとなる結晶構造を形成するカーボンの総称である。
【0020】
具体的なソフトカーボンの原料としては、例えば、石油系ピッチ、石炭系ピッチ、メソフェーズ系ピッチなどのピッチ類、例えば、石油系ニードルコークス、石炭系ニードルコークス、アントラセン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどの易黒鉛化性コークス類が挙げられる。これらは単独使用または2種以上併用することができる。
また、ソフトカーボンの比較対照とされるハードカーボンとは、例えば、不活性雰囲気中、2500℃で熱処理されたときに、(002)面の平均面間隔d002が3.40Åを超える結晶構造を形成するカーボンの総称である。
【0021】
具体的なハードカーボンの原料としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フルフラール樹脂、レゾルシノール樹脂、シリコーン樹脂、キシレン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂、例えば、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャネルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、例えば、フリュードコークス、ギルソナイトコークスなど易黒鉛化性コークスとは異なる難黒鉛化性コークス、例えば、やしがら、木粉などの植物系原料、例えば、ガラス状炭素などが挙げられる。
【0022】
負極材料におけるソフトカーボンの含有量は、ソフトカーボンとグラファイトとの総量に対して50重量%以下であり、好ましくは、10〜50重量%、さらに好ましくは、10〜25重量%、とりわけ好ましくは、10〜20重量%である。
グラファイトとしては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。これらは単独使用または2種以上併用することができる。また、人造黒鉛としては、例えば、上記したソフトカーボンを熱処理することによって得られる熱分解物が挙げられる。また、グラファイトは、粉末状のもの(例えば、平均粒径が25μm以下のもの)が好ましく用いられる。
【0023】
なお、負極材料は、必要により、ソフトカーボンおよびグラファイトの他に、例えば、ハードカーボンなどの第3成分を少量含有することができる。
そして、上記のような負極材料は、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が80〜99重量%の割合となるように配合される。
導電剤としては、例えば、上記した導電剤が挙げられる。また、導電剤は、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が0〜20重量%の割合となるように配合される。つまり、導電剤は、配合しても配合しなくてもよい。
【0024】
ポリマーバインダとしては、例えば、上記したポリマーバインダが挙げられ、好ましくは、PVdFが挙げられる。また、ポリマーバインダは、混合物全量に対して、例えば、固形分の重量割合が1〜10重量%の割合となるように配合される。
そして、負極3を形成するには、例えば、まず、負極材料およびポリマーバインダを配合した混合物を、溶媒中で攪拌してスラリーを得る。次いで、スラリーを集電体の表面に塗布し、例えば、ロールプレスを用いて加圧延伸して電極シートを得る。次いで、電極シートを所定の形状(例えば、円形状)に打ち抜いた後、さらに乾燥させる。これにより、負極3が得られる。
【0025】
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性極性溶媒、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、水などのプロトン性極性溶媒、例えば、トルエン、キシレン、イソホロン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、フタル酸ジメチルなどの無極性溶媒が挙げられる。これらのうち、好ましくは、非プロトン性極性溶媒が挙げられ、さらに好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。
【0026】
集電体としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔などの金属箔を用いることができる。
上記のような方法により得られる負極3の厚さおよび直径は、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、ラボスケールでは、厚さが5〜70μmであり、直径が10mm程度である。
