説明

電気化学デバイス用非水溶媒、電気化学デバイス用非水系電解液及び電気化学デバイス

【課題】充電電圧を高めてエネルギー密度を向上することのできる電気化学デバイス用非水溶媒を提供する。
【解決手段】電気化学デバイス用非水溶媒はN−オキシド化合物を含有している。N−オキシド化合物はプロピレンカーボネートに比べて酸化電位が高いため、充電電圧を高くしても酸化分解が起こり難い。また、N−オキシド化合物は窒素原子が正に帯電して酸素原子が負に帯電する高極性化合物であって、支持電解質の溶解性が高いことから非水系電解液の電気伝導度が高く、電気化学キャパシタの抵抗値を下げる上でスルホランよりも有利である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学デバイス用非水溶媒と、該非水溶媒を用いた電気化学デバイス用非水系電解液と、該非水系電解液を用いた電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等の電気化学デバイスに用いられる電解液としては、強酸又は強アルカリから成る水系電解液と、非水溶媒に支持電解質を溶解して成る非水系電解液とがある。水系電解液は、電気化学デバイスの内部抵抗を低く抑えることができるメリットや、安価に製造できるメリット等がある。一方、非水系電解液は、水系電解液を用いた電気化学デバイスに比べて高い電圧で充電することができ、これによりエネルギー密度を高くすることができるメリットや、水系電解液を用いた電気化学デバイスに比べて使用温度を高くすることができるメリット等がある。
【0003】
非水系電解液の非水溶媒としては、例えば特許文献1に示されているように、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状炭酸エステルや、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状炭酸エステルや、γ−ブチロラクトン等の環状エステルや、アセトニトリル等のニトリル類や、ジメトキシエタン等の鎖状エーテルや、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルや、スルホラン等の含イオウ化合物が挙げられ、これらの中でもプロピレンカーボネートは他の非水溶媒に比べて多用されている。その理由は、支持電解質であるアンモニウム塩やホスホニウム塩等の溶解性が良好で、耐熱温度、粘度、誘電率等のバランスが得易いことにある。
【0004】
ところで、非水系電解液を用いた電気化学デバイスには、体積エネルギー密度や重量エネルギー密度を向上するために、充電電圧の向上という課題が従来からある。
【0005】
非水系電解液の非水溶媒としてプロピレンカーボネートを用いた電気二重層キャパシタを例に挙げて説明すると、該電気二重層キャパシタの充電電圧が2.5Vの場合、正極の電位は+4.25Vになり、負極の電位は+1.75Vになる。この正極の+4.25Vと言う値はプロピレンカーボネートが酸化分解し始める電圧であるため、2.5Vよりも高い電圧で充電すると、または、該充電を繰り返すと、プロピレンカーボネートが酸化分解してガスが発生して内部抵抗の上昇や静電容量の低下を生じる恐れがある。つまり、電気二重層キャパシタの充電電圧を高くするには、非水溶媒として分解電位の高いものが必要となる。
【0006】
また、リチウムイオンキャパシタにあっては、例えば特許文献1に示されるように、負極を構成する活物質に予めリチウムイオンを吸蔵(以下、「プレドープ」とも言う)させることにより、正極と負極との電位差を高くする試みも為されているが、充電時に前記同様の酸化分解が発生して内部抵抗の上昇や静電容量の低下を生じる恐れがあるため、このようなリチウムイオンキャパシタにあっても非水溶媒として分解電位の高いものが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開番号WO2003/003395
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、充電電圧を高めてエネルギー密度を向上できる電気化学デバイス用非水溶媒、電気化学デバイス用非水系電解液及び電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(電気化学デバイス用非水溶媒)は、N−オキシド化合物を含有している、ことをその特徴とする。
【0010】
前記N−オキシド化合物の一例は、下記式(1)で表され、且つ、該式(1)中のR1〜R3がそれぞれ炭素数が2〜6の一価の飽和炭化水素基又は一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基である、N−オキシド化合物である。
【0011】
【化1】

前記N−オキシド化合物の他の一例は、下記式(2)で表され、且つ、該式(2)中のR4が炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基又は一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基であり、Xが二価の飽和炭化水素基で窒素原子と共に環員数5又は6のヘテロ環を形成している、N−オキシド化合物である。
【0012】
【化2】

前記N−オキシド化合物の他の一例は、下記式(3)で表され、且つ、該式(3)中のR5が炭素数が1〜6の一価の飽和炭化水素基で、R6、R7がそれぞれ炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基である、N−オキシド化合物である。
【0013】
【化3】

