説明

電気化学的な水素の分離と電気化学的な水素の水への反応とを含む炭化水素をアミノ炭化水素に直接アミノ化するプロセス

反応ゾーンRZ中で、少なくとも一種の炭化水素と少なくとも一種のアミノ化剤を含む供給流Eを反応させてアミノ炭化水素と水素を含む反応混合物Rを形成し、少なくとも一層の選択的プロトン伝導性膜と該膜の各面に少なくとも一個の電極触媒をもつ気密膜−電極アセンブリにより、反応でできた水素の少なくとも一部を反応混合物Rから電気化学的に分離することからなり、膜の未透過物側のアノード触媒上で少なくとも一部の水素がプロトンが酸化されてプロトンとなり、このプロトンが膜を通過し、透過物側の該カソード触媒上で膜の透過物側に接触されられる酸素含有流Oに由来する酸素と反応して水を生じることを特徴とするプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の存在下で炭化水素をアミノ化剤で直接アミノ化してアミノ炭化水素とするプロセスであって、反応で生じる水素の少なくとも一部を気密膜−電極アセンブリにより電気化学的に分離し、その水素を酸素と反応させて水を生じさせると共に電流を発生させるプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素からアミノ炭化水素の工業生産は、通常多段反応で行われる。従って、ベンゼンからのアニリンの製造においては、ニトロベンゼン、クロロベンゼンまたはフェノールなどのベンゼン誘導体をまず製造し、次いでこれを単一段反応または多段反応でアニリンに変換する。
【0003】
アミノ炭化水素を相当する炭化水素から直接製造するプロセスも知られている。この炭化水素から直接アミノ炭化水素を製造する反応は、直接アミノ化と呼ばれる。Wibautは、初めて不均一触媒によるベンゼンの直接アミノ化について1917年に報告している(Berichte 1917, 50, 541−546)。
【0004】
直接アミノ化では、用いる炭化水素の相当するアミノ炭化水素への変換が水素の遊離を伴って進む。ベンゼンからアニリンへの直接アミノ化では、1molのベンゼンと1molのアンモニアから1molのアニリンと1molの水素が生成する。ベンゼンからアニリンへの直接アミノ化は、熱力学的な平衡値で制限されている。温度が350℃での平衡変換率は、ベンゼンに対して約0.5モル%である。
【0005】
この低い平衡変換率のため、経済的に直接アミノ化を行うには、熱力学的平衡値のアミノ炭化水素側へのシフトが必要である。
【0006】
一つの可能性は、直接アミノ化で得られる、アミノ炭化水素と未反応の出発原料と水素を含む反応混合物から一部の水素を除き、未反応の出発原料を直接アミノ化反応で再使用することである。この反応混合物から水素を除く必要がある。これは、水素により熱力学的平衡が出発原料の方向にシフトし、その結果、これを再利用して直接アミノ化するとアミノ炭化水素の収率が低下するためである。もう一つの可能性は、直接アミノ化で生じる水素を直接反応ゾーンから除くことである。反応混合物から水素を除くための方法が数多く報告されている。
【0007】
WO2007/096297とWO2000/69804には、芳香族炭化水素から相当するアミノ炭化水素への直接アミノ化プロセスで生じる水素を、還元性金属酸化物上で酸化して除くプロセスが記載されている。これらのプロセスは、後ほど還元性金属酸化物を酸素で再生する必要があるという欠点を持つ。これは、炭化水素の直接アミノ化と還元性金属酸化物の再生が通常同条件で進行しないため、コスト高となるもののこのプロセスを中断する必要があることを意味する。このため、この触媒を再生するには、通常反応器を減圧して洗浄し、不活性とする必要がある。
【0008】
炭化水素からアミノ炭化水素への直接アミノ化中におこる他の不要な副反応は、アンモニアの分解による水素の発生である。まず出発原料のアンモニアが消失するため、また分解で生成する水素が平衡位置の出発原料の方向への更に好ましくないシフトをさせるため、この分解は不利である。WO2007/096297とWO2000/69804に記載の触媒の場合、金属酸化物の還元の程度が増加すると望ましくないアンモニアの分解が増加し、還元が進むと平衡位置が出発原料の方向にシフトする。
【0009】
WO2007/099028には、芳香族炭化水素から相当するアミノ炭化水素への変換のための直接アミノ化方法であって、第一の工程で不均一触媒による直接アミノ化が行われ、第一の工程で生成する水素が第二の工程で空気や酸素、CO、CO2、NO及び/又はN2Oなどの酸化剤と反応させられる方法が記載されている。酸素などの酸化剤の使用でアンモニアが酸化されて、他の副生成物が形成される。このため材料コストが上昇し、後処理工程が必要となり、その結果、プロセスの経済性に悪影響がでる。
【0010】
WO2008/009668にも、芳香族炭化水素の直接アミノ化方法が記載されている。この場合には、反応混合物からの水素の除去は、直接アミノ化で生成する水素と反応する化合物を添加しながら直接アミノ化を行うことで達成できる。直接アミノ化に加えられる化合物としては、例えばニトロベンゼンと一酸化炭素が記載されている。このプロセスにも上記の欠点が発生する。
【0011】
WO2007/025882には、芳香族炭化水素の相当するアミノ炭化水素への直接アミノ化において、水素を物理的に反応混合物から除去する方法が述べられている。この場合、この分離は選択的水素透過膜で行われる。即ち、水素がH2分子として膜を通過する。膜材料としては、パラジウムやパラジウム合金の使用が好ましい。このプロセスの拡散速度は、膜の未透過物側と透過物側との水素分圧の差に依存する。高い拡散速度を達成するためには、高い差圧で操作する必要があり、膜の機械的安定性に大きな要求を突きつける。Basile、Top. Catal. (2008)、51, 107−122には、十分に高い拡散速度を得るには300℃を超える温度が必要であると記載されている。また、この差圧を発生させるのに、混合ガスの圧縮と膨張用の適当な装置が必要である。また、熱力学的な理由で、ある特定比の水素が常に未透過物中に存在する。これは熱力学的平衡値に悪影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2007/096297
【特許文献2】WO2000/69804
【特許文献3】WO2007/099028
【特許文献4】WO2008/009668
【特許文献5】WO2007/025882
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、炭化水素からアミノ炭化水素への直接アミノ化プロセスであって、水素が反応混合物から非常に効果的に分離され、先行技術に知られる直接アミノ化方法の上述の欠点を回避できるプロセスを提供することである。また、このプロセスは熱力学的平衡値をアミノ炭化水素側にシフトすることができる必要がある。特に、水素を直接反応ゾーンから分離できるようにする必要がある。用いる炭化水素は、反応で得られる副生成物と同様に効率的に使用される必要がある。このプロセスは、エネルギーバランスが非常に良好であり、また装置的に非常に安価である必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、本目的は、炭化水素をアミノ炭化水素に直接アミノ化するプロセスであって、反応ゾーンRZ中で、少なくとも一種の炭化水素と少なくとも一種のアミノ化剤を含む供給流Eを反応させてアミノ炭化水素と水素を含む反応混合物Rを形成し、少なくとも一層の選択的プロトン伝導性膜と該膜の各面に少なくとも一個の電極触媒をもつ気密膜−電極アセンブリにより、反応でできた水素の少なくとも一部を反応混合物Rから電気化学的に分離することからなり、膜の未透過物側のアノード触媒上で少なくとも一部の水素がプロトンが酸化されてプロトンとなり、このプロトンが膜を通過し、透過物側の該カソード触媒上で膜の透過物側に接触されられる酸素含有流Oに由来する酸素と反応して水を生じることを特徴とするプロセスにより達成される。