【0027】
セパレータ4としては、例えば、ガラス繊維、セラミックス繊維、ウィスカなどの無機繊維、例えば、セルロースなどの天然繊維、例えば、ポリオレフィン、ポリエステルなどの有機繊維などからなるセパレータが挙げられる。
また、セパレータ4の厚さおよび直径は、ハイブリッドキャパシタ1のスケールにより異なるが、例えば、ラボスケールでは、厚さが15〜100μmであり、直径が24mm程度である。
【0028】
捕捉部材7は、例えば、負極活性阻害物質(後述)を捕捉するための捕捉剤と、ポリマーバインダとを加圧延伸することにより得られるシートである。
捕捉剤としては、例えば、炭酸リチウム(LiCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)など、アルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。これらは、単独または2種以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、炭酸リチウムが挙げられる。
【0029】
ポリマーバインダとしては、例えば、上記したポリマーバインダが挙げられ、好ましくは、PTFEが挙げられる。
そして、捕捉部材7を形成するには、例えば、まず、捕捉剤と、ポリマーバインダとを、例えば、配合割合(捕捉剤:ポリマーバインダ)が、固形分の重量割合で20:80〜98:2、好ましくは、50:50〜90:10となるように配合する。次いで、混合物を、例えば、ロールプレスを用いて加圧延伸して捕捉剤含有シートを得る。
【0030】
そして、捕捉剤含有シートを所定の形状(例えば、円形状)に打ち抜いた後、乾燥させる。これにより、捕捉部材7が得られる。
電解液6は、リチウム塩を含有する有機溶媒からなり、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解させることにより調製される。
リチウム塩としては、ハロゲンを含むアニオン成分を有し、例えば、LiClO、LiCFSO、LiC(SOCF、LiCSO、LiC17SO、LiB[C(CF−3,5]、LiB(C、LiB[C(CF)−4]、LiBF、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiCFCO、LiN(CFSOなどが挙げられる。なお、上式中[C(CF−3,5]は,フェニル基の3位と5位に、[C(CF)−4]はフェニル基の4位に、それぞれ−CFが置換されているものを意味する。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0031】
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、プロピレンカーボネート誘導体、エチレンカーボネート、エチレンカーボネート誘導体、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジオキソラン、リン酸トリエステル、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、1,3−プロパンスルトン、4,5−ジヒドロピラン誘導体、ニトロベンゼン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン誘導体、シドノン化合物、アセトニトリル、ニトロメタン、アルコキシエタン、トルエンなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0032】
そして、電解液6を調製するには、例えば、リチウム塩の濃度が、例えば、0.5〜5mol/L、好ましくは、1〜3mol/Lとなるように、また、電解液6中の水分量が、例えば、50ppm以下、好ましくは、10ppm以下となるように、リチウム塩を有機溶媒に溶解する。
ハイブリッドキャパシタ1において、捕捉部材7により捕捉される負極活性阻害物質は、電解液6に含まれるアニオンから誘導される物質であって、例えば、LiPFに含まれるPFなどから誘導されるフッ酸(HF)などが挙げられる。そのような負極活性阻害物質は、例えば、充放電サイクルにおいて、正極2の電位範囲を拡大するための不可逆容量を、正極2に発現させる場合などに生成する。
【0033】
正極2での不可逆容量は、例えば、充放電サイクルの1サイクル目を以下のように実行することによって発現する。具体的には、まず、正極2と負極3との間(正極−負極間)に印加されるセル電圧が2.5〜5.0V(好ましくは、4.0〜5.0V)に上昇するまで、0.1〜10mA/cm(好ましくは、1〜5mA/cm)で定電流充電する。充電後、電流値が0.05〜1mA/cm(好ましくは、0.2〜0.5mA/cm)に降下するまで、上昇後のセル電圧に保持し、その後、セル電圧が0〜4.0V(好ましくは、1.0〜3.0V)に降下するまで、0.1〜10mA/cm(好ましくは、1〜5mA/cm)で定電流放電する。1サイクル目を、このように実行することによって、正極2に不可逆容量を発現させることができる。