前記N−オキシド化合物の他の一例は、下記式(4)で表され、且つ、該式(4)中のR8が炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基又は一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基である、N−オキシド化合物である。
【0014】
【化4】

前記N−オキシド化合物の他の一例は、下記式(5)で表され、且つ、該式(5)中のR9が炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基又は一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基である、N−オキシド化合物である。
【0015】
【化5】

また、本発明(電気化学デバイス用非水系電解液)は、前記の何れかの非水溶媒と、支持電解質とを含有している、ことをその特徴とする。
【0016】
さらに、本発明(電気化学デバイス)は、電極と、前記の電気化学デバイス用非水系電解液とを備えている、ことをその特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る電気化学デバイス用非水溶媒、電気化学デバイス用非水系電解液及び電気化学デバイスによれば、充電電圧を高めてエネルギー密度を向上できる。
【0018】
本発明の前記目的とそれ以外の目的と、構成特徴と、作用効果は、以下の説明と添付図面によって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】電気二重層キャパシタの側面断面図
【図2】図1に示した電気二重層キャパシタの平面図
【図3】フィルムパッケージが膨張した状態の図1及び図2に示した電気二重層キャパシタの側面断面図
【図4】式(1)のN−オキシド化合物の例
【図5】式(2)のN−オキシド化合物の例
【図6】式(3)のN−オキシド化合物の例
【図7】式(4)のN−オキシド化合物の例
【図8】式(5)のN−オキシド化合物の例
【図9】実験結果を示す表
【図10】実験結果を示す表
【図11】実験結果を示す表
【図12】リチウムイオンキャパシタの側面断面図
【図13】実験結果を示す表
【発明を実施するための形態】
【0020】
《電気二重層キャパシタへの適用》
以下、本発明を電気二重層キャパシタ用非水系電解液に適用した具体例について、図1〜図11を引用して説明する。
【0021】
〈電気二重層キャパシタの構造〉
図1及び図2に示したように、電気二重層キャパシタは、正極10、負極20、及び正極10と負極20との間に介在するセパレータ30を有する蓄電素子Bと、非水溶媒に電解質が溶解している非水系電解液と、ラミネートフィルムから形成され蓄電素子B及び非水系電解液が封入されているフィルムパッケージ40と、一端が蓄電素子Bに接続され他端がフィルムパッケージ40から導出している一対の端子50とを有する。
【0022】
正極10及び負極20は、例えばアルミニウム等の金属箔から成る集電体11,21の表面に分極性電極層12,22を形成して構成され、分極性電極層12,22はセパレータ30を介して向き合っている。非水系電解液は、分極性電極層12,22とセパレータ30に含浸している。
【0023】
分極性電極層12,22は、例えばポリアセン(PAS)、ポリアニリン(PAN)、活性炭等の主材料の他に、カーボンブラックやグラファイトや金属粉末等の導電助剤や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)やスチレンブタジエンゴム(SBR)等のバインダー等を必要に応じて含んでいる。活性炭の原料には、例えばおが屑、椰子殻、フェノール樹脂、各種耐熱性プラスチック、ピッチ等が利用でき、該各種耐熱性プラスチックには、例えばポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ビスマレイミドトリアジン、アラミド、フッ素樹脂、ポリフェニレン、ポリフェニレンスルフィド等の1種または2種以上が利用できる。勿論、分極性電極層12,22の材料は前記に限られるものではなく、公知のものが適宜利用できる。
【0024】
セパレータ30は、非水系電解液を含浸できるシート状物であって、該シート状物は、例えばセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素系樹脂等から成る。勿論、セパレータ30の材料は前記に限られるものではなく、公知のものが適宜利用できる。
【0025】
因みに、図3は、図1及び図2に示した電気二重層キャパシタのフィルムパッケージ40が膨張して、該フィルムパッケージ40の厚みT1が厚みT2に増加した状態を示してある。
【0026】
〈非水系電解液の組成〉
前記非水系電解液は、非水溶媒に支持電解質が溶解したものである。支持電解質には公知の支持電解質、例えばアンモニウム塩やホスホニウム塩を使用できる。アンモニウム塩の例としては、4フッ化ほう酸4ブチルアンモニウム((C494NBF4)、4フッ化ほう酸4エチルアンモニウム((C254NBF4)、4フッ化ほう酸3エチルメチルアンモニウム((C253CH3NBF4)、4フッ化ほう酸−1,1’−スピロビピロリジニウム((C482NBF4)、6フッ化リン酸4ブチルアンモニウム((C494NPF6)、6フッ化リン酸4エチルアンモニウム((C254NPF6)等が挙げられる。ホスホニウム塩の例としては、4フッ化ほう酸4ブチルホスホニウム((C494PBF4)、4フッ化ほう酸4エチルホスホニウム((C254PBF4)、6フッ化リン酸4ブチルホスホニウム((C494PPF6)、6フッ化リン酸4エチルホスホニウム((C254PPF6)等が挙げられる。支持電解質の濃度は非水系電解液1リットルに対し、例えば1.0モル以上2.5モル以下である。
【0027】
一方、非水溶媒は、N−オキシド化合物を少なくとも含有している。N−オキシド化合物の一例として、式(1)のN−オキシド化合物を含有しており、該式(1)中のR1〜R3はそれぞれ炭素数が2〜6の一価の飽和炭化水素基又は一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基である。
【0028】
【化6】

