説明

電気化学駆動式ポンプ

【課題】(a)安定性があって容易かつ正確に制御可能であり、(b)高い背圧に対抗して流れを維持することができ、(c)製造費用が安くかつ従来のLCポンプより耐久性のあるポンプが必要とされている。
【解決手段】
水発生器区画(12)と、前記発生器区画の片側の陽極区画(22)と、発生器区画を陽極区画から分離する陽イオン交換バリア(18)と、陽極区画と電通する第1の電極(30)と、発生器区画に隣接する陰極区画(24)と、発生器区画を陰極区画から分離する陰イオン交換バリア(20)と、陰極区画と電通する第2の電極(32)とを備える電気化学式持続ポンプ。試料濃縮器としてのポンプの使用法。ポンプのためのフィードバックループを含むフローコントローラ。中間ピストンを伴う、又は伴わないポンプ出力側のリザーバ。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
分析システムでは、液体サンプルを駆動するために様々な液体ポンプが使用される。例えば、液体クロマトグラフィ(LC:Liquid Chromatography)の場合、ポンプは、イオン交換樹脂を詰め込まれたクロマトグラフィカラム等の固定分離媒体相を介して、かつこの固定相からの溶離液を修飾及び/又は監視する接続デバイスを介して、溶離液を駆動するために使用される。このようなポンプは、好適には、容易かつ正確に制御可能な一定の流れを生成する。また、小さい粒子の充填ベッド又はビードの形式である分離媒体は、液体の流れに対して高い抵抗を生成する可能性がある。したがって、ポンプは、例えば1000psi以上である高い背圧に対向してポンピングする能力を有するべきである。ある典型的な液体クロマトグラフィポンプは、ピストン、シール、チェックバルブ等のような構成品を組み込んだ機械的なデュアルピストン型式である。例えば何万サイクルもの使用等、長期的使用という厳しい要件を満たしかつ維持するために、可動及び固定構成部材は高度に耐久性のあるものでなければならない。したがって、ポンプの設計と構成及び製造材料とは、LCシステムにおいて最も経費のかかる要素となる可能性がある。
【0002】
過去において、LCの流量は、典型的には約1−2ml/分であった。より新しい方法は、極小の内径(例えば、100μmから400μmまで)の分離カラムを使用し、分離プロセスを超低流量(例えば、<10μL/分)で動作させる。よって、このような低流量で動作することができる、(a)安定性があって容易かつ正確に制御可能であり、(b)高い背圧に対抗して流れを維持することができ、(c)製造費用が安くかつ従来のLCポンプより耐久性のあるポンプが必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
提供する電気化学式持続ポンプは、出口を有する水発生器区画と、発生器区画の片側に隣接して配置される陽極区画と、発生器区画を陽極区画から分離する、交換可能なイオンが主としてヒドロニウムイオンの形である陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、陽極区画と電通する第1の電極と、発生器チャンバに隣接して配置される陰極区画と、発生器区画を陰極区画から分離する、交換可能なイオンが主として水酸化物イオンの形である陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、陰極区画と電通する第2の電極と、を備える。
【0004】
提供する方法は、出口を有する水性液発生器区画と、水を含みかつ発生器区画に隣接して配置される陽極区画と、発生器区画を陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、陽極区画と電通する第1の電極と、水を含みかつ発生器チャンバに隣接する陰極区画と、発生器区画を陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、陰極区画と電通する第2の電極と、を備える電気化学ポンプを使用して水を発生させ、本方法は、第1及び第2の電極間で陽極及び陰極区画内の水を介して、かつ陽イオン及び陰イオン交換バリアを介して電流を通し、陰極区画内に水酸化物イオンを発生させかつ陽極区画内にヒドロニウムイオンを発生させることと、発生した水酸化物イオンを陰イオン交換バリアを介して発生器区画へ、かつ発生したヒドロニウムイオンを陽イオン交換バリアを介して発生器区画へ通し、電気化学的に水を発生させることと、発生した水を発生器区画からの水流に流すことと、を含む。
【0005】
提供する分析システム内の電気化学式連続濃縮器は、出口を有する水発生器区画と、発生器区画の片側に隣接して配置される陽極区画と、発生器区画を陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、陽極区画と電通する第1の電極と、発生器チャンバに隣接して配置される陰極区画と、発生器区画を陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、陰極区画と電通する第2の電極と、発生器区画の出口と検出器との間に配置される水発生器区画の出口から供給される試料以外の試料を供給するための試料注入器がない場合に、水発生器区画の出口と流体で連通する検出器と、を備える。
【0006】
提供する方法は、出口を有する水性液発生器区画と、検体陰イオン及び陽イオン含有水試料の第1の部分を含みかつ発生器区画に隣接して配置される陽極区画と、発生器区画を陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、陽極区画と電通する第1の電極と、検体陰イオン及び陽イオン含有水試料の第2の部分を含みかつ発生器チャンバに隣接する陰極区画と、発生器区画を陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、陰極区画と電通する第2の電極と、を備える濃縮器を使用して、水試料内の検体陰イオン及び陽イオンを濃縮しかつ検出し、本方法は、第1及び第2の電極間で陽極及び陰極区画内の第1及び第2の水試料部分を介して、かつ陽イオン及び陰イオン交換膜を介して電流を通し、陰極区画内に水酸化物イオンを発生させかつ陽極区画内にヒドロニウムイオンを発生させることと、発生した水酸化物イオン及び水試料内の検体陰イオンを陰イオン交換バリアを介して発生器区画へ、かつ発生したヒドロニウムイオン及び水試料内の検体陽イオンを陽イオン交換バリアを介して発生器区画へ通し、通された検体陽イオン及び検体陰イオンを含む水生成物試料を電気化学的に発生させることと、発生器区画と検出器との間で追加試料の注入がない場合に、発生した水生成物試料を発生器区画から検出器への水流に流して水生成物試料内の検体陽イオン及び検体陰イオンを検出することと、を含む。
【0007】
提供する電気化学式持続ポンプシステムは、出口を有する水発生器区画と、発生器区画の片側に隣接して配置される陽極区画と、発生器区画を陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、陽極区画と電通する第1の電極と、発生器チャンバに隣接して配置される陰極区画と、発生器区画を陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、陰極区画と電通する第2の電極と、水発生器区画と流体で連通する出口水路と、出口水路と流体で連通するフローコントローラと、を備える。
【0008】
提供する方法は、出口を有する水性液発生器区画と、水を含みかつ発生器区画に隣接して配置される陽極区画と、発生器区画を陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、陽極区画と電通する第1の電極と、水を含みかつ発生器チャンバに隣接する陰極区画と、発生器区画を陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、陰極区画と電通する第2の電極と、を備える電気化学ポンプを使用して水を発生させ、本方法は、第1及び第2の電極間で陽極及び陰極区画内の水を介して、かつ陽イオン及び陰イオン交換バリアを介して電流を通し、陰極区画内に水酸化物イオンを発生させかつ陽極区画内にヒドロニウムイオンを発生させることと、発生した水酸化物イオンを陰イオン交換バリアを介して発生器区画へ、かつ発生したヒドロニウムイオンを陽イオン交換バリアを介して発生器区画へ通し、電気化学的に水流を発生させることと、発生した水流を発生器出口から流すことと、発生した水の流量を発生器区画より下流側で決定することと、を含む。
【0009】
