説明

電気柵用電線碍子

【課題】電気柵の支柱に強固かつ安定的に取り付けることができ、しかもそのために取付金具の軸径を太くする必要がなく、生産原価を抑えることができる電気柵用電線碍子を提供すること。
【解決手段】基端の軸部11にねじが設けられており、他方に電気柵用支柱4に係止するフック部12が形成された取付金具10と、この取付金具10の軸部11に挿通される絶縁体からなる碍子本体13と、取付金具10の軸部11に螺合されるナット14とを備えた電気柵用電線碍子において、取付金具10のフック部12を多角形状に形成し、取付金具10のフック部12が電気柵用支柱4の外面と2箇所以上で接触するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田畑に被害を与える害獣を電気的衝撃によって撃退させる電気柵に使用する裸電線を支持するための碍子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
山間部やそこに近い農地では、猪や猿等の害獣が出没し作物を食い荒す被害が起こり、深刻な問題となっている。このような被害を未然に防ぐために、図5に示すような電気柵が使用されている。電気柵は、保護すべき農地の周りに所定の間隔で支柱4を立て、支柱4に電線碍子3を取り付け、電線碍子3に裸電線2を係止させて裸電線2を田畑の周囲に張り巡らせることによって構成される。そして、裸電線2に電気柵本体1から発生する衝撃電圧を流し、害獣が裸電線2に触れたときの電撃で害獣を撃退する。害獣は、裸電線2による電撃を嫌って、電気柵に近づかなくなるという効果がある。
【0003】
上述のように、電気柵において裸電線2を支柱4に支持するためには、従来より電線碍子3が用いられている(特許文献1参照)。図6は従来の電線碍子を示す断面図である。図6において、30は取付金具、31はねじが設けられている軸部、32は電気柵の支柱4に係止するフック部、33は合成樹脂製等の絶縁体からなる碍子本体、34は支柱4と碍子本体33を締め付けるために軸部31にねじ込まれる蝶ナットである。また、電線巻付け部40a、40b及びスリット部40c(図7参照)を設け、そこに裸電線を巻き付け固定したり、季節による温度差や動物や物が当たったりする等の原因で裸電線が弛んだ場合に巻き直したりすることができるようになっている。
【0004】
この電線碍子を支柱4に取り付ける際は、まず、蝶ナット34を回し緩めて、図7に示すように、蝶ナット34、碍子本体33、取付金具30を分離して取り外す。そして、支柱4に取付金具30のフック部32を引っ掛け、取付金具の軸部31を碍子本体33の貫通穴35に挿通させ、蝶ナット34を回し締め付ける。図8が取付完了図である。
【0005】
このような従来の電線碍子において、支柱4に係止するフック部32は円弧状になっており、このため、取付状態では図9に示すように、フック部32と支柱4は接触点36aの1箇所のみで接触し、支柱4及び碍子本体33は、この接触点36aと、支柱4と碍子本体33との接触点36bの2点の接触箇所にて支持され固定される。
【特許文献1】特開平8−249962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の電線碍子においては、これを支柱4に取り付ける際には、取付金具30のフック部32と支柱4との接触箇所が1箇所のみであり、支柱4へ強固かつ安定的に取り付けることができないことがある。また、強固に取り付けようとして、蝶ナット34を強く締め付けるとフック部32の変形が生じる等の不具合が起こり、それらを解決するためには取付金具30の軸径を太くして強度を増す必要があり、生産原価の増加につながる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、電気柵の支柱に強固かつ安定的に取り付けることができ、しかもそのために取付金具の軸径を太くする必要がなく、生産原価を抑えることができる電気柵用電線碍子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気柵用電線碍子は、基端の軸部にねじが設けられており、他方に電気柵用支柱に係止するフック部が形成された取付金具と、この取付金具の軸部に挿通される絶縁体からなる碍子本体と、前記取付金具の軸部に螺合されるナットとを備えた電気柵用電線碍子において、前記取付金具のフック部を多角形状に形成し、前記取付金具のフック部が電気柵用支柱の外面と2箇所以上で接触するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、取付金具のフック部の形状を円弧形ではなく多角形にし、フック部が支柱と2箇所以上で接触するようにしたことにより、支柱に強固かつ安定的に取り付けることができるようになる。