【0015】
水素が還元性金属酸化物で除かれる既知のプロセスと較べると、本発明の方法は、複雑で高コストである直接アミノ化プロセスの中断が避けられ、このプロセスが連続的に長時間運転可能であるといる長所をもっている。また、空気や酸素、CO、CO2、NOまたはN2Oなどのガス状酸化剤またはニトロベンゼンなどの化合物を用いる既知のプロセスとは異なり本発明の方法は、酸化剤の添加の結果生じる副生成物を除去する必要がない(これは、装置的に複雑で高コストである)。
【0016】
本発明の方法の利点は、生成する水素を反応混合物Rから電気化学的に分離できるとともに、同時の電力を発生できることである。
【0017】
先行技術から周知のように、水素を一旦分離して外部の燃料電池またはガスタービンなどの発電プロセスに水素として供給するのでなく、発電が分離の際に直ちに行われる。先行技術から既知のプロセスと較べて、視点にもよっては分離装置とも生じる水素からのエネルギー発生装置とも呼ばれる装置が使用され、エネルギーと材料のロスが抑えられている。
【0018】
したがって、本発明の方法により、用いる出発原料の経済的な利用と貴重なアミノ炭化水素と水素、電気エネルギーの柔軟な製造が可能となる。
【0019】
この電気化学的水素除去の駆動力は酸素の還元である。この除去は、通常使用する水素選択性膜の場合のようにこの膜の両面上の分圧の差に依存するのでないため、水素除去が極めて低い圧力と差圧で実施可能であり、外部から加える圧力差を完全に除くことができ、特に透過物側と未透過物側に同じ圧力をかけることができる。これにより膜に加わる機械的ストレスを大幅に減少でき、特に長期間安定度が改善し、膜材料の選択の幅が広まる。またこれにより、従来の膜の場合より低圧で水素除去できる可能性がでてくる。
【0020】
この水素の電気化学的除去は、従来の水素選択性膜による除去よりかなり効果的である。したがって、同じ分離能力のための所要膜面積を減少でき、同じ膜面積ではより多量の水素が分離可能となる。したがって、全体として本発明の方法に必要な装置面積が減少する。
【0021】
より効果的な水素除去ができるため、従来のプロセスト較べて反応混合物中に水素残留量が大幅に減少する。先行技術に記載のプロセスと較べると、これにより熱力学的平衡がアミノ炭化水素側へ大きくシフトし、直接アミノ化の経済性が大幅に向上する。
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
炭化水素:
本発明によれば、供給流Eは少なくとも一種の炭化水素を含む。本発明の方法で使用可能な好適な炭化水素は、例えば、どのように置換基を有してもよく、またその鎖内またはその環内にヘテロ原子、二重結合または三重結合を有していてもよい、芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素類などの炭化水素である。本発明のアミノ化方法では、芳香族炭化水素と複素芳香族炭化水素を使用することが好ましい。
【0024】
好適な芳香族炭化水素は、例えば一個以上の環を含み芳香族C−H結合のみをもつ不飽和環状炭化水素である。好ましい芳香族炭化水素は、一個以上の五員環及び/又は六員環をもつ。
【0025】
本発明の目的においては、複素芳香族炭化水素は、その芳香族環の炭素原子の一個以上がNとOとSから選ばれるヘテロ原子で置き換えられている芳香族炭化水素である。
【0026】
これらの芳香族炭化水素または複素芳香族炭化水素は、置換されていても、置換されていなくてもよい。本発明の目的では、置換された芳香族または複素芳香族炭化水素は、芳香族環炭素原子及び/又はヘテロ原子に結合している水素原子の一個以上が他のR基で置換されている化合物である。好適な基は、例えば、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、シクロアルキル及び/又はシクロアルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、チオ、ホスフィノである。芳香族または複素芳香族炭化水素上の好ましい基は、C1-6−アルキルとC1-6−アルケニル、C1-6−アルキニル、C3-8−シクロアルキル、C3-8−シクロアルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミドから選ばれる。なお、符号C1-6−は、上記のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基の主鎖中の炭素原子数をいい、符号C3-8−は、シクロアルキルまたはシクロアルケニル環中の炭素原子数をいう。また、置換した芳香族または複素芳香族炭化水素上の置換基も、他の置換基をもつことができる。
【0027】
芳香族炭化水素または複素芳香族炭化水素の置換基の数は任意に選ぶことができる。しかしながらある好ましい実施様態においては、この芳香族炭化水素または複素芳香族炭化水素が、その芳香族環または複素芳香環の炭素原子またはヘテロ原子に直接結合している少なくとも一個の水素原子を有している。従って、六員環は、好ましくは5個以下の置換基をもち、五員環は、好ましくは4個以下の置換基をもつ。六員環の芳香族環または複素芳香環は、特に好ましくは4個以下の置換基を、極めて好ましくは3個以下の置換基をもつ。五員環の芳香族環または複素芳香環は、好ましくは3個以下の置換基を、特に好ましくは2個以下の置換基をもつ。
【0028】
ある特に好ましい本発明の方法の実施様態においては、次の一般式の芳香族炭化水素または複素芳香族炭化水素が用いられる。
【0029】
【化1】

【0030】
式中の記号は以下の意味を持つ。
Aは、独立してアリールまたはヘテロアリールであり、好ましくはフェニルとビフェニル、ベンジル、ジベンジル、ナフチル、アントラセン、ピリジル、キノリンから選ばれ;
nは、特にAが六員環のアリールまたはヘテロアリール環の時、0〜5、好ましくは0〜4であり;Aが五員環のアリールまたはヘテロアリール環の時、nは好ましくは0〜4であり;
環の大きさと関係なく、nは特に好ましくは0〜3、極めて好ましくは0〜2、特に0〜1であり;Aの他の炭素原子またはヘテロ原子でいずれの置換基Bをもたないものは、水素原子をもつ、即ち置換基をもたない;
基Bは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、置換ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、置換ヘテロアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボニル、アミノ、アミド、チオ、ホスフィノからなる群から選択される。基Bは、独立して、C1-6−アルキルとC1-6−アルケニル、C1-6−アルキニル、C3-8−シクロアルキル、C3-8−シクロアルケニル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミドから選ばれることが好ましい。