【0034】
なお、充放電サイクルの2サイクル目以降は、例えば、最大セル電圧が4.0〜4.8V(好ましくは、4.2〜4.6V)の範囲、最低セル電圧が0.0〜4.0V(好ましくは、2.0〜2.4V)の範囲の定電力放電を行なう。
そして、ハイブリッドキャパシタ1では、正極2での不可逆容量の発現に起因して、例えば、電解液6がLiPFを含有する場合、以下のようにHFが生成する。具体的には、1サイクル目の充電過程において、正極2および/または電解液6に含まれる水分や有機物からプロトン(H)が生成する(下記式(1)および(2)参照)。
(1)2HO→O+4H+4e
(2)R−H→R+H+e(Rは、アルキル基)
そして、生成したプロトンが、電解液6に含まれるPFと反応し、HF(負極活性阻害物質)が生成する(下記式(3)参照)。
(3)PF+H→PF+HF
しかし、ハイブリッドキャパシタ1では、上記のように生成するHFを、電解液6に浸漬された捕捉部材7により捕捉することができる。
そして、このハイブリッドキャパシタ1によれば、負極3のソフトカーボンの含有量が、ソフトカーボンとグラファイトとの総量に対して50重量%以下であるため、優れたエネルギ密度および出力密度を発現することができる。
【0035】
例えば、ハイブリッドキャパシタ1の10秒出力密度は、例えば、3000W/L以上、好ましくは、10000W/L以上である。
ただし、10秒出力密度とは、図2に示すように、出力密度(W/L)の値を定めるためのx軸およびエネルギ密度(Wh/L)の値を定めるためのy軸を有するxy平面において、充放電サイクルにおける定電力放電の放電電力値(W)を変化させたときの出力密度とエネルギ密度との関係を示す点を結ぶグラフAと、方程式y=0.0028xを満たすグラフB(直線)との交点におけるx座標の値(W/L)のことである。なお、出力密度およびエネルギ密度は、正極2と負極3との体積の総和(集電体の体積は除く)の単位体積(1L)当りの値である。
【0036】
本発明の電気化学キャパシタは、例えば、自動車(ハイブリッド車両など)に搭載される駆動用電池、ノートパソコン、携帯電話などのメモリバックアップ電源などの各種工業製品として好適に用いることができる。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
実施例1〜4および比較例1〜2
1.正極の作製
メソフェーズ系ピッチ(三菱ガス化学株式会社製 AR樹脂)を大気中350℃で2時間加熱した。次いで、加熱後のピッチを、窒素雰囲気下800℃で2時間予備焼成した。これにより、メソフェーズカーボンマイクロビーズを得た。得られたメソフェーズカーボンマイクロビーズをアルミナ製の坩堝に入れ、メソフェーズカーボンマイクロビーズ1重量部に対してKOHを4重量部のKOHを加えた。次いで、メソフェーズカーボンマイクロビーズを、窒素雰囲気下800℃で2時間、KOHとともに焼成することにより、KOH賦活した。次いで、KOH賦活したメソフェーズカーボンマイクロビーズを超純水で洗浄した。洗浄は、廃液が中性になるまで行なった。これにより、KOH賦活ソフトカーボン(正極材料)を得た。洗浄後、KOH賦活ソフトカーボンを乳鉢で粉砕し、篩(32μm)で分級した。そして、ほぼ全てのKOH賦活ソフトカーボンが篩を通過できる粒径になるまで、乳鉢での粉砕操作を繰り返した。
【0038】
分級後、KOH賦活ソフトカーボン粉末と、導電剤(CABOT社製 VXC72R)と、ポリマーバインダ(株式会社クレハ製 PVdF)とを、固形分75:15:10の重量比で、攪拌機で混練することにより、それらのスラリーを得た。
次いで、塗工機を用いてスラリーをアルミニウム箔(集電体)の表面に塗布し、ロールプレスを用いて加圧延伸することにより、厚さ85μmの電極シートを得た。次いで、電極シートを、直径10mmの円形状に打ち抜いた後、乾燥機に搬入し、120℃で12時間真空乾燥した。そして、乾燥機内を窒素パージした後、電極シートを、ドライAr雰囲気のグローブボックスへ大気に触れないように搬入した。以上の工程を経ることによって、正極を作製した。
2.負極の作製
ソフトカーボンと、グラファイトと、ポリマーバインダ(株式会社クレハ製 PVdF)とを、下記表1に示す重量比で、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶媒に投入し、室温(25℃〜30℃)で12時間攪拌することにより、混合物のスラリーを得た。