式(1)のN−オキシド化合物の具体例は図4に示した通りであり、同図4の例1〜例5は、R1〜R3のそれぞれが炭素数2〜6の一価の飽和炭化水素基である例を示し、例6〜例8は、R1〜R3のそれぞれが炭素数2〜6の一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基である例を示す。
【0029】
また、N−オキシド化合物の他の一例として、式(2)のN−オキシド化合物を含有しており、該式(2)中のR4は炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基又は一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基であり、Xは二価の飽和炭化水素基で窒素原子と共に環員数5又は6のヘテロ環を形成している。
【0030】
【化7】

式(2)のN−オキシド化合物の具体例は図5に示した通りであり、同図5の例9〜例12及び例14〜例17は、R4が炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基で、Xが二価の飽和炭化水素基で、結合している窒素原子と共に環員数5又は6のヘテロ環を形成している例を示し、例13及び例18は、R4が炭素数が3〜6の一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基で、Xが二価の飽和炭化水素基で、結合している窒素原子と共に環員数5又は6のヘテロ環を形成している例を示す。
【0031】
さらに、N−オキシド化合物の他の一例として、式(3)のN−オキシド化合物を含有しており、該式(3)中のR5は炭素数が1〜6の一価の飽和炭化水素基で、R6、R7はそれぞれ炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基である。
【0032】
【化8】

式(3)のN−オキシド化合物の具体例は図6に示した通りであり、同図6の例19〜例22は、R5が炭素数が1〜6の一価の飽和炭化水素基で、R6、R7がそれぞれ炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基である例を示す。
【0033】
さらに、N−オキシド化合物の他の一例として、式(4)のN−オキシド化合物を含有しており、該式(4)中のR8は炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基又は一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基である。
【0034】
【化9】

式(4)のN−オキシド化合物の具体例は図7に示した通りであり、同図7の例23〜例26は、R8が炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基である例を示し、例27はR8が炭素数が3〜6の一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基である例を示す。
【0035】
さらに、N−オキシド化合物の他の一例として、式(5)のN−オキシド化合物を含有しており、該式(5)中のR9は炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基又は一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基である。
【0036】
【化10】