【0031】
nが2以上の場合、この式は、それぞれ独立して、置換基Bが上述の基で同一であっても異なっていてもよいことを意味する。
【0032】
本願特許の目的では、「アルキル」は、技分かれしていてもよい非環式飽和炭化水素基である。1〜20個の炭素原子、特に好ましくは1〜6個の炭素原子、特に1〜4個の炭素原子をもつアルキル基の使用が好ましい。好適なアルキル基の例としては、メチルやエチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチルがあげられる。
【0033】
本願特許の目的では、「アルキニル」は、少なくとも一個の炭素−炭素二重結合をもつ技分かれしていてもよい非環式炭化水素基をいう。これらのアルケニル基は、好ましくは2〜20個の炭素原子を有し、特に好ましくは2〜6個の炭素原子、特に2または3個の炭素原子を有する。好適なアルケニル基は、例えばビニルや2−プロペニルである。
【0034】
本願特許の目的では、「アルケニル」は、少なくとも一個の炭素−炭素三重結合をもつ、技分かれしていてもよい非環式炭化水素基をいう。これらのアルキニル基は、好ましくは2〜20個の炭素原子を有し、特に好ましくは1〜6個の炭素原子、特に2または3個の炭素原子を有する。適当なアルキニル基の例は、エチニルや2−プロピニルである。
【0035】
置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル基で、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一個以上が他の基で置き換えられているものである。このような他の基の例としては、ハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニルおよびこれらの組み合わせがあげられる。好適な置換アルキル基の例は、ベンジルとトリフルオロメチルである。
【0036】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、「ヘテロアルキニル」は、アルキル、アルケニル、アルキニル基で、その炭素鎖の炭素原子の1個以上がNとOとSから選ばれるヘテロ原子で置換されたものである。ヘテロ原子と他の炭素原子の結合は、飽和であっても不飽和であってもよい。
【0037】
本願特許の目的では、「シクロアルキル」は、単一の環または複数の縮合環からなる飽和環状非芳香族炭化水素基である。これらのシクロアルキル基は、好ましくは3〜8個の炭素原子を有し、特に好ましくは3〜6個の炭素原子を有す。好適なシクロアルキル基は、例えばシクロプロピルやシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクタニル、ビシクロオクチルである。
【0038】
本願特許の目的では、「シクロアルケニル」は、単一の環または複数の縮合環からなる部分的に不飽和の環状非芳香族炭化水素基である。これらのシクロアルケニル基は、好ましくは3〜8個の炭素原子を有し、特に好ましくは5〜6個の炭素原子を有する。好適なシクロアルケニル基は、例えばシクロペンテニルやシクロヘキセニル、シクロオクテニルである。
【0039】
置換シクロアルキル基と置換シクロアルケニル基は、その炭素環の炭素原子の水素原子の一個以上が他の基で置き換えられたシクロアルキルとシクロアルケニル基である。このような他の基としては、例えば、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、脂肪族複素環基、置換脂肪族複素環基、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ボリル、ホスフィノ、アミノ、シリル、チオ、セレノおよびこれらの組み合わせがあげられる。置換シクロアルキル基とシクロアルケニル基の例としては、4−ジメチルアミノシクロヘキシルや4,5−ジブロモシクロペント−4−エニルがあげられる。
【0040】
本願特許の目的では、「アリール」は、単一の芳香族環をもつ、または縮合した、共有結合で連結した、あるいはメチレンまたはエチレン単位などの連結単位で結合した複数の芳香族環をもつ芳香族基である。このような連結単位は、ベンゾフェノン中のようなまたはカルボニル単位であっても、ジフェニルエーテルの酸素単位であっても、ジフェニルアミンの窒素単位であってもよい。これらのアリール基は、好ましくは6〜20個の炭素原子を有し、特に好ましくは6〜8個の炭素原子、極めて好ましくは6個の炭素原子を有する。芳香族環の例としては、フェニルやナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、ベンゾフェノンがあげられる。
【0041】
置換アリール基は、アリール基の炭素原子に結合している水素原子の一個以上が、アルキル、アルケニル、アルキニル、置換アルキル、置換アルケニル、置換アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、ヘテロシクロ、置換ヘテロシクロ、ハロゲン、ハロゲン−置換アルキル(例えば、CF3)、ヒドロキシ、アミノ、ホスフィノ、アルコキシまたはチオなどの他の基で置換されたアリール基である。また、アリール基の炭素原子に結合している水素原子の一個以上が、一個以上の芳香族環に縮合していてもよい、あるいは適当な基で相互に結合または連結していてもよい飽和及び/又は不飽和環状炭化水素などの一個以上の基で置換されていてもよい。好適な基は上述の通りである。
【0042】
本願特許の目的では、「ヘテロアリール」は、上述のアリール化合物で、その中の一個以上の炭素原子がN、OまたはSなどのヘテロ原子で置換されているものをいう。
【0043】
本願特許の目的では、「ヘテロシクロ」は、飽和、部分不飽和または不飽和の環状基で、その基の一個以上の炭素原子がN、OまたはSなどのヘテロ原子で置換されているものをいう。ヘテロシクロ基の例としては、ピベラジニルやモルホリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、ピロリジニル、オキサゾリニル、ピリジル、ピラジル、ピリダジル、ピリミジルがあげられる。
【0044】
置換ヘテロシクロ基は、ヘテロシクロ基で、環原子の一つに結合している一個以上の水素原子が、ハロゲンやアルキル、置換されたアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、ボリル、ホスフィノ、アミノ、シリル、チオ、セレノの一個以上の基で置換されているものである。
【0045】
本発明の目的では、アルコキシ基は、一般式−OZ1の基である。なお、Z1はアルキルと置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、シリルから選ばれる。適当なアルコキシ基は、例えば、メトキシやエトキシ、ベンジルオキシ、t−ブトキシである。
【0046】
本発明の目的では、「アリールオキシ」は、一般式−OZ2の基であり、式中、Z2は、アリールと置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリールおよびこれらの組み合わせから選ばれる。好適なアリールオキシ基とヘテロアリールオキシ基は、フェノキシや置換フェノキシ、2−ピリジンオキシ、8−キノリンオキシである。
【0047】
本発明の目的の、アミノ基は一般式−NZ34の基である。なお、Z3とZ4は、独立して、水素とアルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、シリルから選ばれる。