提供する電気化学式持続ポンプは、出口を有する水発生器区画と、発生器区画の片側に隣接して配置される陽極区画と、発生器区画を陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、陽極区画と電通する第1の電極と、発生器チャンバに隣接して配置される陰極区画と、発生器区画を陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、陰極区画と電通する第2の電極と、水発生器区画とその出口との間に配置される、発生器区画内で生成される水をピストンの反対側から分離することができかつ発生した水によってピストンに加わる圧力を伝達することができるピストンと、を備える。
【0010】
提供する方法は、ピストンを備える水性液発生器区画であって、液体ピストンの反対側の他の液体は発生器区画から到来する水性液発生区画と、水を含みかつ発生器区画に隣接して配置される陽極区画と、発生器区画を陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、陽極区画と電通する第1の電極と、水を含みかつ発生器チャンバに隣接する陰極区画と、発生器区画を陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すことができるが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、陰極区画と電通する第2の電極と、を備える電気化学ポンプを使用して水を発生させ、本方法は、第1及び第2の電極間で陽極及び陰極区画内の水を介して、かつ陽イオン及び陰イオン交換膜を介して電流を通し、陰極区画内に水酸化物イオンを発生させかつ陽極区画内にヒドロニウムイオンを発生させることと、発生した水酸化物イオンを陰イオン交換バリアを介して発生器区画へ、かつ発生したヒドロニウムイオンを陽イオン交換バリアを介して発生器区画へ通し、その内部に、ピストンの片側を加圧してピストンのもう一方の側に液体の流れを生じさせるための水を電気化学的に発生させることと、を含む。
【0011】
提供する電気化学式持続ポンプは、(a)出口を有する水発生器区画と、(b)発生器区画の片側に隣接して配置される陽極区画と、(c)発生器区画を陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、(d)陽極区画と電通する第1の電極と、(e)発生器チャンバに隣接して配置される陰極区画と、(f)発生器区画を陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、(g)陰極区画と電通する第2の電極と、(h)水発生器区画の出口及びその下流側と流体で連通する流体リザーバ容器と、を備える。
【0012】
提供する方法は、水性液発生器区画と、水を含みかつ発生器区画に隣接して配置される陽極区画と、発生器区画を陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、陽極区画と電通する第1の電極と、水を含みかつ発生器チャンバに隣接する陰極区画と、発生器区画を陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、陰極区画と電通する第2の電極と、発生器区画の出口から下流側の他の液体のリザーバと、を備える電気化学ポンプを使用して水を発生させ、本方法は、(a)第1及び第2の電極間で陽極及び陰極区画内の水を介して、かつ陽イオン及び陰イオン交換膜を介して電流を通し、陰極区画内に水酸化物イオンを発生させかつ陽極区画内にヒドロニウムイオンを発生させることと、(b)発生した水酸化物イオンを陰イオン交換バリアを介して発生器区画へ、かつ発生したヒドロニウムイオンを陽イオン交換バリアを介して発生器区画へ通し、その内部に水を電気化学的に発生させることと、発生した水を他の液体のリザーバへ流して、このリザーバ内の他の液体の一部を押し退けることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による装置の略図である。
【図2】本発明による装置の略図である。
【図3A】本発明による装置の略図である。
【図3B】本発明による装置の略図である。
【図4】本発明による装置の略図である。
【図5】本発明による上述の装置及び方法を使用した実験結果を示すグラフ表示である。
【図6】本発明による上述の装置及び方法を使用した実験結果を示すグラフ表示である。
【図7】本発明による上述の装置及び方法を使用した実験結果を示すグラフ表示である。
【図8】本発明による上述の装置及び方法を使用した実験結果を示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、電気化学ポンプ(「ECP」)とも称される電気化学駆動式ポンプに関し、具体的には、LC又は他の液体試料分析システム内の液体を駆動することに適する電気化学駆動式ポンプに関する。
【0015】
ある実施形態において、ECPは、(a)出口を有する水性液発生器区画と、(b)発生器区画の片側に隣接する陽極区画と、(c)発生器区画を陽極区画から分離する、交換可能なイオンが主としてヒドロニウムイオンの形である陽イオン交換膜と、(d)陽極区画と電通する第1の電極と、(e)発生器区画の反対側に隣接して配置される陰極区画と、(f)発生器区画を陰極区画から分離する、交換可能なイオンが主として水酸化物イオンの形である陰イオン交換膜と、(g)陰極区画と電通する第2の電極と、を備える。
【0016】
本発明のECPは、0.001μLから100μL/分等の、かつより具体的には約1μLから10μL/分等の低いポンプ流量を使用する分析システム(例えば、LCシステム)に特に効果的である。このようなシステムは、液体が通って流れるキャピラリ分離カラム(例えば、内径100μmから400μm)を使用する。あるLCシステムにおいて、このような固定相は、例えば米国公報2006−0057733に開示されているように、キャピラリ断面カラムに配置されるクロマトグラフィ分離媒体を含むことが可能である。適切には、クロマトグラフィ媒体のパッキンは、イオン交換樹脂又は流入有孔モノリシッククロマトグラフィ媒体の充填ベッドである。
【0017】
ECPの一実施形態の略図を図1に示す。ECPは、円筒又は長方形を含む任意の適切な断面の非導電壁を有するハウジング10を含む。ハウジング10内には水発生器区画12が存在し、これは出口水路16へ接続されるポート又は出口14を有する。区画12の片側はイオン交換膜18によって画定され、かつ反対側は、膜18とは反対の電荷の交換可能イオンを有する、離隔された、概して平行なイオン交換膜20によって画定される。膜18及び膜20は、正又は負である一方の電荷のイオンを通すがバルク液体の流れをブロックする、荷電された適切なバリア部品の一形式である。区画22及び24は膜18及び20の外側面に位置し、ECPの水源として使用されるべき水源リザーバ26及び28を含む働きをする。電極30及び電極32は各々膜18及び膜20と電通し、好適には各々区画22及び24に隣接して、又はこれらの内部に配置される。電極30及び32は、DC電源(不図示)への付着によって極性を与えられる。図示されているように、区画22内の電極30は陽極であり、区画24内の電極32は陰極である。この構成において、正電荷を持つ電極30に最も近いイオン交換膜18は、主としてヒドロニウムイオンの形の陽イオン交換膜である。同様に、電極32が陰極であるとき、膜20は主として水酸化物イオンの形の陰イオン交換膜である。
【0018】
図示されているように、水流はライン36で区画22へと流れ、適切な内部チュービング(不図示)により区画26を経てライン38内の出口へとルーティングされる。流れは逆方向であることも可能であり、もしくはリザーバ毎に独立した水源を使用することも可能である。さらに、所定のシステムにおいて、区画22及び24内の水のリザーバは、必要に応じて周期的に補充される実質的に非流動性のリザーバであってもよい。このようなシステムでは、水リザーバ内に形成される酸素及び水素気泡を消散させるために例えば熱交換器からの外部冷却が使用されてもよく、及び/又は形成されるこのような気泡を除去するためにベントが設けられてもよい。
【0019】
電極30及び32が、図示されているように膜18及び20から離隔されるものとすれば、デバイス内での電極と、膜と、の間のイオンの移動を促進し、これにより電気抵抗を減らすために、電極と、膜と、の間にイオン交換経路を生成する荷電されたブリッジ構造体を含むことが好適である。電極と膜との間の間隙をブリッジすることに適する構造体には、イオン交換スクリーン、イオン交換樹脂ベッド又は流入イオン交換モノリスが含まれる。これらのイオン交換構造体内には、リザーバ26及び28の水が膜18及び20と接触できるように十分な有孔性を与えることが好適である。本明細書では陽極部材とも称する図示された区画22内のブリッジ構造体は、主としてヒドロニウムイオンの形の陽イオン交換物質であり、一方で、陰極区画とも称する区画24内のブリッジ構造体は、主として水酸化物の形の陰イオン交換物質である。説明を単純にするために、これらのイオン交換ブリッジ構造体は図1に示されていない。