式(5)のN−オキシド化合物の具体例は図8に示した通りであり、同図8の例28〜例31は、R9が炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基である例を示し、例32はR9が炭素数が3〜6の一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基である例を示す。
【0037】
〈実験例1〜実験例40と比較例1〜比較例6の説明〉
図9及び図10は、非水溶媒としてN−オキシド化合物を単独で用いた実験例1〜実験例40とその比較例1〜比較例6を示す。
【0038】
(実験例1)
非水系電解液として、非水溶媒が例1のN−オキシド化合物で、且つ、支持電解質である4フッ化ほう酸3エチルメチルアンモニウム(TEMABF4)を非水系電解液1リットルに対して1.2モル溶解させたものを用意し、該非水系電解液を、正極10及び負極20の分極性電極層12,22がPASから成る電気二重層キャパシタに封入して、後記評価を行った。
【0039】
(実験例2)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例2のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0040】
(実験例3)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例3のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0041】
(実験例4)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例4のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0042】
(実験例5)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例5のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0043】
(実験例6)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例6のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0044】
(実験例7)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例7のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0045】
(実験例8)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例8のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0046】
(実験例9)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例9のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0047】
(実験例10)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例10のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0048】
(実験例11)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例11のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0049】
(実験例12)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例12のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0050】
(実験例13)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例13のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0051】
(実験例14)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例14のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0052】
(実験例15)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例15のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0053】
(実験例16)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例16のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0054】
(実験例17)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例17のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0055】
(実験例18)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例18のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0056】
(実験例19)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例19のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0057】
(実験例20)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例20のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0058】
(実験例21)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例21のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0059】
(実験例22)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例22のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0060】
(実験例23)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例23のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0061】
(実験例24)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例24のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0062】
(実験例25)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例25のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0063】
(実験例26)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例26のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0064】
(実験例27)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例27のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0065】
(実験例28)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例28のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0066】
