説明

電気化学的酸素発生システム

【課題】酸素を含む空気のような、より複雑なガスから酸素を分離し、分離された酸素を即座に使用するために又は貯留して後に使用するために、上昇された圧力で送出するような装置を提供する。
【解決手段】より複雑なガスから酸素を分離するために固体の電気化学的装置(22)を用いて、所望の酸素を生成し、該酸素を2000psigまで及びこれを越えるような上昇された圧力で送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素を含む空気のような、より複雑なガスから酸素を分離し、該分離された酸素を即時使用のため又は貯留して後の使用のために、上昇された圧力で送出するような装置に関する。更に詳細には、本発明は、より複雑なガスから酸素を分離して所望の酸素を生成し、該酸素を2000psigまで及びそれを越えるような上昇された圧力で送出するような固体の電気化学的装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素分子をイオン化し、該酸素イオンを固体電解質を介して移送し、酸素分子を反対側の電解質表面上で再形成することにより、酸素を空気のような一層複雑なガスから除去することができることは既知であり、実証されている。電位が、上記電解質の表面に塗布された適切な触媒電極被覆に印加されるが、該触媒電極被覆は酸素分子に対して多孔性であり、上記電解質との界面において酸素分子を酸素イオンに分離するよう作用する。これら酸素イオンは上記電解質を介して反対側表面に移送されるが、該反対側表面も触媒電極で被覆されると共に、上記酸素イオンから余分な電子を除去するような反対の電位で電気的に荷電されており、酸素分子が再形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、現在の酸素発生システムは、1200psiより高い高圧酸素を送出することはできない。このように、現状では、高圧酸素を供給するシステム及び方法への要求がある。また、現状では、例えば生物学的因子及び/又は他の毒性物質により汚染された汚染空気を使用することができるような酸素発生システムへの他の要求も存在する。
【0004】
従って、本発明の一つの目的は、高圧酸素を供給することが可能な電気化学的酸素発生システムを提供することにある。
【0005】
また、本発明の他の目的は、2000psiまでの圧力で酸素を供給することが可能な電気化学的酸素発生システムを提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の目的は、酸素生成の間に酸素発生モジュールの温度を調節することが可能な熱交換システムを提供することにある。
【0007】
また、本発明の更に他の目的は、窯室温度を制御する制御システムを提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、上記酸素発生モジュールを支持すると共に、該モジュールに電力を供給するための固有の取付及び電気相互接続構造を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、汚染された空気を使用することができると共に、該汚染された空気を濾過し呼吸可能な高純度酸素ガスを供給することが可能な酸素発生システムを提供することにある。
【0010】
また、本発明の更に他の目的は、生物学的因子及び/又は他の毒性物質により汚染された空気を用いることができ、且つ、呼吸可能な高純度酸素ガスを発生することが可能な酸素発生システムを提供することにある。
【0011】
また、本発明の更に他の目的は、セラミック管をセラミックモジュールに対して、各々がクラックなしで熱的に膨張し及び接触することが可能なように封止する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記及び他の目的は、新鮮空気入力口と減損空気出力口とを有する窯室と、前記窯室内に配置されると共に酸素出力口を有する少なくとも1つのセラミック酸素発生モジュールと、前記窯室内に装着されたヒータと、前記新鮮空気入力口と前記窯室との間に配置された熱交換器と、前記少なくとも1つのセラミック酸素発生モジュールに電力を供給すると共に前記ヒータを制御するコントローラとを有するような電気化学的酸素発生システムにより達成される。
【0013】
提案された本発明は、限定されるものではないが、多くの医療、半導体及び工業用途のために高純度の酸素を供給するのに適すると共に、一般市民及び軍事環境における化学及び生物学的因子を濾過するのに適している。
【0014】