【0020】
ある代替実施形態において、これらの電極は隣接する膜と直に接触している可能性がある。この実施形態では、荷電されるブリッジ構造体はなくされてもよく、かつ電極は、リザーバ26及び28内の水が電極を介して流れて膜へ接触できるように十分に有孔性であることが好適である。
【0021】
任意選択であるが、水発生器区画12内には、電極と隣接する膜との間の荷電されるブリッジ構造体の場合と同様の理由で、イオンの移動を促進するためにイオン伝導性のブリッジ構造体を含むことが好適である。説明を単純にするために、この開示は区画12内の陽イオン交換物質を指す。発生器区画12内のブリッジ構造体は、区画22及び24内のそれらに類似する物理的構造の、各々主としてヒドロニウム又は水酸化物の形である陽イオン又は陰イオン交換物質の何れかであってもよい。代替的に、発生器区画12内のブリッジ構造体は、1つが陽イオン交換物質でもう1つが陰イオン交換物質である2層のイオン交換物質で形成されてもよい。この実施形態では、各ブリッジ物質層は同じ電荷の膜に隣接して存在することになる。したがって、陰イオン交換物質は陰イオン交換膜に隣接し、陽イオン交換物質は陽イオン交換膜に隣接する。さらに別の代替実施形態では、発生器区画12内のイオンブリッジ構造体として陰イオン及び陽イオン交換物質の混合体、例えば充填ベッドにおける酸化物及びヒドロニウムの形の陰イオン及び陽イオン交換ビードを使用することもできる。説明を単純にするために、発生器区画12内のブリッジ構造体は図1に示されていない。
【0022】
図1の実施形態における構成要素の物理的構造は、参照により本開示に含まれる米国特許第5,352,360号(第‘360号特許)の図1から図4までに示されているサンドイッチ膜サプレッサの構造に類似している。この膜サプレッサにおいて、外側の区画は、中心チャネルを介して流れる溶離液から膜を介して溶離イオンを除去する働きをする再生液区画である。これに対して、本発明のECPは、陽極及び陰極における電気化学反応によって中心チャネル内に水を発生させる。また、デバイスの構造は、公報WO 2004/024301 A1における図4の構造に類似している。そのデバイスは、中心チャネル内で電気化学的に酸又は塩基発生させるために、中央の発生器区画より外側のリザーバが酸、塩基又は塩で充填される電解溶離液発生器である。上記サプレッサ及び溶離液発生器デバイス並びに本発明のECPでは、陽極及び陰極において電気分解が実行される。
【0023】
(正に荷電された)陽極区画22では、陽極26付近で下記の反応が生じて膜18を通過するヒドロニウムイオンが発生する。
6HO → 4H + O + 4e ̄ (1)
【0024】
(負に荷電された)陰極区画24では、陰極32付近で下記の反応が生じて膜20を通過する水酸化物イオンが発生する。
4e ̄ + 4HO → 4OH ̄ + 2H (2)
【0025】
中央の水発生器区画12内では、下記の方程式に従って水が発生される。
OH ̄ + H → 2HO (3)
【0026】
図1のECPが両電極を通じた電流の印加によって極性を与えられると、陽極30で発生されたヒドロニウムイオンはイオン輸送ブリッジ構造体(もしあれば)を通過し、かつ陽イオン交換膜18を通過して水発生器区画12へ入る。同時に、陰極32で生成された同数の水酸化物イオンが、もしあればイオン輸送ブリッジ構造体を通過しかつ陰イオン交換膜20を通過して水発生器区画12へ入り、ここでヒドロニウムイオンと結合して方程式(3)に記されるように水が形成される。
【0027】
電気分解の周知の原理を基礎とすると、96,500クーロン(1ファラデー)に相当する積算電流は区画12内で1モル(18グラム)の水を生成する。本明細書で使用しているように、発生器区画12内へ移動される水はファラデーの水と称される。ヒドロニウムイオン及び水酸化物イオンは共に、随伴性の高い水和水を有する。水中の水素イオンを本明細書においてH(ヒドロニウムイオン)と呼ぶのはこのためである。付着性の高いこの水和水は、区画12へも移動される。さらに、膜を介して移動するイオンは、かなりの量の水を一緒に区画12へ「引き入れる」ものと考えられている。本明細書では、これを電気浸透輸送水と称する。区画12は比較的安定した大きさを有する(即ち、さほど拡張も収縮もしない)ものと想定すると、これらの3つの水源は単一の出口水路16を通る水流を生成する。このようにして、ECPは、LCシステム等、具体的にはキャピラリサイズであるものへ、ECPの陽極と陰極との間を通る電流により正確に制御される流量で給水することができる。
【0028】
区画12内で発生した水は、適切には、参照により本開示に含まれる第 ‘360号特許に記述されているようなイオンクロマトグラフィシステム等のLCシステムにおいて使用される。この点に関連して、リザーバ26及び28は、好適には高純度の水、即ち高度に脱イオン化された水を送達する。図1の実施形態において、汚染物質が試料イオンのクロマトグラフィ検出を著しく妨害しない限り、リザーバは、例えば約0.01ppm未満である微量のイオン汚染物質を含んでもよい。
【0029】
この好適なECP実施形態はほぼ純粋な水を発生させることから、陽イオン交換膜は交換可能イオンを主としてヒドロニウムイオンの形で含み、一方で陰イオン交換膜は交換可能イオンを主として水酸化物イオンの形で含む。本明細書で使用しているように、「主としてヒドロニウムイオンの形」という言い回しは、交換可能イオンの少なくとも51%、及び好適には少なくとも90%から99%、99.9%以上がヒドロニウムイオンの形であることを意味する。同様に、「主として水酸化物イオンの形」という言い回しは、陰イオン交換膜内の交換可能イオンは、少なくとも51%、及び好適には少なくとも90%から99%、99.9%以上が水酸化物イオンの形であることを意味する。
【0030】
先に述べたように、ECPは、LCシステム又は他の分析システムにおけるポンプとして使用されてもよい。第‘360号特許には、ある特定のLCシステム、即ち抑制イオンクロマトグラフィ(IC)システムが例示されている。ECPは、上記特許の図1に示されるポンプ15に取って代わることが可能である。このICシステムと同様に、本明細書における発生器区画12の出口は液体試料注入器の上流側にあり、かつ液体試料注入器と流体で連通している。さらに、第‘360号特許のICシステムと同様に、本システムは、試料注入器より下流側のクロマトグラフィカラム形式のクロマトグラフィセパレータと、溶離液を抑制するためのクロマトグラフィカラムより下流側のサプレッサと、サプレッサより下流側の試料検出器(例えば、導電検出器)とを含む。このシステムでは、検出器はその下流側の試料注入器、中間のクロマトグラフィカラム及び任意選択としてその下流側のサプレッサと流体で連通する。ある好適な実施形態において、ECPは、試料をクロマトグラフィカラムへ運ぶための水溶離液を調製するために試料注入器の上流側へ配置されるポンプに取って代わる。好適には、ECPは、試料注入器より上流では唯一の、即ち区画22及び24への給水に使用される任意のポンプを除いて唯一のポンプである。
【0031】
先に述べたように、典型的な水源は、脱イオン水であっても汚染物質を含む可能性があり、よって、ECPポンプが純水を発生しないことがある。この点に関連して、区画12から水路16内を流れる水は、約数百マイクロジーメンス又はそれ以上の伝導性を有する場合がある。また、膜は完全にはそのヒドロニウムイオン及び水酸化物イオンの形でないことがあり、よって汚染性の陽イオン及び陰イオンが区画12内の液体内へと化学的に駆動される場合があり、こうしてその導電性が上昇される。ECP生成物ストリームにおけるこのようなイオン汚染物質に起因するクロマトグラフィ検出における妨害を回避するために、ECP出口の下流側へ脱イオンカラム等の小型研磨脱イオン装置が配置されてもよい。膜及びリザーバが比較的純粋な形で調製されていれば、このような研磨脱イオン装置上の電荷は比較的低く、よって装置は交換まで長時間持続する。
【0032】
イオン汚染によるクロマトグラフィ妨害を回避する別の方法は、ECPを使用して、発生器区画より下流側のリザーバからの別の流体を押し退ける水を発生させるというものである。流体置換システムは、参照により本開示に含まれる米国特許第6,436,719号に開示されている。ある実施形態において、ピストンは、ECPの出口側に、発生器区画内で発生されるものとは異なる溶液のリザーバに隣接して配置される。置換される異なる溶液として適切なものとしては、脱イオン水、又は酸、塩基又は塩溶離液、又は有機溶剤、又は有機溶剤と水溶液との混合液が含まれる。置換された溶液は、分析システムへポンピングされることが可能である。「ピストン」という用語は、従来のピストン、可撓ブラダ、膜等、又はECP内で発生した液体から上述のような発生器区画の出口側のリザーバへ、例えば分析システムへの流れのために圧力を移動させることができる他の部材を含む。高品質の水が置換されかつポンピングされるべきであれば、リザーバは高純度の水で充填される。次に、ECP発生器区画の水出力はピストンに圧力を加え、リザーバ内の液体を、ECP内のピストンの反対側への液体流量を制御することによって制御される流量で押し出させる。ECPがリザーバの中身を全て放出する前に、リザーバは、純水で充填されたもう一方のリザーバへ切り替えるために再充填されてもよい。リザーバは任意の流体を含むことができることから、ECPは、水のポンピング以外のアプリケーションを有することが可能である。原則的には、これは、大気状態下又は加圧状態下で任意の流体を制御して流すための手段を提供することができる。