(実験例29)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例29のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0067】
(実験例30)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例30のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0068】
(実験例31)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例31のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0069】
(実験例32)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例32のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0070】
(実験例33)
非水系電解液として、実験例1の支持電解質を4フッ化ほう酸4エチルアンモニウム(TEABF4)に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0071】
(実験例34)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例3のN−オキシド化合物に変更し、且つ、支持電解質を4フッ化ほう酸4エチルアンモニウム(TEABF4)に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0072】
(実験例35)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例9のN−オキシド化合物に変更し、且つ、支持電解質を4フッ化ほう酸4エチルアンモニウム(TEABF4)に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0073】
(実験例36)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例19のN−オキシド化合物に変更し、且つ、支持電解質を4フッ化ほう酸4エチルアンモニウム(TEABF4)に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0074】
(実験例37)
非水系電解液として、実験例1の支持電解質を4フッ化ほう酸−1,1’−スピロビピロリジニウム(SBPBF4)に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0075】
(実験例38)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例3のN−オキシド化合物に変更し、且つ、支持電解質を4フッ化ほう酸−1,1’−スピロビピロリジニウム(SBPBF4)に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0076】
(実験例39)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例9のN−オキシド化合物に変更し、且つ、支持電解質を4フッ化ほう酸−1,1’−スピロビピロリジニウム(SBPBF4)に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0077】
(実験例40)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒を例19のN−オキシド化合物に変更し、且つ、支持電解質を4フッ化ほう酸−1,1’−スピロビピロリジニウム(SBPBF4)に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0078】
(比較例1)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒をプロピレンカーボネート(PC)に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0079】
(比較例2)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒をスルホラン(SL)に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0080】
(比較例3)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒をプロピレンカーボネート(PC)に変更し、且つ、支持電解質を4フッ化ほう酸4エチルアンモニウム(TEABF4)に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0081】
(比較例4)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒をスルホラン(SL)に変更し、且つ、支持電解質を4フッ化ほう酸4エチルアンモニウム(TEABF4)に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0082】
(比較例5)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒をプロピレンカーボネート(PC)に変更し、且つ、支持電解質を4フッ化ほう酸−1,1’−スピロビピロリジニウム(SBPBF4)に変更したものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0083】
(比較例6)
非水系電解液として、実験例1の非水溶媒をスルホラン(SL)に変更し、且つ、支持電解質を4フッ化ほう酸−1,1’−スピロビピロリジニウム(SBPBF4)に変更したたものを用意した他は、実験例1と同様に後記評価を行った。
【0084】
〈評価方法の説明〉
図9及び図10中の「初期値・静電容量」と「初期値・インピーダンス(1kHz)」は、実施例1〜実施例40と比較例1〜比較例6の非水系電解液を封入した電気二重層キャパシタそれぞれを25℃雰囲気中で12時間放置後、同雰囲気内でLCRメータによって静電容量及びインピーダンス(測定周波数1kHz)を測定した値を示してある。
【0085】
また、図9及び図10中の「信頼性試験後・静電容量変化率」と「信頼性試験後・インピーダンス変化率」は、「初期値・静電容量」と「初期値・インピーダンス(1kHz)」を測定した後、70℃の雰囲気中で充電電圧3.3Vを500時間印加し続ける信頼性試験を実施し、その後に25℃雰囲気中でLCRメータによって静電容量及びインピーダンス(測定周波数1kHz)を測定し、各測定値を「初期値・静電容量」と「初期値・インピーダンス(1kHz)」の値でそれぞれ除算して百分率で表した値を示してある。
【0086】
さらに、図9及び図10中の「信頼性試験後・パッケージ厚み変化率」は、信頼性試験後のフィルムパッケージ40の厚みT2(図3を参照)を初期のフィルムパッケージ40の厚みT1(図1を参照)で除算して百分率で表した値を示してある。
【0087】
〈評価結果の説明〉
図9及び図10から分かるように、非水溶媒にN−オキシド化合物を用いた非水系電解液(実験例1〜実験例40)の方が、非水溶媒にプロピレンカーボネート(PC)を用いた非水系電解液(比較例1、比較例3及び比較例5)よりも、信頼性試験後の静電容量変化率とインピーダンス変化率とパッケージ厚み変化率が格段小さくなる傾向がある。このような結果が得られた理由は定かではないが以下のように推測される。
【0088】
即ち、電気二重層キャパシタに充電電圧3.3Vを印加すると、正極10の電位は例えば+4.65Vに上昇し負極の電位が例えば+1.35Vに低下するが、非水溶媒であるN−オキシド化合物の酸化電位がプロピレンカーボネート(PC)のそれよりも高いため、充電電圧3.3Vを印加しても非水溶媒の酸化分解の発生が無く又は少なく、これにより信頼性試験後の静電容量変化率とインピーダンス変化率とパッケージ厚み変化率が抑制されたものと考えられる。また、N−オキシド化合物は還元電位も低く、電気化学的に安定していることも前記結果に影響していると考えられる。
【0089】
