説明

電気化学セルの過充電保護

【課題】負極、正極ならびにキャリアまたは溶媒中に保持される過充電保護塩を含む電解質を含む、過充電による損傷を通常受けやすいセルを改良したセルを提供する。
【解決手段】代表的な過充電保護塩は以下の式により包含されるが、
a
上式において、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウムまたはイミダゾリウム基からなる群から選択される電気化学的に安定なカチオンであり、Qはボレートまたはヘテロボレートクラスターであり、aは整数1または2である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、2005年9月26日に出願された仮出願第60/720,610号の利益を主張する。その出願の開示を参照により本願に組み込む。
【0002】
本願の開示される主題は、2005年4月1日に出願された「電気化学セルの過充電保護」という名称の米国特許出願第11/097,810号に関連し、その開示を参照により本願に組み込む。
【0003】
〔連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載〕
アメリカ合衆国政府は、ANL Agreement No.85N14に準じ、本発明における権利を有する。
【0004】
一次電池および二次電池は、1つまたは複数の電気化学セルを含んでなる。多くの電池は、リチウムの高い還元電位、リチウム元素の低い分子量および高い出力密度のためリチウムセルを含んでなる。二次電池では、リチウムカチオンの小ささおよび高い移動度が、迅速な再充電の可能性を与える。これらの利点により、リチウム二次電池は、携帯電話およびラップトップコンピュータなどの携帯エレクトロニクス装置に理想的である。最近、ハイブリッド電気自動車市場に使用するための用途を有する、より大型なリチウム電池が開発されている。
【0005】
リチウム二次セルにおいて、最も重要な関心事の1つは安全であり、特に、過充電状況、すなわち満充電されたセルへの過電圧の印加により起こされる安全性の問題である。金属酸化物カソードを利用するリチウムセルを過充電する危険の1つは、酸素の発生が起こり、セル内で爆発性混合物が作られることがあることである。他の危険は、セルが過熱し火傷が起こることである。
【0006】
非水系であるリチウム系二次セルの場合、過充電を扱う2つの方法が開発されてきた。1つの方法は化学反応を利用し、他の方法は電子回路を利用する。化学的方法は、通常、可逆的酸化還元剤とも呼ばれるレドックスシャトル添加剤を添加するものであるが、前記添加剤は満充電セル電圧の少し上に可逆的に酸化される。次いで、添加剤はその酸化された状態で電解質溶液中をアノードへ移動し、そこで元の状態に還元される。電子回路は、典型的には、作動するとしばしば永久的に電池を損傷する。
【0007】
以下の特許はリチウム二次電池および電気化学セルを説明する。
【0008】
米国特許第5,763,119号は、過充電保護を有する非水系リチウム二次セルを開示している。特許の背景において、化学反応を利用するセルの過充電を防止する技術が示されており、可逆的レドックス剤を電解質溶液に加えることが推奨されている。Fe、RuおよびCe錯体が、高い酸化還元電位および高い電気化学的安定性を有するとして記載されており、したがって、4ボルトクラスのリチウムイオン二次セルのための可逆的酸化還元剤として使用される。前記119号特許における過充電損傷を防止するための解決法は、金属リチウムアノード、リチウムコバルト酸化物カソード、LiPF6電解質塩およびプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合物を含むセル中で、置換ベンゼン、例えばジメトキシフルオロまたはブロモベンゼンをレドックスシャトルとして加えるものである。
【0009】
米国特許第4,201,839号は、アルカリ金属含有アノード、固体カソードおよび電解質に基づき、前記電解質が非プロトン性溶媒中に保持されるクロソボラン化合物である電気化学セルを開示している。使用されるクロソボランは式Z2nnおよびZCBmmであり、前式において、Zはアルカリ金属、Cは炭素、Rは有機水素およびハロゲン原子からなる群から選択される基、Bはホウ素、Xは水素およびハロゲンからなる群から選択される1つまたは複数の置換基、mは5から11の整数、nは6から12の整数である。電気化学セルに使用されるクロソボラン電解質の具体的に開示されている例には、リチウムオクタブロモオクタボレート、リチウムデカクロロデカボレート、リチウムドデカクロロドデカボレートおよびリチウムヨードデカボレートがある。
【0010】