【0033】
同じく米国特許第6,436,719号に開示されている置換システムの他の実施形態では、発生器区画と他の液体のリザーバとの間にピストンが配置されない。したがって、発生した水は、置換されるべき液体と直に接触する。ある実施形態において、発生器区画内で発生した水は、リザーバ出口より高い高度にあるリザーバ入口を介して液体のリザーバへ流れ、よって発生された水ではなくリザーバ内の流体がリザーバから流れ出る。
【0034】
本発明のシステムは、好適には、水をキャピラリLCシステムへ、具体的にはキャピラリイオンクロマトグラフィシステムへポンピングすることができるような大きさにされる。この点に関連して、膜がシートである図1に示すタイプのデバイスの場合、適切な大きさは下記の通りである。即ち、リザーバ26及び28の区画22及び24は各々1マイクロリットルから2000マイクロリットルまで、好適には5μLから500μLまで、かつより好適には20μLから200μLまでを含む。同様に、水発生区画12の容積は、適切には0.1μLから1000μLまで、かつ好適には10μLから100μLまでである。膜18及び20は、第‘360号特許のサプレッサに比べて大きさが著しく縮小される点を除けば、第‘360号特許に示されているタイプ、並びに上記特許に示されているイオン交換スクリーンであってもよい。
【0035】
水路16は、適切には、例えばID10μmから500μmまでのキャピラリ寸法である。サンドイッチ膜サプレッサに比べると、水発生器区画12への唯一の水源は、イオン及び分子の流れが膜18及び20を通った後にECPにより発生した水であることは留意される。したがって、運転中に区画12へ流れ込む別の液体源は存在せず、液体が流れる唯一の開ポートは水路16への出口14である。区画12内には、区画の充填用又は内部のブリッジ構造体を適切な形に変換するため等の別のポートが含まれる可能性もある。
【0036】
前述の大きさのECPは、容積が約0.01μLから1000μLまで、好適には1μLから50μLまでである別のタイプのハウジング内にクロマトグラフィカラム又はクロマトグラフィ媒体を供給するために使用される可能性もある。
【0037】
所望される流量を与える電気分解量に対しては、電極間に十分な電流が印加されるべきである。ある典型的なキャピラリLC運転の場合、典型的な流量は少なくとも0.01μL/分から10μL/分まで、又はより高い流量の50μL/分である。電流を最小限に抑えるために、流量は5μL/分未満であることが好適である。流量が1μL/分であると想定すれば、電流は16ミリアンペアから89ミリアンペアまでの範囲内で足りると思われる。
【0038】
本発明によるECPの特有の一実施形態(「ポンプ1」)は、幾つかの相違点はあるが、図1から図4までに第‘360号特許の抑制ICシステム用のサプレッサとして示されているものに類似する構造体を使用する。ECPは、上記特許における図1のポンプ17に取って代わるものである。第‘360号特許の図3を参照すると、荷電スクリーン32を含むガスケット30内のフローチャネルは、本明細書の図1の発生区画12に対応し、荷電スクリーン41及び43を含むガスケット38及び40内のフローチャネルは、各々本明細書の図1の区画22及び24に対応し、イオン交換膜34及び36は各々膜18及び20に対応し、かつ電極42及び44は各々本明細書の図1の電極30及び32に対応する。実施形態ポンプ1において、(a)陽極区画22内の電極30と膜18との間のスクリーン形式のブリッジ構造体(本明細書の図1には示されていない)は陽イオン交換スクリーンであり、(b)膜18は陽イオン交換膜であり、(c)陽イオン交換スクリーン(図1には示されていない)は中央の発生区画12内に置かれ、(d)膜20は陰イオン交換膜(第‘360号特許における図1の陰極に隣接する陽イオン交換膜に取って代わる)であり、(e)陰極区画28内の電極32と膜20との間のスクリーン形式のブリッジ構造体(図1には示されていない)は陰イオン交換スクリーンである。このECPの大きさは、本明細書において記述されている。入口ポートはなく、運転中は唯一、区画12の単一の出口ポート16が開いている。
【0039】
図2は、本明細書では「ポンプ2」で示される、Dionex CorporationのAtlas(登録商標)サプレッサを修正して製造された本発明によるECPを示す。これは、円筒形の断面内に存在する。図1に類似するパーツには、同じ番号を付している。図示されている部材は、図に示されていない円筒ハウジング内に配置される。陽極チャンバ22は、陽イオン交換膜18に直に接触する陽極30を含む。陽極30の適切な形態は、例えば白金線である、しわ加工された導電金属である。発生チャンバ12内には、膜を通じた移動を容易にするイオン輸送特性を与えるために、H形式の陽イオン交換モノリス又はイオン交換樹脂ベッド40が配置される。外部の水はライン44内で陽極区画22へ供給され、かつライン46を介して循環されて双方のリザーバへ水が供給される。水は、ライン48を介して区画44から出る。水源の流れはECP内で逆転される、又は再循環される可能性もある。また、区画22及び/又は24内では、区画毎の別個の水流、又は非流動リザーバが使用される可能性もある。
【0040】
ポンプ2において、陽イオン交換モノリスのディスクは水発生区画内に配置されてもよく、米国特許第6,610,546号に開示されかつ参照により本開示に含まれるプロセスに従って同様に調製されることが可能である。陽イオン交換モノリスを調製するための基材は、約35μmの好適な有孔性を有するシート又はロッド形式の多孔性ポリエチレン(Porous Technologies社)であることが可能である。基材にとって好適な有孔性は、5μmから100μmまでの範囲で変化する。上記材料はディスク形式の小片にカットされることが可能であり、塩化メチレン溶媒中の40%から60%のスチレンw/w(好適な範囲は20%から100%までのグラフトレベル)の溶液に浸漬して置かれる。ある実施形態において、シート材は、グラフトの前には1.6mmの好適な厚さを有する。グラフト化は、窒素雰囲気下の80゜Fから90゜Fまでにおいてガンマ線を10,000ラド/時の線量で約48時間から120時間照射することにより達成することができる。次いで、この材料は、塩化メチレン溶媒又は適切な溶媒中の10%w/wのクロロスルホン酸内に約40゜Cで4時間浸漬して置かれることが可能である。次に、この材料は、1MのKOH中に55゜Cで30分間浸漬され、次いでD1水で濯がれかつ洗浄されることが可能である。
【0041】
ポンプ2の運転中、他のECPと同様に、生産水は発生区画12内で唯一開いているポート14を介してライン16へ流出する。しかしながら、区画12には、例えばモノリス又は充填ベッド40を所望されるイオン形式へイオン交換式に変換しかつ区画12内のボイド容量を濯いで迅速に押し退けるための、不図示の第2のポートを追加することができる。
【0042】
図示されているように、水は区画22及び24内のソースリザーバへポンピングされる。図示されていないポンプは、これらの区画へ水を供給する。ある適切なポンプは、適度の背圧(例えば、<50psi)に対抗して10%までの流量変動により水を数ミリリットル/分でポンピングすることができる。ポンプとしては、単純な蠕動ポンプを使用可能である。しかしながら、特定用途用には、Dionex GP40勾配ポンプ等のより高いパフォーマンスのポンプが使用されてもよい。
【0043】
運転中にECPへ電流を供給するためには、例えばKeithley220プログラマブル電流ソースである調整可能な電流源を使用することができる。図1及び図2では、この区画は省略されている。
【0044】
図3A及び図3Bを参照すると、図1のECPを使用する検査システムが示されている。類似するパーツは、同じ番号で示されている。リザーバ60からの水はポンプ62によってポンピングされ、ライン36内の流量制限器64を介して区画24へ流れ、かつ区画24から区画22へ至ってライン38から出る。ライン16内の生成流は試料注入器66を介して流れ、検出器68(例えば、導電検出器)に至る。図3Bは、幾分かの水を区画24へ供給するために検出器68からの再循環ライン72を含む点が図3Aとは異なる。所望されれば、ライン16又は再循環ライン72内に不図示の小型脱イオンデバイスが置かれてもよい。(LCの場合、注入器66と検出器68との間にクロマトグラフィカラム(不図示)が配置される。抑制ICの場合、クロマトグラフィカラムと検出器68との間にサプレッサ(不図示)が追加配置される。)