本発明の更に他の目的によれば、化学的及び/又は生物学的汚染を含む空気源を使用することが可能な電気化学的酸素発生システムにおいて、前記空気源からの空気入力口と減損空気出力口とを有する窯室と、前記窯室内に配置されると共に酸素出力口を有する少なくとも1つのセラミック酸素発生モジュールと、前記窯室内に装着されたヒータと、前記空気入力口と前記窯室との間に配置された熱交換器と、前記少なくとも1つのセラミック酸素発生モジュールに電力を供給すると共に前記ヒータを制御するコントローラとを有し、前記酸素出力口に供給される酸素ガスが前記化学的及び/又は生物学的汚染を含まないような電気化学的酸素発生システムが提供される。
【0015】
本発明の更に他の目的及び利点は、当業者であれば下記の詳細な説明から容易に明らかとなるであろうが、下記詳細な説明においては、本発明の好ましい実施例が本発明の実施を意図する最良の形態の解説としてのみ説明されるであろう。理解されるように、本発明は他の異なる実施例も可能であり、また、本発明の幾つかの細部は種々の自明の点で本発明から全て逸脱することなく修正が可能である。従って、これらの図示及び説明は、解説的な性質のものであって、限定的なものではないと見なされたい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明による電気化学的酸素発生システムによれば、高圧酸素を供給することが可能であり、特に2000psiまでの圧力で酸素を供給することが可能である。また、本発明による酸素発生システムによれば、汚染された空気を使用することができると共に、該汚染された空気を濾過し呼吸可能な高圧酸素ガスを供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、モジュール式セラミック酸素発生器の形態の電気化学的酸素発生器を使用する完全な酸素発生システム10の概要図を示す。
【図2】図2は、窯、絶縁体、モジュール、ヒータ、平らな向流式熱交換器、空気流ダンパ及びファンを示す上記セラミック酸素発生システムの断面を図示する概要図である。
【図3】図3は、第2の熱交換器の実施例を図示する図2と同様の他の概念図である。
【図4】図4の(A)及び(B)は、凹状の窪みを用いた空気的境界部を示す。
【図5】図5の(A)は、取付と電力供給とを組み合わせる構造を図2の5A−5A線に沿って図示し、同図の(B)は同図(A)の5B−5B線に沿う部分断面図である。
【図6】図6は、“Z”クリップを用いた取付構造を図示する。
【図7】図7は、電気的絶縁を得るために支持棒が区画化されているような他の“Z”クリップ構造を図示する。
【図8】図8は、一体化された空気分配マニフォールド及び取付クリップアセンブリを示し、同図(A)はその側面図、同図(B)は同図(A)の8B−8B線に沿う断面図、同図(C)は上記一体化空気分配マニフォールドの平面図、同図(D)は上記一体化空気分配マニフォールドの端面図、同図(E)は同図(C)の8D−8D線に沿う断面図、同図(F)は上記一体化空気分配マニフォールドの底面図である。
【図9】図9は、図8の空気分配マニフォールドの使用態様を示す斜視図である。
【図10】図10は、本発明に使用される取付クリップの斜視図である。
【図11】図11は、本発明による電気化学的酸素発生システムに関する酸素出力の温度依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を、本発明を限定としてではなく例示として示す添付図面の各図を参照して説明するが、これら図を通して同一の符号は同様の構成要素を示している。
【0019】
1999年11月16日に発行された米国特許第5,985,113号、1999年2月16日に発行された米国特許第5,871,624号及び1999年10月15日に出願され係属中の米国特許出願第09/418,831号(全て本出願人に譲渡されている)は、全て全体として本明細書に組み込まれるものとし、これら文献は、酸素を発生するのみならず、該酸素を2000psigを越える圧力で送出するために使用することが可能な電気化学的酸素発生装置をどの様に製造することができるかを教示している。本明細書で使用される“左”及び“右”等の用語は相対的意味と見なされ、且つ、本発明は如何なる向きでも使用可能であると理解されたい。
【0020】
図1は、モジュール式セラミック酸素発生器の形態の電気化学的酸素発生器を用いた完全な酸素発生システム10の概要図である。この概要図は、窯ヒータ24に電力を供給して酸素発生モジュールアセンブリ22の動作範囲内に温度を上昇させる電源及びコントローラ20を示している。酸素発生モジュールアセンブリ22は、米国特許第5,871,624号及び米国特許出願第09/010,828号に開示されたようなもの又はそれより多い酸素発生モジュールを含むことができる。