米国特許第6,346,351号は、塩と溶媒混合物に基づく、正極構造に対して高い適合性を持つ再充電可能なセルのための電解質系を開示している。リチウムテトラフルオロボレートおよびリチウムヘキサフルオロホスフェートが塩の例である。溶媒の例には、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、メチルホルメートなどがある。背景において、リチウムセル用の公知の電解質が開示されており、溶媒に取り込まれているリチウムパークロレート、リチウムヘキサフルオロアルソネート、リチウムトリフルオロメチルスルホネート、リチウムテトラフルオロボレート、リチウムブロマイドおよびリチウムヘキサフルオロアンチモネート電解質がある。
【0011】
Journal of the Electrochemical Society,151(9)A1429−A1435(2004)およびその中の参考文献は、通常非水溶媒系に低い溶解度を持つLiFおよび他のLi塩を可溶化し、これらの塩をリチウムイオンセル中でリチウムイオン電解質にできる添加剤としてボロネート、ボレートおよびボラン系ルイス酸を開示している。
【0012】
上記で特定した特許、特許出願および刊行物を参照により本願に組み込む。
【発明の概要】
【0013】
〔発明の簡単な概要〕
本発明は、負極、正極および電解質を含んでなる電気化学セルに対する改善された過充電保護を提供することにより、従来の電解質に関連する問題を解決する。どのような好適な電解質を用いてもよいが、好適な電解質の例は、参照により本願に組み込む米国公開特許出願第US20050053841A1号および第US20050064288A1号に開示されているものがある。本発明は、一次セルおよび二次セル、特に過充電から損傷を受けやすいものに有用である。「過充電する(overcharge)」または「過充電すること(overcharging)」とは、セルの通常の満充電電位を超える電位へのセルの充電または100%充電状態を超えるセルの充電を意味する。
【0014】
本発明の1態様は、少なくとも1種の添加剤を利用して、特許出願第11/097,810号に記載のものなどセルの過充電容量を拡大することに関する。どのような理論または説明にも拘束されることを望まないが、そのような添加剤は、特定の電解質/セル中で起こりうる不可逆反応の影響を最小限にすると考えられる。有効な添加剤は、過充電時にセル中に形成されるフッ化物の量を最小限にできるものであり、電極表面に形成されるフッ化物または他の抵抗塩(resistive salts)を溶解できるものであるとも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1〜5の容量保持対サイクル数のグラフである。
【図2】実施例6の電圧対時間のグラフである。
【図3】実施例7の電圧対時間のグラフである。
【図4】実施例8の電圧対時間のグラフである。
【図5】実施例2、6、7および8の容量対サイクル数のグラフである。
【図6】実施例8の容量対サイクルのグラフである。
【0016】
〔発明の詳細な説明〕
特許出願公報第US20050064288A1号は、電気化学セルに有用なある分類のボレートクラスター塩、リチウムイオンセル用の有用な塩およびボレートクラスター塩とともに他の電解質塩を利用してリチウムイオンセル中に安定な固体電解質界面(SEI)層を提供することを開示している。米国特許出願第11/097,810号は、リチウムイオンセルなどの電気化学セルに過充電保護を与えるのに有用なクラスのボレートクラスター塩を開示している。
【0017】
ある種の塩は長期間過充電保護を与えることができるが、レドックスシャトル化学作用が完全に可逆的でない場合もある(例えば、ボレートクラスター塩が過充電プロセスの間ゆっくりとした分解を起こす)。この分解反応の生成物は、電極上に電気的およびイオン的に抵抗性の層となり、次には、長期間過充電時にセルの放電容量の著しい低下につながることがある。場合によっては、細流充電(例えば、細流充電は、主な満充電パック電位(main full pack potential)までのセルパックの低速充電と定義されている)の間、または過充電を受けているセル(または複数のセル)がパック中の他のセルよりも容量が低い場合パックの多重充電(multiple charge)の間、一連のセルまたはパック中の1つまたは複数のセルにおいてより大きな過充電が起こることがある。
【0018】
本発明は、セルの容量減退(capacity fade)(例えば、容量減退とは、過充電後、またはセルの連続的な充放電時、電気化学エネルギー貯蔵能力の低下を意味する)を実質的に起こさずに長期間の過充電保護を与えるボレートクラスター塩を与える電解質を提供する。本発明の電解質溶液は非水系でよく、ボレートクラスター塩およびリチウムビス−オキサラトボレート(例えば、SEI層形成添加剤として)を含んでなる。リチウムビス−オキサラトボレートの量は、通常、電解質の約0.1から約5重量%の範囲であろう。