【0045】
ポンプ2がポンプ1を凌ぐ優位点は、より高い圧力ではポンプ2の方の運転能力が高いことにある。
【0046】
ECPの別の実施形態は、第‘360号特許の図8における電解サプレッサに類似する構造を有する略同心管で形成される。本明細書の図4に示すように、同心管ECPは、概して、ある長さの適切な不活性の導電金属ワイヤを、ある長さの適切な内側管状イオン交換膜52内へ内側の電極50として挿入することによって構築され、内側管状イオン交換膜52自体も幾分直径の大きいある長さの管状外側イオン交換膜54内へ挿入される。このアセンブリ全体は、適切な大きさの導電金属(例えば、ステンレス鋼)管56に囲まれる。外管56自体は電極として機能し、両端は、内側の電極と内側の膜との間のフローチャネル、2つの膜間のスペース(環)及び外側の膜とステンレス鋼ケースとの間のスペースへアクセスできるように接続されている。同心管間の1つ又は複数のフローチャネルには、前述のタイプの内側輸送ブリッジ構造体を挿入することができる。
【0047】
別の不図示の実施形態では、本発明の(例えば、図1、図2、図3A、図3B及び図4の実施形態における)ECPを水試料内の陰イオン及び/又は陽イオン不純物を検出するための濃縮器として使用することができる。本明細書に記述されているECPの実施形態はどれも、濃縮器として使用することができる。このシステムにおいて、陽極及び陰極区画内の水は、水試料の2つの部分のリザーバを含む。水試料内の陽イオン及び陰イオン不純物は、検出されるべき検体である。この場合、検出器は水発生器区画の出口と流体で連通している。検体を含む水試料は陽極及び陰極区画内に存在することから、水発生器区画の出口と検出器との間に試料注入器は配置されていない。
【0048】
濃縮器の動作において、水試料は陽極及び陰極区画内の水のリザーバへ分けられる。陰極区画における水試料内で電気分解により発生した水酸化物イオン、及びその区画における陰イオン検体は、イオン交換バリアを通過して発生器区画内の水へ入る。陽極区画における水試料内で電気分解により発生したヒドロニウムイオン、及びその区画における検体は、陽イオン交換バリアを通過し、先に述べたように水が発生される発生器区画内の水へ入る。発生した汚染性の陽イオン及び陰イオン検体を含む水試料は、検出器へと流れる。発生器区画と検出器との間では、試料は追加注入されない。ある実施形態において、陽イオン交換バリアは交換可能イオンを主としてヒドロニウムイオンの形で含み、陰イオン交換バリアは交換可能イオンを主として水酸化物の形で含む。
【0049】
以下、ECPを濃縮器として使用できる方法について説明する。特定の水流において、不純物電解質の濃度は「c単位/ml」であるものと想定する。この説明の目的に則せば、「c」の記述に使用する単位について言明する必要はない。ECPの電極区画へ印加される水流の流量は、「V」ml/分であるものとする。したがって、電極区画を通過する不純物の量は「Vc」単位/分である。
【0050】
電極区画に特定の水流が流されている間、ECPには電流が印加され、よって中間の区画からの流れが生成される。ECPからの流量は、「p」ml/分として表されるものとする。ECPの典型的な運転では、「V」は「p」より遙かに大きい。V/pは、1000[「V」が1ml/分、「p」が1マイクロリットル/分である可能性を所与とすれば妥当な数字]に等しいものと想定する。
【0051】
ECPへ供給される水内の検体イオンの濃度はかなり低いことから、膜を通って中央の区画へ移動する圧倒的多数のイオンはヒドロニウム及び水酸化物となる。但し、印加される電流も中央の区画へ不純物イオンを運ぶ。全ての検体イオンを捕捉して中央の区画へ移動させることができれば、理想的であると思われる。しかしながら、検体の10%しか捕捉されず、残りは逃げるものと想定すると、中央の区画へ移動される量は「Vc」の10%又は0.1Vc単位/分である。ECPからの流れを「p」、さらにp=V/1000であると想定すると、(物質収支から)0.1Vc(中央の区画に集まる量)と「pC」である逃げる量とが等しくなければならないことになる。但し、「C」は中央の区画から出て行く溶液中の検体濃度である。
したがって、0.1Vc=pC、
又は、0.1Vc=(V/1000)C、
故に、C=100cである。
【0052】
これらの想定を基礎とすれば、100倍濃度の検体が達成される。濃縮されたこの検体流は、導電率セルによる検出が可能となって検出能が拡大されるか、又はイオンクロマトグラフィシステムにおける注入器の試料ループへ送られる可能性がある。
【0053】
不図示である別の実施形態において、本発明のECPは、ECP水発生区画からの出口水路と流体で連通するフローコントローラと組み合わせて使用されることが可能である。ある実施形態では、フローコントローラはフィードバック回路を含む。例えば、ECPの出口水路では流量センサが水の流量を測定することができ、水の流量が測定され、よってECPポンプが制御可能かつ定出力の流量を供給するように、適切な制御エレクトロニクスが定電流ソースへフィードバックを提供して印加電流を調整することができる。これは、例えば膜透過が陽極及び陰極区画から発生器区画へかなりの流れを供給する場合に有益である。
【0054】
本発明を説明するためには、本発明を実行する下記の非限定的な実施例が必要である。
【0055】
例1
本例は、ECPのポンプ1の実施形態を使用する。
【0056】
Dionex SRSサプレッサに使用されるものに類似する部材を使用してECPのポンプ1を構築した。Dionex SRSサプレッサの全体構成は、米国特許第5,352,360号の図2に記述されている電解サプレッサの実施形態に類似する。これらの部材及びその機能に関連するパラメータは米国特許第5,352,360号に記載され、かつ参照により本開示に含まれる。
【0057】
図1に示すECPポンプ1では、陰イオンSRSサプレッサ(ASRS)のクロマトグラフィ溶離液チャネルを、その入口ポートを塞ぐことによって中央の水発生器区画12として使用した。水発生器区画は、中央の空胴を画定するクロマトグラフィ溶離液ガスケットによって部分的に境界をつけた。空胴内に、流入スルホン化陽イオン交換スクリーンを配置した。2つのイオン交換膜シートを中央の水発生器区画の反対の両側に沿って延びるように取り付け、中央の水発生器区画並びにガスケットの外周を画定した。ASRS陽極再生液チャネルをECP陽極区画22として、修正なしで使用した。ASRS陰極再生液チャネルを修正して、ECP陰極区画24を調製した。スルホン化陽イオン交換膜及びASRS陰極再生液チャネル内のスクリーンの双方を、アミノ化陰イオン交換膜及びスクリーンで交換した。ECP陽極及び陰極区画の流体入口及び出口ポートを、ASRS陽極及び陰極再生液チャネルの入口及び出口ポートと同じ方法で構築した。
【0058】
図3Aを参照すると、ポンプ62はDionex GP40であった。区画22及び24内のリザーバは、脱イオン水を含んでいた。GP40からの水は純水器(混合樹脂の小型ベッド(不図示))を通過し、これにより水の導電性が約130ナノジーメンスに下がった。
【0059】
次に、水は、適度の流量においてポイントXにおける圧力を著しく高いレベル(流量に依存して600psiから1200psiまでの範囲)に上げる流量制限器63(数メートルのPEEK管、ID0.005インチ)を通過した。
【0060】
制限器63からの水は、次に区画22及び24へと方向づけられ、電解ガスと共に排出されて放棄された。
【0061】
ECPの出口水路17は、ECPを、公称容積25マイクロリットルの試料ループを装備する従来型のIC注入バルブ66へ接続した。
【0062】
導電率セルから先の経路は、目的に依存するものであった。
【0063】
目的が、ECPの流量をその大気放出中に測定することであれば、図3Aの構成を使用した。
【0064】
しかしながら、目的が背圧に対抗する流量を測定することにあれば、導電率セル66の出口は、ポイントXでTピースによって、再循環ライン72内のシステムに戻って接続された(図3B)。この構成では、如何なる背圧であれ背圧に対抗するECPポンプはポイントXにおいて発生される。さらに、流量測定の間、この背圧は、Dionex GP40を使用して定レベルに維持されなければならない。この流れを多大な背圧に対抗して維持するその能力と組み合わされた、その流量の安定性及び精度が、より単純なタイプのポンプではなくこれを選んだ理由であった。
【0065】