また、図9及び図10から分かるように、非水溶媒にN−オキシド化合物を用いた非水系電解液(実験例1〜実験例40)の方が、非水溶媒にスルホラン(SL)を用いた非水系電解液(比較例2、比較例4及び比較例6)よりも、初期のインピーダンスと信頼性試験後のインピーダンス変化率が小さくなる傾向がある。このような結果が得られた理由は定かではないが以下のように推測される。
【0090】
即ち、非水溶媒であるN−オキシド化合物は窒素原子が正に帯電して酸素原子が負に帯電する高極性化合物であって、支持電解質の溶解性が高いことから非水系電解液の電気伝導度が高く、これにより初期のインピーダンスと信頼性試験後のインピーダンス変化率が抑制されたものと考えられる。
【0091】
このように、非水溶媒としてN−オキシド化合物を単独で用いた非水系電解液は、従前の非水系電解液に比べて、充電電圧を高めてエネルギー密度を向上させるのに有用であることが理解できよう。
【0092】
〈実験例41〜実験例44と比較例7及び比較例8の説明〉
図11は、非水溶媒としてN−オキシド化合物と公知の非水溶媒との混合溶媒を用いた実験例41〜実験例44とその比較例7及び比較例8を示す。
【0093】
(実験例41)
非水系電解液として、非水溶媒が例23のN−オキシド化合物90重量%とジメチルスルホン(DMS)10重量%の混合溶媒で、且つ、支持電解質である4フッ化ほう酸3エチルメチルアンモニウム(TEMABF4)を非水系電解液1リットルに対して1.2モル溶解させたものを用意し、該非水系電解液を、正極10及び負極20の分極性電極層12,22がPASから成る電気二重層キャパシタに封入して、後記評価を行った。
【0094】
(実験例42)
非水系電解液として、非水溶媒が例23のN−オキシド化合物80重量%とエチルメチルスルホン(EMS)20重量%の混合溶媒で、且つ、支持電解質である4フッ化ほう酸3エチルメチルアンモニウム(TEMABF4)を非水系電解液1リットルに対して1.2モル溶解させたものを用意し、該非水系電解液を、正極10及び負極20の分極性電極層12,22がPASから成る電気二重層キャパシタに封入して、後記評価を行った。
【0095】
(実験例43)
非水系電解液として、非水溶媒が例23のN−オキシド化合物80重量%とエチルイソプロピルスルホン(EIPS)20重量%の混合溶媒で、且つ、支持電解質である4フッ化ほう酸3エチルメチルアンモニウム(TEMABF4)を非水系電解液1リットルに対して1.2モル溶解させたものを用意し、該非水系電解液を、正極10及び負極20の分極性電極層12,22がPASから成る電気二重層キャパシタに封入して、後記評価を行った。
【0096】
(実験例44)
非水系電解液として、非水溶媒が例23のN−オキシド化合物80重量%とスルホラン(SL)20重量%の混合溶媒で、且つ、支持電解質である4フッ化ほう酸3エチルメチルアンモニウム(TEMABF4)を非水系電解液1リットルに対して1.2モル溶解させたものを用意し、該非水系電解液を、正極10及び負極20の分極性電極層12,22がPASから成る電気二重層キャパシタに封入して、後記評価を行った。
【0097】
(比較例7)
非水系電解液として、実験例41の非水溶媒をエチルイソプロピルスルホン(EIPS)の単独としたものを用意した他は、実験例41と同様に後記評価を行った。
【0098】
(比較例8)
非水系電解液として、実験例41の非水溶媒をスルホラン(SL)の単独としたものを用意した他は、実験例41と同様に後記評価を行った。
【0099】
〈評価方法の説明〉
図11中の「初期値・静電容量」と「初期値・インピーダンス(1kHz)」は、実施例41〜実施例44と比較例7及び8の非水系電解液を封入した電気二重層キャパシタそれぞれを25℃雰囲気中で12時間放置後、同雰囲気内でLCRメータによって静電容量及びインピーダンス(測定周波数1kHz)を測定した値を示してある。
【0100】
また、図11中の「信頼性試験後・静電容量変化率」と「信頼性試験後・インピーダンス変化率」は、「初期値・静電容量」と「初期値・インピーダンス(1kHz)」を測定した後、70℃の雰囲気中で充電電圧3.3Vを500時間印加し続ける信頼性試験を実施し、その後に25℃雰囲気中でLCRメータによって静電容量及びインピーダンス(測定周波数1kHz)を測定し、各測定値を「初期値・静電容量」と「初期値・インピーダンス(1kHz)」の値でそれぞれ除算して百分率で表した値を示してある。
【0101】
さらに、図11中の「信頼性試験後・パッケージ厚み変化率」は、信頼性試験後のフィルムパッケージ40の厚みT2(図3を参照)を初期のフィルムパッケージ40の厚みT1(図1を参照)で除算して百分率で表した値を示してある。
【0102】
〈評価結果の説明〉
図11から分かるように、非水溶媒にN−オキシド化合物と公知の非水溶媒との混合溶媒を用いた非水系電解液(実験例41〜実験例44)の方が、非水溶媒にスルホラン(SL)を用いた非水系電解液(比較例8)よりも、初期のインピーダンスが小さくなる傾向がある。このような結果が得られた理由は定かではないが以下のように推測される。
【0103】
即ち、非水溶媒に含有されるN−オキシド化合物は窒素原子が正に帯電して酸素原子が負に帯電する高極性化合物であって、支持電解質の溶解性が高いことから非水系電解液の電気伝導度が高く、これにより初期のインピーダンスが抑制されたものと考えられる。また、N−オキシド化合物の存在によって非水系電解液の粘度が低下していることも前記結果に影響していると考えられる。
【0104】
このように、非水溶媒としてN−オキシド化合物と公知の非水溶媒との混合溶媒を用いた非水系電解液は、従前の非水系電解液に比べて、充電電圧を高めてエネルギー密度を向上させるのに有用であることが理解できよう。
【0105】
《リチウムイオンキャパシタへの適用》
以下、本発明をリチウムイオンキャパシタ用非水系電解液に適用した具体例について、図12及び図13を引用して説明する。
【0106】
〈リチウムイオンキャパシタの構造〉
図12に示したように、リチウムイオンキャパシタは、前記電気二重層キャパシタと同様に、正極10、負極20、及びセパレータ30を有する蓄電素子Bと、非水系電解液と、フィルムパッケージ40と、一対の端子50とを有する。このリチウムイオンキャパシタの充電前の正極10と負極20との電位差は3V程度である。
【0107】
このリチウムイオンキャパシタが前記電気二重層キャパシタと異なるところは、
・負極20が、例えば銅の金属箔から成る集電体21の表面に分極性電極層22ではなく 活物質層23を形成して構成されている点
・蓄電素子Bと非水系電解液をフィルムパッケージ40内に封入する際に、リチウム金属 のシート(図示省略)が負極20の近傍に配置されている点
にある。非水系電解液は、分極性電極層12と活物質層23とセパレータ30に含浸している。
【0108】
活物質層23は、例えば難黒鉛化炭素、グラファイト、錫酸化物、珪素酸化物等の主材料の他に、カーボンブラックや金属粉末等の導電助剤や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)やスチレンブタジエンゴム(SBR)等のバインダーを必要に応じて含んでいる。勿論、活物質層23の材料は前記に限られるものではなく、公知のものが適宜利用できる。
【0109】
リチウム金属シートのリチウムは非水系電解液に溶解すると共に、そのリチウムイオンが負極20の活物質層23にプレドープされ、これにより充電前の状態で負極20の電位が正極10の電位に比べて例えば3V程度低くなる。
【0110】
〈非水系電解液の組成〉
前記非水系電解液は、非水溶媒に支持電解質が溶解したものである。支持電解質には公知の支持電解質、即ち、非水系電解液にカチオンとしてLi+を提供でき、且つ、アニオンとしてPF6+やBF4-等を供給できる支持電解質を使用できる。また、カチオンとしてリチウムイオンを提供できる公知のイオン性液体を使用することもできる。支持電解質の濃度は非水系電解液1リットルに対し、例えば1.0モル以上2.0モル以下である。
【0111】
一方、非水溶媒は、N−オキシド化合物の何れか1つを少なくとも含有している。N−オキシド化合物については先に説明した通りであるのでここでの説明を省略する。
【0112】
〈実験例45〜実験例53と比較例9〜比較例10の説明〉
図13は、非水溶媒としてN−オキシド化合物を単独で用いた実験例45〜53とその比較例9及び比較例10を示す。
【0113】
(実験例45)
非水系電解液として、非水溶媒が例1のN−オキシド化合物で、且つ、支持電解質であるLiPF6を非水系電解液1リットルに対して1.2モル溶解させたものを用意し、該非水系電解液を、正極10の分極性電極層12がPASから成り負極20の活物質層23が難黒鉛化炭素から成るリチウムイオンキャパシタに封入して、後記評価を行った。
