説明

電気接地用ナット

本発明は、電気接地ナット1に関するものである。従来の接地ナットは、振動で弛む結果、フェイルセーフ用の安全器具が動作不能となることがあった。本発明は、この問題を、ねじ軸を受容する雌ねじと、スパナ等の緊締器具を当て付け可能に付形した外周部とを備えたナット体2を有する接地ナット1を得ることで解決した。ナット体2は、互いに反対側の概して平らな面5,6を有している。ナット体には、接地コネクタ8Bをナット体2に接続するためのボルト8Aを受容するねじ穴7Aと、グラブねじ8C,8Dとを受容するねじ穴7B,7Cとが設けられている。平らな面5には、4個の隆起リブ9A,9B,9C,9Dが設けられ、これらのリブが、接地ナットを取り付ける面を掻き取るか又は該面に食い込むようになっている。接地ナット1はケーブル・グランドと一緒に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気設置用ナットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気的な接続箱又は接続器具を、鋼線外装(SWA)電気ケーブルに接続する場合、SWAケーブル・グランドを用いるのが普通のやり方である。これらのグランドは、一方の側(露出した側)に、外装鋼線を物理的にクランプするための圧縮取付具を、他方の側に、接続箱又は接続器具の壁部を貫通するねじ軸とを有している。接地ナットは、グランドを接続箱又は接続器具の壁部に固定するために、ねじ軸の端部に締結される。
多くの裁判管区の安全基準を満足させるために、ケーブルの少なくとも1端は接地させる必要がある。これを実施するために、バンジョー・ワッシャとして知られる特別の種類のワッシャをナットの下に配置してから、ワッシャ・アームの穴へボルトをねじ込むことにより、クリンプ・コネクタを用いて接地線が受容される。また、アームは、通常、接続箱又は接続器具箱の壁部を貫通するボルトで締結される。
【0003】
しかし、前述のバンジョー・ワッシャには、幾つかの欠点がある。
第1に、アームは、接続箱又は接続器具の壁部から離す方向に曲げると、折れることがある。アームが折れると、グランドが大地への接続を断たれる結果となる。これは危険であり、往々にして接地を欠く結果となる。
第2に、グランドが弛むと、ワッシャとグランドとの接続が不良となり、接地への経路が高抵抗となる。
第3に接続箱又は接続器具は、プラスチック材料製であることが多く、時々、ゆがみを生じて、ワッシャとグランド間の接続が乏しくなり、この場合も、また接地への経路が高抵抗となる。
第4は、接続器具又は接続箱の壁部に穴あけする作業は、特に接近しにくい場合には、時間を食い、面倒であり、加えて、接地接続に別個のナットとボルトが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、したがって、前記欠点が克服された接地ナットを得ることである。
本発明の別の目的は、SWAケーブル・グランド上でのナットとバンジョー・ワッシャの従来の組み合わせに代わり得る接地ナットを得ることである。
本発明の、更に別の目的は、他の従来の電気設備、例えば他の金属ケーブル・グランドや電線管に使用でき、かつ該電気設備にレトロフィットできる接地ナットを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、
a)雌ねじと、スパナ等の緊締具を受容するように付形された外周部とを有する、概して平らな両面を備えたナット体と、
b)該ナット体に接地コネクタを固定するボルトを受容するために、ナット体に設けた少なくとも1つのねじ穴と、
c)接地ナットを当て付ける面に係止されるように一方の平らな面に設けた少なくとも1つの隆起リブとを含む電気接地ナットが得られる。
【0006】
前記1つの又は各々の隆起リブは、理想的に寸法付けされ、接地ナットを当て付ける面を切り取る又は掻き取るように構成されている。
好ましくは、前記1つの又は各々のねじ穴は、ナット体の外周部からナット体内へ延びている。
【0007】
別の実施例では、接地ナットが、前記一方の又は各々の平らな面に形成されたリム、又は穴の周囲に形成された隆起又は突出した環状部分又はフランジを有していてもよい。
3個の穴は理想的に設けられ、1つはボルト受容のため、他の2つは、接地ナットをねじ込むねじ軸に対してねじ込む、又は噛み合うグラブねじを受容するためのものである。