【0010】
また、強固に取り付けることができることにより、ナットをフック部の形状が円弧状のときよりも強く締め付ける必要がなく、取付金具の強度を増すため軸径の太いものを使用しなくてもよいので、生産原価を抑えることができ経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の電線碍子の一実施例を示す断面図、図2はその分解斜視図である。
【0012】
これらの図において、10は取付金具、11はねじが設けられている軸部、12は電気柵の支柱4に係止するフック部、13は合成樹脂製等の絶縁体からなる碍子本体、14は支柱4と碍子本体13を締め付けるために軸部11にねじ込まれる蝶ナットである。また、電線巻付け部20a、20b及びスリット部20cを設け、そこに裸電線を巻き付け固定したり、季節による温度差や動物や物が当たったりする等の原因で裸電線が弛んだ場合に巻き直したりすることができるようになっている。
【0013】
本実施例では取付金具10のフック部12を菱形状に形成している。このような菱形状のフック部12は、取付金具10の素材である丸棒材に軸部11を30mm程度設け、さらに角16aを起点として角16b、角16cを形成し、角16cから終端16dまで延出させることによって形成できる。
【0014】
この電線碍子を支柱4に取り付ける際は、まず、蝶ナット14を回し緩めて、図2に示すように、蝶ナット14、碍子本体13、取付金具10を分離して取り外す。そして、支柱4に取付金具10のフック部12を引っ掛け、取付金具の軸部11を碍子本体13の貫通穴15に挿通させ、蝶ナット14を回し締め付ける。図3が取付完了図である。
【0015】
上述の構成の電線碍子によれば、取付状態においては図4に示すように、フック部12と支柱4は接触点17a、17bの2箇所で接触し、支柱4及び碍子本体13は、この接触点17a、17bと、支柱4と碍子本体13との接触点17cとの合計3点の接触箇所にて支持され固定される。すなわち、図9で示した従来のフック部が円弧状のものに比べ、接触箇所が増え、碍子本体13を支柱4に強固かつ安定的に固定できる。そして、蝶ナット14をフック部の形状が円弧状のときよりも強く締め付ける必要がない。ゆえに、フック部12の変形が生じる等の不具合が起こりにくい。取付金具10もそれほど強度を要しないため軸径を細くでき、生産原価を抑えることができ経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の電線碍子の一実施例を示す断面図である。
【図2】図1に示す電線碍子の分解斜視図である。
【図3】図1に示す電線碍子の取付完了状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示す電線碍子の取付完了状態を示す断面図である。
【図5】電気柵の代表的な概要図である。
【図6】従来の電線碍子を示す断面図である。
【図7】図6に示す電線碍子の分解斜視図である。
【図8】図6に示す電線碍子の取付完了状態を示す斜視図である。
【図9】図6に示す電線碍子の取付完了状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 電気柵本体
2 裸電線
3 電線碍子
4 支柱
10 取付金具
11 軸部
12 フック部
13 碍子本体
14 蝶ナット
15 貫通穴
16a〜16c 角
16d 終端
17a〜17c 接触点
20a、20b 電線巻付け部
20c スリット部
30 取付金具
31 軸部
32 フック部
33 碍子本体
34 蝶ナット
35 貫通穴
36a、36b 接触点
40a、40b 電線巻付け部
40b スリット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端の軸部にねじが設けられており、他方に電気柵用支柱に係止するフック部が形成された取付金具と、この取付金具の軸部に挿通される絶縁体からなる碍子本体と、前記取付金具の軸部に螺合されるナットとを備えた電気柵用電線碍子において、前記取付金具のフック部を多角形状に形成し、前記取付金具のフック部が電気柵用支柱の外面と2箇所以上で接触するようにしたことを特徴とする電気柵用電線碍子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−305307(P2007−305307A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129162(P2006−129162)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(596009788)株式会社末松電子製作所 (16)
【Fターム(参考)】