【0048】
本発明のアミノ化方法で好ましく用いられる芳香族および複素芳香族炭化水素は、ベンゼンとナフタレン、ジフェニルメタン、アントラセン、トルエン、キシレン、フェノール、アニリン、またピリジンとピラジン、ピリダジン、ピリミジン、キノリンである。
【0049】
従って、ある好ましい実施様態においては、ベンゼンとナフタレン、ジフェニルメタン、アントラセン、トルエン、キシレン、フェノール、アニリン、またピリジンとピラジン、ピリダジン、ピリミジン、キノリンからなる群からの選ばれる少なくとも一種の炭化水素が用いられる。
【0050】
上記の芳香族炭化水素または複素芳香族炭化水素の混合物を使用することも可能である。ベンゼンとナフタレン、アントラセン、トルエン、キシレン、フェノール、アニリンからなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族炭化水素を用いることが特に好ましく、ベンゼンとトルエン、ナフタレンからなる群からの少なくとも一種の芳香族炭化水素を用いることが極めて好ましい。
【0051】
本発明の方法では、ベンゼンの使用が極めて好ましい。
【0052】
本発明の方法では、脂肪族炭化水素としてメタンが極めて好ましい。
【0053】
アミノ化剤:
本発明によれば、供給流Eは少なくとも一種のアミノ化剤を含む。好適なアミノ化剤は、それにより直接アミノ化に用いる炭化水素に少なくとも一個のアミノ基を導入するものである。好ましいアミノ化剤の例としては、アンモニアや第一級及び二級アミン、反応条件下でアンモニアを脱離させる化合物があげられる。2種以上の上述のアミノ化剤の混合物を用いることもできる。
【0054】
極めて好ましいアミノ化剤はアンモニアである。
【0055】
アミノ炭化水素:
本発明の方法において、少なくとも一種の炭化水素と少なくとも一種のアミノ化剤を含む供給流Eが反応して、少なくとも一種のアミノ炭化水素と水素とを含む反応混合物Rが生じる。用いる炭化水素の相当し、用いる炭化水素に少なくとも一個多いアミノ基が結合した少なくとも一種のアミノ炭化水素が得られる。従って、本発明の目的では、アミノ炭化水素は、本方法で用いる炭化水素とアミノ化剤の反応生成物である。この反応では、少なくとも一個のアミノ基がアミノ化剤から炭化水素に転移する。ある好ましい実施様態においては、1〜6個のアミノ基が、ある特に好ましい実施様態においては1〜3個のアミノ基、極めて好ましくは1または2個のアミノ基、特に1個のアミノ基が炭化水素に転移する。転移するアミノ基の数は、用いるアミノ化剤と炭化水素のモル比と反応温度により制御できる。
【0056】
アミノ化剤の炭化水素に対する比率は、通常0.5〜9であり、好ましくは1〜5、特に好ましくは1.5〜3である。
【0057】
炭化水素としてベンゼンを、アミノ化剤としてアンモニアを用い、これらをモル比が1〜9の範囲で用いて本発明の方法を実施すると、アニリンがアミノ炭化水素として得られる。
【0058】
炭化水素としてトルエンを、アミノ化剤としてアンモニアを用い、これらをモル比が1〜9の範囲で用いて本発明の方法を実施すると、トルエンジアミンがアミノ炭化水素として得られる。
【0059】
炭化水素としてメタンをアミノ化剤としてアンモニアを用い、これらをモル比が1〜9の範囲で使用して本発明の方法を実施すると、ジメチルアミンまたはトリメチルアミンまたは上述のアミンの2つ以上の混合物がアミノ炭化水素として得られる。
【0060】
ある特定の実施様態においては、ベンゼンをアンモニアと反応させてアニリンを得る。他の好ましい実施様態においては、トルエンをアンモニアと反応させてトルエンジアミンを得る。
【0061】
触媒:
この直接アミノ化は、少なくとも一種の触媒の存在下で行われる。
【0062】
好適な触媒は、原則的にはすべての既知のアミノ化触媒である。炭化水素の直接アミノ化用で知られる触媒を、特にアンモニアによりベンゼンを直接アミノ化してアニリンとする触媒を使用することができる。このような触媒は、特許文献に、例えばWO2007/099028やWO2007/096297、WO2000/69804、WO2008/009668、WO2007/025882、US3,919,155、US3,929,889、US4,001,260、US4,031,106、WO99/10311に記載されている。本発明の方法において水素の除去が電気化学的に行われ、反応系での化学変換によるものでないため、水素と反応する成分を含まない触媒を使用することもできる。
【0063】
触媒として、例えば、通常の、ニッケル、鉄、コバルト、銅、貴金属またはこれらの金属の合金系の金属触媒を使用できる。好ましい貴金属(NM)は、RuとRh、Pd、Ag、Ir、Pt、Auである。特定の実施様態においては、貴金属RuとRhは単独で用いるのでなく、一種以上の他の遷移金属、例えばCoやCu、Fe、ニッケルとの合金の形で使用される。好適な触媒の例としては、担持NiCuNM、CoCuNM、NiCoCuNM、NiMoNM、NiCrNM、NiReNM、CoMoNM、CoCrNM、CoReNM、FeCuNM、FeCoCuNM、FeMoNM、FeReNW合金があげられる。上記式中、NMは貴金属で、好ましくはPt、Pd、AgまたはIrであり、特に好ましくはAg及び/又はIrである。
【0064】
より特に好ましいのは、NiCuNMであり、NMはPtとPd、Ag、Irから選ばれる。ある実施様態においては、未透過物側に用いられる電気化学触媒(電極)が、同時に炭化水素のアミノ炭化水素への変換の触媒(アミノ化触媒)となる。他の実施様態においては、アミノ化触媒をこの電気化学触媒に塗布することができる。この場合、反応で放出される水素は、アミノ化触媒の触媒表面からプロトン伝導性膜により直接輸送除去される。
【0065】
この触媒は、一般的な形で、例えば粉末で使用でき、あるいは固定床用に、押出品や球、ペレット、リングなどの形で使用できる。これらの触媒活性成分が、支持体材料上に存在していてもよい。可能な支持体材料としては、例えば、ZrO2やSiO2、Al23、MgO、TiO2、B2O3、Cad、ZnO、BaO、ThO2、CeO2、Y23、これらの混合酸化物(例えば、酸化マグネシウムアルミニウム)などの無機酸化物があげられ、好ましくはTiO2や、ZrO2、Al23、酸化マグネシウムアルミニウム、SiO2があげられる。特に好ましいのは、Al23とZrO2と酸化マグネシウムアルミニウムである。本発明の目的では、ZrO2は純粋ZrO2であっても、通常のHf含有ZrO2であってもよい。
【0066】
本発明の方法で好ましく用いられる触媒は再生可能であることが、例えば該触媒上に還元性雰囲気を通過させて、あるいは触媒床上又は中にまず酸化性雰囲気を次いで還元性雰囲気を通過させて再生可能であることが好ましい。還元性雰囲気としてH2雰囲気を用いることが好ましい。
【0067】
直接アミノ化の反応条件
直接アミノ化は、酸化的条件でも非酸化的条件下でも実施できる。この直接アミノ化は、触媒条件下でも非触媒条件下でも実施できる。
【0068】
ある好ましい実施様態においては、この直接アミノ化が、触媒の存在下で非酸化的条件で行われる。
【0069】