この構成を使用して、3つの異なる背圧で、即ち各々GP40からの流量0.2、0.3及び0.4ml/分により発生された638psi、950psi及び1223psiでECPのポンプ流量を測定した。
【0066】
ECP出力の測定
2つの方法を使用してECPのポンプ流量を決定した。
【0067】
方法1 試料ループ内容物の総置換
この方法は、試料ループの全内容物(0.01M KCl)を導電率セルを通して駆動するために必要な時間を測定した。
【0068】
測定は、試料ループをシステムへと切り替えることと、ループの内容物が導電率セルを通過しかつECP溶離液のコンダクタンスがその初期レベルへ戻る(図5の下)まで試料ループをシステム内に放置することで構成された。
【0069】
図5は、3つの異なる電流、即ち10、20及び30ミリアンペアで動作するECPによる試料ループ内容物の置換を示す。試料ループ(公称容積25μL)は、27μLであることが(実験によって)決定された。単位μL/分の流量は、この容積をループ内容物の排出時間間隔で除算して決定した。この時間は、2つの時間、即ち導電率の波の上昇線の真ん中における時間と、導電率の波の下降線の真ん中における時間との差であった。
【0070】
方法2 短試料パルスの通過時間
この方法では、試料ループを一時的に(0.1分間)システム内へ切換し、次いで再び除去した。ECPの典型的な流量では、電解質のこの短パルスが導電率セルに到達するために要する時間は数分である。この遅延をパルスの「通過時間」と呼ぶが、この場合も、システムのソフトウェアによって、試料バルブと導電率セルとの間のKClのこの小パルスの通過時間を正確に測定することができた。このような測定と第1の方法による測定とを組み合わせることにより、これらの通過時間を流量へ正確に変換する手段を得た。ここで報告する流量の大部分は、方法2によって決定した。
【0071】
方法3 秤量法
流量を決定するための最も正確な方法は、ECPからの生成物を計量するものである。しかしながらこれは、十分な精度で計測できる量の水を集めて貯めるために数時間を要する極めて遅速な方法である。したがってこれは、ECPからの流量の「オンザフライ」測定には不適である。通過時間の測定と組み合わせれば、秤量法は通過時間法を正確に校正する手段を提供する。
【0072】
例2 運転中のECPの例
【0073】
ポンプ1:大気圧における流量と電流との関係
【0074】
表1は、ポンプ1の流量を、異なる6電流で大気放出するポンプにより測定した結果を纏めたものである。
【0075】
第2の欄は測定された流量を記し、第3の欄は各電流について計算されたファラデー流量(「ポンピング機構」参照)を示す。測定された流量をファラデー流量で除算すれば、1ファラデー当たりの輸送された水の合計モル数(ファラデー、水化、電気浸透の和)の数値が得られる(欄4)。
【0076】
【表1】

【0077】
図6は、印加電流に対する流量の線形依存を示し、かつECP出力の単純な制御方法を示唆している。
【0078】
ポンプ2:流量と、電流及び加えられた背圧と、の関係
【0079】
Dionex陰イオンAtlas電解サプレッサ(AAES)に使用されているものに類似する部材を使用して、ECPポンプ2を構築した。Dionex陰イオンAtlas電解サプレッサの全体構成は、米国特許第6,610,546号の図6に記述されている電解サプレッサの実施形態に類似する。これらの部材及びその機能に関連するパラメータは米国特許第6,610,546号に記載され、かつ参照により本開示に含まれる。
【0080】
図2に示すECPポンプ2において、中央の水発生器区画12は入口ポート及び出力ポートを有する円筒空胴(直径6mm及び長さ10mm)であった。入口ポートは、デバイスが電気化学ポンプとして使用される際には塞がれる。空胴に、6つのスルホン化陽イオン交換モノリスディスク(直径6mm及び厚さ0.16mm)を詰めた。AAES陽極再生液チャンバをECP陽極区画22として、修正なしで使用した。AAES陰極再生液チャンバを修正して、ECP陰極区画24を調製した。スルホン化陽イオン交換膜及びAAES陰極再生液チャンバ内のモノリスディスクの双方を、アミノ化陰イオン交換膜及びモノリスディスクで交換した。AAES陽極の入口及び出口ポート及び陰極再生液チャンバを、ECP陽極の流体入口及び出口ポート及び陰極区画として使用した。
【0081】
本明細書の図2に示すポンプ2の第1の検査のうちの1つは、電流40mA及び大気放出で数時間の運転に渡りその安定性を調査した。
【0082】
表2は、この検査の結果を示す。ポンプはこの種の時間区間に渡って極めて安定した流れを示し、検査したポンプの典型である。
【表2】

【0083】
表3は、異なる5電流で、かつ背圧ゼロ(大気)、638,950psi及び1223psiで運転中のポンプ2に対して行った流量測定の結果を纏めたものである。欄3は、様々な電流及び背圧で測定した流量を示す。欄4は、膜透過と称している量を示す。以下、膜透過について説明する。
【0084】
全ての膜、特に水和水を含む全ての膜は、加圧下の水が押し当てられる際の水の液圧「リーク」を許容するものと予想することができ、逆浸透として知られる技術はこの性質に依存する。結果的に、ECPが背圧に対抗してポンピングしているときは、膜を介する幾分かの水の逆流を予想することができる。我々は、この種の流れを膜リーク又は膜透過と呼んでいる。これは、電気化学ポンピングから差し引かれる流れである。この実験セットの目的は、膜透過を測定することにあった。
【0085】
特定の電流及び背圧における膜透過は、下記の方法で計算される。
【0086】
ECPが大気圧までポンピングすると、膜透過はゼロになり、よって表3に示される最初の5つの流量は様々な電流で電気化学的に生成された流量を表すことが想定される。
【0087】
30mA及び背圧638psiにおける測定を例にとると、流量は1.06μL/分である。これは、30mA及び背圧ゼロで測定された流量より0.11μL/分少ない。この差は、膜透過に帰することができる。欄4に示す値は全て、こうして計算されたものであった。
【0088】
【表3】

【0089】
膜透過はかなりの流量になる可能性があるが、それでも、特に膜の構造及び厚さを変えることによって浸透が減じる場合もあることから、ECPは商用デバイスとして有益である可能性がある。さらに、流量の背圧に関わらない電流への単純依存(図7)には望みがある。膜リークを介する水の損失を、流量を測定する流量センサを使用し、かつECPポンプが制御可能な定出力流量を与えるように適切な制御エレクトロニクスを使用して定電流ソースへフィードバックを提供し、印加電流を調整することによって補償できることは指摘されるべきである。1つの流量センサは、SENSIRION社(スイス国、チューリッヒ)が製造するASL1600媒体隔離液体流量計である。また、米国特許第4,532,811号及び第6,813,944号に記述されているタイプの流量計及びコントローラが使用されてもよい。
【0090】
表4は、最高の背圧である1223psiで測定された通過時間測定値の生データを示す。我々は、ECP流量の優れた安定性を示すために、2重に実行されたこれらの実際の通過時間を含んでいる。
【0091】
通過時間が約74分である最も低い電流において、かつ少なくとも74分を隔てて行われた2つの測定において、2重の測定間の一致は実際に際だっている。
【0092】
【表4】

【0093】
ポンプ3:流量と電流及び背圧との関係
【0094】
ポンプ3はポンプ2と同じであるが、ポンプ2より高い動作電流を許容するために区画Bが短い(長さ5mm)。
【0095】
表5及び表6及び図8は各々、背圧がゼロ及び1223psiの場合における流量測定の結果を示す。通過時間の3回の測定値の生データ(欄3)は、これらのECPの典型である流量の安定性を示すために含まれている。欄2は、様々な電流でECPに印加された電圧を示す。
【0096】
【表5】

【0097】
【表6】

【0098】
ポンプ3において、膜透過はポンプ2の場合より高く、電流に伴って増大する。ポンプ2内の膜透過は、明らかに電流に非依存であった。この行動は、下記のように説明できると思われる。
【0099】
ポンプ3において、区画22の容積はポンプ2のそれの約50%であり、よって電気加熱は何れもより小さい容積に印加され、我々は、このために区画22の内容物がより加熱されるものと想定する。さらに、我々は、加熱効果は電流の増大に伴って上がるものと予想する。区画22内のこの温度上昇は膜の温度上昇を引き起こし、よって、圧力により膜通過へと押しやられる水の粘性抵抗は下がる。これは、ポンプ2の場合より膜透過が高い理由、及び膜透過が電流に伴って上昇する理由を説明するものである可能性もある。
【0100】
ECPが生成する水の品質に関する結論
【0101】