【0019】
本発明の電解質は、トリス−(パーフルオロフェニル)ボランなどの分子状(塩でない)フッ化三置換ボラン酸を取り入れてよい(例えば、過充電の間に起こりうるボレート分解によりもたらされる抵抗膜の沈着を防ぐように見えるアニオンレセプターとして)。他の好適な三置換酸は、ボレート−Bが3つの酸素と結合しているホウ素含有酸、ボロネート−ホウ素が3つの炭素と酸素の混合物と結合しているホウ素含有酸およびボラン−ホウ素が3つの炭素と結合しているホウ素含有酸のリストから選択できる。他の溶解性でHFを発生しないルイス酸は、ボレートクラスター塩により与えられる過充電保護の寿命を延ばすのに有効であることがある。望まれる場合、前記酸を、リチウムビス−オキサラトボレートも含む電解質に用いてもよい。酸の量は、通常、電解質の約0.1から約5重量%の範囲であろう。本発明は、有効な過充電の長さを増すことができ、したがって、過充電容量(overcharge capacity)は4倍より大きくできる。
【0020】
本発明の電解質は、従来装置中で電解質成分を混合し従来法を利用して製造できる。典型的な実施形態において、電解質の処方は、75〜99重量%の溶媒、1〜20重量%の塩、0.1から5重量%の酸および0.1から5重量%のLiBOBであろう。
【0021】
以下の実施例は本発明の特定の態様を説明するために提供され、本願に添付される特許請求の範囲を限定しないものとする。
【実施例1】
【0022】
正極、負極、セパレータおよび電解質を含むコインタイプセル電池(直径20mm、厚さ3.2mm)を室温で調製した。正極は、アルミ箔集電器上の84重量%のLiMn24(正極活物質)、4重量%のカーボンブラック(導電剤)、4重量%のSFG−6グラファイト(導電剤)、8重量%のポリビニリデンフルオライド(バインダー)からなる。負極は、銅箔集電器上の92重量%のMCMB(アノード活物質)、8重量%のポリビニリデンフルオライド(バインダー)からなる。セパレータ、Celgard(登録商標)3501(Celgard Inc.から市販)は微孔性ポリプロピレンフィルムを含んでなる。
【0023】
電解質は、重量で3:7のEC:DEC中のLi21293の0.4M溶液であった。セルを、3.0と4.2Vの間でC/3レート定電流で、複数回充放電した。サイクル数に対する容量保持を図1aに示す。迅速な容量減退が見られ、80サイクルを超えると完全な容量減退が見られた。
【実施例2】
【0024】
重量で3:7のEC:DEC中の0.4MのLi21293の電解質溶液に1%ビニルエチレンカーボネートを加え、負極での固体電解質界面の形成を促進させた点を除き、実施例1と同様にセルを組み立て、サイクルさせた。図1bから分かるとおり、容量保持は実施例1より向上した。しかし、80サイクルにわたって、50%を超える容量損失が見られ、初期不可逆容量損失も見られた。
【実施例3】
【0025】
電解質溶液が重量で3:7のEC:DEC中の0.36MのLi21293および0.08MのLiPF6である点を除き、実施例1と同様にセルを組み立て、サイクルさせた。LiPF6を加えて、負極での固体電解質界面の形成を促進させた。図1cから分かるように、容量保持は実施例1および2より向上した。容量減退がサイクル時に見られた。
【実施例4】
【0026】
電解質溶液が重量で3:7のEC:DEC中の0.36MのLi21293および0.08Mのリチウムビス−オキサラトボレート(LiBOB)である点を除き、実施例1と同様にセルを組み立て、サイクルさせた。LiBOBを加えた(例えば、実施例3におけるLiPF6添加のようにHF源を加えることなく、負極での固体電解質界面の形成を促進させるため)。図1dから分かるように、放電/充電の100サイクルにわたり容量減退は見られなかった。
【実施例5】
【0027】
電解質溶液が重量で3:7のEC:DEC中の0.36MのLi21293、0.04のLiBOBおよび0.04MのLiPF6である点を除き、実施例1と同様にセルを組み立て、サイクルさせた。図1eから分かるとおり、サイクル時に非常にゆっくりとした容量減退が見られる。この結果および実施例3および4は、LiPF6とLiBOBの両方が、ボレートクラスター塩を含む電解質とともにMCMB上に安定なSEI層を形成できるが、LiPF6単独またはLiPF6との組み合わせよりも、添加剤としてLiBOB単独の方が良好であったことを示している。どのような理論または説明にも拘束されることを望まないが、この結果は、LiPF6の中に含まれる微量のHFの存在下でのLiMn24正極の感受性によるかもしれない。
【実施例6】
【0028】
Li21293系電解質による過充電保護