本発明の目的において、直接アミノ化に関して非酸化的とは、用いる出発原料(供給流E)中の酸素や酸化窒素などの酸化剤の濃度が5重量%未満であることを、好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満(いずれの場合も供給流Eの総重量に対して)であることを意味する。本発明の目的においては、供給流Eは、反応器に供給される、少なくとも一種の炭化水素と少なくとも一種のアミノ化剤を含む流体である。この供給流Eが酸素を含まないことが極めて好ましい。また、供給流E中の酸化剤の濃度が、炭化水素とアミノ化剤の供給源中の酸化剤の濃度以下であることが特に好ましい。
【0070】
本発明の直接アミノ化法の反応条件は、特にアミノ化される炭化水素と使用する触媒に依存する。
【0071】
この直接アミノ化は、一般的には20〜800℃の温度で、好ましくは50〜700℃、特に好ましくは70〜350℃の温度で実施される。
【0072】
直接アミノ化中の反応圧力は、好ましくは0.5〜40barであり、好ましくは1〜6bar、特に好ましくは1〜3bar、特に大気圧である。
【0073】
本発明のアミノ化方法のバッチ運電時の滞留時間は、一般的には15分〜8時間であり、好ましくは15分〜4時間、特に好ましくは15分〜1時間である。連続プロセスの場合、滞留時間は一般的には0.1秒〜20分間であり、好ましくは0.5秒〜10分間である。好ましい連続運転の場合、「滞留時間」は、供給流Eの触媒上での滞留時間を意味し、固定床触媒の場合は、触媒床中での滞留時間、流動床反応器の場合は、反応器の合成領域(反応器内部の触媒が存在する領域)での滞留時間を意味する。
【0074】
用いる炭化水素とアミノ化剤の相対量は、実施するアミノ化反応とその反応条件に依存する。一般に、少なくとも化学量論量の炭化水素と少なくとも化学量論量のアミノ化剤が用いられる。目的物側に平衡をシフトさせて変換率を上げるためには、一つの反応物を化学量論的に過剰な量で用いることが好ましい。アミノ化剤を、炭化水素より化学量論的に過剰な量で使用することが好ましい。アミノ化剤/炭化水素の比は0.5〜9であり、好ましく1〜5、特に好ましくは1.5〜3である。
【0075】
水素の除去
本発明の方法では、反応混合物R中に含まれる少なくとも一部の水素が電気化学的に分離され、酸素と反応して水となり、また電流を発生させる。本発明の目的では、反応混合物Rは、少なくとも一種の炭化水素と少なくとも一種のアミノ化剤との化学反応できた混合物である。したがって、この反応混合物は、通常相当する一種以上のアミノ炭化水素と水素とを反応生成物として含む。この反応混合物Rはさらに未反応の出発材料を含むこともある。水素は、気密膜−電極アセンブリにより分離され、分離された水素はプロトンの形で膜を通過輸送される。これらの電極とその間に設けられた膜は、膜−電極アセンブリ(MEA)とよばれる。反応混合物Rはこの膜の片面に沿って流される。こちら側を以下、未透過物側とよぶ。膜の反対側(以下、透過物側とよぶ)に沿って、酸素含有流Oが流れる。本発明によれば、このMEAが少なくとも一層の選択的プロトン伝導性膜をもつ。この膜は、各側に少なくとも一層の電極触媒をもち、本明細書の目的では、未透過物側の電極触媒をアノード触媒とよび、透過物側の電極触媒をカソード触媒とよぶ。未透過物側のアノード触媒上で、水素が酸化されてプロトンとなり、これらのプロトンが膜を通過し、透過物側のカソード触媒上で酸素と反応して水を生じる。この駆動力は酸素の還元である。この全体反応で、エネルギーが熱の形で放出され、また負荷と結合して電流という形で放出される。
【0076】
ある好ましい実施様態においては、この水素が直接反応混合物Rから分離される。反応混合物Rが生成される直接反応ゾーンRZから水素が直接除かれることがより好ましい。
【0077】
本発明の目的においては、この反応ゾーンRZは、少なくとも一種の炭化水素と少なくとも一種のアミノ化剤の化学反応で反応混合物Rが生じる領域である。
【0078】
本発明の方法での水素の除去は、20〜800℃の温度で、好ましくは50〜700℃、特に好ましくは70〜350℃の温度で実施可能である。ポリベンズイミダゾールとリン酸系のMEAを使用する場合、この分離を130〜200℃で行うことが好ましい。セラミック膜を、例えばポリリン酸アンモニウム系の膜を使用する場合、250〜350℃の温度を用いることができる。
【0079】
本発明の方法の工程b)での水素除去は、好ましくは圧力が0.5〜10barで、好ましくは1〜6bar、特に好ましくは1〜3bar、特に大気圧で行われる。本発明のある好ましい実施様態においては、膜の未透過物側と透過物側の間の差圧が1bar未満であり、好ましくは0.5bar未満である。特に好ましくは差圧がゼロである。
【0080】
本発明によれば、この酸素含有流Oは少なくとも15mol%、好ましくは少なくとも20mol%の酸素を含む。ある好ましい実施様態においては、空気または酸素富化空気が酸素含有流Oとして用いられる。通常、空気が精製されることなく用いられる。
【0081】
本発明によれば、直接アミノ化で生じた水素の少なくとも一部が分離除去される。少なくとも30%の分離が好ましく、特に好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも70%、極めて好ましくは少なくとも95%、特に少なくとも98%の分離が好ましい。
【0082】
ある好ましい実施様態においては、反応混合物Rからの水素分離が、気密MEAをもつ反応器中で、反応ゾーンRZが膜の未透過物側の上にあるように、あるいは未透過物側を形成するようになっている反応器中で行われる。ある実施様態においては、この分離が、例えば外壁が少なくとも部分的に気密MEAからできている反応器中で行われる。
【0083】
反応器:
本発明の方法では、直接アミノ化反応に適した少なくとも一個の気密なMEAをもつあらゆる種類の反応器を用いることができる。
【0084】
好適な反応器は、従って、チューブ反応器、固定床反応器、流動床反応器、移動床、循環流動床、ソルトバス反応器、板熱交換反応器、トレイ間で熱交換または支流の排出/流入のある/ない複数のトレイからなるトレイ反応器であり、できれば放射線流型または軸流型反応器であり、いずれの場合も、所望の反応条件(例えば、温度や圧力や滞留時間)に好適な反応器が使用される。これらの反応器は、いずれの場合も単一反応器として使用してもよいし、直列に配した複数の反応器として及び/又は2つ以上の平行反応器として使用してもよい。本発明の方法は、半連続反応または連続反応として実施できる。具体的な反応器の構造や反応方法は、実施するアミノ化方法やアミノ化される芳香族炭化水素の物質の状態、所要反応時間、使用する触媒の種類に応じて変更可能である。本発明の直接アミノ化方法は、少なくとも一個のMEAをもつように本発明により改造された固定床反応器または流動床反応器中で行うことが好ましい。
【0085】
電極触媒:
電極触媒の機能は、例えば、Journal of Power Sources 177 (2008)、478−484、K.A. Perry、G.A. Eisman、B.C. Benicewiczの「高温ポリベンズイミダゾール(PBI)膜を用いる電気化学的水素ポンピング」に記載されている。
【0086】
膜と未透過物側に存在する水素間の接触を良くするため、また透過物側から分離した水素の輸送を良くするために、これらの電極層には、通常ガス拡散層が与えられている。これらは、例えば不織布や、織布または紙などの微細な流路と層をもつ多孔質材料の系からなる格子状表面構造をもつ板である。ガス拡散層と電極層の全体を、一般的にはガス拡散電極(GDE)とよぶ。このガス拡散層は、未透過物側で分離した水素を膜とアノード触媒に近づけ、透過物側で生成した水素を電極から輸送して除く。
【0087】