【0021】
窯室26内の温度範囲は、酸素発生モジュールアセンブリ22を構成するために使用される材料に依存して、約500℃ないし800℃とすることができる。酸素発生モジュール22は、窯室26内に配置される。窯室26が、該窯室26内に取り付けられた少なくとも熱電対28により検出されて、最低の好ましい動作温度に到達すると、コントローラ20は電力をファンモータ30に供給開始して、酸素を帯びた空気を向流式熱交換器32を介して、少なくとも1つのモジュール22を含むモジュールアセンブリ21へと窯室26内に供給する。コントローラ20は、モジュール22にも電力を供給し、米国特許第5,871,624号及び米国特許出願第09/010,828号に教示されているように、酸素が電気化学的に発生される。発生されるべき酸素の量に依存して、電力の量も変化され得る。電力がモジュール22に供給され、酸素が発生されるにつれて、モジュール22内の電気抵抗が付加的な熱を発生する。この付加的な熱を補償するために、コントローラ20は窯ヒータ24への電力を減少させ、窯室26内の所望の公称動作温度を維持する。発生される上記酸素は製品貯め34に供給されるが、該製品貯めは一時的酸素貯留容器として作用する。上記酸素は、製品貯め34から、低圧調節器36、最終フィルタ38、逆止弁40、流量計42、そして最後に例えば患者等による即時の使用のためにユーザ可調整弁44に供給される。
【0022】
酸素は、着脱可能な可搬型酸素貯留シリンダ52の接続を可能にする高圧接続部50にも供給することができる。可搬型シリンダ52は、自動的に充填され、後に使用することができる。コントローラ20は適切な電力をモジュール22に供給して、高圧スイッチ54が約1800psigを越える圧力を検出するまで、上昇された圧力で酸素を発生させる。1800psigを越えると、コントローラ20は、高圧スイッチ54における圧力が1800psigより低く低下するまで、モジュール22に対する電力を減少させる。コントローラ20は、低圧スイッチ58も電気的に監視する。スイッチ54は、製品貯め34及び高圧接続部50に供給される圧力の、約1800psigの公称圧力への調整を可能にする。高圧逃がし弁56は、コントローラ20の故障の際に上記公称圧力を2000psig未満に制限し、且つ、過度の温度に関係する圧力増加を解放するために、約2000psigを越える過度の圧力を逃がす。最大公称動作圧力は、約1800psigであると理解されたい。コントローラ20は、上記高圧スイッチ54も監視する。動作圧力が所与の期間の後に最小動作圧力より低い場合は、コントローラ20は警告灯及び可聴警報(図示略)を駆動する。
【0023】
図2は、上記セラミック酸素発生システムの断面図を図示し、窯26、絶縁体200、酸素発生モジュールアセンブリ22、ヒータ24、平らな向流式熱交換器32、空気流ダンパ202及びファン30を示している。上記向流式熱交換器は、非常に有効、単純、安価な設計手法のものである。図2に示すように、如何なる数のモジュールも使用することができるが、4つの酸素発生モジュール22’、22”、22’”及び22””が上記酸素発生アセンブリ21を形成している。酸素発生モジュール22’、22”、22’”及び22””は、管23’、23”及び23”’によりマニフォールド結合されている。出口管25は、壁210を貫通して、高圧酸素を前記製品貯め34及び高圧接続部50へ供給する。
【0024】
冷たい新鮮空気は該空気が上記内窯へ入る前に加熱され、熱い空気は窯26から出る前に冷却され、これによりエネルギを保存する。図2に示す平らな向流式構造において、ファン30は、酸素を帯びる冷たい空気を、窯絶縁体200からなる内壁220、222の外側表面と熱交換器壁の内側表面250、252との間のチャンネル280、282に導入する。この冷たい空気は該空気が当該熱交換壁に沿って内側に向かって通過するにつれて加熱される。何故なら、熱い酸素減損空気が、内窯26から上記熱交換器壁の他方の側で外側に向かって流出するからである。上記の流入する空気は、窯絶縁体200の壁220、222の外側表面により、及び上記内窯内への途中での180度回転の後に後続する、上記窯絶縁体200の壁220、222の内側表面によっても一部加熱される。チャンネル280、282は、各々、ファン30から、左から右へ、次いで反転し、右から左へと流す。
【0025】