【0114】
(実験例46)
非水系電解液として、実験例45の非水溶媒を例2のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例45と同様に後記評価を行った。
【0115】
(実験例47)
非水系電解液として、実験例45の非水溶媒を例3のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例45と同様に後記評価を行った。
【0116】
(実験例48)
非水系電解液として、実験例45の非水溶媒を例6のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例45と同様に後記評価を行った。
【0117】
(実験例49)
非水系電解液として、実験例45の非水溶媒を例9のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例45と同様に後記評価を行った。
【0118】
(実験例50)
非水系電解液として、実験例45の非水溶媒を例14のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例45と同様に後記評価を行った。
【0119】
(実験例51)
非水系電解液として、実験例45の非水溶媒を例19のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例45と同様に後記評価を行った。
【0120】
(実験例52)
非水系電解液として、実験例45の非水溶媒を例23のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例45と同様に後記評価を行った。
【0121】
(実験例53)
非水系電解液として、実験例45の非水溶媒を例28のN−オキシド化合物に変更したものを用意した他は、実験例45と同様に後記評価を行った。
【0122】
(比較例9)
非水系電解液として、実験例45の非水溶媒をプロピレンカーボネート(PC)に変更したものを用意した他は、実験例45と同様に後記評価を行った。
【0123】
(比較例10)
非水系電解液として、実験例45の非水溶媒をスルホラン(SL)に変更したものを用意した他は、実験例45と同様に後記評価を行った。
【0124】
〈評価方法の説明〉
図13中の「初期値・静電容量」と「初期値・内部抵抗」は、実施例45〜実施例53と比較例9及び比較例10の非水系電解液を封入したリチウムイオンキャパシタそれぞれを25℃雰囲気中で12時間放置後、同雰囲気内でLCRメータによって静電容量及び内部抵抗を測定した値を示してある。
【0125】
また、図13中の「信頼性試験後・静電容量変化率」と「信頼性試験後・内部抵抗変化率」は、「初期値・静電容量」と「初期値・内部抵抗」を測定した後、60℃の雰囲気中で充電電圧4.5Vを500時間印加し続ける信頼性試験を実施し、その後に25℃雰囲気中でLCRメータによって静電容量及び内部抵抗を測定し、各測定値を「初期値・静電容量」と「初期値・内部抵抗」の値でそれぞれ除算して百分率で表した値を示してある。
【0126】
さらに、図13中の「信頼性試験後・パッケージ厚み変化率」は、信頼性試験後のフィルムパッケージ40の厚みT2(図3を参照)を初期のフィルムパッケージ40の厚みT1(図1を参照)で除算して百分率で表した値を示してある。
【0127】
〈評価結果の説明〉
図13から分かるように、非水溶媒にN−オキシド化合物を用いた非水系電解液(実験例45〜実験例53)の方が、非水溶媒にプロピレンカーボネート(PC)を用いた非水系電解液(比較例9)よりも、信頼性試験後の静電容量変化率と抵抗変化率とパッケージ厚み変化率が格段小さくなる傾向がある。このような結果が得られた理由(推測)は先に述べた通りである。
【0128】
また、図13から分かるように、非水溶媒にN−オキシド化合物を用いた非水系電解液(実験例45〜実験例53)の方が、非水溶媒にスルホラン(SL)を用いた非水系電解液(比較例10)よりも、初期の内部抵抗と信頼性試験後の内部抵抗変化率が小さくなる傾向がある。このような結果が得られた理由(推測)は先に述べた通りである。
【0129】
このように、非水溶媒としてN−オキシド化合物を単独で用いた非水系電解液は、従前の非水系電解液に比べて、充電電圧を高めてエネルギー密度を向上させるのに有用であることが理解できよう。
【0130】
《他の電気化学デバイスへの適用》
(1)前記N−オキシド化合物は、リチウムイオン二次電池の非水系電解液の非水溶媒として用いることもできる。即ち、非水系電解液の非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、γ−ブチロラクトン(γBL)、γ−バレロラクトン(γVL)、3−メチル−γ−ブチロラクトン、2−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、吉草酸メチル等の鎖状エステル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチル−1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジプロピルエーテル等の鎖状エーテル、アセトニトリル(AN)、プロパンニトリル(PN)、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等のニトリル類、及びスルホラン(SL)、エチルメチルスルホン(EMS)、ジメチルスルホキシド等の含イオウ化合物の何れか1種または複数種の混合溶媒を用いていた従来のリチウムイオン二次電池において、該非水溶媒に前記N−オキシド化合物を混合して用いたり、或いは、該非水溶媒として前記N−オキシド化合物を単独で用いても、リチウムイオン二次電池の充電電圧を高めてエネルギー密度の向上を図ることができる。
【0131】
(2)前記N−オキシド化合物は、レドックスキャパシタの非水系電解液の非水溶媒として用いることもできる。即ち、非水系電解液の非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、γ−ブチロラクトン(γBL)、γ−バレロラクトン(γVL)、3−メチル−γ−ブチロラクトン、2−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、吉草酸メチル等の鎖状エステル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチル−1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジプロピルエーテル等の鎖状エーテル、アセトニトリル(AN)、プロパンニトリル(PN)、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等のニトリル類、及びスルホラン(SL)、エチルメチルスルホン(EMS)、ジメチルスルホキシド等の含イオウ化合物の何れか1種または複数種の混合溶媒を用いていた従来のレドックスキャパシタにおいて、該非水溶媒に前記N−オキシド化合物を混合して用いたり、或いは、該非水溶媒として前記N−オキシド化合物を単独で用いても、レドックスキャパシタの充電電圧を高めてエネルギー密度の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン二次電池、及びレドックスキャパシタに限らず、非水系電解液を用いる各種の電気化学デバイスに幅広く利用でき、前記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0133】
10…正極、11…集電体、12…分極性電極層、20…負極、21…集電体、22…分極性電極層、23…活物質層、30…セパレータ、40…フィルムパッケージ、50…端子、B…蓄電素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−オキシド化合物を含有している、電気化学デバイス用非水溶媒。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学デバイス用非水溶媒であって、
前記N−オキシド化合物が、下記式(1)で表され、且つ、該式(1)中のR1〜R3がそれぞれ炭素数が2〜6の一価の飽和炭化水素基又は一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基である、電気化学デバイス用非水溶媒。
【化1】