本発明に関する説明は、ECPが純水をポンピングすることを含意している。実際には、ECPポンプの生成物は数百マイクロジーメンスのコンダクタンスを有する場合がある。これに関しては、幾つかの理論上の理由が存在する。まず、膜が完全にそのヒドロニウム及び水酸化物の形でなければ、汚染性の陽イオン及び陰イオンが区画22内の流体内へと電気化学的に駆動される可能性があり、よってそのコンダクタンスは上昇される。区画Bからの流量が比較的微少であることを考慮すれば、汚染性イオンの流れは少量でもECP生成物のコンダクタンスを観察できるレベルにまで容易に上げる可能性がある。膜の全面積が電気化学イオン流に暴露されるポンプ1等のデバイスでは、ECPの連続稼働により汚染イオンが迅速に除去されるべきである。しかしながら、陽極及び陰極チャンバ内のイオン交換膜のかなりの面積が電界から(クランピングによって)遮蔽されるポンプ2及びポンプ3のようなポンプでは、遮蔽される容積からのイオン除去は拡散律速であって比較的遅くなる。よって、当初に膜がその理想の形態でなければ、しばらくは低品質の水生成物が存続する場合がある。区画22内のイオン交換物質が高分子片を浸出する傾向を有していれば、これもコンダクタンス追加の源である場合がある。
【0102】
また、ECPから生成される水が決して純水になり得ないことを予想させる基本的理由も存在する。電極区画22及び24へフラッシュするための絶対的な純水を製造することは実現不可能であり、この水は常に幾分かのレベルの汚染性イオンを含む。これらのイオンは、ヒドロニウムイオン及び水酸化物イオンと共に区画22内へ運ばれ、その導電性を高める。
【0103】
前述の汚染物質を想定した上で、ECPを先に簡単に述べたような適格の水ポンプにすることができる対策が存在する。先に論じたように、その第1は単に、ECPの出口へ小型の脱イオンカラム(又は他の脱イオンデバイス)を追加することである。膜及び電極をフラッシュする水が比較的純粋な形で調製されていれば、このような研磨ベッド上の負荷は比較的低い可能性があり、よってこれは交換の必要が生じるまで長時間持続する。
【0104】
ECPの方法及びポンプには、下記の優位点がある。
(1) 小型である。
(2) 製造が容易である。
(3) モータ、チェックバルブ、ピストン又は耐久性を制限する他の可動パーツがない。
(4) 流量の制御が容易かつ正確である。
(5) かなりの背圧に対抗してポンピングすることができる。
(6) 簡単な修正(例えば、液体ピストン)によって、任意の流体を制御してポンピングすることができる。
(7) 液体の低流量制御が目的であれば、広範なアプリケーションを有する可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学式持続ポンプであって、
(a)出口を有する水発生器区画と、
(b)前記発生器区画の片側に隣接して配置される陽極区画と、
(c)前記発生器区画を前記陽極区画から分離する、交換可能なイオンが主としてヒドロニウムイオンの形である陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、
(d)前記陽極区画と電通する第1の電極と、
(e)前記発生器チャンバに隣接して配置される陰極区画と、
(f)前記発生器区画を前記陰極区画から分離する、交換可能なイオンが主として水酸化物イオンの形である陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、
(g)前記陰極区画と電通する第2の電極と、
を備える電気化学式持続ポンプ。
【請求項2】
前記陽極及び陰極区画内に水のリザーバをさらに備える、請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
分析システムにおいて、(h)前記発生器区画の出口及びその下流側と流体で連通する試料注入器と、(i)前記試料注入器及びその下流側と流体で連通する試料検出器とをさらに備える、請求項1に記載のポンプ。
【請求項4】
(j)前記試料注入器と前記検出器との間に、前記試料注入器及び検出器と流体で連通して配置されるクロマトグラフィ分離器をさらに備える、請求項3に記載の分析システム。
【請求項5】
前記電気化学ポンプは前記試料注入器より上流側で唯一のポンプである、請求項3に記載の分析システム。
【請求項6】
前記発生器区画の出口と前記試料注入器との間に前記出口及び試料注入器と流体で連通して配置されるイオン除去デバイスをさらに備える、請求項3に記載の分析システム。
【請求項7】
出口を有する水性液発生器区画と、水を含みかつ前記発生器区画に隣接して配置される陽極区画と、前記発生器区画を前記陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、前記陽極区画と電通する第1の電極と、水を含みかつ前記発生器チャンバに隣接する陰極区画と、前記発生器区画を前記陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、前記陰極区画と電通する第2の電極と、を備える電気化学ポンプを使用して水を発生させるための方法であって、
(a)前記第1及び第2の電極間で前記陽極及び陰極区画内の前記水を介して、かつ前記陽イオン及び陰イオン交換バリアを介して電流を通し、前記陰極区画内に水酸化物イオンを発生させ、かつ前記陽極区画内にヒドロニウムイオンを発生させることと、
(b)前記発生した水酸化物イオンを前記陰イオン交換バリアを介して前記発生器区画へ、かつ前記発生したヒドロニウムイオンを前記陽イオン交換バリアを介して前記発生器区画へ通し、電気化学的に水を発生させることと、
(c)前記発生した水を前記発生器区画からの水流に流すことと、
を含む方法。
【請求項8】
前記発生した水流へ液体試料を注入することと、前記液体試料を検出することと、をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
試料注入の前に、前記発生器区画を出る前記発生した水流からイオンを除去することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記陽イオン交換バリアは交換可能イオンを主としてヒドロニウムイオンの形で含み、前記陰イオン交換バリアは交換可能イオンを主として水酸化物の形で含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
水発生の間、前記電気化学ポンプの外部の水源からは前記発生区画を介して水が流れない、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
分析システム内の電気化学式連続濃縮器であって、
(a)出口を有する水発生器区画と、
(b)前記発生器区画の片側に隣接して配置される陽極区画と、
(c)前記発生器区画を前記陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、
(d)前記陽極区画と電通する第1の電極と、
(e)前記発生器チャンバに隣接して配置される陰極区画と、
(f)前記発生器区画を前記陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、
(g)前記陰極区画と電通する第2の電極と、
(h)前記発生器区画の出口と検出器との間に配置される、前記水発生器区画の出口から供給される試料以外の試料を供給するための試料注入器がない場合に、前記水発生器区画の出口と流体で連通する検出器と、
を備える電気化学式連続濃縮器。
【請求項13】
前記陽極及び陰極区画内に試料水のリザーバをさらに備える、請求項12に記載の濃縮器。
【請求項14】
出口を有する水性液発生器区画と、検体陰イオン及び陽イオン含有水試料の第1の部分を含みかつ前記発生器区画に隣接して配置される陽極区画と、前記発生器区画を前記陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、前記陽極区画と電通する第1の電極と、前記検体陰イオン及び陽イオン含有水試料の第2の部分を含みかつ前記発生器チャンバに隣接する陰極区画と、前記発生器区画を前記陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、前記陰極区画と電通する第2の電極と、を備える濃縮器を使用して、水試料内の検体陰イオン及び陽イオンを濃縮しかつ検出するための方法であって、
(a)前記第1及び第2の電極間で前記陽極及び陰極区画内の前記第1及び第2の水試料部分を介して、かつ前記陽イオン及び陰イオン交換膜を介して電流を通し、前記陰極区画内に水酸化物イオンを発生させ、かつ前記陽極区画内にヒドロニウムイオンを発生させることと、
(b)前記発生した水酸化物イオン及び前記水試料内の検体陰イオンを前記陰イオン交換バリアを介して前記発生器区画へ、かつ前記発生したヒドロニウムイオン及び前記水試料内の検体陽イオンを前記陽イオン交換バリアを介して前記発生器区画へ通し、前記通された検体陽イオン及び検体陰イオンを含む水生成物試料を電気化学的に発生させることと、