全ての電気化学的酸素発生システムには電気抵抗が本来備わっている。何故なら、これらシステムは電流の流れを用いて酸素を発生するからである。上記電気化学的酸素発生モジュール22は、熱と共に酸素を発生する。過度の窯絶縁体200及び非常に効率の良い熱交換器は、窯温度を暴走させる結果となり得る。温度制御の1つの方法は、初期起動期間の後、ヒータ駆動の幾らかの量が常に公称動作温度を維持するために使用されるのを保証することである。他の方法は、ファン30の速度を調整して、追加の空気を窯26を介して巡回させることにより余分な熱を除去することである。コントローラ20は、1以上の戦略的に配置された熱電対28(図2には図示せず)を用いることにより内窯26内の温度を監視して、窯温度が定常であることを保証する。コントローラ20は、この情報を用いてヒータ24の電圧又はファン30の速度の何れかを調整することにより、内窯26の温度を制御する。
【0026】
図2に示すように、図2に図示の実施例においては6個の空気ダンパ202が使用されている。3つのダンパが壁260、262に各々取り付けられ、ダンパ202はモジュール22の間に互いに対向して配置されている。図示の空気ダンパ202は、前記内窯への全熱交換器流路を完遂する前に、酸素を帯びる空気の幾らかがモジュール室、即ち内窯26に入るのを可能にする。全ての酸素を帯びる空気が上記全熱交換器流路を横断するように強制されたとすると、上記窯内の一連のモジュール22にわたって高い温度勾配が生じかねない。上記空気は、各モジュール22を通過するにつれて、累進的に加熱される。幾らかの空気を後段のモジュール22”’、22””近傍で入力させることは、モジュール22’ないし22””にわたる一層一様な温度をもたらし、モジュール22”’、22””を可能性のある加熱から防止する。これらのダンパ202は、調整可能であって、当該システム10の組み立ての間、及び該システム10の製造及び組立工程の完了後の初期運転試験工程の間に手動で調整することができる。これらダンパ202は、前記内窯絶縁体及び支持構造を介して内窯26の外側まで延在する適切な円柱状棒材(図示略)に取り付けられたダンパ羽根板204を含んでいる。上記ダンパ棒材の外部端は回転することができ、組立工程の間に好ましい向きで固定することができる。他の例として、上記ダンパは、熱電対28により測定される内窯26の温度に基づいて、コントローラ20により自動的に調整することもできる。使用することが可能な幾つかの型式の電気機械式ダンパアクチュエータが利用可能である。
【0027】
図3は、他の型式の熱交換器の実施例を図示している。これは、図2を参照して説明した流れ制御ダンパを備える平らな熱交換器と比肩し得る他の手法である。筒状熱交換器手法は、複数の円筒管300、302を使用し、これら円筒管は内側及び外側絶縁体の間で当該窯に入り、該窯の遠端まで横断し、内窯26に入り、上記内側絶縁体の内側で当該窯の反対側端部まで戻る。酸素を含む冷たい空気は、ファン30により管300、302に強制流入され、内窯26に該窯の同じ端部で供給される。熱い酸素減損空気は、上記管300、302の外側の周囲を反対方向に流れて、該酸素減損空気を冷却すると共に上記の冷たい酸素含有空気を暖める。上記管の幾つかは上記内窯内の上記戻り経路に沿う戦略的点(典型的には、モジュール22’、22”;22”、22”’;及び22”’、22””の間)に孔320を有するか、これら管の幾つかが内窯26内の上記戻り経路に沿う戦略的点で終端する。これは、幾らかの空気が管300、302の全長を横断する前に上記室に入ることを可能にし、これにより、空気流制御ダンパを備える前記の平らな熱交換器に関して説明したのと同様に、一層一様な温度勾配が可能になる。
【0028】
図3に示すように、冷たい酸素含有空気がファン30の近傍で管300、302に流入する箇所に、ダンパ340、342が配置されている。上記管のうち、孔を有さないか又は内窯26内への全通過路を横断する前にファン側端で終端しないような幾つかは、ダンパを有していない。孔を有するか又は上記内窯内への全通過路を横断する前にファン側端で終端する残りの管は、ダンパを有している。これらダンパは、上記管を所定位置に固定する管板のファン側上における適切な管の解放端に配置される。これらダンパは、上記内窯内の各領域の温度を調整する必要に応じて、上記管の解放端にわたって配置されて、それら解放端を閉鎖することができる。これらダンパ340、342は、手動で調整することができるか、又は前述したようにコントローラ20により自動的に調整することができる。
【0029】