本発明の実施様態によっては、このアノードは同時にアノード触媒として、またカソードは同時にカソード触媒としても機能する。しかしながら、アノードとアノード触媒及び/又はカソードとカソード触媒に異なる材料を使うことも可能である。
【0088】
本発明のある実施様態においては、このアノード触媒が、同時にアミノ化触媒として働く。この場合、このアノード触媒は、上述のアミノ化触媒の中から選ばれる少なくとも一種の材料から作られる。
【0089】
電極の製造に、当業界の熟練者には既知の通常の材料を、例えばPtやPd、Cu、Ni、Ru、Co、Cr、Fe、Mn、V、W、炭化タングステン、Mo、炭化モリブデン、Zr、Rh、Ag、Ir、Au、Re、Y、Nb、カーボンブラックやグラファイト、ナノチューブなどの電気伝導性炭素、上述の元素の合金や混合物を使用できる。
【0090】
アノードとカソードは、同じ材料でできていても異なる材料でできていてもよい。アノード触媒とカソード触媒は、同一材料または異なる材料のどちらかから選ばれる。アノード/カソードの組合せで、Pt/PtとPd/Pd、Pt/Pd、Pd/Pt、Pd/Cu、Pd/Ag、Ni/Pt、Ni/Ni、Fe/Feが特に好ましい。
【0091】
電極触媒材料として、分子状水素の原子状水素への解離や水素のプロトンへの酸化、プロトンの水素への還元を触媒できる当業界の熟練者には既知の通常の化合物や元素を使用することができる。好適な触媒材料の例としては、Pd、Pt、Cu、Ni、Ru、Fe、Co、Cr、Mn、V、W、炭化タングステン、Mo、炭化モリブデン、Zr、Rh、Ag、Ir、Au、Re、Y、Nbおよびこれらの合金や混合物があげられる。本発明では、PdとPtとNiが好ましい。電極触媒材料として上にあげた元素や化合物は、担持された状態で存在でき、炭素を支持体に使うことが好ましい。
【0092】
本発明のある好ましい実施様態においては、炭素を導電材料として含む電極が好ましく用いられる。なお、炭素と電極触媒は、不織布や織布、紙などの多孔性支持体に塗布することが好ましい。この炭素を触媒と混合してもよいし、炭素をまず塗布し次いで触媒を塗布してもよい。
【0093】
本発明の他の実施様態においては、電極として用いる電気伝導性材料と電極触媒とを直接膜に塗布できる。
【0094】
膜:
この膜は、混合ガス分離用の先行技術から既知の通常の膜配置をもつ板またはチューブ状のものであることが好ましく、例えばチューブバンドル膜またはプラグイン平膜が使用できる。
【0095】
本発明で用いるMEAは気密であり、即ちMEAの一面から他面に原子状または分子状でガスが通過する空隙を実質上持たず、また例えば吸収や膜中への溶解、拡散、脱着によりガスが非選択的にMEAを通過する手段をもっていない。この膜電極アセンブリ(MEA)の非透過性は、気密膜により、気密電極または気密な電極触媒により、またはこれらの組合せにより保証される。したがって、例えば、薄い金属箔を、例えばPd、Pd−AgまたはPd−Cu箔を気密電極として用いることができる。また、本発明で用いる膜は、選択的にプロトンを伝導させる。即ち、この膜は電子を伝導させない。
【0096】
本発明によれば、これらの膜は、選択的プロトン伝導性膜を形成可能なすべての当業界の熟練者には既知の材料から作ることができる。これらの材料としては、例えば、J. W. Phair and S. P. S. Badwal in Ionics (2006) 12、pages 103−115.記載されている材料があげられる。燃料電池技術分野で知られる選択的プロトン伝導性膜も本発明で使用可能である。
【0097】
例えば、以下のセラミック膜を、即ち、H3Sb3214・10H2OやH2Ti49・12H2O、HSbP28・10H2Oなどのヘテロポリ酸;K2ZrSi39やK2ZrSi39、α−Zr(HPO42・nH2O、γ−Zr(PO4)−(H2PO4)・2H2O、α−およびγ−Zrスルホフェニルホスホネートまたはスルホアリールホスホネートなどのシート構造をもつ酸性ジルコニウムケイ酸塩やリン酸塩、ホスホン酸塩;アンチモン酸(Sb25・2H2O)やV25・nH2O、ZrO2・nH2O、SnO2・nH2O、Ce(HPO42・nH2Oなどの非塗布酸化水和物を使うことができる。オキソ酸やその塩、例えば、硫酸、セレン酸、燐酸、ヒ酸、硝酸などの塩も使用可能である。リン酸または複合ヘテロポリ酸、例えばポリリン酸ガラス、ポリリン酸アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム、NH4PO3/(NH42SiP413やNH4PO3/TiP27などのポリリン酸組成物系のオキソアニオン系が特に有用である。ブラウンミラー石、ホタル石、アパタイト構造のリン酸塩、ピロクロロ鉱物、ペロブスカイトなどの酸化物材料を使用することもできる。一般的には、ゼオライト、アルミノケイ酸塩、xAl23(1−x)SiO2、SnP27、Sn1-xInx27(x=0.0−0.2)など、すべてのプロトン伝導材料を使用できる。
【0098】
ペロブスカイトは基本式として、AB1-xx3-yをもつ。式中、Mはドーパントとして働く三価の希土類元素であり、yはペロブスカイト酸化物格子中で酸素欠乏である。Aは、例えばCaとSrとBaから選ばれる。Bは、特にCeとZrとTiとから選ばれる。AとBとMのそれぞれの群から、相互に異なる元素を選ぶこともできる。
【0099】
また、カルコゲニドガラスやPbO−SiO2、BaO−SiO2、CaO−SiO2などのような構造的に変性されたガラスを使用できる。
【0100】
他の好適なプロトン伝導性セラミックスや酸化物が、例えば、Solid State Ionics 125、(1999)、271−278や; Journal of Power Sources 180、(2008)、15−22; Ionics 12、(2006)、103−115; Journal of Power Sources 179 (2008) 92−95; Journal of Power Sources 176 (2008) 122−127Electrochemistry Communications 10 (2008) 1005−1007に記載されている。
【0101】
プロトン伝導性セラミックスや酸化物の例としては、SrCeO3、BaCeO3、Yb:SrCeO3、Nd:BaCeO3、Gd:BaCeO3、Sm:BaCeO3、BaCaNdO9、Y:BaCeO3、Y:BaZrCeO3、Pr−ドープ処理Y:BaCeO3、Gd:BaCeO3、BaCe0.90.12.95(BYC)、SrCe0.95Yb0.053-α、BaCe0.9Nd0.103-α、CaZr0.96In0.043-α(αは、ペロブスカイト型酸化物の1単位当りの酸素空格子点の数);Sr−ドープ処理La339、Sr−ドープ処理LaPO4、BaCe0.90.13-α(BCY)、BaZr0.90.13-α(BZY)、Ba3Ca1.18Nb1.828.73(BCN18)、(La0.95Ca0.05)Zr27-α、La2Ce27、Eu2Zr27、H2S/(B23またはGa23)/GeS2、SiS2、As23またはCsI;BaCe0.8Gd0.23-α(BCGO);BaCe0.850.153-α(BCY15)やBaCe0.8Sm0.23-αなどのGd−ドープ処理BaCeO3;xAl23(1−x)SiO2、SnP27、Sn1-xInx27(x=0.0−0.2)があげられる。
【0102】
