説明

電気機器の表示灯の導光構造

【課題】光ガイドのような別部品を使用せずに、視認者と電気機器との配置関係にかかわらず表示灯の点灯状態の確認ができる電気機器の導光構造を提供する。
【解決手段】本発明に係る電気機器の表示灯の導光構造は、携帯型非常ボタン1の筐体5内に設置されたLED19の光を筐体5の外面側に導光して筐体外部からLED19の点灯状態の確認を容易にできるようにするものであって、一端側がLED19に臨み、他端側が筐体5の外面に連続するように筐体5に形成された導光用筒状部9を備えてなり、導光用筒状部9の内壁9aは、導光用筒状部9の内径が前記一端側から前記他端側に向って拡径するように傾斜していることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の表示灯の導光構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器、例えば火災感知器においては、火災感知器が作動しているかどうかを外部から視認するための動作確認灯が設けられている。
このような動作確認灯の一例として、チップ化した発光ダイオードを用いたものがある。この場合、外部からの視認を可能にするために、発光ダイオードの光を火災感知器の外部に導出する必要があり、そのための導光構造が設けられている。
特許文献1に示された導光構造は、プリント基板上に動作確認灯用のチップ化した発光ダイオードを実装し、前記発光ダイオードの配設位置に一端部を近接させ他端部をボディの開孔部に圧入した光ガイドを配設して、当該光ガイドにより前記発光ダイオードの光を火災感知器外へ導出するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−185181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された導光構造は、火災感知器のように天井面に設置することを前提としたものであり、確認者は天井面を見上げるようにする。そのため、光を所定の方向、この場合は設置状態で真下の方向に導くという機能を備えているのみである。そのため、火災感知器のように確認者の上方であってある程度距離が離れているような場合には視認が可能であるが、確認者との位置関係がそれぞれ異なる場合には必ずしも視認が確実に行えるとは限らない。
また、特許文献1に記載のものは、光ガイドという別部品が必要であるため、部品点数が増え、コストが高くなるという問題もある。
【0005】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、光ガイドのような別部品を必要とせず、視認者と電気機器との位置関係にかかわらず表示灯の点灯状態の確認ができる電気機器の表示灯の導光構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る電気機器の表示灯の導光構造は、電気機器の筐体内に設置された表示灯の光を前記筐体の外面側に導光して前記筐体外部から表示灯の点灯状態の確認を容易にできるようにする電気機器の表示灯の導光構造であって、
一端側が前記表示灯に臨み、他端側が前記筐体の外面に連続するように前記筐体に形成された導光用筒状部を備えてなり、該導光用筒状部の内壁は、前記導光用筒状部の内径が前記一端側から前記他端側に向って拡径するように傾斜していることを特徴とするものである。
【0007】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記表示灯はチップLEDで構成され、かつ、前記導光用筒状部の内壁の傾斜角を2〜5°に設定したことを特徴とするものである。
【0008】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記表示灯は筐体内に設置された回路基板に実装され、該回路基板が前記筐体の所定位置に設置されることにより、前記表示灯が前記導光用筒状部の一端側に対して所定位置に配置されるように構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、一端側が前記表示灯に臨み、他端側が前記筐体の外面に連続するように前記筐体に形成された導光用筒状部を備えてなり、該導光用筒状部の内壁は、前記導光用筒状部の内径が前記一端側から前記他端側に向って拡径するように傾斜しているので、表示灯が点灯すると、その光が導光用筒状部によって筐体外面側にガイドされると共に導光用筒状部の内壁を照らし、照らされた内壁が外部から見えやすいので、表示灯の点灯を容易にかつ確実に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電気機器の表示灯の導光構造を説明するための図であり、図4の矢視A―A線に沿う断面図である。
【図2】図1に示した導光構造が用いられる携帯型非常ボタン及び携帯型キャンセルボタンの外観説明図である。
【図3】図2に示した携帯型非常ボタンの内部構造の説明図である。
【図4】図2の破線で囲んだA部を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
表示灯が搭載される電気機器としては種々のものがあるが、本実施の形態ではホームセキュリティシステムにおいて用いられる無線式の携帯型非常ボタン1(図2(a)参照)、携帯型キャンセルボタン3(図2(b)参照)を例に挙げて説明する。携帯型非常ボタン1とは、操作者が携帯し、非常事態を認知したときに非常ボタンを押すことで、家屋に設置されている住宅情報盤を介してセキュリティセンターに非常信号を通報するための非常ボタン装置である。携帯型キャンセルボタン3とは、非常通報をキャンセルする際に押すボタン装置である。
【0012】
携帯型非常ボタン1は、図2に示すように、正面形状が矩形状の直方体形状の筐体5を備え、その正面にシーソー型のスイッチ7が設けられ、その下方にスイッチ7のON状態を確認するための導光用筒状部9が設けられている。
一方、携帯型キャンセルボタン3は、携帯型非常ボタン1のシーソー型のスイッチ7の代わりに、メンブレンスイッチ8が設けられている以外は、携帯型非常ボタン1と同様な構造を有するので、以下の説明は携帯型非常ボタン1を例に挙げて説明する。
【0013】