上記セラミック発生器の温度又は酸素生成率を制御する他の方法は、上記発生器に供給される給気量を減少させる、又は該給気内の酸素の量を減少させることである。先に説明したように、酸素生成率と上記セラミック発生器を経る電流の流れとの間には等価性が存在する。当該電流の流れは、上記発生器に印加される電圧からネルンスト・アインシュタイン電圧を減じたものに比例する。該ネルンスト・アインシュタイン電圧は、酸素の分圧の当該セラミック発生器の入力端と出力端とにおける差に比例する。従って、入力酸素の分圧が減少するか、又は出力酸素の分圧が増加するか、又はこれら両方の場合に、上記電流の流れ、従って酸素の流れは減少する。実際には、上記入力酸素の分圧は、上述したダンパの使用及びファン30の速度の低減等の他の手段により減少させることができる。上記酸素の流れ及びセラミック発生器を経る電流の流れが減少されるにつれて、当該発生器における電力消費が減少し、これにより当該モジュール内での自己発熱が減少して、発生器温度が低下する結果となる。
【0030】
上述した全ての実施例において、個々のモジュール22の酸素供給管23’、23”、23”’及び25は、当該炉の加熱される部分の外側へ延びるか、又は内部で結合されて結果としての管25が該炉の外側に延びる必要がある。個々の管を当該炉、即ち内窯26の外側に延ばす1つの方法は、モジュール22’の突き合わせ孔に封止されるセラミック管25を使用することである。セラミック管の使用は、異なる熱膨張係数により生じる管対モジュールの境界上の応力を最小化する。しかしながら、この方法は、上記管、モジュール及び封止が全て、破壊無しでは如何なる充分な変位にも耐えることができないような脆弱な材料からなるという点で、問題を示す。この手法を用いては、上記管への曲げモーメントの印加を避けることは困難である。好ましい方法は、突き合わせ凹状面404に球状機構402を圧入することにより、より弾性的封止を形成することである。上記管25の外側表面上に上記凸型球状を形成し、上記モジュールの壁に上記凹状面を形成するか、又はこれらの逆とすることができる。また、上記凹状の窪みは、形状を球状及び円錐状にすることができる。この方法は、管25が例えばバネ又は重みの作用により凹状面404に連続的に圧入されるならば、かなりの量の整合ずれに順応するであろうような封止を可能にする。図4は、このような方法を図示すると共に、依然として良好な封止を維持しながら順応されている大幅は整合ずれを示している。
【0031】
上記セラミックモジュールを、使用可能な酸素発生システムに組み立てることに関する他の見地は、如何にしてモジュール22が炉26内に取り付けられるか、及び如何にして電力がこれらモジュール22に供給されるかである。本発明においては、個々のモジュール22に電力を供給する手段と、これらモジュール22を上記炉内に取り付ける手段とが組み合わされる。
【0032】
図5の(A)は、取付及び電力供給を組み合わせる1つの方法を図示している。図示のように、上記モジュール上に取り付けられたL字状棒材502が、モジュール22’、22”、22”’、22””を移動から保持するための物理的支持を行う。第2のL字状支持棒504が、モジュール22’、22”、22”’、22””の下に取り付けられている。インコネル及び/又はモネルのような、高動作温度において強度を維持する材料からクリップが形成される。クリップは、適切な寸法のU字状断面に形成され、図5の(B)に示すように上記モジュール22の端部の廻りを緊締する。典型的なプリント回路基板のカード端電気コネクタに類似した多指U字クリップが好ましい。斯様な多指U字クリップは、該クリップの長軸に沿う方向のモジュール22の厚さ変動に一層容易に順応する。クリップ510、512は、溶接又はろう付け等の技術を用いて、上記支持棒に永久的に取り付けられる。この場合、クリップ510、512及び支持体502、504の両者は、銀等の導電材料で被覆されて、電気及び界面抵抗を最小化する。電力は、正の電圧を一方の支持棒502、504の端部に印加すると共に、負の電圧を他方の支持棒504、502の端部に印加することにより、当該システムに供給される。図5の(A)に示したように、モジュール22’、22”、22”’、22””には、並列給電構成で、電力が供給される。即ち、同一の電圧が全てのモジュール22’、22”、22”’、22””に印加される。
【0033】
支持棒502、504の表面が、被覆、酸化層又は材料特性の結果、非導電性である場合は、直列給電構成も可能である。直列構成が望ましい場合は、前記クリップは上記支持棒に電気的には接続されない。このような構成が図6に図示されている。この構成において、Zクリップ610、612、614は、各々、動作温度において強度を維持する金属の単片から形成され、次いで銀のような導電性材料により被覆されている。各クリップ610、612、614は、支持棒502に取り付けられ、当該連鎖の各端部においてモジュール22に正及び負の電圧を供給するために使用することができる。他の実施例では、上記クリップは上記支持棒に電気的に接続することができる。この場合、支持棒502、504は、図7に示すように選択された印影の付けられた領域502’、502”、503”’及び504’、504”、504”’を除き導電性コーティングで被覆される。他の例として、上記支持棒は黒で示された指定領域に電気的絶縁を設けるために区分化することもできる。また、1つ置きのモジュールを180度回転させることにより、図7に示すZクリップを削除することもできる。