2個以上の穴が、例えば6角形の場合、周部の平らな面から延びている場合、穴はずらして配置してもよい。こうすることの利点は、グラブねじが、狭苦しいところで使用する場合に、より容易に適応させ得る点である。
好ましくは少なくとも3個の、好ましくは4個(以上)の隆起した突起又はリブを設けておく。これらの突起又はリブは、理想的にナットの平らな面に形成される。
理想的には、接地ナットの外周部は、概して円形で、対向する両側にスパナ又はレンチを当てがう平らな部分を有している。
【0008】
本発明の更に別の実施例では、接地ナットの外周部が多角形又は理想的には6角形である。
【0009】
更に別の実施例では、接地ナットが、前記1つの又は各々の平らな面に形成されたリム又は穴の周囲に形成された隆起又は突出した環状部分を有することができる。
隆起又は突出した環状部分を有するこの実施例の利点は、接地ナットが大きすぎる穴に配置された場合にナットを定心させることにある。この特徴により、接地ナットは、軸線方向力又は圧縮力によって定位置に保持され、振動しないことが保証される。コネクタ、特に安全コネクタの振動は望ましくない。なぜなら、接触部と接続部が緩むことで、安全コネクタの働きが無効となるからである。
本発明は、既述のように、ケーブル・グランドと組み合わせた接地ナットをも含むものである。
本発明は、既述のように、導電性ケーブルと組み合わせた接地ナットをも含むことが理解されよう。
【0010】
本発明の別の態様によれば、
a)雌ねじと、緊締器具を当てがうように付形された外周部とを有し、互いに反対側の概して平らな面を備えたナット体を形成する段階と、
b)ナット体に接地コネクタを固定するボルトを受容するために、ナット体に少なくとも1つのねじ穴を形成する段階と、
c)接地ナットの一方の平らな面に少なくとも1つの隆起したリブを形成する段階とを含む電気接地ナットを形成する方法が得られる。
【0011】
ナットの形成方法には、打ち抜き、すえ込み、鍛造が含まれる。
本発明のこの別の態様も、接地ナットの前述の態様に関連する他の好ましい特徴にも適用されることが理解されよう。
以下で、本発明の諸実施例を図面につき説明する。
【0012】
図1には、電気接地ナット1が示されている。
接地ナット1は環状のナット体2を有し、該ナット体の、ほぼ円形の外周部には、スパナ又は他の緊締器具を当てがうための平らな部分3A,3Bを互いに反対側に備えている。ナット体2は、ねじ軸を受容するための雌ねじ4を備えている、ナット体2は、互いに反対側に概して平らな面5,6を有している。
半径方向に間隔を置いた3個のねじ穴7A,7B,7Cが、ナット体外周部からナット体2内へ延びている。ねじ穴7Aはボルト8Aと、大地へ通じる線を有する接地コネクタ8Bとを受容する。ねじ穴7B,7C(接地ナットの外周部のいずれかの位置に配置できる)は各々グラブねじ8C,8Dを受容し、これらのねじは、接地ナット1がねじ込まれるねじ軸(図示せず)と接触又はねじ軸内へ食い込む。
平らな面5には、歯状の隆起した四つのリブ9A,9B,9C,9Dが、接地ナットを当て付ける面を掻き取る又は切り取るように設けられている。これらのリブ又は歯9A,9B,9C,9Dの目的は、
【0013】
次に図2には、接地ナット1を用いて、電気接続箱又は接続器具(図示せず)の壁部20の穴21を通して取り付けられるケーブル・グランド10が示されている。ケーブル・グランド10は、技術上公知の種類のもので、グランド・ナット12の一方の側に、ねじ軸11を有し、他方の側に、圧縮ナット14を受容する圧縮ベース1とを有している。
使用時、ねじ軸11は、穴21を貫通し、本発明の接地ナット1により壁部20の他方の側で固定される。
【0014】
接地ナット1が締結されると、歯状のリブ9A,9B,9C,9Dは、壁部20の表面を削り取り、壁面内へ食い込む。このことには3つの利点がある。すなわち、
第1は、壁部20が金属製であり、塗られた塗料が削り取られて、ナット1と壁部間に良好な電気接続が得られる点である。
第2に、歯状のリブによって、接地ナットが、ねじ軸11から弛むことが防止される点である。
第3に、歯状のリブが壁部20に噛み合うように一度緊締されると、グランド10と接地ナット1との組合わせ組立体は、スパナ又はレンチ(図示せず)でグランド・ナット12を回動させるだけで締結できる点である。すなわち、グランド10を回動させる間に接地ナットを保持する別個のスパナは不要である。
【0015】