【0039】
次いで、得られたスラリーを銅箔(集電体)の表面に塗布し、ロールプレスで加圧延伸することにより、厚さ25μmの電極シートを得た。次いで、電極シートを、直径10mmの円形状に打ち抜いた後、乾燥機に搬入し、120℃で12時間真空乾燥した。そして、乾燥機内を窒素パージした後、電極シートを、ドライAr雰囲気のグローブボックスへ大気に触れないように搬入した。以上の操作により、負極を作製した。
3.セパレータの作製
厚さ400μmのセラミックスフィルタ(ADVANTEC社製 GB−100R)を、直径25mmの円形状に打ち抜くことにより、セパレータを作製した。
4.捕捉剤含有シートの作製
炭酸リチウム(LiCO)粉末(キシダ化学社製 平均粒径85.0μm)と、ポリマーバインダ(ダイキン工業株式会社製 PTFEディスパージョン)とを、固形分80:20の重量割合で、乳鉢で混練することにより、それらの混合物を得た。
【0040】
次いで、混合物を、手動ロールプレスを用いて加圧延伸することにより、厚さ30μmのシートを得た。次いで、得られたシートを、φ13の円形状に打ち抜いた後、乾燥機に搬入し、120℃で12時間真空乾燥した。そして、乾燥機内を窒素パージした後、シートを大気に触れないように、ドライAr雰囲気のグローブボックスへ搬入することにより、捕捉剤含有シートを作製した。
5.電解液の調製
LiPF(リチウム塩)を、濃度が2mol/Lとなるように、エチレンカーボネート−ジエチレンカーボネート混合溶媒(体積比1:1)に溶解することにより調製した。
6.試験セルの組み立て
正極1枚、負極1枚、セパレータ2枚、捕捉剤含有シート1枚および電解液1mLを用いて、試験セルを組み立てた。なお、捕捉剤含有シートは、2枚のセパレータで挟んだ態様で使用した。
評価実験
1.充放電試験
上記実施例および比較例で組み立てた試験セルそれぞれに対して、以下に示す方法により充放電試験を実施した。
(1)1サイクル目
セル電圧が4.8Vに上昇するまで1mA/cmで定電流充電した。充電後、電流値が0.5mA/cmに降下するまでセル電圧を4.8Vに保持し、その後、セル電圧が2.3Vに降下するまで1mA/cm2で定電流放電した。
(2)2サイクル目
セル電圧が4.6Vに上昇するまで1mA/cmで定電流充電した。充電後、セル電圧が2.3Vに降下するまで1mA/cmで定電流放電した。
(3)3サイクル目以降
セル電圧が4.6Vに上昇するまで1mA/cmで定電流充電した。充電後、電流値が0.5mA/cmに降下するまでセル電圧を4.6Vに保持し、その後、所定の放電電力値で定電力放電した。なお、各サイクルにおける放電電力値は、1mWから250mWに至るまで徐々に大きくなるように設定した。
【0041】
充放電試験によって得られた試験結果に基づいて、各試験セルのエネルギ密度および10秒出力密度を算出した。結果を表1および図3〜4に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
2.試験結果
表1および図3〜図4によると、負極中のソフトカーボン含有量が50重量%以下である実施例1〜実施例4では、負極にソフトカーボンが含有されていない比較例1、およびソフトカーボンの含有量が75重量%の比較例2よりも、高いエネルギ密度および10秒出力密度を発現できることが確認された。
【符号の説明】
【0044】
1 ハイブリッドキャパシタ
2 正極
3 負極
6 電解液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分極性カーボン材料を含有する正極と、
ソフトカーボンとグラファイトとの混合材料を含有し、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な負極と、
リチウムイオンを含む有機溶媒からなる電解液とを備え、
前記負極のソフトカーボンの含有量が、ソフトカーボンとグラファイトとの総量に対して50重量%以下であることを特徴とする、電気化学キャパシタ。
【請求項2】
前記負極のソフトカーボンの含有量が、ソフトカーボンとグラファイトとの総量に対して10〜50重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学キャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−206018(P2010−206018A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51084(P2009−51084)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】