携帯型非常ボタン1の内部には、図3の内部構造図に示すように、下面側に回路基板11が設置され、回路基板11上にアンテナ13や、シーソー型のスイッチ7によって押下されるタクトスイッチ15が設けられている。また、シーソー型のスイッチ7を押下状態で保持するスイッチロック機構17が設けられ、さらに、図1に示すように、タクトスイッチ15が押されることで点灯するチップ型のLED19が実装されている。
【0014】
LED19は、図1に示すように、導光用筒状部9の一端側に臨むように配置されている。この配置は、LED19が搭載された回路基板11を筐体5に対して所定位置に設置することで、LED19が導光用筒状部9の一端側に対して所定位置に配置されるようにしている。LED19が配置される所定位置とは、例えばLED19の発光部の中心が導光用筒状部9の中心に一致するような位置である。
【0015】
導光用筒状部9の他端側は、筐体5の外面に連続するようになっている。導光用筒状部9の内壁9aは、図1に示すように、導光用筒状部9の内径が内端側から外端側に向って拡径しており、導光用筒状部9の内壁9aを断面視したときにはテーパ状になっている。本実施の形態におけるテーパの傾斜角度θは、θ=2°に設定されている。2°未満であると、外部から内壁9aが見えにくく、特に横あるいは斜め方向からの視認性が悪くなるからである。なお、テーパの傾斜角度の最大値は、図1において白線で示したようにθ=5°にするのが好ましい。つまり、テーパの傾斜角度の好ましい範囲は、2°≦θ≦5°である。θを5°以下にしたのは、θが5°を超えても更なる効果が期待できず、開口部が大きくなるため、美感上で好ましくないからである。
【0016】
上記のように構成された本実施の形態の動作について説明する。
携帯型非常ボタン1のスイッチ7が押下されると、タクトスイッチ15が押され、それによって非常信号がセキュリティセンターに通報される。そのとき、LED19が点灯し、その光が導光用筒状部9によって筐体5の外方に導光されると共に導光用筒状部9の内壁9aが照らされる。導光用筒状部9は筐体5の外面に近くなるにしたがって拡径しているので、内壁9aが照らされている状態が視認されやすく、チップ型のLED19が点灯していることが容易に判別できる。しかも、導光用筒状部9の内壁9aが拡径しているので、横あるいは斜め方向からでも見易く、ほぼ真横からでも見える。
よって、発光部が小さいチップ型のLEDを用いたとしても、発光部が大きい砲弾型のLEDと同程度の視認性を得ることができる。なお、LED19は砲弾型を用いてもよい。
【0017】
以上のように、本実施の形態の導光構造によれば、チップ型のLED19を回路基板11に設置して、回路基板11から筐体表面まで距離があるような場合であっても、LED19の点灯を筐体の外面側に確実に導光できると共に、横あるいは斜めから見た場合でも点灯を確実に視認できる。
また、LED19の中心が導光用筒状部9の中心に一致するように設置されているので、LED19を点灯させたときに、導光用筒状部9の内壁9aが偏りなく照らされておれば、LED19が導光用筒状部9に対して所定位置にあることが分かり、回路基板11が筐体5に対して正しい所定位置に設置されていることを確認できる。つまり、本実施の形態の導光構造は、回路基板11の設置位置が適切であるか否かの確認手段としても機能する。
【0018】
チップ型のLED19は、例えば半値角θが大きいものを使用すると導光用筒状部9が多く照射されるとともに反射光も増加するために、視認性が格段によくなる。つまり、半値角θが大きいLEDを用いれば、導光用筒状部9を十分明るくすることができ、このことは換言すれば、半値角の小さいものと同じ明るさを得るための印加電流を小さくすることができることを意味しており、半値角θが大きいLEDを用いることで電池の寿命を延ばすことができる。
また、半値角θが大きいものは、レンズなどの集光体がないため、半値角θが小さいものよい低コスト化ができる。
このように、チップ型のLED19として、半値角θが大きいものを使用することが、視認性、電池の寿命延長及び低コスト化の面から好ましい。
なお、半値角θの範囲としては、45°以上が好ましい。
【0019】
上記の実施の形態では、電気機器の例としてホームセキュリティシステムで使用される携帯型非常ボタン1や携帯型キャンセルボタン3を例に挙げたが、本発明の導光構造が利用できるのは、これに限られず、主に壁面に設置される固定型の非常ボタンや、火災受信機や、火災警報器の無線信号を受信すると移報する無線式中継器など表示灯が設けられる種々の電気機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 携帯型非常ボタン
3 携帯型キャンセルボタン
5 筐体
7 スイッチ
8 メンブレンスイッチ
9 導光用筒状部
9a 内壁
11 回路基板
13 アンテナ
15 タクトスイッチ
17 スイッチロック機構
19 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の筐体内に設置された表示灯の光を前記筐体の外面側に導光して前記筐体外部から表示灯の点灯状態の確認を容易にできるようにする電気機器の表示灯の導光構造であって、
一端側が前記表示灯に臨み、他端側が前記筐体の外面に連続するように前記筐体に形成された導光用筒状部を備えてなり、該導光用筒状部の内壁は、前記導光用筒状部の内径が前記一端側から前記他端側に向って拡径するように傾斜していることを特徴とする電気機器の表示灯の導光構造。
【請求項2】
前記表示灯はチップLEDで構成され、かつ、前記導光用筒状部の内壁の傾斜角を2〜5°に設定したことを特徴とする請求項1記載の電気機器の表示灯の導光構造。
【請求項3】
前記表示灯は筐体内に設置された回路基板に実装され、該回路基板が前記筐体の所定位置に設置されることにより、前記表示灯が前記導光用筒状部の一端側に対して所定位置に配置されるように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気機器の表示灯の導光構造。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−181783(P2011−181783A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45983(P2010−45983)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】