【請求項3】
請求項1に記載の電気化学デバイス用非水溶媒であって、
前記N−オキシド化合物が、下記式(2)で表され、且つ、該式(2)中のR4が炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基又は一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基であり、Xが二価の飽和炭化水素基で窒素原子と共に環員数5又は6のヘテロ環を形成している、電気化学デバイス用非水溶媒。
【化2】

【請求項4】
請求項1に記載の電気化学デバイス用非水溶媒であって、
前記N−オキシド化合物が、下記式(3)で表され、且つ、該式(3)中のR5が炭素数が1〜6の一価の飽和炭化水素基で、R6、R7がそれぞれ炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基である、電気化学デバイス用非水溶媒。
【化3】

【請求項5】
請求項1に記載の電気化学デバイス用非水溶媒であって、
前記N−オキシド化合物が、下記式(4)で表され、且つ、該式(4)中のR8が炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基又は一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基である、電気化学デバイス用非水溶媒。
【化4】

【請求項6】
請求項1に記載の電気化学デバイス用非水溶媒であって、
前記N−オキシド化合物が、下記式(5)で表され、且つ、該式(5)中のR9が炭素数が3〜6の一価の飽和炭化水素基又は一価のヘテロ原子含有飽和炭化水素基である、電気化学デバイス用非水溶媒。
【化5】

【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の非水溶媒と、支持電解質とを含有している、電気化学デバイス用非水系電解液。
【請求項8】
電極と、請求項7に記載の非水系電解液とを備えている電気化学デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−209482(P2012−209482A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75106(P2011−75106)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】