重量で3:7のEC:DEC中の0.4MのLi21293を含んでなる電解質で、実施例1と同様にセルを組み立てた。各充電/放電サイクルにおいて、C/3レートで4時間セルを充電し、その後C/3レートで3.0Vまで定電流放電した。そのような充電プロトコルは、満充電容量を少なくとも33%超えてセルを効果的に過充電させる。図2に示すサイクルデータは、Li21293電解質の利用により過充電時にセル電位がおよそ4.5Vに制限されており、この過充電保護が、上述の過充電/放電のおよそ40サイクルの間続くことを表す。この電解質は、この過充電速度で、合計でおよそ260時間の過充電保護を与え、その後セル電位はもはや過充電時に制限されない。図5が示すとおり、過充電時の充電容量および放電容量保持は、このセルが4.2から3Vへ放電容量を迅速に失い、過充電保護が働かなくなる時までにはセル中に容量が全く残っていなかったことを示している。
【実施例7】
【0029】
Li21293系電解質+LiBOB添加剤による過充電保護
重量で3:7のEC:DEC中の0.36MのLi21293および0.08Mのリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)を含んでなる電解質で、実施例1と同様にセルを組み立てた。各充電/放電サイクルにおいて、C/3レートで4時間セルを充電し、その後C/3レートで3.0Vまで定電流放電した。そのような充電プロトコルは、満充電容量を少なくとも33%超えてセルを効果的に過充電させる。図3に示すサイクルデータは、Li21293電解質の利用により過充電時にセル電位がおよそ4.5Vに制限されており、この過充電保護が、上述の過充電/放電のおよそ100サイクルの間続くことを表す。この電解質処方は、この過充電速度で、合計でおよそ680時間の過充電保護を与え、その後セル電位はもはや過充電時に制限されない。過充電時の充電容量および放電容量保持を示す図5は、このセルが、実施例6のセルよりも遅い速度で4.2から3Vへ放電容量を失い、40から120の過充電サイクルの間で満充電容量のおよそ30〜40%で安定化することを示している。過充電保護が働かなくなる時に、セル中に4.2Vから3Vへの放電容量は全く残っていない。
【実施例8】
【0030】
Li21293系電解質+LiBOB添加剤+トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン添加剤による過充電保護
重量で3:7のEC:DEC中の0.36MのLi21293および0.08Mのリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)および5重量%のトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含んでなる電解質で、実施例1と同様にセルを組み立てた。各充電/放電サイクルにおいて、C/3レートで4時間セルを充電し、その後C/3レートで3.0Vまで定電流放電した。そのような充電プロトコルは、満充電容量を少なくとも33%超えてセルを効果的に過充電させる。図4に示すサイクルデータは、Li21293電解質の利用により過充電時にセル電位がおよそ4.5Vに制限されており、この過充電保護が、上述の過充電/放電のおよそ160サイクルの後でも有効であることを表している。この電解質処方は、この過充電速度で、865時間後でも過充電保護を与えていた。図5が示すとおり、4.2から3Vへの放電容量保持は、この試験の160回の過充電サイクルにわたってもきわめて良好である。図6は5%TPFPBを使用する影響を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極、正極および電解質を含んでなる電気化学セルであって、前記電解質が、過充電保護を与える少なくとも1種の塩、少なくとも1種のキャリアおよび少なくとも1種の添加剤を含んでなり、前記添加剤が少なくとも1種のルイス酸を含んでなり、過充電保護を与える前記塩が以下の式の塩を含んでなり:
a
上式において、Mは電気化学的に安定なカチオンであり、Qはボレートクラスターアニオンまたはヘテロボレートクラスターアニオンであり、aが1または2である、電気化学セル。
【請求項2】
前記電解質がさらに少なくとも1種の不可逆的な被酸化性塩を含んでなる、請求項1に記載のセル。
【請求項3】
Mが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウムおよびイミダゾリウムからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含んでなる、請求項1に記載のセル。
【請求項4】
Mがリチウムを含んでなる、請求項1に記載のセル。
【請求項5】