(c)前記発生器区画と前記検出器との間で追加試料の注入がない場合に、前記発生した水生成物試料を前記発生器区画から検出器への水流に流して前記水生成物試料内の前記検体陽イオン及び検体陰イオンを検出することと、
を含む方法。
【請求項15】
前記陽イオン交換バリアは交換可能イオンを主としてヒドロニウムイオンの形で含み、前記陰イオン交換バリアは交換可能イオンを主として水酸化物の形で含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
電気化学式持続ポンプシステムであって、
(a)出口を有する水発生器区画と、
(b)前記発生器区画の片側に隣接して配置される陽極区画と、
(c)前記発生器区画を前記陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、
(d)前記陽極区画と電通する第1の電極と、
(e)前記発生器チャンバに隣接して配置される陰極区画と、
(f)前記発生器区画を前記陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、
(g)前記陰極区画と電通する第2の電極と、
(h)前記水発生器区画と流体で連通する出口水路と、
(i)前記出口水路と流体で連通するフローコントローラと、
を備える電気化学式持続ポンプシステム。
【請求項17】
前記陽極及び陰極区画内に水のリザーバをさらに備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
分析システムにおいて、さらに、(j)前記発生器区画の出口水路及びその下流側と流体で連通する試料注入器と、(k)前記試料注入器及びその下流側と流体で連通する試料検出器と、を備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
電源をさらに備え、かつ前記フローコントローラは前記電源用の流量制御フィードバック回路を備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
出口を有する水性液発生器区画と、水を含みかつ前記発生器区画に隣接して配置される陽極区画と、前記発生器区画を前記陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、前記陽極区画と電通する第1の電極と、水を含みかつ前記発生器チャンバに隣接する陰極区画と、前記発生器区画を前記陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、前記陰極区画と電通する第2の電極と、を備える電気化学ポンプを使用して水を発生させるための方法であって、
(a)前記第1及び第2の電極間で前記陽極及び陰極区画内の前記水を介して、かつ前記陽イオン及び陰イオン交換バリアを介して電流を通し、前記陰極区画内に水酸化物イオンを発生させ、かつ前記陽極区画内にヒドロニウムイオンを発生させることと、
(b)前記発生した水酸化物イオンを前記陰イオン交換バリアを介して前記発生器区画へ、かつ前記発生したヒドロニウムイオンを前記陽イオン交換バリアを介して前記発生器区画へ通し、電気化学的に水流を発生させることと、
(c)前記発生した水流を前記発生器出口から流すことと、
(d)前記発生した水の流量を前記発生器区画より下流側で決定することと、
を含む方法。
【請求項21】
前記両電極が両者間を通る電流を制御するために、前記決定から電源へのフィードバック情報をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
電気化学式持続ポンプであって、
(a)出口を有する水発生器区画と、
(b)前記発生器区画の片側に隣接して配置される陽極区画と、
(c)前記発生器区画を前記陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、
(d)前記陽極区画と電通する第1の電極と、
(e)前記発生器チャンバに隣接して配置される陰極区画と、
(f)前記発生器区画を前記陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、
(g)前記陰極区画と電通する第2の電極と、
(h)前記水発生器区画とその出口との間に配置されるピストンであって、前記発生器区画内で生成される水を前記ピストンの反対側から分離することができ、かつ前記発生した水によって前記ピストンに加わる圧力を伝達することができるピストンと、
を備える電気化学式持続ポンプ。
【請求項23】
ピストンを備える水性液発生器区画であって、前記液体ピストンの反対側の他の液体は前記発生器区画から到来する水性液発生区画と、水を含みかつ前記発生器区画に隣接して配置される陽極区画と、前記発生器区画を前記陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、前記陽極区画と電通する第1の電極と、水を含みかつ前記発生器チャンバに隣接する陰極区画と、前記発生器区画を前記陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、前記陰極区画と電通する第2の電極と、を備える電気化学ポンプを使用して水を発生させるための方法であって、
(a)前記第1及び第2の電極間で前記陽極及び陰極区画内の前記水を介して、かつ前記陽イオン及び陰イオン交換膜を介して電流を通し、前記陰極区画内に水酸化物イオンを発生させ、かつ前記陽極区画内にヒドロニウムイオンを発生させることと、
(b)前記発生した水酸化物イオンを前記陰イオン交換バリアを介して前記発生器区画へ、かつ前記発生したヒドロニウムイオンを前記陽イオン交換バリアを介して前記発生器区画へ通し、その内部に、前記ピストンの片側を加圧してピストンのもう一方の側に液体の流れを生じさせるための水を電気化学的に発生させることと、
を含む方法。
【請求項24】
電気化学式持続ポンプであって、
(a)出口を有する水発生器区画と、
(b)前記発生器区画の片側に隣接して配置される陽極区画と、
(c)前記発生器区画を前記陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、
(d)前記陽極区画と電通する第1の電極と、
(e)前記発生器チャンバに隣接して配置される陰極区画と、
(f)前記発生器区画を前記陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、
(g)前記陰極区画と電通する第2の電極と、
(h)前記水発生器区画の出口及びその下流側と流体で連通する流体リザーバ容器と、
を備える電気化学式持続ポンプ。
【請求項25】
水性液発生区画と、水を含みかつ前記発生器区画に隣接して配置される陽極区画と、前記発生器区画を前記陽極区画から分離する陽イオン交換バリアであって、陽イオンを通すが陰イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陽イオン交換バリアと、前記陽極区画と電通する第1の電極と、水を含みかつ前記発生器チャンバに隣接する陰極区画と、前記発生器区画を前記陰極区画から分離する陰イオン交換バリアであって、陰イオンを通すが陽イオンを通すことができず、バルク液体の流れをブロックすることができる陰イオン交換バリアと、前記陰極区画と電通する第2の電極と、前記発生器区画の出口から下流側の他の液体のリザーバと、を備える電気化学ポンプを使用して水を発生させるための方法であって、
(a)前記第1及び第2の電極間で前記陽極及び陰極区画内の前記水を介して、かつ前記陽イオン及び陰イオン交換膜を介して電流を通し、前記陰極区画内に水酸化物イオンを発生させ、かつ前記陽極区画内にヒドロニウムイオンを発生させることと、
(b)前記発生した水酸化物イオンを前記陰イオン交換バリアを介して前記発生器区画へ、かつ前記発生したヒドロニウムイオンを前記陽イオン交換バリアを介して前記発生器区画へ通し、その内部に水を電気化学的に発生させることと、
(c)前記発生した水を前記他の液体のリザーバへ流して、前記他の液体の一部を前記リザーバから押し退けること、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−500353(P2012−500353A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523040(P2011−523040)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/052549
【国際公開番号】WO2010/019402
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(591025358)ダイオネックス コーポレイション (38)
【Fターム(参考)】