気密な選択的プロトン伝導性膜の製造に適当な他の種類の材料はポリマー膜である。好適なポリマーは、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリベンズイミダゾール(S−PBI)、スルホン化フルオロ炭化水素ポリマー(ナフィオン(R))である。また、完全フッ素化ポリスルホン酸やスチレン系ポリマー、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリイミド、ポリフォスファゼンも使用できる。ポリベンズイミダゾールとリン酸からのポリベンズイミダゾールを、例えばBASF社からの商品名セルテック−P(R)で販売されているものを使用することもできる。
【0103】
本発明によれば、上述のセラミック膜が、選択的プロトン伝導性膜用の材料として好ましく用いられる。
【0104】
ポリマー膜を使用する場合、その膜は、通常膜の少なくとも一面が、約0.5〜30体積%の水の存在下で加湿される。
【0105】
生成物流の後処理
少なくとも一個のMEAで反応混合物Rから水素が除かれると、生成物流Pが得られる。これは、少なくとも一種のアミノ炭化水素と、場合によっては未反応の炭化水素やアミノ化剤などの出発原料、また場合によっては分離されなかった水素を含む。ある好ましい実施様態においては、この生成物流Pが、500ppm未満の水素を含み、好ましくは200ppm未満、特に好ましくは100ppm未満の水素を含む。
【0106】
必要なら、生成物流Pからより多くの水素を分離することもできる。このためには、この生成物流Pを、続く工程でもう一度一個以上のMEAに接触させる。しかし、ある好ましい実施様態においては、続く生成物流Pからの水素分離が必要でなくなるほど完全に反応混合物から水素が分離される。
【0107】
あるプロセスの変例(変例I)では、アミノ炭化水素とアミノ化剤が生成物流Pから分離される。これらが分離される順序は任意である。しかしながら、先ずアミノ化剤を分離し、次いでアミノ炭化水素を分離することが好ましい。このようにして得られる処理流S1は、未反応の炭化水素を含む。ある好ましい実施様態においては、これが直接アミノ化でもう一度使用される。この目的のためには、流れS1からの炭化水素を、供給流Eと混合するか、反応ゾーンに直接供給する。アミノ炭化水素及び/又はアミノ化剤は、一般的には当業界の熟練者のよく用いる既知の方法で、例えば縮合、蒸留または抽出で分離される。圧力と温度範囲の選択は、分離する化合物の物理的性質に依存し、当業界の熟練者には公知である。
【0108】
従って、0〜5barの範囲の圧力で、好ましくは0.5〜2bar、特に好ましくは0.8〜1.5barの範囲の圧力で、特に大気圧で、生成物流Pを、50℃から250℃まで、好ましくは70℃〜200℃、特に好ましくは80℃〜150℃に冷却できる。その結果、アミノ炭化水素が凝縮し、未反応の炭化水素とアミノ化剤と残留水素がガス状で存在し、従来法で、例えば気液分離器で分離できる。
【0109】
このようにして得られる液体成分は、アミノ炭化水素と未反応の炭化水素を含む。アミノ炭化水素と炭化水素の分離は、同様に当業界の熟練者には既知の方法で、例えば蒸留、精留または酸抽出で行われる。再還流処理流S1に加えられる炭化水素とアミノ化剤の量は、炭化水素と直接アミノ化に必要なアミノ化剤のモル比が維持されるように選ばれる。
【0110】
アンモニアによるベンゼンからアニリンと水素への直接アミノ化の場合、生成物流Pは、実質的にアニリンと未反応のベンゼンとアンモニア、また場合によっては副生成物と残留水素を含む。変例1では、生成物流Pをまず凝縮によりアンモニアと場合によっては残留水素合を含む気相と、アニリンとベンゼンを含む液相に分離する。この液相を、次いで、蒸留、精留または酸抽出でアニリンとベンゼンに分離する。ベンゼン(流れS1)は、直接アミノ化で再使用する。このようにして得られたアニリンを、必要なら他の後処理工程にかけてもよい。
【0111】
他のプロセスの変例(変例II)では、この生成物流Pを直接アミノ化で再使用する。この目的のために、生成物流Pを供給流Eと混合するか、別々に直接反応ゾーンRZに供給する。ある好ましい実施様態においては、生成物流Pを、生成物流P中のアミノ炭化水素の濃度が経済的な処理が可能なレベルに達するまで、反応ゾーンRZ中に循環供給する。このためには、生成物流Pを、反応ゾーンRZに、好ましくは1〜20回、好ましくは1〜10回、特に好ましくは1〜5回、極めて好ましくは1〜3回再循環させることが好ましい。この運転様式では、再循環される生成物流Pに加えられる炭化水素とアミノ化剤の量は、炭化水素と直接アミノ化に必要なアミノ化剤のモル比が維持されるように選ばれる。
【0112】
アミノ炭化水素の処理と分離は、変例Iで説明した方法で行われる。
【0113】
他のプロセスの変例(変例III)では、このアミノ炭化水素が生成物流Pから分離される。このプロセス変例でこのようにして得られる処理流S2は、未反応の炭化水素とアミノ化剤を含む。この処理流S2は、直接アミノ化で再使用できる。このために、この処理生成物流を供給流E中に混合するか、反応ゾーンRZに直接供給する。このアミノ炭化水素は、当業界の熟練者には既知の方法で、例えば凝縮、蒸留または酸抽出で分離される。変例IIIでは、このアミノ炭化水素を生成物流Pから酸抽出で分離することが好ましい。再循環する生成物流Pに加えられる炭化水素とアミノ化剤の量は、炭化水素と直接アミノ化に必要なアミノ化剤のモル比が維持されるように選ばれる。
【0114】
本発明を以下の実施例を基に説明するが、これらが本発明を制限することはない。
【0115】
実施例1
Pt−GDE/ELATをアノード触媒として用い、反応ゾーンから直セルH2を除きながら300〜350℃で行うベンゼンの直接アミノ化
ベンゼンとアンモニア(供給流E)を、温度が300〜350℃の電気化学セルに供給する。このセルは十分な活性面積をもつ気密なMEAを含んでいる。MEAのプロトン伝導性膜としてポリリン酸アンモニウムを用いる。このMEA電極として、BASFフューエルセル社のELATガス拡散電極(1mg/cm2の白金)をアノードとカソードの両方に用いる。また、細かく分散したNiCu合金(約3〜5mg/cm2)を含む炭素織布からなるアミノ化触媒を電気化学セルの未透過物側に入れる。この触媒層を、ELATガス拡散電極に直接貼り付ける。
【0116】
1.細かく分散したNiCu合金(3−5mg/cm2)を含む炭素織布からなるアミノ化触媒
2.ELATガス拡散電極、
3.プロトン伝導性膜(ポリリン酸アンモニウム)、
4.ELATガス拡散電極
【0117】
この反応混合物Rは、ベンゼンとアニリン、水素、窒素、アンモニアを含み、電気化学セルのアノード側に沿って流される。電気化学セルのカソードの上に酸素(または空気)を供給する。水素が未透過物側のアノード触媒で酸化されてプロトンとなり、これが膜を通過して、透過物側のカソード触媒上で酸素と反応して水を生じる。この駆動力は酸素の還元である。応全体としてエネルギーが熱の形で放出され、また負荷と結合して電流という形で放出される。
【0118】
アノード側での反応器排出物として、ベンゼンとアニリン、水素、窒素、アンモニアの混合物が得られる。電気膜により反応混合物R中の水素の大部分が直接反応ゾーンから除かれ、このためベンゼンからアニリンへの平衡率が増加する。
【0119】
実施例2
Pd箔をアノード触媒として用いて、反応ゾーンから直接H2を除きながら300〜350℃で行うベンゼンの直接アミノ化