Qが以下からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含んでなる、請求項1に記載のセル:i)ZがF、H、Cl、Brまたは(OR)であり、RがH、アルキルまたはフルオロアルキルである式(B8-128-122-のクロソボレートアニオン、ii)NがBに結合し、R’、R”、R'''がそれぞれ独立に水素、アルキル、シクロアルキル、アリールおよび/またはポリマーからなる群から選択され、ZがF、H、Cl、Brまたは(OR)であり、RがH、アルキルまたはフルオロアルキルである、式((R’R”R''')NB8-127-111-のクロソアンモニオボレートアニオン組成物およびiii)R''''がCに結合し、水素、アルキル、シクロアルキル、アリールおよび/またはポリマーからなる群から選択され、ZがF、H、Cl、Brまたは(OR)であり、RがH、アルキルまたはフルオロアルキルである式(R''''CB7-117-111-のクロソモノカルボレートアニオン組成物。
【請求項6】
Qが、ZがF、H、Cl、Brまたは(OR)であり、RがH、C1-8アルキルまたはフルオロアルキルである式(B8-128-122-のクロソボレートアニオンを含んでなる、請求項5に記載のセル。
【請求項7】
符号aが2である、請求項6に記載のセル。
【請求項8】
過充電保護を与える前記塩が、ZがCl、ORであるLi2100-73-10、Li210Cl10、Li2101-5Cl5-9、Li210Cl5-9(OR)1-5、Li2102Cl8;Li2100-7(OCH33、Li210Cl8(OH)2、Li210Br10、Li28Br8、Li212Cl12およびLi21212からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含んでなる、請求項7に記載のセル。
【請求項9】
前記酸が実質的に加水分解せずHFを発生しない、請求項1に記載のセル。
【請求項10】
前記酸が置換ホウ素含有ルイス酸を含んでなる、請求項9に記載のセル。
【請求項11】
前記ホウ素含有ルイス酸が、ボラン、ボロネートおよびボレートからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含んでなる、請求項10に記載のセル。
【請求項12】
前記ホウ素含有ルイス酸がトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを含んでなる、請求項11に記載のセル。
【請求項13】
前記不可逆的な被酸化性塩がリチウムを含んでなる、請求項2に記載のセル。
【請求項14】
前記不可逆的な被酸化性塩が、リチウムパークロレート、リチウムヘキサフルオロホスフェート、リチウムヘキサフルオロアルセネート、リチウムヘキサフルオロボレート、リチウムトリフルオロメチルスルホネート、リチウムテトラフルオロボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウムブロマイドおよびリチウムヘキサフルオロアンチモネート、LiB(C654、LiN(SO2CF32、LiN(SO2CF2CF3)およびリチウムビス(キラト)(chelato)ボレートならびにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含んでなる、請求項8に記載のセル。
【請求項15】
前記少なくとも1種のキャリアが、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ビス(トリフルオロエチル)カーボネート、ビス(ペンタフルオロプロピル)カーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート、ペンタフルオロエチルメチルカーボネート、ヘプタフルオロプロピルメチルカーボネート、パーフルオロブチルメチルカーボネート、トリフルオロエチルエチルカーボネート、ペンタフルオロエチルエチルカーボネート、へプタフルオロプロピルエチルカーボネート、パーフルオロブチルエチルカーボネートなど、フッ化オリゴマー、メチルプロピオネート、ブチルプロピオネート、エチルプロピオネート、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソランジメトキシエタン、トリグライム、ジメチルビニレンカーボネート、ビニレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、テトラエチレングリコール、ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、スルホンおよびγ−ブチロラクトンからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含んでなる非プロトン性有機物を含んでなる、請求項1に記載のセル。
【請求項16】
過充電保護を与える前記塩が、以下の式により表される化合物であって:
Li210x10-x
および
Li212x12-x