【0034】
図8の(A)ないし(F)を参照すると、一体化された空気分配マニフォールド及び取付クリップシステムが図示されている。このマニフォールドは、図2及び図3に示した概要図用に主に使用することができる。図8の(A)に示すように、マニフォールドアセンブリ700は、窯室26内に配置される幅広部分725を有するようなマニフォールド本体720を有している。外側部分730は、前記窯から外方に延在する。好ましくはインコネルから作成される複数のマニフォールド取付クリップ732が、上記部分725の上面734に固定されている。図示のように、6個のマニフォールドクリップ732が存在するが、如何なる数も使用することができると理解されたい。2本の管740、742(図8の(C)参照)が、壁750、752内に配置されている。壁750、752は、部分730の全長と、部分725の主要な長さにわたり延在している。通路を設けるために、管740、742及び壁750、752の間にギャップが形成されている。図8に示すように、壁750、764及び752、764の間には外側通路760、762が形成されている。図8の(C)に示すように、部分725には取付クリップ732の間にうがたれた複数の孔が存在する。これらの孔は、770である。図8の(E)に示すように、取付クリップ732は、窯室726内に内側に向かって延びている。
【0035】
2つのマニフォールドアセンブリが、セラミックモジュール22の対向する両端部で使用されることに注意されたい。マニフォールド700は水平又は垂直の何れにも取り付けることができる。セラミック酸素発生モジュール22は、各々、以下に説明するように1対のクリップ732内にクリップ留めされる。
【0036】
図8の(D)に示すように、戻り通路780が、壁750、752、管740、742及びマニフォールド本体720の上面734の間に形成されている。
【0037】
当該アセンブリ700における上記取付クリップ732が固定された幅広部分725は窯室26の内側にある一方、該アセンブリ700の幅狭部分730は窯室26の外側にある。該マニフォールドアセンブリは以下のように動作する。冷たい新鮮空気が筒状要素740、742を介して流れ、この冷たい新鮮空気は、反対端部782まで流れる際に熱を拾う(図8の(B)参照)。端部782において、上記新鮮空気は曲がり、外側分配通路760、762に流れ込む。次いで、該熱い新鮮空気は孔320を介して窯26に入る。熱い酸素が減損された空気は、孔770を介して窯室26から流出して、筒状要素740、742及び分配通路760、762の間に形成された容積部780に入る。上記の熱い減損空気は筒状要素740、742上を通過し、該高温減損空気が部分730から流れ出るまでに、これら筒状要素740、742内の前記新鮮空気に熱を付与する。有利には、該マニフォールドアセンブリは下記の機能及び特徴を有する。即ち、セラミックモジュール22の機械的支持体、セラミックモジュール22への電気的接続、窯室26への新鮮空気の分配及び注入、窯室26からの減損空気の抽出、新鮮空気と減損空気との間の熱交換、及び内部熱交換による取付クリップ732及びマニフォールドアセンブリ700の冷却である。
【0038】
取付クリップ732は、図10に図示され、平らな取付面1100と2列のバネ接触子1110、1120を持つシート状金属部品である。接触子1130の各々は、セラミックモジュール22の各々に対して確実な取付と電気的な接続を提供する。該取付クリップ用の材料としては、インコネル又は他の高温合金が好ましい。
【0039】
アセンブリ700は、セラミックモジュール22及び窯室26よりも、そこで発生する熱交換の結果として幾らか冷たいであろう。この冷たい温度は、一層長いアセンブリ寿命及び/又は余り厳しくない金属材料要件をもたらす。上記の冷たい温度は、前記取付クリップ732の材料の一層の剛性による確かな電気的接続の完全さ、該クリップ732に塗布された導電性被覆の一層少ない劣化、及び上記金属材料の一層高い電気導電度を助けることにもなる。
【0040】