接地コネクタ8Bは、ボルト8Aによってナット体2に取り付けられる。この構成は、公知のバンジョー・ナットによるよりも、大地への信頼性のある機械的、電気的な接続を可能にする。更に、接続箱又は接続器具の壁部に厄介な穴あけをする必要がない。
グラブねじ8C,8Dは、ねじ軸11と接触し、ねじ軸11内へ食い込むことで、接地ナット1が、ねじ軸11と確実に密着状態に保持される。グラブねじは、プラスチックの囲い上で使用される場合、又は囲い壁が使用されていないところでケーブル(図示せず)を終端する場合に、電気接触を補助する。
接地ナット1は、他の電気設備、例えば、家庭用又は工業用の電気接続箱又は接続器具の壁部内へ挿入される接続電線管、機関等の振動系への電気接続リード線、良好な電気接続と電気絶縁が安全にとって重要な航空機や船舶、油田、安全問題が重要な化学・石油化学プラントに使用できることが理解されよう。
【0016】
本発明は、以上で具体的に説明した形式とは異なる形式をとってもよい。例えば、ナット体2の外周部は多角形、例えば6角形でもよい。
接地ナット1は、単独でも、ケーブル・グランド10と組み合わせても販売できる。本発明は、したがって、既述のような、ケーブル・グランドと組み合わせた接地ナットにも適用できる。
【0017】
図3a,図3b,図3cに簡単に触れてみると、本発明の別の実施例による3つの異なる寸法の接地ナット1の平面図と側面図とが示されている。これらの図では、類似部分には図1及び図2と同じ符号が付されている。図3a,図3b,図3cに示した接地ナットは、従来型の六角ナットの形式である。
図3a及び図3bには、異なる寸法の接地ナット1の3つの側が示され、各側に1つの穴が設けられている。各側に1個の穴を設ける理由は、接地ナット1を締結する場合、グラブねじ8を受容する穴を有する1つの側が、常に操作員に向くようにするためである。
図3cは、接地ナット1の大型版であり、この場合、側面の1つには2つの穴7Aが形成されている。2つの穴7Aは、ずらして配置されることで、接地ナットを接近しにくい区域で容易に使用できたり、狭い空間での用途に適応でき、それによって、常に1つの穴は接近可能で、グラブねじを受容できる。
図3a,図3b,図3に示したナットは歯状のリブを有していない。しかし、これらのナットも歯状のリブを有していてもよい。
【0018】
図4に示した実施例を簡単に説明する。図面では、類似部分には等しい符号を付してある。図示の接地ナット1には、その一方の平らな面又は各平らな面5,6に形成されたリム又は穴の周囲に形成された隆起又は突出した環状部分又はフランジ30を有している。隆起又は突出した環状部分30は、使用時、ナット1が大きすぎる穴又は振動しやすい箇所(図示せず)に配置された場合に、接地ナットを確実に定心させるものである。
リム又は環状部分30は、したがって、ナット1が軸線方向力又は圧縮力によって定位置に保持され、振動しないよう保証する。
接地ナット及び穴の寸法は、異なるケーブル寸法に合わせて変更できることが理解されよう。
【0019】
理想的には、ナットは、良好な機械的特性及び導電特性を有する材料で形成される。理想的には、金属、例えば黄銅又は鋼が好ましいが、特殊な諸用途には複合材料の使用も可能と考えられる。
本発明の使用により、従来の接地ナットの欠点が克服され、それによって、より信頼性の高い接地ナットが得られる。この接地ナットは、従来の不具合を生じることがなく、取り付けられた場合に振動を生じることがなく、使用が簡単で、取り付けが容易である。
当業者には、本発明の範囲を逸脱することなしに、更に別の変更態様が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一態様による接地ナットの斜視図。
【図2】本発明の一態様によるケーブル・グランド及び接地ナットの分解斜視図。
【図3a】本発明の別の実施例の平面図及び側面図。
【図3b】本発明の別の実施例の平面図及び側面図。
【図3c】本発明の別の実施例の平面図及び側面図。
【図4】本発明の、環状部分を有する更に別の実施例の平面図及び側面図。
【符号の説明】
【0021】
1 接地ナット
2 ナット体
3A,3B 接地ナットの平らな側面部分
4 雌ねじ
5,6 接地ナットの互いに反対側の平らな面
7A,7B,7C 半径方向ねじ穴
8A ボルト
8B 接地コネクタ
8C,8D グラブねじ
9A,9B,9C,9D 歯、リブ
10 ケーブル・グランド
11 ねじ軸