ベンゼンとアンモニア(供給流E)を、温度が300〜350℃の電気化学セルに供給する。このセルは十分な活性面積をもつ気密なMEAを含んでいる。MEAのプロトン伝導性膜としてポリリン酸アンモニウムを用いる。パラジウム箔(製造業者:グッドフェロー、厚み:10μm)をアノード電極として用い、Pt負荷量が1mg/cm2のELATガス拡散電極(製造業者:BASFフューエルセルGmbH)をカソードとして用いる。Pd箔の利点は、これが気密であり、セラミック膜をアンモニアから保護することである。また、細かく分散したNiCu合金を含む炭素織布(約3〜5mg/cm2)からなるアミノ化触媒を電気化学セルの未透過物に入れる。
この触媒層を直接Pd箔に貼り付ける。
【0120】
従って、このMEAは、未透過物側から以下の順の層をもつ。
1.細かく分散したNiCu合金を含む炭素織布(約3−5mg/cm2)からなるアミノ化触媒、
2.パラジウム箔(製造業者:グッドフェロー、厚み:10μm)、
3.プロトン伝導性膜(ポリリン酸アンモニウム)、
4.Pt負荷量が1mg/cm2のELATガス拡散電極。
【0121】
この反応混合物Rは、ベンゼンとアニリン、水素、窒素、アンモニアを含み、アノード側の電気化学セル上に供給される。この電気化学セルのカソード側に沿って酸素(または空気)を流す。水素は、未透過物側のアノード触媒で酸化されてプロトンとなり、これが膜を通過し、透過物側のカソード触媒上で酸素と反応して水を生じる。この駆動力は酸素の還元である。反応全体として、エネルギーが熱の形で放出され、また負荷と結合して電流という形で放出される。
【0122】
アノード側で反応器排出物として、ベンゼンとアニリン、水素、窒素、アンモニアの混合物が得られる。電気膜により反応混合物R中の水素の大部分が直接反応ゾーンから除かれ、このためベンゼンからアニリンへの平衡率が増加する。
【0123】
実施例3
80l/hの窒素と0.5l/hの水素(水素濃度:6200ppm)を、活性面積が45cm2である気密MEAを含む電気化学セルに供給する。BASFフューエルセル社のセルテックP(R)(ポリイミダゾール/リン酸)をこのMEAの膜として使用する。このMEAの電極として、BASFフューエルセル社のガス拡散電極ELTA(1mg/cm2の白金)をアノードとカソードの両方に用いる。この電気化学セルを190℃で、圧力が1barで運転した。+250mVの電位(UA)をこのMEAにかけた。電気化学セルの排出流中には40ppmの水素と窒素(残り)が存在していた。これは、99.4%の水素除去率に相当する。
【0124】
実施例4
表1で、実施例3中での水素除去の効率を先行技術による比較例と比較した。
【0125】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素をアミノ炭化水素に直接アミノ化するプロセスであって、
反応ゾーンRZ中で、少なくとも一種の炭化水素と少なくとも一種のアミノ化剤を含む供給流Eを反応させてアミノ炭化水素と水素を含む反応混合物Rを形成し、
少なくとも一層の選択的プロトン伝導性膜と該膜の各面に少なくとも一個の電極触媒をもつ気密膜−電極アセンブリにより、反応でできた水素の少なくとも一部を反応混合物Rから電気化学的に分離することからなり、
膜の未透過物側のアノード触媒上で少なくとも一部の水素がプロトンが酸化されてプロトンとなり、このプロトンが膜を通過し、カソード触媒上で膜の透過物側に接触されられる酸素含有流Oに由来する酸素と反応して水を生じることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
水素が、反応ゾーンRZから、及び反応混合物Rから、直接的に分離される請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
反応混合物Rに含まれる水素のうち少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも70%、極めて好ましくは少なくとも95%の、特に少なくとも98%水素が反応混合物Rから分離される請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
上記水素除去が20〜800℃の温度で、好ましくは50〜700℃、特に70〜350℃の温度で行われる請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
上記酸素含有流が少なくとも15モル%の酸素を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
上記膜−電極アセンブリの電極がガス拡散電極である請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
上記膜−電極アセンブリの電極が金属箔である請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
セラミック膜とポリマー膜からなる群から選ばれる膜が、選択的プロトン伝導性膜として用いられる請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
未透過物側のアノード触媒が同時に、炭化水素のアミノ炭化水素への直接アミノ化のおける炭化水素の反応のアミノ化触媒である請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
少なくとも一部の水素の除去により生成物流Pが得られ、これからアミノ炭化水素とアミノ化剤を分離して処理流S1が得られ、これが上記直接アミノ化で再使用される請求項1〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
少なくとも一部の水素の除去により生成物流Pが得られ、これからアミノ炭化水素を分離して処理流S2が得られ、これが上記直接アミノ化で再使用される請求項1〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
少なくとも一部の水素の除去により生成物流Pが得られ、これが上記直接アミノ化で再使用される請求項1〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
トルエンが炭化水素として用いられ、アンモニアがアミノ化剤として用いられ、トルエンジアミンがアミノ炭化水素として形成される請求項1〜12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
ベンゼンが炭化水素として用いられ、アンモニアがアミノ化剤として用いられ、アニリンがアミノ炭化水素として形成される請求項1〜13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
メタンが炭化水素として用いられ、アンモニアがアミノ化剤として用いられ、メチルアミンとジメチルアミンとトリメチルアミンから選ばれる少なくとも一種のアミンがアミノ炭化水素として形成される請求項1〜14のいずれか一項に記載のプロセス。

【公表番号】特表2012−532984(P2012−532984A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518977(P2012−518977)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059710
【国際公開番号】WO2011/003933
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】