ここで述べた酸素発生システムは、化学的及び/又は生物学的汚染を含む空気源から純粋な酸素の供給を提供するためにも使用することができる。酸素を発生するために使用される上記工程及び当該システムが動作する温度の性質により、化学的及び/又は生物学的汚染は、酸素発生モジュール22を経て製品貯め34へ通過するのを防止される。加えて、モジュール22の高動作温度のために、該動作温度は、殆どの又は全ての生物学的因子を充分に殺し、及び毒性化合物を充分に分解する。上述した構成は、これらに必ずしも制限されるものではないが、例えば化学プラント及び製薬操業におけるような汚染環境内で動作するプロセスに対して純粋酸素を供給することを含む多くの用途を有すると共に、化学的及び/又は生物学的戦争の結果として意図的に汚染された環境における人間の消費のための酸素を提供するためにも使用することができる。更に、ここで述べたような1以上の酸素発生器を、例えば研究室環境内での事故による生物学的放出の場合のような、意図的な又は意図せぬ化学的及び/又は生物学的汚染に曝された建物又は他の環境において空気の汚染除去の目的で使用することも可能である。
【0041】
固体セラミック電解質の特性は、分離処理が、圧力スウィング吸着(PSA)のような多孔質濾過方法を用いて可能であるよりも基本的に高いレベルの選択性で発生されることを可能にする。セラミックモジュール22を形成するのに使用される固体電解質は、密なセラミック部材(解放気孔性を含まないと定義される)として形成される。該固体電解質の結晶構造は、金属陽イオンに加えて、酸素イオンを含んでいる。化学式の例は、ZrO及びCeOである。塩基組成は、小さなパーセンテージ(典型的には、5%ないし20%)の上記金属イオンの、僅かに異なるサイズ及び電荷の他の金属陽イオンによる置換により変化される。該置換の結果は、上記セラミック材料の結晶構造内での酸素の空格子点の生成である。上昇された温度(既知のセラミック電解質の場合は、500℃より高い)においては、該セラミック材料中に存在する負に荷電された酸素イオンは、印加された電場に応答して移動することができる。上記酸素イオンは、酸素空格子点を含む結晶格子部位への拡散により、正に荷電された表面に向かって移動する。上記酸素イオンが上記の正に荷電された表面に到達すると、これらイオンは再結合して、酸素ガス(O)を形成する。
【0042】
当該電気化学的酸素発生システムにおける上記酸素イオン及びこれら酸素イオンが拡散する空格子点は、1オングストローム(10-10メートル)程度の半径を有している。この小さなサイズが、如何なる生物学的因子又は他の毒性化合物の侵入を防止する。加えて、上記結晶構造は、特別に、酸素イオンのサイズ及び電子軌道構造を組み込むのに適合している。酸素以外の如何なるイオンによる、これら部位の占有も当該結晶構造の再配列を必要とし、これは本装置の動作の間に出合うよりも一層大きな量のエネルギを必要とするであろう。上記セラミック電解質は500℃と1000℃との間で動作することができ、これは、殆どの又は全ての生物学的因子及び毒性化合物を分解するに充分な程高い。
【0043】
電気化学的酸素発生システムに関する酸素出力の温度依存性が図11に図示されている。当該酸素発生システムの酸素出力は、上記セラミックモジュールの間で測定される電流に直に比例する。モジュールの間に一定電圧が印加されると、発生される電流の量、Iは、オームの法則として知られている下記の関係により、当該セラミック電解質の電圧、Vと、電気抵抗、Rとに関係する。
I=V/R
上記電解質の電気抵抗は、温度の増加に伴い著しく減少し、電圧が一定に維持され且つ温度が上昇された場合は、酸素出力が上昇する結果となる。500℃と800℃との間の上記温度依存性が図11に示されている。
当業者であれば、本発明が前述した目的の全てを満たすことが容易に分かるであろう。上記明細書を読んだ後には、当業者は、ここに広く開示した本発明の種々の変更、均等物の置換及び他の特徴に影響を与えることができるであろう。従って、本発明に許諾される保護は請求の範囲及びその均等物に含まれる規定によってのみ制限されるべきものである。
【符号の説明】
【0044】
10…電気化学的酸素発生システム
20…コントローラ
22…セラミック酸素発生モジュール
24…ヒータ
25…セラミック管
26…窯室
28…熱電対
30…ファン
32…熱交換器
34…製品貯め

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新鮮空気入力口と、減損空気出力口とを有し、前記新鮮空気入力口に入る空気が前記減損空気出力口から出る空気と離れている窯室と、
前記窯室内に配置されると共に酸素出力口を有する少なくとも1つのセラミック酸素発生モジュールと、
前記窯室内に装着されたヒータと、
前記セラミック酸素発生モジュールの半径方向外側に配置され、前記新鮮空気入力口と前記セラミック酸素発生モジュールとの間に配置された熱交換器と、
前記少なくとも1つのセラミック酸素発生モジュールに電力を供給すると共に前記ヒータを制御するコントローラと、