上式において、xが、デカボレート塩では少なくとも3、ドデカボレート塩では少なくとも5であり、ZがH、Cl、BrまたはORであり、RがH、C1-8アルキルまたはフルオロアルキルである化合物からなる群から選択される少なくとも1種のリチウムフルオロボレートを含んでなる、請求項3に記載のセル。
【請求項17】
前記リチウムフルオロボレートが、セルの電圧の0.1から1ボルト上の可逆的酸化電位を有する、請求項12に記載のセル。
【請求項18】
前記リチウムフルオロボレート塩が、セル中に存在する前記不可逆的な被酸化性塩および過充電保護を与える前記塩の総重量の約3から約70%の量で加えられる、請求項13に記載のセル。
【請求項19】
前記不可逆的な被酸化性塩が、リチウムパークロレート、リチウムヘキサフルオロホスフェート、リチウムヘキサフルオロアルセネート、リチウムヘキサフルオロボレート、リチウムトリフルオロメチルスルホネート、リチウムテトラフルオロボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウムブロマイドおよびリチウムヘキサフルオロアンチモネート、LiB(C654、LiN(SO2CF32、LiN(SO2CF2CF3)およびリチウムビス(キラト)ボレートならびにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含んでなる、請求項14に記載のセル。
【請求項20】
過充電保護を与える前記塩が、Li21212、Li212x12-x(x=10、11および/または12)、Li212xCl12-x(x=6、7、8、9、10、11および/または12)、Li212x(OH)12-x(x=10および/または11)、Li21210(OH)2、Li21257およびLi210Cl10からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含んでなる、請求項14に記載のセル。
【請求項21】
前記キャリアが、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ビス(トリフルオロエチル)カーボネート、ビス(ペンタフルオロプロピル)カーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート、ペンタフルオロエチルメチルカーボネート、ヘプタフルオロプロピルメチルカーボネート、パーフルオロブチルメチルカーボネート、トリフルオロエチルエチルカーボネート、ペンタフルオロエチルエチルカーボネート、へプタフルオロプロピルエチルカーボネート、パーフルオロブチルエチルカーボネートなど、フッ化オリゴマー、メチルプロピオネート、ブチルプロピオネート、エチルプロピオネート、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソランジメトキシエタン、トリグライム、ジメチルビニレンカーボネート、ビニレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートテトラエチレングリコール、ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、スルホンおよびγ−ブチロラクトンからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含んでなる、請求項16に記載のセル。
【請求項22】
負極、正極ならびに少なくとも1種の非プロトン性有機キャリアおよび過充電保護を与える少なくとも1種の塩を含んでなる電解質を含んでなる電気化学セル。
【請求項23】
前記過充電保護が、セルの電圧の0.1から1ボルト上の可逆的酸化電位を有し、レドックスシャトルとして作用する、請求項18に記載のセル。
【請求項24】
過充電保護を与える前記塩が以下の一般式により表される塩を含んでなる、請求項18に記載のセル:
Li21010または
Li21212
上式において、x=H、F、Cl、BrまたはOH。
【請求項25】
過充電保護を与える前記塩が以下の式により表される塩を含んでなる、請求項19に記載のセル:
Li2108-100-2または
Li21210-120-2
上式において、x=HまたはCl。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−204691(P2011−204691A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−147316(P2011−147316)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【分割の表示】特願2006−260741(P2006−260741)の分割
【原出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】