12 ナット
13 圧縮ベース
14 圧縮ナット
20 接続箱又は接続器具の壁部
21 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接地ナットにおいて、
a)雌ねじと、緊締具を当て付けるように付形された外周部とを有し、互いに反対側の概して平らな面を備えたナット体と、
b)前記ナット体に接地コネクタを固定するボルトを受容するために、ナット体に設けた少なくとも1個のねじ穴と、
c)接地ナットが当て付けられる表面に食い込むように、一方の平らな面に設けた少なくとも1つの隆起したリブとを含む電気接地ナット。
【請求項2】
前記1個のねじ穴又は各ねじ穴が、ナット体外周部からナット体内へ延びている、請求項1に記載された電気接地ナット。
【請求項3】
3個のねじ穴が設けられており、1個がボルトを受容する穴であり、他の2個が、接地ナットをねじ付けるねじ軸へ食い込むグラブねじを受容する穴である、請求項2に記載された電気接地ナット。
【請求項4】
3個又は4個又はそれ以上の個数の隆起リブが設けられている、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された電気接地ナット。
【請求項5】
接地ナットの前記外周部が、概して円形であり、かつスパナを当て付けるため平らな部分を互いに反対側に有している、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された電気接地ナット。
【請求項6】
接地ナットの前記外周部が多角形である、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された電気接地ナット。
【請求項7】
設置ナットの前記外周部が6角形である、請求項6のいずれかに記載された電気接地ナット。
【請求項8】
2個のねじ穴が、6角形のナットの外周部の単一の面に隣接配置された、請求項3に従属する請求項7に記載された電気接地ナット。
【請求項9】
前記隆起又は突出した環状部分又はフランジが、接地ナットの一方の平らな面に形成されたリム又は穴の周囲に形成される、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載された電気接地ナット。
【請求項10】
前記隆起又は突出した環状部分又はフランジが、接地ナットの互いに反対側の平らな面に形成されたリム又は穴の周囲に形成される、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載された電気接地ナット。
【請求項11】
ケーブル・グランドにおいて、
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載された電気接地ナットを有するケーブル・グランド。
【請求項12】
電気接地ナットを形成する方法において、該方法が、
a)雌ねじと、スパナ等の緊締具を当て付けるように付形された外周部とを有し、互いに反対側の概して平らな面を備えたナット体を形成する段階と、
b)前記ナット体に接地コネクタを固定するボルトを受容するために、ナット体に少なくとも1個のねじ穴を形成する段階と、
c)接地ナットの一方の平らな面に少なくとも1つの隆起したリブを形成する段階とを含む、電気接地ナットを形成する方法。
【請求項13】
電気接地ナットにおいて、
事実上、以上に図面を参照して説明し、かつ図面に示した電気接地ナット。
【請求項14】
電気接地ナットを形成する方法において、
事実上、以上に図面を参照して説明し、かつ図面に示した電気接地ナットを形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−510285(P2008−510285A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526572(P2007−526572)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003246
【国際公開番号】WO2006/018653
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(507052175)ケーブル ターミノロジー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】