を有していることを特徴とする電気化学的酸素発生システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学的酸素発生システムにおいて、前記窯室内に装着された熱電対を更に有し、該熱電対は前記窯室内の温度を示す信号を前記コントローラに供給することを特徴とする電気化学的酸素発生システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電気化学的酸素発生システムにおいて、前記新鮮空気入力口と前記窯室との間に配置されたファンを更に有していることを特徴とする電気化学的酸素発生システム。
【請求項4】
請求項1に記載の電気化学的酸素発生システムにおいて、一緒にマニフォールド結合された複数のセラミック酸素発生モジュールを有していることを特徴とする電気化学的酸素発生システム。
【請求項5】
請求項1に記載の電気化学的酸素発生システムにおいて、該電気化学的酸素発生システムは、前記酸素出力口において13790000Paまでの圧力で酸素を生成することができることを特徴とする電気化学的酸素発生システム。
【請求項6】
請求項1に記載の電気化学的酸素発生システムにおいて、前記コントローラは前記窯室の温度を調整するためにファン速度を制御することを特徴とする電気化学的酸素発生システム。
【請求項7】
請求項1に記載の電気化学的酸素発生システムにおいて、前記熱交換器は前記窯室に入る新鮮空気に対して180度の経路を提供し、前記減損空気は前記窯室内で加熱されて、前記熱交換器内の前記新鮮空気を予備加熱するために使用されることを特徴とする電気化学的酸素発生システム。
【請求項8】
請求項1に記載の電気化学的酸素発生システムにおいて、2つの取付金具と、少なくとも2つのセラミック酸素発生モジュールとを更に有していることを特徴とする電気化学的酸素発生システム。
【請求項9】
請求項1に記載の電気化学的酸素発生システムにおいて、前記熱交換器が向流式熱交換器であることを特徴とする電気化学的酸素発生システム。
【請求項10】
請求項8に記載の電気化学的酸素発生システムにおいて、前記2つの取付金具は前記少なくとも2つのセラミック酸素発生モジュールに対して直列及び並列構成の一方において電力を供給することを特徴とする電気化学的酸素発生システム。
【請求項11】
請求項1に記載の電気化学的酸素発生システムにおいて、前記熱交換器が、マニフォールドアセンブリと、各々が前記少なくとも1つのセラミック酸素発生モジュールを取り付けると共に該モジュールに対して電気的接続を行う複数の取付クリップとを含んでいることを特徴とする電気化学的酸素発生システム。
【請求項12】
請求項11に記載の電気化学的酸素発生システムにおいて、前記マニフォールドアセンブリはマニフォールド本体内に配置された複数の管を含み、前記複数の管は新鮮空気入力口と、該複数の管の外側に形成される少なくとも1つの分配チャンネルと、酸素減損空気を伝送する戻り通路とを設けることを特徴とする電気化学的酸素発生システム。
【請求項13】
化学的及び/又は生物学的汚染を含む空気源を使用することが可能な電気化学的酸素発生システムにおいて、
前記空気源からの空気入力口と、減損空気出力口とを有し、前記空気入力口に入る空気が前記減損空気出力口から出る空気と離れている窯室と、
前記窯室内に配置されると共に酸素出力口を有する少なくとも1つのセラミック酸素発生モジュールと、
前記窯室内に装着されたヒータと、
前記セラミック酸素発生モジュールの半径方向外側に配置され、前記空気入力口と前記セラミック酸素発生モジュールとの間に配置された熱交換器と、
前記少なくとも1つのセラミック酸素発生モジュールに電力を供給すると共に前記ヒータを制御するコントローラと、
を有し、前記酸素出力口に供給される酸素ガスが前記化学的及び/又は生物学的汚染を含んでいないことを特徴とする電気化学的酸素発生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−40094(P2013−40094A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−208893(P2012−208893)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【分割の表示】特願2000−161660(P2000−161660)の分割
【原出願日】平成12年5月31日(2000.5.31)
【出願人】(505340881)カールトン ライフ サポート システムズ インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】